JP2016193685A - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】第1モータに異常が発生してエンジンの運転を停止させる際における振動の発生を抑制する。【解決手段】第1モータに異常が生じて第1モータの制御を停止したときには、アップシフトするよう有段変速機を制御し(ステップS120)、エンジンにおける燃料の供給が停止されるようエンジンを制御し(ステップS130)、その後、モータ走行で走行するよう第2モータを制御する(ステップS150)。これにより、振動の発生を抑制することができる。【選択図】図5
Description
本発明は、ハイブリッド車両に関し、詳しくは、走行用の動力を出力可能なエンジンと、動力を入出力可能な第1モータと、エンジンの出力軸と第1モータの回転軸と中間軸とに3つの回転要素が接続されたプラネタリギヤと、中間軸に動力を入出力可能な第2モータと、中間軸と車軸に連結された駆動軸とに接続された変速機と、を備えるハイブリッド車両に関する。
従来、この種のハイブリッド車両としては、エンジンと、第1モータジェネレータと、エンジンと第1モータジェネレータと駆動軸とに接続されエンジンからの駆動力を第1モータジェネレータと駆動軸とに伝達する動力分割機構と、駆動軸に動力を入出力する第2モータジェネレータと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両では、第1モータジェネレータの異常が検出されたときには、第1モータジェネレータの制御とエンジンの運転とを停止して第2モータジェネレータからの動力で走行する退避走行を行なう。これにより、車両を他の車両や歩行者の妨げにならない場所まで移動させることができる。
ところで、動力分割機構と駆動軸との間に変速機を備えるハイブリッド車両において、第1モータジェネレータの異常が検出されて退避走行を行なう際に、振動が発生する場合がある。第1モータジェネレータに異常が検出されて第1モータジェネレータの制御を停止させると、第1モータジェネレータによりエンジンの回転数を引き下げることができなくなる。そのため、エンジンの回転数を下げるためには、エンジンへの燃料供給を停止した後にエンジンの回転が徐々に低下して回転が停止するのを待つことになるが、このとき、エンジンの回転数が共振帯付近に滞留し、振動が生じることがある。
本発明のハイブリッド車両は、第1モータに異常が発生してエンジンの運転を停止させる際における振動の発生を抑制することを主目的とする。
本発明のハイブリッド車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のハイブリッド車両は、
エンジンと、動力を入出力可能な第1モータと、前記エンジンの出力軸と前記第1モータの回転軸と中間軸とにキャリヤとサンギヤとリングギヤとがこの順に接続されたプラネタリギヤと、前記中間軸に動力を入出力可能な第2モータと、前記中間軸と車軸に連結された駆動軸とに接続された変速機と、を備えるハイブリッド車両であって、
前記第1モータが駆動できない異常が生じて前記第1モータの制御を停止したときには、アップシフトするよう前記変速機を制御し、前記エンジンにおける燃料の供給が停止されるよう前記エンジンを制御し、その後、前記第2モータからの動力だけで走行するよう前記第2モータを制御する制御手段、
を備えることを要旨とする。
エンジンと、動力を入出力可能な第1モータと、前記エンジンの出力軸と前記第1モータの回転軸と中間軸とにキャリヤとサンギヤとリングギヤとがこの順に接続されたプラネタリギヤと、前記中間軸に動力を入出力可能な第2モータと、前記中間軸と車軸に連結された駆動軸とに接続された変速機と、を備えるハイブリッド車両であって、
前記第1モータが駆動できない異常が生じて前記第1モータの制御を停止したときには、アップシフトするよう前記変速機を制御し、前記エンジンにおける燃料の供給が停止されるよう前記エンジンを制御し、その後、前記第2モータからの動力だけで走行するよう前記第2モータを制御する制御手段、
を備えることを要旨とする。
この本発明のハイブリッド車両では、第1モータが駆動できない異常が生じて第1モータの制御を停止したときには、アップシフトするよう変速機を制御し、エンジンにおける燃料の供給が停止されるようエンジンを制御し、その後、第2モータからの動力だけで走行するよう第2モータを制御する。第1モータが駆動できない異常が生じて第1モータの制御を停止したときに、エンジンにおける燃料の供給が停止されるようエンジンを制御すると、エンジンの回転数が共振帯に滞留して、中間軸にエンジンの脈動トルクが伝達される場合がある。この脈動トルクは変速機によって変速比に応じたトルクに変換されて駆動軸に伝達される。そのため、アップシフトするよう変速機を制御し、エンジンにおける燃料の供給が停止されるようエンジンを制御することにより、変速機をアップシフトせずにエンジンにおける燃料供給を停止するものと比較すると、駆動軸に伝達される脈動トルクをより小さくすることができる。これにより、振動の発生を抑制することができる。
こうした本発明のハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記変速機をアップシフトする際には、前記変速機の変速比が変更可能な変速比のうち最も低い変速比として予め定められた所定変速比となるよう前記変速機を制御するものとしてもよい。こうすれば、第1モータに異常が発生してエンジンの運転を停止させる際における振動の発生をより抑制することができる。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、有段変速機60と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70と、を備える。
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する4気筒の内燃機関として構成されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24によって運転制御されている。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートから入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。エンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ23からのクランク角θcr。スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットル開度TH。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための種々の制御信号が出力ポートを介して出力されている。種々の制御信号としては、以下のものを挙げることができる。燃料噴射弁への制御信号。スロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの制御信号。イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。このエンジンECU24は、HVECU70からの制御信号によってエンジン22を運転制御する。また、エンジンECU24は、必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ23からのクランク角θcrに基づいて、クランクシャフト26の回転数、即 ち、エンジン22の回転数Neを演算している。
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、中間軸32と、モータMG2の回転子と、が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、エンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されている。このモータMG1は、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されている。このモータMG2は、上述したように、回転子が中間軸32に接続されている。インバータ41,42は、バッテリ50と共に電力ライン54に接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2。モータMG1,MG2の各相に流れる電流を検出する電流センサからの相電流。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。このモータECU40は、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御する。また、モータECU40は、必要に応じてモータMG1,MG2の駆動状態に関するデータをHVECU70に出力する。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されている。このバッテリ50は、上述したように、インバータ41,42と共に電力ライン54に接続されている。バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。バッテリ50の端子間に設置された電圧センサからの電池電圧Vb。バッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサからの電池電流Ib。バッテリ50に取り付けられた温度センサからの電池温度Tb。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。このバッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータをHVECU70に出力する。バッテリECU52は、電流センサからの電池電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。また、バッテリECU52は、演算した蓄電割合SOCと、温度センサからの電池温度Tbと、に基づいて入出力制限Win,Woutを演算している。入出力制限Win,Woutは、バッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である。
有段変速機60は、中間軸32(有段変速機60の入力軸)の動力を4段に変速してデファレンシャルギヤ37を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36(有段変速機60の出力軸)に伝達すると共に中間軸32と駆動軸36との間の動力の伝達を解除する4段変速式の変速機として構成されており、図2に示すように、シングルピニオン式の3つのプラネタリギヤ62,63,64と、複数の係合要素としての2つのクラッチC1,C2および3つのブレーキB1,B2,B3と、を備える。
プラネタリギヤ62は、外歯歯車であるサンギヤ62sと、サンギヤ62sと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ62rと、それぞれサンギヤ62sおよびリングギヤ62rに噛合する複数のピニオンギヤ62pと、複数のピニオンギヤ62pを自転(回転)かつ公転自在に保持するキャリヤ62cとを有する。
プラネタリギヤ63は、外歯歯車であるサンギヤ63sと、サンギヤ63sと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ63rと、それぞれサンギヤ62sおよびリングギヤ62rに噛合する複数のピニオンギヤ63pと、複数のピニオンギヤ63pを自転(回転)かつ公転自在に保持するキャリヤ63cとを有する。
プラネタリギヤ64は、外歯歯車であるサンギヤ64sと、サンギヤ64sと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ64rと、それぞれサンギヤ64sおよびリングギヤ64rに噛合する複数のピニオンギヤ64pと、複数のピニオンギヤ64pを自転(回転)かつ公転自在に保持するキャリヤ64cとを有する。
プラネタリギヤ62のサンギヤ62sとプラネタリギヤ63のサンギヤ63sとが連結(固定)されている。プラネタリギヤ62のリングギヤ62rとプラネタリギヤ63のキャリヤ63cとプラネタリギヤ64のキャリヤ64cとが連結されている。プラネタリギヤ63のリングギヤ63rとプラネタリギヤ64のサンギヤ63sとが連結されている。したがって、プラネタリギヤ62〜64は、プラネタリギヤ62のサンギヤ62sとプラネタリギヤ63のサンギヤ63s,プラネタリギヤ62のキャリヤ62c,プラネタリギヤ64のリングギヤ64r,プラネタリギヤ62のリングギヤ62rおよびプラネタリギヤ63のキャリヤ63cおよびプラネタリギヤ64のキャリヤ64c,プラネタリギヤ63のリングギヤ63rおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64s,を5つの回転要素とするいわゆる5要素タイプの機構として機能する。また、プラネタリギヤ62のリングギヤ62rとプラネタリギヤ63のキャリヤ63cとプラネタリギヤ64のキャリヤ64cとは、駆動軸36(有段変速機60の出力軸)に連結されている。
クラッチC1は、中間軸32と、プラネタリギヤ63のリングギヤ63rおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sと、を互いに接続すると共に両者の接続を解除する。クラッチC2は、中間軸32と、プラネタリギヤ62のサンギヤ62sおよびプラネタリギヤ63のサンギヤ63sと、を互いに接続すると共に両者の接続を解除する。ブレーキB1は、プラネタリギヤ62のサンギヤ62sおよびプラネタリギヤ63のサンギヤ63sを静止部材としてのトランスミッションケース29に対して回転不能に固定(接続)すると共にこのサンギヤ62sおよびサンギヤ63sをトランスミッションケース29に対して回転自在に解放する。ブレーキB2は、プラネタリギヤ62のキャリヤ62cをトランスミッションケース29に対して回転不能に固定(接続)すると共にこのキャリヤ62cをトランスミッションケース29に対して回転自在に解放する。ブレーキB3は、プラネタリギヤ64のリングギヤ64rをトランスミッションケース29に対して回転不能に固定(接続)すると共にこのリングギヤ64rをトランスミッションケース29に対して回転自在に解放する。クラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3は、図示しない油圧制御装置による作動油の給排を受けて動作する。
図3は、プラネタリギヤ30および有段変速機60の各回転要素の回転数の関係を示す共線図の一例を示す説明図であり、図4は、有段変速機60の各変速段とクラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3の作動状態との関係を示す作動表である。有段変速機60は、クラッチC1とブレーキB3とを係合すると共にクラッチC2とブレーキB1,B2とを解放することによって前進第1速段および後進段を形成し、クラッチC1とブレーキB2とを係合すると共にクラッチC2とブレーキB1,B3とを解放することによって前進第2速段を形成し、クラッチC1とブレーキB1とを係合すると共にクラッチC2とブレーキB2,B3を解放することによって前進第3速段を形成し、クラッチC1,C2を係合すると共にブレーキB1〜B3を解放することによって前進第4速段を形成する。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号。シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc。ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP。車速センサ88からの車速V。HVECU70からは、有段変速機60(油圧制御装置)への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。このHVECU70は、エンジンECU24,モータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81の操作位置(シフトポジションセンサ82により検出されるシフトポジションSP)としては、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション),後進走行用のリバースポジション(Rポジション),中立のニュートラルポジション(Nポジション),前進走行用のドライブポジション(Dポジション)などが用意されている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションSPが走行用ポジション(DポジションやRポジション)のときには、ハイブリッド走行(HV走行)で走行したり、電動走行(EV走行)で走行したりする。HV走行では、エンジン22の運転を伴って走行する。EV走行では、エンジン22を運転停止して走行する。
HV走行では、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36(有段変速機60の出力軸)に要求される要求トルクTout*を設定する。続いて、モータMG2の回転数Nm2(中間軸32すなわち有段変速機60の入力軸の回転数)を駆動軸36の回転数Noutで除して有段変速機60のギヤ比Grを計算する。そして、駆動軸36の要求トルクTout*を有段変速機60のギヤ比Grで除して中間軸32に要求される要求トルクTin*を計算する。さらに、中間軸32の要求トルクTin*にモータMG2の回転数Nm2(中間軸32の回転数)を乗じて中間軸32に要求される要求パワーPin*を計算する。続いて、計算した要求パワーPin*からバッテリ50の蓄電割合SOCに基づく充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22に要求される要求パワーPe*を計算する。そして、エンジン22の要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTin*が中間軸32に出力されるようにエンジン22の目標回転数Ne*やモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。さらに、エンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*についてはエンジンECU24に送信し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。続いて、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22が運転されるようにエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このHV走行での走行時には、要求パワーPe*が閾値Pref未満に至ったときに、エンジン22の停止条件が成立したと判断し、エンジン22の運転を停止してEV走行での走行に移行する。
EV走行では、HVECU70は、HV走行モードと同様に駆動軸36の要求トルクTout*や有段変速機60のギヤ比Gr,中間軸32の要求トルクTin*を設定する。続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTin*が中間軸32に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。そして、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このEV走行での走行時には、HV走行での走行時と同様に計算した要求パワーPe*が閾値Pref以上に至ったときに、エンジン22の始動条件が成立したと判断し、エンジン22を始動してHV走行での走行に移行する。
シフトポジションSPがDポジションのときの有段変速機60の制御としては、HVECU70は、まず、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に要求される要求トルクTout*を設定し、車速Vと駆動軸36の要求トルクTout*と図示しない変速マップとに基づいて有段変速機60の目標変速段Gs*を設定する。こうして有段変速機60の目標変速段Gs*を設定すると、有段変速機60の現在の変速段と目標変速段Gs*とが一致するときには有段変速機60の変速段が保持されるように有段変速機60(油圧制御装置)を制御し、有段変速機60の現在の変速段と目標変速段Gs*とが異なるときには、有段変速機60の変速段が目標変速段Gs*となるように有段変速機60を制御する。シフトポジションSPがRポジションのときの有段変速機60の制御としては、HVECU70は、後進段が保持されるように有段変速機60を制御する。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、走行中にモータMG1を駆動できない異常が生じたときの動作について説明する。図5は、実施例のHVECU70により実行されるモータMG1異常時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モータMG1を駆動できない異常、例えば、モータMG1の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43やモータMG1の各相に流れる電流を検出する電流センサ,インバータ41などに異常が生じてモータMG1の駆動制御を停止したときに実行される。
本ルーチンが実行されると、HVECU70は、エンジン22の運転を停止した状態でモータMG2からの動力で走行する退避走行(モータ走行)に移行するか否かを判定する処理を実行する(ステップS100)。ここでは、モータMG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ44やモータMG2の各相に流れる電流を検出する電流センサ,インバータ42などに異常が生じてモータMG2を駆動できないときに、退避走行に移行しないと判定するものとした。退避走行に移行しない場合には、本ルーチンを終了する。
退避走行に移行する場合には(ステップS100)、続いて、エンジン22が運転中か否かを判定する(ステップS110)。エンジン22が運転中でなければ、退避走行を行なうようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。モータMG2のトルク指令Tm2*の設定は、上述したEV走行におけるトルク指令Tm2*の設定と同様である。トルク指令Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG2がトルク指令Tm2*で駆動されるようにインバータ42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした処理により、退避走行を行なうことができ、車両を他の車両や歩行者の妨げにならない場所まで移動させることができる。なお、退避走行では、有段変速機60は、上述したように、シフトポジションSPに応じて制御されるものとする。
エンジン22が運転中であるときには(ステップS110)、有段変速機60のアップシフト制御を実行する(ステップS120)。アップシフト制御では、最高変速段である前進第4速段を超えない範囲で有段変速機60の変速段が現在の変速段から1段アップシフトするよう有段変速機60を制御する。アップシフト制御を実行する理由については後述する。
続いて、エンジン22における燃料供給が停止されるようエンジンECU24に燃料供給停止指令を送信し(ステップS130)、エンジン22の回転数Neが値0であるか否かを判定し(ステップS140)、エンジン22の回転数が値0でないときには、ステップS140の処理を繰り返す。燃料供給停止指令を受信したエンジンECU24は、エンジン22の燃料噴射弁への燃料供給を停止する。エンジン22への燃料の供給を停止すると、エンジン22の回転数Neが徐々に低下することから、ステップS140の処理は、エンジン22の回転数Neが徐々に低下してエンジン22の回転が停止するか否かを判定する処理になる。ここで、ステップS120の処理でアップシフト制御を実行した理由について説明する。
図6は、有段変速機60の変速段が前進第1速段の状態でエンジン22の回転数Neが低下しているときのプラネタリギヤ30および有段変速機60の各回転要素の回転数の関係を示す共線図の一例を示す説明図である。図7は、有段変速機60の変速段が前進第4速段の状態でエンジン22の回転数Neが低下しているときのプラネタリギヤ30および有段変速機60の各回転要素の回転数の関係を示す共線図の一例を示す説明図である。図6,図7において、エンジン22の共振回転数帯(以下、「共振帯」という)に斜線でハッチングを施した。エンジン22の回転数は、低下して値0になる過程で、図6,図7に示す共振帯領域に滞留し、中間軸32にエンジン22の脈動トルクが伝達される場合がある。中間軸32に生じた脈動トルクは、有段変速機60によって変速比に応じたトルクに変換されて駆動軸36に伝達される。有段変速機60に入力されるトルクが一定である場合、図6,図7に示すように、中間軸32と駆動軸36との回転数の関係から、変速段の変速比が低いほど駆動軸36に伝達されるトルクが小さくなる。そのため、有段変速機60をアップシフトした後にエンジン22における燃料供給を停止することにより、有段変速機60をアップシフトせずにエンジン22における燃料供給を停止するものと比較すると、駆動軸36に伝達される脈動トルクをより小さくすることができる。これにより、振動の発生を抑制することができる。
そして、エンジン22の回転数Neが値0になったときには(ステップS140)、退避走行を実行し(ステップS150)、本ルーチンを終了する。こうした処理により、振動の発生を抑制しつつ、退避走行を行なうことができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、モータMG1に異常が生じてモータMG1の制御を停止したときには、アップシフトするよう有段変速機60を制御した後に、エンジン22における燃料の供給が停止されるようエンジン22を制御し、その後、モータ走行で走行するよう第2モータを制御することにより、振動の発生を抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS120の処理で、最高変速段である前進第4速段を超えない範囲で有段変速機60の変速段が現在の変速段から1段アップシフトするよう有段変速機60を制御するものとしたが、現在の変速段からアップシフトすればよいから、例えば、2段以上アップシフトするものとしてもよい。また、有段変速機60の変速段を最高変速段(実施例では前進第4速段)にしてもよい。こうすれば、エンジン22の回転数が共振帯付近に滞留することにより中間軸32に作用する脈動トルクは、有段変速機60を前進第4速段より低い変速段としたときより小さなトルクとして駆動軸36に伝達させることができる。これにより、振動の発生をより抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、有段変速機60は、前進第1速段から前進第4速段まで形成できる4速の有段変速機60であるものとしたが、アップシフトが可能なもの、すなわち、2速以上の有段変速機60であればよいから、例えば、5速以上の有段変速機としてもよい。また、有段変速機60に代えて無段変速機を用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS130〜S150の処理で、エンジン22の燃料供給を停止してからエンジン22の回転数が値0になるのを待って退避走行を行なうものとしたが、ステップS140の処理を実行せずに、エンジン22の燃料供給を停止してから直ちに退避走行を行なうものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「第1モータ」に相当し、プラネタリギヤ30が「プラネタリギヤ」に相当し、モータMG2が「第2モータ」に相当し、有段変速機60が「変速機」に相当し、エンジンECU24とモータECU40とHVECU70とを組み合わせたものが「制御手段」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業などに利用可能である。
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、23 クランクポジションセンサ、26 クランクシャフト、29 トランスミッションケース、30 プラネタリギヤ、32 中間軸、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43 回転位置検出センサ、44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 有段変速機、62〜64 プラネタリギヤ、62c〜64c キャリヤ、62p〜64p ピニオンギヤ、62r〜64r リングギヤ、62s〜64s サンギヤ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、B1〜B3 ブレーキ、C1,C2 クラッチ、MG1,MG2 モータ。
Claims (1)
- エンジンと、動力を入出力可能な第1モータと、前記エンジンの出力軸と前記第1モータの回転軸と中間軸とにキャリヤとサンギヤとリングギヤとがこの順に接続されたプラネタリギヤと、前記中間軸に動力を入出力可能な第2モータと、前記中間軸と車軸に連結された駆動軸とに接続された変速機と、を備えるハイブリッド車両であって、
前記第1モータが駆動できない異常が生じて前記第1モータの制御を停止したときには、アップシフトするよう前記変速機を制御し、前記エンジンにおける燃料の供給が停止されるよう前記エンジンを制御し、その後、前記第2モータからの動力だけで走行するよう前記第2モータを制御する制御手段、
を備えるハイブリッド車両。
Priority Applications (1)
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Publications (1)
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JP2015075206A Pending JP2016193685A (ja) | 2015-04-01 | 2015-04-01 | ハイブリッド車両 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019121282A (ja) * | 2018-01-10 | 2019-07-22 | トヨタ自動車株式会社 | ドライバ覚醒監視システム及びウエアラブル端末 |
-
2015
- 2015-04-01 JP JP2015075206A patent/JP2016193685A/ja active Pending
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JP2019121282A (ja) * | 2018-01-10 | 2019-07-22 | トヨタ自動車株式会社 | ドライバ覚醒監視システム及びウエアラブル端末 |
JP7040026B2 (ja) | 2018-01-10 | 2022-03-23 | トヨタ自動車株式会社 | ドライバ覚醒監視システム及びウエアラブル端末 |
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