JP2021031038A - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】アクセル操作量の増加に伴って有段変速機の変速段をダウンシフトするときに、有段変速機の発熱を抑制する。【解決手段】制御装置は、要求駆動力が第1上限駆動力以下のときには、要求駆動力を目標駆動力として設定し、要求駆動力が第1上限駆動力よりも大きいときには、要求駆動力と第1上限駆動力との差分に基づいて蓄電装置の目標補填パワーを設定し、エンジンから上限パワーを出力すると共に蓄電装置が目標補填パワーに基づくパワーで充放電する蓄電装置パワー補填を行なうときの駆動軸の第2上限駆動力を設定し、要求駆動力および第2上限駆動力のうちの小さい方を目標駆動力として設定する。更に、制御装置は、蓄電装置パワー補填を行なっている最中に、アクセル操作量の増加に伴う有段変速機の変速段のダウンシフトを判定すると、蓄電装置パワー補填を制限する。【選択図】図6
Description
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
従来、この種のハイブリッド車両としては、プラネタリギヤのサンギヤに第1モータ、キャリヤにエンジン、リングギヤに伝達部材を接続し、伝達部材に第2モータを接続し、伝達部材と車軸に連結された駆動軸との間に複数の係合要素を有する有段変速機を取り付け、第1モータおよび第2モータに電力ラインを介してバッテリを接続したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両では、アクセル開度と車速とに基づいて駆動軸に要求される要求駆動力を設定し、アクセル開度と車速とに基づいて有段変速機の変速段に仮想的な変速段を加味した変速段を設定し、車速と変速段とに基づいてエンジンのドラビリ用回転数を設定する。続いて、エンジンをドラビリ用回転数で運転するときのエンジンの上限パワーを設定し、エンジンから上限パワーが出力されるときの駆動軸の上限駆動力を設定し、エンジンがドラビリ用回転数で運転されると共に要求駆動力および上限駆動力のうちの小さい方が駆動軸に出力されるようにエンジンと第1モータと第2モータと有段変速機とを制御する。こうした制御により、運転者がアクセルペダルを踏み込んだときでも、エンジンの回転数が車速に応じた回転数となるから、エンジンの回転数が車速の増加に先立って急増するものに比して、運転者により良好な運転感覚を与えることができる。また、変速段が変更されたときに、エンジンの回転数が変化するから、運転者に変速感を与えることができる。
上述のハイブリッド車両において、アクセル開度が増加して要求駆動力が上限駆動力よりも大きくなったときに、上限駆動力よりも大きい駆動力を駆動軸に出力するために、バッテリの電力を用いて第2モータから有段変速機の入力軸に出力するトルクを大きくすることが考えられる。第2モータから有段変速機の入力軸に大きいトルクを出力しつつ、アクセル開度の増加に伴う有段変速機の変速段のダウンシフトを行なうと、有段変速機、特に、複数の係合要素のうちダウンシフトに伴って係合状態から解放状態に切り替える係合要素などの発熱量が大きくなる可能性がある。
本発明のハイブリッド車両は、アクセル操作量の増加に伴う有段変速機の変速段のダウンシフトを行なうときに、有段変速機の発熱を抑制することを主目的とする。
本発明のハイブリッド車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のハイブリッド車両は、
エンジンと、第1モータと、前記エンジンと前記第1モータと伝達部材とに3つの回転要素が接続されたプラネタリギヤと、前記伝達部材と車軸に連結された駆動軸との間に取り付けられると共に複数の係合要素を有する有段変速機と、前記伝達部材または前記駆動軸に動力を入出力可能な第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータと電力をやりとりする蓄電装置と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、
アクセル操作量と車速とに基づいて前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定し、
前記アクセル操作量と前記車速とに基づいて、前記有段変速機の変速段または前記有段変速機の変速段に仮想的な変速段を加味した変速段から模擬変速段を設定すると共に、前記有段変速機の目標変速段を設定し、
前記車速と前記模擬変速段とに基づいて前記エンジンの目標回転数を設定し、
前記エンジンを前記目標回転数で運転するときの前記エンジンの上限パワーを設定し、
前記エンジンから前記上限パワーを出力するときの前記駆動軸の第1上限駆動力を設定し、
前記要求駆動力と前記第1上限駆動力との大小関係に基づいて前記駆動軸の目標駆動力を設定し、
前記エンジンが前記目標回転数で運転され且つ前記有段変速機の変速段が前記目標変速段となり且つ前記目標駆動力に基づいて走行するように前記エンジンと前記第1モータと前記第2モータと前記有段変速機とを制御し、更に、前記有段変速機の変速段を変更するときには、前記複数の係合要素のうち係合状態から解放状態に切り替える解放側要素の油圧を前記目標駆動力に基づいて制御する、
ハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、
前記要求駆動力が前記第1上限駆動力以下のときには、前記要求駆動力を前記目標駆動力として設定し、
前記要求駆動力が前記第1上限駆動力よりも大きいときには、
前記要求駆動力と前記第1上限駆動力との差分に基づいて前記蓄電装置の目標補填パワーを設定し、
前記エンジンから前記上限パワーを出力すると共に前記蓄電装置が前記目標補填パワーに基づくパワーで充放電する蓄電装置パワー補填を行なうときの前記駆動軸の第2上限駆動力を設定し、
前記要求駆動力および前記第2上限駆動力のうちの小さい方を前記目標駆動力として設定し、
更に、前記制御装置は、前記蓄電装置パワー補填を行なっている最中に、前記アクセル操作量の増加に伴う前記有段変速機の変速段のダウンシフトを判定すると、前記蓄電装置パワー補填を制限する、
ことを要旨とする。
エンジンと、第1モータと、前記エンジンと前記第1モータと伝達部材とに3つの回転要素が接続されたプラネタリギヤと、前記伝達部材と車軸に連結された駆動軸との間に取り付けられると共に複数の係合要素を有する有段変速機と、前記伝達部材または前記駆動軸に動力を入出力可能な第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータと電力をやりとりする蓄電装置と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、
アクセル操作量と車速とに基づいて前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定し、
前記アクセル操作量と前記車速とに基づいて、前記有段変速機の変速段または前記有段変速機の変速段に仮想的な変速段を加味した変速段から模擬変速段を設定すると共に、前記有段変速機の目標変速段を設定し、
前記車速と前記模擬変速段とに基づいて前記エンジンの目標回転数を設定し、
前記エンジンを前記目標回転数で運転するときの前記エンジンの上限パワーを設定し、
前記エンジンから前記上限パワーを出力するときの前記駆動軸の第1上限駆動力を設定し、
前記要求駆動力と前記第1上限駆動力との大小関係に基づいて前記駆動軸の目標駆動力を設定し、
前記エンジンが前記目標回転数で運転され且つ前記有段変速機の変速段が前記目標変速段となり且つ前記目標駆動力に基づいて走行するように前記エンジンと前記第1モータと前記第2モータと前記有段変速機とを制御し、更に、前記有段変速機の変速段を変更するときには、前記複数の係合要素のうち係合状態から解放状態に切り替える解放側要素の油圧を前記目標駆動力に基づいて制御する、
ハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、
前記要求駆動力が前記第1上限駆動力以下のときには、前記要求駆動力を前記目標駆動力として設定し、
前記要求駆動力が前記第1上限駆動力よりも大きいときには、
前記要求駆動力と前記第1上限駆動力との差分に基づいて前記蓄電装置の目標補填パワーを設定し、
前記エンジンから前記上限パワーを出力すると共に前記蓄電装置が前記目標補填パワーに基づくパワーで充放電する蓄電装置パワー補填を行なうときの前記駆動軸の第2上限駆動力を設定し、
前記要求駆動力および前記第2上限駆動力のうちの小さい方を前記目標駆動力として設定し、
更に、前記制御装置は、前記蓄電装置パワー補填を行なっている最中に、前記アクセル操作量の増加に伴う前記有段変速機の変速段のダウンシフトを判定すると、前記蓄電装置パワー補填を制限する、
ことを要旨とする。
この本発明のハイブリッド車両では、制御装置は、有段変速機の変速段を変更するときには、複数の係合要素のうち係合状態から解放状態に切り替える解放側要素の油圧を目標駆動力に基づいて制御する。この場合、制御装置は、要求駆動力が第1上限駆動力以下のときには、要求駆動力を目標駆動力として設定する。一方、要求駆動力が第1上限駆動力よりも大きいときには、要求駆動力と第1上限駆動力との差分に基づいて蓄電装置の目標補填パワーを設定し、エンジンから上限パワーを出力すると共に蓄電装置が目標補填パワーに基づくパワーで充放電する蓄電装置パワー補填を行なうときの駆動軸の第2上限駆動力を設定し、要求駆動力および第2上限駆動力のうちの小さい方を目標駆動力として設定する。更に、制御装置は、蓄電装置パワー補填を行なっている最中に、アクセル操作量の増加に伴う有段変速機の変速段のダウンシフトを判定すると、蓄電装置パワー補填を制限する。これにより、アクセル操作量の増加に伴う有段変速機の変速段のダウンシフトを行なうときに、蓄電装置パワー補填を制限しないものに比して、目標駆動力を小さくすることができるから、解放側要素の油圧を迅速に低くすることができる。この結果、有段変速機、特に、解放側要素などの発熱を抑制することができる。
ここで、「有段変速機の変速段に仮想的な変速段を加味した変速段」としては、有段変速機の変速段と仮想的な変速段とを組み合わせた変速段を意味する。例えば、2段変速の有段変速機の各変速段に対して仮想的な変速段を1段ずつ設けると、合計4段の変速段となる。また、4段変速の有段変速機の第1速〜第3速の各変速段に対して仮想的な変速段を2段ずつ設けると、合計10段の変速段となる。こうすれば、所望の段数の変速段を用いることができる。
こうした本発明のハイブリッド車両において、前記制御装置は、前記第1上限駆動力を設定する際には、前記上限パワーと、前記蓄電装置の蓄電割合に基づくと共に放電側が正となる前記蓄電装置の第1要求充放電パワーと、の和のパワーが前記駆動軸に出力されるときの駆動力を前記第1上限駆動力として設定し、前記第2上限駆動力を設定する際には、前記上限パワーと、前記第1要求充放電パワーと、前記目標補填パワーに基づくと共に放電側が正となる前記蓄電装置の第2要求充放電パワーと、の和のパワーが前記駆動軸に出力されるときの駆動力を前記第2上限駆動力として設定するものとしてもよい。こうすれば、第1上限駆動力や第2上限駆動力をより適切に設定することができる。
この場合、前記制御装置は、前記要求駆動力が前記第1上限駆動力以下のときには、前記目標駆動力を前記駆動軸に出力するためのパワーから前記要求充放電パワーを減じたパワーを前記エンジンの目標パワーとして設定し、前記要求駆動力が前記第1上限駆動力よりも大きいときには、前記目標駆動力を前記駆動軸に出力するためのパワーから前記第1要求充放電パワーと前記第2要求充放電パワーとの和を減じたパワーを前記エンジンの目標パワーとして設定し、前記エンジンから前記目標パワーが出力されるように前記エンジンを制御するものとしてもよい。こうすれば、エンジンの目標パワーをより適切に設定することができる。
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。図2は、エンジン22やプラネタリギヤ30、モータMG1,MG2、有段変速機60の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1や図2に示すように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、蓄電装置としてのバッテリ50と、有段変速機60と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御されている。
エンジンECU24は、CPUやROM、RAM、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートから入力されている。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ23aからのクランクシャフト23のクランク角θcrを挙げることができる。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ23aからのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。
プラネタリギヤ30は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。このプラネタリギヤ30は、外歯歯車であるサンギヤ30sと、内歯歯車であるリングギヤ30rと、それぞれサンギヤ30sおよびリングギヤ30rに噛合する複数のピニオンギヤ30pと、複数のピニオンギヤ30pを自転(回転)かつ公転自在に支持するキャリヤ30cとを有する。サンギヤ30sは、モータMG1の回転子に接続されている。リングギヤ30rは、伝達部材32を介してモータMG2の回転子および有段変速機60の入力軸61に接続されている。キャリヤ30cは、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト23に接続されている。
モータMG1,MG2は、何れも、例えば同期発電電動機として構成されている。モータMG1の回転子は、上述したように、プラネタリギヤ30のサンギヤ30sに接続されている。モータMG2の回転子は、上述したように、伝達部材32を介してプラネタリギヤ30のリングギヤ30rおよび有段変速機60の入力軸61に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU40は、CPUやROM、RAM、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU40に入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2や、モータMG1,MG2の各相に流れる相電流を検出する電流センサからのモータMG1,MG2の各相の相電流Iu1,Iv1,Iu2,Iv2を挙げることができる。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の電気角θe1,θe2や回転数Nm1,Nm2を演算している。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されている。このバッテリ50は、上述したように、電力ライン54を介してインバータ41,42と接続されている。バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52により管理されている。
バッテリECU52は、CPUやROM、RAM、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に取り付けられた電圧センサ51aからのバッテリ50の電圧Vbや、バッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからのバッテリ50の電流Ib、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからのバッテリ50の温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサ51bからのバッテリ50の電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50の蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。また、バッテリECU52は、バッテリ50の蓄電割合SOCと温度センサ51cからのバッテリ50の温度Tbとに基づいてバッテリ50の入出力制限Win,Woutを演算している。入力制限Winは、バッテリ50を充電してもよい最大許容電力(負の値)であり、出力制限Woutは、バッテリ50から放電してもよい最大許容電力(正の値)である。
有段変速機60は、4段変速の有段変速機として構成されている。この有段変速機60は、入力軸61と、出力軸62と、プラネタリギヤ63,64,65と、クラッチC1,C2と、ブレーキB1,B2,B3とを備える。入力軸61は、上述したように、伝達部材32を介してプラネタリギヤ30のリングギヤ30rおよびモータMG2に接続されている。出力軸62は、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36に接続されている。
プラネタリギヤ63は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。このプラネタリギヤ63は、外歯歯車であるサンギヤ63sと、内歯歯車であるリングギヤ63rと、それぞれサンギヤ63sおよびリングギヤ63rに噛合する複数のピニオンギヤ63pと、複数のピニオンギヤ63pを自転(回転)かつ公転自在に支持するキャリヤ63cとを有する。
プラネタリギヤ64は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。このプラネタリギヤ64は、外歯歯車であるサンギヤ64sと、内歯歯車であるリングギヤ64rと、それぞれサンギヤ64sおよびリングギヤ64rに噛合する複数のピニオンギヤ64pと、複数のピニオンギヤ64pを自転(回転)かつ公転自在に支持するキャリヤ64cとを有する。
プラネタリギヤ65は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。このプラネタリギヤ65は、外歯歯車であるサンギヤ65sと、内歯歯車であるリングギヤ65rと、それぞれサンギヤ65sおよびリングギヤ65rに噛合する複数のピニオンギヤ65pと、複数のピニオンギヤ65pを自転(回転)かつ公転自在に支持するキャリヤ65cとを有する。
プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sは、互いに連結(固定)されている。プラネタリギヤ63のリングギヤ63rおよびプラネタリギヤ64のキャリヤ64cおよびプラネタリギヤ65のキャリヤ65cは、互いに連結されている。プラネタリギヤ64のリングギヤ64rおよびプラネタリギヤ65のサンギヤ65sは、互いに連結されている。したがって、プラネタリギヤ63,64,65は、プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64s、プラネタリギヤ63のキャリヤ63c、プラネタリギヤ65のリングギヤ65r、プラネタリギヤ63のリングギヤ63rおよびプラネタリギヤ64のキャリヤ64cおよびプラネタリギヤ65のキャリヤ65c、プラネタリギヤ64のリングギヤ64rおよびプラネタリギヤ65のサンギヤ65s、を5つの回転要素とする5要素タイプの機構として機能する。また、プラネタリギヤ63のリングギヤ63rおよびプラネタリギヤ64のキャリヤ64cおよびプラネタリギヤ65のキャリヤ65cは、出力軸62に連結されている。
クラッチC1は、入力軸61と、プラネタリギヤ64のリングギヤ64rおよびプラネタリギヤ65のサンギヤ65sと、を互いに接続すると共に両者の接続を解除する。クラッチC2は、入力軸61と、プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sと、を互いに接続すると共に両者の接続を解除する。
ブレーキB1は、プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sをトランスミッションケース69に対して回転不能に固定(接続)すると共にサンギヤ63sおよびサンギヤ64sをトランスミッションケース69に対して回転自在に解放する。ブレーキB2は、プラネタリギヤ63のキャリヤ63cをトランスミッションケース69に対して回転不能に固定(接続)すると共にキャリヤ63cをトランスミッションケース69に対して回転自在に解放する。ブレーキB3は、プラネタリギヤ65のリングギヤ65rをトランスミッションケース69に対して回転不能に固定(接続)すると共にリングギヤ65rをトランスミッションケース69に対して回転自在に解放する。
クラッチC1,C2は、それぞれ、例えば、油圧駆動の多板クラッチとして構成されている。ブレーキB1は、例えば、油圧駆動のバンドブレーキとして構成されている。ブレーキB2,B3は、それぞれ、例えば、油圧駆動の多板ブレーキとして構成されている。クラッチC1,C2およびブレーキB1,B2,B3は、油圧制御装置(図示省略)により作動油が給排されて動作する。油圧制御装置は、HVECU70により制御される。
図3は、有段変速機60の各変速段とクラッチC1,C2およびブレーキB1,B2,B3の状態との関係を示す作動表である。図4は、プラネタリギヤ30および有段変速機60の各回転要素の回転数の関係を示す共線図である。図4中、「ρ0」は、プラネタリギヤ30のギヤ比(サンギヤ30sの歯数/リングギヤ30rの歯数)である。「ρ1」は、プラネタリギヤ63のギヤ比(サンギヤ63sの歯数/リングギヤ63rの歯数)である。「ρ2」は、プラネタリギヤ64のギヤ比(サンギヤ64sの歯数/リングギヤ64rの歯数)である。「ρ3」は、プラネタリギヤ65のギヤ比(サンギヤ65sの歯数/リングギヤ65rの歯数)である。
また、図4中、左側は、プラネタリギヤ30の共線図であり、右側は、有段変速機60の共線図である。プラネタリギヤ30の共線図において、30s軸は、モータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ30sの回転を示し、30c軸は、エンジン22の回転数Neであるキャリヤ30cの回転数を示し、30r軸は、モータMG2の回転数Nm2や伝達部材32の回転数、入力軸61の回転数であるリングギヤ30rの回転数を示す。有段変速機60の共線図において、63s,64s軸は、プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sの回転数を示し、63c軸は、プラネタリギヤ63のキャリヤ63cの回転数を示し、65r軸は、プラネタリギヤ65のリングギヤ65rの回転数を示し、63r,64c,65cは、駆動軸36の回転数Nd(出力軸62の回転数)であるプラネタリギヤ63のリングギヤ63rとプラネタリギヤ64のキャリヤ64cとプラネタリギヤ65のキャリヤ65cとの回転数を示し、64r,65s軸は、プラネタリギヤ64のリングギヤ64rおよびプラネタリギヤ65のサンギヤ65sの回転数を示す。
有段変速機60は、クラッチC1,C2およびブレーキB1,B2,B3が図3に示すように係合または解放されることにより、第1速から第4速までの前進段や後進段が形成される。具体的には、前進第1速は、クラッチC1およびブレーキB3が係合されると共にクラッチC2およびブレーキB1,B2が解放されることにより形成される。前進第2速は、クラッチC1およびブレーキB2が係合されると共にクラッチC2およびブレーキB1,B3が解放されることにより形成される。前進第3速は、クラッチC1およびブレーキB1が係合されると共にクラッチC2およびブレーキB2,B3が解放されることにより形成される。前進第4速は、クラッチC1,C2が係合されると共にブレーキB1,B2,B3が解放されることにより形成される。後進段は、クラッチC2およびブレーキB3が係合されると共にクラッチC1およびブレーキB1,B2が解放されることにより形成される。
HVECU70は、CPUやROM、RAM、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、駆動軸36の回転数を検出する回転数センサ36aからの駆動軸36の回転数Ndや、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBPも挙げることができる。車速センサ88からの車速Vや、勾配センサ89からの路面勾配θrd(登坂側が正の値)、モードスイッチ90からのモード信号も挙げることもできる。HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、有段変速機60(油圧制御装置)への制御信号を挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
ここで、シフトポジションSPとしては、駐車ポジション(Pポジション)や、後進ポジション(Rポジション)、ニュートラルポジション(Nポジション)、前進ポジション(Dポジション)などが用意されている。
モードスイッチ90は、運転者が、燃費を優先する通常モードと、燃費よりも運転者の運転感覚(ドライバビリティやドライブフィーリング)を優先するドラビリ優先モードと、を含む複数の走行モードから実行用走行モードを選択するためのスイッチである。実行用走行モードとして通常モードが選択されると、シフトポジションSPがDポジションのときに、エンジン22が効率よく運転されながら走行するようにエンジン22とモータMG1,MG2とが駆動制御される。実行用走行モードとしてドラビリ優先モードが選択されると、シフトポジションSPがDポジションのときに、エンジン22が10段変速の仮想的な有段変速機(以下、「模擬変速機」という)を介して駆動軸36に接続されているように運転されながら走行するようにエンジン22とモータMG1,MG2とが駆動制御される。ここで、10段変速の模擬変速機の各変速段は、4段変速の有段変速機60の第1速〜第3速の各変速段に対して仮想的な変速段が2段ずつ設けられて構成される。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン22の運転を伴って走行するハイブリッド走行(HV走行)や、エンジン22の運転を伴わずに走行する電動走行(EV走行)を行なう。
次に、こうして構成されたハイブリッド自動車20の動作、特に、モードスイッチ90により実行用走行モードとしてドラビリ優先モードが選択され、シフトポジションSPがDポジションでHV走行を行なうときの動作について説明する。図5および図6は、HVECU70により実行されるドラビリ優先制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モードスイッチ90により実行用走行モードとしてドラビリ優先モードが選択され、シフトポジションSPがDポジションでHV走行を行なうときに、繰り返し実行される。
図5および図6のドラビリ優先制御ルーチンが実行されると、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accや車速V、駆動軸36の回転数Nd、エンジン22の回転数Ne、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の蓄電割合SOCや出力制限Woutなどのデータを入力する(ステップS100)。ここで、アクセル開度Accは、アクセルペダルポジションセンサ84により検出された値が入力される。車速Vは、車速センサ88により検出された値が入力される。駆動軸36の回転数Ndは、回転数センサ36aにより検出された値が入力される。エンジン22の回転数Neは、エンジンECU24により演算された値が入力される。モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、モータECU40により演算された値が入力される。バッテリ50の蓄電割合SOCや出力制限Woutは、バッテリECU52により演算された値が入力される。
こうしてデータが入力されると、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vと要求駆動力設定用マップとを用いて走行に要求される(駆動軸36に要求される)要求駆動力Tdusrを設定する(ステップS110)。ここで、要求駆動力設定用マップは、アクセル開度Accと車速Vと要求駆動力Tdusrとの関係として予め設定され、図示しないROMに記憶されている。図7は、要求駆動力設定用マップの一例を示す説明図である。
続いて、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vと変速線図とを用いて模擬変速段Gsvおよび目標変速段Gsat*を設定する(ステップS120)。ここで、模擬変速段Gsvは、10段変速の模擬変速機の変速段であり、目標変速段Gsat*は、4段変速の有段変速機60の目標変速段である。変速線図は、アクセル開度Accと車速Vと模擬変速段Gsvおよび目標変速段Gsat*との関係として予め定められている。
図8は、変速線図の一例を示す説明図である。図中、実線(細実線および太実線)は、アップシフト用の変速線であり、一点鎖線(細一点鎖線および細一点鎖線破線)は、ダウンシフト用の変速線である。模擬変速段Gsvは、図8の全ての変速線に基づいて10段変速の各変速段のうちの何れに該当するかにより設定される。目標変速段Gsat*は、図8の太実線および太破線の変速線に基づいて4段変速の各変速段のうちの何れに該当するかにより設定される。
こうして目標変速段Gsat*が得られると、HVECU70は、目標変速段Gsat*を用いて有段変速機60を制御する(ステップS130)。有段変速機60は、変速段Gsatが目標変速段Gsat*と一致するときには、変速段Gsatが保持され、変速段Gsatが目標変速段Gsat*と異なるときには、変速段Gsatが目標変速段Gsat*となるように変速段Gsatの変更が行なわれる。なお、有段変速機60の制御は、実行用モードとして通常モードが選択されてHV走行を行なうときや、EV走行を行なうときも同様に制御行なわれる。また、変速段Gsatの変更には、本ルーチンの実行周期よりも長い時間を要する。
変速段Gsatの変更は、例えば、以下のように行なわれる。最初に、有段変速機60のクラッチC1,C2およびブレーキB1,B2,B3のうち変速段Gsatの変更に伴って係合状態から解放状態に切り替える解放側要素について、第1ステージ解放制御を実行すると共に、解放状態から係合状態に切り替える係合側要素について、ストローク制御を実行する。第1ステージ解放制御は、油圧を1段低下させて解放側要素をスリップ係合させる制御である。この第1ステージ解放制御では、駆動軸36に出力すべき目標駆動力Td*(後述のステップS210,S300参照)、または、有段変速機60の入力軸61に出力すべき目標駆動力Tin*(後述のステップS330参照)が小さいほど小さくなるように油圧指令を設定して油圧制御を実行する。ストローク制御は、係合側要素のピストンと摩擦係合プレートとの隙間を詰める(ピストンをストロークさせる)ファストフィルと、その後に油圧を比較的低い待機圧で保持する低圧待機とを行なう制御である。
続いて、解放側要素について第2ステージ解放制御を実行すると共に、係合側要素についてトルク相制御を実行する。第2ステージ解放制御およびトルク相制御は、解放側要素の油圧を徐々に低下させると共に係合側要素の油圧を徐々に上昇させて、トルクの伝達を変更前の変速段による伝達から変更後の変速段による伝達に変更する制御である。第2ステージ解放制御は、第1ステージ解放制御と同様に行なわれる。
そして、解放側要素について、第3ステージ解放制御を実行すると共に、係合側要素について、イナーシャ相制御、終期制御を順に実行する。第3ステージ解放制御は、解放側要素の油圧を更に低下させる制御である。イナーシャ相制御は、係合側要素の油圧を更に徐々に上昇させて、有段変速機60の入力軸61の回転数Ninを目標変速段Gsat*に応じた回転数に近づける制御である。終期制御は、係合側要素の油圧を更に上昇させる制御である。
また、ステップS120で模擬変速段Gsvが得られると、HVECU70は、車速Vと模擬変速段Gsvとドラビリ用回転数設定用マップとを用いてエンジン22のドラビリ用回転数Nedrvを設定し(ステップS140)、設定したエンジン22のドラビリ用回転数Nedrvをエンジン22の目標回転数Ne*として設定する(ステップS150)。ここで、ドラビリ用回転数設定用マップは、車速Vと模擬変速段Gsvとエンジン22のドラビリ用回転数Nedrvとの関係として予め設定され、図示しないROMに記憶されている。
図9は、ドラビリ用回転数設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、エンジン22のドラビリ用回転数Nedrvは、10段変速の模擬変速機の、各模擬変速段Gsvで車速Vが大きいほど線形で大きくなるように、且つ、模擬変速段Gsvが大きいほど車速Vに対する傾きが小さくなるように設定される。これにより、エンジン22がドラビリ用回転数Nedrvで運転されると、10段変速の模擬変速機の、各模擬変速段Gsvで車速Vが大きくなるにつれてエンジン22の回転数Neを大きくなり、模擬変速段Gsvがアップシフトする際にエンジン22の回転数Neが低下し、模擬変速段Gsvがダウンシフトする際にエンジン22の回転数Neが増加する。この結果、エンジン22の回転数Neの挙動を、10段変速の実際の有段変速機を搭載した自動車に近づけることができる。
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*が得られると、HVECU70は、エンジン22の目標回転数Ne*と上限パワー設定用マップとを用いてエンジン22の上限パワーPelimを設定する(ステップS160)。ここで、エンジン22の上限パワーPelimは、エンジン22を目標回転数Ne*(ドラビリ用回転数Nedrv)で運転するときにエンジン22から出力可能なパワーの上限を意味する。上限パワー設定用マップは、エンジン22の目標回転数Ne*と上限パワーPelimとの関係として予め設定され、図示しないROMに記憶されている。図10は、上限パワー設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、エンジン22の上限パワーPelimは、エンジン22の目標回転数Ne*が大きいほど大きくなるように設定される。
続いて、HVECU70は、バッテリ50の蓄電割合SOCと要求充放電パワー設定用マップとを用いて、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*に近づくようにバッテリ50の要求充放電パワーPb1*(バッテリ50から放電するときが正の値)を設定する(ステップS170)。ここで、要求充放電パワー設定用マップは、バッテリ50の蓄電割合SOCと要求充放電パワーPb1*との関係として予め設定され、図示しないROMに記憶されている。
図11は、要求充放電パワー設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、バッテリ50の要求充放電パワーPb1*は、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*に等しいときには、値0が設定される。また、要求充放電パワーPb1*は、蓄電割合SOCが目標割合SOC*よりも大きいときには、蓄電割合SOCが大きいほど、値0から放電用(正)の所定パワーPdi1に向かって大きくなって所定パワーPdi1で一定となるように設定される。さらに、要求充放電パワーPb1*は、蓄電割合SOCが目標割合SOC*よりも小さいときには、蓄電割合SOCが小さいほど、値0から充電用(負)の所定パワーPch1に向かって小さくなって所定パワーPch1で一定となるように設定される。
そして、HVECU70は、式(1)に示すように、エンジン22の上限パワーPelimとバッテリ50の要求充放電パワーPb1*との和を駆動軸36の回転数Ndで除して上限駆動力Tdlim1を演算する(ステップS180)。ここで、上限駆動力Tdlim1は、エンジン22の目標回転数Ne*(ドラビリ用回転数Nedrv)での運転を伴ってエンジン22から上限パワーPelimを出力すると共にバッテリ50が要求充放電パワーPb1*で充放電するときに駆動軸36に出力可能な駆動力の上限を意味する。式(1)において、エンジン22の上限パワーPelimにバッテリ50の要求充放電パワーPb1*を加えるのは、バッテリ50が要求充放電パワーPb1*で充放電するときにエンジン22から出力するパワーを変化させないためである。
Tdlim1=(Pelim+Pb1*)/Nd (1)
次に、HVECU70は、要求駆動力Tdusrと上限駆動力Tdlim1とを比較する(ステップS190)。この処理は、要求充放電パワーPb1*でのバッテリ50の充放電を伴って要求駆動力Tdusrを駆動軸36に出力することができるか否かを判定する処理である。
要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1以下のときには、HVECU70は、要求充放電パワーPb1*でのバッテリ50の充放電を伴って要求駆動力Tdusrを駆動軸36に出力することができると判断し、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*(バッテリ50から放電するときが正の値)に値0を設定すると共に(ステップS200)、要求駆動力Tdusrを駆動軸36に出力すべき目標駆動力Td*として設定する(ステップS210)。ここで、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*の詳細については後述する。
続いて、HVECU70は、式(2)に示すように、目標駆動力Td*と駆動軸36の回転数Ndとの積からバッテリ50の要求充放電パワーPb1*を減じて、エンジン22から出力すべき目標パワーPe*を演算する(ステップS220)。ここで、式(2)において、目標駆動力Td*と駆動軸36の回転数Ndとの積は、駆動軸36に出力すべき目標パワーPd*を意味する。また、式(2)により得られるエンジン22の目標パワーPe*は、要求充放電パワーPb1*でのバッテリ50の充放電を伴って目標駆動力Td*を駆動軸36に出力するのに必要なエンジン22のパワーを意味する。さらに、要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1以下のときを考えているから、式(1)および式(2)を踏まえると、エンジン22の目標パワーPe*が上限パワーPelim以下となることが分かる。
Pe*=Td*・Nd-Pb1* (2)
こうしてエンジン22の目標パワーPe*および目標回転数Ne*が得られると、HVECU70は、エンジン22の回転数Neや目標回転数Ne*、目標パワーPe*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρ0とを用いて、式(3)により、モータMG1のトルク指令Tm1*を演算する(ステップS320)。ここで、式(3)は、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるためのフィードバック制御の関係式である。式(3)において、右辺第1項は、フィードフォワード項であり、右辺第2項は、フィードバック項の比例項であり、右辺第3項は、フィードバック項の積分項である。右辺第1項は、エンジン22から出力されてプラネタリギヤ30を介してモータMG1の回転軸に作用するトルクをモータMG1により受け止めるためのトルクである。右辺第2項の「kp」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「ki」は積分項のゲインである。
Tm1*=-(Pe*/Ne*)・{ρ0/(1+ρ0)}+kp・(Ne*-Ne)+ki・∫(Ne*-Ne)dt (3)
次に、HVECU70は、目標駆動力Td*を有段変速機60の変速比Gratで除して、有段変速機60の入力軸61に出力すべき目標駆動力Tin*を演算する(ステップS330)。ここで、有段変速機60の変速比Gratとしては、例えば、モータMG2の回転数Nm2(有段変速機60の入力軸61の回転数)を駆動軸36の回転数Ndで除して得られる値が用いられる。
続いて、HVECU70は、式(4)に示すように、目標駆動力Tin*からトルク(−Tm1*/ρ)を減じて、モータMG2のトルク指令Tm2*の仮値である仮トルクTm2tmpを演算する(ステップS340)。ここで、式(4)において、トルク(−Tm1*/ρ)は、モータMG1をトルク指令Tm1*で駆動するときにモータMG1から出力されてプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルクを意味する。
Tm2tmp=Td*/Grat+Tm1*/ρ0 (4)
続いて、HVECU70は、式(5)に示すように、モータMG1のトルク指令Tm1*と回転数Nm1との積をバッテリ50の出力制限Woutから減じてこれをモータMG2の回転数Nm2で除して、モータMG2のトルク制限Tm2maxを演算する(ステップS350)。ここで、式(5)において、モータMG1のトルク指令Tm1*と回転数Nm1との積は、モータMG1の電力(モータMG1を力行駆動するときが正の値)を意味する。そして、式(6)に示すように、モータMG2の仮トルクTm2tmpおよびトルク制限Tm2maxのうちの小さい方をモータMG2のトルク指令Tm2*として設定する(ステップS360)。
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (5)
Tm2*=min(Tm2tmp,Tm2max) (6)
Tm2*=min(Tm2tmp,Tm2max) (6)
こうしてエンジン22の目標パワーPe*および目標回転数Ne*やモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*が得られると、HVECU70は、エンジン22の目標パワーPe*および目標回転数Ne*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS370)、本ルーチンを終了する。
エンジンECU24は、エンジン22の目標パワーPe*および目標回転数Ne*を受信すると、エンジン22が目標パワーPe*および目標回転数Ne*に基づいて運転されるようにエンジン22の運転制御(例えば、吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を行なう。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
こうした制御により、要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1以下のときには、エンジン22が目標回転数Ne*(ドラビリ用回転数Nedrv)で運転されると共に要求駆動力Tdusrが設定された目標駆動力Td*がバッテリ50の出力制限Woutの範囲内で駆動軸36に出力されるようにエンジン22とモータMG1,MG2とを制御することになる。
ステップS190で要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1よりも大きいときには、HVECU70は、要求充放電パワーPb1*でのバッテリ50の充放電を伴って要求駆動力Tdusrを駆動軸36に出力することができないと判断する。このときには、HVECU70は、バッテリパワー補填が要求されていると判断する。ここで、バッテリパワー補填は、要求充放電パワーPb1*よりも放電側に大きい(充電側に小さい)電力でのバッテリ50の充放電により駆動軸36に出力可能な駆動力を上限駆動力Tdlim1よりも大きくすることを意味する。
続いて、HVECU70は、式(7)に示すように、要求駆動力Tdusrから上限駆動力Tdlim1を減じてこれに駆動軸36の回転数Ndを乗じてバッテリ50の要求補填パワーPcoreqを演算する(ステップS230)。続いて、バッテリ50の蓄電割合SOCと補填可能パワー設定用マップとを用いて、バッテリ50の出力制限Wout以下の範囲内で補填可能パワーPcolimを設定する(ステップS240)。ここで、補填可能パワー設定用マップは、バッテリ50の蓄電割合SOCと補填可能パワーPcolimとの関係として予め設定され、図示しないROMに記憶されている。
Pcoreq=(Tdusr-Tdlim1)・Nd (7)
図12は、補填可能パワー設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、バッテリ50の補填可能パワーPcolimは、バッテリ50の蓄電割合SOCが目標割合SOC*よりも小さい閾値Slo1以上のときには、上述の所定パワーPdi1よりも十分に大きい放電用の所定パワーPdi2が設定される。また、補填可能パワーPcolimは、蓄電割合SOCが閾値Slo1よりも小さく且つ閾値Slo1よりも小さい閾値Slo2よりも大きいときには、蓄電割合SOCが小さいほど所定パワーPdi2から値0に向かって小さくなるように設定される。さらに、補填可能パワーPcolimは、蓄電割合SOCが閾値Slo2以下のときには、値0が設定される。
こうしてバッテリ50の要求補填パワーPcoreqおよび補填可能パワーPcolimが得られると、HVECU70は、式(8)に示すように、バッテリ50の要求補填パワーPcoreqおよび補填可能パワーPcolimのうちの小さい方をバッテリ50の目標補填パワーPcotagとして設定する(ステップS250)。
Pcotag=min(Pcoreq,Pcolim) (8)
続いて、HVECU70は、前回の要求駆動力(前回Tdusr)と前回の第1上限駆動力(前回Tdlim1)とを比較する(ステップS260)。この処理は、要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1よりも大きくなった直後であるか否か、即ち、バッテリパワー補填の要求が開始された直後であるか否かを判定する処理である。
ステップS260で前回の要求駆動力(前回Tdusr)が前回の第1上限駆動力(前回Tdlim1)以下のときには、HVECU70は、バッテリパワー補填の要求が開始された直後であると判断し、バッテリ50の要求補填パワーPcoreqとレート値設定用マップとを用いてレート値αを設定する(ステップS270)。ここで、レート値αは、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を目標補填パワーPcotagに向かって増加させる際に用いられる。レート値設定用マップは、要求補填パワーPcoreqとレート値αとの関係として予め設定され、図示しないROMに記憶されている。図13は、レート値設定用マップの一例を示す説明図である。図示するように、レート値αは、要求補填パワーPcoreqが大きいほど大きくなるように設定される。この理由については後述する。
ステップS260で前回の要求駆動力(前回Tdusr)が前回の第1上限駆動力(前回Tdlim1)よりも大きいときには、HVECU70は、バッテリパワー補填の要求が開始された直後でない(この要求が継続中である)と判断し、ステップS270の処理を実行しない。
続いて、HVECU70は、アクセル開度Accの増加に伴う有段変速機60のダウンシフトであるパワーオンダウンシフトを行なうときであるか否かを判定する(ステップS280)。ここで、パワーオンダウンシフトを行なうときは、例えば、アクセル開度Accが増加して有段変速機60のダウンシフト線を跨いでパワーオンダウンシフトを行なうと判定してから、有段変速機60のダウンシフトが完了するまでを意味する。
有段変速機60のパワーオンダウンシフトを行なわないときには、HVECU70は、式(9)に示すように、前回のバッテリ50の実行用補填パワー(前回Pb2*)にレート値αを加えた値とバッテリ50の目標補填パワーPcotagとのうちの小さい方をバッテリ50の要求充放電パワーPb2*として設定する(ステップS282)。このステップS280の処理は、レート値αを用いたレート処理をバッテリ50の目標補填パワーPcotagに施してバッテリ50の要求充放電パワーPb2*を演算する処理である。
Pb2*=min(前回Pb2*+α,Pcotag) (9)
したがって、HVECU70は、本ルーチンの繰り返しの実行により、バッテリパワー補填の要求が継続しているときに、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を、バッテリ50の目標補填パワーPcotagに向かって徐々に増加させることになる。また、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*が目標補填パワーPcotagに至った後には、要求駆動力Tdusrと上限駆動力Tdlim1との差分ひいては目標補填パワーPcotagが徐々に低下する(値0に近づく)のに伴って、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を徐々に低下させる(値0に近づける)ことになる。
こうしてバッテリ50の要求充放電パワーPb2*が得られると、HVECU70は、式(10)に示すように、エンジン22の上限パワーPelimとバッテリ50の要求充放電パワーPb1*,Pb2*との総和を駆動軸36の回転数Ndで除して上限駆動力Tdlim2を演算する(ステップS290)。
Tdlim2=(Pelim+(Pb1*+Pb2*))/Nd (10)
ここで、上限駆動力Tdlim2は、エンジン22の目標回転数Ne*(ドラビリ用回転数Nedrv)での運転を伴ってエンジン22から上限パワーPelimを出力すると共にバッテリ50が要求充放電パワーPb1*,Pb2*の和のパワーで充放電するときに駆動軸36に出力可能な駆動力の上限を意味する。この上限駆動力Tdlim2は、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を考慮している点で、上述の上限駆動力Tdlim1とは相違する。式(10)において、エンジン22の上限パワーPelimにバッテリ50の要求充放電パワーPb1*,Pb2*の和を加えるのは、バッテリ50が要求充放電パワーPb1*,Pb2*の和のパワーで充放電するときにエンジン22から出力するパワーを変化させないためである。
こうして上限駆動力Tdlim2が得られると、HVECU70は、式(11)に示すように、要求駆動力Tdusrおよび上限駆動力Tdlim2のうちの小さい方を目標駆動力Td*として設定する(ステップS300)。続いて、式(12)に示すように、目標駆動力Td*と駆動軸36の回転数Ndとの積からバッテリ50の要求充放電パワーPb1*,Pb2*の和を減じてエンジン22の目標パワーPe*を演算し(ステップS310)、ステップS320〜S370の処理を実行して、本ルーチンを終了する。
Td*=min(Tdusr,Tdlim2) (11)
Pe*=Td*・Nd-(Pb1*+Pb2*) (12)
Pe*=Td*・Nd-(Pb1*+Pb2*) (12)
ここで、式(13)により得られるエンジン22の目標パワーPe*は、要求充放電パワーPb1*,Pb2*の和のパワーでのバッテリ50の充放電を伴って目標駆動力Td*を駆動軸36に出力するのに必要なエンジン22のパワーを意味する。また、要求駆動力Tdusrおよび上限駆動力Tdlim2のうちの小さい方を目標駆動力Td*として設定するから、式(11)および式(13)を踏まえると、エンジン22の目標パワーPe*が上限パワーPelim以下となることが分かる。さらに、ステップS290,S300,S330〜S360の処理から、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*は、上限駆動力Tdlim2や目標駆動力Td*、目標駆動力Tin*、モータMG2のトルク指令Tm2*に反映され、駆動軸36に出力される駆動力に反映されることが分かる。
こうした制御により、要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1よりも大きいときには、エンジン22の上限パワーPelimとバッテリ50の要求充放電パワーPb1*,Pb2*との総和に基づいて上限駆動力Tdlim2を設定し、エンジン22が目標回転数Ne*(ドラビリ用回転数Nedrv)で運転されると共に要求駆動力Tdusrおよび上限駆動力Tdlim2のうちの小さい方として設定された目標駆動力Td*がバッテリ50の出力制限Woutの範囲内で駆動軸36に出力されるようにエンジン22とモータMG1,MG2とを制御することになる。このとき、要求充放電パワーPb2*が正のときには、バッテリ50が要求充放電パワーPb1*,Pb2*の和のパワーで充放電することにより、駆動軸36に上限駆動力Tdlim1よりも大きい駆動力を出力することができる。即ち、バッテリパワー補填が行なわれる。これにより、模擬変速段Gsvのアップシフトに伴う上限駆動力Tdlim1の低下によって上限駆動力Tdlim1が要求駆動力Tdusrよりも小さくなったときに、駆動軸36に出力される駆動力が落ち込むのを抑制することができる。この結果、運転者の運転感覚の悪化を抑制することができる。
しかも、要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1よりも大きく且つパワーオンダウンシフトを行なわないときには、要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1よりも大きくなった(バッテリパワー補填の要求が開始された)直後の要求補填パワーPcoreqが大きいほど大きくなるレート値αを用いて、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を要求補填パワーPcoreqに向かって増加させる。模擬変速段Gsvのアップシフトに伴ってエンジン22の目標回転数Ne*(ドラビリ用回転数Nedrv)などが低下すると、これに追従して(応答遅れをもって)エンジン22の回転数Neや出力パワーPeが低下する。そして、このエンジン22の回転数Neや出力パワーPeの低下速度(単位時間当たりの低下量)は、一般に、要求駆動力Tdusrと上限駆動力Tdlim1との差分が大きいほど大きくなる。したがって、上述のようにレート値αを設定することにより、このアップシフトに伴って上限駆動力Tdlim1が目標駆動力Td*よりも小さくなったときに、駆動軸36に出力される駆動力が落ち込むのをより適切に抑制することができる。なお、エンジン22の出力パワーPeの低下速度とバッテリ50の要求充放電パワーPb2*の増加速度とが略同期するように、要求補填パワーPcoreqとレート値αとの関係を予め実験や解析により定めてレート値設定用マップを作成するのがより好ましい。
ステップS280でパワーオンダウンシフトを行なうときには、HVECU70は、式(13)に示すように、前回のバッテリ50の実行用補填パワー(前回Pb2*)からレート値βを減じた値と値0とのうちの大きい方をバッテリ50の要求充放電パワーPb2*として設定し(ステップS284)、ステップS290〜S370の処理を実行して、本ルーチンを終了する。ここで、レート値βは、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を急峻に(短時間で)値0に低下させるための値として予め定められる。このステップS284の処理は、レート値βを用いたレート処理により、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を値0に向かって低下させて値0で保持する処理である。
Pb2*=max(前回Pb2*-β,0) (13)
こうした制御により、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*が正である(バッテリパワー補填を行なっている)最中にパワーオンダウンシフトを行なうと判定すると、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を急峻に値0に低下させてバッテリパワー補填を終了させることになる。上述したように、有段変速機60のダウンシフトを行なうときには、解放側要素について、第1ステージ解放制御や第2ステージ解放制御では(イナーシャ相に至る前は)、目標駆動力Tin*が小さいほど小さくなるように油圧指令を設定して油圧制御を実行する。したがって、バッテリパワー補填を終了させて目標駆動力Td*ひいては目標駆動力Tin*を小さくすることにより、バッテリパワー補填を制限しない、即ち、目標駆動力Td*ひいては目標駆動力Tin*が小さくなるのを抑制するものに比して、解放側要素の油圧を低くすることができる。この結果、有段変速機60をダウンシフトするときの解放側要素の発熱を抑制することができる。特に、パワーオンダウンシフトのうち飛びダウンシフト(例えば、前進第4速から第2速への飛びダウンシフト)を行なうときには、解放側要素に対応する回転要素の回転数変化が大きいために、解放側要素などの発熱が大きくなりやすい。このため、実施例の制御を行なうことの意義が大きい。なお、解放側要素に対応する回転要素は、前進第4速から第2速への飛びダウンシフトの場合には、クラッチC2に対応する回転要素、即ち、プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sである。また、前進第3速から第1速への飛びダウンシフトの場合には、ブレーキB1に対応する回転要素、即ち、プラネタリギヤ63のサンギヤ63sおよびプラネタリギヤ64のサンギヤ64sである。
図14は、模擬変速段Gsvを前進1速から2速にアップシフトするときの、アクセル開度Accや車速V、模擬変速段Gsv、エンジン22の目標回転数Ne*や実際の回転数Ne、エンジン22の目標パワーPe*や実際の出力パワーPe、要求駆動力Tdusr、上限駆動力Tdlim1、バッテリ50の要求充放電パワーPb1*,Pb2*や実際の充放電パワーPb、目標駆動力Td*、駆動軸36に出力される実際の駆動力(出力駆動力Td)の様子の一例を示す説明図である。図中、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*の欄については、参考のために、バッテリ50の目標補填パワーPcotagも図示した。また、図中、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*や充放電パワーPb、目標駆動力Td*、出力駆動力Tdについて、実線は実施例の様子を示し、一点鎖線は比較例の様子を示す。比較例としては、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を考慮しない場合、即ち、要求駆動力Tdusrと上限駆動力Tdlim1との大小関係に拘わらずにバッテリ50の要求充放電パワーPb2*に値0を設定して上限駆動力Tdlim1,Tdlim2が同一の値になる場合を考えるものとした。
図示するように、比較例では、模擬変速段Gsvのアップシフトに伴う上限駆動力Tdlim1の低下によって上限駆動力Tdlim1が要求駆動力Tdusrよりも小さくなってからその後に要求駆動力Tdusrが上限駆動力Tdlim1以上に至るまでに亘って(時刻t11〜t12)、出力駆動力Tdの要求駆動力Tdusrに対する落ち込みが生じている。
これに対して、実施例では、模擬変速段Gsvのアップシフトに伴う上限駆動力Tdlim1の低下によって上限駆動力Tdlim1が要求駆動力Tdusrよりも小さくなると(時刻t11)、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*ひいては充放電パワーPbが目標補填パワーPcotagに向かって増加して目標補填パワーPcotagに一致することにより、目標駆動力Td*ひいては出力駆動力Tdが上限駆動力Tdlim1よりも大きくなっている(時刻t11〜t12)。このようにして、出力駆動力Tdの要求駆動力Tdusrに対する落ち込みを抑制している。しかも、図14の例では、上限駆動力Tdlim1が要求駆動力Tdusrよりも小さくなると(時刻t11)、エンジン22の出力パワーPeの低下に略同期するようにバッテリ50の要求充放電パワーPb2*ひいては充放電パワーPbが増加することにより、出力駆動力Tdの要求駆動力Tdusrに対する落ち込みをより適切に抑制している。
図15は、バッテリパワー補填を行なっている最中にパワーオンダウンシフトを行なうと判定したときのアクセル開度Acc、目標変速段Gsat*、目標駆動力Td*、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*、解放側要素の油圧指令、有段変速機60の入力軸61の回転数Nin(モータMG2の回転数Nm2)の様子の一例を示す説明図である。図15では、前進第4速から第2速への飛びダウンシフトの場合を図示した。したがって、解放側要素は、クラッチC2となる。また、図中、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*や目標駆動力Td*、解放側要素の油圧指令について、実線は、実施例の様子を示し、一点鎖線は、比較例の様子を示す。比較例としては、パワーオンダウンシフトを行なうときに、バッテリパワー補填を制限しない場合を考えるものとした。
図示するように、比較例では、バッテリパワー補填を行なっている最中の時刻t11に前進第4速から第2速への飛びダウンシフトを行なうと判定しても、バッテリパワー補填を制限しない。このため、目標駆動力Td*ひいては目標駆動力Tin*の低下が抑制され、解放側要素(クラッチC2)の油圧指令が比較的高くなっている。したがって、解放側要素などの発熱の懸念がある。これに対して、実施例では、時刻t11に前進第4速から第2速への飛びダウンシフトを行なうと判定すると、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を低下させるから、目標駆動力Td*ひいては目標駆動力Tin*が低下し、解放側要素の油圧指令を低くすることができる。これにより、解放側要素などの発熱を抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*が正である(バッテリパワー補填を行なっている)最中にパワーオンダウンシフトを行なうと判定すると、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を値0に低下させてバッテリパワー補填を終了させる。これにより、バッテリパワー補填を制限しないものに比して、目標駆動力Td*ひいては有段変速機60の入力軸61の目標駆動力Tin*を小さくすることができるから、解放側要素の油圧を低くすることができる。この結果、有段変速機60、特に、解放側要素などの発熱を抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70は、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*が正である(バッテリパワー補填を行なっている)最中にパワーオンダウンシフトを行なうと判定すると、バッテリ50の要求充放電パワーPb2*を値0に低下させてバッテリパワー補填を終了させるものとした。しかし、バッテリパワー補填を行なっている最中に、パワーオンダウンシフトのうち飛びダウンシフトを行なうと判定したときにだけ、バッテリパワー補填を終了させるものとしてもよい。これは、パワーオンダウンシフトのうち飛びダウンシフトでないダウンシフト(例えば、前進第3速から第2速へのダウンシフトなど)のときには、飛びダウンシフトのときに比して、解放側要素に対応する回転要素の回転数変化が小さいために解放側要素などの発熱が小さいと想定されることに基づく。
実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70は、バッテリ50の要求補填パワーPcoreqに基づくレート値αを用いたレート処理をバッテリ50の目標補填パワーPcotagに施してバッテリ50の要求充放電パワーPb2*を演算するものとした。しかし、レート値αとしては、これに限定されるものではなく、模擬変速段Gsvのアップシフト前およびアップシフト後の変速段に基づく値が用いられるものとしてもよいし、一律の値が用いられるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70は、レート値αを用いたレート処理をバッテリ50の目標補填パワーPcotagに施してバッテリ50の要求充放電パワーPb2*を演算するものとした。しかし、HVECU70は、時定数τを用いたなまし処理をバッテリ50の目標補填パワーPcotagに施してバッテリ50の要求充放電パワーPb2*を演算するものとしてもよい。ここで、時定数τとしては、バッテリ50の要求補填パワーPcoreqに基づく値が用いられるものとしてもよいし、模擬変速段Gsvのアップシフト前およびアップシフト後の変速段に基づく値が用いられるものとしてもよいし、一律の値が用いられるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モードスイッチ90を備え、モードスイッチ90により実行用走行モードとしてドラビリ優先モードが選択され、シフトポジションSPがDポジションでHV走行を行なうときに、HVECU70は、図5および図6のドラビリ優先制御ルーチンを実行するものとした。しかし、モードスイッチ90を備えずに、通常モードでシフトポジションSPがDポジションでHV走行を行なうときに、HVECU70は、図5および図6のドラビリ優先制御ルーチンを実行するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、10段変速の模擬変速機は、4段変速の有段変速機60の第1速〜第3速の各変速段に対して仮想的な変速段が2段ずつ設けられて構成されるものとした。しかし、有段変速機60は、4段変速に限定されるものではなく、2段変速や3段変速としてもよいし、5段変速以上としてもよい。また、仮想的な変速段は、有段変速機60の少なくとも1つの変速段に対して1段や2段など所望の段数で設けられるものとしてもよい。この場合、有段変速機60の各変速段で所望の段数が異なるものとしてもよい。さらに、仮想的な変速段が設けられないものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2は、有段変速機60の入力軸61に直接に接続されるものとした。しかし、モータMG2は、有段変速機60の入力軸61に減速機などを介して接続されるものとしてもよい。また、モータMG2は、有段変速機60の出力軸62に直接に接続されるものとしてもよい。さらに、モータMG2は、有段変速機60の出力軸62に減速機などを介して接続されるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、蓄電装置として、バッテリ50が用いられるものとした。しかし、蓄電装置として、キャパシタが用いられるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とブレーキECU96とHVECU70とを備えるものとした。しかし、これらのうちの少なくとも2つは、単一の電子制御ユニットとして構成されるものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「第1モータ」に相当し、プラネタリギヤ30が「プラネタリギヤ」に相当し、モータMG2が「第2モータ」に相当し、バッテリ50が「蓄電装置」に相当し、エンジンECU24とモータECU40とHVECU70とが「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業などに利用可能である。
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクシャフト、23a クランクポジションセンサ、24 エンジンECU、28 ダンパ、30,63,64,65 プラネタリギヤ、30c,63c,64c,65c キャリヤ、30p,63p,64p,65p ピニオンギヤ、30r,63r,64r,65r リングギヤ、30s,63s,64s,65s サンギヤ、32 伝達部材、36 駆動軸、36a 回転数センサ、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータECU、41,42 インバータ、43,44 回転位置センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリECU、54 電力ライン、60 有段変速機、61 入力軸、62 出力軸、69 トランスミッションケース、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 勾配センサ、90 モードスイッチ、96 ブレーキECU、B1,B2,B3 ブレーキ、C1,C2 クラッチ、MG1,MG2 モータ。
Claims (1)
- エンジンと、第1モータと、前記エンジンと前記第1モータと伝達部材とに3つの回転要素が接続されたプラネタリギヤと、前記伝達部材と車軸に連結された駆動軸との間に取り付けられると共に複数の係合要素を有する有段変速機と、前記伝達部材または前記駆動軸に動力を入出力可能な第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータと電力をやりとりする蓄電装置と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、
アクセル操作量と車速とに基づいて前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定し、
前記アクセル操作量と前記車速とに基づいて、前記有段変速機の変速段または前記有段変速機の変速段に仮想的な変速段を加味した変速段から模擬変速段を設定すると共に、前記有段変速機の目標変速段を設定し、
前記車速と前記模擬変速段とに基づいて前記エンジンの目標回転数を設定し、
前記エンジンを前記目標回転数で運転するときの前記エンジンの上限パワーを設定し、
前記エンジンから前記上限パワーを出力するときの前記駆動軸の第1上限駆動力を設定し、
前記要求駆動力と前記第1上限駆動力との大小関係に基づいて前記駆動軸の目標駆動力を設定し、
前記エンジンが前記目標回転数で運転され且つ前記有段変速機の変速段が前記目標変速段となり且つ前記目標駆動力に基づいて走行するように前記エンジンと前記第1モータと前記第2モータと前記有段変速機とを制御し、更に、前記有段変速機の変速段を変更するときには、前記複数の係合要素のうち係合状態から解放状態に切り替える解放側要素の油圧を前記目標駆動力に基づいて制御する、
ハイブリッド車両であって、
前記制御装置は、
前記要求駆動力が前記第1上限駆動力以下のときには、前記要求駆動力を前記目標駆動力として設定し、
前記要求駆動力が前記第1上限駆動力よりも大きいときには、
前記要求駆動力と前記第1上限駆動力との差分に基づいて前記蓄電装置の目標補填パワーを設定し、
前記エンジンから前記上限パワーを出力すると共に前記蓄電装置が前記目標補填パワーに基づくパワーで充放電する蓄電装置パワー補填を行なうときの前記駆動軸の第2上限駆動力を設定し、
前記要求駆動力および前記第2上限駆動力のうちの小さい方を前記目標駆動力として設定し、
更に、前記制御装置は、前記蓄電装置パワー補填を行なっている最中に、前記アクセル操作量の増加に伴う前記有段変速機の変速段のダウンシフトを判定すると、前記蓄電装置パワー補填を制限する、
ハイブリッド車両。
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Family Applications (1)
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2019
- 2019-08-29 JP JP2019157049A patent/JP2021031038A/ja not_active Withdrawn
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