JP2016182795A - ポリオレフィン被覆鋼材及びその製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン被覆鋼材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】3層ポリオレフィン被覆鋼管において高密着力かつ界面剥離を防止するポリオレフィン被覆鋼材を提供する。【解決手段】粉体エポキシプライマーの硬化度を30〜120%、且つ性ポリオレフィンの変性方法を無水マレイン酸によるグラフト変性にすることで高密着力を実現し、変性ポリオレフィンの破断強度とポリオレフィンの降伏点強度の樹脂強度比を0.5〜1.3にすることでポリオレフィンの弾性変形中に変性ポリオレフィン層4が先行して破壊し、プライマー界面剥離を防ぐ。【選択図】図1

Description

本発明は、粉体エポキシ樹脂プライマー、変性ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂を用いた防食被覆鋼材に関する。
ポリオレフィン被覆鋼材は、長期の防食性が優れていることから、鋼管、鋼管杭、鋼矢板等に利用されている。近年、海底、極寒冷地、熱帯での使用を前提とした原油、重質油、天然ガスを輸送するパイプラインにも、ポリオレフィン被覆鋼管が使われるようになってきている。
しかし被覆に用いられるポリオレフィン自体は、単純なオレフィン類からなるポリマーで、鋼材との接着性に乏しい。そのためこのようなポリオレフィン被覆鋼材においては、鋼材との密着性と防食性の高いエポキシ樹脂を用いたプライマーが使用される。昨今は環境保護の観点から揮発性有機化合物を含まない粉体エポキシ樹脂プライマーが主流である。粉体エポキシ樹脂プライマーは有機溶剤や水等の溶媒を含まず、熱硬化性のエポキシ樹脂成分、硬化剤成分を粉末状に加工し、混合した塗料である。加熱した鋼材に塗布もしくは塗布後に加熱することで化学反応により塗膜を形成する。
さらに外被と粉体エポキシ樹脂プライマーの間には密着性と機械特性に優れた、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物によって変性された変性ポリオレフィン系接着樹脂(以下、接着剤と表記する)が接着剤層として使用される。
ポリオレフィン被覆鋼材で重要視される性能に被覆の密着性が挙げられる。密着力の評価手法は塗膜を引き剥がすピール試験が一般的であり、その際の評価項目は密着力と破壊形態である。近年はラインパイプの使用環境が高温化しているため、求められるピール強度が上昇している。例えばポリエチレン被覆鋼管に関する規格であるJISG3477においても常温で15N/mm以上と規定されており、さらにISO21809−1においては80℃でのピール強度が3N/mmと規定されている。加えてプライマー層と接着剤層の密着の信頼性の確保のため、破壊形態はプライマー層との界面破壊は好ましくなく、接着剤層内での破壊(以下、凝集破壊と表記する)が求められている。
特許文献1では、接着促進剤としてエチレン、アクリル酸コポリマー等の共重合変性樹脂を用いることで高密着力と接着剤凝集破壊を実現している。しかし特許文献1に記載される共重合変性の樹脂は、粉体エポキシ樹脂プライマーの加熱温度、硬化時間、樹脂被覆時の圧力、水冷までの時間等の被覆鋼材作製時の条件によって、密着力の変動が大きく、得られた被覆鋼材が、安定して高密着力を発揮することは困難である。
特表2004−502801号公報
本発明の目的は、被覆鋼材の常温および高温でのピール試験において高いピール強度を示す、安定した高密着力と界面破壊の防止とを両立したポリオレフィン被覆鋼材を得ることである。
高密着力を実現するには、まずプライマー層と接着剤層とが強固に密着する必要がある。そのためには第一に粉体エポキシ樹脂プライマーを、上に位置する接着剤層の被覆に最適な条件になるよう塗装しなければならない。
粉体エポキシ樹脂プライマーは、主成分のエポキシ樹脂と硬化剤との反応でエポキシ基が開環することで硬化が進行し、その際水酸基が生成される。この水酸基が接着剤の変性部と結合することで二層が接着する。加熱温度、硬化時間が大きい方が生成される水酸基は増加するが、硬化反応が終了した後は酸化劣化等で水酸基が減少し、密着力が低下する。しかし高密着力を実現させるために必要なエポキシ樹脂の開環度、あるいは結合に関与する水酸基は定量化されておらず、加熱温度、硬化時間は経験的に設定されていることが多い。ここで、エポキシ樹脂の開環度とは、エポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基の内、反応により開環したエポキシ基の割合のことを言う。そこで本発明者らはエポキシ樹脂の開環度を定量化すべく粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度に着目した。硬化度の評価方法には赤外分光光度計を用いる方法、示差走査熱量計(DSC)を用いる方法、ゲル分率による方法等が挙げられる。数ある方法の中から、本発明者は粉体エポキシ樹脂プライマーの種類に依らず、DSCを用いる方法により得られた硬化度が密着力と相関することを見出した。
ここで、エポキシ樹脂の硬化度とは、以下(1)式で定義される値のことを言う。
C=〔(ΔH0−ΔH)/ΔH0〕×100 …(1)
C:粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度(%)
ΔH0:塗布前の粉体エポキシ樹脂プライマーの未反応熱量(J/g)
ΔH:接着剤被覆時の粉体エポキシ樹脂プライマーの未反応熱量(J/g)
図2に粉体エポキシ樹脂プライマーをDSCで測定した時のチャートの一例を示す。図2のように、粉体エポキシ樹脂プライマーでは100〜220℃の領域で発熱のピークが観測される。このピークは未反応のエポキシ成分の硬化反応熱を表しており、ピーク面積は未反応熱量に対応する。未反応熱量の大小は硬化反応の進行度と相関があり、未反応熱量が小さいほど硬化が進行していることを示す。
しかし、(1)式で硬化度が100%となり、過硬化となっても高密着力を発揮することがある。ここで、過硬化とは硬化反応が完了し、未反応熱量がゼロとなった状態を示す。これはエポキシ基の反応が終了しても一定時間は生成した水酸基が残存するためであるが、硬化時間が長時間になると酸化劣化により水酸基が失われて密着力は低下する。このような硬化度が100%でも高密着力を発揮する硬化時間についてはこれまで検討されていない。
そこで本発明者らは加熱時間と硬化度の関係に着目した。図3に予熱温度200℃における粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度と硬化時間との関係の一例を示す。硬化度は100%未満の領域で加熱時間に対して指数関数的挙動を示し、硬化時間を対数表示にすることで近似直線が得られ、以下(2)式に示すような近似式を得ることが出来る。
C=A×lnt+B …(2)
C:粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度(%)
t:硬化時間(秒)
A:硬化度100%未満の領域で加熱時間と硬化度の関係から得られる近似直線の傾き
B:硬化度100%未満の領域で加熱時間と硬化度の関係から得られる近似直線の切片
これによりDSCを用いる硬化度測定方法では評価できなかった、硬化時間が長い条件においても、100%を超える値で表現することで擬似的に定量化することが出来る。例えば図3において、加熱時間200秒では過硬化領域にあるが、得られた近似式により硬化度120%と表現する。
また(2)式を変形し、以下(3)式を用いることで狙い硬化度に必要な硬化時間を算出することが出来、高密着力を実現できる被覆条件が算出可能となる。
t=exp〔(C−B)/A〕 …(3)
C:粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度(%)
t:硬化時間(秒)
A:硬化度100%未満の領域で加熱時間と硬化度の関係から得られる近似直線の傾き
B:硬化度100%未満の領域で加熱時間と硬化度の関係から得られる近似直線の切片
粉体エポキシ樹脂プライマーと接着剤の結合は前述したように水酸基による化学結合が主である。粉体エポキシ樹脂プライマーと接着剤が接触する瞬間の結合に関与する水酸基が二層の密着に大きな影響を与える。(2)式で得られた硬化度が低すぎる場合は生成する水酸基が少なく、接着剤の変性部と結合が乏しいため低密着力となる。対して硬化度が高すぎる場合は酸化劣化等により、生成した水酸基が大幅に減り低密着力となる。
鋭意検討の結果、本発明者は密着力が接着剤被覆時の粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度に依存し、(2)式で算出される硬化度が30〜120%となる硬化時間で粉体エポキシ樹脂プライマーと接着剤を被覆した時、二層が強固に密着することを明らかにした。30%未満では硬化が不十分の恐れがあり、接着剤の被覆の際に接着剤がずれる等の不具合がある。120%より大きい場合は接着剤との結合に寄与する水酸基が大幅に減り、プライマー層との界面破壊になりやすくなる。
第二には接着剤として無水マレイン酸のグラフト変性ポリオレフィン樹脂を使用する。
ポリオレフィン樹脂自体は粉体エポキシ樹脂プライマー由来の水酸基との反応基を持たないため難接着性である。そのため不飽和カルボン酸またはその酸無水物を付加させた変性ポリオレフィン樹脂を接着剤として用いる。代表的な変性方法には主鎖中に変性物が存在する共重合変性と、側鎖として付加するグラフト変性とがある。本発明者らは共重合変性よりも、側鎖として反応基が存在することでプライマー層表面と反応しやすく、かつ被覆鋼材作製条件に左右されにくい無水マレイン酸のグラフト変性ポリオレフィン樹脂を用いることで、安定した高密着力を実現した。
次にピール試験時にプライマー層の界面破壊を防ぎ、接着剤層の凝集破壊を優先的に引き起こさせる必要がある。ピール試験時は溶着した変性ポリオレフィン接着剤と最外層のポリオレフィン樹脂が引張変形する。それぞれの樹脂は荷重がかかるにつれて、弾性変形から塑性変形に移行し、最終的に破断する。接着剤の破断の前にポリオレフィン樹脂が塑性変形となると見かけ上の剥離速度が低下し、プライマー層の界面破壊になりやすい。ポリオレフィン樹脂が弾性変形領域にある内に接着剤が破断するための要素として、本発明者らはポリオレフィン樹脂の降伏点強度と変性ポリオレフィン樹脂の破断強度に着目した。鋭意検討の結果、接着剤の破断強度をポリオレフィン樹脂の降伏点強度で除した値(以下、樹脂強度比と表記)が0.5〜1.3の時、接着剤が優先的に破壊され、凝集破壊になることを見出した。樹脂強度比が0.5未満ではポリオレフィン樹脂に対して接着剤の破断強度が低すぎる場合は充分な密着力が出る前に接着剤が破断し、ポリオレフィン樹脂の降伏点強度が高すぎる場合はポリオレフィン樹脂層と接着剤層との界面破壊になる。これに対して樹脂強度比が1.3より大きい場合は接着剤が破断する前にポリオレフィン樹脂の塑性変形が始まり、プライマー層との界面破壊となる。高温条件においてもこの強度比の範囲であれば凝集破壊を実現できる。
すなわち本発明は、粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度と変性ポリオレフィン樹脂接着剤の変性方法により高密着力を実現し、同時に変性ポリオレフィン樹脂接着剤の破断強度とポリオレフィンの降伏点強度との比をコントロールすることで、変性ポリオレフィン樹脂接着剤と粉体エポキシ樹脂プライマーとの間の界面破壊の防止を実現したポリオレフィン被覆鋼材である。
以上述べたように、本発明により常温および高温のピール試験において、高いピール強度を示す高密着力と界面破壊の防止を両立したポリオレフィン被覆鋼材が得られる。これにより高温環境でもプライマー層と接着剤層との密着に対する信頼性が確保される。
本発明のポリオレフィン被覆鋼材の被膜構成断面図である。 粉体エポキシ樹脂プライマーをDSCで測定した時のチャートの一例である。 予熱温度200℃における粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度と硬化時間と関係を示したグラフの一例である。
以下、本発明につき詳細に説明を行なう。本発明のポリオレフィン被覆鋼材の製造方法について、代表として図1に示すポリオレフィン被覆鋼管の場合について説明する。
図1は、本発明の一つの実施態様を示すポリオレフィン被覆鋼材の被覆構成断面図である。本発明に使用する鋼材1としては普通鋼、あるいは高合金鋼などどのような鋼種でも適用可能である。なお、従来重防食被覆が適用されていた鋼管、また、海洋構造物等で使用される鋼管杭等にも適用可能である。鋼材表面のスケール、汚染物等を除去する必要があるため、最初にアルカリ脱脂、酸洗、サンドブラスト処理、グリッドブラスト処理、あるいはショットブラスト処理等のいずれかの前処理を施して使用する。
鋼材1は、プライマー層3を形成する前に、下地処理として表面処理層2を形成させると、より優れた防食性が得られるため望ましい。表面処理の例としてはクロメート処理、リン酸処理等が挙げられる。
粉体エポキシ樹脂プライマーの塗布前に鋼材を加熱する必要がある。加熱温度範囲は160〜260℃である。160℃未満では粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応が不十分となり、ピール試験時にプライマー層自体の破壊が起きる可能性がある。加熱温度が260℃を超える場合は、形成されたプライマー層の劣化が始まり密着性、防食性が低下する。鋼材の加熱方法は高周波誘導加熱、遠赤外加熱、ガス直火加熱などの方式を適用することができる。
プライマー層3に使用する材料の成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂エポキシ樹脂等を単独、もしくは混合して使用する。更に高温特性が要求される場合、多官能性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂やハロゲン化樹脂を上記のビスフェノールA型エポキシ樹脂あるいは、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂と組み合わせて用いることが出来る。エポキシ樹脂硬化剤はジシアンアミド系、芳香族ポリアミン系、フェノール系硬化剤等が使用でき、中でもフェノール系硬化剤が好ましい。フェノール系硬化剤を用いることで低温衝撃性に優れた塗膜が得られる。また、硬化促進剤、レベリング剤、流動化助剤、脱気剤等の添加剤や助剤を含有してもよい。
上記粉体エポキシ樹脂プライマーは市販されているものを使用することが出来る。具体的には例えば、Basepox PE50−1081(Arsonsisi社製)、Jotapipe AC1003(JOTUN社製)、EX4413−L300(KCC社製)等が挙げられる。
粉体エポキシ樹脂プライマーのガラス転移温度(Tg)は80℃以上、好ましくは100℃以上である。Tgが80℃より低いと操業温度が高温である時に耐食性が低下する。
粉体エポキシ樹脂プライマーは静電粉体塗装や流動浸漬塗装等の一般的な粉体塗装方法で塗布することができる。膜厚は50〜1000μmの範囲で塗布する。膜厚が50μmより薄い場合にはピンホールが多数発生する。一方、1000μmを超える厚膜塗装では低温での耐衝撃性等の特性が低下しやすい。
粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度は予め次の方法で測定する。
加熱硬化前の粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応熱量については次の方法で測定する。
アルミパンに粉体エポキシ樹脂プライマーを10mg秤量する。以下の(a)から(b)に示す加熱サイクルで測定を行う。
(a):25±5℃から70±5℃に20℃/分で加熱し、25±5℃に急冷
(b):25±5℃から275±5℃に20℃/分で加熱し、25±5℃に急冷した後、3分保持
(b)で得られたDSC曲線において、発熱ピークの面積を算出し、加熱硬化前の粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応熱量(ΔH0)とする。単位はJ/gとする。
加熱硬化後の粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応熱量については次の方法で測定する。
アルミパンに粉体エポキシ樹脂プライマーを10mg秤量する。操業時の予熱温度に加熱したホットプレート上で所定の時間硬化させた後、冷板上で急冷してサンプルとする。加熱時間が異なるサンプルを3個以上作製する。作製した各サンプルについて以下の(c)から(d)に示す加熱サイクルで測定を行う。
(c):25±5℃から110±5℃に20℃/分で加熱し、90秒保持した後、25±5℃に急冷
(d):25±5℃から275±5℃に20℃/分で加熱し、25±5℃に急冷した後、3分保持
各サンプルにおいて(d)で得られたDSC曲線において、発熱ピークの面積を算出し、各硬化時間における加熱硬化後の粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化反応熱量(ΔH)とする。単位はJ/gとする。
上記方法で得られた加熱前の粉体エポキシ樹脂プライマーの未反応熱量(ΔH0)と各硬化時間における加熱後の粉体エポキシ樹脂プライマーの未反応熱量(ΔH)を用いて、上記(1)式より操業時の予熱温度における各硬化時間での硬化度を求める。
上記方法で得られた硬化度の結果から、(2)式を得るため粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度と硬化時間のグラフより近似直線を算出する。硬化度は硬化時間に対して指数関数的挙動を示すため、硬化時間を対数表示にすることで近似直線が精度よく得られる。この方法は粉体エポキシ樹脂プライマーであれば、エポキシ成分、硬化剤成分、その他添加剤、助剤に依らず適用可能である。ただし、粉体エポキシ樹脂プライマーの種類および予熱温度により(2)式中のA、Bの値は異なるため、塗装時の予熱温度で加熱したサンプルを用いて近似式を求めることが必要である。
変性ポリオレフィン接着剤層4に使用する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の公知のポリオレフィン樹脂を、無水マレイン酸でグラフト変性したもの、あるいは、その変性物をポリオレフィン樹脂で適宜希釈したものである。無水マレイン酸の変性物はプライマーとの接着に優れ、被覆条件に依らず高密着力が得られる。
グラフト変性率は0.1%〜3%である。0.1%より少ない場合はプライマー層との化学結合が少なく、密着力に乏しい。対して3%を超える場合では変性の過程で低分子量成分が増大し、接着界面に拡散し接着力が低下する。グラフト変性率の測定は赤外分光法にて行う。本発明で用いることができる変性オレフィンのメルトフローレート(MFR)(190℃あるいは230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜10g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
接着剤の被覆方法としては、押出機のダイスを用いて加熱溶融した変性オレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形した変性ポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕した変性オレフィン樹脂を粉体塗装して溶融して被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、0.05〜1mmの膜厚を有する変性オレフィン樹脂接着剤層を形成する。膜厚が0.05mm未満ではプライマー層との溶融濡れが悪く、接着強度が不十分である。また、1mmを越えると経済性の観点から好ましくない。
最外層のポリオレフィン樹脂層5に使用する材料としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−プロピレン共重合体等の従来公知のポリオレフィン樹脂等であり、またこれらのブレンド樹脂であってもよい。
本発明で用いることができるポリオレフィン樹脂のMFR(190℃あるいは230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜5g/10分、より好ましくは0.1〜2.5g/10分である。この範囲より多くても少なくても成形性が悪くなる。
最外層のポリオレフィン樹脂層には、ポリオレフィン樹脂以外の成分としては、耐熱性、耐候性対策としてカーボンブラック又はその他の着色顔料、充填強化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の耐候剤等を任意の組み合わせで添加することができる。
樹脂の破断強度、降伏点強度は次の方法で測定する。ペレット状の樹脂を200℃のホットプレスで10分加圧し、その後水冷することで厚さ3mmの樹脂シートを作製する。樹脂シートからJISK6251のダンベル5号形の形状に成型し、引張速度20mm/分で引張試験を行い、破断強度と降伏点強度を測定した。なお単位はMPaとする。
ポリオレフィン被覆の方法としては、接着剤と同様に押出機のダイスを用いて加熱溶融したポリオレフィン樹脂で直接鋼材を被覆する押出被覆方法を用いることができる。あるいは加熱した鋼材に予め成形したポリオレフィン樹脂シートを貼り付ける方法、粉砕したポリオレフィン樹脂を粉体塗装して溶融して被膜を形成する方法等がある。これらの方法により、1mm〜5mmの膜厚を有するポリオレフィン樹脂層を形成する。膜厚が1mmより薄いと、防食性、耐衝撃性が劣るため好ましくない。また膜厚が5mmを超えると寒暖差による塗膜の収縮により、端部からポリオレフィン被覆層が剥離しやすいため好ましくない。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
鋼材サンプルとして、9mm×100mm×150mmの熱延鋼板に、グリッドブラスト処理を施したものを用意した。
実施例、比較例では、粉体エポキシ樹脂プライマー(商品名、Basepox PE50−1081、Arsonsisi社製)を用いた。使用する粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度と時間の関係を、上述したように予め測定した。
200℃に加熱した鋼板サンプルに、上記粉体エポキシ樹脂プライマーを静電粉体塗装で150μmに塗装し、硬化度が30、60、90、100、110、120%となる時間養生した。予め200℃で加熱した厚さ200μmの変性ポリオレフィン樹脂のシート(表1に示す)と厚さ3mmのポリオレフィン樹脂のシート(表2に示す)を順に被覆し、本発明の実施例の被覆鋼材サンプルを作製した。
比較例1、2として、実施例で用いたのと同じ粉体エポキシ樹脂プライマーを用いて、硬化度が20%、130%となる時間養生し、変性ポリエチレン樹脂のシート(表1に示す)と厚さ3mmのポリエチレン樹脂のシート(表2に示す)を順に被覆し、比較例サンプルとした。
比較例3として、実施例で用いたのと同じ粉体エポキシ樹脂プライマーを用いて、硬化度が60%となる時間養生し、接着剤にエチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エステル三元共重合変性の変性ポリエチレンを使用し、厚さ3mmのポリエチレン樹脂のシート(表2に示す)を被覆した。
比較例4、5として、実施例で用いたのと同じ粉体エポキシ樹脂プライマーを用いて、硬化度が60%となる時間養生し、変性ポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂の組み合わせを変更し、樹脂強度比を1.4と0.48に設定した。
比較例6、7として、実施例で用いたのと同じ粉体エポキシ樹脂プライマーを用いて、硬化度が60%となる時間養生し、表1に記載のグラフト変性率が3.5%、0.08%の変性ポリエチレン樹脂H、Iを使用した。
表1に、用いた変性ポリオレフィン樹脂の物性を、表2に、用いたポリオレフィン樹脂の物性を示す。
上記実施例および比較例によって得られたポリオレフィン被覆鋼材サンプルを下記に従って評価試験を行った。
〔密着力、破壊形態の評価〕
作製した被覆鋼材サンプルは、幅20mmの粉体エポキシ樹脂プライマー面に到達する切り込みを長手方向に入れて先端のポリエチレン樹脂層を剥がした。この先端部を掴み代とし、引張速度を10mm/分、剥離角度を90度の条件で引張試験機を用いて剥離させ、この時の平均強度を切り込み幅で除した値をピール強度とし、密着力と見なした。ピール強度の単位はN/mmである。試験中の温度は23℃と80℃で実施した。また破壊形態は剥離面に対して、プライマー層表面に残存している接着剤を目視で観察し評価した。
本発明の実施例及びの比較例の結果を表3に示す。なお、表3中の変性ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂の記号はそれぞれ表1、表2の記号に対応する。表3の結果から明らかなように、本発明で規定する条件を満たす実施例1〜15は23℃で20N/mm以上、80℃で5N/mm以上の密着力を発揮しており、かつ破壊形態が全て接着剤の凝集破壊となり良好である。




















一方、比較例1では粉体エポキシ樹脂プライマーが未硬化であり、接着剤の被覆時にずれが発生するため不良であり、評価できなかった。比較例2では粉体エポキシ樹脂プライマーが過硬化のため、プライマー層と接着剤層での界面破壊となった。比較例3では三元共重合変性の接着剤のため、密着力が低く、破壊形態もプライマー層と接着剤層の界面破壊であり不適である。比較例4では接着剤の材料強度が高く、接着剤が破断する前にポリオレフィン樹脂の塑性変形が始まるため、破壊形態がプライマー層と接着剤層の界面破壊となった。比較例5では接着剤の材料強度が低く、接着剤の凝集力が小さいために低密着力となった。比較例6は変性率が高すぎるため、低分子量成分が増大し、接着界面に拡散しプライマー層と接着剤層の界面破壊となった。比較例7は変性率が低すぎるため、プライマー層との化学結合が少なく、低密着力かつプライマー層と接着剤層の界面破壊となった。
1 鋼材
2 表面処理層
3 プライマー層
4 変性ポリオレフィン樹脂(接着剤)層
5 ポリオレフィン樹脂層

Claims (2)

  1. 鋼材、並びに前記鋼材上に順に、表面処理層、プライマー層、接着剤層、ポリオレフィン樹脂層を有するポリオレフィン被覆鋼材であって、
    前記接着剤が、グラフト変性率0.1〜3%である無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂であり、かつ前記変性ポリオレフィン樹脂の破断強度と前記ポリオレフィン樹脂の降伏点強度の比が0.5〜1.3であることを特徴とするポリオレフィン被覆鋼材。
  2. 鋼材を下地処理し、
    下地処理された前記鋼板を加熱して、プライマーを塗布し、
    前記粉体エポキシ樹脂プライマーを硬化させ、
    前記プライマーの上に変性ポリオレフィン接着剤を被覆し、そして
    ポリオレフィン樹脂層を被覆するポリオレフィン被覆鋼材の製造方法であって、
    前記プライマー層を形成する塗料が、粉体エポキシ樹脂塗料であり、以下の(1)式で定義される粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度において、以下の(2)式で示される加熱時間と硬化度の関係の近似式から求められる粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度が30〜120%の時点で前記接着剤を被覆する請求項1に記載のポリオレフィン被覆鋼材の製造方法。
    C=〔(ΔH0−ΔH)/ΔH0〕×100 …(1)
    (上式中、
    C:粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度(%)
    ΔH0:塗布前の粉体エポキシ樹脂プライマーの未反応熱量(J/g)
    ΔH:接着剤被覆時の粉体エポキシ樹脂プライマーの未反応熱量(J/g))
    C=A×lnt+B …(2)
    (上式中、
    C:粉体エポキシ樹脂プライマーの硬化度(%)
    t:硬化時間(秒)
    A:硬化度100%未満の領域で加熱時間と硬化度の関係から得られる近似直線の傾き
    B:硬化度100%未満の領域で加熱時間と硬化度の関係から得られる近似直線の切片)
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