JP2016181348A - 非水電解質二次電池負極用炭素質材料及び非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池負極用炭素質材料及び非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、優れた保存特性を有すると共に、優れた初期効率を示す炭素質材料を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明の平均粒子径が1〜8μmであり、ブタノール法により求められる真密度ρBtが1.56〜2.00g/cmであり、BET法により求められる比表面積が3〜10m/gであり、そして下記式(1)
Figure 2016181348

(式中、ρはブタノール真密度であり、dは、粒度分布n分割時i番目の粒子の球相当粒子径(μm)、そしてqは、粒度分布n分割時i番目の粒子の個数頻度である)で求められる単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)との比表面積比(CAL/BET)が0.8以上である、非水電解質二次電池負極用炭素質材料によって解決できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池負極用炭素質材料及び非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法に関する。本発明の炭素質材料は優れた保存特性を示し、そして前記炭素質材料を用いた非水電解質二次電池は優れた初期効率を示す。
近年、環境問題への関心の高まりから、エネルギー密度が高く、出力特性の優れた大型の二次電池が、電気自動車へ搭載されつつある。例えば、モーターのみで駆動する電気自動車(EV)、内燃エンジンとモーターとを組み合わせたプラグインハイブリッド型電気自動車(PHEV)、又はハイブリッド型電気自動車(HEV)等の自動車用途での普及が期待されている。特に、非水溶媒系リチウム二次電池であるリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有する二次電池として広く使用されており、EV用途において一回の充電での航続距離を延ばすため、一層の高エネルギー密度化が期待されている。
高エネルギー密度には負極材料へのリチウムのドープ及び脱ドープ容量を高くすることが必要であるが、負極材料として、現在主に使用されている黒鉛質材料のリチウム格納可能な理論容量は、372Ah/kgであり、理論的に限界がある。更に、黒鉛質材料を用いて電極を構成した場合、炭素質材料にリチウムをドープした際に、黒鉛層間化合物が形成され、層面間隔が広がる。層間にドープされたリチウムを脱ドープすることにより、層面間隔は元に戻る。従って、黒鉛構造の発達した炭素質材料では、リチウムのドープ及び脱ドープの繰り返し(二次電池においては充放電の繰り返し)により、層面間隔の増大及び復帰の繰り返しが起こり、黒鉛結晶の破壊が起きやすい。従って、黒鉛または黒鉛構造の発達した炭素質材料を用いて構成した二次電池は、充放電の繰り返し特性が劣るといわれている。更に、このような黒鉛構造の発達した炭素質材料を使用した電池においては、電池作動時に電解液が分解し易いという問題も指摘されている。
これに対し、非晶質炭素材料は耐久性に優れ、重量当たりでは黒鉛質材料のリチウム格納可能な理論容量を超える高い容量を有することから、高容量負極材料として種々の提案がなされてきた。例えば、特許文献1には、原料有機物物質を、ハロゲンガスを含有する不活性ガス中において、800〜1400℃の温度に加熱することによって得られる非晶質炭素質材料が記載されている。
特開平8−279358号公報 国際公開第2007/040007号
しかしながら、これらの方法で製造される非晶質炭素質材料、特に難黒鉛性炭素質材料は、保存特性に劣っていた。そのため、保存特性を改善するために、例えば特許文献2では、不活性ガスの供給量を制限した雰囲気下において、炭素化することによって、閉孔の多い炭素質材料を調製している。この製造方法によって得られた炭素質材料は、大気中に放置しても、保存特性が向上していることが開示されている。
しかしながら、更なる保存特性の改善が望まれており、そして特許文献2で得られた炭素質材料は、閉孔が増加しているために、容量が大幅に低下してしまうという問題があった。また、前記炭素質材料は、黒鉛と比較して初期効率が低く、満足できるものではなかった。
従って、本発明の目的は、優れた保存特性を有すると共に、優れた初期効率を示す炭素質材料を提供することである。
本発明者は、優れた保存特性及び優れた初期効率を示す炭素質材料について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、特定の平均粒子径、真密度、比表面積、及び比表面積比を有する炭素質材料が、優れた保存特性及び優れた初期効率を示すことを見出した。また、前記の優れた保存特性及び優れた初期効率を示す炭素質材料は、トルエン可溶分が1〜14質量%の炭素質前駆体を本焼成することによって得られることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]平均粒子径が1〜8μmであり、ブタノール法により求められる真密度ρBtが1.56〜2.00g/cmであり、BET法により求められる比表面積が3〜10m/gであり、そして下記式(1)
Figure 2016181348
(式中、ρはブタノール真密度であり、dは、粒度分布n分割時i番目の粒子の球相当粒子径(μm)、そしてqは、粒度分布n分割時i番目の粒子の個数頻度である)で求められる単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)との比表面積比(CAL/BET)が0.8以上である、非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[2]1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を、800℃〜1600℃で本焼成することによって得られる、[1]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[3]前記炭素質前駆体の酸素含有率が12質量%以下である、[2]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[4]1μm以下の粒子径の炭素質材料が50質量%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[5](1)石油又は石炭由来の有機物を、酸化性ガス含有雰囲気下、又は液体の酸化剤存在下で酸化し、酸素含有率12質量%以下の酸化炭素質前駆体を得る、酸化工程、(2)前記酸化炭素質前駆体を、不活性ガス雰囲気下で、トルエン可溶分が1〜14質量%となるように予備焼成する工程、(3)前記予備焼成された炭素質前駆体を、得られる炭素質材料の平均粒子径が1〜8μmとなるように粉砕する工程、(4)前記粉砕された炭素質前駆体を到達温度が800〜1600℃で焼成する焼成工程、を含む、非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、
[6]前記石油又は石炭由来の有機物が、石油ピッチ、石油タール、石炭ピッチ、及び石炭タールからなる群から選択される、[5]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、
[67]前記予備焼成された炭素質前駆体における1μm以下の粒子径の炭素質前駆体の含有量が、50質量%以下である、[5]又は[6]に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法、
[8]前記[5]〜[7]のいずれかに記載の製造方法によって得ることのできる、非水電解質二次電池負極用炭素質材料、
[9][1]〜[4]及び[8]のいずれかに記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極、及び
[10][9]に記載の負極を含む非水電解質二次電池、
に関する。
本発明者らは、炭素質材料の保存特性及び非水電解質二次電池の初期効率を向上させるために、炭素質材料の細孔を適切に制御することが重要だと考えた。そして、前記式(1)で求められる単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)との比表面積比(CAL/BET)を0.8以上とすることにより、炭素質材料の保存特性が向上し、それを負極材料に用いた非水電解質二次電池は初期効率を向上させることが可能となった。すなわち、本発明の炭素質材料は、吸湿量が低く、優れた保存特性を示す。また、本発明の炭素質材料を用いた二次電池は、不可逆容量が低く、優れた初期効率を示す。
本発明の比表面積比(CAL/BET)が0.8以上である炭素質材料は、予備焼成によりトルエン可溶分を1〜14質量%に調整された酸化炭素質前駆体を粉砕し、そして本焼成することによって得ることが可能である。すなわち、本焼成により適量のトルエン可溶分が被覆された炭素質材料は、比表面積が低下し最適な細孔構造を有している。この最適な細孔構造を有する炭素質材料は、優れた保存特性及び優れた初期効率を示した。本発明の炭素質材料は、ポリスチレンなどの揮発性有機化合物が被覆された炭素質材料と比較して、適量のトルエン可溶分の被覆により、顕著に保存特性及び初期効率が向上した。すなわち、ポリスチレンの被覆では、最適な細孔構造が得られないと考えられる。
また、保存特性及び初期効率は、真密度が1.56〜2.00g/cmの炭素質材料において、顕著に改善された。すなわち、真密度が低い炭素質材料と比較して、真密度が1.56〜2.00g/cmの炭素質材料において、顕著に保存特性及び初期効率が向上した。真密度が1.56〜2.00g/cmの炭素質材料は、例えば、石油ピッチ若しくはタール又は石炭ピッチ又はタール由来の酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体を焼成することによって得ることができる。しかしながら、酸素含有率が12質量%を超える炭素質前駆体にトルエン可溶分を被覆した場合、比表面積は低下するが、保存特性の改善及び不可逆容量の低下は、十分ではなかった。すなわち、真密度が低すぎる場合、最適な細孔構造が得られないと考えられる。
更に、前記初期効率は、平均粒子径が小さい炭素質材料において、顕著に改善された。すなわち、適量のトルエン可溶分が被覆された1〜8μmの平均粒子径を有する炭素質材料を用いた二次電池は、不可逆容量が低下し、初期効率が向上した。更に、本発明の炭素質材料を負極として用いた二次電池は、炭素質材料が小粒径であるために優れた入出力特性を示す。また、本発明の炭素質材料は、前記特許文献2に記載の炭素質材料と比較して、閉孔が少ないため、十分な容量を有することができる。
本発明の炭素質材料は、炭素質前駆体における1μm以下の微粉が50質量%以下であることにより、本焼成後に粒子が凝集しない。また、得られた炭素質材料は、1μm以下の微粉が少ないために、優れた初期効率を示す。
[1]非水電解質二次電池負極用炭素質材料
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、平均粒子径が1〜8μmであり、ブタノール法により求められる真密度ρBtが1.56〜2.00g/cmであり、BET法により求められる比表面積が3〜10m/gであり、そして下記式(1)
Figure 2016181348
(式中、ρはブタノール真密度であり、dは、粒度分布n分割時i番目の粒子の球相当粒子径(μm)、そしてqは、粒度分布n分割時i番目の粒子の個数頻度である)で求められる単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)との比表面積比(CAL/BET)が0.8以上である。
《難黒鉛化性炭素質材料又は易黒鉛化性炭素質材料》
本発明の炭素質材料は、限定されるものではないが、好ましくは難黒鉛化性炭素質材料又は易黒鉛化性炭素質材料である。従って、石油又は石炭由来の有機物、例えば石油系ピッチ若しくはタール、石炭系タール若しくはピッチを炭素源として用いる場合、酸化処理による不融化処理を行ってもよく、酸化処理を行わなくてもよいが、好ましくは比較的低めの酸化処理を行う。また、タール又はピッチに酸化処理を行うことによって、タール又はピッチを易黒鉛化性炭素前駆体から難黒鉛化性炭素前駆体まで、連続的にその構造を制御することができる。
《平均粒子径》
本発明の炭素質材料の平均粒子径(Dv50)は、1〜8μmである。平均粒子径の上限は、8μmであり、好ましくは7μm以下であり、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは5μm以下である。粒子径が小さいほど、電解液との接液面積が増加し、粒子内部へリチウムが侵入するので入力特性が向上する。更に、粒子表面から粒子中心部までの距離が短くなるので、粒子表面から内部までリチウムが拡散するための拡散長が短くなるため入力特性向上に有利である。
平均粒子径の下限は1μmであり、好ましくは1.5μmであり、より好ましくは2μmであり、更に好ましくは2.5μmである。粒子径が小さすぎると、微粉が増加することによって、比表面積が増加する。従って、電解液との反応性が過度に高まり、不可逆容量が増加する傾向にある。また、粒子が小さすぎると、電極にするために必要なバインダー量が多くなり、電極の抵抗が増加する。
本発明の炭素質材料は、平均粒子径が1〜8μmであることによって、入出力特性が向上する。更に、平均粒子径が大きな炭素質材料と比較すると、平均粒子径の小さな炭素質材料は、最適な量のトルエン可溶分を被覆されることによって、初期効率が劇的に向上する。
本発明の炭素質材料は、粒子径(直径)1μm以下の微粉が50質量%以下である。微粉の含有量が少ないことにより、本発明の炭素質材料を用いた二次電池は、初期効率が優れている。
《真密度ρBt
本発明の炭素質材料の真密度は、1.56〜2.00g/cmである。真密度はブタノールを用いたピクノメーター法により測定する方法、及びヘリウムを用いた乾式密度測定法があるが、本明細書における炭素質成形体の真密度は、ブタノールを用いたピクノメーター法により得られた真密度を意味する。
真密度の下限は、好ましくは1.58g/cm以上であり、より好ましくは1.60g/cm以上であり、更に好ましくは1.60g/cmを超える。また、真密度の上限は、2.00g/cm以下であり、より好ましくは1.98g/cm以下であり、更に好ましくは1.96g/cm以下である。真密度が1.56〜2.00g/cmである場合に、炭素質前駆体にトルエン可溶分が被覆されることによって、炭素質材料の保存特性が改善し、そして初期効率が向上する。一方、真密度が低すぎると、トルエン可溶分が被覆された場合でも、比表面積は低下するが、保存特性の改善及び不可逆容量の低下が十分ではない。
本発明の炭素質材料のブタノール真密度は、易黒鉛化性炭素質材料の場合、好ましくは、1.70〜2.00g/cmであり、難黒鉛化性炭素質材料の場合、好ましくは1.56〜1.70g/cmである。真密度が大きすぎる炭素質材料は、リチウムを格納できるサイズの細孔が少なくドープ及び脱ドープ容量が小さくなることがある。また、真密度の増加は炭素六角平面の選択的配向性を伴うため、リチウムのドープ・脱ドープ時に炭素質材料が膨張収縮を伴う場合が多いため好ましくない。一方、真密度が小さい炭素質材料は、閉孔が多くなる場合があり、ドープ及び脱ドープ容量が小さくなることがあるので好ましくない。更に、電極密度が低下するため体積エネルギー密度の低下をもたらすので好ましくない。
《BET比表面積》
本発明の炭素質材料のBETにより求められる比表面積は、3〜10m/gである。BET比表面積が、10m/gを超えると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との分解反応が増加し、不可逆容量の増加に繋がり、従って電池性能が低下することがある。一方、BET比表面積が3m/g未満であると、非水電解質二次電池の負極として用いた場合に、電解液との反応面積が低下することにより入出力特性が低下する可能性がある。
本発明の比表面積が3〜10m/gの炭素質材料は、1〜10質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を800℃〜1600℃で本焼成することによって、得ることができる。すなわち、トルエン可溶分が本焼成時に、炭素質前駆体の細孔に被覆されることによって、比表面積を低下させることができる。
《比表面積比Y(CAL/BET)》
本発明の炭素質材料は、下記式(1)
Figure 2016181348
(式中、ρはブタノール真密度であり、dは、粒度分布n分割時i番目の粒子の球相当粒子径(μm)、そしてqは、粒度分布n分割時i番目の粒子の個数頻度である)で求められる単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)との比表面積比(CAL/BET)が0.8以上である。
比表面積は、小粒子を含有する程度とその粒径分布によって変化する。粒子を真球と仮定し、粒子径分布を各粒子径の範囲にn個に分割し、各粒子径に相当する面積を求め、それらを加算することにより比表面積を計算することができる。本明細書においては、前記式(1)によって計算された比表面積を「CAL比表面積」と称する。
本発明の炭素質材料は、前記式(1)で計算された単位重量当たりの比表面積(CAL)と、前記窒素吸着のBET法により求めた比表面積(BET)との比表面積比Y(CAL/BET)が0.8以上である。球相当粒子径(μm)、個数頻度は、粒径分布の結果を用いる。
比表面積比Y(CAL/BET)が0.8を下回る場合、炭素材料中に窒素ガスが侵入可能な細孔を豊富に有することを示唆している。このような材料は電解液が侵入可能な細孔も多く有していると考えられ、電解液がリチウムイオンと反応して不可逆容量の増加に繋がってしまう。本発明の炭素質材料は電解液の侵入し得る細孔が適切に制御されているため、電解液の分解反応に伴う不可逆容量の増加を抑制することができると考えている。
《比表面積比X(BET/CALC)》
本発明の炭素質材料は、限定されるものではないが、BET法により求めた比表面積(BET)と、平均粒子径DV50及びブタノール真密度ρBtを用いて式:6/(DV50×ρBt)によって得られる比表面積(CALC)との比表面積比(BET/CALC)が、5.5を超えるものが好ましい。
前記計算式は、n個の粒子が同じ半径rの球形であると仮定すると、粒子の総表面積(4nπr)、総体積(4nπr/3)、密度ρ(総質量/総体積)により、単位質量当たりの比表面積(総表面積/総質量)は、3/ρrとなり、r=D/2により、CALC=6/(D×ρBt)となる。
BET比表面積は、窒素ガスが進入できる細孔に関係する一方で、CALC比表面積は、ρBtに依存するためブタノールが進入できる程度の比較的大きい孔に関係する。BET/CALCが大きいことは、ブタノールは進入できないが窒素は進入できる大きさの細孔の多さを反映しており、このような細孔は、Liの吸蔵放出に関与する度合いが高いと考えられる。また、CALCに対しBETが大きいほど微粉の割合が多くなり電解液との接液面積が増加する。そのため、BET/CALCが1.0未満であると、急速な充放電が困難になるので好ましくない。この観点から、1.0以上が好ましく、更に好ましくは2.0以上であり、最も好ましくは2.5以上である。また、比表面積比Xの上限は、限定されるものではないが、好ましくは11.0以下であり、より好ましくは9.0以下であり、更に好ましくは7.0以下である。
なお、後述の実施例においては、比表面積(CALC)は、0.6〜1.3であり、比表面積比X(BET/CALC)は、3.1〜5.5であった。
《H/C》
(炭素質成形体の原子比(H/C))
本発明の炭素質成形体のH/Cは、水素原子及び炭素原子の含有量を、元素分析により測定した値から計算することができる。炭素化度が高くなるほど、炭素質材料の水素含有率が小さくなるため、H/Cが小さくなる傾向にある。従って、H/Cは、炭素化度を表す指標として有効である。本発明の炭素質成形体のH/Cは、0.1以下であり、より好ましくは0.08以下であり、更に好ましくは0.05以下である。水素原子と炭素原子の比H/Cが0.1を超えると、炭素質材料に官能基が多く存在し、リチウムとの反応により不可逆容量が増加することがある。
《(002)面の平均面間隔d(002)
本発明の炭素質材料の平均面間隔は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.340〜0.385nmであり、より好ましくは0.345〜0.380nm、更に好ましくは0.350〜0.376nmである。0.340〜0.385nmの平均層面間隔を有している炭素質材料は、リチウムのドープ、脱ドープ反応による耐久性に優れており、サイクル特性が向上する。すなわち、本発明の炭素質材料は、黒鉛と比較すると、充放電時の膨張収縮が小さく繰り返し性能(いわゆる、耐久性)において優れている。0.337nm未満の小さな平均面間隔を有する炭素質材料ではリチウムのドープ、脱ドープに伴う膨張収縮が大きく、粒子間に空隙を生じてしまい、導電ネットワークが遮断されるため繰り返し特性に劣ることがある。
《炭素質前駆体》
本発明の炭素質材料の炭素質前駆体は、好ましくは1〜14質量%のトルエン可溶分を含む。本発明の炭素質材料は、前記炭素質前駆体を800℃〜1600℃で本焼成することによって得ることができる。具体的には、炭素質前駆体に含まれる1〜14質量%のトルエン可溶分が、本焼成時に炭素質の細孔に被覆されることによって、適切に細孔構造が形成される。この適切な細孔構造によって、本発明の炭素質材料は優れた保存特性を示す。また、前記の適切な細孔構造によって、本発明の炭素質材料を負極に用いた二次電池は、不可逆容量が低下し、優れた初期効率を示す。すなわち、炭素質前駆体に含まれる1〜14質量%のトルエン可溶分によって形成される細孔構造により、本発明の顕著な効果が得られる。
(トルエン可溶分)
トルエン可溶分はトルエンに可溶性の成分であり、特には、平均分子量300〜800のγレジン分を意味する。トルエン可溶分の上限は、特に限定されないが、好ましくは13質量%であり、より好ましくは12質量%であり、更に好ましくは11質量%であり、最も好ましくは10質量%である。トルエン可溶分の下限も限定されるものではないが、好ましくは1質量%であり、より好ましくは2質量%であり、更に好ましくは3質量%であり、最も好ましくは4質量%である。トルエン可溶分が多すぎると、炭素質前駆体が固着し、炭素質材料が得られないことがある。また、トルエン可溶分が1〜14質量%であることによって、初期効率が顕著に改善される。トルエン可溶分の主要な成分として、タールを挙げることができる。例えば、本発明の炭素質材料の炭素質前駆体は、タールを4〜14質量%含んでいるものでもよい。炭素質前駆体に含まれる4〜14質量%のタールが、本焼成時に炭素質の細孔に被覆されることによっても、適切に細孔構造が形成される。
(酸素含有率)
炭素質前駆体の酸素含有率は、限定されるものではないが、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは10質量%であり、更に好ましくは8質量%である。炭素質前駆体の酸素含有率が12質量%以下であることによって、得られる炭素質材料の真密度ρBtを1.56〜2.00g/cmに制御することができる。なお、酸素含有率の下限は、特に限定されるものではなく0質量%でもよいが、酸化されていることが好ましく、酸素含有率の下限は、好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは1質量%である。
酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体は、多孔性の石油ピッチ若しくはタール又は石炭ピッチ又はタールを、酸化性ガスによって、120〜400℃の温度で酸化することによって得ることができる。酸化性ガスとしては、O、O、NO、それらを空気若しくは窒素等で希釈した混合ガス、又は空気等の酸化性気体を挙げることができる。また、液体の酸化剤によって、120〜400℃の温度で酸化することができる。液体としては、硫酸、硝酸、若しくは過酸化水素等の酸化性液体、又はそれらの混合物を用いることができる。
酸素含有率は、酸化性ガス又は液体の酸化剤の濃度、及び酸化時間によって制御することができる。すなわち、酸化性ガス又は液体の酸化剤の濃度が高いほど酸素含有率が上昇する。また酸化時間が長くなるほど酸素含有率が上昇する。従って、酸化性ガス又は液体の酸化剤の濃度及び酸化時間を制御することによって、酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体を得ることができる。
なお、酸素含有率が12質量%を超える炭素質前駆体は、トルエン可溶分の被覆により炭素質材料の比表面積は低下するが、優れた保存特性及び初期効率を示す炭素質材料を得ることができない。
(仮焼成)
1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体は、例えば前記酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体を仮焼成することによって得ることができる。酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体は、トルエン可溶分を1〜30質量%程度含んでいる。酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体を、適当な温度及び適当な時間焼成することによって、1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を得ることができる。
具体的には、仮焼成の温度が高いほどトルエン可溶分は減少する。また、仮焼成の時間が長くなるほど、トルエン可溶分は減少する。従って、仮焼成の温度及び時間を制御することによって、1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を得ることができる。
(粉砕)
仮焼成された炭素質前駆体は、得られる炭素質材料の平均粒子径が1〜8μmとなるように粉砕される。すなわち、炭素質前駆体は本焼成によって焼き縮むため、炭素質前駆体の平均粒子径は、目的の平均粒子径よりも、やや大きめにするのが好ましい。
(本焼成)
本発明の炭素質材料は、例えば前記1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を通常の方法により本焼成することによって得ることができる。
《微粉の含有量》
本発明の炭素質材料は、好ましくは1μm以下の粒子径の微粉が50質量%以下である。すなわち、本焼成前の粉砕された炭素質前駆体も、好ましくは1μm以下の粒子径の微粉が50質量%以下である。
1μmを超える粒子径の微粉を50質量%を超えて含む炭素質前駆体を焼成した場合、得られた炭素質材料中の凝集物が増加し、二次電池の負極の製造において問題が発生する。
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料は、以下に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によって製造することができる。しかしながら、本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法によって製造されるものに限定されない。
[2]非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法
本発明の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法は、(1)石油又は石炭由来の有機物を、酸化性ガス含有雰囲気下、又は液体の酸化剤存在下で酸化し、酸素含有率12質量%以下の酸化炭素質前駆体を得る、酸化工程、
(2)前記酸化炭素質前駆体を、不活性ガス雰囲気下で、トルエン可溶分が1〜14質量%となるように予備焼成する工程、
(3)前記予備焼成された炭素質前駆体を、得られる炭素質材料の平均粒子径が1〜8μmとなるように粉砕する工程、
(4)前記粉砕された炭素質前駆体を到達温度が800〜1600℃で焼成する焼成工程、
を含む。
(炭素源)
炭素質材料の炭素源は、石油又は石炭由来の有機物であり、好ましくは石油系ピッチ若しくはタール、石炭系ピッチ若しくはタールである。具体的には、タール又はピッチとしては、エチレン製造時に副生する石油系のタール又はピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分又はピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチを挙げることができる。また、これらのタール又はピッチの2種以上を混合して使用してもよい。
前記石油又は石炭由来の有機物から以下のような方法で炭素前駆体を得ることができる。すなわち石油系又は石炭系のピッチ等に対し、添加剤として沸点200℃以上の2乃至3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形しピッチ成形体を得る。次にピッチに対し低溶解度を有し、且つ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去し、多孔性ピッチとした後、酸化剤を用いて酸化し、炭素前駆体を得る。前記の芳香族添加剤の目的は、成形後のピッチ成形体から前記添加剤を抽出除去して成形体を多孔質とし、酸化による架橋処理を容易にし、また炭素化後に得られる炭素質材料を多孔質にすることにある。このような添加剤は、例えばナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等の1種又は2種以上の混合物から選択することができる。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し、30〜70重量部の範囲が好ましい。ピッチと添加剤の混合は、均一な混合を達成するため、加熱し溶融状態で行う。ピッチと添加剤の混合物は、添加剤を混合物から容易に抽出できるようにするため、粒径1mm以下の粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後粉砕することにより行ってもよい。ピッチと添加剤の混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素主体の混合物、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類が好適である。このような溶剤でピッチと添加剤の混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したまま添加剤を成形体から除去することができる。この際に成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有するピッチ成形体が得られるものと推定される。
また、多孔性ピッチ成形体の調製方法としては、上記の方法以外に以下の方法も用いることができる。石油系又は石炭系のピッチ等を平均粒径(メディアン径)60μm以下に粉砕して粉状ピッチを形成し、次いで前記粉状ピッチ、好ましくは平均粒径(メディアン径)5μm以上40μm以下の粉状ピッチを圧縮成形して多孔性圧縮成形体を形成することができる。圧縮成形は既存の成形機が使用でき、具体的には単発式の竪型成型機、連続式のロータリー式成型機やロール圧縮成形機が挙げられるが、それらに限定されるものではない。上記圧縮成形時の圧力は、好ましくは、面圧で20〜100MPaまたは線圧で0.1〜6MN/mであり、より好ましくは面圧で23〜86MPaまたは線圧で0.2〜3MN/mである。前記圧縮成形時の圧力の保持時間は、成形機の種類や粉状ピッチの性状及び処理量に応じて、適宜定めることが出来るが、概ね0.1秒〜1分の範囲内である。粉状ピッチを圧縮成形する時には必要に応じてバインダー(結合剤)を配合してもよい。バインダーの具体例としては、水、澱粉、メチルセルロース、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、又はフェノール樹脂などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。圧縮成形により得られる多孔性ピッチ成形体の形状については特に限定はなく、粒状、円柱状、球状、ペレット状、板状、ハニカム状、ブロック状、ラシヒリング状などが例示される。
《酸化工程(1)》
酸化工程(1)においては、石油又は石炭由来の有機物から得られた多孔質ピッチ等を、酸化性ガス含有雰囲気下、又は液体の酸化剤存在下で酸化し、酸素含有率12質量%以下の酸化炭素質前駆体を得る。すなわち、多孔質ピッチ等を、酸化性ガス含有雰囲気下、又は液体の酸化剤存在下で、酸素含有率が12質量%以下となるように熱処理する。
酸化性ガスとしては、O、O、NO、それらを空気若しくは窒素等で希釈した混合ガス、又は空気等の酸化性気体を挙げることができる。特には、空気又は空気と他のガス例えば燃焼ガス等との混合ガスのような酸素を含むガスを用いて、120〜400℃で酸化して酸化処理(架橋処理)を行うことが簡便であり、経済的にも有利である。この場合、ピッチ等の軟化点が低いと、酸化時にピッチが溶融して酸化が困難となるので、使用するピッチ等は軟化点が150℃以上であることが好ましい。
液相中で、液体の酸化剤を用いて120〜400℃の温度で酸化することができる。液体としては、硫酸、硝酸、若しくは過酸化水素等の酸化性液体、又はそれらの混合物を用いることができる。
12質量%以下の酸素含有率は、酸化性ガス又は液体の酸化剤の濃度、及び時間によって制御することができる。すなわち、酸化性ガス又は液体の酸化剤の濃度が高いほど酸素含有率が上昇する。また、酸化時間が長くなるほど酸素含有率が上昇する。従って、酸化性ガス又は液体の酸化剤の濃度及び酸化時間を制御することによって、酸素含有率が12質量%以下の炭素質前駆体を得ることができる。酸化温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは120〜400℃の温度で酸化する。
《予備焼成工程(2)》
予備焼成工程(2)においては、前記酸化炭素質前駆体を、不活性ガス雰囲気下で、トルエン可溶分が1〜10質量%となるように予備焼成する。すなわち、予備焼成によって、炭素質前駆体のトルエン可溶分を1〜10質量%とすることができる。
また、予備焼成によって、揮発分(例えばCO、CO、CH、及びHなど)及びタール分を除去することができる。従って、予備焼成によってタール分を4〜10質量%とすることもできる。
酸素含有率が12質量%以下の酸化炭素質前駆体は、トルエン可溶分を1〜30質量%程度含んでいる。酸素含有率が12質量%以下の酸化炭素質前駆体を、適当な温度及び適当な時間、予備焼成することによって、1〜10質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を得ることができる。
従って、予備焼成温度は、1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を得ることができる限りにおいて、特に限定されるものではないが、下限は好ましくは400℃以上であり、より好ましくは440℃以上であり、更に好ましくは460℃以上である。予備焼成温度の上限は、好ましくは530℃以下であり、より好ましくは520℃以下であり、更に好ましくは510度以下である。
また、予備焼成時間も、1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を得ることができる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば0.5〜10時間で行うことができ、1〜5時間がより好ましい。
予備焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行い、非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素、又はアルゴンなどを挙げることができる。また、予備焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10kPa以下で行うことができる。
《粉砕工程(3)》
粉砕工程(3)において、予備焼成された炭素質前駆体を、得られる炭素質材料の平均粒子径が1〜8μmとなるように粉砕する。炭素質前駆体は本焼成によって焼き縮むため、好ましくは、目的の平均粒子径よりも、やや大きめの平均粒子径に粉砕する。
本焼成前に粉砕することによって、本焼成時に、適量のトルエン可溶分が炭素質前駆体の細孔に被覆され、最適な細孔構造を有する炭素質材料を得ることができる。
また、粉砕により微粉が増加しないことが好ましい。微粉が多い場合、焼成によって凝集物が生成され、二次電池の負極の製造において、問題が発生することがある。従って、炭素質前駆体は、好ましくは1μm以下の粒子径の炭素質前駆体の含有量が、50質量%以下である。
粉砕に用いる粉砕機は、特に限定されるものではなく、例えばジェットミル、ロッドミル、振動ボールミル、又はハンマーミルを用いることができるが、分級機を備えたジェットミルが好ましい。
《本焼成工程(4)》
本焼成工程(4)において、粉砕された炭素質前駆体を到達温度が800〜1600℃で焼成する。本焼成によって、炭素質前駆体に含まれるトルエン可溶分が、炭素質の細孔に被覆される。
本発明の製造方法における本焼成は、通常の本焼成の手順に従って行うことがでる。本焼成の温度は、800〜1600℃である。本発明の本焼成温度の下限は800℃以上であり、より好ましくは900℃以上であり、更に好ましくは1000℃以上であり、更に好ましくは1050℃以上であり、特に好ましくは1100℃以上である。熱処理温度が低すぎると炭素化が不十分で不可逆容量が増加することがある。また、熱処理温度が低い場合、炭素質材料に官能基が多く残存してH/Cの値が高くなり、リチウムとの反応により不可逆容量が増加することがある。一方、本発明の本焼成温度の上限は1600℃以下であり、より好ましくは1400℃以下であり、特に好ましくは1200℃以下である。本焼成温度が1600℃を超えるとリチウムの格納サイトとして形成された空隙が減少し、ドープ及び脱ドープ容量が減少することがある。すなわち、炭素六角平面の選択的配向性が高まり放電容量が低下することがある。
本焼成は、非酸化性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。非酸化性ガスとしては、ヘリウム、窒素又はアルゴンなどを挙げることができこれらを単独或いは混合して用いることができる。更には塩素などのハロゲンガスを上記非酸化性ガスと混合したガス雰囲気中で本焼成を行うことも可能である。また、本焼成は、減圧下で行うこともでき、例えば、10KPa以下で行うことも可能である。本焼成の時間も特に限定されるものではないが、例えば0.1〜10時間で行うことができ、0.3〜8時間が好ましく、0.4〜6時間がより好ましい。
[3]非水電解質二次電池用負極
《負極電極の製造》
本発明の炭素質材料を用いる負極電極は、炭素質材料に結合剤(バインダー)を添加し適当な溶媒を適量添加、混練し、電極合剤とした後に、金属板等からなる集電板に塗布・乾燥後、加圧成形することにより製造することができる。本発明の炭素質材料を用いることにより特に導電助剤を添加しなくとも高い導電性を有する電極を製造することができるが、更に高い導電性を賦与することを目的に必要に応じて電極合剤を調製時に、導電助剤を添加することができる。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はカーボンファイバーなどを用いることができ、添加量は使用する導電助剤の種類によっても異なるが、添加する量が少なすぎると期待する導電性が得られないので好ましくなく、多すぎると電極合剤中の分散が悪くなるので好ましくない。このような観点から、添加する導電助剤の好ましい割合は0.5〜15重量%(ここで、活物質(炭素質材料)量+バインダー量+導電助剤量=100重量%とする)であり、更に好ましくは0.5〜7.0重量%、特に好ましくは0.5〜5.0重量%である。結合剤としては、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、およびSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)とCMC(カルボキシメチルセルロース)との混合物等の電解液と反応しないものであれば特に限定されない。中でもPVDFは、活物質表面に付着したPVDFがリチウムイオン移動を阻害することが少なく、良好な入出力特性を得るために好ましい。PVDFを溶解しスラリーを形成するためにN−メチルピロリドン(NMP)などの極性溶媒が好ましく用いられるが、SBRなどの水性エマルジョンやCMCを水に溶解して用いることもできる。結合剤の添加量が多すぎると、得られる電極の抵抗が大きくなるため、電池の内部抵抗が大きくなり電池特性を低下させるので好ましくない。また、結合剤の添加量が少なすぎると、負極材料粒子相互および集電材との結合が不十分となり好ましくない。結合剤の好ましい添加量は、使用するバインダーの種類によっても異なるが、PVDF系のバインダーでは好ましくは3.0〜13.0重量%であり、更に好ましくは3.0〜10.0重量%である。一方、溶媒に水を使用するバインダーでは、SBRとCMCとの混合物など、複数のバインダーを混合して使用することが多く、使用する全バインダーの総量として0.5〜5.0重量%が好ましく、更に好ましくは1.0〜4.0重量%である。電極活物質層は集電板の両面に形成するのが基本であるが、必要に応じて片面でもよい。電極活物質層が厚いほど、集電板やセパレータなどが少なくて済むため高容量化には好ましいが、対極と対向する電極面積が広いほど入出力特性の向上に有利なため活物質層が厚すぎると入出力特性が低下するため好ましくない。好ましい活物質層(片面当たり)の厚みは、限定されるものではなく10μm〜1000μmの範囲内であるが、好ましくは10〜80μmであり、更に好ましくは20〜75μm、特に好ましくは20〜60μmである。
負極電極は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、銅、ニッケル又はカーボンを用いるができ、中でも、銅又はSUSが好ましい。
[4]非水電解質二次電池
本発明の負極材料を用いて、非水電解質二次電池の負極を形成した場合、正極材料、セパレータ、電解液など電池を構成する他の材料は特に限定されることなく、非水溶媒二次電池として従来使用され、あるいは提案されている種々の材料を使用することが可能である。
(正極電極)
正極電極は、正極活物質を含み、更に導電助剤、バインダー、又はその両方を含んでもよい。正極活物質層における正極活物質と、他の材料との混合比は、本発明の効果が得られる限りにおいて、限定されるものではなく、適宜決定することができる。
正極活物質は、正極活物質を限定せずに用いることができる。例えば、層状酸化物系(LiMOと表されるもので、Mは金属:例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO、又はLiNiCoMn(ここでx、y、zは組成比を表す))、オリビン系(LiMPOで表され、Mは金属:例えばLiFePOなど)、スピネル系(LiMで表され、Mは金属:例えばLiMnなど)の複合金属カルコゲン化合物を挙げることができ、これらのカルコゲン化合物を必要に応じて混合してもよい。
また、コバルト酸リチウムのコバルトの一部をニッケルとマンガンで置換し、コバルト、ニッケル、マンガンの3つを使用することで材料の安定性を高めた三元系〔Li(Ni−Mn−Co)O〕や前記三元系のマンガンの代わりにアルミニウムを使用するNCA系材料〔Li(Ni−Co−Al)O〕が知られており、これらの材料を使用することができる。
正極電極は、更に導電助剤及び/又はバインダーを含むことができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、又はカーボンファイバーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、バインダーとしては、例えば、PTFE又はPVDF等のフッ素含有バインダーを挙げることができる。導電助剤の含有量は、限定されるものではないが、例えば0.5〜15重量%である。また、正極活物質層の厚さは、限定されないが、例えば10μm〜1000μmの範囲内である。
正極活物質層は、通常集電体を有する。負極集電体としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンを用いるができ、中でも、アルミニウム又はSUSが好ましい。
(電解液)
これら正極と負極との組み合わせで用いられる非水溶媒型電解液は、一般に非水溶媒に電解質を溶解することにより形成される。非水溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、又は1,3−ジオキソランなどの有機溶媒の一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、電解質としては、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiB(C、又はLiN(SOCFなどが用いられる。二次電池は、一般に上記のようにして形成した正極層と負極層とを必要に応じて不織布、その他の多孔質材料などからなる透液性セパレータを介して対向させ電解液中に浸漬させることにより形成される。セパレータとしては、二次電池に通常用いられる不織布、その他の多孔質材料からなる透過性セパレータを用いることができる。あるいはセパレータの代わりに、もしくはセパレータと一緒に、電解液を含浸させたポリマーゲルからなる固体電解質を用いることもできる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
なお、以下に本発明の非水電解質二次電池用炭素質材料の物性値(「比表面積」、「ブタノール法により求めた真密度」、「レーザー回折法による平均粒子径」、「吸湿量」、「比表面積比Y」、「比表面積比X」、「X線回折法による(002)面の平均面間隔d(002)、及び水素/炭素の原子比(H/C))及び炭素質前駆体の物性値(「トルエン可溶分量」、及び「酸素含有率」)の測定法を記載するが、実施例を含めて、本明細書中に記載する物性値は、以下の方法により求めた値に基づくものである。
《比表面積》
JIS Z8830に定められた方法に準拠し、比表面積を測定した。概要を以下に記す。
BETの式から誘導された近似式v=1/(v(1−x))を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.2)によりvを求め、次式により試料の比表面積を計算した:比表面積=4.35×v(m/g)
(ここで、vは試料表面に単分子層を形成するに必要な吸着量(cm/g)、vは実測される吸着量(cm/g)、xは相対圧力である。)
具体的には、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II2300」を用いて、以下のようにして液体窒素温度における炭素質物質への窒素の吸着量を測定した。
炭素材料を試料管に充填し、窒素ガスを20モル%濃度で含有するヘリウムガスを流しながら、試料管を−196℃に冷却し、炭素材に窒素を吸着させる。次に試験管を室温に戻す。このとき試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量vとした。
《ブタノール法による真密度》
JIS R7212に定められた方法に準拠し、ブタノールを用いて測定した。概要を以下に記す。
内容積約40mLの側管付比重びんの質量(m)を正確に量る。次に、その底部に試料を約10mmの厚さになるように平らに入れた後、その質量(m)を正確に量る。これに1−ブタノールを静かに加えて、底から20mm程度の深さにする。次に比重びんに軽い振動を加えて、大きな気泡の発生がなくなったのを確かめた後、真空デシケーター中に入れ、徐々に排気して2.0〜2.7kPaとする。その圧力に20分間以上保ち、気泡の発生が止まった後取り出して、更に1−ブタノールで満たし、栓をして恒温水槽(30±0.03℃に調節してあるもの)に15分間以上浸し、1−ブタノールの液面を標線に合わせる。次に、これを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後、質量(m)を正確に量る。次に同じ比重びんに1−ブタノールだけを満たし、前記と同じようにして恒温水槽に浸し、標線を合わせた後、質量(m)を量る。また、使用直前に沸騰させて溶解した気体を除いた蒸留水を比重びんにとり、前と同様に恒温水槽に浸し、標線を合わせた後質量(m)を量る。真密度(ρBt)は次の式により計算する。
Figure 2016181348
(ここでdは水の30℃における比重(0.9946)である。)
《平均粒子径》
試料約0.1gに対し、分散剤(カチオン系界面活性剤「SNウェット366」(サンノプコ社製))を3滴加え、試料に分散剤を馴染ませる。次に、純水30mLを加え、超音波洗浄機で約3分間分散させたのち、粒径分布測定器(日機装株式会社「Microtrac MT3300EXII」)で、粒径0.02〜2000μmの範囲の粒径分布を求めた。測定条件において、透過性は吸収、粒子屈折率は1.81、形状は非球形を選択した。
得られた粒径分布から、累積容積が50%となる粒径をもって平均粒径Dv50(μm)とした。
《吸湿量》
測定前に、負極材料を200℃で12時間、真空乾燥させ、その後、この負極材料1gを直径9.5cm、高さ1.5cmのシャーレに、できる限り薄い厚みとなるように広げた。温度25℃、湿度50%の一定雰囲気に制御した恒温恒湿槽内に、100時間、放置した後、恒温恒湿槽から容器を取り出し、カールフィッシャ―水分計(三菱化学アナリテック/CA−200)を用いて吸湿量を測定した。気化室(三菱化学アナリテック/VA−200)の温度は220℃とした。表2に結果を示す。
《比表面積比Y(CAL/BET)》
粒子を真球と仮定し、粒子径分布を各粒子径の範囲n個に分割し、各粒子径に相当する面積を求め、それらを加算することにより比表面積を計算した。以下の式で単位重量当たりの比表面積(CAL)を計算する。球相当粒子径(μm)、個数頻度は、粒径分布から算出することができる。
Figure 2016181348
前記単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)とから、比表面積比(CAL/BET)を計算した。
《炭素質材料の(002)面の平均面間隔d(002)
炭素質材料粉末を試料ホルダーに充填し、PANalytical社製X’Pert PROを用いて、対称反射法にて測定した。走査範囲は8<2θ<50°で印加電流/印加電圧は45kV/40mAの条件で、Niフィルターにより単色化したCuKα線(λ=1.5418Å)を線源とし、X線回折図形を得た。回折図形の補正は、ローレンツ変更因子、吸収因子、及び原子散乱因子などの関する補正を行わず、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折線を用いて、回折角を補正した。CuKα線の波長を0.15418nmとし、Braggの公式によりd(002)を計算した。
Figure 2016181348
《水素/炭素の原子比(H/C)》
JIS M8819に定められた方法に準拠し測定した。すなわち、CHNアナライザー(Perkin−elmer社製2400II)による元素分析により得られる試料中の水素及び炭素の質量割合をそれぞれの元素の質量数で除し、水素/炭素の原子数の比を求めた。
《トルエン可溶分量》
多孔性球状酸化ピッチを粉砕し、目開き150μmの篩を通過した粉末状酸化ピッチ1.000gを100mLのねじ付き三角フラスコに入れ、これにトルエン100mLを入れキャップを閉め、よく振り混ぜる。つぎにこれを40℃±5℃に設定された恒温機に入れ、16時間保持した後、ろ過し、トルエン不溶分を110℃±5℃で1時間乾燥後、放冷し、重量を測定することによりトルエン不溶分を求める。これを100から差し引きトルエン可溶分とした。
《酸素含有率》
JIS M8819に定められた方法に準拠し測定した。CHNアナライザーによる元素分析により得られる試料中の炭素、水素、窒素の質量百分率を100から差引き、これを酸素含有率とした。
《実施例1》
軟化点205℃、H/C原子比0.65の石油系ピッチ70kgと、ナフタレン30kgとを、撹拌翼および出口ノズルのついた内容積300リットルの耐圧容器に仕込み、190℃で加熱溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却し、耐圧容器内を窒素ガスにより加圧して、内容物を出口ノズルから押出し、直径約500μmの紐状成型体を得た。次いで、この紐状成型体を直径(D)と長さ(L)の比(L/D)が約1.5になるように粉砕し、得られた破砕物を93℃に加熱した0.53重量%のポリビニルアルコール(ケン化度88%)を溶解した水溶液中に投入し、撹拌分散し、冷却して球状ピッチ成型体スラリーを得た。大部分の水をろ過により取り除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍量の重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、218℃まで昇温し、218℃に2時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。
次に多孔性球状酸化ピッチ7000gを直径130mmの縦型管状炉に入れて、430℃まで50℃/hの速度で昇温し、430℃で1時間保持して予備炭素化を実施し、炭素前駆体を得た。予備炭素化は流量50L/minの窒素雰囲気下で行った。得られた炭素前駆体をジェットミル(ホソカワミクロン株式会社/100−AFG)で粉砕し、平均粒径3.8μmの粉末状炭素前駆体とした。続いて、この粉末状炭素前駆体10gを横型管状炉に入れ、250℃/hの昇温速度で1200℃まで昇温し、1200℃で1時間保持して、本焼成を行い、炭素質材料1を調製した。なお、本焼成は、流量10L/minの窒素雰囲気下で行った。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例2》
本実施例では予備焼成の温度を480℃としたこと、粉末状炭素前駆体の粒径を3.2μmとしたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、炭素質材料2を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例3》
本実施例では予備焼成の温度を490℃としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、炭素質材料3を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例4》
本実施例では粉末状炭素前駆体にバグフィルターで回収された平均粒径1.3μmの微粉を10wt%加えたこと以外は実施例2と同様にして、炭素質材料4を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例5》
本実施例では粉末状炭素前駆体にバグフィルターで回収された平均粒径1.3μmの微粉を20wt%加えたこと以外は実施例2と同様にして、炭素質材料5を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例6》
本実施例では粉末状炭素前駆体にバグフィルターで回収された平均粒径1.3μmの微粉を30wt%加えたこと以外は実施例2と同様にして、炭素質材料6を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例7》
粉末状炭素前駆体の粒径を6.6μmとしたことを除いては、実施例2の操作を繰り返して、炭素質材料7を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《実施例8》
本実施例では予備焼成の温度を440℃としたこと、及び酸化の温度を230℃としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、炭素質材料8を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《比較例1》
本比較例では予備焼成を行わなかったことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。炭素質前駆体のトルエン可溶分が多かったために、焼成により炭素質前駆体が固着し、目的の粒子径の炭素質材料が得られなかった。
《比較例2》
本比較例では予備焼成温度を550℃としたこと以外は、実施例6と同様にして、比較炭素質材料2を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《比較例3》
本比較例では粉末状炭素前駆体にバグフィルターで回収された平均粒径1.3μmの微粉を80wt%加えたこと以外は実施例2と同様にして、比較炭素質材料3を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
《比較例4》
本実施例では予備焼成の温度を650℃としたこと、及び酸化温度を270℃としたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、比較炭素質材料4を調製した。表1に炭素質材料の物性等を示す。
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた電極を用いて、以下の(a)及び(b)の操作により非水電解質二次電池を作成し、そして電極及び電池性能の評価を行った。
(a)試験電池の作製
本発明の炭素材は非水電解質二次電池の負極電極を構成するのに適しているが、電池活物質の放電容量(脱ドープ量)及び不可逆容量(非脱ドープ量)を、対極の性能のバラツキに影響されることなく精度良く評価するために、特性の安定したリチウム金属を対極として、上記で得られた電極を用いてリチウム二次電池を構成し、その特性を評価した。
リチウム極の調製は、Ar雰囲気中のグローブボックス内で行った。予め2016サイズのコイン型電池用缶の外蓋に直径16mmのステンレススチール網円盤をスポット溶接した後、厚さ0.8mmの金属リチウム薄板を直径15mmの円盤状に打ち抜いたものをステンレススチール網円盤に圧着し、電極(対極)とした。
このようにして製造した電極の対を用い、電解液としてはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートを容量比1:2:2で混合した混合溶媒に1.4mol/Lの割合でLiPFを加えたものを使用し、直径19mmの硼珪酸塩ガラス繊維製微細細孔膜のセパレータとして、ポリエチレン製のガスケットを用いて、Arグローブボックス中で、2016サイズのコイン型非水電解質系リチウム二次電池を組み立てた。
(b)電池容量の測定
上記構成のリチウム二次電池について、充放電試験装置(東洋システム製「TOSCAT」)を用いて充放電試験を行った。炭素極へのリチウムのドープ反応を定電流定電圧法により行い、脱ドープ反応を定電流法で行った。ここで、正極にリチウムカルコゲン化合物を使用した電池では、炭素極へのリチウムのドープ反応が「充電」であり、本発明の試験電池のように対極にリチウム金属を使用した電池では、炭素極へのドープ反応が「放電」と呼ぶことになり、用いる対極により同じ炭素極へのリチウムのドープ反応の呼び方が異なる。そこでここでは、便宜上炭素極へのリチウムのドープ反応を「充電」と記述することにする。逆に「放電」とは試験電池では充電反応であるが、炭素材からのリチウムの脱ドープ反応であるため便宜上「放電」と記述することにする。ここで採用した充電方法は定電流定電圧法であり、具体的には端子電圧が0Vになるまで0.5mA/cmで定電流充電を行い、端子電圧を0mVに達した後、端子電圧0mVで定電圧充電を行い電流値が20μAに達するまで充電を継続した。このとき、供給した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量当たりの充電容量(Ah/kg)と定義した。充電終了後、30分間電池回路を開放し、その後放電を行った。放電は0.5mA/cmで定電流放電を行い、終止電圧を1.5Vとした。このとき放電した電気量を電極の炭素材の重量で除した値を炭素材の単位重量当たりの放電容量(Ah/kg)と定義する。更に、単位重量当たりの放電容量と真密度の積を体積当たりの放電容量(Ah/L)とした。また、重量当たりの放電容量を重量当たりの充電容量で除し、充放電効率を求めた。充放電効率は、百分率(%)で表記した。同一試料を用いて作製した試験電池についてのn=3の測定値を平均して充放電容量及び充放電効率を計算した。
表2に結果を示す。
Figure 2016181348
Figure 2016181348
実施例1〜8の炭素質材料を用いた二次電池は、87.6〜89.6%の優れた初期効率を示した。更に、実施例1〜8の炭素質材料は、水分の吸湿量も低く、優れた保存特性を示した。
一方、炭素質前駆体がトルエン可溶分を含まない比較例2の炭素質材料を用いた二次電池は、初期効率が82.0%と低かった。また、微粉を多く含む比較例3の炭素質材料は、比表面積が12.0m/gと高く、それを用いた二次電池の初期効率も84.3%と低かった。更に、炭素質前駆体がトルエン可溶分を含まず、炭素前駆体の酸素含有量の多い比較例4の炭素質材料を用いた二次電池も初期効率が84.0%と低く、炭素質材料の吸湿量も1.8%と高かった。
本発明の非水電解質二次電池は、高い充放電容量を有し、そして優れた初期効率を示す。従って高い入出力特性が求められる、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、及び電気自動車(EV)に有効に用いることができる。

Claims (10)

  1. 平均粒子径が1〜8μmであり、ブタノール法により求められる真密度ρBtが1.56〜2.00g/cmであり、BET法により求められる比表面積が3〜10m/gであり、そして下記式(1)
    Figure 2016181348
    (式中、ρはブタノール真密度であり、dは、粒度分布n分割時i番目の粒子の球相当粒子径(μm)、そしてqは、粒度分布n分割時i番目の粒子の個数頻度である)で求められる単位重量当たりの比表面積(CAL)と、BET法により求められる比表面積(BET)との比表面積比(CAL/BET)が0.8以上である、非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  2. 1〜14質量%のトルエン可溶分を含む炭素質前駆体を、800℃〜1600℃で本焼成することによって得られる、請求項1に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  3. 前記炭素質前駆体の酸素含有率が12質量%以下である、請求項2に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  4. 1μm以下の粒子径の炭素質材料が50質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  5. (1)石油又は石炭由来の有機物を、酸化性ガス含有雰囲気下、又は液体の酸化剤存在下で酸化し、酸素含有率12質量%以下の酸化炭素質前駆体を得る、酸化工程、
    (2)前記酸化炭素質前駆体を、不活性ガス雰囲気下で、トルエン可溶分が1〜14質量%となるように予備焼成する工程、
    (3)前記予備焼成された炭素質前駆体を、得られる炭素質材料の平均粒子径が1〜8μmとなるように粉砕する工程、
    (4)前記粉砕された炭素質前駆体を到達温度が800〜1600℃で焼成する焼成工程、
    を含む、非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  6. 前記石油又は石炭由来の有機物が、石油ピッチ、石油タール、石炭ピッチ、及び石炭タールからなる群から選択される、請求項5に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  7. 前記予備焼成された炭素質前駆体における1μm以下の粒子径の炭素質前駆体の含有量が、50質量%以下である、請求項5又は6に記載の非水電解質二次電池負極用炭素質材料の製造方法。
  8. 前記請求項5〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得ることのできる、非水電解質二次電池負極用炭素質材料。
  9. 請求項1〜4及び請求項8のいずれか一項に記載の炭素質材料を含む非水電解質二次電池用負極。
  10. 請求項9に記載の負極を含む非水電解質二次電池。
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