ところで、半導体ウェハの支持用に板ガラスを用いる場合、板ガラスにも位置合わせ用の切欠き部を設ける必要がある。そのため、この板ガラスの切欠き部に対しても研磨加工を施すことが考えられる。しかしながら、ガラスは一般的に脆性であるため、例えば特許文献1に記載の如き研磨工具を回転させながら切欠き部に押し当てたのでは、切欠き部に多大な負荷が作用し、容易に破損を生じるおそれがある。これでは安定した品質の研磨面を得ることが難しい。
また、板ガラスの切欠き部に角部があると、どうしても割れを生じ易くなるため、例えば角部をR面などの滑らかな曲面に置き換えた形状とすることも考えられる。しかしながら、この場合には、切欠き部の三次元形状がより複雑化するため、特許文献1に記載の如き形態の研磨工具では切欠き部の表面を漏れなく研磨することが難しいおそれがある。
以上の事情に鑑み、本明細書では、板ガラスに設けた切欠き部に対して、割れ等を生じることなく安定した研磨加工をその表面全域に漏れなく施すことを解決すべき技術的課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係る板ガラスの研磨加工方法により達成される。すなわち、この研磨加工方法は、切欠き部を有する板ガラスに研磨加工を施すための方法であって、切欠き部に研磨面を設けたテープを押し当てながらその長手方向に移動させることにより、切欠き部に研磨加工を施す点をもって特徴付けられる。
このように、本発明では、板ガラスに設けた切欠き部の研磨加工に研磨面を設けたテープを用いた点を特徴とする。このように研磨面を設けたテープを切欠き部に押し当てながら移動させることで研磨加工を施すようにすれば、テープが有するフレキシブル性、特に幅方向のフレキシブル性を発揮させて、切欠き部の表面にテープを容易に倣わせることができる。よって、切欠き部がR面などの曲面を含む場合であっても、その表面にテープを倣わせて切欠き部を漏れなく研磨することが可能となる。また、研磨面を設けたテープであれば、研磨対象(切欠き部)に対する当たりも緩やかであり、かつテープの形状が変化しても(例えば幅方向に沿って湾曲したとしても)その研磨性能が大きく低下することもない。よって、従来の円盤式の研磨工具等に比べて、加工中に割れ等が発生する可能性を低くしつつも、安定した研磨加工を施すことが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、切欠き部にテープを押し当てる押当てエリアに向けて、テープをその長手方向一方の側から所定の送り速度で送っている状態で、切欠き部にテープを押し当てるものであってもよい。
このようにテープを押当てエリアに向けて所定の送り速度で送りながら切欠き部に研磨加工を施すようにすれば、絶えず新しい研磨面を切欠き部(押当てエリア)に供給することができる。従って、研磨性能を維持することができ、研磨加工をより安定的に切欠き部に施すことが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、切欠き部にテープを押し当てながらその長手方向に往復移動させるものであってもよい。
このように、テープをその長手方向に往復移動させるようにすれば、単に一方向に移動させる場合と比べて研磨効率を高めることができる。従って、研磨加工に要する時間を短縮して、生産効率を向上させることが可能となる。ところで、テープの研磨面の耐久性(使用可能時間)や経済性を考えた場合には、ある程度速度を小さくしてテープをゆっくりと一定の方向に移動させたほうがよいように思われる。しかし、あまりにテープの移動速度が小さいと、研磨用テープが持つ本来の研磨性能を十分に発揮できない可能性がある。そこで、先に述べた動き(押当てエリアに向けて所定の送り速度でテープを送る動き)と往復移動とを組合わせることにより、テープを万遍なく経済的に使用しつつもテープ本来の研磨性能を十分に発揮させて、良質な研磨加工を施すことが可能となる。もちろん、テープを固定し、テープに比べて脆性な板ガラスを三次元的に移動させつつ研磨する場合と比べて割れ等の危険性も格段に低くなるため、これによっても研磨面の品質を安定させることができる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、押当てエリアを通過するテープと板ガラスの一方を、鉛直方向に対して傾動させるものであってもよい。
このようにテープと板ガラスの一方を傾動させることで、例えば切欠き部の端面(側端面)と、板ガラスの表裏面とをテーパ面やR面などでつないだ形状に研磨仕上げすることができる。よって、ガラスの割れの原因となり易い角部をなるべく減らして割れに強い三次元形状をなす切欠き部とすることが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、押当てエリアを通過するテープと板ガラスの一方を、板ガラスの厚み方向に沿った仮想軸線まわりに傾動させるものであってもよい。
このようにテープと板ガラスの一方を傾動させることで、例えば一対の張設ローラや板ガラスの支持部の大幅な位置変更を行うことなく、切欠き部の底部から側部、板ガラスの周縁部との境界部へとその研磨領域をスムーズに移行することができる。よって、上述した最小限の動作でもって切欠き部に効率よく研磨加工を施すことが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、テープの幅方向寸法を、切欠き部の幅方向寸法よりも小さくしたものであってもよい。なお、ここでいう切欠き部の幅方向寸法とは、板ガラスの周縁部のうち切欠き部を設けた部位における接線方向の開口寸法を意味する。
このようにテープの幅方向寸法を設定すれば、テープを切欠き部に押し当てた際、テープの幅方向端部がまず切欠き部の表面(端面)に当接することになる。そのため、テープの幅方向端部が切欠き部から外れた部位に当接する場合と比べて、テープの幅方向端部が切欠き部の端面に沿って容易に変形し、これによりテープ全体を確実にその幅方向全域にわたって湾曲変形させることが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、研磨面の粒度を300以上でかつ10000以下にしたものであってもよい。
研磨面の粒度を上記範囲に設定したテープを用いることで、実用に足るサイクルタイムで板ガラスの切欠き部に良質な研磨加工を施すことが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、長手方向に移動するテープの研磨面のうち切欠き部に押し当てられる領域又はその上流側領域に向けて、研削液を供給するものであってもよい。
このように研削液をテープの研磨面の所定領域に向けて供給することで、長手方向に移動しながら行われる研磨加工の間、常にテープの研磨面のうち切欠き部に押し当てられる領域に研削液を供給し続けることができる。よって、テープによる切欠き部の研磨効率を一定に維持して、安定した研磨加工を継続的に実施することが可能となる。
また、この場合、本発明に係る研磨加工方法は、研削液を噴射により研磨面に供給するに際し、研削液の噴射方向と、テープの研磨面のうち切欠き部に押し当てられる領域におけるテープの長手方向とがなす角が45度未満となるよう、好ましくは30度未満となるよう、研削液の噴射方向を設定するものであってもよい。
このように研削液を噴射により研磨面に供給することで、上述したようにテープの切欠き部に対する姿勢が変化した場合であっても、常に一定の向きから研削液を研磨面に向けて供給することができる。また、その際の研削液の噴射方向を、切欠き部への押当てエリアを通過するテープの長手方向との関係で所定の範囲(45度未満)に設定することで、研削液が研磨面に勢いよく当たって飛び散る事態を可及的に抑止して、研削液を研磨面に沿って切欠き部との押当てエリアに送ることが可能となる。これにより、研磨性能の更なる安定化を図ることが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工方法は、例えば板ガラスが、半導体ウェハ支持用の板ガラスであるものであってもよい。
上述したように、本発明に係る研磨加工方法によれば、ガラスの如き脆性材料であっても、割れを生じることなく安定した研磨加工をその切欠き部に施すことができる。また、テープが有する幅方向のフレキシブル性により、たとえ半導体ウェハに設けられる如く微小なサイズで複雑な形状の切欠き部であっても、その表面にテープを容易に倣わせて漏れなく研磨することができる。よって、半導体ウェハの切欠き部と同レベルのサイズ及び形状を有する半導体ウェハ支持用の板ガラスの切欠き部に対しても、本発明に係る研磨加工方法を好適に適用することができる。
また、前記課題の解決は、本発明に係る板ガラスの研磨加工装置によっても達成される。すなわち、この研磨加工装置は、切欠き部を有する板ガラスに研磨加工を施すための装置であって、研磨面を設けたテープと、テープを切欠き部に押し当てる向きに相対移動させる押当て移動手段と、テープをその長手方向に移動させる長手方向移動手段とを備える点をもって特徴付けられる。
上述のように、本発明に係る研磨加工装置によれば、本発明に係る研磨加工方法と同様に、研磨面を設けたテープを切欠き部に押し当てながら移動させることで研磨加工を施すことができる。そのため、テープが有するフレキシブル性、特に幅方向のフレキシブル性を発揮させて、切欠き部の表面にテープを容易に倣わせることができる。また、研磨面を設けたテープであれば、形状が変化しても(例えば幅方向に沿って湾曲したとしても)その研磨性能が低下することもない。よって、切欠き部がR面などの曲面を含む場合であっても、その表面にテープを倣わせて切欠き部を漏れなく研磨することが可能となる。また、テープであれば、研磨対象に対する当たりも優しいため、従来の円盤式の研磨工具等に比べて、加工中に割れ等が発生する可能性を低くでき、安定した研磨加工を施すことが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工装置は、長手方向移動手段が、テープとその長手方向一方の側で連続する第一のテープ巻取り体と、テープとその長手方向他方の側で連続する第二のテープ巻取り体と、第一及び第二のテープ巻取り体の間に配設され、テープを支持する複数の支持ローラとを有するものであってもよい。また、この場合、複数の支持ローラのうち、切欠き部にテープを押し当てる押当てエリアの長手方向両側に配設される一対の支持ローラを、押当てエリアを通過するテープを張った状態で支持する一対の張設ローラとしたものであってもよい。
このように構成すれば、押当てエリアを通過するテープに常に一定の張力を付与しつつも、押当てエリアに向けて常に新しい研磨面を供給することができる。よって、効率よく研磨加工を施すことができ、かつ当該研磨加工を安定して継続実施することが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工装置は、長手方向移動手段が、押当てエリアを通過するテープをその長手方向に往復移動させる往復移動手段をさらに有するものであってもよい。
この構成によれば、単に一方向にのみテープを移動させる構成と比べて研磨効率を高めることができる。従って、研磨加工に要する時間を短縮して、生産効率を向上させることが可能となる。また、第一及び第二のテープ巻取り体の間でテープを送る動作と組合わせることで、テープを万遍なくかつ連続的に使用することができる。よって、研磨面の品質をより安定させることができる。また、テープを極力無駄なく使用することにもつながるため、経済的である。
また、この場合、本発明に係る往復移動手段は、一対の張設ローラを一体的に設けたヘッド部を、押当てエリアを通過するテープの長手方向に往復移動させるものであってもよい。
このように構成することで、押当てエリアの両側でテープを張設する一対の張設ローラを、押当てエリアを通過するテープの長手方向に沿って往復移動させることができる。よって、これら一対の張設ローラで支持されるテープ、特に押当てエリアを通過するテープを張った状態でその長手方向に往復移動させることが可能となる。
あるいは、本発明に係る往復移動手段は、複数の支持ローラのうち一対の張設ローラと第一及び第二のテープ巻取り体との間に配設される少なくとも一対の中間支持ローラを一体的に設けたヘッド部を、押当てエリアを通過するテープの長手方向に往復移動させるものであってもよい。
このように構成することで、上述した一対の張設ローラを固定した状態で、中間支持ローラを一体的に設けたヘッド部を往復移動させることができる。これにより、テープと一対の張設ローラとの支持状態を安定させつつ、押当てエリアを通過するテープをその長手方向に往復移動させることができる。よって、テープを極力緩ませることなく往復移動させることができ、テープに必要な張力を安定的に付与することができる。また、押当てエリアに最も近い支持ローラ(一対の張設ローラ)を動かすことなくテープを往復移動させることができるので、切欠き部とテープとの接触態様が安定する効果も期待できる。
あるいは、本発明に係る往復移動手段は、ヘッドベースと、ヘッドベースに対して押当てエリアを通過するテープの長手方向に往復移動するヘッドスライド部とが設けられたヘッド部を有するものであってもよい。また、その場合に、ヘッドスライド部に一対の張設ローラが設けられ、ヘッドベースのうち一対の張設ローラよりも押当てエリアに近い領域に一対の支持ローラが設けられるものであってもよい。
押当てエリアを通過するテープをその長手方向に往復移動させる構成(往復移動手段)をとる場合、テープを掛け渡した状態の支持ローラをテープの往復方向と同じ方向に往復移動させる必要が生じる。そのため、例えばテープを高速で往復移動させようとして、テープを掛け渡した状態の支持ローラ、特に一対の張設ローラを高速で往復移動させると、張設ローラにテープが追従し切れず、テープに弛みが生じやすい。そこで、上述のようにヘッド部をヘッドベースと、ヘッドスライド部とで構成し、ヘッドスライド部に一対の張設ローラを設け、ヘッドベースのうち一対の張設ローラよりも押当てエリアに近い領域に一対の支持ローラを設けるようにした。このように構成すれば、研磨対象となる切欠き部に最も近い支持ローラが切欠き部に対して固定された(相対的な位置関係を維持した)状態で、一対の張設ローラの往復移動により押当てエリアを通過するテープをその長手方向に往復移動させることができる。従って、押当てエリアを通過するテープが弛む事態を可及的に抑制して、往復移動中も研磨するのに十分な張力をテープに与え続けることが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工装置は、第一及び第二のテープ巻取り体のうち、送り側となる一方のテープ巻取り体の回転駆動用モータにバックテンションを与えるようにしたものであってもよい。
このように送り側のテープ巻取り体の回転駆動用モータにバックテンションを与えることで、特にテープの往復移動時、送り側のテープ巻取り体と一方の張設ローラとの間のテープが弛もうとするのを防いで、上記テープの張力を安定させることが可能となる。
また、本発明に係る長手方向移動手段は、各々のテープ巻取り体と、ヘッド部に設けた各々の張設ローラとの間のテープ長をそれぞれ一定に保つためのテープ長調整手段をさらに有するものであってもよい。
このように各々のテープ巻取り体と張設ローラとの間のテープ長を積極的に一定に保つように構成することで、テープの往復移動や姿勢変動(傾動)により上記領域のテープに作用する張力が大きく変動(増加あるいは減少)する場合にあっても、当該張力の変動をそれぞれ打ち消す向きにテープ長を調整することができる。従って、テープに生じる張力の変動を抑制して、切欠き部への押付け力を一定の大きさに制御することが可能となる。
また、この場合、本発明に係るテープ長調整手段は、各々のテープ巻取り体と各々の張設ローラとの間でテープが掛け渡される一対の中間支持ローラをそれぞれ移動させる一対の定圧シリンダで構成されるものであってもよい。
テープ長調整手段を定圧シリンダで構成して、テープが掛け渡される中間支持ローラをそれぞれ移動させるようにすれば、定圧シリンダが持つ優れた圧力変動に対する応答性を活かして、迅速に上記領域間のテープ長を一定の大きさに復帰させることができる。従って、この構成は、特にテープをその長手方向に高速で往復移動させる場合に有効である。
また、往復移動手段がヘッド部を有する場合、本発明に係る研磨加工装置は、ヘッド部に、テープの研磨面のうち切欠き部に押し当てられる領域又はその上流側領域に向けて研削液を供給する研削液供給部を設けたものであってもよい。
このように研削液供給部をヘッド部に設けるようにすれば、押当てエリアを通過するテープが、ヘッド部(あるいはヘッドスライド部)との相対的な位置関係を一定に保ったままで往復移動、あるいは傾動する。そのため、テープが往復移動あるいは傾動した場合であっても、テープに対する研削液の供給位置(少なくとも供給方向)を一定に保つことができ、研削液を安定して切欠き部との押当てエリアに供給することが可能となる。
また、本発明に係る研磨加工装置は、押当て移動手段によりテープを切欠き部に押し当てる向きに相対移動させた際に、テープを切欠き部とは反対の側から切欠き部に向けて押し込む押込み手段をさらに備えるものであってもよい。
このように構成することで、テープの切欠き部への押当てを押込み手段で補助することができる。よって、押当てエリアを通過するテープに付与すべき所定の大きさの張力を付与しつつも、十分にテープを切欠き部の表面に倣わせて、切欠き部の表面を漏れなくかつ十分に(例えば所定の表面粗さに)研磨することが可能となる。
以上に述べたように、本発明によれば、板ガラスに設けた切欠き部に対しても、安定した研磨加工をその表面全域に漏れなく施すことが可能となる。
以下、本発明の第一実施形態を、図1〜図10を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る研磨加工装置10は、切欠き部1を有する板ガラス2に研磨加工を施すためのものであって、研磨面11を設けたテープ12と、テープ12を切欠き部1に押し当てる向きに相対移動させる押当て移動手段13と、テープ12をその長手方向に移動させる長手方向移動手段14とを備える。また、本実施形態では、研磨加工装置10は、テープ12を鉛直方向Zに対して傾動させる第一傾動手段15と、板ガラス2を水平押当て方向Xに対して傾動させる第二傾動手段16とをさらに備える。
ここで、研磨対象となる板ガラス2は、例えば半導体ウェハ支持用の板ガラスであり、図2に示すように略円盤形状をなす。この場合、切欠き部1は、略真円状をなす板ガラス2の周縁部3の一部を切欠いた部分に相当し、その表面は1以上の曲面を含む複数面で構成される。本実施形態では、平面視した状態で、図3に示すように、底部に第一のR面4を配すると共に、その両側に第一のテーパ面5a,5bを配し、かつこれら第一のテーパ面5a,5bと板ガラス2の周縁部3との間を第二のR面6a,6bでそれぞれつないだ形状もしくはこれに準じた形状となるよう、切欠き部1が形成される。また、本実施形態では、断面視した状態で、図4に示すように、鉛直方向(板厚方向)に沿って直線的に伸びる第一のR面4と、板ガラス2の表面7a,7bとを第二のテーパ面8a,8bでそれぞれつないだ形状もしくはこれに準じた形状となるよう、切欠き部1が形成される。もちろん、図示は省略するが、第一のテーパ面5a,5b及び第二のR面6a,6bを板厚方向に断面視した場合にも、第一のR面4と同様の断面形状をなすよう、切欠き部1が形成される。以下、研磨加工装置10の各構成を詳述する。
テープ12は、少なくとも一方の面に研磨面11を有するもので、研磨対象となる切欠き部1の表面に押付けた際、当該表面に倣って変形可能な程度のフレキシブル性を有する。よって、テープ12の材質や厚み寸法などは、例えば上記条件を満たす範囲内において任意に選択使用可能である。ここで、例えば切欠き部1の表面に押し当てた際のテープ12の幅方向のフレキシブル性(切欠き部1の第一のR面4に倣った変形のし易さ)を考慮する場合、その変形前の幅方向寸法Wtは、図5に示すように、切欠き部1の幅方向寸法Wnよりも小さく設定される。
テープ12の研磨面11には、例えばアルミナ、炭化ケイ素、ダイヤモンドなど公知の材質の砥粒をテープ12の基体(PEなどの樹脂製フィルム)に固着したものが使用可能である。また、その粒度は、例えば300以上でかつ10000以内に設定され、好ましくは500以上でかつ3000以内に設定される。
押当て移動手段13は、本実施形態では図1に示すように、板ガラス2を固定支持するための固定支持台17と、固定支持台17に連結された底板部18を直線的に移動可能とする直線移動駆動部19とを有する。また、この際の底板部18の移動方向は、固定支持台17に固定支持した板ガラス2の切欠き部1がテープ12との押当てエリア20でテープ12に押し当てられる向き(図1及び図2中、矢印Aの向き)に設定される。なお、直線移動駆動部19はそのストローク量(言い換えると移動時の位置)によりその駆動及び停止を制御(位置制御)するものであってもよく、テープ12からの反力の大きさによりその駆動及び停止を制御(荷重制御)するものであってもよい。
長手方向移動手段14は、例えば図1に示すように、テープ12とその長手方向一方の側で連続する第一のテープ巻取り体21と、テープ12とその長手方向他方の側で連続する第二のテープ巻取り体22と、第一のテープ巻取り体21と第二のテープ巻取り体22との間に配設され、テープ12を支持する複数の支持ローラとを有する。また、本実施形態では、長手方向移動手段14は、後述するように、切欠き部1にテープ12を押し当てる押当てエリア20を通過するテープ12をその長手方向に往復移動可能とする往復移動手段23をさらに有する。
この場合、第一のテープ巻取り体21と第二のテープ巻取り体22の一方は駆動側(巻取り側)、他方は従動側(送り側)とされ、例えば図示例では、第一のテープ巻取り体21が従動側、第二のテープ巻取り体22が駆動側としてそれぞれ立設する基体24上に配設されている。そのため、第二のテープ巻取り体22の芯部25にはモータ26が連結されており(図2を参照)、このモータ26を回転駆動することで、第一のテープ巻取り体21から第二のテープ巻取り体22に向けて、複数の支持ローラに巻き掛けられたテープ12が各支持ローラの回転を伴ってその長手方向に送られるようになっている。この場合の送り方向は、テープ12が押当てエリア20を図1中の矢印Bで示す向きに通過する方向となる。また、この際のテープ12の送り速度は、モータ26の回転数を調整することで所定の大きさ(例えば50mm/min以上でかつ500mm/min以下)に制御可能である。
複数の支持ローラは、押当てエリア20を通過するテープ12の長手方向両側に配設される一対の張設ローラ27と、一対の張設ローラ27と各々のテープ巻取り体21,22との間に配設される複数の中間支持ローラ28a,28bとで構成される。一対の張設ローラ27は、押当てエリア20を通過するテープ12を張った状態で支持するものである。本実施形態では、複数の中間支持ローラ28a,28bのうち、相対的に押当てエリア20から遠い側の中間支持ローラ28a(本図示例だと4個)が基体24に回転自在に取り付けられ、相対的に押当てエリア20に近い側の中間支持ローラ28b(本図示例だと4個)がヘッド部29に回転自在に取り付けられる。この場合、一対の張設ローラ27は、押当てエリア20に近い側の中間支持ローラ28bと共にヘッド部29に一体的にかつ回転自在に取り付けられる。
一対の張設ローラ27の間に掛け渡されるテープ12、言い換えると、押当てエリア20を通過するテープ12の張力Fは、上述した支持ローラ27,28a,28bの配置態様により調整可能である。また、後述する押当て移動手段13や往復移動手段23の移動態様(ストローク量、移動速度など)によっても調整可能である。
往復移動手段23は、上述した一対の張設ローラ27と、中間支持ローラ28bとが一体的に取付けられたヘッド部29と、ヘッド部29を所定の方向Cに往復移動させる往復移動駆動部30とで構成される。なお、ここでいう所定の方向Cは、押当てエリア20を通過するテープ12の長手方向(すなわち送り方向B)に略一致する。よって、後述のように、第一傾動手段15で固定側(支持部31)に対するテープ12の長手方向が変動した場合、これに応じて固定側に対するヘッド部29の往復移動方向Cが変化するようになっている(詳細は後述する)。
なお、この際のヘッド部29、すなわち一対の張設ローラ27の往復移動量(ストローク量)は任意であるが、あまりに移動量が小さいと十分な研磨を施すことができず、また、あまりに移動量が大きいとテープ12の追従性の観点から、テープ12が緩み、一対の張設ローラ27間を張設されるテープ12の張力Fが低下するおそれがある。以上の観点より、往復移動手段23によるテープ12の往復移動量は0.5mm以上でかつ30mm以下に設定されるのがよく、好ましくは2.0mm以上でかつ15mm以下に設定されるのがよい。また、本実施形態のように、テープ12をその長手方向一方の側から他方の側に所定の送り速度で送ると共にその長手方向(送り方向B)に沿って往復移動させる場合には、当然に、テープ12の往復移動速度を、送り速度よりも大きくすることが肝要である。
なお、往復移動駆動部30には公知の駆動手段が適用でき、例えばモータ、シリンダ、カム機構などの公知の駆動手段を1又は複数組合わせたものが使用可能である。
また、ヘッド部29を往復移動可能に支持する支持部31には、第一傾動手段15が設けられており、これにより、ヘッド部29を鉛直方向に対して、正確には図6に示すように、一対の張設ローラ27の回転軸に平行な第一仮想軸線X1まわりに回動(傾動)可能としている。この第一仮想軸線X1は、テープ12の剛性、切欠き部1のサイズ等の諸条件によって、図6に示す位置から水平方向Xあるいは鉛直方向Zに多少ずれた設定としてもよい。なお、第一傾動手段15についても上述した公知の駆動手段が適用可能である。
また、本実施形態では、板ガラス2の固定支持台17に第二傾動手段16が設けられており、これにより、例えば図7に示すように、板ガラス2を固定支持する固定支持台17に固定支持された板ガラス2をその板厚方向に沿って伸びる第二仮想軸線X2まわりに回動(傾動)可能としている。この第二仮想軸線X2についても、諸条件によって、図7に示す位置から水平方向X,Yに多少ずれた位置に設定してもよい。また、第二仮想軸線X2の姿勢について、本実施形態では、板ガラス2の板厚方向に沿って伸びる向きとしているが、例えば第一傾動手段15により研磨領域(押当てエリア20)におけるテープ12の姿勢が変化する場合、その姿勢に合わせて、すなわち押当てエリア20を通過するテープ12の長手方向に沿って伸びる向きに第二仮想軸線X2を配置することも可能である。なお、第二傾動手段16についても上述した公知の駆動手段が適用可能である。
次に、上記構成の研磨加工装置10を用いた板ガラス2の研磨加工方法の一例を説明する。
まず、図1に示すように、固定支持台17の上に研磨対象となる板ガラス2を載置し、固定支持台17に固定支持した状態で、直線移動駆動部19を駆動させ、底板部18及びこの底板部18に連結される固定支持台17を矢印Aの向きに移動させる。これにより、テープ12が板ガラス2の切欠き部1に押し当てられる(図8)と共に、押し当てられた切欠き部1の表面形状に倣って変形する。ここで、例えば切欠き部1が図3に示すような形状をなす場合、テープ12はまず切欠き部1の第一のテーパ面5a,5bに当接した後、第一のテーパ面5a,5b、及び第一のテーパ面5a,5b間に形成される第一のR面4に倣った形状に変形する(図5)。これにより、テープ12がその幅方向全域にわたって切欠き部1の表面、特に側端面に押し当てられた状態となる。
また、この際、第二のテープ巻取り体22の芯部25に連結されるモータ26を駆動させ、テープ12の長手方向他端が固定された芯部25を回転させることで、第一のテープ巻取り体21から第二のテープ巻取り体22に向けてテープ12を送る。加えて、本実施形態では、図9に示すように、往復移動駆動部30を駆動させて、ヘッド部29及びヘッド部29に設けられた一対の張設ローラ27を上述した矢印Cの向きに沿って一体的に往復移動させることで、一対の張設ローラ27の間に掛け渡されたテープ12をその長手方向に往復移動させる。以上の動作により、切欠き部1の表面に押し当てられたテープ12が、切欠き部1の表面のうちテープ12が押し当てられた領域がテープ12の摺動により研磨され、その表面粗さが所定の大きさ以下に仕上げられる。また、双方のテープ巻取り体21,22によるテープ12の送り動作により、テープ12の研磨面11のうち実際に使用される領域が矢印Bの向きに連続的に移行しながら上記研磨加工が行われる。
このようにしてテープ12を板ガラス2の板厚方向に平行となる向きに配置した状態で切欠き部1の所定の表面(ここでは側端面)に研磨加工を施した後(図4、図6(a))、第一傾動手段15を駆動させ、ヘッド部29を第一仮想軸線X1まわりに傾動させることで、切欠き部1の一方の表面7aと側端面(ここでは第一のR面4)とをつなぐ一方の第二のテーパ面8aに研磨加工を施す(図4、図6(b))。この場合も、第一及び第二のテープ巻取り体21,22の間でテープ12を矢印Bの向きに送ると共に、往復移動駆動部30により押当てエリア20を通過するテープ12をその長手方向(ここでは矢印Cの向き)に往復移動させつつ、テープ12を一方の第二のテーパ面8aに押し当てる。このように一方の第二のテーパ面8aを研磨して、所定の表面粗さに仕上げる。
然る後、再び第一傾動手段15を駆動させ、ヘッド部29を第一仮想軸線X1まわりでかつ先程とは逆の向きに傾動させることで、切欠き部1の他方の表面7bと側端面(第一のR面4)とをつなぐ他方の第二のテーパ面8bに研磨加工を施す(図4、図6(c))。この場合も、第一及び第二のテープ巻取り体21,22の間でテープ12を矢印Bの向きに送ると共に、往復移動駆動部30により押当てエリア20を通過するテープ12をその長手方向(矢印Cの向き)に往復移動させつつ、テープ12を他方の第二のテーパ面8bに押し当てる。このように他方の第二のテーパ面8bを研磨して、所定の表面粗さに仕上げる。
また、以上の研磨加工は、上述した送り動作、往復動作、及び傾動動作に加えて、板ガラス2をその板厚方向に沿って伸びる第二仮想軸線X2まわりに傾動させながら行うようにしてもよい(図7)。その一例を図10に基づき説明する。まず図10(a)に示すように、切欠き部1の一方の(図示例では上方の)第一のテーパ面5bと正面に向き合う位置に板ガラス2の切欠き部1を配置した状態で、上述した矢印A〜Cの向きのテープ12の移動を伴う研磨加工を開始すると共に、所定の速度で板ガラス2を第二仮想軸線X2まわりに所定の角速度で傾動させる。そして、図10(b)に示すように第一のR面4と正面に向き合う位置、次いで図10(c)に示すように他方の(下方の)第一のテーパ面5aと正面に向き合う位置まで板ガラス2を傾動させつつ、矢印A〜Cの向きのテープ12の移動を伴う研磨加工を継続することで、切欠き部1の側端面全域に研磨加工を施す。然る後、第一傾動手段15によりテープ12を図6(b)や図6(c)に示す姿勢に傾動させ、第二傾動手段16により板ガラス2を上述の如く傾動させつつテープ12による研磨加工を実施する。これにより、第一及び第二のR面4,6a,6bと、第一及び第二のテーパ面5a,5b,8a,8bを含む切欠き部1の表面の全域を三次元的に研磨することが可能となる。
このように、本発明では、研磨面11を設けたテープ12を切欠き部1に押し当てながら移動させることで研磨加工を施すようにしたので、テープ12が有するフレキシブル性、特に幅方向のフレキシブル性を発揮させて、切欠き部1の表面にテープ12を容易に倣わせることができる。また、研磨面11を設けたテープ12であれば、形状が変化しても(例えば幅方向に沿って湾曲したとしても)その研磨性能が低下することもない。よって、切欠き部1が図示の如く第一のR面4などの曲面を含む場合であっても、その表面にテープ12を倣わせて切欠き部1を漏れなく研磨することが可能となる。また、テープ12であれば、切欠き部1に対する当たりも優しいため、従来の円盤式の研磨工具等に比べて、加工中に割れ等が発生する可能性を低くでき、良質な研磨加工を安定的に施すことが可能となる。
また、本実施形態では、押当てエリア20を通過するテープ12をその長手方向(矢印Cの向き)に往復移動させつつも、その際に押当てエリア20を通過するテープ12の張力Fを一定の大きさに保つようにしたので、例えばテープ12の裏側からテープ12を押込むための部材を配置せずとも、テープ12に対する板ガラスの押当て移動のみでもって、切欠き部1の表面に研磨面11を圧接させつつ当該研磨面11を摺動させることが可能となる。このように、テープ12の裏側から何らの押込みを付与することなくテープ12で切欠き部1を研磨できるのであれば、脆性なガラスに対して、過度な負荷を極力排除して、安定した押当て状態を再現することができる。従って、効率よく研磨加工を実施できると共に、その際の研磨面の品質をさらに安定させることが可能となる。
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、上述した研磨加工装置10と研磨加工方法は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
図11は、本発明の第二実施形態に係る研磨加工装置10の要部側面図を示している。本実施形態に示す研磨加工装置10は、往復移動手段23の具体的な構成において第一実施形態とは異なる。すなわち、この往復移動手段23は、相対的に押当てエリア20に近い側の中間支持ローラ28bのみをヘッド部29に一体的に設けた構成とし、一対の張設ローラ27を固定側(例えば支持部31から延長した延在部32に回転自在に固定)としている。よって、この場合、往復移動駆動部30は、複数の支持ローラのうち、押当てエリア20に近い側の中間支持ローラ28bのみを、押当てエリア20を通過するテープ12の長手方向(矢印Cの向き)に往復移動可能としている。
このように構成すれば、テープ12と一対の張設ローラ27との支持状態を安定させつつ、押当てエリア20を通過するテープ12をその長手方向に往復移動させることができる。よって、第一実施形態に係る往復移動手段23と比べて、テープ12を極力緩ませることなく往復移動させることができ、テープ12に必要な張力Fを安定的に付与することができる。また、押当てエリア20に最も近い支持ローラ(一対の張設ローラ27)を動かすことなくテープ12を往復移動させることができるので、切欠き部1とテープ12との接触態様も安定する。また、一対の張設ローラ27を往復移動させずにテープ12のみを往復移動させるようにすれば、第一傾動手段15でヘッド部29を大きく傾動させたときに、一対の張設ローラ27が板ガラス2、および固定支持台17に干渉することなくテープ12を往復運動させることができる。したがって、第二のテーパ面8a、8bの面積が大きくなってもこの方式で問題なく研磨することが可能となる。
図12は、本発明の第三実施形態に係る研磨加工装置10の側面図を示している。本実施形態に示す研磨加工装置10は、主に往復移動手段23の具体的な構成において第一及び第二実施形態とは異なる。すなわち、この往復移動手段23は、図12に示すように、支持部31に固定されるヘッドベース33と、ヘッドベース33に対して所定の方向Cに往復移動するヘッドスライド部34とが設けられたヘッド部35を有し、ヘッドスライド部34に一対の張設ローラ27が設けられ、ヘッドベース33のうち一対の張設ローラ27よりも押当てエリア20に近い領域に一対の支持ローラ(以後、押当て側支持ローラ28cと称する。)が設けられる点において、第一及び第二実施形態と相違する。
ここで、ヘッドベース33には、ヘッドスライド部34をヘッドベース33に対して所定の方向Cに往復移動させるための往復移動駆動部36が設けられている。この往復移動駆動部36でヘッドスライド部34を所定の方向Cに往復移動させることで、ヘッドスライド部34に取り付けられた一対の中間支持ローラ28bと一対の張設ローラ27が一体に往復移動する(図13を参照)。ヘッドベース33に取り付けられた押当て側支持ローラ28cは、ヘッドベース33に対して移動しない。よって、図13に示すように各中間支持ローラ28bと張設ローラ27、及び押当て側支持ローラ28cにテープ12を掛け渡した状態で、ヘッドスライド部34を所定の方向Cに往復移動させた場合、押当てエリア20を通過するテープ12がその長手方向に往復移動するようになっている。
なお、この際のヘッドスライド部34の往復移動量(ストローク量)は任意であり、例えば第一実施形態と同様の観点(十分な研磨性能を発揮できるか否か、往復移動時におけるテープ12の追従性が良好か否か)から、テープ12の往復移動量を第一実施形態と同等のレベルに設定することが可能である。
また、ヘッドスライド部34の往復移動速度についても任意であり、例えばその下限は、十分な研磨を施せる程度に設定するのがよく、その上限は、テープ12が緩むことなく一対の押当て側支持ローラ28cの間に張り渡されるテープ12の張力を必要な大きさに維持できる程度に設定するのがよい。具体的には、テープ12の往復移動速度は100mm/sec以上でかつ1500mm/sec以下に設定されるのがよく、好ましくは300mm/sec以上でかつ1000mm/sec以下に設定されるのがよく、より好ましくは500mm/sec以上でかつ700mm/sec以下に設定されるのがよい。なお、本実施形態のように、テープ12をその長手方向一方の側から他方の側に所定の送り速度で送ると共に送り方向Bに沿って往復移動させる場合には、当然に、テープ12の往復移動速度を、送り速度よりも大きくすることが肝要である。
また、ヘッドベース33を回転自在に支持する支持部31には回転駆動部37が設けられており(図14を参照)、この回転駆動部37によって、ヘッドベース33及びヘッドスライド部34を含むヘッド部35を支持部31に対して所定の角度に傾動可能としている。正確には、回転駆動部37を駆動させることにより、図13及び図14に示すように、テープ12の送り方向B及びテープ12の押当て移動方向(板ガラス2の移動方向)Aの何れに対しても直交する向き(図示例でいえばY軸方向)に伸びる第一仮想軸線X1を中心として、ヘッド部35が支持部31に対して正逆何れの向きにも回転して、所定の角度にヘッド部35の姿勢を調整(すなわち傾動)できるように構成されている。本実施形態では、切欠き部1の断面形状(図4を参照)に応じて、板ガラス2の厚み方向に沿って直線的に伸びる第一のR面4を主に研磨するときの第一姿勢(図15(a)中、実線で示す姿勢)と、上側の第二のテーパ面8aを主に研磨するときの第二姿勢(図15(b)中、実線で示す姿勢)、及び下側の第二のテーパ面8bを主に研磨するときの第三姿勢(図15(c)中、実線で示す姿勢)の三つの姿勢を取るよう、回転駆動部37によるヘッド部35の姿勢(角度)を調整できるようになっている。なお、この第一仮想軸線X1の位置は、テープ12の剛性、板ガラス2のサイズ等の諸条件によって、図15に示す位置(テープ12が切欠き部1の表面に押し当てられている箇所から僅かに水平方向Xに離れた位置)から水平方向Xあるいは鉛直方向Zに多少ずれた位置に設定してもよい。
また、ヘッド部35には、テープ12の研磨面11に向けて水等の研削液Lを噴射により供給する研削液供給部38が設けられている(図12等を参照)。この研削液供給部38は、例えば図16に示すように筒状をなすもので、その外周面38aに研削液Lの噴射口39を開口形成してなる。噴射口39の向きはヘッド部35(ヘッドベース33)に対して一定であり、常に押当てエリア20を通過するテープ12の研磨面11又はその少し上流側に研削液Lが指向するよう、噴射口39の向きが所定の角度に設定される(図13)。 また、研削液Lの飛び散りを防止する観点から、研削液Lの噴射方向と、テープ12の研磨面11のうち切欠き部1に押し当てられる領域(すなわち押当てエリア20)におけるテープ12の長手方向とがなす角θ(図13を参照)が45度未満となるよう、好ましくは30度未満となるよう、研削液Lの噴射方向を設定することが好ましい。
また、本実施形態では、長手方向移動手段14は、図12に示すように、各テープ巻取り体21,22と、ヘッド部35に設けた各張設ローラ27,27との間のテープ長(第一のテープ巻取り体21から中間支持ローラ28a1,28a2,28bを介して上側の張設ローラ27に至る間のテープ12の長手方向寸法、及び、第二のテープ巻取り体22から中間支持ローラ28a1,28a2,28bを介して下側の張設ローラ27に至る間のテープ12の長手方向寸法)をそれぞれ一定に保つためのテープ長調整手段40をさらに有する。図12に示す例では、長手方向移動手段14の基体24にローラ移動手段としてのシリンダ41が設けられており、基体24に取り付けられた張設ローラ27側の中間支持ローラ28a2を往復移動可能としている。シリンダ41は定圧で中間支持ローラ28a2を引っ張るように構成されている。
なお、この場合、巻取り側となる第二のテープ巻取り体22だけでなく、送り側となる第一のテープ巻取り体21にモータ42を連結してもよく(図14を参照)、さらに、上述した上側の張設ローラ27との間のテープ12の張力を制御する(変動を抑制する)目的で、送り側のモータ42にバックテンションを与えるようにしてもよい。
また、本実施形態では、ヘッドスライド部34に設けた一対の張設ローラ27を駆動ローラとして、テープ12の巻き付けによる摩擦力をテープ12に付与すると共に巻取りトルクをテープ12に付与してその張力を高めることによって、張設ローラ27間のテープ長(一方の張設ローラ27から押当てエリア20を通過して他方の張設ローラ27に至る間のテープ12の長手方向寸法)を一定に保てるような構成としている。この際、下側のシリンダ41による引張力もしくは第二のテープ巻取り体22のモータ26による牽引力をテープ12に付与してテープ12の張力を高める目的で、テープ12の送り方向B下流側の張設ローラ27(図12でいえば下側の張設ローラ27)にワンウェイクラッチ機能を付加するようにしてもよい。
また、高速でヘッドスライド部34を往復移動させる際の振動を軽減する目的で、例えば図12に示すように、ヘッドベース33側とヘッドスライド部34側との間に、圧縮バネ43やダンパなどの緩衝部材を介在させるようにしてもよい。
次に、上記構成の研磨加工装置10を用いた板ガラス2の研磨加工方法の一例を説明する。
まず、図12に示すように、固定支持台17の上に研磨対象となる板ガラス2を載置し、固定支持台17に固定支持した状態で、直線移動駆動部19を駆動させ、底板部18及びこの底板部18に連結される固定支持台17を矢印Aの向きに移動させる。これにより、テープ12が板ガラス2の切欠き部1に押し当てられる(図13)と共に、押し当てられた切欠き部1の表面形状に倣って変形する。ここで、例えば切欠き部1が図3に示すような形状をなす場合、テープ12はまず切欠き部1の第一のテーパ面5a,5bに当接した後、第一のテーパ面5a,5b、及び第一のテーパ面5a,5b間に形成される第一のR面4に倣った形状に変形する(図5)。これにより、テープ12がその幅方向全域にわたって切欠き部1の表面、特に板ガラス2の厚み方向に沿って直線的に伸びる第一のR面4に押し当てられた状態となる(図4及び図15(a)を参照)。
また、この際、第一及び第二のテープ巻取り体21,22に連結されるモータ26,42をそれぞれ駆動させて、第一のテープ巻取り体21から第二のテープ巻取り体22に向けてテープ12を送る(図12)。加えて、本実施形態では、図13に示すように、往復移動駆動部36を駆動させて、ヘッドスライド部34及びヘッドスライド部34に設けられた中間支持ローラ28bと一対の張設ローラ27を上述した両矢印Cの向きに沿って一体的に往復移動させることで、最も板ガラス2寄りに配設した一対の押当て側支持ローラ28cの間に掛け渡されたテープ12をその長手方向、すなわち両矢印Cの向きに往復移動させる。以上の動作により、板ガラス2の切欠き部1の表面のうちテープ12が押し当てられた領域(第一のR面4のうち厚み方向に直線的に伸びる領域)がテープ12の摺動により研磨され、その表面粗さが所定の大きさ以下に仕上げられる。また、双方のテープ巻取り体21,22によるテープ12の送り動作により、テープ12の研磨面11のうち実際に使用される領域が矢印Bの向きに連続的に移行しながら上記研磨加工が行われる。
このようにして切欠き部1の側端面(第一のR面4)に研磨加工を施した後、回転駆動部37によりヘッド部35及びテープ12を第一仮想軸線X1まわりに回転させて、図4及び図15(b)に示すように、板ガラス2の切欠き部1に設けられた上側の第二のテーパ面8aに沿った向きにテープ12の長手方向を合わせた姿勢とする。そして、図15(b)に示す姿勢を保った状態でテープ12を矢印Bの方向に送りながら第二のテーパ面8aに押し当て、かつ両矢印Cの方向に往復移動させる。これにより、上側の第二のテーパ面8aが厚み方向全域にわたって研磨され、その表面粗さが所定の大きさ以下に仕上げられる。
また、回転駆動部37によりヘッド部35及びテープ12を第一仮想軸線X1まわりに回転させて、図4及び図15(c)に示すように、板ガラス2の切欠き部1に設けられた下側の第二のテーパ面8bに沿った向きにテープ12の長手方向を合わせた姿勢とする。そして、図15(c)に示す姿勢を保った状態でテープ12を矢印Bの方向に送りながら第二のテーパ面8bに押し当て、かつ両矢印Cの方向に往復移動させる。これにより、下側の第二のテーパ面8bが厚み方向全域にわたって研磨され、その表面粗さが所定の大きさ以下に仕上げられる。なお、以上の研磨加工は、第一実施形態と同様、テープ12の送り動作、往復動作、及び傾動動作に加えて、板ガラス2をその板厚方向に沿って伸びる第二仮想軸線X2まわりに傾動(回転)させながら行うようにしてもよい(図7及び図10を参照)。
このように、本実施形態では、ヘッド部35をヘッドベース33と、ヘッドスライド部34とで構成し、ヘッドスライド部34に一対の張設ローラ27を設け、かつヘッドベース33のうち一対の張設ローラ27よりも押当てエリア20に近い領域に一対の支持ローラ(押当て側支持ローラ28c)を設けるようにした。このように構成すれば、ヘッドスライド部34の往復移動時、研磨対象となる切欠き部1に最も近い支持ローラ28cが切欠き部1に対して固定された状態で、言い換えると、ヘッドスライド部34の両矢印Cに沿った往復移動のみに着目した場合に、切欠き部1との位置関係を維持した状態で、押当てエリア20を通過するテープ12をその長手方向Cに往復移動させることができる。従って、ヘッドスライド部34の往復移動時、押当てエリア20を通過するテープ12が弛む事態を可及的に抑制して、往復移動中も研磨するのに十分な張力をテープ12に与え続けることが可能となる。
また、本実施形態では、上述した動作(特にテープ12の往復移動)を伴って研磨加工を行う間、テープ長調整手段40として、二個のシリンダ41により各テープ巻取り体21,22と張設ローラ27,27との間にそれぞれ配設される中間支持ローラ28a1,28a2,28bのうち、基体24に取り付けられた張設ローラ27側の中間支持ローラ28a2,28a2をそれぞれ定圧で引っ張るように構成した(図12を参照)。これにより、例えばヘッドスライド部34の往復移動により、第一のテープ巻取り体21と上側の張設ローラ27との間のテープ長が変化した場合に、テープ長の変化を打ち消す向きに(かつテープ12から中間支持ローラ28a2が受ける反力と釣り合う位置まで)中間支持ローラ28a2を移動させる。具体的には、上述した往復移動によりヘッドスライド部34が図13に示す基準位置から上方に移動して、第一のテープ巻取り体21と上側の張設ローラ27との間のテープ長が増加した場合、図17に示すように、上側のシリンダ41によって、このシリンダ41に対応する上側の中間支持ローラ28a2が、第一のテープ巻取り体21と上側の張設ローラ27との間のテープ長が増加するのを打ち消す向き(図17でいえば右方向)に移動すると共に、下側のシリンダ41によって、このシリンダ41に対応する下側の中間支持ローラ28a2が、上側の中間支持ローラ28a2と反対の向き(図17でいえば左方向)に移動する。これにより、第一のテープ巻取り体21と対応する上側の張設ローラ27との間のテープ長、及び第二のテープ巻取り体22と対応する下側の張設ローラ27との間のテープ長がそれぞれ一定に保たれる。また、ヘッドスライド部34が図13に示す基準位置から下方に移動して、第二のテープ巻取り体22と下側の張設ローラ27との間のテープ長が増加した場合、図18に示すように、下側のシリンダ41によって、このシリンダ41に対応する下側の中間支持ローラ28a2が、第二のテープ巻取り体22と下側の張設ローラ27との間のテープ長が増加するのを打ち消す向き(図18でいえば右方向)に移動すると共に、上側のシリンダ41によって、このシリンダ41に対応する上側の中間支持ローラ28a2が、下側の中間支持ローラ28a2と反対の向き(図18でいえば左方向)に移動する。これにより、第二のテープ巻取り体22と対応する下側の張設ローラ27との間のテープ長、及び第一のテープ巻取り体21と対応する上側の張設ローラ27との間のテープ長がそれぞれ一定に保たれる。
以上より、テープ長調整手段40を備えた研磨加工装置10であれば、ヘッドスライド部34が往復移動する場合においても、各テープ巻取り体21,22と張設ローラ27,27との間のテープ長をそれぞれ一定に保つことができるので、テープ12に生じる張力の変動を抑制して、切欠き部1表面への押付け力を一定の大きさに制御することが可能となる。特に、定圧のシリンダ41で中間支持ローラ28a2を移動させるようにすれば、テープ12の張力(中間支持ローラ28a2に作用する反力)の変動に対する優れた応答性を活かせるので、ヘッドスライド部34(ひいてはテープ12)を高速で往復移動させる場合に好適である。
また、本実施形態では、テープ12の研磨面11のうち押当てエリア20を通過する部分、すなわち切欠き部1に押し当てられる部分の少し上流側の領域に向けて、研削液Lを供給するようにした(図13を参照)。このように研削液Lをテープ12の研磨面11の所定領域に向けて供給することで、長手方向に移動しながら行われる研磨加工の間、常にテープ12の研磨面11のうち直後に切欠き部1に押し当てられる領域に研削液Lを供給し続けることができる。よって、テープ12による切欠き部1の研磨効率を一定に維持して、安定した研磨加工を継続的に実施することが可能となる。特に、本実施形態のようにヘッド部35(正確にはヘッドベース33)に、研削液Lを噴射により供給するための研削液供給部38を設けることで、ヘッド部35が傾動等によりその姿勢を変化させた場合であっても、研削液供給部38とヘッド部35(特にヘッドベース33)との相対的な位置関係は一定に保たれる。従って、押当てエリア20を通過するテープ12が所定の方向Cに往復移動し、あるいは傾動する場合にあっても、テープ12に対する研削液Lの供給位置(少なくとも供給方向)を一定に保つことができ、研削液Lを安定して切欠き部1との押当てエリア20に供給することが可能となる。
次に、本発明の第四実施形態を主に図19及び図20に基づき説明する。
図19は、本発明の第四実施形態に係る研磨加工装置10の要部側面図である。本実施形態に係るヘッド部35の回転駆動部37は、ヘッド部35を所定の姿勢とし、かつ所定の姿勢を基準として、ヘッド部35を第一仮想軸線X1まわりに正逆両方向にそれぞれ所定の速度で繰り返し回転(すなわち揺動)させるように構成されている。例えばヘッド部35が図15(a)〜(c)に示すように三段階の研磨姿勢をとる場合、回転駆動部37は、図15(a)〜(c)に示した各々の姿勢を基準位置として、ヘッド部35を第一仮想軸線X1まわりに揺動(図19(a)〜(c)のそれぞれ二点鎖線で示す姿勢の間を繰り返し回動)させるようになっている。
このようにヘッド部35を揺動(正逆両方向に繰り返し回動)可能とする場合、テープ12の押当てによる切欠き部1の研磨加工は、例えば上述したテープ12の送り動作と往復移動に加えて、テープ12の揺動を伴って行われる。具体的には、まず、図15(a)に示すように、回転駆動部37によりヘッド部35を、切欠き部1の側端面(第一のR面4)に沿った向きにテープ12の長手方向を合わせた姿勢とする。そして、図15(a)に示す姿勢でテープ12を送り方向Bに沿って送ると共に長手方向Cに沿って往復移動させながら、テープ12の研磨面11を第一のR面4に押し当てる。さらに、図15(a)に示すヘッド部35の姿勢を基準として(揺動中心として)、図19(a)に示すようにヘッド部35を揺動させて、押当てエリア20を通過するテープ12を第一仮想軸線X1まわりに一定の振幅幅θ1で揺動させる(図20(a))。これにより、第一のR面4がその厚み方向全域にわたって研磨されると共に、第一のR面4とその厚み方向一方の側(ここでは上側)でつながる第二のテーパ面8aとの間の角部9a、及び第一のR面4とその厚み方向他方の側(ここでは下側)でつながる第二のテーパ面8bとの間の角部9bが研磨される。
然る後、回転駆動部37によりヘッド部35を回転させて、図15(b)に示すように、切欠き部1の第二のテーパ面8aに沿った向きにテープ12の長手方向を合わせた姿勢とする。そして、図15(b)に示す姿勢でテープ12を送り方向Bに沿って送ると共に長手方向Cに沿って往復移動させながら、テープ12の研磨面11を第二のテーパ面8aに押し当てる。さらに、図15(b)に示すヘッド部35の姿勢を基準として(揺動中心として)、図19(b)に示すようにヘッド部35を揺動させて、押当てエリア20を通過するテープ12を第一仮想軸線X1まわりに一定の振幅幅θ2で揺動させる(図20(b))。これにより、第二のテーパ面8aがその厚み方向全域にわたって研磨されると共に、第二のテーパ面8aとその厚み方向一方の側(ここで上側)でつながる一方の表面7aとの間の角部9c、及び既述した第一のR面4との間の角部9aが研磨される。
また、回転駆動部37によりヘッド部35を回転させて、図15(c)に示すように、切欠き部1の第二のテーパ面8bに沿った向きにテープ12の長手方向を合わせた姿勢とする。そして、図15(c)に示す姿勢でテープ12を送り方向Bに沿って送ると共に長手方向Cに沿って往復移動させながら、テープ12の研磨面11を第二のテーパ面8bに押し当てる。さらに、図15(c)に示すヘッド部35の姿勢を基準として(揺動中心として)、図19(c)に示すようにヘッド部35を揺動させて、押当てエリア20を通過するテープ12を第一仮想軸線X1まわりに一定の振幅幅θ3で揺動させる(図20(c))。これにより、第二のテーパ面8bがその厚み方向全域にわたって研磨されると共に、第二のテーパ面8bとその厚み方向他方の側(ここでは下側)でつながる他方の表面7bとの間の角部9d、及び既述した第一のR面4との間の角部9bが研磨される。
このようにテープ12を切欠き部1に押し当てながら揺動させることで、切欠き部1表面のうち主にテープ12が強く押し当てられる領域(すなわち実質的な研磨領域)を細かく変えながら研磨加工を施すことができる。よって、研磨漏れを防いで効率よく研磨加工を施すことができる。また、切欠き部1の表面を、第一のR面4と、第一及び第二のテーパ面8a,8bとの間(角部9a,9b)や、各テーパ面8a,8bと板ガラス2の表面7a,7bとの間(角部9c,9d)を例えばR面などで滑らかにつないだ形状に研磨することができる。従って、割れの原因となり易い角部9a〜9dをなるべく減らして切欠き部1を割れに強い形状に仕上げることが可能となる。特に、本実施形態のようにテープ12を切欠き部1に押し当てながら揺動させると共に、長手方向Cに沿って往復移動させた場合には、切欠き部1に対するテープ12の押し当て力をさらに高めることができる。
図21は、本発明の第五実施形態に係る研磨加工装置10の要部側面図を示している。この研磨加工装置10は、押当て移動手段13によりテープ12を切欠き部1に押し当てる向きに相対移動させた際に、テープ12を切欠き部1とは反対の側から切欠き部1に向けて押し込む押込み手段44をさらに備える点において、第一〜第四実施形態と相違する。具体的には、押込み手段44は、切欠き部1に対応した先端形状をなし、ヘッド部29に一体的に設けられる押込み部材45と、ヘッド部29と押込み部材45との間に配設され、押込み部材45を弾性支持する弾性部材46とを有する。
これにより、例えば押当て移動手段13で板ガラス2をテープ12との押当てエリア20に向けて矢印Aの向きに移動させ、テープ12が切欠き部1に当接した際、切欠き部1とは反対の側から押込み部材45がテープ12に押し当てられる。よって、仮に押当て移動手段13による相対移動でもってテープ12が切欠き部1の表面に倣って十分に変形しない場合も、その変形不足を押込み部材45の押込みにより補って、テープ12を切欠き部1の表面に倣ってもれなく当接(圧接)させることができる。よって、切欠き部1の表面を漏れなくかつ十分に研磨することが可能となる。
また、上記第一及び第二実施形態では、第一傾動手段15による断続的な傾動動作の繰り返しにより、テープ12を互いに異なる三段階の姿勢(図6(a)〜図6(c)に示す姿勢)に配置した場合を例示したが、もちろん、この傾動態様には限られない。例えば研磨すべき切欠き部1の三次元表面形状に応じて、テープ12の姿勢を連続的に変化させつつ研磨加工を実施するようにしても構わない。第二傾動手段16についても同様のことがいえ、上記例示の如く連続的に切欠き部1の向きが変化するように板ガラス2を傾動させる他、図10(a)〜図10(c)でそれぞれ示す向きに断続的に切欠き部1の向きが変化するように板ガラス2を傾動させるようにしても構わない。もちろん、この場合に、第一傾動手段15によりテープ12の姿勢を図6(a)〜図6(c)でそれぞれ示す向きに段階的に変化させつつ研磨加工を施してもよいし、その姿勢を連続的に変化させつつ研磨加工を施してもよい。
また、以上の説明では、板ガラス2をその板厚方向に沿って伸びる第二仮想軸線X2まわりに傾動(回転)させて、切欠き部1に対するテープ12の姿勢を例えば図10(a)〜(c)に示すように変えながら行う場合を例示したが、この際、図示される各姿勢を基準として、板ガラス2を揺動させながら研磨加工を行うようにしてもかまわない。例えば第一実施形態の場合でいえば、図6(a)及び図10(a)に示す姿勢でテープ12を送り方向Bに沿って送ると共に長手方向Cに沿って往復移動させながら、テープ12の研磨面11を第一のR面4に押し当てる。さらに、図10(a)に示す切欠き部1の姿勢を基準として(揺動中心として)、図7に示すように板ガラス2を第二仮想軸線X2まわりに揺動させることで(正逆両方向への回転を繰り返すことで)、相対的にテープ12を切欠き部1の表面上で揺動させる。これにより、第一のR面4だけでなく、第一のR面4とその円周方向両側でつながる第一のテーパ面5a,5bとの間がより滑らかに研磨される。第一のテーパ面5a,5bの研磨加工の際(図10(b)及び図10(c))にも、同様に板ガラス2を第二仮想軸線X2まわりに揺動させることで、第一のテーパ面5a,5bとその円周方向一方の側(第一のR面4とは反対の側)でつながる第二のR面6a,6bとの間がそれぞれより滑らかに研磨される。第二のテーパ面8a,8bを研磨する際にも同様に板ガラス2の揺動を行うことで、周囲の面との間をより滑らかに研磨することができる。可能であれば、テープ12を第二仮想軸線X2まわりに揺動させてもかまわない。もちろん、以上に述べた動作(第二仮想軸線X2まわりの揺動)は、他の実施形態(例えば第二〜第四実施形態)に係る研磨加工方法に適用することも可能である。
なお、以上の説明では、半導体ウェハ支持用の板ガラスに設けた切欠き部に研磨加工を施す場合を例示したが、切欠き部1を有する板ガラス2である限りにおいて、上記以外の用途に係る板ガラス2の切欠き部1に本発明を適用可能である。もちろん、切欠き部1の形状は図示したものには限られない。例えば複数の曲面のみでその表面が構成された切欠き部に本発明を適用することも可能である。
また、以上の説明では、板ガラス2の切欠き部1に本発明を適用する場合を例示したが、もちろん、切欠き部1以外の部位に本発明を適用することも可能である。例えば第二傾動手段16により板ガラス2の傾動範囲を拡大して、切欠き部1だけでなく、切欠き部1を外れた板ガラス2の周縁部3に本発明に係る研磨加工方法又は研磨加工装置10による研磨加工を適用することも可能である。