JP2016196714A - 合成繊維 - Google Patents
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従来より接触冷感性、透け防止性や透撮防止性を有する布帛は、それぞれ数多く提案されている。例えば、繊維へ特定の添加剤を練り込む、繊維の断面形状を工夫する、繊維の繊度を工夫する、繊維の加工方法を工夫する、織編物の組織・加工を工夫する等により、布帛に接触冷感性を持たせることにより、夏場での寝心地の良さを付与できることや、カーテンなどへの防透け性の優れた布帛を付与できること等がある。
具体的には、特許文献1には、リバーシブル構造の編地からなる涼感に優れた衣料であって、熱可塑性エラストマー及び無機フィラーを含有する接触冷感に優れた繊維からなるループと疎水性繊維からなるループとを有し、接触冷感に優れた繊維からなるループは肌側にのみ配置され、疎水性繊維からなるループは外側に配置された涼感に優れた衣料について記載されている。
特許文献2には、芯成分を形成する合成重合体に艶消剤を1.0〜5.0質量%含有し、鞘成分を形成する合成重合体に蛍光増白剤を0.01〜1.0質量%含有し、芯成分部の横断面が回転対称形である芯鞘複合糸で構成された透け防止性に優れた白色布帛について記載されている。
さらに特許文献3では、赤外線吸収能または赤外線反射能を有する部分を表面積に対して40〜80%偏在させてなる赤外線による透視を防ぐ肌面当接用繊維材料について記載されている。
また特許文献2記載の芯鞘複合糸を用いた布帛では、透け防止性が良好となるものの十分ではなく、また接触冷感性を得られるものではない。
そして、特許文献3記載の繊維材料は、一定の透撮防止性能を有するものの、赤外線遮断剤を固着させたものであるため、長期使用等により、赤外線遮断剤が脱落して透撮防止性能が劣化する問題がある。
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、後加工で剤を固着させずとも、汎用性のある樹脂を用いて、接触冷感性、透け防止性、透撮防止性ともに優れた合成繊維を得ることを、その目的とする。
上記合成繊維は、繊維横断面において、A層とB層との面積比率は、50:50〜85:15であることが好ましく、白色系無機微粒子が、酸化チタンであることが好ましい。 また上記合成繊維は、樹脂Aは、蛍光増白剤を含むものであることが好ましい。
すなわち、樹脂Bは、樹脂Aと同一の特定の溶剤に浸漬した場合に、樹脂Aより溶解速度が速いものである。通常、樹脂Bの溶解速度は、樹脂Aより10倍以上速いことが好ましく、より好ましくは20倍以上であり、更に好ましくは30倍以上である。ここで、溶剤は、アルカリ溶液が好適に挙げられる。具体的には、1〜5質量%のNaOH水溶液などが好適に挙げられる。
島部の形状としては、外形が丸断面、三角形や四角形などの多角形等の異型断面等が挙げられるが、中でも異型断面とすることが好ましい。異型断面とすることにより、海部を溶解した後の繊維は、肌着に用いた際など、単位当たりの肌との接触面積が増え、冷たさを感じ易くなる。
島部の個数としては、多いものの方が、透け防止性や透撮防止性に優れる傾向がある。また、異型断面の場合、断面が、扁平に近付くほど、透け防止性や透撮防止性に優れる傾向がある。これは、島の個数が多くなったり、断面が扁平に近づくことにより、光の乱反射や遮蔽が起こり、光の透過を遮蔽でき、透け防止性や透撮防止性を向上できるためであると思われる。
尚、島部の個数としては、通常、6以上が好ましく、より好ましくは15以上である。
図1(a)の繊維横断面は、A層からなる複数の島部と、島部を取り囲むB層からなる海部とからなる海島構造である。図1(a)の島部は、丸断面であるが、三角や四角等の多角形等の異型でもよい。島部の個数は、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、さらに好ましくは、8以上である。尚、白色系微粒子等を高濃度に含有させ易い点、繊維物性を保持し易い点から、上限は、100程度が好ましい。
図1(b)及び(d)の繊維横断面は、A層が三角断面の島部、B層がA層を補完する放射状の海部の海島構造である。この図では、島部の断面形状は三角形であるが、四角形等の多角形等の異型であってもよい。図1(b)の海部は、繊維中心部から放射状に伸びた形状であり、繊維表面に露出している。図1(d)の海部は繊維中心部から放射状に伸びた形状であり、海部が島部を覆い、島部は繊維表面に露出していないものである。尚、島部が繊維表面に露出する場合、合成繊維を製造する際にゴデッドロールなどの金属の摩耗を防止する点から、露出率は80%以下が好ましい。このような繊維横断面形状の場合、島部の個数は、3以上が好ましく、上限としては、30程度が好ましい。
図1(c)及び(e)の繊維横断面は、島部は、繊維中心部の丸断面と、外周に近い四角形の断面を有する形状であり、海部は、島部を補完する形状であり、中空形状でかつ放射状に伸びた形状の海島構造である。図1(c)及び(e)の島部の形状は、丸、四角形でなく、三角形、五角形等の多角形や、その他異型断面でもよい。
図1(c)は島部が繊維表面に露出しており、図1(d)は島部が露出していない形状である。尚、島部が繊維表面に露出する場合、合成繊維を製造する際にゴデッドロールなどの金属の摩耗を防止する点から、露出率は80%以下が好ましい。この形状の場合、島部の個数は、3以上が好ましく、上限としては、30程度が好ましい。
これらの中で、接触冷感性、透け防止性及び透撮防止性の点からは、島部の断面が異型である図1(b)、(c)、(d)、(e)が好ましい。これらの形状においては、島部の個数が8以上で、島部の扁平率が高くなるほど性能が良好となる。
A層の扁平率は、接触冷感性、透け防止性、透撮防止性の点から、20〜80%であり、より好ましくは、50〜80%である。
透け防止性及び透撮防止性の点からは、後述する透過率が、400〜1200nmで平均30%以下であることが好ましい。400〜800nmの可視光領域では、透過率が30%を超える条件では、衣服を着用した時、可視光が通り易く、生地が透けてしまう傾向がある。また、水に濡れた場合でも容易に透けてしまう傾向がある。透過率が30%以下であれば、肉眼では、透けを判別しにくくなり、プライバシーを守ることが容易にできる。さらに、800〜1200nmの近赤外領域では、後述する透過率が30%を超える条件では、赤外線カメラにより容易に透撮されてしまい、プライバシーを守ることができないおそれがある。
透過電子顕微鏡(日本電子社製 透過電子顕微鏡 JEM−1230)を用いて写真撮影し、自動画像処理装置(LUZEX AP(ニレコ(株)製)にて体積基準の水平方向等分径を測定し、比重を計算して、重量平均の平均粒子径を求めた。
B.紡糸操業性
紡糸の工程通過性が良好であれば○、工程通過性が若干悪いものを△、製糸不可であれば×とした。
C.筒編地の作製及び溶解処理
合成繊維を2本双糸として、ウェール数が30本/2.54cm、コース数が60本/2.54cmの筒編地を作製した。この筒編地を、2質量%NaOH水溶液を温度98℃、浴比1:50の下で15分間処理し、脱水、風乾し、B層を溶解した。
D.接触冷感性評価
溶解処理後の筒編地が、目付50g/m2になるよう合成繊維を任意の本数を双糸として、ウェール数が30本/2.54cm、コース数が60本/2.54cmの筒編地を作製し、上記溶解処理した布帛をサンプルとした。このサンプルを1重にし、カトーテック(株)製のサーモラボII型測定器を用い、室温23℃、湿度55%RHの部屋で、BT−Boxを33℃に調節し、十分調湿したサンプルの上にBT−Box(圧力10g/cm2)を乗せ、10℃の温度差での単位面積当たりの熱流速を測定し、Q−MAXを算出した。
Q−MAXは、値が高い程、接触冷感性に優れていることを示す。比較例1から得られたサンプルを基準とし、測定対象サンプルと基準サンプルとのQ−MAXの差(基準値との差)を算出した。この基準値との差が高い程、接触冷感性に優れている。
E.透過率
溶解処理後の筒編地が、目付50g/m2となるよう合成繊維を任意の本数の双糸として、ウェール数が30本/2.54cm、コース数が60本/2.54cmの筒編地を作製し、上記溶解処理により得られた布帛(目付50g/m2)を準備した。この布帛を島津自記分光光度計(UV−3101PC/MPC−3100)を用いて、波長領域400〜1200nmの透過率を測定した。
樹脂Aとして、平均粒子径0.3μmの酸化チタンとオキサゾール系蛍光増白剤を400ppm含有した30質量%マスターバッチとホモのポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV:0.670dl/g)を酸化チタン濃度として6質量%となるよう調整し、チップブレンドしたものを準備した。また樹脂Bとして、樹脂AよりNaOH水溶液による溶解速度が速い5−スルホイソフタル酸とポリエチレングリコールを共重合させたポリエチレンテレフタレート(アルカリ易溶PET)を準備した(2質量%NaOH水溶液で樹脂Aより30倍程度溶解速度が速い)。これらの樹脂を用いて、紡糸温度295℃にて丸型の吐出孔を有する海島型の紡糸口金から島部に樹脂A、海部に樹脂Bを押し出し、樹脂Aと樹脂Bの比率を、樹脂A:樹脂B=75:25(面積比)となるように吐出した。引き続き糸条を冷却、給油し、PTR(速度:1080m/min)により糸条に前テンションをかけ、GR1(速度1100m/min、88℃)、GR2(速度3600m/min、135℃)で延伸、熱処理し、延伸糸として巻き取り、繊度167dtex/25fの図1(c)のような、1個が丸断面、8個が四角断面のセグメントからなるA層とB層を複合した、A層のセグメント径が7.2μmの合成繊維(原糸)を得た。
得られた合成繊維を、上記の方法で、筒編地を作製及び溶解処理し、白生地を得た。
原糸の繊度が84dtex/25f、A層のセグメント径が5.1μmとなるように変更した以外は、実施例1と同様に合成繊維を得た。
原糸の繊度が84dtex/24f、繊維横断面の島部の形状が丸断面9個(図1(a))、A層のセグメント径が5.2μmとなるように変更した以外は、実施例1と同様に合成繊維を得た。
原糸の繊度が84dtex/25f、繊維横断面の島部の形状を三角断面8個、A層のセグメント径が5.4μmとなるように変更した以外は、実施例1と同様に合成繊維を得た。
原糸の繊度が56dtex/25f、繊維横断面の島部の形状が丸断面1個、四角断面16個)、A層のセグメント径が3μmとなるように変更した以外は、実施例2と同様に合成繊維を得た。
原糸の繊度が33dtex/24f、繊維横断面の島形状が丸断面の61個、A層のセグメント径が1.3μmとなるように変更した以外は、実施例3と同様に合成繊維を得た。
酸化チタン1.3質量%含むポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV:0.670dl/g)を、紡糸温度295℃にて丸型の吐出孔を有す紡糸口金から吐出した。引き続き糸条を冷却、油剤を付与し、GR1速度1000m/min、90℃で熱処理し、GR2速度3800m/min、135℃で熱処理し、延伸糸を巻き取り、繊度84dtex/48fの合成繊維を得た。
樹脂Aとして、平均粒子径0.3μmの酸化チタンと、蛍光増白剤を400ppm含有した30質量%マスターバッチとホモのポリエチレンテレフタレート(極限粘度IV:0.670dl/g)を酸化チタン濃度として6質量%となるよう調整しチップブレンドしたものを準備した。この樹脂を用いて、紡糸温度295℃にて丸型の吐出孔より吐出した。引き続き糸条を冷却、給油し、PTR(速度:1080m/min)により糸条に前テンションをかけ、GR1(速度1100m/min、88℃)、GR2(速度3600m/min、135℃)で延伸、熱処理し、延伸糸として巻き取り、繊度84dtex/48fの合成繊維を得た。
原糸の繊度が167dtex/28f、繊維横断面の島部の形状が三角断面4個、A層のセグメント径が10.2μmとなるように変更した以外は、実施例4と同様に合成繊維を得た。
原糸の繊度が33dtex/48f、樹脂A:樹脂Bの比率が50:50(面積比)、A層のセグメント径が0.7μmとなるように変更した以外は、実施例6と同様に合成繊維を得た。尚、表中のセグメント径は、溶解後のA層のセグメント径を示す。
また、実施例2、4の島部を異型断面としたものは、島部が丸断面の実施例3のものより、接触冷感性、透け防止性及び透撮防止性に優れていた。
また、実施例2の島部(A層)の扁平率は、25%(長軸a=5.6μm、短軸b=4.2μm)、実施例4の島部(A層)の扁平率は、70%(長軸a=5.2μm、短軸b=1.6μm)であり、実施例2及び4の近赤外領域(800〜1000nm)の平均透過率は、それぞれ23.4%、22.5%、実施例2及び4の平均透過率(400〜1200nm)は、それぞれ22.8%、21.6%である。A層の扁平率が高い程、透け防止性及び透撮防止性が高かった。
酸化チタンの含有量が1.3質量%、A層のセグメント径が12.7μmである比較例1から得られた合成繊維は、接触冷感性、透け防止性、透撮防止性ともに劣ったものとなった。またA層のセグメント径が12.7μmの比較例2から得られた合成繊維は、酸化チタンや蛍光増白剤は実施例2と同量含まれるが、実施例2より、接触冷感性、透け防止性、透撮防止性とも、劣ったものであった。またA層のセグメント径が8μmを超える比較例3から得られた合成繊維は、透け防止性及び透撮防止性に劣るものであった。
尚、実施例7から得られた合成繊維を溶解処理した後の筒編地は、接触冷感性、透け防止性及び透撮防止性には優れるものの、紡糸操業性は劣り、溶解処理後の繊維の糸品位は劣ったものであった。
樹脂Aと樹脂Bの比率を表2の通り変更し、A層のセグメント径を3.7〜5.6μmとなるように変更した以外は実施例2と同様に合成繊維を得た。
繊維横断面の樹脂A(A層)に含まれる酸化チタンの濃度(含有量)を表3の通り変更した以外は、実施例2と同様に合成繊維を得た。
実施例2、12、13から得られた合成繊維は、紡糸操業性も良好であり、後工程通過性も良いものであった。また得られた溶解処理後の筒編地は手触りの良いものとなった。
酸化チタンの含有量が1質量%と少ない比較例4から得られた溶解処理後の筒編地は、接触冷感性、透け防止性及び透撮防止性の劣ったものとなった。
繊維横断面の樹脂A(A層)に含まれる酸化チタンの平均粒子径(粒径)を表3の通り変更した以外は、実施例2と同様に合成繊維を得た。
酸化チタンの平均粒子径が大きい比較例5から得られた合成繊維は、接触冷感性と透け防止性の劣ったものとなった。これは、繊維内の存在する粒子の個数が実施例2や15に比べ少ないため、光の透過が大きくなることや、酸化チタン同士での伝熱パスが少なくなることにより、基準サンプルとのQ−MAXの差が大きくならなかったことと推測される。また、紡糸操業性も不良であった。
経糸及び緯糸に実施例2から得られた合成繊維(アルカリ減量後の混率57%)と84dtex/12fポリエステルセミダル糸とを製織して平織物を作製した。この平織物をNaOH水溶液により減量し、マイクロファイバー布帛を得た(目付:131g/m2)。また比較サンプルとして、実施例2の合成繊維を66dtex/24fのポリエステルセミダル糸に変更し、上記と同様に平織物を作製し、精練を行い、比較サンプル布帛を得た(135g/m2)。布帛のQ−MAX値(温度差10℃にて測定)は、マイクロファイバー布帛が0.160W/cm2、比較サンプル布帛が0.105W/cm2であり、マイクロファイバー布帛と比較サンプル布帛とのQ−MAX値の差は、0.055W/cm2であり、接触冷感性に優れたものであった。また平均透過率(測定波長400〜1200nm)は、マイクロファイバー布帛が32.2%、比較サンプル布帛が22.3%であり、本発明の合成繊維から得られたマイクロファイバー布帛は、透け防止性及び透撮防止性に優れた布帛であった。
B 樹脂B(B層):易溶解ポリエステル
Claims (4)
- 繊維横断面において、樹脂AのセグメントからなるA層と、樹脂BのセグメントからなるB層とからなる合成繊維であって、樹脂Aは平均粒子径が1μm以下の白色系無機微粒子を2質量%以上含むポリエチレンテレフタレートからなり、樹脂Bは樹脂Aより溶解速度が速い易溶解ポリエステルからなり、樹脂Aのセグメント径は8μm以下である合成繊維。
- 繊維横断面において、A層とB層との面積比率は50:50〜85:15である請求項1記載の合成繊維。
- 白色系無機微粒子が、酸化チタンである請求項1または2記載の合成繊維。
- 樹脂Aが、蛍光増白剤を含む請求項1〜3いずれか1項に記載の合成繊維。
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