JP6449706B2 - スコロダイトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スコロダイトの製造方法に関する。とりわけ、非鉄製錬工程で産出する中間物からのスコロダイトの製造方法に関する。
銅鉱石などの非鉄製錬原料中には種々の不純物が混入しており、そのような不純物には砒素(As)が含まれる。砒素は有毒元素であり周囲環境への影響を考えて、化学的に安定性の高い形態に変換した上で処分することが望まれる。この点、鉄砒素化合物であるスコロダイト(FeAsO4・2H2O)の結晶は化学的に安定であることが知られており、長期保存にも適している。
従来、結晶性スコロダイトを製造する方法として一般に採用されてきたのは、5価の砒素溶液に2価又は3価の鉄を加え、酸性条件下、80℃以上で熱処理を行い、結晶性スコロダイトを生成させる方法である。この技術は、例えば、特許第3756687号公報「砒素含有溶液からの砒素の除去および固定方法」、特開2005−161123号公報「煙灰からの砒素除去方法」、特許第4185541号公報「結晶性の良い鉄砒素化合物の製法」に、その詳細が記載されている。これらの文献には、スコロダイト合成時の原料液中のAs濃度について、以下のように開示されている。
特許3756687号公報の段落0018には、砒素が5〜25g/L、鉄が1〜2g/Lであることが示されている。特開2005−161123号公報では、砒素濃度が0.1g/L以上の条件で非晶質の砒酸鉄を沈殿反応により沈殿させた後に、80〜95℃に加温して砒酸鉄を結晶化することが記載されており、実施例での砒素濃度は10g/Lが開示されている。特許第4185541号公報には、析出反応開始前の液(反応前液)の砒素濃度は15g/L(リットル)以上であることが望ましいことが開示されている。そして、砒素濃度が高い方が、処理する際に一度にできる砒素の処理量が増大するため生産性が向上することが開示されている。
このように、結晶性スコロダイトを製造する際の原料液中のAs濃度は高く設定されていたのが実情であり、As濃度が低い原料液から結晶性スコロダイトを高効率で製造する方法は研究が十分になされていない。As濃度が低い原料液から結晶性スコロダイトを効率よく製造することができるようになると、例えば高濃度のAsを含有する原料液で結晶性スコロダイトを製造した後に残留する低濃度のAsを含有する反応後液を利用して結晶性スコロダイトを製造することができるのでプロセス全体でのAsの固定化率を高めることができるといった工業的な利用可能性がある。
この点、低濃度のAsを含有する原料液から結晶性の良好なスコロダイトを製造することに取り組んだ事例が特開2015−17010号公報「スコロダイトの製造方法」に記載されている。当該公報には5価の砒素を含む酸性溶液に2価の鉄を添加して得られた砒素と鉄の混合溶液に対して加熱しながら酸化剤を加えてスコロダイトの沈殿を形成させるに際して、9時間以上に亘って加熱及び酸化剤添加の処理を行って結晶を成長させることで、砒素濃度の低い原料溶液からでも結晶性が良好であって、しかも結晶子径の大きなスコロダイトを製造することができることが記載されている。
当該文献には、種晶を添加した場合、細かな結晶粒子が生成され易くなり、結晶子径が小さい結晶が生じ易くなるため、種晶を添加せずにスコロダイトを成長させるようにすることが好ましいことも記載されている。更に、当該文献には、原料溶液の砒素濃度は、低すぎると生成するスコロダイトの量と比較して処理する液量が増えることから、5g/L程度以上の濃度が好ましいとして、5g/L以上の具体例が掲載されている。そして、実施例において開示される原料溶液中の鉄濃度は砒素濃度よりも高い。
また、特開平11−277075号公報「硫酸鉄溶液中に存在する砒素の除去及び固定方法」においても低濃度のAsを含有する原料液からスコロダイトを製造した事例が実施例2に開示されている。当該実施例ではAsを12.01mg/L、Feを11.75g/Lとしてスコロダイトを製造したことが記載されており、砒素濃度に比べて鉄濃度が極端に高い原料液からスコロダイトを製造している。
特許第3756687号公報 特開2005−161123号公報 特開平11−277075号公報 特許第4185541号公報 特開2015−17010号公報
このように、As濃度が低い原料液から結晶性スコロダイトの製造を試みた事例は特開2015−17010号公報に記載のように存在するものの、当該公報に記載の方法で得られる結晶性スコロダイトの粒径は、当該公報の図1及び図2に記載されたSEM写真から理解できるように、せいぜい10μm程度である。スコロダイトの平均粒度が大きいほうが表面積が全体的に小さくなるので、砒素も溶出しにくくなると考えられる。また、単位重量当たりの体積を小さくすることができるとスコロダイトがコンパクトになり、保管場所の確保が容易となり管理コストも低下すると考えられる。更には、含水率を低くしやすいという利点や濾過性が向上するという利点も得られると考えられる。特開平11−277075号公報の実施例2では低濃度のAsを含有する原料液からスコロダイトを合成しているが、当該方法では平均粒度の大きなスコロダイトが得られないことが本発明者の実験により分かっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされた創作されたものであり、As濃度が低い原料液から結晶粒のより大きな結晶性スコロダイトを製造する方法を提供することを課題の一つとする。
特開2015−17010号公報には種結晶を利用すると細かな結晶粒子が生成され易くなることが記載されている。しかしながら、本発明者の検討結果によれば、粒径の大きな種結晶を利用すると、低濃度のAs及びFeを含有する原料液から結晶粒の大きな結晶性スコロダイトが効率よく製造できることが分かった。
本発明は上記知見に基づいて完成したものであり、一側面において、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、結晶性スコロダイトを製造する方法であって、酸性水溶液中の前記Asイオンの濃度を10g/L以下とし、平均粒度が15μm以上のスコロダイトの種結晶の存在下で前記Asイオン及び前記Feイオンを反応させて結晶性スコロダイトを製造する方法である。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の一実施形態においては、酸性水溶液中の5価のAsイオンの濃度が5g/L未満である。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の別の一実施形態においては、種結晶の平均粒度が20μm以上である。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、種結晶の1g当たりの体積が0.8cm3以下である。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、種結晶は、多面体形状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態である。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、種結晶は、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させることで製造された結晶性スコロダイトである。
本発明は別の一側面において、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、結晶性スコロダイトを製造する方法であって、酸性水溶液中の5価のAsイオンの濃度を10g/L以下とし、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させて平均粒度が15μm以上のスコロダイトの種結晶を製造する工程1と、その後、累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整して、得られた種結晶の存在下で前記Asイオンの残部を反応させて結晶性スコロダイトを製造する工程2とを含む方法である。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の一実施形態においては、種結晶の平均粒度が20μm以上になるまで工程1を継続する。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の別の一実施形態においては、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源を酸性水溶液中に追加的に添加することにより累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整する。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は複数回に分けて酸性水溶液中に追加的に添加される。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、添加する2価及び/又は3価のFeイオンの1回当たりの添加量が酸性水溶液1L当たりに5g以下となるように、Feイオンの供給源を追加的に添加する。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源の追加的添加は、酸性水溶液の温度が50℃を超えた時点から2時間以上経過後に一回目が実施され、更に添加する場合は直前の添加時点から2時間以上経過後にそれぞれ実施される。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、工程2では、累積のFe/Asモル比を1.0以上に調整する。
本発明に係る結晶性スコロダイトを製造する方法の更に別の一実施形態においては、反応終点におけるpHが1.2を超える。
本発明によればAs濃度が低い原料液から結晶粒が大きな結晶性スコロダイトを製造することができる。本発明によれば、例えばAs濃度が低い原料液しか入手できない場合にも望ましい性状の結晶性スコロダイトが得られるので、非鉄製錬工程において必要となるAs処理方法の選択肢が増えることとなり、As処理のための最適なプロセスを設計しやすくなる。
発明例1の種結晶のSEM写真の例である。 発明例1の種結晶を利用して成長した結晶のSEM写真の例である。
本発明において、「累積のFe/Asモル比」とは、スコロダイトの合成反応開始時からモル比測定時点までに反応液(酸性水溶液)中に添加したAsイオン源からの合計Asモル量に対する、スコロダイトの合成反応開始時からモル比測定時点までに反応液中に添加したFeイオン源からの合計Feモル量の比として定義する。
また、「反応開始時点のFe/Asモル比」とは、スコロダイトの合成反応開始時点での反応液(酸性水溶液)中のAsイオン源からの合計Asモル量に対する、反応開始時点での反応液中のFeイオン源中からのFeモル量の比として与えられる。
また、「分割添加毎のFe/Asモル比」とは、スコロダイトの合成反応開始時からモル比測定時点までに反応液(酸性水溶液)中に添加したAsイオン源からの合計Asモル量に対する、Feイオン源を反応液へ段階的に分けて添加する際の一回当たりに添加するFeイオン源からのFeモル量の比として与えられる。
(1.スコロダイトの製造方法)
本発明の一側面においては、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、結晶性スコロダイトを製造する方法であって、酸性水溶液中の前記Asイオンの濃度を10g/L以下とし、平均粒度が15μm以上のスコロダイトの種結晶の存在下で前記Asイオン及び前記Feイオンを反応させて結晶性スコロダイトを製造する方法を提供する。
5価のAsは例示的には砒酸(H3AsO4)等の形態で与えることができる。砒酸は銅製錬工程で産出する中間物である電解沈殿銅を硫酸浸出した後の硫酸浸出液中に含まれる。そのため、当該硫酸浸出液を原料とすることもできる。2価及び/又は3価のFeは例示的には酸化鉄、硫酸鉄及び塩化鉄、水酸化鉄等の形態で与えることができる。ポリ硫酸第一鉄やポリ硫酸第二鉄も使用可能である。酸性水溶液中のFeイオンは2価及び3価の何れの形態でもよく、これらの混合形態で存在してもよい。但し、スコロダイト中のFeの価数は3価であることから、2価のFeイオンは反応中に3価に酸化される。酸性水溶液は例示的には塩酸酸性、硫酸酸性、硝酸酸性、過塩素酸酸性等の水溶液として与えることができる。銅製錬工程で発生する電解沈殿銅中に含まれる砒酸中のAsからスコロダイトを製造する場合、スコロダイトの合成後液を銅電解槽に戻すことができるため、硫酸酸性の水溶液が好ましい。
未反応のAsを減らすという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を0.9以上に設定することが好ましく、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.0以上に設定することがより好ましく、1.2以上に設定することが更により好ましい。また、Feが多すぎると結晶上に種結晶の形状を維持して結晶成長させられず、独立した結晶体を生じてしまうおそれがあることや、Feに係る無駄なコストを省くという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.8以下に設定することが好ましく、1.5以下に設定することがより好ましい。当該Fe/Asモル比は反応開始時点で達成されていてもよいし、反応途中で段階的に調節することで達成されてもよい。
酸性水溶液中のAsイオンの濃度が10g/Lを超える場合は、種結晶の利用の有無にかかわらず大きな結晶粒をもつスコロダイトを製造することは可能であったが、Asイオンの濃度が10g/L以下のようにAsイオン濃度が低い場合は、スコロダイトの結晶粒を大きく成長させることは従来難しかった。そして、従来はAsイオンの濃度が低い場合、種結晶を利用しない方が大きな結晶粒が得られると認識されてきた。しかしながら、本発明者の検討結果によれば、大きな粒径をもつ種結晶を利用すると、種結晶を利用しない場合よりも大きな結晶粒に成長し得ることが分かった。
具体的には、酸性水溶液中のAsイオンの濃度が10g/L以下であっても、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した平均粒度(D50)が15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、更により好ましくは30μm以上、更により好ましくは35μm以上、例えば15〜40μmの大きなスコロダイトの種結晶の存在下でスコロダイトを合成することにより、種結晶よりも更に粒度の大きなスコロダイトを製造することが可能となる。なお、本発明においてスコロダイトの平均粒度(D50)は体積分布に基づいて算出される積算値50%の粒度値である(以下同様)。
酸性水溶液中のAsイオンの濃度は10g/L以下とすることができ、8g/L以下とすることもでき、6g/L以下とすることもでき、5g/L未満とすることもでき、4g/L以下とすることもでき、更には2g/L以下とすることもできる。例えば、0.5〜10g/Lとすることができ、1〜5g/Lとすることもできる。
種結晶として使用するスコロダイトは好ましくは多面体形状である。多面体形状であると、各面は平滑であるので凹凸の多いスコロダイトに比べて比表面積が小さくなる。このような種結晶を利用して製造されるスコロダイトも同様に多面体形状となり、比表面積が小さくなる。これにより、Asの溶出リスクを低減効果があると考えられる。また、多面体形状の中でも、種結晶は球形に近い形状であることが比表面積を低下させる観点から好ましい。
種結晶は多面体形状の複数の一次粒子が面同士がほとんど隙間の見られないような密接した状態で凝集して二次粒子を形成していることが好ましい。このような種結晶を利用して製造されたスコロダイトも同様の二次粒子の形態を保持するため、単位体積当たりの空隙が低減されたスコロダイトが製造可能となる。このような形態のスコロダイトが成長して平均粒度が大きくなることで空隙率の低減効果は更に大きくなる。平均粒度が大きいと含水率を低くしやすいという利点や濾過性が向上するという利点も得られる。
また、種結晶は単位重量当たりの体積が小さい態様で提供されることが好ましい。単位重量当たりの体積が小さい種結晶を利用することで、これにより製造されるスコロダイトの単位重量当たりの体積も小さくなる。体積が小さいことで保管場所に要求される容積が少なくて済むことから、保管場所の確保が容易化すると共に保管費用が安くなるため、経済的に有利である。具体的には、スコロダイトの種結晶の1g当たりの体積は0.9cm3以下であることが好ましく、0.8cm3以下であることがより好ましく、例えば1g当たりの体積を0.7〜0.9cm3とすることができる。本発明においては、スコロダイトの1g当たりの体積は以下の手順で求める。測定対象となるスコロダイトを40℃の乾燥器で24h以上乾燥した後、その2.5gを、15mLの遠沈管(φ約1cm)の中にロートを使って静かに流し込み、これを遠心機にセットし、13,420g(gは重力加速度=9.8m/s2)の加速度で5分間回転させる。そして、遠心機から取り出した遠沈管中のスコロダイトの体積から1g当たりの体積を測定する。
添加する種結晶の量は、液中のヒ素を種結晶表面上に吸着しながら成長させる上で早く処理できるという理由から液重量に対して多いほど好ましい。具体的には酸性水溶液の質量に対して0.05%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましく、0.4%以上であることがより好ましく、0.8%以上であることが更により好ましい。
結晶性スコロダイトの溶解度はpH0.3未満で急速に増大するため、酸性水溶液のpHを反応開始時から反応終了時まで0.3以上に維持することが好ましく、0.6以上に維持することがより好ましく、0.9以上に維持することがより好ましく、1.2以上に維持することがより好ましく、1.25以上に維持することが更により好ましい。また、酸性水溶液のpHが2.2を超えると添加した鉄が水酸化鉄となって沈殿してしまい、鉄が有効にスコロダイトの合成に使われないことから、酸性水溶液のpHを反応開始時から反応終了時まで2.2以下に維持することが好ましく、1.9以下に維持することがより好ましく、1.6以下に維持することが更により好ましい。
スコロダイトは上記酸性水溶液を例えば大気圧下で60〜95℃に加熱することにより生成させることができる。反応促進の観点から、反応中は酸性水溶液を攪拌することが好ましい。結晶性のスコロダイトは化学的に安定であり、長期保存にも適している。得られたスコロダイトを含有する残渣と脱砒後液とに固液分離すれば、スコロダイトを回収することができる。
上記製造方法により得られる結晶性スコロダイトは一実施形態において、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した平均粒度(D50)を30μm以上とすることができ、好ましくは35μm以上とすることができ、より好ましくは40μm以上とすることができ、更により好ましくは45μm以上とすることができ、更により好ましくは50μm以上とすることができ、例えば30〜60μmとすることができる。
また、上記製造方法により得られる結晶性スコロダイトは一実施形態において、1g当たりの体積を0.7cm3以下とすることができ、更には0.6cm3以下とすることもでき、例えば1g当たりの体積を0.4〜0.7cm3とすることができる。
(2.種結晶の製造)
上述したスコロダイトの種結晶の好適な製造方法について説明する。スコロダイトの種結晶も5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から製造可能である。種結晶の製造条件は先述したスコロダイトの製造条件と以下の点で異なる他は同様とすることができる。
種結晶を製造する際、反応開始時点における5価のAsイオン濃度は、種結晶なしに大気圧下でスコロダイトを合成する場合はある程度の濃度がないとスコロダイトを合成できないという理由により、2g/L以上であることが好ましく、5g/L以上であることがより好ましく、8g/L以上であることが更により好ましく、例えば2〜20g/Lとすることができる。
スコロダイトの種結晶の平均粒度を高くするという観点、単位重量当たりの体積を抑制する観点、更には、複数の多面体形状の一次粒子が面同士がほとんど隙間の見られないような密接した状態で凝集した二次粒子の形態にするという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させることで、スコロダイトの種結晶を製造することが好ましい。スコロダイトの化学式であるFeAsO4・2H2Oにおいて、Fe:As=1:1であることから分かるように、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持するということは、Feが不足した状態でスコロダイトの種結晶を製造することを意味する。
特に、スコロダイトの種結晶の平均粒度を大きくする効果やスコロダイトの種結晶の単位重量当たりの体積を低下させる効果は、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比が小さい方が大きいことから、累積のFe/Asモル比は好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.7以下であり、更により好ましくは0.6以下であり、更により好ましくは0.5以下であり、更により好ましくは0.4以下であり、更により好ましくは0.3以下である。ただし、累積のFe/Asモル比が小さすぎると生成する種結晶の量が少なくなるため、累積のFe/Asモル比は好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、更により好ましくは0.2以上である。
また反応速度を高めすぎると、独立した結晶体が多量に発生して種結晶が大きくなりくいので、穏やかな酸化性雰囲気下でスコロダイトの合成反応を起こすことが好ましい。具体的には、酸素雰囲気よりも空気雰囲気とすることが好ましい。
(3.種結晶をその場(in situ)で製造する場合のスコロダイトの製造)
上述した種結晶を利用したスコロダイトの製造方法では、種結晶を別途用意し、これを反応系に添加する方法を採用していた。しかしながら、種結晶を反応開始時点で用意していなくても、種結晶をその場(in situ)で製造し、得られた種結晶を利用して粒径の大きなスコロダイトをAs濃度の低い原料液から製造することが可能である。
具体的には、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、結晶性スコロダイトを製造する方法であって、酸性水溶液中の5価のAsイオンの濃度を10g/L以下とし、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させて平均粒度が15μm以上のスコロダイトの種結晶を製造する工程1と、その後、累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整して、得られた種結晶の存在下で前記Asイオンの残部を反応させてスコロダイトを製造する工程2とを含む方法が提供される。
工程1では、先述した種結晶の製造方法と同様の方法により、種結晶をその場(in situ)で製造する。As濃度の低い原料液から種結晶を製造することになるため、反応開始直後は累積のFe/Asモル比を0.9未満として化学反応を進行させ、粒径が大きく、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトの種結晶を生成させることが重要である。Fe/Asモル比の好ましい範囲は種結晶の製造の段落で先述した通りである。
しかしながら、このまま反応を続けていくと、Fe不足により未反応Asが残存することになる。そこで、ある程度の種結晶が生成した段階で、累積のFe/Asモル比を変化させて0.9以上に調整し、残部のAsイオンを反応させる。このように、累積のFe/Asモル比を途中で0.9以上に変化させても、その後に合成されるスコロダイトは、既に単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが種結晶として反応系に存在していることから、引き続き種結晶の性状を引き継ぐことができる。よって、当該方法によれば、種結晶を別途用意していなくても、未反応Asを減少させつつ、平均粒度が大きく、単位重量当たりの体積の小さなスコロダイトが製造可能である。
累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整するタイミングは、Feを無駄に使用しなくてよいという理由により、酸性水溶液中に当初含まれる5価のAsイオンの50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上がスコロダイトの種結晶の製造に消費された時点とするのが好ましい。
累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整する方法としては、限定的ではないが、例えば2価及び/又は3価のFeイオンの供給源を酸性水溶液中に追加的に添加する方法が挙げられる。当該イオンの供給源としては、種結晶の説明において述べた酸化鉄、硫酸鉄及び塩化鉄、水酸化鉄等が同様に使用可能である。ポリ硫酸第一鉄やポリ硫酸第二鉄も使用可能である。
追加的に添加する2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は複数回に分けて添加してもよい。複数回に分けて添加することで、一度に添加するFe量を抑制できるので、反応液中のFeイオン濃度の上昇を抑制することができるという利点が得られる。反応液中のFeイオン濃度の上昇を抑制することで、独立して成長する結晶核を作り難くし、既に存在する種上に結晶を成長させやすいと考えられる。具体的には、追加的に添加する2価及び/又は3価のFeイオンの1回当たりの添加量は、5g/L(反応溶液1L当たりに添加するFeイオンの質量を指す。)以下となるように、好ましくは4g/L以下となるように、より好ましくは3g/L以下となるように、更により好ましくは2g/L以下となるように、例えば0.1〜5g/Lとなるように、Feイオン供給源を添加することが望ましい。
また、追加的に添加する2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は、酸性水溶液中の2価及び/又は3価のFeイオン濃度がスコロダイトの合成のために概ね消費された後に添加することが、反応液中のFeイオン濃度を抑制するので望ましい。具体的には、2価及び/又は3価のFeイオンの供給源の追加的添加は、酸性水溶液の温度が50℃を超えた時点から2時間以上経過後、好ましくは2.5時間以上経過後、より好ましくは3時間以上経過後に一回目を実施することが望ましい。その後は、直前の添加時点から2時間以上経過後、好ましくは2.5時間以上経過後、より好ましくは3時間以上経過後にそれぞれ実施することが望ましい。
未反応のAsを減らすという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.0以上に調整することが好ましく、1.2以上に調整することがより好ましい。また、Feが多すぎると結晶上に形状を維持して結晶成長させられず、独立した結晶体を生じてしまうおそれがあることや、Feにかかる無駄なコストを省くという観点からは、酸性水溶液中の累積のFe/Asモル比を1.8以下に調整することが好ましく、1.5以下に調整することがより好ましい。
累積のFe/Asを0.9未満から0.9以上に変化させた後も、スコロダイトの製造条件はスコロダイトの製造方法の説明における記述と同様である。すなわち、pH、雰囲気、温度等の諸条件は引き続き維持すればよい。こうして得られる結晶スコロダイトは、現場で製造した種結晶の形態を保持しつつ成長することができるため、一次粒子の面同士が密接した状態で凝集して粒子径が大きくなり、それに応じて単位重量当たりの体積が更に小さくなる。
種結晶をその場(in situ)で製造してスコロダイトを製造する場合でも、得られる結晶性スコロダイトは先述した種結晶を別途用意する場合と同様の性状を有することができる。すなわち、当該製法で得られるスコロダイトは、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した平均粒度(D50)を30μm以上とすることができ、好ましくは35μm以上とすることができ、より好ましくは40μm以上とすることができ、更により好ましくは45μm以上とすることができ、更により好ましくは50μm以上とすることができ、例えば30〜60μmとすることができる。また、当該製法で得られるスコロダイトは、1g当たりの体積を0.7cm3以下とすることができ、更には0.6cm3以下とすることもでき、例えば1g当たりの体積を0.4〜0.7cm3とすることができる。
以下、本発明の実施例を示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をより良く理解するために提示するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(発明例1)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が5g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.67)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.18であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は100%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトの種結晶をSEMにより観察したところ、図1に示すような多面体の結晶が観察された。また、この種結晶をSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.26であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は72.2%であった。収率はAsの処理前後の液濃度の差から固定化率を計算し、それを収率とした(以下同様。)。なお、Fe添加量がAs量に対して少ない場合は添加したFeと1:1でスコロダイト合成するはずのAs量を100%として固定化率を計算した。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトをSEMにより観察したところ、図2に示すような多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(発明例2)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が10g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.16であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.4%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.27であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は75.3%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(比較例1)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が10g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、酸素ガスを積極的に通気しながら、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.08であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.8%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.26であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は76.8%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(比較例2:スコロダイトの連続製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が20g/L、5価のAsイオン濃度が20g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら7時間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは0.91であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は76.5%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(比較例3:スコロダイトの連続製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.3)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.44であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
反応終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後の固体(スコロダイト)はpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られた固体へのヒ素除去率は49%であった。得られた固体は、黄色をしており、X線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認されず、結晶性の悪い化合物であった。
(発明例3)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が10g/L、5価のAsイオン濃度が5g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=2.7)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.29であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.3%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。当該微細結晶の平均粒度をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定すると15μmであった。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(当初のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.8gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.26であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は75.2%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。
(発明例4:スコロダイトの連続製造)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が10g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.27)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら19日間スコロダイトの合成を行った。
酸性水溶液中のFeはAsとの反応によって消費されるところ、酸性水溶液の温度が50℃を超えてから3日後(2回目)、7日後(3回目)、11日後(4回目)、及び13日後(5回目)に、酸性水溶液中に硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)の試薬を添加したFe量が2g/L(分割添加毎のFe/As=0.27)となるようにそれぞれ添加し、最終的には硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)の試薬を合計Fe量が10g/Lとなるように添加して、累積のFe/Asモル比を1.34とした。反応終了時のpHは1.31であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。スコロダイトの合成反応中、4回目のFe添加を実施する直前(すなわち、累積Fe/As=0.81)では既に平均粒度が20μm以上の種結晶が生成されていた。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は99.2%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、この種結晶をSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(発明例5)
硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が5g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=0.54)。その後、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら5日間スコロダイトの種結晶の合成を行った。反応終了時のpHは1.33であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの種結晶の合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトの種結晶をSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
次いで、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)及びヒ酸水素二ナトリウム七水和物(Na2HAsO4・7H2O)の試薬をそれぞれ用意し、これらを500mL容積のフラスコ中で、200mLの硫酸酸性水と混合し、二価の鉄イオン濃度が2g/L、5価のAsイオン濃度が2g/Lの水溶液(pH=1.5)を調製した(反応開始時のFe/Asモル比=1.34)。その後、上記で得られた種結晶0.4gを添加し、大気条件下で、当該水溶液を70℃に加熱し、攪拌しながら6日間スコロダイトの合成を行った。反応終了時のpHは1.34であった。なお、加熱中、蒸発によって液量が減らないように、適宜水を追加して200mLに維持した。
スコロダイトの合成終了後は孔径1μmのPTFE濾紙を使用して吸引ろ過した。次いで、ろ過後のスコロダイトはpH4の硫酸酸性水で再度洗浄して同様の方法で吸引ろ過した。その後、40℃の乾燥器で24h以上乾燥した。得られたスコロダイトの収率は74%であった。得られたスコロダイトをX線回折により分析したところ、結晶性スコロダイトに特徴的なパターンが確認された。また、得られたスコロダイトをSEMにより観察したところ、多面体の一次粒子の面同士が密接に凝集した二次粒子形態の結晶が観察された。
(平均粒度の測定)
上記試験で得られた各スコロダイトの平均粒度(D50)をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製の型式MT3300EXII)により測定した。結果を表1に示す。
(1g当たり体積の測定)
上記試験で得られた各スコロダイトの2.5gを、15mLの遠沈管(φ約1cm)の中にロートを使って静かに流し込み、これを遠心機(久保田商事(株)製のKUBOTA 7780II)にセットし、13,420g(gは重力加速度=9.8m/s2)の加速度で5分間回転させた。遠心機から取り出した遠沈管中のスコロダイトの体積から単位重量当たりの体積を測定した。結果を表1に示す。

Claims (14)

  1. 5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、結晶性スコロダイトを製造する方法であって、酸性水溶液中の前記Asイオンの濃度を10g/L以下とし、平均粒度が15μm以上のスコロダイトの種結晶の存在下で前記Asイオン及び前記Feイオンを反応させて結晶性スコロダイトを製造する方法。
  2. 酸性水溶液中の5価のAsイオンの濃度が5g/L未満である請求項1に記載の方法。
  3. 種結晶の平均粒度が20μm以上である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 種結晶の1g当たりの体積が0.8cm3以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
  5. 種結晶は、多面体形状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態である請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
  6. 種結晶は、5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させることで製造された結晶性スコロダイトである請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
  7. 5価のAsイオンと2価及び/又は3価のFeイオンとを含有する酸性水溶液から、結晶性スコロダイトを製造する方法であって、酸性水溶液中の5価のAsイオンの濃度を10g/L以下とし、累積のFe/Asモル比を0.9未満に維持したまま前記Asイオンの一部を反応させて平均粒度が15μm以上のスコロダイトの種結晶を製造する工程1と、その後、累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整して、得られた種結晶の存在下で前記Asイオンの残部を反応させて結晶性スコロダイトを製造する工程2とを含む方法。
  8. 種結晶の平均粒度が20μm以上になるまで工程1を継続する請求項7に記載の方法。
  9. 2価及び/又は3価のFeイオンの供給源を酸性水溶液中に追加的に添加することにより累積のFe/Asモル比を0.9以上に調整する請求項7又は8に記載の方法。
  10. 2価及び/又は3価のFeイオンの供給源は複数回に分けて酸性水溶液中に追加的に添加される請求項9に記載の方法。
  11. 添加する2価及び/又は3価のFeイオンの1回当たりの添加量が酸性水溶液1L当たりに5g以下となるように、Feイオンの供給源を追加的に添加する請求項9又は10に記載の方法。
  12. 2価及び/又は3価のFeイオンの供給源の追加的添加は、酸性水溶液の温度が50℃を超えた時点から2時間以上経過後に一回目が実施され、更に添加する場合は直前の添加時点から2時間以上経過後にそれぞれ実施される請求項9〜11の何れか一項に記載の方法。
  13. 工程2では、累積のFe/Asモル比を1.0以上に調整する請求項7〜12の何れか一項に記載の方法。
  14. 反応終点におけるpHが1.2を超える請求項7〜13の何れか一項に記載の方法。
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