JP2016190765A - スコロダイトの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトを製造する方法を提供する。
【解決手段】5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトの種結晶を製造する方法であって、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、スコロダイトの製造方法に関する。とりわけ、非鉄製錬工程で産出する中間物からのスコロダイトの製造方法に関する。
銅鉱石などの非鉄製錬原料中には種々の不純物が混入しており、そのような不純物には砒素(As)が含まれる。砒素は有毒元素であり周囲環境への影響を考えて、化学的に安定性の高い形態に変換した上で処分することが望まれる。この点、鉄砒素化合物であるスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の結晶は化学的に安定であることが知られており、長期保存にも適している。
従来、結晶性スコロダイトを製造する方法として一般に採用されてきたのは、5価の砒素溶液に2価又は3価の鉄を加え、酸性条件下、80℃以上で熱処理を行い、結晶性スコロダイトを生成さる方法である。この技術は、例えば、特許第3756687号公報「砒素含有溶液からの砒素の除去および固定方法」、特開2005−161123号公報「煙灰からの砒素除去方法」、特開平11−277075号公報「硫酸鉄溶液中に存在する砒素の除去及び固定方法」、特許第4185541号公報「結晶性の良い鉄砒素化合物の製法」に、その詳細が記載されている。これらの文献には、スコロダイト合成時のFe/Asについて、以下のように開示されている。
特許第3756687号公報では、Fe/As=1.5〜2.0とされる。生成する砒素化合物の結晶性を向上させ、砒素溶出を抑えるため必要とされる。これ以外のモル比でスコロダイトを合成すると結晶性が著しく低下、砒素が溶出しやすくなるとしている。実施例では、「この砒素含有溶液6LにFe/As(モル比)で1.8となるように、Feが40g/Lの鉄含有溶液を3L加え、オートクレーブ内に封入し、165℃まで昇温した。」としている。
特開2005−161123号公報では、Fe/As=1.0〜1.5とされるが、理由については開示されていない。実施例では、「硫酸溶液を用いて煙灰から砒素を浸出し、ろ過して得たpH1.0の浸出液に、pH1.0の硫酸第二鉄水溶液(鉄イオン(Fe3+)濃度80g/L)を、鉄と砒素のモル比が1〜1.5となるように添加し、砒素濃度が10g/L以上の条件下で、混合液を95℃に加温して非晶質の砒酸鉄を結晶化した。」、「鉄と砒素のモル比が1.3〜1.5となるように硫酸第二鉄水溶液を添加し、砒素濃度が15g/Lの条件下で、混合液を95℃に加温して非晶質の砒酸鉄を結晶化した。」としている。
特開平11−277075号公報では、「鉄と砒素の化合物は3<Fe/As<10の領域では沈殿形成の速度が遅くなるので、充分な砒素沈殿率を得るためには、好ましくは1<Fe/As<3あるいはFe/As>10となるように混合する」と記載されている。実施例ではFe/Asは4(実施例1)、1.3(実施例2)、4.5(実施例3)であった。
特許第4185541号公報では、「鉄と砒素の比率はスコロダイト(FeAsO4・2H2O)のモル比に等しいか、あるいは鉄を若干過剰にしておく。具体的にはFe/As比率はモル比で0.9以上とし、1.5±0.2程度とすることが工程管理上、好ましい。」と記載されている。
特許第3756687号公報 特開2005−161123号公報 特開平11−277075号公報 特許第4185541号公報
スコロダイトを長期保管するという観点からは、保管場所の容積を少なくできるほうが保管コストが小さくなり望ましい。ところが、従来はスコロダイトの体積に関する議論が十分ではない。スコロダイトの単位重量当たりの体積が小さく(換言すればかさ密度が大きく)なれば、保管場所の容積を少なくできる。このため、スコロダイトの単位重量当たりの体積を低減する手法が開発されることが有利であろう。
本発明は上記事情に鑑みてなされた創作されたものであり、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトを製造する方法を提供することを課題の一つとする。
従来技術ではスコロダイトを製造する際のFe/Asモル比は1に等しいか、それよりも高く設定されていた。これは、スコロダイトの化学式であるFeAsO4・2H2Oにおいて、Fe/Asモル比が1であることから、未反応のAsを残さないようにすることを考慮したものであると考えられる。しかしながら、本発明者の検討結果によれば、Fe/Asモル比を0.9未満としてスコロダイトを合成する方が、得られるスコロダイトの単位重量当たりの体積が低下することを見出した。
ただし、Fe/Asモル比を0.9未満としてスコロダイトを合成した場合、Feが不足するために未反応Asが残存するという問題が生じる。そこで、Fe/Asモル比を0.9未満として合成したスコロダイトを種結晶として使用したところ、Fe/Asモル比を0.9以上として反応させても、単位重量当たりの体積が小さなスコロダイトが引き続き合成されることが分かった。
本発明は上記知見に基づいて完成したものであり、一側面において、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトの種結晶を製造する方法であって、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する方法である。
本発明に係るスコロダイトの種結晶を製造する方法の一実施形態においては、累積のFe/Asモル比を0.7以下に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する。
本発明に係るスコロダイトの種結晶を製造する方法の別の一実施形態においては、前記酸性水溶液中の当初の5価のAsイオン濃度が2g/L以上である。
本発明に係るスコロダイトの種結晶を製造する方法の更に別の一実施形態においては、種結晶の平均粒度が20μm以上になるまで反応を継続する。
本発明は別の一側面において、本発明に係るスコロダイトの種結晶を製造する方法で得られたスコロダイトを種結晶としてスコロダイトを製造する方法である。
本発明は更に別の一側面において、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトを製造する方法であって、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する工程1と、次いで、累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整して、得られた種結晶の存在下で前記Asイオンの残部を反応させてスコロダイトを製造する工程2とを含む方法である。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の一実施形態においては、種結晶の平均粒度が20μm以上になるまで工程1を継続する。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の別の一実施形態においては、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源を酸性水溶液中に追加的に添加することにより累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整する。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は複数回に分けて追加的に添加される。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、添加する2価及び/又は3価のFeイオンの1回当たりの添加量が酸性水溶液1L当たりに5g以下となるように、Feイオンの供給源を追加的に添加する。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源の追加的添加は、酸性水溶液の温度が50℃を超えた時点から2時間以上経過後に一回目が実施され、更に添加する場合は直前の添加時点から2時間以上経過後にそれぞれ実施される。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、工程2では、累積のFe/Asモル比を1.0以上に調整する。
本発明に係るスコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、反応終点におけるpHが1.2を超える。
本発明は更に別の一側面において、1g当たりの体積が0.7cm3以下である結晶スコロダイトである。
本発明に係る結晶スコロダイトの一実施形態においては、多面体形状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態にある。
本発明に係る結晶スコロダイトの別の一実施形態においては、平均粒度が30μm以上である。
本発明によれば単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが製造可能となる。単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトを種結晶として使用することで、反応溶液中の未反応Asを減少させながら、好ましくは残すことなく、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトを製造可能である。また、スコロダイト製造過程の途中で、Fe/Asモル比を0.9未満から0.9以上に変化させることで、種結晶を分離回収することなく、連続的に単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトを製造することも可能となる。
発明例1の種結晶のSEM写真の例である。 発明例1の種結晶を利用して成長した結晶のSEM写真の例である。
本発明において、「累積のFe/Asモル比」とは、スコロダイトの合成反応開始時からモル比測定時点までに反応液(酸性水溶液)中に添加したAsイオン源からの合計Asモル量に対する、スコロダイトの合成反応開始時からモル比測定時点までに反応液中に添加したFeイオン源からの合計Feモル量の比として定義する。
また、「反応開始時点のFe/Asモル比」とは、スコロダイトの合成反応開始時点での反応液(酸性水溶液)中のAsイオン源からの合計Asモル量に対する、反応開始時点での反応液中のFeイオン源中からのFeモル量の比として与えられる。
また、「分割添加毎のFe/Asモル比」とは、スコロダイトの合成反応開始時からモル比測定時点までに反応液(酸性水溶液)中に添加したAsイオン源からの合計Asモル量に対する、Feイオン源を反応液へ段階的に分けて添加する際の一回当たりに添加するFeイオン源からのFeモル量の比として与えられる。
(1.種結晶の製造)
本発明の一側面においては、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトの種結晶を製造する方法を提供する。5価のAsは例示的には砒酸(H3AsO4)等の形態で与えることができる。砒酸は銅製錬工程で産出する中間物である電解沈殿銅を硫酸浸出した後の硫酸浸出液中に含まれる。そのため、当該硫酸浸出液を原料とすることもできる。2価及び/又は3価のFeは例示的には酸化鉄、硫酸鉄及び塩化鉄、水酸化鉄等の形態で与えることができる。ポリ硫酸第一鉄やポリ硫酸第二鉄も使用可能である。酸性水溶液中のFeイオンは2価及び3価の何れの形態でもよく、これらの混合形態で存在してもよい。但し、スコロダイト中のFeの価数は3価であることから、2価のFeイオンは反応中に3価に酸化される。酸性水溶液は例示的には塩酸酸性、硫酸酸性、硝酸酸性、過塩素酸酸性等の水溶液として与えることができる。銅製錬工程で発生する電解沈殿銅中に含まれる砒酸中のAsからスコロダイトを製造する場合、スコロダイトの合成後液を銅電解槽に戻すことができるため、硫酸酸性の水溶液が好ましい。
スコロダイトの種結晶の単位重量当たりの体積を抑制する観点からは、当該酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させることで、スコロダイトの種結晶を製造することが重要である。スコロダイトの種結晶の単位重量当たりの体積を低下させる効果は、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比が小さい方が大きいことから、累積のFe/Asモル比は好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下であり、更により好ましくは0.6以下であり、更により好ましくは0.5以下であり、更により好ましくは0.4以下であり、更により好ましくは0.3以下である。ただし、累積のFe/Asモル比が小さすぎると生成する種結晶の量が少なくなるため、累積のFe/Asモル比は好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、更により好ましくは0.2以上である。
スコロダイトの化学式であるFeAsO4・2H2Oにおいて、Fe:As=1:1であることから分かるように、本発明においては、Feが不足した状態でスコロダイトの種結晶を製造する。そのため、種結晶の合成が進展して反応溶液中に含まれる全てのFeがスコロダイトの合成に消費されるとAsが反応溶液中に残存することになる。すなわち、反応溶液中のAsは一部のみがスコロダイトの種結晶の製造に消費されることになる。
結晶性スコロダイトの溶解度はpH0.3未満で急速に増大するため、酸性水溶液のpHを反応開始時から反応終了時まで0.3以上に維持することが好ましく、0.6以上に維持することがより好ましく、0.9以上に維持することがより好ましく、1.2以上に維持することがより好ましく、1.25以上に維持することが更により好ましい。また、酸性水溶液のpHが2.2を超えると添加した鉄が水酸化鉄となって沈殿してしまい、鉄が有効にスコロダイトの合成に使われないことから、酸性水溶液のpHを反応開始時から反応終了時まで2.2以下に維持することが好ましく、1.9以下に維持することがより好ましく、1.6以下に維持することが更により好ましい。
反応開始時点における5価のAsイオン濃度は、種結晶なしに大気圧下でスコロダイトを合成する場合はある程度の濃度がないとスコロダイトを合成できないという理由により、2g/L以上であることが好ましく、5g/L以上であることがより好ましい。
スコロダイトの種結晶は上記酸性水溶液を例えば大気圧下で60〜95℃に加熱することにより生成させることができる。反応促進の観点から、反応中は酸性水溶液を攪拌することが好ましい。結晶性のスコロダイトは化学的に安定であり、長期保存にも適している。該スコロダイトの種結晶を含有する残渣と脱砒後液とに固液分離すれば、種結晶を回収することができる。但し、反応速度を高めすぎると、独立した結晶体が多量に発生して種結晶が大きくなりくいので、穏やかな酸化性雰囲気下でスコロダイトの合成反応を起こすことが好ましい。具体的には、酸素雰囲気よりも空気雰囲気とすることが好ましい。
本発明のスコロダイトの種結晶は一実施形態において、単位重量当たりの体積が小さい態様で提供される。体積が小さいことで保管場所に要求される容積が少なくて済むことから、保管場所の確保が容易化すると共に保管費用が安くなるため、経済的に有利である。具体的には、1g当たりの体積を0.9cm3以下とすることができ、更には0.8cm3以下とすることもでき、例えば1g当たりの体積を0.7〜0.9cm3とすることができる。本発明においては、スコロダイトの1g当たりの体積は以下の手順で求める。測定対象となるスコロダイトを40℃の乾燥器で24h以上乾燥した後、その2.5gを、15mLの遠沈管(φ約1cm)の中にロートを使って静かに流し込み、これを遠心機にセットし、13,420g(gは重力加速度=9.8m/s2)の加速度で5分間回転させる。そそて、遠心機から取り出した遠沈管中のスコロダイトの体積から1g当たりの体積を測定する。
また、本発明に係るスコロダイトの種結晶は一実施形態において、多面体形状である。多面体形状であると、各面は平滑であるので凹凸の多いスコロダイトに比べて比表面積が小さくなる。これにより、Asの溶出リスクを低減効果があると考えられる。また、多面体形状の中でも、球形に近い形状であることが比表面積を低下させる観点から好ましい。
本発明に係るスコロダイトの種結晶は一実施形態において、平均粒度が大きい態様で提供される。平均粒度が大きいほうが、単位重量当たりの体積を小さくすることができる。これは、本発明に係るスコロダイトの種結晶は典型的には多面体形状の一次粒子が集合してできた二次粒子の形態となっているところ、複数の一次粒子は面同士がほとんど隙間の見られないような密接した状態で凝集して二次粒子を形成する。このため、二次粒子が大きくなるということは単位体積当たりの空隙が低減されたスコロダイトが製造されることを意味する。また、平均粒度が大きいと含水率を低くしやすいという利点や濾過性が向上するという利点も得られる。そのため、大きな粒径をもつ種結晶を利用するほうが、大きな結晶粒をもつスコロダイトに成長しやすいとから望ましい。
本発明に係るスコロダイトの種結晶は一実施形態において、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した平均粒度(D50)を20μm以上とすることができ、好ましくは25μm以上とすることができ、より好ましくは30μm以上とすることができ、更により好ましくは35μm以上とすることができ、例えば20〜40μmとすることができる。なお、本発明においてスコロダイトの平均粒度(D50)は体積分布に基づいて算出される積算値50%の粒度値である(以下同様)。
(2.別途用意した種結晶を用いる場合のスコロダイトの製造)
本発明に係るスコロダイトの種結晶を利用する場合、反応開始時点のAs/Feを高めた反応系でスコロダイトを製造しても、種結晶の性状が引き続き維持されたスコロダイトを合成可能である。このため、先述したように、Feが不足した状態でスコロダイトを製造すると未反応のAsが残存するが、いったん種結晶を利用すれば、反応開始時点のFe/Asモル比を0.9以上とした酸性水溶液からスコロダイトを製造しても、未反応のAsを減らしながら、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが製造できる。
種結晶を利用するスコロダイトの製造方法においては、未反応のAsを減らすという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を0.9以上に設定することが好ましく、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.0以上に設定することがより好ましく、1.2以上に設定することが更により好ましい。また、Feが多すぎると結晶上に種結晶の形状を維持して結晶成長させられず、独立した結晶体を生じてしまうおそれがあることや、Feに係る無駄なコストを省くという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.8以下に設定することが好ましく、1.5以下に設定することがより好ましい。当該Fe/Asモル比は反応開始時点で達成されていてもよいし、反応途中で段階的に調節することで達成されてもよい。
従って、本発明に係るスコロダイトの製造方法の一実施形態においては、本発明に係る種結晶の共存下で、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトを製造する。このときのスコロダイトの製造条件は、累積のFe/Asモル比を0.9以上に設定する以外は、種結晶の製造方法の説明における記述と同様である。
添加する種結晶の量は、液中のヒ素を種結晶表面上に吸着しながら成長させる上で早く処理できるという理由から液重量に対して多いほど好ましい。具体的には酸性水溶液の質量に対して0.05%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましく、0.8%以上であることが更により好ましい。
こうして得られる結晶スコロダイトは、上記種結晶の形態を保持しつつ成長することができるため、一次粒子の面同士が密接した状態で凝集して粒径が大きくなり、それに応じて単位重量当たりの体積が更に小さくなる。本発明に係るスコロダイトの種結晶を用いて得られたスコロダイトは一実施形態において、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した二次粒子の平均粒度(D50)を30μm以上とすることができ、好ましくは35μm以上とすることができ、より好ましくは40μm以上とすることができ、更により好ましくは45μm以上とすることができ、更により好ましくは50μm以上とすることができ、例えば30〜60μmとすることができる。
また、本発明に係るスコロダイトの種結晶を用いて得られたスコロダイトは一実施形態において、1g当たりの体積を0.7cm3以下とすることができ、更には0.6cm3以下とすることもでき、例えば1g当たりの体積を0.4〜0.7cm3とすることができる。
(3.種結晶を別途用意しない場合のスコロダイトの製造)
上述した種結晶を利用したスコロダイトの製造方法では、種結晶を別途用意し、これを反応系に添加する方法を採用していた。しかしながら、種結晶を反応開始時点で用意していなくても、本発明で目的とする単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトを製造することは可能である。具体的には、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトを製造する方法であって、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する工程1と、次いで、累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整して、得られた種結晶の存在下で前記Asイオンの残部を反応させてスコロダイトを製造する工程2とを含む方法が提供される。
工程1では、先述した種結晶の製造方法と同様の方法により、種結晶をその場(in situ)で製造する。好ましい累積のFe/Asモル比などの条件も同様である。反応開始直後は累積のFe/Asモル比を0.9未満として化学反応を進行させることにより、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが種結晶として生成する。しかしながら、このまま反応を続けていくと、Fe不足により未反応Asが残存することになる。そこで、ある程度の種結晶が生成した段階で、累積のFe/Asモル比を変化させて0.9以上に調整し、残部のAsイオンを反応させる。このように、累積のFe/Asモル比を途中で0.9以上に変化させても、その後に合成されるスコロダイトは、既に単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが種結晶として反応系に存在していることから、引き続き種結晶の性状を引き継ぐことができる。よって、当該方法によれば、種結晶を別途用意していなくても、未反応Asを減少させつつ、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが製造可能である。
累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整するタイミングは、Feを無駄に使用しなくてよいという理由により、酸性水溶液中に当初含まれる5価のAsイオンの50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上がスコロダイトの種結晶の製造に消費された時点とするのが好ましい。
累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整する方法としては、限定的ではないが、例えば2価及び/又は3価のFeイオンの供給源を酸性水溶液中に追加的に添加する方法が挙げられる。当該イオンの供給源としては、種結晶の説明において述べた酸化鉄、硫酸鉄及び塩化鉄、水酸化鉄等が同様に使用可能である。ポリ硫酸第一鉄やポリ硫酸第二鉄も使用可能である。
追加的に添加する2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は複数回に分けて添加してもよい。複数回に分けて添加することで、一度に添加するFe量を抑制できるので、反応液中のFeイオン濃度を抑制することができるという利点が得られる。反応液中のFeイオン濃度を抑制することで、独立して成長する結晶核を作り難くし、既に存在する種上に結晶を成長させやすいと考えられる。具体的には、追加的に添加する2価及び/又は3価のFeイオンの1回当たりの添加量は、5g/L(反応溶液1L当たりに添加するFeイオンの質量を指す。)以下となるように、好ましくは4g/L以下となるように、より好ましくは3g/L以下となるように、更により好ましくは2g/L以下となるように、例えば0.1〜5g/Lとなるように、Feイオン供給源を添加することが望ましい。
また、追加的に添加する2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は、酸性水溶液中の2価及び/又は3価のFeイオン濃度がスコロダイトの合成のために概ね消費された後に添加することが、反応液中のFeイオン濃度を抑制するので望ましい。具体的には、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源の追加的添加は、酸性水溶液の温度が50℃を超えた時点から2時間以上経過後、好ましくは2.5時間以上経過後、より好ましくは3時間以上経過後に一回目を実施することが望ましい。その後は、直前の添加時点から2時間以上経過後、好ましくは2.5時間以上経過後、より好ましくは3時間以上経過後にそれぞれ実施することが望ましい。
未反応のAsを減らすという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を最終的には1.0以上に調整することが好ましく、1.2以上に調整することがより好ましい。また、Feが多すぎると結晶上に形状を維持して結晶成長させられず、独立した結晶体を生じてしまうおそれがあることや、Feにかかる無駄なコストを省くという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.8以下に調整することが好ましく、1.5以下に調整することがより好ましい。
累積のFe/Asを0.9未満から0.9以上に変化させた後も、スコロダイトの製造条件は種結晶の製造方法の説明における記述と同様である。すなわち、pH、雰囲気、温度等の諸条件は引き続き維持すればよい。最終的に得られるスコロダイトの性状も種結晶と同様のものが得られる。
こうして得られる結晶スコロダイトは、現場で製造した種結晶の形態を保持しつつ成長することができるため、一次粒子の面同士が密接した状態で凝集して粒子径が大きくなり、それに応じて単位重量当たりの体積が更に小さくなる。本発明に係るスコロダイトの種結晶を用いて得られたスコロダイトは一実施形態において、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した二次粒子の平均粒度(D50)を30μm以上とすることができ、好ましくは35μm以上とすることができ、より好ましくは40μm以上とすることができ、更により好ましくは45μm以上とすることができ、更により好ましくは50μm以上とすることができ、例えば30〜60μmとすることができる。
また、本発明に係るスコロダイトの種結晶を用いて得られたスコロダイトは一実施形態において、1g当たりの体積を0.7cm3以下とすることができ、更には0.6cm3以下とすることもでき、例えば1g当たりの体積を0.4〜0.7cm3とすることができる。
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をより良く理解するために提示するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(比較例1)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が10g/L、5価のAsイオン濃度が5g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=2.7)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.29であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.3%であった。収率はAsの処理前後の液濃度の差から固定化率を計算し、それを収率とした(以下同様。)。なお、Fe添加量がAs量に対して少ない場合は添加したFeと1:1でスコロダイト合成するはずのAs量を100%として固定化率を計算した。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(当初のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.26であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は75.2%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(比較例2)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が10g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.16であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.4%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.27であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は75.3%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(比較例3)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が10g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、酸素ガスを積極的に通気しながら、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.08であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.8%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.26であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は76.8%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(比較例4:スコロダイトの連続製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が20g/L、5価のAsイオン濃度が20g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら7時間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは0.91であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は76.5%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(発明例1:別個に製造した種結晶を使用したスコロダイトの製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が5g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.67)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.18であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は100%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトの種結晶をSEMにより観察したところ、図1に示すような多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.26であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は72.2%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトをSEMにより観察したところ、図2に示すような多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(発明例2:スコロダイトの連続製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.27)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら19日間スコロダイトの合成を行った。
酸性水溶液中のFeはAsとの反応によって消費されるところ、酸性水溶液の温度が50℃を超えてから3日後(2回目)、7日後(3回目)、11日後(4回目)、及び13日後(5回目)に、酸性水溶液中に硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)の試薬を添加したFe量が2g/L(分割添加毎のFe/As=0.27)となるようにそれぞれ添加し、最終的には硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)の試薬を合計Fe量が10g/Lとなるように添加して、累積のFe/Asモル比を1.34とした。反応終了時のpHは1.31であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。スコロダイトの合成反応中、4回目のFe添加を実施する直前(すなわち、累積Fe/As=0.81)では既に平均粒度が20μm以上の種結晶が生成されていた。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.2%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、この種結晶をSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(発明例3:スコロダイトの連続製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が5g/L、5価のAsイオン濃度が20g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.34)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。
水溶液中のFeはAsとの反応によって消費されるところ、水溶液の温度が50℃を超えてから3.5時間後(2回目)、22時間後(3回目)、及び30.5時間後(4回目)に、反応溶液中に硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)の試薬を添加したFe量が一回当たり2g/L(分割添加毎のFe/As=0.34)となるようにそれぞれ添加し、最終的には硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)の試薬を合計Fe量が20g/Lとなるように添加して、累積のFe/Asモル比を1.36とした。反応終了時のpHは1.31であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。スコロダイトの合成反応中、3回目のFe添加を実施する直前(すなわち、累積Fe/As=0.68)では既に平均粒度が20μm以上の種結晶が生成されていた。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.2%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、この種結晶をSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(発明例4:別個に製造した種結晶を使用したスコロダイトの製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が5g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.54)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら5日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.33であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトの種結晶をSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.4gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.34であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は74%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトをSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(平均粒度の測定)
上記試験で得られた各スコロダイトの平均粒度(D50)をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製の型式MT3300EXII)により測定した。結果を表1に示す。
(1g当たり体積の測定)
上記試験で得られた各スコロダイトの2.5gを、15mLの遠沈管(φ約1cm)の中にロートを使って静かに流し込み、これを遠心機(久保田商事(株)製のKUBOTA 7780II)にセットし、13,420g(gは重力加速度=9.8m/s2)の加速度で5分間回転させた。遠心機から取り出した遠沈管中のスコロダイトの体積から単位重量当たりの体積を測定した。結果を表1に示す。

Claims (16)

  1. 5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトの種結晶を製造する方法であって、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する方法。
  2. 累積のFe/Asモル比を0.7以下に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸性水溶液中の当初の5価のAsイオン濃度が2g/L以上である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 種結晶の平均粒度が20μm以上になるまで反応を継続する請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の方法で得られたスコロダイトを種結晶としてスコロダイトを製造する方法。
  6. 5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液からスコロダイトを製造する方法であって、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させてスコロダイトの種結晶を製造する工程1と、次いで、累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整して、得られた種結晶の存在下で前記Asイオンの残部を反応させてスコロダイトを製造する工程2とを含む方法。
  7. 種結晶の平均粒度が20μm以上になるまで工程1を継続する請求項6に記載の方法。
  8. 2価及び/又は3価のFeイオンの供給源を酸性水溶液中に追加的に添加することにより累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整する請求項6又は7に記載の方法。
  9. 2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は複数回に分けて追加的に添加される請求項8に記載の方法。
  10. 添加する2価及び/又は3価のFeイオンの1回当たりの添加量が酸性水溶液1L当たりに5g以下となるように、Feイオンの供給源を追加的に添加する請求項8又は9に記載の方法。
  11. 2価及び/又は3価のFeイオンの供給源の追加的添加は、酸性水溶液の温度が50℃を超えた時点から2時間以上経過後に一回目が実施され、更に添加する場合は直前の添加時点から2時間以上経過後にそれぞれ実施される請求項8〜10の何れか一項に記載の方法。
  12. 工程2では、累積のFe/Asモル比を1.0以上に調整する請求項6〜11の何れか一項に記載の方法。
  13. 反応終点におけるpHが1.2を超える請求項6〜12の何れか一項に記載の方法。
  14. 1g当たりの体積が0.7cm3以下である結晶スコロダイト。
  15. 多面体形状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態にある請求項14に記載の結晶スコロダイト。
  16. 平均粒度が30μm以上である請求項14又は15に記載の結晶スコロダイト。
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