本形態例は、クローラ式走行装置を備えた建設機械の一例として杭打機を示している。図5及び図6に示すように、杭打機は、クローラ11を備えた下部走行体12及び該下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13を有するベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を上部旋回体13から支持する起伏シリンダ16とを備えており、上部旋回体13の内部には、エンジン油圧ユニットや油圧回路を含む各種制御機器が収納され、上部旋回体13の前部一側には運転室17が設けられている。前記リーダ15には、作業装置であるオーガ18が昇降可能に設けられ、リーダ15の下部には、下部振止19が設けられている。この杭打機は、オーガ18に各種工事用部材を連結することにより鋼管埋設や地盤改良などの作業を行うことができる。
前記上部旋回体13の前後左右の4箇所には、4個のアウトリガジャッキ20,30,40,50がそれぞれ設けられている。このアウトリガジャッキ20,30,40,50は、図5に示す作業中は、ベースマシン14が浮き上がらない程度の伸長力で各アウトリガジャッキを接地させてベースマシン14を安定させた状態とする。また、図6に示すジャッキアップターンを行う際は、全てのアウトリガジャッキを伸長させてクローラ11を含むベースマシン14を上昇させて下部走行体12の方向を変更可能な状態とする。
図1は、前記杭打機に設けられたアウトリガジャッキ伸縮操作用の油圧回路の第1形態例を示している。この油圧回路は、通常設けられている一般的なアウトリガジャッキ伸縮用のマルチコントロールバルブ60を備えた油圧回路61に、作業を行う際に、アウトリガジャッキ20,30,40,50をあらかじめ設定された伸長力で接地させるための接地回路71を付加したものである。マルチコントロールバルブ60は、各アウトリガジャッキ20,30,40,50に対応したコントロールバルブ21,31,41,51を有しており、各コントロールバルブ21,31,41,51にそれぞれ設けられているソレノイド21a,21b,31a,31b,41a,41b,51a,51bを励磁することにより、ダブルオペレートチェック弁22,32,42,52を介してアウトリガジャッキ20,30,40,50を伸縮させることができる。
接地回路71は、油圧ポンプ62とアウトリガジャッキ伸縮切替用のマルチコントロールバルブ60との間の伸縮回路63からソレノイド切替弁72を介して分岐している。この接地回路71には、該接地回路71の油圧があらかじめ設定された接地油圧を超えたときに開弁して伸縮回路63とタンク64に至る戻り回路65とを接地回路71を介して連通させるリリーフ弁73が設けられている。さらに、前記ソレノイド切替弁72を、伸縮回路63と接地回路71とを連通させる連通状態と、伸縮回路63と接地回路71とを遮断する遮断状態とに切り替える切替スイッチ74を備えた電気回路75が設けられている。
また、各アウトリガジャッキ20,30,40,50を個別に伸縮操作可能な個別回路80が設けられている。この個別回路80は、前記マルチコントロールバルブ60内の各コントロールバルブ21,31,41,51の伸縮方向それぞれのソレノイド21a,21b,31a,31b,41a,41b,51a,51bに供給する回路を切り替える個別伸縮切替スイッチ81,82,83,84を有しており、例えば、アウトリガジャッキ20に対応した個別伸縮切替スイッチ81を短縮側に切り替えると、ソレノイド21aが通電状態となり、コントロールバルブ21が短縮側に切り換わってアウトリガジャッキ20の短縮側に油圧が作用してアウトリガジャッキ20が短縮する。
運転室17に設けられた切替スイッチ74をOFFとしてソレノイド切替弁72のソレノイド72aへの通電を断った状態では、伸縮回路63と接地回路71とが遮断されて接地回路71が作動しないため、マルチコントロールバルブ60内の各コントロールバルブ21,31,41,51を前記個別回路80で操作することにより、各アウトリガジャッキ20,30,40,50をそれぞれ伸縮させる通常の操作を行うことができる。各アウトリガジャッキに作用する最大油圧は、マルチコントロールバルブ60内に設けられた主リリーフ弁66に設定した圧力となる。
切替スイッチ74をONに切り替え、ソレノイド切替弁72のソレノイド72aに通電して励磁し、ソレノイド切替弁72を連通状態にすると、伸縮回路63の油圧が接地回路71に作用する。アウトリガジャッキの接地開始によって各アウトリガジャッキが伸び、シリンダが接地すると伸長側の油圧が次第に上昇し、接地回路71の油圧が、前記最大油圧より低い油圧にあらかじめ設定されたリリーフ弁73の設定圧力を超えるとリリーフ弁73が開弁する。これにより、伸縮回路63とタンク64に至る戻り回路65とが接地回路71を介して連通した状態になるため、油圧ポンプ62から吐出された作動油は、接地回路71を通ってタンク64に戻ることになり、リリーフ弁73の設定圧力に対応した伸長力に保持される。このとき、各コントロールバルブ21,31,41,51の油圧入力側をパラレル回路67で連通させているので、各アウトリガジャッキを接地させる圧力を均等にすることができる。
すなわち、4本のアウトリガジャッキを同時に伸ばした場合、油圧ポンプ62からの伸縮回路63がパラレル回路67で4本のアウトリガジャッキの伸長側にそれぞれ接続されているから、4本のアウトリガジャッキが伸び始め、例えば1本のアウトリガジャッキが先に接地したとしても、このアウトリガジャッキの伸びが止まる一方、他のアウトリガジャッキは負荷が小さいので伸び続け、最終的に全てのアウトリガジャッキが接地した後、伸縮回路63の圧力が上昇し始めてリリーフ弁73の設定圧力まで上昇する。
したがって、切替スイッチ74をONにして通常のアウトリガジャッキ伸長操作を行うだけで、あらかじめ設定された伸長力で、かつ、均等な伸長力で全てのアウトリガジャッキを接地させることができ、作業中の杭打機の安定性を確保することができる。
図2は、油圧回路の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した油圧回路の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本形態例に示す油圧回路は、前記接地回路71に圧力スイッチ76を設けるとともに、該圧力スイッチ76が接地回路71の油圧上昇によってONになったときに点灯する接地確認灯77を運転室17に設けたものである。これにより、切替スイッチ74をONにしてアウトリガジャッキ伸長操作を行ったときに、アウトリガジャッキが所定の伸長力で接地し、接地回路71の油圧が圧力スイッチ76に設定した圧力、前記リリーフ弁73の設定圧力より僅かに低い圧力に上昇したときに接地確認灯77が点灯するので、アウトリガジャッキが所定の伸長力で接地したことを運転室17内で容易に確認することができる。
図3は、油圧回路の第3形態例を示している。本形態例に示す油圧回路は、前記リリーフ弁73に代えて電磁比例リリーフ弁78を用いるとともに、該電磁比例リリーフ弁78のソレノイド78aを励磁させる電流値を調節するための伸長力調整ボリューム79と、コントロールボックス79aとを設けたものである。これにより、杭打機における作業中の全装備質量や作業内容に応じてアウトリガジャッキの伸長力を最適化することができる。
図4は、油圧回路の第4形態例を示している。本形態例に示す油圧回路は、前記個別回路80に、全てのアウトリガジャッキ20,30,40,50を同時に伸縮させるための同時伸縮スイッチ85を設けている。この同時伸縮スイッチ85は、中立、伸長、短縮に切替可能な3ポジションスイッチであって、通常は中立位置になっている。作業を行う際に全てのアウトリガジャッキを接地させる場合は、前記切替スイッチ74をONにして同時伸縮スイッチ85を伸長側に切り替えればよい。これにより、前記同様に、ソレノイド切替弁72が連通状態になり、伸縮回路63から接地回路71に作用する油圧がリリーフ弁73の設定圧力を超えるとリリーフ弁73が開弁してタンク64に戻り、アウトリガジャッキ20,30,40,50への作動油の供給が終了して所定の伸長力で接地した状態になる。また、圧力スイッチ76が圧力上昇によってONとなり、接地確認灯77が点灯する。
一方、図6に示したジャッキアップターンを行う際には、切替スイッチ74をOFFにして同時伸縮スイッチ85を伸長側に切り替える。また、本形態例では、同時伸縮スイッチ85の伸長側回路と圧力スイッチ76とが接続されており、圧力スイッチ76を介してソレノイド切替弁72に通電されて開状態となり、接地回路71に油圧が作用している状態になっている。したがって、前述のように、全てのアウトリガジャッキが所定の伸長力で接地した後、伸縮回路63の圧力が上昇し始め、接地回路71の油圧上昇によってリリーフ弁73が開く前に圧力スイッチ76がONとなり、接地確認灯77が点灯すると同時にソレノイド切替弁72への通電が遮断されて接地回路71と伸縮回路63とが遮断されるので、リリーフ弁73が開くことはなく、油圧ポンプ62から伸縮回路63を介してマルチコントロールバルブ60への作動油の供給が継続され、全てのアウトリガジャッキが主リリーフ弁66が開くまで、パラレル回路67の作用で均等に最大限伸長し、ベースマシン14をジャッキアップターンが可能な高さに上昇させる。すなわち、全てのアウトリガジャッキが所定の伸長力で接地して圧力スイッチ76がONになってから、全てのアウトリガジャッキがジャッキアップ状態になるように形成している。
図7乃至図10は、前述の各形態例における変形例をそれぞれ示している。なお、各変形例を示す図においては、対応する各形態例に示した油圧回路の構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図7乃至図10に示す各変形例は、前記各形態例における接地回路71の構成を、パイロット圧で作動する切替弁91と、該切替弁91へのパイロット作動油の供給を切り替えるソレノイド弁92と、前記同様に、油圧があらかじめ設定された接地油圧を超えたときに開弁して伸縮回路63とタンク64に至る戻り回路65とを前記切替弁91を介して連通させるリリーフ弁93とで構成し、前記ソレノイド弁92のソレノイド92aを前記切替スイッチ74に接続した接地回路90に置き換えている。
まず、前記接地回路90の作動を図7に示す前記第1形態例の変形例に基づいて説明する。切替スイッチ74がOFFでソレノイド弁92のソレノイド92aへの通電を断った状態では、パイロット用油圧ポンプ94から供給されるパイロット作動油は、ソレノイド弁92を通過して閉止回路95でブロックされた状態になるので、切替弁91にはパイロット圧が作動せず、伸縮回路63と戻り回路65とが遮断された状態になっている。したがって、接地回路90が作動しないため、前記各形態例と同様に、マルチコントロールバルブ60内の各コントロールバルブ21,31,41,51を前記個別回路80で操作することにより、各アウトリガジャッキ20,30,40,50をそれぞれ伸縮させる通常の操作を行うことができる。
また、切替スイッチ74をONに切り替えると、ソレノイド弁92のソレノイド92aが通電状態になって励磁され、ソレノイド弁92が作動してパイロット用油圧ポンプ94からのパイロット作動油をパイロット回路96に供給する。これにより、前記切替弁91が連通状態になり、伸縮回路63の油圧が切替弁91を通って前記リリーフ弁93に作用する。アウトリガジャッキの伸長及び接地によって伸縮回路63の油圧が上昇し、前記最大油圧より低い油圧にあらかじめ設定されたリリーフ弁93の設定圧力を超えるとリリーフ弁93が開弁して伸縮回路63と戻り回路65とが切替弁91及びリリーフ弁93を介して連通する。したがって、前記各形態例と同様に、油圧ポンプ62から吐出された作動油は、伸縮回路63から切替弁91及びリリーフ弁93を通って戻り回路65からタンク64に戻るため、各アウトリガジャッキ20,30,40,50を、リリーフ弁93の設定圧力に対応した接地圧力に均等に保持することができる。
図8に示す前記第2形態例の変形例では、前記第2形態例と同様に、接地回路90に圧力スイッチ76を設けるとともに、該圧力スイッチ76が接地回路90の油圧上昇によってONになったときに点灯する接地確認灯77を運転室17に設けたものである。これにより、切替スイッチ74をONにしてパイロット回路96から切替弁91にパイロット作動油が供給されて切替弁91が連通状態になり、アウトリガジャッキ伸長操作が行われ、アウトリガジャッキが所定の伸長力で接地し、接地回路90の油圧が圧力スイッチ76に設定した圧力、前記リリーフ弁73の設定圧力より僅かに低い圧力に上昇したときに接地確認灯77が点灯するので、アウトリガジャッキが所定の伸長力で接地したことを運転室17内で容易に確認することができる。
図9に示す前記第3形態例の変形例では、前記リリーフ弁93に代えて電磁比例リリーフ弁97を用いるとともに、該電磁比例リリーフ弁97のソレノイド97aを励磁させる電流値を調節するため、前記第3形態例と同様の伸長力調整ボリューム79と、コントロールボックス79aとを設けている。これにより、前記同様に、杭打機における作業中の全装備質量や作業内容に応じてアウトリガジャッキの伸長力を最適化することができる。
図10に示す前記第4形態例の変形例では、前記第2形態例の変形例と同様に、圧力スイッチ76と接地確認灯77とを設けるとともに、前記第4形態例と同様に、前記個別回路80に、全てのアウトリガジャッキ20,30,40,50を同時に伸縮させるための同時伸縮スイッチ85を設けている。これにより、前記第4形態例と同様に、アウトリガジャッキ20,30,40,50に対して、通常の個別伸縮操作、均等接地操作、最大限伸長操作及び短縮操作が可能となる。また、各アウトリガジャッキが所定圧力で接地すると、圧力上昇によって圧力スイッチ76がONとなり、接地確認灯77が点灯する。
各変形例に示すように、前記各形態例における接地回路71を各変形例に示す接地回路90に置き換えても、同様の操作で全てのアウトリガジャッキ20,30,40,50を均等な接地圧で接地させることができる。
なお、本発明は、前記形態例に示した杭打機に限らず、クローラクレーンなどのクローラ式走行手段を備えた各種建設機械に適用することができる。