以下、本発明の一実施形態に係るプリンタ部が採用された複合機1について説明する。複合機1は、図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向A1、前後方向A2、及び左右方向A3である。図1に示す3つの方向は、他の図面においても同様である。
<複合機1の概要>
図1に示すように、複合機1は、概ね薄型の直方体に形成されており、その上面に表示部及び操作ボタンなどを有する。本発明の液体吐出装置の一例であるプリンタ部10が、複合機1の下部に設けられている。複合機1は、スキャナ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。
プリンタ部10は筐体11を有する。筐体11の前壁11aの略中央には、開口12が形成されている。給紙トレイ15及び排紙トレイ16が、上下2段に設けられている。給紙トレイ15は、開口12から前後方向A2に挿抜可能、すなわち、筐体11から着脱可能に構成されている。所望のサイズの用紙Pが給紙トレイ15に載置される。複合機1は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能であり、PCからの記録指令に基づいて記録動作を実行する。また、ユーザによる操作ボタンの操作によっても各種機能を実行する。
<プリンタ部10の内部構造>
次に、プリンタ部10の内部構造について説明する。図2及び図3に示すように、プリンタ部10は、給送部20と、搬送ローラ対35と、記録部40と、ホルダ17と、排紙ローラ対36と、ASF(Auto Sheet Feed)モータ20M(図13参照)と、LF(Line Feed)モータ35M(図13参照)と、メンテナンス部60と、制御部5(図13参照)とを含む。給送部20は、給紙トレイ15に載置される用紙Pを搬送路25へ給送する。搬送ローラ対35は、給送部20によって給紙された用紙Pを記録部40に搬送する。記録部40は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対35によって搬送された用紙Pに画像を記録する。排紙ローラ対36は、記録部40によって記録された用紙Pを排紙トレイ16に排紙する。
ホルダ17は、図3に示すように、筐体11内の前方右側に設けられている。ホルダ17には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)をそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ18a〜18dが取り外し可能に装着される。
<給送部20>
図2に示すように、給送部20が給紙トレイ15の上側に設けられている。給送部20は、給紙ローラ21とアーム22を有する。給紙ローラ21は、アーム22の先端に軸支されている。アーム22は、支軸22aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて給紙ローラ21が給紙トレイ15に接触するように下側へ回動されている。また、アーム22は、給紙トレイ15の挿抜の際に上方へ退避可能に構成されている。給紙ローラ21は、伝達機構(不図示)を介してASFモータ20Mの動力が伝達されて回転し、給紙トレイ15内に積載された用紙Pが、搬送路25へ給送される。
<給紙トレイ15>
図2に示すように、給紙トレイ15は、斜壁部15aを有する。斜壁部15aは、給紙トレイ15に載置される用紙Pが給紙ローラ21によって給送されるときに、用紙Pを搬送路25に案内する。
<搬送路25>
搬送路25は、図2に示すように、所定間隔で対向する外側ガイド25a及び内側ガイド部材25bによって形成されている。搬送路25は、給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ部10の前側へ曲がって構成されている。給紙トレイ15から給送された用紙Pは、搬送路25により下方から上方へUターンするように案内されて記録部40に至る。
<搬送ローラ対35、及び、排紙ローラ対36>
搬送ローラ対35は、下側に配置された搬送ローラ35aと上側に配置されたピンチローラ35bとを有する。搬送ローラ35aは、後述のようにLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。ピンチローラ35bは、搬送ローラ35aの回転に伴って連れ回る。搬送ローラ35aとピンチローラ35bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを記録部40へ搬送する。
排紙ローラ対36は、下側に配置された排紙ローラ36aと、上側に配置された拍車ローラ36bとを有する。排紙ローラ36aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。拍車ローラ36bは、排紙ローラ36aの回転に伴って連れ回る。排紙ローラ36aと拍車ローラ36bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを排紙トレイ16に搬送する。
<記録部40>
図2及び図3に示すように、記録部40は、記録ヘッド41(液体吐出ヘッド)と、ヘッド移動機構50と、プラテン45とを有する。ヘッド移動機構50は、キャリッジ51を含む。キャリッジ51は、走査方向(左右方向A3であって、用紙Pの搬送方向と直交する方向)へ往復移動する。記録ヘッド41は、キャリッジ51に支持されている。
記録ヘッド41は、ヘッド本体42と、4つのサブタンク43a〜43dとを有する。ヘッド本体42の下面は、当該記録ヘッド41の下方に搬送された用紙Pに対してインクを吐出する複数の吐出口41aが形成された吐出面41bである。複数の吐出口41aは、図3に示すように、搬送方向に沿って配列された吐出口列が走査方向に4列形成されるように配置されている。本実施形態において、図3中最も右側の吐出口列に属する吐出口41aからは、ブラックインクが吐出され、他の3列の吐出口列に属する吐出口41aからは、カラーインク(マゼンタ、シアン、イエロー)が吐出される。
4つのサブタンク43a〜43dは、走査方向に沿って並べて配置されている。また、これら4つのサブタンク43a〜43dにはチューブジョイント44が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント44に連結された可撓性の4本のチューブ(不図示)を介して、4つのサブタンク43a〜43dと4つのインクカートリッジ18a〜18dとがそれぞれ接続されている。4つのサブタンク43a〜43dは、ヘッド本体42に各色のインクを供給する。
記録ヘッド41の下方には、搬送ローラ対35によって搬送される用紙Pを支持するプラテン45が配設されている。プラテン45は、キャリッジ51の往復移動範囲のうち、用紙Pが通過する部分に配設されている。プラテン45の幅は、搬送可能な用紙Pの最大幅より十分に大きいので、搬送路25を搬送される用紙Pは常にプラテン45上を通過する。このプラテン45上の領域が画像記録領域G1となっている。
ヘッド移動機構(第3移動機構)50は、図3に示すように、一対のガイドレール52、及び、ベルト伝達機構53を含む。一対のガイドレール52は、前後方向A2に離隔して配置され、左右方向A3に互いに平行に延在している。キャリッジ51は、これら一対のガイドレール52を跨ぐように配置され、当該一対のガイドレール52上を左右方向A3に沿って往復移動される。
また、ベルト伝達機構53は、2つのプーリ54,55と、無端状のタイミングベルト56と、CRモータ50Mとを含む。2つのプーリ54,55は、左右方向A3に互いに離隔して配置され、タイミングベルト56が架け渡されている。プーリ54は、CRモータ50Mの駆動軸と連結されており、CRモータ50Mが駆動されることで、タイミングベルト56が走行し、キャリッジ51とともに記録ヘッド41が走査方向に移動する。
記録ヘッド41は、記録指令に基づく制御部5の制御により、吐出口41aから各色のインクを吐出する。つまり、キャリッジ51が左右方向A3へ往復移動することにより、記録ヘッド41が用紙Pに対して走査されると共に、吐出口41aから、各色のインクを吐出することで、プラテン45上を搬送される用紙Pに画像が記録される。なお、プリンタ部10内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ(不図示)が設けられている。一方、キャリッジ51には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ(不図示)が設けられている。そして、プリンタ部10は、キャリッジ51の移動中に位置検出センサが検出したリニアエンコーダの透光部の計数値から、キャリッジ51の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、CRモータ50Mの回転駆動が制御される。
<メンテナンス部60>
次に、メンテナンス部60について、図3〜図10を参照しつつ説明する。メンテナンス部60は、吐出面41bに形成された吐出口41aのインク乾燥の防止や記録ヘッド41内の気泡および異物の除去を行う。メンテナンス部60は、図3に示すように、プラテン45の右側に設けられている。メンテナンス部60が配置される具体的な位置は、画像記録領域G1から右側に外れるメンテナンス領域G2に配置されている。メンテナンス部60は、キャップ機構61と、ワイパ部材62と、クリーニング部材63と、ワイパ移動機構64と、メンテフレーム65と、吸引ポンプ66と、切換機構67と、廃液タンク68とを含む。
メンテフレーム65は、底板65aと、本体部65bとを有する。本体部65bは、底板65aの左端部に設けられている。底板65aは、キャップ機構61を下方から支持する。本体部65bは、ワイパ部材62とクリーニング部材63とを支持する。本体部65bは、上下方向A1に延在するガイド溝65b1を有する。
キャップ機構61は、図3〜図5に示すように、吸引キャップ71と、吸引キャップ71を支持するキャップホルダ72と、キャップホルダ72を昇降させるキャップ昇降機構73とを有する。吸引キャップ71は、ゴムや合成樹脂などの可撓性を有する材料で形成されており、2つの凹部71a,71bを構成するように2つに仕切られている。吸引キャップ71は、各凹部71a,71bの底部に形成された2つの連通孔71a1,71b1を有する。そして、図4中二点鎖線で示すように、メンテナンス位置に記録ヘッド41(キャリッジ51)が移動してきたときに、この吸引キャップ71は、吐出面41bと対向する。この状態で、キャップホルダ72がキャップ昇降機構73によって上方に移動されることにより、吸引キャップ71は、吐出面41bに密着し、複数の吐出口41aを覆う。このとき、吐出面41bの3色のカラーインクを吐出する吐出口41aが形成された領域が凹部71aによって覆われ、凹部71a内に密閉空間K1が形成される(図15(a)参照)。また、吐出面41bのブラックインクを吐出する吐出口41a形成された領域が凹部71bによって覆われ、凹部71b内に密閉空間K2が形成される(図15(a)参照)。
キャップホルダ72は、吸引キャップ71を下方から支持する。キャップホルダ72の下面には、下方に突出した板状の突出部72aが形成されている。突出部72aの先端部には、左右方向A3に突出した一対の突起72bが形成されている。一対の突起72bは、円柱形状を有する。これら吸引キャップ71とキャップホルダ72とによって1つのキャップ部材が構成されている。
キャップ昇降機構(第4移動機構の一部)73は、一対のスライドカム73aと、ギヤ73bと、ギヤ73bとスライドカム73aとを連結するリンク73cとを有する。一対のスライドカム73aは、板状部材から構成されており、左右方向A3に突出部72aを挟んで配置されている。また、一対のスライドカム73aは、メンテフレーム65の底板65a上に立設された状態で、前後方向A2にスライド可能に支持されている。各スライドカム73aには、左右方向A3に貫通し、突起72bが配置可能なガイド孔73a1が形成されている。ガイド孔73a1は、前方部73a2と、後方部73a3と、前方部73a2と後方部73a3とを繋ぐ接続部73a4とを有する。前方部73a2と後方部73a3は、ともに前後方向A2に水平に延在する。前方部73a2は、後方部73a3よりも下方に配置されている。これより、接続部73a4が斜めに延在している。
このキャップ昇降機構73の構成において、図5(a)に示すように、スライドカム73aが後方寄りの位置にあるときに、突起72bが前方部73a2に配置され、キャップホルダ72がメンテフレーム65の底板65aに最も近い位置に配置される。このとき、吸引キャップ71は、メンテナンス位置に配置された記録ヘッド41の吐出面41bと離隔する離隔位置に配置される。そして、ギヤ73bが図5(a)に示す位置から図5(b)に示す位置まで図中時計回りに180°回転することで、リンク73cに連結された一対のスライドカム73aが前方に移動する。このとき、突起72bが接続部73a4によって上方に案内され、後方部73a3に配置される。このようにスライドカム73aが前方寄りの位置に移動すると、突起72bが後方部73a3に配置され、キャップホルダ72がメンテフレーム65の底板65aから最も離れた位置に配置される。このとき、吸引キャップ71は、メンテナンス位置に配置された記録ヘッド41の吐出面41bと当接可能な当接位置に配置される。このようにキャップ昇降機構73は、ギヤ73bが回転することで、吸引キャップ71を当接位置と離隔位置との間において移動させることができる。また、スライドカム73aの前後方向A2に関する位置は、ギヤ73bを駆動するASFモータ20Mの回転量から検出可能であり、これにより、スライドカム73aの前後方向A2に関する位置を制御することで、吸引キャップ71の配置位置(離隔位置又は当接位置)を制御することができる。
キャップホルダ72のクリーニング部材63と対向する側面には、上下方向A1に互いに離隔した一対の突起72cが形成されている。一対の突起72cは、図5(a)に示すように、キャップホルダ72の前後方向A2の略中央に配置されている。
ワイパ部材62は、図6に示すように、ワイパ75と、ワイパ75を支持するワイパホルダ76とを有する。ワイパ75は、ゴムや合成樹脂などの可撓性を有する材料で形成され、右側面75aと左側面75bとを有する板状の部材である。ワイパ75は、前後方向A2に関して、吐出面41bよりも長尺に形成されている。ワイパ75は、吐出面41bを払拭するための先端部分75cと、先端部分75cを支持する支持部分75dとを有する。右側面75aは、先端部分75cにある上方側面75a1と、支持部分75dに存在する下方側面75a2とに分けられる。上方側面75a1は、吐出面41bを払拭するときの払拭面である。下方側面75a2は、後述の当て板76a1と対向する対向面である。なお、ワイパ75が後述の払拭位置にあるときの先端部分75cと支持部分75dとを結ぶ延在方向が上下方向A1と同じである。
ワイパホルダ76は、前後方向A2に延在する水平部76aと、上下方向A1に延在する垂直部76bとを有する。水平部76aは、ワイパ75よりも前後方向A2に延在している。垂直部76bは、水平部76aの前後方向A2の中央から下方に延在しており、ワイパホルダ76が略T字形状に構成されている。
水平部76aは、その上面から立設されたワイパ75の支持部分75dを支持する。水平部76aは、ワイパ75よりも右側に配置された当て板76a1を有する。当て板76a1は、前後方向A2にワイパ75よりも長尺に延在しており、ワイパ75の下方側面75a2と対向して配置されている。また、当て板76a1は、下方側面75a2と当接して配置されているが、ワイパ75が吐出面41bを払拭する払拭時においてワイパ75が当て板76a1から離れるように曲げられた場合、ワイパ75との間に隙間を構成する。
このような当て板76a1が設けられていることで、払拭時の際に構成されるワイパ75との間の隙間による毛細管力によってワイパ75の先端部分75cの上方側面75a1に付着したインクを下方に引き寄せる。このため、上方側面75a1にインクが残存しにくくなる。また、当て板76a1は、後述のように記録ヘッド41がワイパ75の先端部分75cに存在する左側面75bに当接したまま左方に移動したときに、ワイパ75の曲げを規制し、ワイパホルダ76(ワイパ部材62)を後述の払拭位置から待機位置への移動に寄与する。
水平部76aには、図6(a)に示すように、左方に突出した一対の突起76a2が形成されている。一対の突起76a2は、前後方向A2に離隔して配置されている。この一対の突起76a2は、後述のようにワイパホルダ76を払拭位置に移動させたときに、メンテフレーム65と係止してワイパホルダ76を払拭位置に保持する係止保持部である。
垂直部76bは、上下方向A1の略中央に前後方向A2に突出した一対の突起76b1を有する。一対の突起76b1は、円柱形状を有している。ワイパホルダ76は、図4に示すように、本体部65bを上下方向A1に貫通するように配置され、一対の突起76b1がメンテフレーム65のガイド溝65b1内に配置されている。これにより、ワイパホルダ76が、図4に示す位置であって、ガイド溝65b1の下端と突起76b1とが当接する待機位置に配置されているときに、ガイド溝65b1によって突起76b1を中心として矢印A4方向に揺動可能に支持される。一対の突起76b1は、ワイパホルダ76の揺動軸を構成する。矢印A4方向(第1移動方向)は、上下方向A1(第2移動方向)と交差する方向であり、上方側面75a1と交差する方向でもある。また、ワイパホルダ76の上下方向A1の移動がガイド溝65b1によってガイドされる。
垂直部76bは、その上端部76d(第1部分)にフック76b2が形成されている。垂直部76bの上端部76dは、一対の突起76b1よりも吐出面41bに近い。つまり、フック76b2が一対の突起76b1よりも上方に配置されている。このフック76b2には、後述のバネ81の一端が取り付けられる。垂直部76bの下端部(第2部分:一対の突起76b1よりも吐出面41bから離れている)76cは、図6(b)に示すように、右側側面から右方に突出した突起76b3を有している。
ワイパ移動機構(第2移動機構)64は、図4に示すように、バネ81と、回転カム82と、回転カム82の下方に配置されたギヤ83とを有する。ギヤ83は、回転カム82と一体的に連結されており、ギヤ83が回転すると回転カム82も同方向に回転する。バネ81は、その一端(上端)がフック76b2に引っ掛けられ、他端(下端)がメンテフレーム65の本体部65bの左下端部に取り付けられている。この左下端部は、ガイド溝65b1よりも左方且つ下方にある。このため、バネ81は、ワイパホルダ76を左斜め下方に付勢する。また、バネ81は、ワイパホルダ76が待機位置に配置されているときに、一対の突起76b1を中心にワイパ部材62の上端(ワイパ75の先端部分)が左方へ下端が右方へと回動する方向にワイパホルダ76を付勢する。これにより、ワイパホルダ76は、待機位置において、一対の突起76a2がメンテフレーム65の本体部65bに当接した状態で位置決めされる。
回転カム82は、図7に示すように、円板82aと、円板82aの中央に上方に突出して形成された円柱部82bとを有する。回転カム82は、上下方向A1に沿う回転軸D(図4参照)を中心に回転可能にメンテフレーム65に支持されている。ギヤ83にASFモータ20Mの動力が伝達されることで、回転カム82が回転する。回転カム82は、回転方向A5に沿って互いに離隔して配置された2つの当接部82c,82dを有する。これら当接部82c,82dは、円板82aの上面82a1及び円柱部82bの側面上に形成され、回転方向A5に沿って互いに重なる位置に配置されている。また、これら当接部82c,82dの回転軌跡上には、図7(c)中二点鎖線で示すように、待機位置に配置されたワイパホルダ76(ワイパ部材62)の下端部76cが位置する。ワイパホルダ76は、待機位置において、回転方向A5に沿って2つの当接部82c,82dと重なる位置に配置されている。なお、ワイパホルダ76は、当接部82dと当接しながら回転カム82が回転することで、後述の第1位置と第2位置との間において移動する。
当接部82cは、円板82aの上面から上方に隆起して形成され、回転方向A5に関して、当接部82dよりも長く形成されている。また、当接部82cの上面は、回転方向A5に沿って傾斜角度が異なる5つの面82c1〜82c5によって構成されている。これら5つの面82c1〜82c5のうち、面82c2が円板82aの上面82a1から最も上方に配置されている。ワイパホルダ76が待機位置に配置されている状態で、回転カム82が図7(c)中時計回りに回転すると、ワイパホルダ76の下端部76cが面82c1と当接し、ワイパホルダ76が上方に押し上げられる。そして、回転カム82の回転が進むと、ワイパホルダ76の下端部76cが面82c2に当接する。このとき、ワイパホルダ76が払拭位置(図15(b)参照)に配置される。払拭位置は、上下方向A1に関してワイパ75の先端部分75cが吐出面71bよりも上方に配置される位置である。つまり、ワイパ75の先端部分75cを吐出面41bに当接させることが可能な位置である。一方、待機位置は、上下方向A1に関してワイパ75の先端部分75cが吐出面71bよりも下方に配置される位置である。
当接部82dは、2つの側面82d1,82d2と、水平な上面82d3とを有する。当接部82dの上面82d3は、当接部82cの面82c2よりも下方に配置されている。つまり、当接部82dは、円板82aからの高さが当接部82cよりも低くなっている。側面82d1は、回転方向A5(図7(c)中時計回り)の上流側に位置する部分ほど回転軸Dから離れるように傾斜している。側面82d2は、回転方向A5の下流側に位置する部分ほど回転軸Dから離れるように傾斜している。また、当接部82dは、2つの側面82d1,8d2を接続し、2つの側面82d1,82d2よりも回転軸Dから離れた頂面82d4を有している。ワイパホルダ76が待機位置に配置され、当該ワイパホルダ76の下端部76cが図17(c)に示す第1位置に配置された状態で、回転カム82が回転方向A5に回転することで、ワイパホルダ76の下端部76cと当接部82dの側面82d1とが当接する。ワイパホルダ76の下端部76cが頂面82d4に当接するまで、回転カム82が回転すると、ワイパホルダ76が第1位置からバネ81の付勢力に抗して図17(e)に示す第2位置に移動する。第1位置は、ワイパホルダ76が待機位置にあってワイパホルダ76と当接部82dとが当接するまでの間に配置される位置である。第2位置は、ワイパホルダ76が待機位置にあってワイパホルダ76と頂面82d4とが当接するときに配置される位置であり、ワイパ75はワイパホルダ76が第1位置から第2位置に移動する間にクリーニング部材63と当接する。
クリーニング部材63は、図4に示すように、メンテフレーム65の本体部65b内に立設された状態で配置され、本体部65bに上下方向A1に移動可能に支持されている。クリーニング部材63は、樹脂などから構成されており、図8に示すように、上下方向A1に立設された板状部63aと、水平部63bと、突出部63cと、突起部63dとを有する。
水平部63bは、板状部63aの上端に形成されており、前後方向A2に長尺に延在する。突出部63cは、図8(b)に示すように、水平部63bの左端部から下方に向かって突出して形成されている。突出部63cは、ワイパ75よりも前後方向A2に長尺に延在している。
突起部63dは、板状部63aの右側面から右方に突出して形成されている。また、突起部63dは、前後方向A2に関して板状部63aの中央に配置されており、図4に示すように、一対の突起72c間に配置される。これにより、吸引キャップ71が離隔位置から当接位置に移動すると、一対の突起72cと突起部63dとが係合し、クリーニング部材63が図4に示すクリーニング位置から非クリーニング位置(図16(d)参照)に移動する。このようにクリーニング部材63は、キャップ昇降機構73によって上下方向A1(第2移動方向)に移動する。クリーニング位置は、クリーニング部材63の下端(板状部63a)と底板65aとが接触する位置であり、待機位置にあるワイパホルダ76が矢印A4に揺動することで、ワイパ75の上方側面75a1が突出部63cの左側面と当接する位置である。非クリーニング位置は、吸引キャップ71が当接位置にあるときにクリーニング部材63が配置される位置であり、ワイパホルダ76が矢印A4方向に揺動しても、ワイパ75と突出部63cとが当接しない位置である。
切換機構67は、吸引ポンプ66と、吸引キャップ71の2つの連通孔71a1,71b1との接続先を切り換えるためのものである。なお、特に図示していないが、吸引キャップ71の連通孔71a1と後述のCoポート67b3とがチューブによって接続されている。また、吸引キャップ71の連通孔71b1と後述のBkポート67b2とがチューブによって接続されている。図4、図9及び図10に示すように、切換機構67は、ギヤ83の下方に配置された切換部材67aと、切換部材67aを収容するカバー67bを有している。
切換部材67aは、ゴムなどの弾性部材により形成された円柱状をし、回転カム82の下面中央に固定されている。切換部材67aには、切換流路67cが形成されている。切換流路67cは、切換部材67aの下面の中央に形成された円形の中央溝67c1と、切換部材67aの外周側面に形成された3つの垂直溝67c2と、中央溝67c1と3つの垂直溝67c2とをそれぞれ繋ぐ3つの水平溝67c3とを有する。3つの垂直溝67c2は、上下方向A1に沿って延在し、回転方向A5に沿って互いに離隔している配置されている。水平溝67c3は、中央溝67a1から切換部材67aの径方向に沿って水平に延在する。
カバー67bは、図9に示すように、有底の円筒状である。カバー67bの底壁の中心には、吸気ポート67b1が形成されている。吸気ポート67b1は、チューブ66a(図3参照)を介して吸引ポンプ66に接続されている。吸気ポート67b1は、中央溝67c1と対向する位置に配置されており、中央溝67c1と連通している。カバー67bの円形の周壁には、回転方向A5に沿って互いに離隔して3つのポート67b2〜67b4が形成されている。3つのポート67b2,67b3,67b4は、図10(a)に示すように、回転方向A5に沿って3つの垂直溝67c2と同じ間隔で配置されている。このため、切換部材67aが図10(a)に示す回転位置にあるときは、これら3つのポート67b2,67b3,67b4が切換流路67cを介して互いに連通する。
1つ目のポートは、吸引キャップ71の連通孔71b1に連通しブラックインクが排出される空間内に連通するBkポート67b2である。2つ目のポートは、吸引キャップ71の連通孔71a1に連通しカラーインクが排出される空間内に連通するCoポート67b3である。残りの1つのポートは、大気に開放された大気ポート67b4である。
そして、カバー67bは、図9に示すように、メンテフレーム65の底板65aに連結されたアーム65cによって支持されている。また、カバー67bは、回転カム82及び切換部材67aに対して相対的に回転可能となっている。切換部材67aは、回転カム82とともに回転することで、3つのポート67b2〜67b4が切換流路67cによって連通する第1状態(図10(a)に示す状態)と、吸引ポンプ66が切換流路67c及びCoポート67b3を介して吸引キャップ71の連通孔71a1と連通する第2状態(図10(b)に示す状態)と、吸引ポンプ66が切換流路67c及びBkポート67b2を介して吸引キャップ71の連通孔71b1と連通する第3状態(図10(c)に示す状態)とを選択的にとる。なお、回転カム82の回転方向A5に関する位置もASFモータ20Mの回転量から検出可能であり、これにより、回転カム82の回転方向A5に関する位置を制御することで、ワイパ部材62に対する回転カム82の停止位置や切換機構67の第1状態〜第3状態をとるための制御をすることができる。
吸引ポンプ66は、公知のチューブポンプが採用されており、切換部材67aが第2又は第3状態をとるときに、吸引ポンプ66のローターを回転させることで、密閉空間K1又は密閉空間K2にインクを排出させることができる。吸引ポンプ66は、LFモータ35Mの動力が伝達されることでローターが回転し駆動される。廃液タンク68は、吸引ポンプ66とチューブ68aで接続されており、吸引ポンプ66によって吸引された廃インクを貯留する。
次に、ASFモータ20Mの動力を、給紙ローラ21、キャップ昇降機構73、ワイパ移動機構64及び切換機構67へ選択的に伝達し、LFモータ35Mの動力を、搬送ローラ35a及び吸引ポンプ66へ選択的に伝達する動力伝達機構100について説明する。動力伝達機構100は、図3に示すように、吸引キャップ71よりも後方に配置されている。また、動力伝達機構100は、図11に示すように、ASFモータ20MとLFモータ35Mから独立に出力される2系統の動力を、各機構へ選択的に伝達するものである。
LFモータ35Mは、搬送ローラ35aの一端(図3における左側)に連結されている。搬送ローラ35aの他端(図3における右側)にはLFギヤ(図示せず)が搬送ローラ35aと同軸且つ一体的に回転するように設けられている。図11に示す第1駆動ギヤ101は、このLFギヤに軸線方向にスライド可能に噛合されており、LFモータ35Mの動力により回転駆動する。第1駆動ギヤ101の軸線は、LFギヤの軸線と平行であり、第1駆動ギヤ101はLFギヤに対して平行移動可能である。LFギヤの軸線方向の長さ(以下、厚みと称する)は、第1駆動ギヤ101のスライド範囲に対して十分に長いので、第1駆動ギヤ101のスライド範囲において第1駆動ギヤ101とLFギヤとは常時噛合される。
ASFモータ20Mは、その出力軸からASFギヤ(図示せず)を介して第2駆動ギヤ102に動力が伝達されて、第2駆動ギヤ102は回転駆動する。第2駆動ギヤ102の軸線は、ASFギヤの軸線と平行であり、第2駆動ギヤ102はASFギヤに対して平行移動可能である。ASFギヤの厚みは、第2駆動ギヤ102のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2駆動ギヤ102のスライド範囲において、第2駆動ギヤ102とASFギヤとは常時噛合される。
図11(a)に示すように、第1駆動ギヤ101及び第2駆動ギヤ102は、1本の支軸103に軸線方向にスライド可能に軸支されている。第1駆動ギヤ101は、第2駆動ギヤ102よりも右側に配置されている。支軸103の軸線方向は、左右方向A3に沿って延在しており、キャリッジ51の走査方向と平行である。この支軸103に沿って第1駆動ギヤ101と第2駆動ギヤ102がスライド移動することで、第1駆動ギヤ101と第2駆動ギヤ102は、後述する第1〜第3伝達ギヤ91〜93と選択的に噛合される。
支軸103には、第1駆動ギヤ101よりも右側に、切換レバー104がスライド移動可能に設けられている。第1駆動ギヤ101、第2駆動ギヤ102及び切換レバー104は、支軸103において相互に当接されて一体となっており、支軸103の軸線方向に沿って画像記録領域G1側にコイルバネ(図示せず)によって付勢されている。また、第1駆動ギヤ101及び第2駆動ギヤ102は、一体となった状態においてそれぞれ独立して回転可能である。切換レバー104は、上下方向A1に沿って延在しており、キャリッジ51がメンテナンス領域G2に移動してきたときに当接する位置に配置されている。
第1駆動ギヤ101及び第2駆動ギヤ102の下方には、支軸103と平行な支軸105に、右方から左方へ順に第1伝達ギヤ91、第2伝達ギヤ92、第3伝達ギヤ93が並列に配置されている。第1伝達ギヤ91は、第1駆動ギヤ101と噛離可能である。第2及び第3伝達ギヤ92,93は第2駆動ギヤ102と噛離可能である。第1〜第3伝達ギヤ91〜93の外径は同じである。
第1伝達ギヤ91の右側には、傘歯ギヤ91aが設けられている。傘歯ギヤ91aの外径は第1伝達ギヤ91より大きく、これによって、これら間に径方向外側へ突出する規制面91bが形成されている。第1駆動ギヤ101は、この規制面91bに当接することによって、第1伝達ギヤ91と噛合した位置に位置付けられる。
第1伝達ギヤ91は、その一端側に設けられた傘歯ギヤ91aとともに吸引ポンプ66へ動力を伝達する。第2伝達ギヤ92は、その回転方向の正逆によってキャップ昇降機構73又はワイパ移動機構64及び切換機構67へ選択的に動力を伝達する。第3伝達ギヤ93は、給紙ローラ21に動力を伝達する。
キャリッジ51が画像記録領域G1にあるときは、切換レバー104はキャリッジ51と当接しない。このとき、図11(a)に示すように、第1駆動ギヤ101は第1〜第3伝達ギヤ91〜93のいずれとも噛み合わない。一方、第2駆動ギヤ102は、第3伝達ギヤ93と噛み合う。これにより、ASFモータ20Mの動力を第3伝達ギヤ93に伝達することが可能となる。つまり、LFモータ35M及びASFモータ20Mを制御することで、搬送ローラ対35、排紙ローラ対36、給紙ローラ21を回転させて、用紙Pを搬送することができる。キャリッジ51がメンテナンス領域G2に移動し、当該記録ヘッド41がメンテナンス位置に配置されるときには、図11(b)に示すように、キャリッジ51と切換レバー104との当接によって第1駆動ギヤ101が第1伝達ギヤ91と、第2駆動ギヤ102が第2伝達ギヤ92と噛み合う位置に移動する。これにより、LFモータ35Mの動力を第1伝達ギヤ91に、ASFモータ20Mの動力を第2伝達ギヤ92に伝達することが可能となる。これにより、吐出口41bからインクを排出するパージ動作などのメンテナンスが実行可能となる。
第2伝達ギヤ92は、図12に示すように、遊星ギヤ92aと常に噛み合っている。この遊星ギヤ92aは、第2駆動ギヤ102と第2伝達ギヤ92とが噛み合った状態で、ASFモータ20Mが逆転駆動されたときに、図12(a)に示すように、ギヤ73bに噛み合う位置に移動し、ASFモータ20Mからの動力をギヤ73bに伝達する。ギヤ73bは、ASFモータ20Mからの動力によって一方向(図12中時計回り)に回転する。これにより、キャップ昇降機構73を動作させることが可能となる。一方、遊星ギヤ92aは、ASFモータ20Mが正転駆動されたときに、図12(b)に示すように、ギヤ96に噛み合う位置に移動し、ASFモータ20Mからの動力をギヤ96に伝達する。ギヤ96は、ASFモータ20Mからの動力によってギヤ73bとは逆方向(図12中反時計回り)に回転する。ギヤ96は、図示しないギヤ列を介してギヤ83と噛み合っている。これにより、ワイパ移動機構64及び切換機構67を動作させることが可能となる。なお、第1及び第3伝達ギヤ91,93から各機構への伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の伝達機構を採用することができる。
このようにASFモータ20M、動力伝達機構100、ヘッド移動機構50及びワイパ移動機構64によってワイパ部材62を払拭位置と待機位置とに移動させるための本発明の第1移動機構が構成されている。ヘッド移動機構50は、後述のように、S4においてワイパホルダ76の一対の突起76a2とメンテフレーム65との係止を解除し、ワイパホルダ67の待機位置への移動に寄与している。また、ASFモータ20M、動力伝達機構100及びワイパ移動機構64によってワイパ部材62を第1位置と第2位置との間において往復移動させるための本発明の第2移動機構が構成されている。また、ASF20M、動力伝達機構100及びキャップ昇降機構73によって吸引キャップ71を当接位置と離隔位置との間において移動させ、クリーニング部材63を非クリーニング位置とクリーニング位置との間において移動させることが可能な本発明の第4移動機構が構成される。
図13に示すように、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含み、これらが協働して、ASFモータ20M、LFモータ35M、CRモータ50M、記録ヘッド41等の動作を制御する。例えば、制御装置5は、PCから送信された記録指令に基づいて、記録ヘッド41、ASFモータ20M、LFモータ35M、CRモータ50M等を制御して、用紙Pに画像等を記録させる。また、制御装置5は、CRモータ50M、ASFモータ20M、LFモータ35M等を制御して、吐出口41bからインクを排出させるパージ動作などのメンテナンス動作を行う。なお、本実施形態の制御部5では、CPU及びASICを1つずつ有しているが、制御部5は、CPUを1つだけ含み、この1つのCPUが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、CPUを複数含み、これら複数のCPUが必要な処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部5は、ASICを1つだけ含み、この1つのASICが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、ASICを複数含み、これら複数のASICが必要な処理を分担して行うものであってもよい。
次に、プリンタ部10のメンテナンス動作について、図14〜図18を参照しつつ以下に説明する。制御部5は、吸引パージを実行するためのパージ信号を受信すると(S1:YES)、吸引パージ処理を実行する(S2)。パージ信号を受信しない場合(S1:NO)、制御部5はS1の処理を繰り返す。なお、パージ信号を受信する際に、記録ヘッド41(キャリッジ51)が画像記録領域G1に配置されている状態として以下説明する。
次に、S2において、制御部5は、CRモータ50Mを制御して記録ヘッド41が画像記録領域G1からメンテナンス領域G2のメンテナンス位置(吐出面41aと吸引キャップ71とが上下方向A1に対向する位置)に移動するように、キャリッジ51を移動させる。このとき、動力伝達機構100によってLFモータ35Mの動力が吸引ポンプ66に伝達可能となり、ASFモータ20Mの動力がキャップ昇降機構73、ワイパ移動機構64、切換機構67に伝達可能となる。
制御部5は、ASFモータ20Mを逆転駆動し、図15(a)に示すように吸引キャップ71を離隔位置から当接位置に移動させる(キャッピング処理)。このとき、切換機構67は第1状態とされている。この後、制御部5は、ASFモータ20Mを正転駆動し、切換機構67を第2状態(吸引ポンプ66と吸引キャップ71の連通孔71a1とが連通した状態)とする。そして、制御部5は、LFモータ35Mを駆動し、吸引ポンプ66を所定時間駆動させる。これにより、密閉空間K1内の圧力が低下し、吐出口41bから凹部71aにカラーインクが排出される。
この後、制御部5は、ASFモータ20Mを正転駆動し、切換機構67を第3状態(吸引ポンプ66と吸引キャップ71の連通孔71b1とが連通した状態)とする。そして、制御部5は、LFモータ35Mを駆動し、吸引ポンプ66を所定時間駆動させる。これにより、密閉空間K2内の圧力が低下し、吐出口41bから凹部71bにブラックインクが排出される。
次に、制御部5は、ASFモータ20Mを逆転駆動し、図15(b)に示すように吸引キャップ71を当接位置から離隔位置に移動させる(アンキャッピング処理)。そして、制御部5は、LFモータ35Mを駆動し、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、凹部71b内に残存するブラックインクが廃液タンク68に排出される。この後、制御部5は、ASFモータ20Mを正転駆動し、切換機構67を第2状態とさせた状態で、LFモータ35Mを駆動し、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、凹部71a内に残存するカラーインクが廃液タンク68に排出される。こうして、吸引パージ処理が終了する。
吸引パージ処理において、切換機構67を動作させるため、回転カム82は1回転以上回転する。つまり、回転カム82が、図17(a)に示す位置から図17(b)に示す位置へと回転したとき、図15(b)に示すように、当接部82cとワイパホルダ76の下端部76cとが当接する。これにより、ワイパホルダ76がバネ81の付勢力に抗して払拭位置に移動する(払拭配置処理)。ワイパホルダ76が払拭位置に移動すると、ワイパホルダ76の一対の突起76a2がメンテフレーム65と係止し、ワイパホルダ76が払拭位置に保持される。なお、制御部5は、後述の払拭処理を実行する前にであって吸引キャップ71内に残存するインクの排出が終了した後、ASFモータ20Mを制御し、図17(c)に示すように、回転方向A5に関してワイパホルダ76の下端部76cが当接部82c,82d間に位置するように回転カム82を回転させて停止させる。
次に、制御部5は、払拭処理を実行する(S3)。つまり、制御部5は、CRモータ50Mを制御して記録ヘッド41がメンテナンス領域G2から画像記録領域G1に移動するように、キャリッジ51を移動させる。これにより、図15(c)に示すように、記録ヘッド41が左方に移動し、吐出面41bがワイパ75の先端部分75cと当接し、当該吐出面41bが払拭される。このとき、ワイパ75は吐出面41bとの当接によって図中左方(吐出面41bに対するワイパ75の相対移動方向(払拭方向)とは逆方向)に曲げられ、ワイパ75の下方側面75a2と当て板76a1との間に隙間が構成される。これにより、ワイパ75によって吐出面41bから拭き取られたインクであってワイパ75の上方側面75a1に付着したインクが、隙間に引き寄せられやすくなり、上方側面75a1にインクが残存しにくくなる。なお、記録ヘッド41がメンテナンス位置以外の位置にあるときは、吸引ポンプ66、キャップ昇降機構73、ワイパ移動機構64及び切換機構67に各モータ20M,35Mの動力が伝達されない。
次に、制御部5は、解除処理を実行する(S4)。つまり、制御部5は、CRモータ50Mを制御して記録ヘッド41が画像記録領域G1からメンテナンス位置に移動するように、キャリッジ51を移動させる。つまり、記録ヘッド41を図15(d)に示す位置から右方(払拭方向)に移動させる。すると、図15(e)に示すように、記録ヘッド41とワイパ75の先端部分75cとが当接する。このとき、ワイパ75の下方側面75a2と当て板76a1とが当接するため、ワイパ75の曲がりが規制される。このようにワイパ75が曲がりにくくなることで、記録ヘッド41の移動による力によってワイパ部材62が一対の突起76b1を中心としてバネ81の付勢力に抗して回動する。この結果、ワイパホルダ76の一対の突起76a2とメンテフレーム65と係止が解除され、ワイパホルダ76がバネ81の付勢力によって待機位置に配置される。
次に、制御部5は、クリーニング処理を実行する(S5)。つまり、制御部5は、ASFモータ20Mを制御し、回転カム82を図17(c)に示す位置から図17(e)に示す位置まで回転させて停止させる。回転カム82が図17(c)の位置にあるときは、図16(a)に示すようにワイパホルダ76は第1位置にある。そして、図17(d)に示すように、回転カム82を回転させると、ワイパホルダ76の突起76b3と当接部82dの側面82d1とが当接し、図16(b)に示すように、ワイパホルダ76がバネ81の付勢力に抗して右方に回動し、ワイパ75の先端部分75cの上方側面75a1とクリーニング部材63の突出部63cとが当接する。このとき、ワイパ75は、図18(a)に示すように、先端部分75cの上方側面75a1全体が突出部63cに当接する。そして、回転カム82が図17(e)に示す位置まで回転することで、ワイパホルダ76の突起76b3と当接部82dの頂面82d4とが当接し、ワイパホルダ76が図16(c)に示す第2位置まで回動する。ワイパホルダ76が第1位置から第2位置まで回動する際に、ワイパ75がクリーニング部材63と当接することで、ワイパ75の上方側面75a1に付着して残存するインクが除去される(クリーニング動作)。
次に、制御部5は、回避処理を実行する(S6)。つまり、制御部5は、ASFモータ20Mを逆転駆動し、図16(d)に示すように吸引キャップ71を離隔位置から当接位置に移動させる。このときのキャップホルダ72の移動に伴って、突起72cと突起部63dとが係合し、クリーニング部材63がクリーニング位置から非クリーニング位置に移動する。つまり、キャッピング処理を実行することで回避処理を実行することができる。このとき、図18(b)に示すように、ワイパ75の先端部分75cの上端縁とクリーニング部材63の突出部63cの下端縁とが平行に維持されつつクリーニング部材63が上方に移動する。
次に、制御部5は、復帰処理を実行する(S7)。つまり、制御部5は、ASFモータ20Mを制御し、回転カム82を図17(e)に示す位置から図17(a)に示す位置まで回転させて停止させる。このときの回転カム82の回転により、ワイパホルダ76の下端部76cの突起76b3と当接部82dとが当接しなくなり、このタイミングでワイパホルダ76がバネ81の付勢力により、図16(e)に示すように第1位置に復帰する。このワイパホルダ76の第2位置から第1位置へ復帰する際は、クリーニング部材63が非クリーニング位置に配置されているため、ワイパ75とクリーニング部材63とが当接しない。こうして、一連のメンテナンス動作が終了する。
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタ部10によると、ワイパ75をクリーニングするクリーニング処理(S5)の後に、回避処理(S6)を実行するため、復帰処理(S7)を行ったときのワイパ75とクリーニング部材63とが当接しない。このため、ワイパホルダ76を第2位置から第1位置に復帰させやすくなる。
回避処理において、クリーニング部材63がワイパ75と当接しない非クリーニング位置に配置される。このため、ワイパホルダ76を第1位置に復帰させる際の接触抵抗がなくなる。このため、ワイパホルダ76を第1位置に確実に復帰させることができる。
ワイパホルダ76がメンテフレーム65に揺動可能に支持され、ワイパ移動機構64が当接部82dを有する回転カム82やバネ81などを有し、クリーニング処理において、当接部82dをワイパホルダ76の下端部76cに当接させてワイパホルダ76を第1位置から第2位置へ揺動させ、復帰処理において、当接部82dをワイパホルダ76の下端部76cから離隔させてワイパホルダ76を第2位置から第1位置へ揺動させる。これにより、簡単な構成でワイパホルダ76を第1位置と第2位置との間において揺動させることが可能となる。
クリーニング部材63が吸引キャップ71及びキャップホルダ72の移動に伴って移動可能に構成されている。このため、クリーニング部材63の移動と吸引キャップ71及びキャップホルダ72の移動とをキャップ昇降機構73で兼用することが可能となる。
制御部5は、吸引キャップ71が離隔位置にあるときにクリーニング処理を実行し、吸引キャップ71が当接位置にあるときに復帰処理を実行する。このようにキャッピング処理を実行することで回避処理を実行することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、回避処理において、ワイパホルダ76が復帰処理で第2位置から第1位置に移動してもワイパ75とクリーニング部材63とが当接しない非クリーニング位置にクリーニング部材63を移動させるが、復帰処理でワイパ75とクリーニング部材63とが接触する位置にクリーニング部材63を移動させてもよい。この場合、復帰処理において、当て板76a1と干渉せず且つワイパ75とクリーニング部材63の接触面積がクリーニング処理のときよりも小さくなればよい。こうすれば、復帰処理を行ったときのワイパ75とクリーニング部材63との間に生じる接触抵抗が小さくなる。このため、ワイパホルダ76を第2位置から第1位置に復帰させやすくなる。
また、回避処理において、ワイパ75の先端部分75cの上端縁とクリーニング部材63の突出部63cの下端縁とが平行に維持されずにクリーニング部材63が移動してもよい。また、本発明の第4移動機構としては、ワイパ75が第2位置にあるときよりもさらに下方に移動するようにワイパホルダ76を下方に移動させる機構やワイパ75及びクリーニング部材63が互いに離れる方向にワイパホルダ76及びクリーニング部材63の両方を移動させる機構であってもよい。このような機構とすれば、回避処理において、それぞれ、ワイパ75が下方に移動するようにワイパホルダ76を下方に移動させること、及び、ワイパ75及びクリーニング部材63が互いに離れる方向にワイパホルダ76及びクリーニング部材63の両方を移動させることができる。
ワイパ75をクリーニング部材63に当接させるクリーニング動作を行うためのワイパ移動機構としては、ワイパホルダ76を揺動させずにスライド移動させて、第1位置と第2位置とに移動させる構成であってもよい。また、付勢部材としてのバネ81が採用されているが、ゴムなどの弾性部材を付勢部材として採用してもよい。
本発明の第1移動機構としては、ワイパホルダ76及び記録ヘッド41の少なくともいずれか一方を払拭位置と待機位置との間において移動させる専用の移動機構を有していてもよい。こうすれば、記録ヘッド41を払拭方向に移動させ、記録ヘッド41とワイパ75とを当接させてワイパホルダ76の一対の突起76a2とメンテフレーム65との係止を解除する必要がなくなる。さらに係止保持部も設ける必要がなくなる。
クリーニング部材63は、吸引キャップ71を昇降させるキャップ昇降機構73とは別の専用の移動機構(第4移動機構)によってクリーニング位置と非クリーニング位置との間において移動させてもよい。また、クリーニング部材63は、突起部63dがキャップホルダ72の突起72cと係合することでクリーニング位置と非クリーニング位置に移動するが、キャップホルダ72に直接支持されていてもよい。要するに、クリーニング部材63は、吸引キャップ71及びキャップホルダ72で構成されるキャップ部材の移動に伴って移動可能に構成されていればよい。
上述の実施形態においては、本発明の第3移動機構としてヘッド移動機構50が採用されていたが、ヘッド移動機構50に代えて、ワイパ部材62と記録ヘッド41との両方を払拭方向と平行に移動させる移動機構を採用してもよいし、ワイパ部材62を払拭方向と平行に移動させる移動機構を採用してもよい。
ワイパ75の曲げを規制する当て板76a1は、特に板形状に限らない。例えば、ワイパホルダ76の上面に、前後方向A2に並んで配列された複数の突起から構成されていてもよい。要するに、払拭方向に移動する記録ヘッド41とワイパ75とが当接したときに、ワイパ75の曲げを規制することが可能に構成されていればよい。
ワイパホルダ76が払拭位置に配置されたときに、ワイパホルダ76がメンテフレーム65に係止保持される係止保持部として、ワイパホルダ76に一対の突起76a2が設けられているが、特にこれに限らない。要するに、ワイパホルダ76をメンテフレーム65に係止保持することが可能であれば、どのような形状であってもよい。また、係止保持部がメンテフレーム65に設けられていてもよい。
また、以上では、吐出口41aからインクを吐出することによって記録を行うプリンタ部に本発明を適用した例について説明したがこれには限られない。吐出口41aからインク以外の液体を吐出する、プリンタ部以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。また、本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能である。