JP2016181405A - 非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料及び非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料及び非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法 Download PDF

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健太 青木
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Abstract

【課題】本発明の目的は、優れた入出力特性、及びサイクル特性を示す非水電解質二次電池を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本願発明の(A)溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程、(B)前記炭素質前駆体を粉砕する工程、(C)前記炭素前駆体を酸化することにより不融化する工程、及び(D)前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、800℃〜1600℃で本焼成する焼成工程、を含む、非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法によって解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料及び非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法に関する。本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は、優れたサイクル特性、及び入出力特性を示すことができる。
携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯機器は高機能化が進み、その電源である二次電池の高エネルギー密度化が期待されている。高エネルギー密度の二次電池として、炭素質材料を負極として用いる非水溶媒系リチウム二次電池が提案されている(特許文献1)。
近年、環境問題への関心の高まりから、エネルギー密度が高く、入出力特性の優れた大型の二次電池が、電気自動車へ搭載されつつある。例えば、モーターのみで駆動する電気自動車(EV)、内燃エンジンとモーターとを組み合わせたプラグインハイブリッド型電気自動車(PHEV)、又はハイブリッド型電気自動車(HEV)等の自動車用途での普及が期待されている。特に、非水溶媒系リチウム二次電池であるリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有する二次電池として広く使用されており、EV用途又はPHEV用途において一回の充電での航続距離を延ばすため、又はHEV用途における燃費の向上のため、一層の初期効率、入出力特性、及びサイクル特性の改善が期待されている。
特開昭57−208079号公報 特開2006−117460号公報 特開2007−197309号公報 特開2008−66053号公報
特許文献1には、カーボンナノファイバを含む球状のカーボンナノファイバ・フェノール樹脂複合炭化材料が開示されている。また、特許文献2には、メソフェーズ小球体に繊維状炭素材料が付着している炭素材料が開示されている。更に、特許文献3には、コアとなる炭素粒子から繊維状炭素が成長することによって得られる蓄電デバイス用負極活物質が開示されている。しかしながら、これらの炭素質材料は、入出力特性、及びサイクル特性のすべてを満足できるものではなかった。
本発明の目的は、優れた入出力特性、及びサイクル特性を示す非水電解質二次電池を提供することである。
本発明者は、優れた入出力特性、及びサイクル特性を示す非水電解質二次電池について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程を含む非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法により優れた特性を有する非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料が得られることを見出した。前記非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を、負極材料として用いた二次電池は、優れた初期効率、入出力特性、及びサイクル特性を示した。更に、ピッチ又はタール由来の難黒鉛化性炭素質粒子と、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを含む非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を負極材料として用いた二次電池も、優れた初期効率、入出力特性、及びサイクル特性を示した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1](A)溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程、(B)前記炭素質前駆体を粉砕する工程、(C)前記炭素前駆体を酸化することにより不融化する工程、及び(D)前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、800℃〜1600℃で本焼成する焼成工程、を含む、非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法、
[2]前記焼成工程(D)が、前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、300℃以上800℃未満で予備焼成し、そして800℃〜1600℃で本焼成する工程である、[1]に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法、
[3]前記繊維状又は細長棒状の導電助剤が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーである、[1]又は[2]に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法、
[4]ピッチ又はタール由来の難黒鉛化性炭素質粒子と、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを含む複合難黒鉛化性炭素質材料であって、前記難黒鉛化性炭素質粒子の内部から外部にかけて導電助剤が含まれており、そして粉砕されていることを特徴とする非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料、
[5]平均粒子径が1〜50μmであり、ブタノール法により求められる真密度ρBtが1.30g/cm以上1.70g/cm未満であり、そしてBET法により求められる比表面積が1〜35m/gである、[4]に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料、
[6]前記繊維状又は細長棒状の導電助剤が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーである、[4]又は[5]に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料、
[7](A)溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程、(B)前記炭素質前駆体を粉砕する工程、(C)前記炭素前駆体を酸化することにより不融化する工程、及び(D)前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、800℃〜1600℃で本焼成する焼成工程、によって得られる非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料、
[8]前記焼成工程(D)が、前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、300℃以上800℃未満で予備焼成し、そして800℃〜1600℃で本焼成する工程である、[7]に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料、
[9]前記繊維状又は細長棒状の導電助剤が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーである、[7]又は[8]に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料、
[10][4]〜[9]のいずれかに記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極、及び
[11]前記[10]に記載の負極を含む、非水電解質二次電池、
に関する。
本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法によれば、溶融したピッチ又はタールに、繊維状又は細長棒状の導電助剤を混合し、そして固化させることによって得られた複合難黒鉛化性炭素前駆体は、その内部から外部にかけて導電助剤が含まれている。この複合難黒鉛化性炭素前駆体を、不融化、粉砕、及び焼成することによって、本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料を得ることができる。本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料は、粉砕されていること、及び炭素質粒子の内部から外部にかけて導電助剤が含まれていることなどの特徴が組み合わされたことによって、二次電池の負極材料として使用された場合に、優れた入出力特性、及びサイクル特性有する二次電池を得ることができる。また、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料は、二次電池の負極材料として使用された場合に、優れた初期効率を示すことができる。
更に、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を用いた二次電池は、性能のバラつきが少ない。すなわち、容量保持率(サイクル特性)のバラツキがなく、優れた性能のリチウムイオン二次電池を安定的に製造することができる。
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料の電子顕微鏡写真(A)及び従来の難黒鉛化性炭素質材料の電子顕微鏡写真(B)である。 本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料の負極材料(黒四角:試験例1)、従来の難黒鉛化性炭素質材料に導電助剤(VGCF)を添加した負極材料(▲:比較試験例2)、及び従来の難黒鉛化性炭素質材料のみの負極材料(◇:比較試験例1)を用いた二次電池のサイクル特性を示したグラフ(A)である。本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料の負極材料(黒四角:試験例1)の3サンプルのバラツキ、及び従来の難黒鉛化性炭素質材料のみの負極材料(◇:比較試験例1)の3サンプルのバラツキを示したグラフ(B)である。 本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料(実施例1)及び従来の炭素質材料(比較例1)のみを負極材料として用いた二次電池の入力抵抗及び出力抵抗を示したグラフである。
[1]非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法
本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法は、(A)溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程、(B)前記炭素質前駆体を粉砕する工程、(C)前記炭素前駆体を酸化することにより不融化する工程、及び(D)前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、800℃〜1600℃で本焼成する焼成工程、を含む。
本発明の製造方法によって得られる非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料は、真密度が1.30g/cm以上1.70g/cm未満の炭素質材料である。
《固化工程(A)》
本発明の製造方法における固化工程(A)おいて、溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る。
(炭素源)
本発明の製造方法において用いる炭素源は、ピッチ又はタールである限りにおいて、限定されないが、石油ピッチ、石油タール、石炭ピッチ、又は石炭タールを挙げることができる。より具体的には、タール又はピッチとして、エチレン製造時に副生する石油系のタール又はピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分又はピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチを挙げることができる。また、これらのタール又はピッチの2種以上を混合して使用してもよい。
(導電助剤)
導電助剤は、非水電解質二次電池用負極電極の製造において用いられる導電助剤を、制限なく使用することができるが、好ましくは繊維状又は細長棒状の導電助剤である。繊維状又は細長棒状の導電助剤としては、カーボンナノチューブ(例えば単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ)又はカーボンナノファイバー(例えば、単層カーボンナノファイバー、多層カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維(VGCF))を挙げることができる。本明細書において、「細長棒状の導電助剤」は「筒状の導電助剤」を含む。
繊維状又は細長棒状の導電助剤の平均直径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5〜1000nmであり、より好ましくは1〜500nmであり、更に好ましくは5〜200nmである。平均直径が0.5nm未満であると、繊維状又は細長棒状の導電助剤の機械的強度が十分ではなく、粉砕工程において繊維状又は細長棒状の導電助剤の長さが短くなってしまい、十分な導電性を引き出すことができない。また、平均直径が1000nmを超えると、複合難黒鉛化性炭素質材料の内部から外部に配される繊維状又は細長棒状の導電助剤の数が減少し、電極に十分な導電性を付与することができない。
繊維状又は細長棒状の導電助剤の平均長は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜300μmであり、より好ましくは0.5〜100μmであり、更に好ましくは1〜50μmである。平均長が0.1μm未満であると、アスペクト比(長さ/直径)が十分でなく、複合難黒鉛化性炭素質材料の内部から外部に配される繊維状又は細長棒状の導電助剤が減少し、電極に十分な導電性を付与することができない。また、平均長が300μmを超えると、繊維状又は細長棒状の導電助剤を溶融したピッチ又はタールに均一に分散させるのが困難となる。
(混合)
前記ピッチ又はタールを溶融して、それに繊維状又は細長棒状の導電助剤を混合する。例えば、ピッチ又はタールを加熱し、繊維状又は細長棒状の導電助剤を添加し、そして混合してもよい。また、ピッチ又はタールに繊維状又は細長棒状の導電助剤を添加し、加熱及び混合してもよい。
ピッチ又はタールの溶融温度は、繊維状又は細長棒状の導電助剤を均一に混合できる限りにおいて限定されるものではないが、好ましくは20〜500℃であり、より好ましくは50〜400℃である。溶融時間は特に限定されないが、好ましくは0.1〜12時間であり、より好ましくは0.5〜5時間である。
繊維状又は細長棒状の導電助剤の混合量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは、全体量に対して0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.3〜15重量%であり、更に好ましくは0.5〜10重量%である。0.1〜20重量%であることによって、繊維状又は細長棒状の導電助剤が互いに凝集することなく、ピッチ又はタール中で高い分散性が期待できる点で好ましい。
ピッチ等の溶融を含む混合工程の雰囲気は、特に限定されるものではなく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、空気などの活性ガス雰囲気下で行当てもよい。例えば、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、又はそれらの混合ガスを挙げることができる。
導電助剤を混合したピッチ又はタールの温度を低下させることによって、ピッチ又はタールの固形物を得る。成形された導電助剤を含むピッチ又はタールを炭素前駆体として用いる。
また、混合工程では、後述の酸化による不融化処理を容易にすることを目的とし、ピッチ又はタールに対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合してもよい。ピッチ又はタールの固形物を得た後、この固形物に対し、低溶解度を有しかつ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、固形物から添加剤を抽出除去し、多孔性な固形物とした後、不融化工程を行ってもよい。
添加剤は、特に限定されることはないが、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、及びビフェニル等から選択される1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。添加量は、ピッチ又はタール100重量部に対し、30〜70重量部の範囲が好ましい。
ピッチ又はタールと、添加剤との混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素主体の混合物、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類が好適である。
(炭素前駆体)
得られたピッチ又はタール由来の炭素前駆体は、その内部から外部にかけて導電助剤が含まれている。すなわち、炭素前駆体の内部から外側に、繊維状又は細長棒状の導電助剤が伸長する形態を有している。
導電助剤を含む炭素前駆体の成形体の形状は、特に限定されるものではなく、粒状、円柱状、球状、ペレット状、板状、ハニカム状、又はブロック状などの形状を挙げることができる。
《粉砕工程(B)》
粉砕工程(B)においては、粗粉砕された炭素前駆体を目的の粒子径に粉砕する。すなわち、本発明の製造方法における粉砕工程(B)は、炭素前駆体の粒子径を、均一にするために行うものである。また、炭素前駆体を粗粉砕し、次いで目的の粒子径に粉砕してもよい。
得られる粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1.5〜40μmであり、更に好ましくは2.0〜35μmである。平均粒子径1μm未満の場合、微粉が増加し比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなり充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加するため好ましくない。また、負極電極を製造した場合、炭素質材料の間に形成される1つの空隙が小さくなり、電解液中のリチウムの移動が抑制されるため好ましくない。平均粒子径が50μmを超えると、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が増加するため、急速な充放電が困難となる。更に、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばジェットミル、ロッドミル、振動ボールミル、又はハンマーミルを用いることができるが、分級機を備えたジェットミルが好ましい。
粉砕工程(B)の順番は、本焼成工程(D)の前であれば特に限定されない。例えば、混合工程(A)及び不融化工程(C)の間、不融化工程(C)及び焼成工程(D)の間、焼成工程(D)における予備焼成及び本焼成の間に行うことができるが、好ましくは混合工程(A)及び不融化工程(C)の間である。不融化工程(D)の前に、粉砕を行うことにより、酸化による不融化を内部まで効率よく行うことができるが、その他の順番でも十分に本発明の効果を得ることができる。
本発明の製造方法は、下記の順序で実施することができる。
(i)工程(A)→工程(B)→工程(C)→工程(D)
(ii)工程(A)→工程(C)→工程(B)→工程(D)
(iii)工程(A)→工程(C)→工程(B)を工程(D)の予備焼成及び本焼成の間に行う。
《不融化工程(C)》
不融化工程(C)においては、炭素前駆体を酸化により不融化する。酸化方法は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化剤を用いて行うことができる。酸化剤も特に限定されるものではないが、気体としては、O、O、SO、NO、これらを空気、窒素などで希釈した混合ガス、又は空気などの酸化性気体を用いることができる。また、液体としては、硫酸、硝酸、若しくは過酸化水素等の酸化性液体、又はそれらの混合物を用いることができる。酸化温度も、特に限定されるものではないが、好ましくは、120〜400℃であり、より好ましくは、150〜350℃である。温度が120℃未満であると、十分に架橋構造ができず熱処理工程で粒子同士が融着してしまう。また温度が400℃を超えると、架橋反応よりも分解反応のほうが多くなり、得られる炭素材料の収率が低くなる。なお、酸化処理は、得られる複合難黒鉛化性炭素質材料の真密度が、1.30g/cm以上1.70g/cm未満となる条件で行う。
《焼成工程(D)》
焼成工程(D)においては、前記不融化した炭素前駆体を800℃〜1600℃で本焼成する。また、不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、300℃以上800℃未満で予備焼成し、そして800℃〜1600℃で本焼成してもよい。焼成工程(D)においては、好ましくは予備焼成を行うが、予備焼成を行わずに本焼成を行ってもよい。従って、焼成工程(D)においては、予備焼成なしで、不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下で800℃〜1600℃で本焼成してもよい。
(予備焼成)
本発明の製造方法における予備焼成は、炭素前駆体を300℃以上800℃未満で焼成することによって行うことができる。予備焼成は、揮発分、例えばCO、CO、CH、及びHなどと、タール分とを除去し、本焼成において、それらの発生を軽減し、焼成機の負担を軽減することができる。予備焼成温度が300℃未満であると脱タールが不十分となり、粉砕後の本焼成工程で発生するタール分やガスが多く、粒子表面に付着する可能性があり、粉砕したときの表面性を保てず電池性能の低下を引き起こすので好ましくない。一方、予備焼成温度が800℃以上であるとタール発生温度領域を超えることになり、使用するエネルギー効率が低下するため好ましくない。更に、発生したタールが二次分解反応を引き起こしそれらが炭素前駆体に付着し、性能の低下を引き起こすことがあるので好ましくない。
予備焼成は、不活性ガス雰囲気中で行い、不活性ガスとしては、窒素、又はアルゴンなどを挙げることができる。また、予備焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことができる。予備焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.5〜10時間で行うことができ、1〜5時間がより好ましい。
(本焼成)
本発明の製造方法における本焼成は、通常の本焼成の手順に従って行うことができ、本焼成を行うことにより、複合難黒鉛化性炭素質材料を得ることができる。本焼成の温度は、800〜1600℃である。本焼成温度が800℃未満では、炭素質材料に官能基が多く残存してH/Cの値が高くなり、リチウムとの反応により不可逆容量が増加するため好ましくない。本発明の本焼成温度の下限は800℃以上であり、より好ましくは900℃以上であり、特に好ましくは1000℃以上である。一方、本焼成温度が1600℃を超えると炭素六角平面の選択的配向性が高まり放電容量が低下するため好ましくない。本発明の本焼成温度の上限は1600℃以下であり、より好ましくは1500℃以下であり、特に好ましくは1400℃以下である。
本焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができこれらを単独或いは混合して用いることができる。更には塩素などのハロゲンガスを上記非酸化性ガスと混合したガス雰囲気中で本焼成を行うことも可能である。また、本焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.01〜10時間で行うことができ、0.02〜8時間が好ましく、0.03〜6時間がより好ましい。
前記非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法によって得られる非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料は、本発明に含まれる。すなわち、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法における前記のすべての実施態様から得られる非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料が、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料に含まれる。
[2]非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料
本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料は、ピッチ又はタール由来の難黒鉛化性炭素質粒子と、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを含む複合難黒鉛化性炭素質材料であって、前記難黒鉛化性炭素質粒子の内部から外部にかけて導電助剤が含まれており、そして粉砕されていることを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料は、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法によって得ることができるが、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法よって得られたものに限定されない。
《炭素源》
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料の炭素源は、ピッチ又はタールである限りにおいて、限定されないが、石油ピッチ、石油タール、石炭ピッチ、又は石炭タールを挙げることができる。より具体的には、タール又はピッチとして、エチレン製造時に副生する石油系のタール又はピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分又はピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチを挙げることができる。また、これらのタール又はピッチの2種以上を混合したものでもよい。
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料の炭素源がピッチ又はタールであることによって、得られた炭素質材料を負極材料として用いた二次電池は、優れた初期効率を示す。
《導電助剤》
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料に含まれる導電助剤は、非水電解質二次電池用負極電極の製造において用いられる導電助剤であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは繊維状又は細長棒状の導電助剤である。繊維状又は細長棒状の導電助剤としては、カーボンナノチューブ(例えば単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ)又はカーボンナノファイバー(例えば、単層カーボンナノファイバー、多層カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維(VGCF))を挙げることができる。
繊維状又は細長棒状の導電助剤の平均直径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5〜1000nmであり、より好ましくは1〜500nmであり、更に好ましくは5〜200nmである。平均直径が0.5nm未満であると、繊維状又は細長棒状の導電助剤の機械的強度が十分ではなく、粉砕工程において繊維状又は細長棒状の導電助剤の長さが短くなってしまい、十分な導電性を引き出すことができない。また、平均直径が1000nmを超えると、複合難黒鉛化性炭素質材料の内部から外部に配される繊維状又は細長棒状の導電助剤の数が減少し、電極に十分な導電性を付与することができない。
繊維状又は細長棒状の導電助剤の平均長は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜300μmであり、より好ましくは0.5〜100μmであり、更に好ましくは1〜50μmである。平均長が0.1μm未満であると、アスペクト比(長さ/直径)が十分でなく、複合難黒鉛化性炭素質材料の内部から外部に配される繊維状又は細長棒状の導電助剤が減少し、電極に十分な導電性を付与することができない。また、平均長が300μmを超えると、繊維状又は細長棒状の導電助剤を溶融したピッチ又はタールに均一に分散させるのが困難となる。
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料において、繊維状又は細長棒状の導電助剤は、難黒鉛化性炭素質粒子の内部から外部にかけて含まれる。内部から外部に伸長するように含まれてもよく、内部から外部表面にかけて付着するように含まれてもよい。しかしながら、すべての導電助剤が外部に出ていなくてもよく、複合難黒鉛化性炭素質材料の表面で、導電助剤が切断されるように含まれていてもよい。例えば、本発明の製造方法によって得られた複合難黒鉛化性炭素質材料は、ピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を粉砕する。従って、粉砕された面においては、導電助剤が切断されており、導電助剤が外部に出ていないものもあるからである。
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料における繊維状又は細長棒状の導電助剤の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは、全体量に対して0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.3〜15重量%であり、更に好ましくは0.5〜10重量%である。
《粉砕》
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料は粉砕されており、真球状ではない。複合難黒鉛化性炭素質材料は粉砕されていることにより、サイクル特性に優れている。
《平均粒子径》
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜50μmである。平均粒子径が1μm未満の場合、微粉が増加し比表面積が増加し、電解液との反応性が高くなり充電しても放電しない容量である不可逆容量が増加し、正極の容量が無駄になる割合が増加するため好ましくない。また、負極電極を製造した場合、炭素質材料の間に形成される1つの空隙が小さくなり、電解液中のリチウムの移動が抑制されるため好ましくない。平均粒子径の下限は1μm以上が好ましいが、更に好ましくは1.5μm以上である。一方、平均粒子径が50μmを超えると、粒子内でのリチウムの拡散自由行程が増加するため、急速な充放電が困難となる。更に、リチウムイオン二次電池では、入出力特性の向上には電極面積を大きくすることが重要であり、そのため電極調製時に集電板への活物質の塗工厚みを薄くする必要がある。塗工厚みを薄くするには、活物質の粒子径を小さくする必要がある。このような観点から、平均粒子径の上限としては50μm以下が好ましいが、より好ましくは40μm以下であり、更に好ましくは35μm以下である。
《ブタノール真密度ρBt
理想的な構造を有する黒鉛質材料の真密度が2.27g/cmであり、結晶構造が乱れるに従い真密度が小さくなる傾向がある。従って、真密度は炭素の構造を表す指標として用いることができる。
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料のブタノール法により求められる真密度(ρBt)は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.30g/cm以上1.70g/cm未満であり、より好ましくは1.32g/cm〜1.68g/cmである。更に好ましくは、1.34g/cm〜1.66g/cmである。ブタノール真密度が1.7g/cm以上の複合難黒鉛化性炭素質材料は、リチウムを格納できるサイズの細孔が少なくドープ及び脱ドープ容量が小さくなるため好ましくない。また、ブタノール真密度の増加は炭素六角平面の選択的配向性を伴うため、リチウムのドープ・脱ドープ時に炭素質材料が膨張収縮を伴う場合が多いため好ましくない。一方、1.30g/cm未満の炭素材料は、閉孔が多くなる場合があり、ドープ及び脱ドープ容量が小さくなることがあるので好ましくない。更に、電極密度が低下するため体積エネルギー密度の低下をもたらすので好ましくない。
《ヘリウム真密度ρHe
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料のヘリウム置換法によって求められる真密度(ρHe)は、特に限定されるものではないが、体積当たり放電容量の向上の点で、1.76g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.85g/cm以上であり、吸湿性を抑える点で、2.27g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは2.20g/cm以下である。ρHeは、ヘリウムが進入できる大きさの孔の多さに依存するところ、このような孔は、吸湿に大きく関与する比較的大きい孔だけでなく、Liの吸蔵放出への関与の度合いが高いと考えられる細孔も包含する。このため、ρHeは、体積当たり放電容量及び吸湿性の双方に影響を与える。
《BET比表面積》
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料のBETにより求められる比表面積は、1〜35m/gである。BET比表面積が、35m/gを超えると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との分解反応が増加し、不可逆容量の増加に繋がり、従って電池性能が低下することがある。一方、BET比表面積が1m/g未満であると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との反応面積が低下することにより入出力特性が低下する可能性がある。
[3]非水電解質二次電池用負極
本発明の非水電解質二次電池用負極は、本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を含むものである。非水電解質二次電池用負極は、本発明の効果が得られる限りにおいて、前記複合難黒鉛化性炭素質材料以外の負極材料を含むことができる。負極材料としては、非水電解質二次電池用負極に使用されているものを挙げることができるが、例えば黒鉛質材料、易黒鉛化性炭素質材料(例えば、複合易黒鉛化性炭素質材料)、及び難黒鉛化質炭素質材料を使用することができる。
本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料を用いる負極電極は、炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、電極合剤とした後に、金属板等からなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料は導電助剤を含んでおり、特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができる。しかしながら、必要に応じて電極合剤を調製時に、導電助剤を更に添加してもよい。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバーなどを用いることができ、添加量は使用する導電助剤の種類によっても異なる。添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないことがあり、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなることがある。本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料が導電助剤を含んでいるため、添加する導電助剤の含有量は、少なくてよいが、例えば0.01〜15重量%(ここで、活物質(混合負極材料)量+バインダー量+導電助剤量=100重量%とする)であり、更に好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜7重量%である。
結合剤としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等の電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するためにN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられるが、SBRなどの水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、複合難黒鉛化性炭素質材料相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、PVDF系のバインダーでは好ましくは3〜13重量%であり、更に好ましくは3〜10重量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量として0.5〜5重量%が好ましく、更に好ましくは1〜4重量%である。電極活物質層は集電板の両面に形成するのが基本であるが、必要に応じて片面でもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため高容量化には好ましいが、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため活物質層が厚すぎると入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、限定されるものではなく10μm〜1000μmの範囲内であるが、好ましくは10〜80μmであり、更に好ましくは20〜75μm、特に好ましくは20〜60μmである。
負極電極は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、銅、ニッケル又はカーボンを用いることができ、中でも、銅又はSUSが好ましい。
[4]非水電解質二次電池
本発明の非水電解質二次電池は、本発明の非水電解質二次電池用負極を含む。本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を用いて、非水電解質二次電池の負極を形成した場合、正極材料、セパレータ、電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
(正極電極)
正極電極は、正極活物質を含み、更に導電助剤、バインダー、又はその両方を含んでもよい。正極活物質層における正極活物質と、他の材料との混合比は、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではなく、適宜決定することができる。
正極活物質は、正極活物質を限定せずに用いることができる。例えば、層状酸化物系(LiMOと表されるもので、Mは金属:例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、又はLiNiCoMn(ここでx、y、zは組成比を表す))、オリビン系(LiMPOで表され、Mは金属:例えばLiFePOなど)、スピネル系(LiMで表され、Mは金属:例えばLiMnなど)の複合金属カルコゲン化合物を挙げることができ、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。
また、コバルト酸リチウムのコバルトの一部をニッケルとマンガンで置換し、コバルト、ニッケル、マンガンの3つを使用することで材料の安定性を高めた三元系〔Li(Ni−Mn−Co)O〕や前記三元系のマンガンの代わりにアルミニウムを使用するNCA系材料〔Li(Ni−Co−Al)O〕が知られており、これらの材料を使用することができる。
正極電極は、更に導電助剤及び/又はバインダーを含むことができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又はカーボンファイバーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、バインダーとしては、例えば、PTFE又はPVDF等のフッ素含有バインダーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、正極活物質層の厚さは、限定されないが、例えば10μm〜1000μmの範囲内である。
正極活物質層は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンを用いることができ、中でも、アルミニウム又はSUSが好ましい。
(電解液)
これら正極と負極との組み合わせで用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、又は1,3−ジオキソランなどの有機溶媒の一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、又はLiN(SOCFなどが用いられる。二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極層と負極層とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料などからなる透液性セパレータを介して対向させ電解液中に浸漬させることにより形成される。セパレータとしては、二次電池に通常用いられる不織布、その他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。あるいはセパレータの代わりに、もしくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
なお、以下に複合難黒鉛化性炭素質材料の物性値(「比表面積」、「ブタノール法により求めた真密度」、「ヘリウム法により求めた真密度」、「円形度」、「X線回折法による平均面間隔d(002)」、「X線回折法によるLc(002)」、及び「レーザー回折法による平均粒子径」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
《比表面積》
JIS Z8830に定められた方法に準拠し、比表面積を測定した。概要を以下に記す。
BETの式から誘導された近似式v=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.2)によりvを求め、次式により試料の比表面積を計算した:比表面積=4.35×v(m/g)
(ここで、vは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm/g)、vは実測される吸着量(cm/g)、xは相対圧力である。)
具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質物質への窒素の吸着量を測定した。
炭素質材料を試料管に充填し、窒素ガスを20モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、炭素質材料に窒素を吸着させる。次に試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
《ブタノール法による真密度》
JIS R7212に定められた方法に準拠し、ブタノールを用いて測定した。概要を以下に記す。
内容積約40mLの側管付比重びんの質量(m)を正確に量る。次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らに入れた後、その質量(m)を正確に量る。これに1−ブタノールを静かに加えて、底から20mm程度の深さにする。次に比重びんに軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター中に入れ、徐々に排気して2.0〜2.7kPaとする。その圧力に20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後取り出して、更に1−ブタノールで満たし、栓をして恒温水槽(30±0.03℃に調節してあるもの)に15分間以上浸し、1−ブタノールの液面を標線に合わせる。次に、これを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後、質量(m)を正確に量る。次に同じ比重びんに1−ブタノールだけを満たし、前記と同じようにして恒温水槽に浸し、標線を合わせた後、質量(m)を量る。また、使用直前に沸騰させて溶解した気体を除いた蒸留水を比重びんにとり、前と同様に恒温水槽に浸し、標線を合わせた後質量(m)を量る。真密度(ρBt)は次の式により計算する。
(ここでdは水の30℃における比重(0.9946)である。)
《ヘリウム法による真密度》
ρHeの測定は、島津製作所社製乾式自動密度計アキュピック1330を用いた。試料は予め200℃で5時間以上乾燥してから測定を行った。10cmのセルを用い、試料を1g入れ、周囲温度は23℃で行った。パージ回数は5回とし、体積値が繰り返し測定で0.5%以内で一致することを確認したn=5の平均値をρHeとした。
測定装置は試料室及び膨張室を有し、試料室は室内の圧力を測定するための圧力計を有する。試料室と膨張室はバルブを備える連結管により接続されている。試料室にはストップバルブを備えるヘリウムガス導入管が接続され、膨張室にはストップバルブを備えるヘリウムガス排出管が接続されている。
具体的には、測定は以下のようにして行った。
試料室の容積(VCELL)及び膨張室の容積(VEXP)は体積既知の校正球を使用して予め測定しておく。試料室に試料を入れ、系内をヘリウムで満たし、その時の系内圧力をPとする。次にバルブを閉じ、試料室のみヘリウムガスを加え圧力Pまで増加させる。その後バルブを開け、膨張室と試料室を接続すると、膨張により系内圧力はPまで減少する。
このとき試料の体積(VSAMP)は次式で計算する。
したがって、試料の重量をWSAMPとすると密度は
となる。
《平均粒子径》
試料約0.1gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。次に、純水30mLを加え、超音波洗浄機で約2分間分散させたのち、粒径分布測定器(島津製作所製「SALD−3000J」)で、粒径0.05〜3000μmの範囲の粒径分布を求めた。
得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって平均粒径Dv50(μm)とした。
(X線回折法による平均面間隔d(002))
炭素質材料粉末を試料ホルダーに充填し、PANalytical社製X’Pert PROを用いて、対称反射法にて測定した。走査範囲は8<2θ<50°で印加電流/印加電圧は45kV/40mAの条件で、Niフィルターにより単色化したCuKα線(λ=1.5418Å)を線源とし、X線回折図形を得た。標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、Braggの公式によりd(002)を計算した。
(X線回折法によるLc(002)
Scherrerの式に代入することによりLc(002)を算出する。
C(002)=Kλ/(β・cosθ)(Scherrerの式)
K:形状因子(0.9),λ:X線の波長(CuKαm=0.15418nm),θ:回折角,β:半値幅
《実施例1》
軟化点205℃、H/C原子比0.65、キノリン不溶分0.4%の石油系ピッチ194gと、VGCF(昭和電工(株)製)6gとを、内容積1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、上部から攪拌翼を差し込んで内温320℃で30分間〜1時間加熱溶融混合を行った。その後、加熱溶融混合した石油系ピッチを室温程度まで冷却し、複合難黒鉛化性炭素前駆体を得た。次いで、得られた複合難黒鉛化性炭素前駆体200gをジェットミル(ホソカワミクロン社AIR JET MILL;MODEL 100AFG)により、粉砕圧4.0kgf/cm、ローターの回転数4000〜4500rpmで、30分間粉砕し、平均粒子径が約10μmの粉砕複合難黒鉛化性炭素前駆体とした。なお、使用したジェットミルは、分級機を備えたものである。その後、粉砕複合難黒鉛化性炭素前駆体20gをアルミナ鞘に敷き、マッフル炉(ヤマト科学(株)製 KDF−S100)にて加熱空気を通じながら、260℃まで昇温し、260℃で1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の酸化複合難黒鉛化性炭素前駆体を得た。
次に、酸化複合難黒鉛化性炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1250℃まで昇温し、1250℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料1を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
図1(A)に電子顕微鏡写真を示す。後述の比較例1の炭素質材料(図1(B))と比較して、本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料では、その内側から外側にかけてVGCFが伸びていることがわかる。
《実施例2》
軟化点205℃、H/C原子比0.65、キノリン不溶分0.4%の石油系ピッチ194gと、VGCF(昭和電工(株)製)6gとを、内容積1リットルのセパラブルフラスコに仕込み、上部から攪拌翼を差し込んで内温320℃で30分間〜1時間加熱溶融混合を行った。その後、加熱溶融混合した石油系ピッチを室温程度まで冷却し、複合難黒鉛化性炭素前駆体を得た。次いで、得られた複合難黒鉛化性炭素前駆体200gをジェットミル(ホソカワミクロン社AIR JET MILL;MODEL 100AFG)により、粉砕圧4.0kgf/cm、ローターの回転数4000〜4500rpmで、30分間粉砕し、平均粒子径が約12μmの粉砕複合難黒鉛化性炭素前駆体とした。なお、使用したジェットミルは、分級機を備えたものである。その後、粉砕複合難黒鉛化性炭素前駆体20gをアルミナ鞘に敷き、マッフル炉(ヤマト科学(株)製 KDF−S100)にて加熱空気を通じながら、260℃まで昇温し、260℃で1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の酸化複合難黒鉛化性炭素前駆体を得た。
次に、酸化複合難黒鉛化性炭素前駆体20gをアルミナ鞘に敷き、直径230mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で550℃まで昇温し、550℃で1時間保持して、予備焼成を行い、予備焼成複合難黒鉛化性炭素前駆体を得た。なお、予備焼成は、流量100L/minの窒素雰囲気下で行った。
次に、予備焼成複合難黒鉛化性炭素前駆体10gを直径100mmの横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1100℃まで昇温し、1100℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料2を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。
《実施例3》
石油系ピッチを190g、VGCFを10gとして複合難黒鉛化性炭素前駆体を作製したことを除いては、実施例2の操作を繰り返して炭素質材料3を得た。
《実施例4》
石油系ピッチを184g、VGCFを16gとして複合難黒鉛化性炭素前駆体を作製したことを除いては、実施例2の操作を繰り返して炭素質材料4を得た。
《実施例5》
酸化温度を230℃としたこと、本焼成の温度を1200℃として炭素質材料を作製したことを除いては、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料5を得た。
《実施例6》
本焼成の温度を1200℃として炭素質材料を作製したこと、ジェットミルにより平均粒子径を約5μmに粉砕したことを除いては、実施例1の操作を繰り返して炭素質材料6を得た。
《比較例1》
VGCFを加えずに加熱混合を行ったことを除いては、実施例1の操作を繰り返して比較炭素質材料1を得た。
図1(B)に電子顕微鏡写真を示す。
《比較例2》
VGCFを加えずに加熱混合を行ったこと、本焼成温度を1200℃としたことを除いては、実施例2の操作を繰り返して比較炭素質材料2を得た。
《比較例3》
VGCFを加えずに加熱混合を行ったこと、酸化温度を230℃としたこと、本焼成温度を1200℃としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して比較炭素質材料3を得た。
《試験例1〜6及び比較試験例1〜3》
(測定セルの作成方法)
前記各実施例及び比較例で製造した負極材料(炭素質材料1〜6及び比較炭素質材料1〜3)を用いて、以下のようにして非水電解液二次電池を作成し、その特性を評価した。本発明の負極材料は非水電解質二次電池の負極として適しているが、電池活物質の放電容量及び不可逆容量を、対極性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として、前記で得られた電極を用いてリチウム二次電池を構成し、その特性を評価した。
正極(炭素極)は次のようにして製造した。各例で製造した負極材料(炭素質材料)を94重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#9100)6重量部に、N−メチル−2−ピロリドンを加えてペースト状とし、ペーストを銅箔上に均一に塗布し、乾燥させた後、シート状の電極を直径15mmの円盤状に打ち抜き、これをプレスして電極とした。電極中の炭素質材料(負極材料)の重量は10mgになるように調整し、炭素材料の充填率が約67%となるようにプレスした。
負極(リチウム極)の調製は、Arガス雰囲気中のグローブボックス内で行った。予め2016サイズのコイン型電池用缶の外蓋に直径16mmのステンレススチール網円盤をスポット溶接した後、厚さ0.8mmの金属リチウム薄板を直径15mmの円盤状に打ち抜いたものをステンレススチール網円盤に圧着し、電極とした。
このようにして製造した正極及び負極を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを容量比1:2:2で混合した混合溶媒に1.4mol/Lの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細孔膜をセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Ar雰囲気のグローブボックス内で2016サイズのコイン型非水電解質リチウム二次電池を組み立てた。
(電池容量の測定)
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行い、充放電は定電流定電圧法により行った。ここで、「充電」は試験電池では放電反応であるが、この場合は炭素材へのリチウム挿入反応であるので、便宜上「充電」と記述する。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、炭素材からのリチウムの脱離反応であるため、便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した定電流定電圧法は、電池電圧が0Vになるまで一定の電流密度0.5mA/cmで充電を行い、その後、電圧を0Vに保持するように(定電圧を保持しながら)電流値を連続的に変化させて電流値が20μAに達するまで充電を継続する。このとき供給した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量あたりの充電容量(mAh/g)と定義した。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が1.5Vに達するまで一定の電流密度0.5mA/cmで行い、このとき放電した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量あたりの放電容量(mAh/g)と定義する。不可逆容量は、充電容量−放電容量として計算される。
同一試料を用いて作製した試験電池についてのn=3の測定値を平均して充放電容量及び不可逆容量を決定した。
結果を表2に示す。
(高温サイクル試験)
上記実施例1〜6又は比較例1〜3で得られた炭素材各94重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#9100)6重量部にNMPを加えてペースト状にし、銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径15mmの円板状に打ち抜き、これをプレスすることで負極電極を作製した。
コバルト酸リチウム(LiCoO)(日本化学工業(株)製「セルシードC5−H」)94重量部、アセチレンブラック3重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#1300)3重量部にNMPを加えてペースト状にし、アルミニウム箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径14mmの円板上に打ち抜く。なお、(c)で測定した負極活物質の充電容量の95%となるよう正極電極中のコバルト酸リチウムの量を調整した。コバルト酸リチウムの容量を150mAh/gとして計算した。
このようにして調製した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを容量比で1:2:2で混合した混合溶媒に1.4mol/Lの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜のセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
ここで、はじめに3回充放電を繰り返してエージングを行った後、サイクル試験を開始した。サイクル試験で採用した定電流定電圧条件は、電池電圧が4.2Vになるまで一定の充電電流値2C(すなわち30分間で充電するために必要な電流値)で充電を行い、その後、電圧を4.2Vに保持するように(定電圧に保持しながら)電流値を連続的に変化させて電流値が50μAに達するまで充電を継続する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が2.75Vに達するまで一定の放電電流値2Cで行った。この充電及び放電を50℃で300サイクル繰り返し、300サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、300サイクル時放電容量保持率(%)とした。
結果を表2に示す。
《比較試験例4》
正極(炭素極)を次のようにして製造したことを除いては、前記「《試験例1〜6及び比較試験例1〜3》」の「(測定セルの作成方法)」及び「(高温サイクル試験)」の操作を繰り返して、電池容量の測定、高温サイクル試験を行った。
正極(炭素極)は、各例で製造した負極材料(炭素質材料)を90.5重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#9100)を6重量部、VGCF(昭和電工(株)製)3.5重量部に、N−メチル−2−ピロリドンを加えてペースト状とし、ペーストを銅箔上に均一に塗布し、乾燥させた後、シート状の電極を直径15mmの円盤状に打ち抜き、これをプレスして電極とした。
結果を表2に示す。
《入出力特性試験》
(測定セルの作成方法)
実施例1、比較例1で得られた炭素質材料各94重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#9100)6重量部にNMPを加えてペースト状にし、銅箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径15mmの円板状に打ち抜き、これをプレスすることで負極電極を作製した。
コバルト酸リチウム(LiCoO、日本化学工業製「セルシードC−5H」)94重量部、カーボンブラック3重量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ製KF#1300)3重量部にNMPを加えてペースト状にし、アルミニウム箔上に均一に塗布した。乾燥した後、塗工電極を直径14mmの円板上に打ち抜く。なお、(c)で測定した負極活物質の充電容量の95%となるよう正極電極中のコバルト酸リチウムの量を調整した。コバルト酸リチウムの容量を150mAh/gとして計算した。
このようにして調製した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを容量比で1:2:2で混合した混合溶媒に1.5モル/リットルの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜のセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2032サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
(入出力抵抗の測定方法)
はじめに2回充放電を繰り返してエージングを行う。エージングにおける電流値のCレートへの換算は、先に規定したコバルト酸リチウムの電気容量と質量から算出した。充電は定電流定電圧により行う。充電条件は4.2Vになるまで一定の電流0.2C(1時間で充電するために必要な電流値が1Cと定義される)で充電を行い、その後、電圧を4.2Vに保持するように(定電圧に保持しながら)電流値を減衰させて、電流値が(1/100)Cに達するまで充電を継続する。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は電池電圧が2.75Vに達するまで一定の電流0.2Cで行った。2回目の充放電は電流値をそれぞれ0.4Cとした。
次に、容量がSOC(State of Charge)50%に達するまで、0.4Cで充電した後、低温恒温器内(0℃雰囲気)でパルス充放電を行った。パルス充放電は一定電流で10秒充電した後に600秒開回路、10秒放電した後に600秒開回路を1セットとして、0.5C、1C、2Cの各電流で測定する。各電流に対する電圧変化をプロットし、その線形近似の傾きを直流抵抗として算出した。
《結果》
表2に電池性能を示す。
また、試験例1、及び比較試験例1及び2のサイクル試験の結果を図2(A)に示す。試験例1のリチウムイオン二次電池は、300サイクルを超えても80%以上の放電容量保持率を示したが、比較試験例1及び2のリチウムイオン二次電池は、200サイクルを超えると、急激に放電容量保持率が低下し、300サイクルでは50%以下まで放電容量保持率が低下した。
試験例1及び比較試験例1については、3つのリチウムイオン二次電池を作成し、更にサイクル試験を行った。結果を図2(B)に示す。比較試験例1のリチウムイオン二次電池は、放電容量保持率のバラツキが大きかったが、試験例1のリチウムイオン二次電池は、バラツキが少なかった。すなわち、本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料を用いることにより、安定した性能のリチウムイオン二次電池を作製することができる。
また、図3に示すように、試験例1及び比較試験例1のリチウムイオン二次電池を比較すると、本発明の複合難黒鉛化性炭素質材料を用いたリチウムイオン二次電池では、入力側及び出力側のいずれにおいても、抵抗が低く、優れた入出力特性を示した。
また、表2の試験例2に示すように、焼成温度を1100℃に低下させても300サイクルで80%の放電容量保持率を示すことがわかった。また、試験例2〜4に示すように、導電助剤(VGCF)の添加量を増加させても、80〜81%の放電容量保持率を示すことがわかった。
試験例5及び比較試験例3の炭素質材料は、1.58g/cm3の高い真密度を有している。比較試験例3の放電容量保持率40%に対して、試験例5は83%の放電容量保持率を有し、真密度の高い炭素質材料を用いても本発明の効果が発現することがわかった。更に、試験例6の炭素質材料の平均粒子径が4.5μmの小さなものでも、80%の放電容量保持率を示すことがわかった。
本発明の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は、高い放電容量を有し、充放電効率が優れている。従って高い入出力特性が求められる、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド型電気自動車(PHEV)、及び電気自動車(EV)、に対して有効に用いることができる。

Claims (11)

  1. (A)溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程、
    (B)前記炭素質前駆体を粉砕する工程、
    (C)前記炭素前駆体を酸化することにより不融化する工程、及び
    (D)前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、800℃〜1600℃で本焼成する焼成工程、
    を含む、非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法。
  2. 前記焼成工程(D)が、前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、300℃以上800℃未満で予備焼成し、そして800℃〜1600℃で本焼成する工程である、請求項1に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法。
  3. 前記繊維状又は細長棒状の導電助剤が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーである、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料の製造方法。
  4. ピッチ又はタール由来の難黒鉛化性炭素質粒子と、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを含む複合難黒鉛化性炭素質材料であって、前記難黒鉛化性炭素質粒子の内部から外部にかけて導電助剤が含まれており、そして粉砕されていることを特徴とする非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料。
  5. 平均粒子径が1〜50μmであり、ブタノール法により求められる真密度ρBtが1.30g/cm以上1.70g/cm未満であり、そしてBET法により求められる比表面積が1〜35m/gである、請求項4に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料。
  6. 前記繊維状又は細長棒状の導電助剤が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーである、請求項4又は5に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料。
  7. (A)溶融したピッチ又はタールと、繊維状又は細長棒状の導電助剤とを混合し、そして固化させることによって、固化したピッチ又はタールの内部から外部にかけて導電助剤が含まれている炭素前駆体を得る固化工程、
    (B)前記炭素質前駆体を粉砕する工程、
    (C)前記炭素前駆体を酸化することにより不融化する工程、及び
    (D)前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、800℃〜1600℃で本焼成する焼成工程、
    によって得られる非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料。
  8. 前記焼成工程(D)が、前記不融化した炭素前駆体を非酸化性ガス雰囲気下において、300℃以上800℃未満で予備焼成し、そして800℃〜1600℃で本焼成する工程である、請求項7に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料。
  9. 前記繊維状又は細長棒状の導電助剤が、カーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーである、請求項7又は8に記載の非水電解質二次電池負極用複合難黒鉛化性炭素質材料。
  10. 請求項4〜9のいずれか一項に記載の複合難黒鉛化性炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極。
  11. 前記請求項10に記載の負極を含む、非水電解質二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023145603A1 (ja) * 2022-01-28 2023-08-03 パナソニックエナジ-株式会社 非水電解液二次電池用負極及び非水電解液二次電池

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