JP2016194445A - トロンビン・アンチトロンビン複合体の測定試薬及び測定方法 - Google Patents

トロンビン・アンチトロンビン複合体の測定試薬及び測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ラテックス免疫凝集法を用いた、血液等の生体試料中のTATを高感度かつ特異的に定量するための試薬および方法を提供すること。【解決手段】トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)測定試薬であって、ラテックス粒子に結合した、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する抗TAT抗体、および、ラテックス粒子に結合した、トロンビン側に結合してTATを認識する抗TAT抗体を含み、測定時のpHが5.8〜6.6となるように構成されていることを特徴とする、TAT測定試薬。【選択図】図7

Description

本発明は、生体試料中のトロンビン(T)・アンチトロンビン(AT)複合体(TAT)を測定する試薬および方法に関する。
トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)は血液凝固が進行するときに血液中に産生されるタンパク質複合体で、血液中のTATの定量は播種性血管内凝固症候群(DIC)等の血栓症などの診断にとって有用である。現在主流のTAT定量法は、シーメンス社のエンザイグノスト(登録商標)TAT micro等の酵素免疫測定法(ELISA)を用いる試薬キット、およびLSIメディエンス社のステイシア(登録商標) CLEIA
TAT等の化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を用いる試薬キットがあるが、いずれも固相・液相分離(B/F分離)が必要な測定法で、煩雑な洗浄作業が要り、手作業あるいは専用機器が必要であり、測定感度などの点でも改善の余地がある。
特許文献1〜5には、ELISAやラテックス免疫凝集法によってTATを測定する方法が報告されているが、いずれも実検体中のTATを定量するには不十分であり、実検体中のTATを定量するために測定反応時のpHの測定結果に対する影響について検討した例はなく、これまでに、ラテックス免疫凝集法によりTATを測定する際に、反応を酸性側のpHで行った例はない。
特開2001−289850号公報 特開平7−238099号公報 特開2002−316999号公報 特開平3−48158号公報 特開2001−228153号公報
本発明は、B/F分離や洗浄作業を必須としないラテックス凝集法を用いた、生体試料中のTATの測定試薬および測定方法を提供することを課題とする。
TATの測定については、DIC診断基準の感度・特異度の向上の観点から、また、TAT測定値が正常であればDICは否定的とする除外診断用としての使用可能性の観点から、その臨床的有用性が認められている。しかし、現在は煩雑な手技を必要とするELISA法や専用機器を必要とするCLEIA法が主流であることが、測定の普及が遅れている原因ともされている。
従って、測定が簡便なラテックス凝集法において、高感度・高精度に生体試料中のTATを測定する試薬及び方法が求められていた。
また、その臨床的意義を考慮した場合、CLEIA法と同等の数ナノグラム単位で測定できる検出感度が必要であるが、CLEIA法と同等の感度をラテックス凝集法で達成することは、使用する粒子の特性などその測定原理から考えて、非常に困難な課題である。
また、ラテックス凝集法ではELISA法やCLEIA法等のように、洗浄等によるB/F分離の工程を含まないため、遊離アンチトロンビン等、本来目的とする測定対象物質以外との交差反応性を克服することが、試薬や測定法の構築をする際の課題である。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、ラテックス免疫凝集法を用いた生体試料中のTATの測定法において、凝集反応を弱酸性の条件で行うことで、生体試料中のTATを高感度かつ特異的に測定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1] トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)測定試薬であって、
ラテックス粒子に結合した、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する第1の抗体、および
ラテックス粒子に結合した、トロンビン側に結合してTATを認識する第2の抗体を含み、
測定時のpHが5.8〜6.6となるように構成されていることを特徴とする、TAT測定試薬。
[2] 前記第1の抗体が結合したラテックス粒子および前記第2の抗体が結合したラテックス粒子を含む第1試薬、ならびに、
pHが5.8〜6.6の緩衝液を含む第2試薬を含む、[1]に記載のTAT測定試薬。
[3] 生体から分離された試料中に存在する試料中のTATを測定する方法であって、[
1]または[2]に記載のTAT測定試薬を用いてラテックス免疫凝集反応をpHが5.8
〜6.6の条件で行うことによりTATを測定することを特徴とする方法。
本発明によれば、反応時のpHを弱酸性に保つことで、感度、特異性ともに高性能の試薬の調製が可能である。pHが高くなると、生食ブランク・血漿ブランク・TAT反応性がpH依存的に下がる傾向が見出された。pHが中性よりも高いと反応性が落ちるというのは、本発明者らが見出した意外な効果であった。従って、反応時のpHを弱酸性域にすることで、高い反応性を持ち、特異性の高い試薬の提供が可能となった。
ラテックス凝集法によるTAT測定方法の模式図。 間接阻害ELISA法による反応系の模式図。 間接阻害ELISA法によるクローンTAT−5の各抗原への結合性を評価した結果を示す図。 各抗体を結合させたラテックス試薬によるTATへの反応性の評価結果を示す図。 各抗体を結合させたラテックス試薬による遊離アンチトロンビンへの交差反応性の評価結果を示す図。 pHを6.0〜7.2の間で変化させた場合のベースの吸光度の変化を示す図。 pHを6.0〜7.2の間で変化させた場合の血漿ベースを差し引いたTAT反応性への影響を示す図。 pHを5.7〜6.2の間で変化させた場合のベースの吸光度の変化を示す図(第1試薬の緩衝液をBis−Trisにした場合)。 pHを5.7〜6.2の間で変化させた場合のベースの吸光度の変化を示す図(第1試薬の緩衝液をMESにした場合)。 本発明の試薬を用いて臨床検体を評価した測定結果と、CLEIA法を用いて臨床検体を評価した測定結果の相関を示す図。
以下に、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する抗体を第1抗体、トロンビン
側に結合してTATを認識する抗体を第2抗体として構成する、TAT測定試薬の一例を、実施の一態様として記載するが、本願発明の範囲はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のTAT測定試薬は、トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)測定試薬であって、ラテックス粒子に結合した、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する第1抗体、および、ラテックス粒子に結合した、トロンビン側に結合してTATを認識する第2抗体を含み、測定時のpHが5.8〜6.6となるように構成されていることを特徴とする。ラテックス粒子に結合させる抗体は、2種類の粒子にそれぞれ2種類の抗体を結合させてもよいし、1種類の粒子に複数種類の抗体を結合させてもよいし、1種類の抗体を複数種類の粒子に結合させたものを混合して使用することもできる。
第1抗体としては、アンチトロンビン側に結合してTATを認識することができる抗体を使用する。
該抗体を調製するにあたっては、ヒト以外の動物に対して、遊離アンチトロンビンを免疫したものであっても、TATを免疫したものであってもよく、アンチトロンビン側に結合してTATを認識することができる抗体であれば、本発明に使用することができる。
ここで、本願発明においてアンチトロンビン側に結合するとは、試料中に最も多く存在している遊離した状態のアンチトロンビンが、遊離トロンビンと結合して複合体(TAT)を形成している状態のアンチトロンビンに結合することを意味する。従って、複合体を形成した時の構造を有するアンチトロンビンを複合体型構造アンチトロンビン、複合体を形成していない時の構造を有するアンチトロンビンを遊離型構造アンチトロンビン(遊離アンチトロンビン)と称した場合、アンチトロンビン側に結合するとは、複合体型構造アンチトロンビンに結合することを意味する。
遊離型構造アンチトロンビンは、複合体型構造アンチトロンビンと異なる構造を有する。それは、遊離型構造アンチトロンビンは、遊離トロンビンと結合して複合体を形成することによってその構造が変化した状態で存在するためである。
第2抗体としては、トロンビン側に結合してTATを認識することができる抗体であればよく、トロンビンに対して特異的に反応する抗体を使用することができる。試料中において、遊離トロンビンはほとんど存在しないため、遊離トロンビンに対して交差反応性を有する抗体であっても利用できることが多い。当業者であれば、適宜選択して使用することができる。
該抗体を調製するにあたっては、ヒト以外の動物に対して、遊離トロンビンを免疫したものであっても、TATを免疫したものであってもよく、トロンビン側に結合してTATを認識することができる抗体であれば、本発明に使用することができる。
ここで、本願発明においてトロンビン側に結合するとは、試料中に存在している遊離した状態のトロンビンが、アンチトロンビンに結合して複合体(TAT)を形成している状態のトロンビンに結合することを意味する。従って、複合体を形成した時の構造を有するトロンビンを複合体型構造トロンビン、複合体を形成していない時の構造を有するトロンビンを遊離型構造トロンビンと称した場合、トロンビン側に結合するとは、複合体型構造トロンビンに結合することを意味する。
遊離型構造トロンビンは、複合体型構造トロンビンと異なる構造を有する可能性が考えられる。それは、遊離型構造トロンビンは、アンチトロンビンと結合して複合体を形成することによってその構造が変化した状態で存在することによる。
上記の第1抗体及び第2抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれも使用することができる。これらの抗体は、当業者であれば、公知の手法に従って取得することができる。
抗体作製用に免疫原を免疫する動物としては、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット等が使用可能であり、特にポリクローナル抗体作製にはウサギ、ヤギなどが好まし
い。また、ハイブリドーマ細胞を作製する公知の方法によりモノクローナル抗体を得ることも可能であり、この場合はマウス、ラット或いはウサギ等が好ましい。
免疫原としては、上述したように、TATを使用してもよいし、ビトロネクチンが結合したVTATを免疫原として作製した抗体を本願発明の使用することもできる。また、第1抗体の場合はアンチトロンビンを、第2抗体の場合にはトロンビンを使用してもよい。
これらの免疫原は、生体から採取された試料を原料として精製されたTATを使用してもよいし、遊離トロンビンと遊離アンチトロンビンを混合してinvitroで合成したTATを使用してもよい。合成TATとしては、例えば、生物製剤として入手可能なトロンビンとアンチトロンビンを試験管内でインキュベートして得られるTATでもよいし、大腸菌や哺乳動物細胞、バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞等、既知の翻訳発現系を使用して発現させたものを回収して精製したものを免疫原として使用してもよい。
また、立体構造の違いを部分的なペプチドのみで免疫させることが可能である場合、具体的に抗体の結合部位を特定して抗体を作製したい場合には第1抗体の場合はアンチトロンビン、第2抗体の場合はトロンビンの部分ペプチドを用いて作製することもできる。その場合の抗原としてのペプチド配列の選択やペプチド断片の合成方法、免疫方法は既知の方法を使用することができる。
図1を参照して、ラテックス凝集法による測定方法を説明する。図1に示すように、TATのアンチトロンビン側に第1抗体が結合し、TATのトロンビン側に第2抗体が結合した場合に、ラテックス凝集が起こり、その時の吸光度の値に基づいてTAT濃度の測定ができる。
第1抗体は、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する抗TAT抗体であればよいが、血中でのTATの存在量が遊離アンチトロンビンの存在量と比べてごく微量なので、遊離アンチトロンビンとの交差反応性が小さい抗TAT抗体を用いることが好ましい。
第1抗体として使用し得る、遊離アンチトロンビンとの交差反応性が小さい抗TAT抗体としては、TATに対する反応性が遊離アンチトロンビンに対する反応性の100倍以上である抗TAT抗体が挙げられる。第1抗体のTATに対する反応性は遊離アンチトロンビンに対する反応性より少なくとも100倍以上であればよく、1,000倍以上であることが好ましく、10,000倍以上であることがより好ましい。交差反応性は少ないほどよいので上限は特にないが、例えば、100,000倍未満、または50,000倍未満であってもよい。
生体内におけるTATとTATを形成していない遊離アンチトロンビンの存在割合は健常人の測定値幅を参考として1:60,000〜1:110,000の間と考えられるが、一般的には約1:100,000で存在していると考えられる。また、敗血症や肝疾患患者においてその存在割合が変化する場合が知られているが、遊離アンチトロンビン量が少なくなる場合でも1:50,000程度であるとされている。従って、第1抗体が遊離アンチトロンビンにも反応性を示すとTATの定量が困難になる。そこで、TATを定量するには、遊離アンチトロンビンへの反応性が低い抗体を使用する必要があり、TATに対する反応性は、計算上、遊離アンチトロンビンへの反応性の50,000〜100,000倍以上であることが必要と考えられるところ、以下の実施例において示すように、本発明では、TATに対する反応性が遊離アンチトロンビンに対する反応性の100倍以上であれば、その抗体を第1抗体として用いることで、TATの定量が十分可能であることを見出した。
本発明において、「TATに対する反応性が遊離アンチトロンビンに対する反応性の100倍以上」とは、各抗原に対する親和性の比が100倍以上である場合や、後述の、間接阻害ELISAで評価したときの、一定割合の阻害率を示すのに必要な抗原量の比が1
00倍以上である場合などが挙げられる。
TATに対する反応性が、遊離アンチトロンビンに対する反応性の100倍以上である抗TAT抗体を間接阻害ELISAで評価またはスクリーニングする場合について説明する。
まず、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する抗TAT抗体(第1抗体の候補抗体)を用意する。このような抗体は、後述のハイブリドーマによるモノクローナル抗体産生法等により抗TAT抗体を得たのち、結合部位がアンチトロンビン側である、TATを認識する抗体を選択すればよい。もちろん、あらかじめ、結合部位がアンチトロンビン側である抗TAT抗体が存在する場合はそれを以下の評価系に供すればよい。
すなわち、候補抗体と一定量(例えば、0.1、0.5、1、5、10、50μg/mL)のTAT、又はTATの反応を阻害し得る抗原を含む溶液とを十分な時間(例えば、12時間)反応させる。次いで、前記反応液をTATを固定化した基材と一定時間反応させる。その後、洗浄操作を行った後、標識2次抗体を用いて基材上のTATに結合した抗体の量(抗体残存率)を測定する。
例えば、まず、該抗体の反応を阻害する抗原が存在しない条件で、一定量のTATをプレート等の基材に固相する。基材に固相する抗原(TAT)の量は、当業者であれば、使用する抗原の分注量と評価対象の抗体の種類との関係を考慮して、適宜設定することができる。
該抗体の反応を阻害する抗原が存在しない条件で、各濃度(例えば0.04〜1μg/mL)の上記第1抗体の候補抗体を、上記TATを固定化した基材と一定時間反応させる。その後、洗浄操作を行った後、標識2次抗体(抗マウスIgG−HRP)を用いて、基材上のTATに結合した抗体の量を測定する。吸光度が1.0付近(表1の記載方法だと1000)となる抗体濃度を決定する。この抗体濃度を、抗原による阻害時の抗体濃度とすることができる(表3;反応時濃度(μg/mL))。
次に上記方法で決定した濃度の候補抗体と一定量(例えば、0.1、0.5、1、5、10、50μg/mL)のTATまたは遊離アンチトロンビンを含む溶液とを十分な時間(例えば、12時間)反応させる。次いで、前記反応液をTATを固定化した基材と一定時間反応させる。その後、洗浄操作を行った後、標識2次抗体(抗マウスIgG−HRP)を用いて基材上のTATに結合した抗体の量(抗体残存率)を測定する。
なお、抗体残存率は、抗原による吸収が未実施の時に得られる検出値を100%として算出できる。
抗体の遊離アンチトロンビンに対する反応性が高い場合はTATに結合できる抗体の量が減るため、標識2次抗体によって検出される抗体の量が少なくなり(抗体残存率が低くなり)、一方、抗体が遊離アンチトロンビンに対する反応性が低い場合はTATに結合できる抗体が多く残るため、標識2次抗体によって検出される抗体の量が多くなる(抗体残存率が高くなる)。
この抗体残存率を、最初にTATと抗体とを反応させた(阻害反応をTATで行った)後に、反応液を固体化TATと反応させたときの抗体残存率と比較する。
そして、例えば、遊離アンチトロンビンを50μg/mL加えて阻害反応させたときの抗体残存率が50%であった場合、同じ抗体残存率を示すのに必要なTATの量を上記のTATで阻害したときの結果から算出する。TATで阻害したときに、抗体残存率50%を達成するのに必要なTAT阻害抗原の量が0.50μg/mL未満であれば、TATに対する反応性が遊離アンチトロンビンに対する反応性の100倍以上とすることができる。
このようにして選択された抗TAT抗体を第1抗体として選択することができる。なお
、第1抗体は、モノクローナル抗体の場合、TATに対する親和性(Kd)が10−8
下であることが好ましいが、当業者であればTATに対する親和性の値を参考としてラテックス試薬に適した抗体の選択を適宜することが可能である。
本発明で使用される抗体はモノクローナル抗体であるが、モノクローナル抗体には、抗体フラグメントが含まれる。前記抗体フラグメントは、所望のモノクローナル抗体のフラグメントであって、しかも、もとのモノクローナル抗体と同じ反応性を有する抗体フラグメントである。本発明で用いることのできる抗体フラグメントには、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFv等が含まれる。これらのフラグメントは、例えば、モ
ノクローナル抗体を常法によりタンパク質分解酵素によって消化し、続いて、タンパク質の分離・精製の常法に従って得ることができる。これらは、そのままラテックス粒子に固相して使用することができるが、Fab’フラグメントやF(ab’)2フラグメントに
調製したものをラテックス粒子に固相することができる。抗体のFcフラグメントに対する非特異反応を回避する観点から、Fab’やF(ab’)2がより好ましい。
本発明で使用する抗体は、まず、ハイブリドーマによるモノクローナル抗体産生法な
どによりTAT抗体(候補抗体)を得て、その後、TAT抗体(候補抗体)の中から、上記のような手法及び基準で、遊離アンチトロンビンとの交差反応性が低い抗体、具体的には、TATに対する反応性が遊離アンチトロンビンに対する反応性の100倍以上である抗体を選択することにより得ることができる。
候補となる抗体は、例えば、公知の細胞融合法で作製されたハイブリドーマによるモノクローナル抗体産生法により得ることができる。抗体産生細胞としては、ヒトを除く動物、例えば、マウス・ラット・モルモット等から選択することができる。ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体の調製は、定法、例えば、続生化学実験講座(日本生化学会編)又は免疫生化学研究法(日本生化学会編)に記載の方法に従って行うことができる。
第2抗体としては、トロンビン側に結合してTATを認識する抗TAT抗体であれば特に制限されない。モノクローナル抗体の場合、TATに対する親和性(Kd)が10−8以下であることが好ましいが、当業者であればTATに対する親和性の値を参考としてラテックス試薬に適した抗体の選択を適宜することが可能である。抗体を選択する方法については、第1抗体と同様にして作製した抗体を使用することができる。
第1抗体と第2抗体の組み合わせはラテックス凝集法においてTATの測定が可能であれば特に制限されないが、血漿などの生体試料中に含まれるマトリクス(バックグラウンド)の影響が最少の抗体組み合わせを選出することが好ましい。
TAT測定試薬に求められる感度は、健常人と患者とを明確に区別できる基準値、或いはその2倍の濃度を測定できることが必要であるため、本発明の試薬は生体試料中の10〜15ng/mLの微量のTATを定量できる試薬であることが好ましく、3〜4ng/mLの微量のTATを定量できる試薬であることがより好ましく、1ng/mL程度の濃度でも定量できる試薬であることがさらに好ましい。
上記の第1抗体および第2抗体を結合させるラテックス粒子はラテックス凝集反応に使用し得るものであれば特に制限されないが、平均粒子径が0.05μm〜0.5μmであることが好ましく、0.2〜0.4μmであることがより好ましい。
使用するラテックス粒子の種類は、1種類のラテックス粒子のみを使用してもよいし、複数種のラテックス粒子を使用してもよい。例えば、粒子径の異なるラテックス粒子を組み合わせて使用することができる。ラテックス粒子は単一粒径で製造することは実質的に困難であることから、粒子全体の平均粒子径として規定される。従って、平均粒子径0.05μm〜0.5μmという場合、当該範囲に含まれないラテックス粒子を含む場合であっても、本発明に該当する場合がある。当業者にとって、粒径が異なるラテックス粒子が
含まれることは常識の範囲内であり、当業者であれば、その粒径の分布に大きく偏りの無い粒子群を含む溶液を使用してラテックス試薬の構築することが可能である。
なお、この平均粒子径は、公知の方法で測定することが可能であり、例えば、透過型電子顕微鏡装置を用いた画像解析により算出される。
本発明に係るラテックス粒子としては、通常この分野で用いられているものであれば特に限定はされないが、例えば、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル系モノマーを重合させてなる単一重合体(例えば、ポリスチレン、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体等)からなる粒子、ブタジエン系共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等)からなる粒子、それ以外の共重合体(例えば、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体等)からなる粒子を挙げられる。官能基としてカルボキシル基、1級アミノ基、カルバモイル基(−CONH2)、水酸基、アルデヒド基等を有し、かつ、基体が上記有機系
微粒子からなる粒子を挙げられる。
ラテックス粒子に抗体を固相する方法としては、公知の方法に準じて行えばよく、例えば、抗体とラテックス粒子とを緩衝液中で懸濁させ、25℃で1時間反応させた後、遠心分離、ブロッキング処理等、通常この分野で行われる処理により得ることができる。また、抗体とラテックス粒子とを化学結合により固相する方法や、ビオチン−アビジン反応により抗体を固相する方法も選択できる。
ラテックス粒子に抗体を結合させる際には、抗体が、上記のTATに対する反応性および特異性を維持できる条件で行う。
好適な試薬の調製が行いやすいことから、第1抗体を固相した第1のラテックス粒子、第2抗体を固相した第2のラテックス粒子として、抗体の種類ごとに固相ラテックス液を調製することもできるし、1種類のラテックス粒子に第1の抗体と第2の抗体を固相させて試薬の調製を行うこともできる。抗体とラテックス粒子をどのように固相させて試薬の調製を行うかは、当業者であれば適宜設計することができる。
本発明の試薬は、1試薬系であってもよいし、2試薬系であってもよい。本発明の試薬が1試薬系である場合は、生体試料に前記抗体を固相したラテックス粒子懸濁液を添加し、pH5.8〜6.6の条件で抗原抗体反応を生じさせることにより、生体試料中のTATを測定することができる。本発明の試薬が2試薬系である場合には、緩衝液成分を主体とした第1試薬を生体試料に添加した後、更に前記抗体を固相したラテックス粒子を含む第2試薬を添加することで、pH5.8〜6.6の条件で抗原抗体反応を生じさせ、生体試料中のTATを測定することができる。
本発明の試薬は、測定(ラテックス凝集反応)時のpHが5.8〜6.6となるように構成されている。1試薬系であれば、試薬のpHが5.8〜6.6に調整されていればよいし、2試薬系であれば、混合したときにpHが5.8〜6.6になるように構成されていればよい。例えば、緩衝液成分を主体とした第1試薬と、抗体を固相したラテックス粒子を含む第2試薬から構成される場合に、第1試薬のpHが5.8〜6.6に調整されており、両試薬を混合したときに、混合液のpHが5.8〜6.6になるような態様が挙げられる。
なお、pHは6.0〜6.4であることが好ましく、6.1〜6.3であることがより好ましく、6.15〜6.25であることがさらに好ましく約6.2であることが特に好ましい。
pHはpH調節剤によって調節されてもよいが、緩衝液により調整されることが好まし
い。緩衝剤としては、pH5.8〜6.6に緩衝能を有する緩衝液であればよいが、トリス緩衝液、ビス−トリス緩衝液、リン酸緩衝液、又はグッド緩衝液などが好適に使用される。また、反応時の緩衝液濃度は10〜500mmol/Lであることが好ましく、20〜200mmol/Lであることがより好ましい。
なお、血液試料を試薬と混合したときのpHが5.8〜6.6から外れる場合は、別途、pH調整剤などで調整されてもよい。
ラテックス粒子の凝集の度合いは、例えば吸光度を用いて測定し、予め求めておいた標準品の検量線からその濃度を求めることにより、検体中のTAT濃度を定量することができる。なお、吸光度の測定波長は、通常は340nm〜1000nm、好ましくは500nm〜900nmで測定すればよい。ラテックス凝集反応を測光する時間は、ラテックス凝集反応が生じている時間を時間当たりの変化速度、あるいは一定時間の変化量によって測光することができる。例えば、吸光度を測定する場合、ラテックス凝集反応が始まってから30秒後から5分後の時間当たりの吸光度変化速度、あるいは一定時間の吸光度変化量によって測光することができる。反応温度は10〜50℃であることが好ましく、20〜40℃であることがより好ましい。反応時間は適宜決定することができ、例えば汎用自動分析機では10〜15分間の反応時間で測定することができる。なお、当業者であれば、光学機器あるいは汎用自動分析機を用いた分析において、公知の方法に従って、反応温度、反応時間、測定波長、測定時間、試薬構成、ラテックス濃度、ラテックス固定化するモノクローナル抗体濃度、各種添加剤濃度を適宜決定することができる。
本発明に用いられるラテックス粒子の濃度は、ラテックス凝集法による免疫学的測定試薬に適用できる濃度であれば特に限定されるものではないが、TATを測定するために必要な反応時のラテックス粒子の濃度は0.005w/v%〜0.2w/v%が好ましく、0.01w/v%〜0.1w/v%であることがより好ましい。
本発明の試薬に適用することのできる被検試料は、TATを含有する可能性のある被検試料である限り、特に限定されるものではないが、生体試料であることが好ましく、培養細胞でもよいが、血清、血漿の測定に特に好適に使用できる。哺乳動物由来の試料であることが好ましく、ヒト由来の試料であることがより好ましい。
本発明の試薬は、抗体を固定化したラテックス粒子や上記の緩衝液以外にも、ラテックス凝集法による免疫学的測定試薬に添加可能な添加剤、例えば、凝集促進剤、非特異反応抑制剤、増感剤などを更に含有することができる。本発明の試薬に添加可能な増感剤としては、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸プロピレングリコールなどが挙げられる。また、本発明の試薬に添加可能な凝集促進剤としては、水溶性高分子やタンパク質が好適に用いられる。例えば、デキストランやデキストラン硫酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子や、ウシ血清アルブミンなどのアルブミン類、γ−グロブリンなどのグロブリン類が挙げられる。
また、第3の抗体を添加して使用することもできる。第3の抗体の使用は、例えば、TAT測定試薬の測定可能範囲を低濃度から高濃度まで広く測定可能としたい場合において、反応速度の異なる抗体を第3の抗体として使用することが好ましく用いられる。
本発明の試薬に添加可能な非特異反応抑制剤としては、非特異反応の原因物質に対する抗体やレセプター、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液又はグッド緩衝液などの緩衝液類、EDTA、CyDTA、DTPA、EGTA、NTA、NTPなどのキレート剤、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの塩類、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシドなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明の試薬は、標準物質として使用し得るTATを含んでもよい。TATは生体から精製されたTATでもよいし、遺伝子組み換えなどで合成されたTATでもよい。合成TATとしては、例えば、生物製剤として入手可能なトロンビンとアンチトロンビンを試験管内でインキュベートして得ることができる。また、大腸菌や哺乳動物細胞、バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞等において、既知の翻訳発現系を使用して発現させたものを回収して精製したものを混合してTATを合成することもできる。
実施例1 合成TATの調製
市販のヒトトロンビン製剤(日本血液製剤機構製)とアンチトロンビン製剤(日本血液製剤機構製)をPBS(ダルベッコPBS(−)粉末「ニッスイ(日水製薬株式会社製)」、を9.6g/Lで溶解)で希釈し、1:3のモル比で混合後、37℃で30分間反応させた。30分後、DFP(フルオロリン酸ジイソプロピル、和光純薬社製)を0.75mMになるように添加し反応を停止した。
得られた反応物には未反応のトロンビン、アンチトロンビンが含まれるため、予め500mMのNaClを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で平衡化した
Hiload 26/60 Superdex 200 HR(GEヘルスケア社製)によって精製した。
TAT画分はSDS−PAGEで確認した後、回収した。得られたTATは0.5%のBSAを含む生理食塩水で希釈し、CLEIA試薬(ステイシア(登録商標) CLEIA
TAT、LSIメディエンス社製)を用いて値付けした。これを合成TATとして使用した。
実施例2 抗TAT抗体の調製
細胞融合法は、安藤民衛・岩崎辰夫/著「単クローン抗体/ハイブリドーマとELISA」(講談社)に従って実施した。
実施例1で調製した合成TAT 50μgをフロインド完全アジュバント(DIFCO
社製)と混合し、投与抗原とした。
BALB/cマウス(メス、4週令)に2週間間隔で3回投与し、4回目の投与は半量の25μgを静注した。
1週間後、脾臓よりリンパ球を分離し、ミエローマ細胞P3x63−Ag.8と混合した後、ポリエチレングリコール(PEG4000、メルク社製)を用いて細胞融合を実施した。
HAT選択培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマを合成TATに対する結合活性を指標にスクリーニングした。すなわち、0.05M炭酸緩衝液(pH9.5)で合成TATをそれぞれ0.2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC社製)に50μL/ウェル添加した。4℃、Over Nightで反応後、0.05% Tween−20を含むPBSで3回洗
浄し、1.0%BSAを含むPBSを各ウェルに100μL添加しブロッキングを行った。
次に、培養上清各ウェルに50μL添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%
Tween−20を含むPBSで3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノ
グロブリン抗体(Dako社製)を、0.05% Tween−20を含むPBSで10
00倍に希釈し、各ウェルに50μL添加した。
37℃、1時間反応後、同様に5回洗浄しo−フェニレンジアミン溶液(和光純薬社製
)を各ウェル50μL添加した。室温で5〜10分間反応後、2N硫酸溶液で反応を停止した。
プレート分光光度計(EL312e、BIO−TEK INSTRUMENTS社製)
で492nmの吸光度を測定した。合成TATとの反応が良好な抗体を産生している細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行った。10日後、スクリーニングを行い、合成TATと反応する抗体を産生するハイブリドーマを取得した。
実施例3 抗トロンビン抗体の調製
実施例2と同様の方法で免疫抗原をトロンビンとして、抗トロンビン抗体を得た。トロンビンに対して特異的に反応する抗体を選択し、このうちの1クローンを抗トロンビン抗体(T−1)として使用した。
実施例4 間接阻害ELISAによる抗体特異性の評価
間接阻害ELISA法によって、各抗体の反応性の評価を行った。間接阻害ELISA法による反応系の模式図を図2に示す。
評価しようとする0.04〜0.4μg/mLの濃度のTATを認識する抗体(抗TAT抗体)候補を阻害抗原(プロトロンビン(エンザイムリサーチ社製)、トロンビン、アンチトロンビン、合成TAT)と混合し、インキュベートした。一部阻害された該抗体候補を一次抗体として、96ウェルプレートに固相化した合成TATと結合させた。さらにペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(Dako社製)を二次抗体として結合させ、発色基質を添加し吸光度を測定した。また、発色の変化率から、抗体の残存率を計算した。
特定の抗体(TAT−5)について、各阻害抗原を用いた時の吸光度を表1に、吸光度から計算された抗体の残存率を表2に示した。
例えば、TATの阻害抗原濃度が10μg/mLの時の残存率は、285/1066×100=26.7(%)となる。各抗体の各抗原濃度について残存率を算出した。なお、表中において、Pro−Tはプロトロンビンを、Tはトロンビンを、ATはアンチトロンビンを示す。
また、アンチトロンビン 50 μg/mLで阻害をかけた時の残存率と同等の阻害率となるTAT抗原量を算出し比較することで、アンチトロンビンに対するTATの反応性差(倍率)を求めた。この違いが大きければ、アンチトロンビンと比較しTATに対する特異性が強いこと意味する。計算はTATの阻害曲線(阻害抗原添加濃度対数-残存率%)
を描き、スプライン関数を用いておこなった。
例えば、TAT−5の場合、アンチトロンビン 50 μg/mLの残存率は、74.0%でありその残存率と同様となるTAT抗原量は1.144 μg/mLである。すなわ
ち、反応性の差は50/1.144=44倍となる。(図3)。
その他、抗体クローン27種類について上記倍率の計算を行った。添加TATとアンチトロンビンの量の違い(倍率)が100倍以上となる抗体は13種類、1000倍以上となる抗体は7種類、10000倍以上となる抗体は2種類存在した。5種類の抗体につい
て、表3に示す。
実施例5 ラテックス凝集法試薬によるTAT反応性の評価
実施例4の間接阻害ELISAで評価したアンチトロンビン側抗体(TAT−1、TAT−2、TAT−3、TAT−4、TAT−5)および実施例3で得たトロンビン側抗体(T−1)をラテックス粒子に感作してその反応性を評価した。
抗体のラテックス粒子への感作はそれぞれの抗体を0.32μmのポリスチレンラテックス粒子に吸着させ、0.3% BSA溶液でブロッキング処理をしたのち遠心処理により0.05% アジ化ナトリウム(キシダ化学社製)溶液で洗浄後、再度0.05% アジ
化ナトリウム溶液に分散させて行った。
上記で作製した抗体を感作したラテックス粒子を含む試薬を調製し、TATに対する反応性を評価した。使用した試薬の組成は、以下の通りである。第1試薬には、100mM
Bis−tris(同仁化学社製) pH6.0、500mM NaCl、0.15% BSAを使用した。第2試薬には、各抗体感作粒子が波長700nmにおける吸光度が1.0になるように0.05%アジ化ナトリウム溶液で希釈し混合したものを使用した。
血清中には多量のTATが含まれるため、これを0.5%のBSAを含む生理食塩水で希釈しCLEIA試薬で値付けをしたものを血清TATとして使用した。測定用試料としては、値付けされた血清TATをプール血漿(VITRO LOGIC社製)でTAT濃度が1000ng/mLになるように希釈したものを使用した。
測定機器としては7170S(日立ハイテクノロジーズ社製)を使用した。測定用パラメータは、サンプル量12μL、第1試薬90μL、第2試薬90μL、主波長570nm、副波長800nmに設定し、測光ポイント34ポイント目の吸光度から20ポイント目の吸光度を差し引き10000倍したものをΔAbsとして測定を実施した。
結果を図4に示す。表3で示した5種類の抗体はいずれも、TAT無添加に対してTAT 1000ng/mLの反応性がΔAbsで100以上であった。
表3におけるTAT−1、TAT−2、TAT−3は、ラテックス凝集法で高い反応性が確認できた。また、TAT−4、TAT−5の抗体についても、前記TAT−1、TAT−2、TAT−3より小さいものの反応性が確認された。
実施例6 ラテックス凝集法試薬によるアンチトロンビンとの交差反応性評価
調製した試薬のアンチトロンビンとの交差反応性を実施例5に記載のヒト血清を0.5%BSAを含む生理食塩水で1000ng/mLに希釈したサンプル中に更にアンチトロンビンを250、500μg/mLになるように添加したサンプルを用いて評価した。
アンチトロンビン無添加のときの反応性と各濃度のアンチトロンビンを添加した時の反応性を比較した。
測定用試薬、測定機器、測定パラメータはいずれも実施例4と同様にして実施した。評価に使用した抗TAT抗体の種類は、TAT−1、TAT−2、TAT−3、TAT−4、TAT−5である。
ラテックス試薬によるアンチトロンビンへの交差反応性の評価結果を図5に示す。実施例4の間接阻害ELISAで100倍以上の特異性が得られた抗体(TAT−1、TAT−2、TAT−3)はアンチトロンビン濃度500μg/mL添加でも70%以上の反応
性を保持していた。一方、100倍以下の抗体(TAT−4、TAT−5)についてはアンチトロンビン濃度の増加に伴い、いずれも極端な反応性低下が認められた(図5)。
実施例5のラテックス凝集反応系において反応性が確認された各抗体について、ELISA法によって交差反応性を確認した結果、TAT−1、TAT−2、TAT−3の各抗体ではラテックス凝集の両反応系において高い特異性が認められたのに対し、TAT−4、TAT−5の各抗体はラテックス凝集法で反応性は見られるものの、特異性が十分ではないことが明らかとなった。
従って、実施例4の間接阻害ELISAによって確認した抗体の反応性の差が100倍以上の時に、それらの抗体は試薬としての使用に非常に有用であることが認められた。
実施例7 第1試薬pHの影響
ラテックス試薬のpHによる反応性への影響を、pH5.7〜7.2の間で変えて評価した。
試薬組成としては、第1試薬として100mM Bis−trisまたはMES(同仁化学社製)、700mM NaCl、0.15% BSA、0.20% アルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)、0.05% エマルゲン150(花王社製)、第2試薬としてアンチトロンビン側抗体にはTAT−1、トロンビン側抗体にはT−1を使用し、各抗体感作粒子が700nmにおける吸光度が1.0になるように0.05%アジ化ナトリウム
溶液で希釈し混合した。ラテックス粒子への抗体感作は、粒径0.20μmの粒子を用いたこと以外は実施例5と同様に実施した。
測定対象サンプルの調製は、0.5% BSAを含む生理食塩水(Salineと表記
)、ヒトプール血漿(Plasmaと表記)を使用した。また、CLEIA試薬によって値付けされたヒト血清を、上記プール血漿で各濃度(10、50、100ng/mL)に希釈したものを、TATサンプルとした。測定機器、パラメータは実施例4と同様にしておこなった。
第1試薬の緩衝液としてBis−trisを使用し、pHを6.0〜7.2の間で変化させた場合の反応性への影響は、以下のような傾向がみられた。まず、pH6.7でSaline Baseが0以下となった(図6)。血漿ベースを差し引いたTAT反応性へ
の影響はpHが高くなると徐々に反応性が下がる傾向が見られた(図7)。
高感度にTATを測定できる試薬性能を目指して、TAT濃度が50ng/mLの時のシグナル(ΔAbs)100以上を1つの指標とすることとし、その場合、反応液中におけるpHは6.6以下が好ましいことが分かった(図7)。
更に、ブランクの抑制と反応性の両立を目指し、pH5.7〜6.2におけるブランク値への影響を調べた。その結果、ブランクの吸光度はBis−tris、MESいずれの緩衝液を用いた場合もpHが上昇すると低くなる傾向が見られた。特に、pH5.7から5.8の間での低下が大きく、pH6.0からpH6.2の間で吸光度が100以下となることが判明した(図8、9)。
pHが高くなると、Salineブランク・Plasmaブランク・TAT反応性がpH依存的に下がる傾向が見出された。pHが中性よりも高いと反応性が落ちるというのは、本発明者らが見出した、意外な効果であった。
以上より、ブランク抑制の観点からはpHの下限が5.8で、pH6.2が特に好ましく、反応性維持の観点から、pHの上限が6.6で、6.2が特に好ましいことが分かった。
実施例8 臨床検体を用いた相関試験
臨床検体を使用して、本発明のTAT測定ラテックス試薬が、血中のTAT濃度測定に使用することができるか検証した。
試薬組成は以下の通り調製したものを使用した。100mM Bis−tris pH6.2、700mM NaCl、0.05% エマルゲン150、0.20% アルギン酸ナトリウム、0.15% BSAを第1試薬とした。第2試薬には実施例7と同様のものを使用した。
対照試薬には、CLEIA試薬を用いて測定した。標準品には、TATキャリブレーター(LSIメディエンス社製)をラテックス試薬、CLEIA試薬ともに使用した。
使用検体は、クエン酸血漿20検体を使用した。測定機器、パラメータはいずれも実施例4と同様にして測定した。CLEIA試薬の測定機器はSTACIA(LSIメディエンス社製)を使用し、添付文書記載のパラメータに準じて測定を実施した。
両試薬によって測定された結果について図10に示した。
本発明によるラテックス試薬は、3ng/mL〜120ng/mLの範囲で、臨床検体でも従来のCLEIA試薬による測定試薬と良好な相関性を示した。本発明を用いればB/F分離などの処理を行うことなく、高感度に臨床検体での測定が可能である。

Claims (3)

  1. トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)測定試薬であって、
    ラテックス粒子に結合した、アンチトロンビン側に結合してTATを認識する第1の抗体、および
    ラテックス粒子に結合した、トロンビン側に結合してTATを認識する第2の抗体を含み、
    測定時のpHが5.8〜6.6となるように構成されていることを特徴とする、TAT測定試薬。
  2. 前記第1の抗体が結合したラテックス粒子および前記第2の抗体が結合したラテックス粒子を含む第1試薬、ならびに、
    pHが5.8〜6.6の緩衝液を含む第2試薬を含む、請求項1に記載のTAT測定試薬。
  3. 生体から分離された試料中に存在する試料中のTATを測定する方法であって、請求項1または2に記載のTAT測定試薬を用いてラテックス免疫凝集反応をpHが5.8〜6.6の条件で行うことによりTATを測定することを特徴とする方法。
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