JP2016179597A - 保護フィルム付き自己修復性積層体およびそれがラミネートされた樹脂板の製造方法 - Google Patents

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一平 尾関
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Abstract

【課題】自己修復性フィルムを樹脂成形品などの表面被覆材として適用するとき、自己修復性樹脂層を十分に保護することができる、保護フィルム付き自己修復性積層体と、それがラミネートされた樹脂板の製造方法を提供する。【解決手段】基材フィルムおよび自己修復性樹脂層を含む自己修復性フィルムと、この自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層の上に積層された保護フィルムと、を有し、保護フィルムの自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上であることを特徴とする、保護フィルム付き自己修復性積層体、およびそれがラミネートされた樹脂板の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、基材フィルム上に自己修復性樹脂層(自己修復性機能(傷を自己修復する機能)を有する樹脂層)が積層された自己修復性フィルムと、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層を保護するための保護フィルムとが積層された保護フィルム付き自己修復性積層体、およびその保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法に関する。
各種樹脂成形品(例えば、自動車の内装部材、電子機器筺体、家電などに用いられる樹脂成形品)の表面に傷が付くことを抑制するために、自己修復性フィルムをこれらの樹脂成形品の表面に被覆させることが知られている(例えば、特許文献1〜4)。
一方、各種機能性フィルム(例えば、導電性フィルム、反射防止フィルム、赤外線吸収フィルム、帯電防止フィルム)の機能性層を保護するために、一時的(機能性フィルムの製造工程、輸送・保管、あるいは加工工程)に保護フィルムを貼り合わせることが知られている。これらの保護フィルムは最終的に剥離除去される。
自己修復性フィルムについても、自己修復性樹脂層を保護するために、自己修復性樹脂層表面に保護フィルムを積層することが知られており、また提案されている(例えば、特許文献3)。
特開2011−207009号公報 特開2011−77266号公報 特開2013−27998号公報 特開2014−181207号公報
上述した樹脂成形品の表面に自己修復性フィルムを被覆させる方法として、樹脂成形品を構成する樹脂板を溶融押出しによって製造するときに樹脂板に自己修復性フィルムを積層(ラミネート)し、自己修復性フィルムがラミネートされた樹脂板を、成形加工(例えば、真空成形、圧空成形、プレス成形など)して、自己修復性フィルムが被覆された樹脂成形品を製造する方法がある。
上記した樹脂板の溶融押出しによる製造方法において、通常、樹脂板は、押出成形機(ダイ)から溶融状態でシート状に押し出された樹脂シートを所定の厚みに成形するための一対のローラ間を通過させて製造される。このとき、溶融状態の樹脂シートと自己修復性フィルムを一緒に一対のローラ間を通過させることによって、自己修復性フィルムがラミネート(被覆)された樹脂板が製造される。このラミネート工程では、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層とは反対側の基材フィルムの面が樹脂板と密着(接着)される。
上記のラミネート工程では、自己修復性フィルムは比較的高温(例えば130℃以上)の状態でローラによって圧接されることから、自己修復性樹脂層表面を保護するために、自己修復性樹脂層表面に保護フィルムが予め積層された保護フィルム付き自己修復性積層体を用いることが好ましい。
しかし、従来から一般的に用いられている保護フィルムを使用した場合、上記の樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体とのラミネート工程において、自己修復性樹脂層表面にクレーター(凹み)が発生するという問題が起こる。この問題は、自己修復性樹脂層が比較的軟質であることから、保護フィルム付き自己修復性積層体とローラとの間に混入した空気(噛み込んだ空気)が滞留して気泡となり、高温状態(例えば130℃以上)にて、ローラで圧接されることによって自己修復性樹脂層表面に気泡状の凹み(クレーター)を形成させていると推測される。
そこで本発明の課題は、上述したような問題に鑑み、自己修復性フィルムを樹脂成形品などの表面被覆材として適用するとき、自己修復性樹脂層を十分に保護することができる、保護フィルム付き自己修復性積層体を提供することにある。本発明の他の課題は、本発明の保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法を提供することにある。
上記課題は、以下の発明によって基本的に解決される。
[1]基材フィルムおよび自己修復性樹脂層を含む自己修復性フィルムと、この自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層の上に積層された保護フィルムと、を有し、
前記保護フィルムの前記自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上であることを特徴とする、保護フィルム付き自己修復性積層体。
[2]前記保護フィルムが、前記自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面にビーズコート層を有し、ビーズコート層表面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上である、[1]に記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
[3]前記ビーズコート層表面にビーズによる突起を有し、ビーズコート層表面の50μm平方当たりの突起密度が2個以上である、[2]に記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
[4]前記基材フィルムがポリカーボネート樹脂フィルムである、[1]〜[3]のいずれかに記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
[5]前記自己修復性樹脂層が、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂を含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムとは反対面と樹脂板とが向き合うように、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法であって、
溶融押出成形機から溶融状態でシート状に押出された樹脂シートと、保護フィルム付き自己修復性積層体とを、一緒に、一対のローラ間を通過させることを特徴とする、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体においては、自己修復性フィルムが樹脂成形品などの表面被覆材として適用されるとき、自己修復性樹脂層を十分に保護することができる。詳細には、本発明によれば、樹脂成形品を構成する樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体とのラミネート工程において、自己修復性樹脂層表面にクレーターが発生することを抑制した保護フィルム付き自己修復性積層体を提供することができる。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体の一例を示す模式断面図である。 本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の一例を示す模式断面図である。 溶融押出しされた樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体とのラミネート工程の一例を示す概略構成図である。 本発明に用いられる保護フィルムの一例を示す模式断面図である。 自己修復性フィルムが被覆されたスーツケースの一例を示す概略断面図である。
以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体は、基材フィルムおよび自己修復性樹脂層を含む自己修復性フィルムと、この自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層の上に積層された保護フィルムとを有する。そして、保護フィルムの自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上であることを特徴とする。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体を構成する保護フィルムは、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層を保護(例えば、自己修復性フィルムの製造工程、輸送・保管、および成形加工工程における自己修復性樹脂層の保護)する役目を有する。保護フィルムは上記したような保護の役目を終えた後には剥離除去されるものである。つまり、本発明における保護フィルムは、最終的には剥離除去される、いわゆる再剥離性保護フィルムである。
以下、保護フィルムの自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面を「外表面」ということもある。
図1は、本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体の一例を示している。保護フィルム付き自己修復性積層体1は、自己修復性フィルム10と保護フィルム20とが積層されたものである。自己修復性フィルム10は、基材フィルム11と、その上に積層された自己修復性樹脂層12とを含む。保護フィルム20は、基材としての樹脂フィルム21、粘着剤層22、および外表面23を含む。本発明においては、外表面23は、その中心線平均粗さRaが0.07μm以上とされ、そのような表面粗さとなるように、外表面23には微細凹凸が形成されていることが好ましい。
次に、本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体の好適な適用例について説明する。但し、本発明はこれらの適用例に限定されない。
まず、本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムが剥離除去された後の自己修復性フィルムは、各種樹脂成形品の表面被覆材として適用されることが好ましい。
樹脂成形品としては、例えば、自動車の内装部材(例えば、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアトリムなど)、電子機器筺体(例えば、携帯型パーソナルコンピュータ、モバイル機器、携帯電話、電子手帳など)、家電(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)、携行用収納容器(例えば、スーツケース、トランク、キャリーバッグなど)が挙げられる。これらの中でも、携行用収納容器に適用されることが好ましい。
樹脂成形品の表面に自己修復性フィルムを被覆させる方法として、樹脂成形品を構成する樹脂板に予め自己修復性フィルムをラミネートし、この自己修復性フィルムがラミネートされた樹脂板を成形加工(例えば、真空成形、圧空成形、プレス成形など)して樹脂成形品を製造する方法がある。この樹脂成形品への成形加工は、高温(例えば150〜200℃程度)で行われる(加熱成形される)。
上記した樹脂板に自己修復性フィルムをラミネートする方法として、樹脂板を溶融押出成形するときに自己修復性フィルムをラミネートする方法がある。このラミネート方法は、溶融押出成形機(ダイ)から溶融状態でシート状に押し出された樹脂シートを所定の厚みに成形するための一対のローラ間を通過させるとき、溶融状態の樹脂シートと自己修復性フィルムを一緒に一対のローラ間を通過させる方法である。これによって、自己修復性フィルムがラミネートされた樹脂板が得られる。このラミネート方法では、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層とは反対側の基材フィルムの面が樹脂板と密着(接着)される。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体は、上記したように樹脂板を溶融押出しにより製造するときに適用されることが好ましい。
つまり、本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の好ましい製造方法は、保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムとは反対面と樹脂板とが向き合うように、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法であって、溶融押出成形機から溶融状態でシート状に押出された樹脂シートと、保護フィルム付き自己修復性積層体とを、一緒に、一対のローラ間を通過させることを特徴とする。
図3は、樹脂板を溶融押出しによって製造するときの一例を示している。
溶融押出成形機2から溶融状態でシート状に押出された樹脂シート4aを、所定の厚みに成形するための一対のローラ3a、3b間を通過させるとき、樹脂シート4aと保護フィルム付き自己修復性積層体1を一緒に一対のローラ3a、3b間を通過させることによって、保護フィルム付き自己修復性積層体1がラミネートされた樹脂板5が製造される。このラミネート工程では、保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムとは反対側の基材フィルムの面が樹脂板と密着(接着)される。
図2は、上記のようにして製造して得られた、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板5の一例を示している。樹脂板4b(溶融押出成形機2(図3)から溶融状態でシート状に押出された樹脂シート4aが所定の厚み成形された樹脂板)に、保護フィルム付き自己修復性積層体1の自己修復性フィルム10の基材フィルム11側がラミネートされている。
溶融押出成形機2から溶融状態でシート状に押し出された樹脂シート4aおよび一対のローラ3a、3bは、かなり高温(130〜250℃程度)であるので、このようなラミネート工程においては、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層を保護するための保護フィルムが積層された保護フィルム付き自己修復性積層体が用いることが好ましい。
しかし、従来から一般的に用いられている保護フィルムを使用した場合、前述したように、上記の樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体とのラミネート工程において、自己修復性樹脂層表面にクレーター(凹み)が発生するという問題が起こる。この問題は、自己修復性樹脂層が比較的軟質であることから、保護フィルム付き自己修復性積層体1とローラ3bとの間に混入した空気(噛み込んだ空気)が滞留して気泡となり、高温状態で、ローラで圧接されることによって自己修復性樹脂層表面に、滞留した気泡が起因する気泡状の凹み(クレーター)が形成されていると推測される。
上記問題は、本発明の保護フィルム付き自己修復性積層体を用いることによって抑制される。つまり、保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上であることにより(所定表面粗さ以上の微細凹凸を有することにより)、抑制される。
これは、樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体のラミネート工程において、溶融押出しされた樹脂シート4aと保護フィルム付き自己修復性積層体1とが一緒に一対のローラ3a、3b間を通過するとき、保護フィルムの外表面(ローラ3bと接する保護フィルムの面)に形成された微細凹凸によって、保護フィルムとローラ3bとの間に混入した空気(噛み込んだ空気)が滞留せずに放出され、自己修復性樹脂層表面へのクレーター発生が抑制されていると考えられる。
上記の観点から、保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaは0.07μm以上と規定されている。外表面の中心線平均粗さRaが0.07μm未満では自己修復性樹脂層表面のクレーターの発生は十分に抑制することができない。
自己修復性樹脂層表面のクレーターの発生を抑制するという観点から、保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaは、更に0.10μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、特に0.20μm以上が好ましい。
一方、保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaが大きくなり過ぎると、ローラとの滑り性が過剰となり、搬送性が悪化することがあるので、上限の中心線平均粗さRaは2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.8μm以下が特に好ましい。
[保護フィルム]
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体において、保護フィルムは自己修復性樹脂層を保護する役目を有する。そして、保護フィルムは、例えば、保護フィルム付き自己修復性積層体が樹脂成形品に適用される工程のいずれかの段階、もしくは最終段階で剥離除去されるものである。つまり、本発明における保護フィルムは、自己修復性フィルムに一時的に積層され、最終的には剥離除去される、いわゆる再剥離性保護フィルムである。
保護フィルムにおいては、その基材として樹脂フィルムが好ましく用いられる。かかる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルムが好ましく、更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは、他の樹脂フィルムに比べて耐熱性が高く、樹脂板の溶融押出し成形時の高温(例えば、130〜230℃)に適応できることから好ましい。
樹脂フィルムの厚みは、自己修復性樹脂層を保護するという観点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。上限は、成形加工性の観点から、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下が特に好ましい。
本発明においては、上記保護フィルムの外表面には、中心線平均粗さRaが0.07μm以上となるように微細な凹凸が設けられている。このような微細凹凸は、保護フィルムを構成する樹脂フィルム自体を型付け加工(賦型)することによって、あるいは樹脂フィルムにビーズコート層を設けることによって、形成することができる。
これらの微細凹凸の形成方法の中でも、耐熱性の良好な微細凹凸を形成するという観点から、ビーズコート層を設ける方法が好ましい。
前述したように、樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体とのラミネート工程において、保護フィルムの外表面が高温状態でローラ3bと圧接されるとき、保護フィルムの外表面に形成された微細凹凸の耐熱性が低いと、微細凹凸が熱によって軟化し平滑化され、外表面の中心線平均粗さRaが小さくなることがある。保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaが小さくなると、気泡混入による欠点抑制効果(自己修復性樹脂層表面へのクレーター発生の抑制効果)が低減することがある。
この観点から、保護フィルムの外表面の微細凹凸の形成は、ビーズコート層を設ける方法が好ましく、更に、ビーズとして耐熱性の良好なビーズ(例えば、架橋有機ビーズや無機ビーズ)を用いることが好ましい。特に、無機ビーズを含有するビーズコート層が好ましい。
樹脂フィルム自体を型付け加工(賦型)して微細凹凸を形成する方法は、形成された微細凹凸の材質が樹脂フィルムを構成する樹脂そのものであるので、微細凹凸の耐熱性の点で、上記したビーズコート層の方が優れている。
次に、保護フィルムの外表面に微細凹凸を形成する方法について、詳細に説明する。
樹脂フィルムへの型付け加工(賦型)は、エンボス加工方法、サンドブラスト加工方法、ドライエッチング加工方法などによって行うことができる。
樹脂フィルムにビーズコート層を設ける方法としては、例えば、樹脂フィルムにビーズ(粒子)を含有する塗料を塗布する方法が挙げられる。ビーズとしては、有機あるいは無機のビーズを用いることができる。
有機ビーズとしては、例えば、アクリル系樹脂ビーズ、シリコーン系樹脂ビーズ、ナイロン系樹脂ビーズ、スチレン系樹脂ビーズ、アクリル−スチレン系樹脂ビーズ、ポリエチレン系樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、ウレタン系樹脂ビーズ等が挙げられる。無機ビーズとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、ゼオライト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート等が挙げられる。
上記のビーズの中でも、耐熱性が比較的高い、無機ビーズあるいは架橋有機ビーズ(例えば架橋アクリル系樹脂ビーズ、架橋スチレン系樹脂ビーズ、架橋アクリル−スチレン系樹脂ビーズ)が好ましく用いられる。更に高い耐熱性を付与するとい観点から、無機ビーズが好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。
ビーズコート層は、ビーズを固着するためのバインダーを含有することが好ましい。かかるバインダーとしては、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
ビーズコート層は、上記バインダーを架橋するための架橋剤、例えば、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を含有することが好ましい。
ビーズの平均粒子径および添加量は、保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaの設計に応じて適宜調整される。ビーズコート層がビーズとバインダーで構成されている場合、ビーズコート層表面に微細凹凸を形成するという観点から、ビーズの平均粒子径はバインダー被膜の厚みより大きいことが好ましい。バインダー被膜の厚みは0.1〜10μmの範囲が適当であり、0.3〜7μmの範囲が好ましい。このようなバインダー被膜の厚みの場合、ビーズの平均粒子径は0.2〜20μm程度が好ましく、0.3〜15μmの範囲がより好ましく、0.5〜10μmの範囲が特に好ましい。
ビーズコート層におけるビーズの含有量は、ビーズコート層の固形分総量100質量%に対して、1〜70質量%の範囲が適当であり、2〜60質量%の範囲がより好ましく、4〜50質量%の範囲が特に好ましい。
樹脂板と保護フィルム付き自己修復性積層体とのラミネート工程において、気泡混入による欠点抑制効果(自己修復性樹脂層表面へのクレーター発生の抑制効果)を十分に高めるという観点から、保護フィルムの外表面に設けられるビーズコート層は、ビーズコート層表面にビーズによる突起(以下、単に「突起」ということがある)が形成されていることが好ましい。かかる突起は、前述したように、ビーズコート層におけるバインダー被膜の厚み(T)に対して、ビーズの平均粒子径(D)が大きいビーズを用いることによって形成することができる。ここで、バインダー被膜の厚みは、ビーズが存在しない部分の厚みである。また、ビーズコート層表面にビーズによる突起が形成されているとは、ビーズコート層のバインダー被膜からビーズが突出していることを意味する。
ビーズコート層表面に効果的な突起を形成するという観点から、バインダー被膜の厚み(T)に対するビーズの平均粒子径(D)の比率(D/T)は、1.1以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上が特に好ましい。上記比率(D/T)が大きくなり過ぎると、ビーズコート層からビーズが脱落することがあるので、上記比率(D/T)の上限は、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が特に好ましい。
また、気泡混入による欠点を抑制するという観点から、ビーズコート層表面に突起が、ビーズコート層表面の50μm平方(2500μm)当たり2個以上の密度で存在することが好ましく、3個以上の密度で存在することがより好ましく、5個以上の密度で存在することが更に好ましく、10個以上の密度で存在することが特に好ましい。突起の個数の上限は、特に限定されないが、多くなり過ぎると、保護フィルムの外表面の中心線平均粗さRaが大きくなり過ぎて、ローラとの滑り性が過剰となり、搬送性が悪化することがあるので、1000個以下が好ましく、500個以下がより好ましく、300個以下が特に好ましい。
ビーズコート層表面における突起の密度は、ビーズコート層表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による表面写真によって確認することができる
突起の平均高さ(H)は、気泡混入による欠点抑制効果(自己修復性樹脂層表面へのクレーター発生の抑制効果)を十分に高めるという観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。突起の平均高さ(H)が大きくなり過ぎると、ビーズコート層からビーズが脱落することがあるので、上限の平均高さ(H)は、10μm以下が好ましく、7μm以下が特に好ましい。
図4は、外表面にビーズコート層が設けられた保護フィルムの一例を示している。保護フィルム20は、樹脂フィルム21上にビーズコート層24が設けられて外表面を形成している。ビーズコート層24は、ビーズ24aがバインダー被膜24bで樹脂フィルム21に固着されている。ビーズ24aは、ビーズコート層表面(バインダー被膜24bの表面)に突出し突起を形成している。
突起の高さ(H)は、図4に示すように、ビーズコート層のバインダー被膜24bの表面から突起の最も高い部分までの垂直距離である。突起の平均高さ(H)は、ビーズコート層の透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された断面写真から測定することができる。なお、図4におけるTは、バインダー被膜の厚みを示している。
本発明に用いられる保護フィルムにおいては、図1に示すように、保護フィルム20の樹脂フィルム21の外表面23に微細凹凸が設けられていることが好ましい。樹脂フィルム21の他方の面には粘着剤層22が設けられていることが好ましく、この粘着剤層22を介して自己修復性フィルム10の自己修復性樹脂層12の面に貼り合わされる。
本発明に用いられる保護フィルムは、図1に示すように、樹脂フィルム21の一方の面(自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層に向き合う面)に粘着剤層22を有することが好ましい。しかし、樹脂フィルム21を構成する樹脂フィルムが多層共押し出しフィルムで、そのうちの1層が粘着性を有する、いわゆる自己粘着性フィルムである場合は、粘着剤層22は必ずしも必要ではない。
粘着剤層22を構成する粘着剤としては、従来から知られている粘着剤を用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられ、これらの中でもアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
粘着剤層の厚みは、0.1〜15μmの範囲が適当であり、0.2〜10μmの範囲が好ましく、0.3〜5μmの範囲がより好ましく、0.3〜3μmの範囲が特に好ましい。
[基材フィルム]
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムが剥離除去された後の自己修復性フィルムは、上述したように各種樹脂成形品の表面被覆材として適用されることが好ましい。樹脂成形品への適用に際し、自己修復性フィルムは一般に高温(例えば150〜200℃)で加熱成形される。従って、自己修復性フィルムは、加熱成形性が良好であることが好ましい。
上記観点から、基材フィルムとしては、加熱成形性が良好なものが好ましい。かかる基材フィルムとしては、ポリカーボネート樹脂フィルム、易成形ポリエステル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムとアクリル樹脂フィルムとの積層樹脂フィルムが好ましく用いられる。更に、ポリカーボネート樹脂フィルムが、加熱成形性の観点から好ましく用いられる。
これらの樹脂フィルムは一般に市販されており、これらの市販品の中から選択して用いることができる。
ポリカーボネート樹脂フィルムの市販品としては、例えば、帝人化成(株)製の「パンライトフィルム」や「ピュアエース」、三菱ガス化学(株)製の「ユーピロン」、旭硝子(株)製の「レキサンフィルム」、General Electric社製の「Lexan」、バイエル社製の「マクロフォル」等が挙げられる。
易成形ポリエステル樹脂フィルムの市販品としては、例えば、東洋紡(株)製の「ソフトシャイン」、帝人デュポンフィルム(株)製の「テフレックス」等が挙げられる。
アクリル樹脂フィルムの市販品としては、例えば、住友化学(株)製の「テクノロイ」、三菱レイヨン(株)製の「アクリプレン」、(株)カネカ製の「サンデュレン」などが挙げられる。
基材フィルムの厚みは、20〜400μmの範囲が適当であるが、強度や加工性等の観点から50〜350μmの範囲がより好ましく、特に75〜330μmの範囲が好ましい。
[自己修復性樹脂層]
本発明における自己修復性樹脂層は、自己修復性樹脂層表面に付けられた傷が自己修復する機能(傷修復機能)を有する層である。具体的には、常温(23℃)環境下で金属ブラシ(真鍮ブラシ)によって自己修復性樹脂層表面に付けられた傷が消失することを意味する。
以下、常温(23℃)環境下で金属ブラシ(真鍮ブラシ)によって自己修復性樹脂層表面に付けられた傷が消失する時間を「傷消失時間」という。
本発明における傷消失時間は、24時間未満であることが好ましく、30分未満であることがより好ましく、3分未満であることが更に好ましく、10秒未満であることが特に好ましい。傷消失時間の下限は特に限定されないが、視覚的に傷消失が確認できる時間は0.1秒程度である。
自己修復性樹脂層表面に金属ブラシ(真鍮ブラシ)によって付けられた傷が消失したかどうか(傷修復機能を有するかどうか)は、目視もしくはヘイズ値を測定することによって判定することができる。
本発明における自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層表面に、金属ブラシ(真鍮ブラシ)で傷を付けると、ヘイズ値は通常0.40%以上上昇する。しかし、自己修復性樹脂層が傷修復機能を有する場合は、一旦上昇したヘイズ値は傷が消失することによって傷を付ける前のヘイズ値に近くなる。従って、傷修復機能を有するかどうかをヘイズ値の変化で判定する場合は、試験前(傷を付ける前)のヘイズ値(Hz0)と、試験後(金属ブラシ(真鍮ブラシ)で傷を付けた後)に一定時間経過した後のヘイズ値(HzX)との差を(HzX−Hz0)が0.30%未満であれば、傷修復機能を有すると判定する(詳しい判定法は後述する)。
自己修復性樹脂層の傷修復機能は、自己修復性樹脂層を構成する樹脂のソフトセグメントとハードセグメントとをバランスさせることによって発現する。ソフトセグメントはクッション的な働きをすることによって外力を緩和し、傷を弾性回復するように機能し、ハードセグメントは外力に対して抵抗するように機能する。ソフトセグメントだけでは弾性が弱くなり形状を保持することが困難となり、また傷回復性が低下する。一方、ハードセグメントだけでは傷が非可逆的に刻印される(傷が回復しない)。
自己修復性樹脂層に用いられる樹脂としては、ポリカプロラクトン骨格を有するウレタン樹脂、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール骨格を有するウレタン樹脂、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂などが知られており、これらのポリカプロラクトン骨格、ポリカーボネート骨格、ポリアルキレングリコール骨格、ポリエステル骨格がソフトセグメントとして機能し、ウレタン結合がハードセグメントとして機能すると考えられる。
前述したように、自己修復性フィルムは加熱成形性が良好であることが好ましい。この観点から、自己修復性樹脂層は、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂を含有することが好ましい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂を含有する自己修復性樹脂層とすることにより、加熱成形性が向上する。
自己修復性樹脂層の加熱成形性を向上させるという観点から、後述するように、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂およびポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを合成するための原料であるポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、300〜7,000の範囲が好ましい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が300未満であると、ソフトセグメント成分の比率が小さくなり過ぎて傷回復機能が発現しなかったり、成形性が低下するなどの不都合が生じることがある。一方、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が7,000を超えると、ソフトセグメント成分の比率が多くなり過ぎて樹脂層の硬度が低下し、逆に傷が付きやすくなる。
自己修復性樹脂層におけるポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂の含有量は、自己修復性樹脂層の成形性を向上させるという観点から、自己修復性樹脂層の固形分総量100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、更に60質量%以上が好ましく、特に70質量%以上が好ましい。一方、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂の含有量が多くなりすぎると、傷の回復性が低下すること(傷消失時間が長くなること、あるいは傷が消失しないこと)があるので、上限の含有量は自己修復性樹脂層の固形分総量100質量%に対して95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
自己修復性樹脂層は、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂以外の他の樹脂、例えば、ポリカプロラクトン骨格を有するウレタン樹脂、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、あるいは後述するポリジメチルシロキサン系共重合体などの樹脂(他の樹脂という)を含有することができる。
これらの他の樹脂の含有量は、多くなりすぎると成形性が低下することがあるので、含有量は適宜調整する必要がある。他の樹脂の含有量は、具体的には、自己修復性樹脂層の固形分総量100質量%に対して、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、更に20質量%以下が好ましく、特に15質量%以下が好ましい。
自己修復性樹脂層は、更に、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、粒子等を含有することができる。
自己修復性樹脂層の厚みは、傷付き抑制効果を十分に発現させるという観点から、8μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、13μm以上が特に好ましい。自己修復性樹脂層の厚みが8μm未満であると、この自己修復性フィルムを樹脂成形品の表面に適用した時の傷付き性を十分に抑制することができないことがある。
一方、自己修復性樹脂層の厚みが大きくなり過ぎると、加熱成形性が低下することがあるので、上限の厚みは50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が特に好ましい。自己修復性樹脂層の厚みが50μmを超えると、加熱成形時に外観不良因子が発生しやすくなる。
[ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂]
ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂は、分子中にポリカーボネート骨格とウレタン結合を有する樹脂である。分子中へのポリカーボネート骨格の導入は、例えば合成原料としてポリカーボネートポリオールを用いることによって行うことができる。同様にウレタン結合の導入は、合成原料としてイソシアネート化合物を用いることによって行うことができる。
ウレタン結合は、ポリカーボネートポリオールの水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応によって生起する。
ポリカーボネートポリオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、またはホスゲンもしくはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、n−プロピルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、イソプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−ブチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、イソブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネートなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリカーボネートジオールが好ましく、更に分子の両末端にそれぞれ水酸基を有するポリカーボネートジオールが好ましい。
ポリカーボネートポリオールとしては市販品を使用することができる。例えば、(株)ダイセル製の「プラクセルCD」シリーズ、(株)クラレ製の「クラレポリオール」シリーズ、日本ポリウレタン工業(株)製の「ニッポラン」シリーズ、旭化成ケミカルズ(株)製の「デュラノール」シリーズなどが挙げられる。
前述したように、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、300〜7,000の範囲が好ましく、500〜5,000の範囲がより好ましく、700〜3,000の範囲が特に好ましい。
イソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物が好ましい。かかるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレット体、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。
[有機ケイ素化合物]
本発明における自己修復性フィルムは、加熱成形性を向上させる必要性から、自己修復性樹脂層は比較的軟質状態となることがある。このため、自己修復性樹脂層表面は紙粉や繊維等の塵埃が付着しやすくなる。以下、この自己修復性樹脂層表面への塵埃の付着しやすさを「紙粉付着性」という。従って、自己修復性樹脂層の紙粉付着性を抑制することが好ましく、かかる紙粉付着性は、自己修復性樹脂層に有機ケイ素化合物を含有することによって抑制することができる。
上記の有機ケイ素化合物としては、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系共重合体が挙げられる。また、これら化合物を組む合わせたものであってもよい。有機ケイ素化合物としては、特にポリジメチルシロキサン系共重合体が好ましく用いられる。
自己修復性樹脂層における有機ケイ素化合物の含有量は、自己修復性樹脂層の紙粉付着性を抑制するという観点から、自己修復性樹脂層の固形分総量100質量%に対して、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上が特に好ましい。一方、有機ケイ素化合物の含有量が多くなりすぎると、加熱成形性が低下することがあるので、有機ケイ素化合物の上限の含有量は、自己修復性樹脂層の固形分総量100質量%に対して、12質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が特に好ましい。
[ポリシロキサン系化合物]
ポリシロキサン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、または該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等を使用することができる。
[ポリジメチルシロキサン系化合物]
ポリジメチルシロキサン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン(例えば、東亞合成(株)製GUV−235)などが挙げられる。
[ポリジメチルシロキサン系共重合体]
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、ポリジメチルシロキサン部分(ポリジメチルシロキサンセグメント)とビニルモノマーの重合体鎖部分(ビニル基を有するモノマーが重合されてなるセグメント)とを有する共重合体である。かかるポリジメチルシロキサン系共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体およびグラフト共重合体が好ましい。かかるポリジメチルシロキサン系共重合体の重量平均分子量は、1,000〜30,000の範囲が好ましい。
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法などによって製造することができるが、生産性を考慮すると高分子開始剤法、高分子連鎖移動法を用いるのが好ましい。
高分子開始剤法を用いる場合には、下記の化1で表される高分子アゾ系ラジカル重合開始剤を用いて他のビニルモノマーと共重合させることにより、効率よくブロック共重合体を合成することができる。
また、ペルオキシモノマーと不飽和基を有するポリジメチルシロキサンとを低温で共重合させて過酸化物基を側鎖に導入したプレポリマーを合成し、該プレポリマーをビニルモノマーと共重合させる二段階の重合を行うこともできる。
高分子連鎖移動法を用いる場合は、例えば、下記の化2に示すようなシリコーンオイルに「HS−CHCOOH」や「HS−CHCHCOOH」等を付加してSH基を有する化合物とした後、該SH基の連鎖移動を利用して該シリコーン化合物とビニルモノマーとを共重合させることでブロック共重合体を合成することができる。
更にポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体を合成するには、例えば、下記の化3に示す化合物、すなわちポリジメチルシロキサンのメタクリルエステルなどとビニルモノマーとを共重合させることにより容易にグラフト共重合体を得ることができる。
Figure 2016179597
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ポリジメチルシロキサン系共重合体の合成に用いられるビニルモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート,n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジアセチトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコールなどを挙げることができる。
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、通常、溶液重合によって製造される。このような溶液重合では、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤などが単独または混合溶剤として用いられる。
また、必要に応じてベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチルニトリルなどの重合開始剤を併用する。重合反応は50〜160℃で3〜12時間行うのが好ましい。
また、ポリジメチルシロキサン系共重合体の合成において、イソシアネート基を有するモノマー(例えば、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート)と水酸基を有するモノマー(例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート)を用いることによって、活性エネルギー線硬化性のポリジメチルシロキサン系共重合体を得ることができる。
本発明においては、自己修復性樹脂層が更にイソシアネート系架橋剤またはメラミン系架橋剤を含有することが好ましい。中でも、自己修復性樹脂層がポリジメチルシロキサン系共重合体を含み、更に、イソシアネート系架橋剤またはメラミン系架橋剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。
なお、ポリジメチルシロキサン系共重合体が上記の活性エネルギー線硬化性ポリジメチルシロキサン系共重合体である場合は、それ自体が架橋性を有するので、上記の架橋剤(イソシアネート系架橋剤またはメラミン系架橋剤)は必ずしも併用する必要はない。
自己修復性樹脂層が、有機ケイ素化合物としてポリジメチルシロキサン系共重合体を含有する場合は、イソシアネート系架橋剤あるいはメラミン系架橋剤を併せて含有させて、ポリジメチルシロキサン系共重合体を架橋することが好ましい。この場合、ポリジメチルシロキサン系共重合体と上記架橋剤との架橋反応を促進するために、ポリジメチルシロキサン系共重合体は水酸基を有していることが好ましい。
自己修復性樹脂層が、ポリジメチルシロキサン系共重合体とイソシアネート系架橋剤あるいはメラミン系架橋剤とを含有することによって、更に自己修復性樹脂層の紙粉付着性が抑制される。
上記のイソシアネート系架橋剤として、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などのポリイソシアネート、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネートなどが挙げられる。
上記のメラミン系架橋剤としては、アルコキシメチロールメラミンを使用することができる。
[自己修復性樹脂層の形成]
本発明にかかる自己修復性樹脂層は、熱硬化性樹脂層あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂層であることが好ましく、特に活性エネルギー線硬化性樹脂層であることが好ましい。
自己修復性樹脂層が熱硬化性樹脂層である場合は、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂および架橋剤を含有する熱硬化性組成物を、ポリカーボネート樹脂フィルム上に塗布し、必要に応じて乾燥した後、加熱することによって得ることができる。乾燥工程の中で加熱してもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
熱硬化性組成物は、更に前述した有機ケイ素化合物(特にポリジメチルシロキサン系共重合体)を含有することが好ましい。
自己修復性樹脂層が活性エネルギー線硬化性樹脂層である場合は、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂の前駆体(例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を、基材フィルム上に塗布し、必要に応じて乾燥した後、活性エネルギー線を照射することによって得ることができる。
従って、本発明では、樹脂層が活性エネルギー線硬化性組成物を硬化せしめた層であり、活性エネルギー線硬化性組成物がポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
ここで、活性エネルギー線としては、紫外線や電子線等が挙げられ、本発明においては特に紫外線が好ましく用いられる。電子線の照射量は、1〜10Mradの範囲が適当である。紫外線の照射量は、50〜1,000mJ/cmの範囲が適当であり、100〜800mJ/cmの範囲が好ましく、200〜600mJ/cmの範囲がより好ましい。
上記のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、ポリカーボネートジオール、イソシアネート化合物およびヒドロキシ変性(メタ)アクリレートを反応させることによって製造することができる。
上述および後述において、「・・・(メタ)アクリレート」なる表現は、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」の両方の化合物を含む。
ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの合成に用いられるポリカーボネートジオールおよびイソシアネート化合物は、前述と同様の化合物が用いられる。
また、ヒドロキシ変性(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性組成物は、更に、重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーを含むことができる。
重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の単官能の重合性モノマー、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート等の2官能の重合性モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能の重合性モノマーが挙げられる。
重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性組成物には、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、メチルベンジルホルメートなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性組成物は、上記のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートに加えて、前述の光重合開始剤および有機ケイ素化合物(特にポリジメチルシロキサン系共重合体)を含有することが好ましく、更にポリジメチルシロキサン系共重合体の架橋剤(イソシアネート系架橋剤あるいはメラミン系架橋剤を)を含有することが好ましい。また更に、活性エネルギー線硬化性組成物は、前述の重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーを含有することが好ましい。
このように本発明では、活性エネルギー線硬化性組成物が、上記のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートに加えて、特にポリジメチルシロキサン系共重合体を含有することが好ましい。より好ましくは、活性エネルギー線硬化性組成物が、更にイソシアネート系架橋剤またはメラミン系架橋剤の少なくとも一方を含有することである。なお、ポリジメチルシロキサン系共重合体が活性エネルギー線硬化性ポリジメチルシロキサン系共重合体である場合は、それ自体が架橋性を有するので、上記の架橋剤(イソシアネート系架橋剤またはメラミン系架橋剤)は必ずしも含有する必要はない。
[自己修復性フィルム]
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体を構成する自己修復性フィルムは、基材フィルムに自己修復性樹脂層が積層されたものである。自己修復性樹脂層は、基材フィルムの片面のみに積層されていてもよいし、両面に積層されていてもよい。しかし、以下に説明するように、樹脂成形品に意匠性を付与するという観点から片面のみに積層されていることが好ましい。
自己修復性フィルムが適用される樹脂成形品は、意匠性(デザインやロゴ等を加飾)が付与されていることが好ましい。かかる意匠性の付与は、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層が積層された面の反対側の基材フィルムの面に加飾印刷を施す方法が好ましく用いられる。加飾印刷は、公知の印刷方法、例えばシルクスクリーン法、グラビア法、インクジェット法等の印刷方法により行うことができる。
加飾印刷が施された自己修復性フィルムは、成形加工時の樹脂成形品との密着性、あるいは樹脂板の溶融押出し成形時のラミネート加工性が悪化すること(溶融押出しされた樹脂板と自己修復性フィルムの加飾印刷面との密着性が低下すること)があるので、加飾印刷の上に更に接着剤あるいは熱溶融樹脂(例えばホットメルト樹脂)を貼り合わせるか、もしくはコーティングしておくことが好ましい。
[保護フィルム付き自己修復性積層体の適用例]
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体は、各種樹脂成形品を構成する樹脂板に予めラミネートされ、この保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板を成形加工することによって各種樹脂成形品を製造することが好ましい。但し、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板を樹脂成形品に成形加工するときには、保護フィルムは存在していてもよいし、剥離除去されていてもよい。
樹脂成形品としては、例えば、自動車の内装部材(例えば、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアトリムなど)、電子機器筺体(例えば、携帯型パーソナルコンピュータ、モバイル機器、携帯電話、電子手帳など)、家電(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)、および携行用収納容器(例えば、スーツケース、トランク、キャリーバッグなど)が挙げられる。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体は、特に、携行用収納容器の構成する樹脂板を溶融押し出しによって製造するときに適用されることが好ましい。
[携行用収納容器への適用例]
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムが剥離除去された後の自己修復性フィルムは、携行用収納容器の外表面に被覆されることが好ましい。このとき、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層が外側となるように被覆されることが好ましい。
図5は、本発明の保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムが剥離除去された後の自己修復性フィルムが被覆された携行用収納容器(スーツケース)の一例を示している。携行用収納容器30は、収納部31と蓋部32で構成されており(取手やキャスター等の図示は省略)、収納部31および蓋部32の外表面は、自己修復性フィルム10で被覆されている。自己修復性フィルム10は、基材フィルム11と自己修復性樹脂層12とを含み、自己修復性樹脂層12が外側となるように、収納部31および蓋部32の外表面に被覆されている。
以下、代表的な携行用収納容器であるスーツケースを例に挙げて詳細に説明する。
まず、スーツケースを構成する部材(収納部や蓋部)となる樹脂板が、溶融押出しにより製造される。この溶融押出しのときに、溶融押出成形機から溶融状態でシート状に押し出された樹脂シートと保護フィルム付き自己修復性積層体を一緒に一対のローラ間を通過させることによって、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネート(被覆)された樹脂板が製造される(図3を参照)。
樹脂板の材質としては、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)やポリカーボネート樹脂が一般的に用いられる。
保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板は、スーツケースの構成部材(収納部や蓋部)のサイズに合わせて切断された後、加熱され、この加熱された樹脂板を金型の上に載置させ、吸引(真空)、圧空もしくは吸引圧空して、樹脂板に金型の形状を賦型することによってスーツケースの構成部材(収納部や蓋部)が成形される。保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムは、上記成形工程において、少なくとも加熱する前には剥離しておくことが好ましい。
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体における保護フィルムは、前述したように、耐熱性が比較的高いことが好ましい。しかし、この耐熱性の比較的高い保護フィルムは加熱成形性に劣るため、上記の加熱成形工程において、加熱成形性の良好な自己修復性フィルムの成形性に保護フィルムが追従できず、両者間に歪が生じることがあるので、保護フィルムは少なくとも加熱する前に剥離除去することが好ましい。
ここで、加熱成形における加熱温度は、150℃以上が適当であるが、加工性を上げるという観点から、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。上限の温度は200℃程度である。
成形された収納部および蓋部と、他の部材とを組み立てることによってスーツケースが作製される。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例における測定方法および評価方法を以下に示す。
(1)自己修復性樹脂層の傷修復機能の判定
自己修復性フィルムを150mm×50mmのサイズに切り出して試験サンプルを作製した。学振型摩擦堅牢度試験器(テスター産業(株)製の「AB−301」)の移動台に、試験サンプルを樹脂層が上側となるように粘着テープで試験サンプルの両端を固定する。次に、試験サンプル上に真鍮ブラシ(トラスコ中山(株)製)を載せた状態で水平方向に移動しないように固定する。真鍮ブラシには更に500gの荷重を載せる。この状態で、移動台を水平に10回往復させて樹脂層に真鍮ブラシによる傷を付ける。試験条件は以下の通りである。
・移動台の移動速度;300mm/分
・移動台の移動距離;片道120mm
・測定環境;23℃、55%RH。
上記の試験前のヘイズ値(Hz0)、および試験後3分経過する直前のヘイズ値(Hz)、試験後30分経過する直前のヘイズ値(Hz)、試験後24時間経過する直前のヘイズ値(Hz)をそれぞれ測定した。次に、試験前のヘイズ値(Hz0)と、試験後それぞれの時間経過後に測定したそれぞれのヘイズ値との差(ΔHz1、ΔHz2およびΔHz3)を下記式2〜4により求め、以下の基準で判定した。ヘイズ値の単位はいずれも[%]である。
ΔHz1=(Hz)−(Hz0) ・・・式2
ΔHz2=(Hz)−(Hz0) ・・・式3
ΔHz3=(Hz)−(Hz0) ・・・式4
<傷修復機能の判定>
S;ΔHz1が0.30%未満である(優れた傷修復機能を有する)。
A;ΔHz1が0.30%以上、ΔHz2が0.30%未満である(良好な傷修復機能を有する)。
B;ΔHz2が0.30%以上、ΔHz3が0.30%未満である(傷修復機能を有する)。
C;ΔHz3が0.30%以上である(傷修復機能を有しない)。
<ヘイズ値の測定>
JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−2000」を用いて測定した。測定に際し、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層が設けられている側の表面に光が入射するように配置した。
(2)傷消失時間の測定
自己修復性フィルムを150mm×50mmのサイズに切り出し、裏面(自己修復性樹脂層が積層された面とは反対面)のほぼ全面に黒粘着テープを貼り付けて試験サンプルを作製した。
学振型摩擦堅牢度試験器(テスター産業(株)製の「AB−301」)の移動台に、試験サンプルを自己修復性樹脂層が上側となるように粘着テープで試験サンプルの両端を固定する。次に、試験サンプル上に真鍮ブラシ(トラスコ中山(株)製)を載せた状態で水平方向に移動しないように固定する。真鍮ブラシには更に500gの荷重を載せる。この状態で、移動台を水平に5回往復させて自己修復性樹脂層に真鍮ブラシによる傷を付け、その傷が消失する時間を測定した。傷が消失したかどうかは目視で評価した。測定は下記条件にて5回行い、平均し、以下の基準で評価した。
・移動台の移動速度;300mm/分
・移動台の移動距離;片道120mm
・測定環境;23℃、55%RH
<傷消失時間の評価基準>
S;傷消失時間が10秒未満である。
A;傷消失時間が10秒以上3分未満である。
B;傷消失時間が3分以上30分未満である。
C;傷消失時間が30分以上24時間未満である。
D;24時間以上経過しても傷が消失しない。
(3)自己修復性樹脂層の厚みの測定
自己修復性フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)で加速電圧100kVにて観察した。試料調整は超薄切片法もしくは凍結超薄切片法を用いた。5〜30万倍の倍率で観察して自己修復性樹脂層の厚みを測定した。
(4)保護フィルム外表面の中心線平均粗さRaの測定
JIS B0601−1982の方法に基づき、表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)を用いて測定した。尚、保護フィルムの外表面にビーズコート層が積層されている場合は、ビーズコート層表面の中心線平均粗さRaを測定した。各保護フィルムのサンプルについて、20cm×20cmサイズ1枚から任意の5箇所について計測し、その平均値を採用した。
<測定条件>
・送り速さ;0.5mm/S
・カットオフ値λc;
Raが0.10μm以下の場合、λ=0.25mm
Raが0.10μmより大きく2000nm以下の場合、λc=0.8mm
・評価長さ;8mm
測定に際し、先ず、カットオフ値(λc)0.25mmにて測定する。その結果、Raが0.10μm以下であればその値を採用し、Raが0.10μmを越える場合は、カットオフ値(λc)0.8mmで測定し、その測定結果を採用する。
(5)保護フィルムのビーズコート層に含有されるビーズの平均粒子径の測定
ビーズコート層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察(約1千〜1万倍)し、その断面写真から、無作為に選択した30個のビーズのそれぞれの最大長さを計測し、それらを平均した値をビーズの平均粒子径とした。
(6)保護フィルムのビーズコート層表面における突起の個数(突起密度)の計測
ビーズコート層の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)にてランダムに5箇所撮影(約1千〜1万倍)し、5つの画像(表面写真)を作製する。次に、5つの画像それぞれについて、画像の50μm平方(面積2500μm)の範囲に存在する突起の個数を計測し、平均した。
(7)ビーズコート層表面における突起の高さ(H)の測定
ビーズコート層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて5箇所撮影(約1千〜1万倍)し、5つの断面写真を作製する。次に、5つの断面写真に存在する全ての突起の高さを測定し、平均した。
(8)自己修復性樹脂層表面のクレーターの評価
図3に示すような溶融押出し成形装置を用いて、ポリカーボネート樹脂を220℃で溶融押出してポリカーボネート樹脂板を作製した。その際、溶融押出機から溶融状態で押出された樹脂シートと保護フィルム付き自己修復性積層体とを一緒に一対のローラ間に通すことにより、ポリカーボネート樹脂板に保護フィルム付き自己修復性積層体をラミネートした。
上記で得られた保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされたポリカーボネート樹脂板を、20cm×30cmのサイズのシートカットし、保護フィルムを剥離して自己修復性樹脂層にクレーターが発生しているかどうかを目視で観察し、自己修復性樹脂層表面の面積(20cm×30cm)当たりに存在するクレーター個数によって下記の基準で評価した。評価は、20cm×30cmのシート5枚を観察し、平均した。
S;クレーターの個数が0個である。
A;クレーターの個数が1〜5個である。
B;クレーターの個数が6〜10個である。
C;クレーターの個数が11〜99個である。
D;クレーターの個数が100個以上である。
なお、後述の実施例、比較例においてはCランクのものはなかった。
[実施例1]
下記の要領で保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<自己修復性フィルムの作製>
厚みが200μmのポリカーボネート樹脂フィルム(帝人化成(株)製の「パンライトフィルム」)の一方の面に、下記の活性エネルギー線硬化性組成物を厚み(乾燥硬化後の厚み)が20μmとなるようにスリットダイコータで塗布し、90℃で乾燥後、紫外線(400mJ/cm)を照射し硬化して自己修復性樹脂層を形成した。
<活性エネルギー線硬化性組成物>
下記のポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを固形分換算で83質量部、ジペンタエリストールヘキサアクリレート4質量部、下記のポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体を固形分換算で5質量部、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体;武田薬品工業(株)製「タケネートD−170N」)2質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)6質量部、トルエン10質量部を混合して調製した。
<ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの合成>
トルエン100質量部、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート(協和発酵工業(株)製「LDI」)50質量部およびポリカーボネートジオール((株)ダイセル製「プラクセルCD−210HL」、数平均分子量1,000)119質量部を混合し、40℃にまで昇温して8時間保持した。次に、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)製「ライトエステルHOA」)28質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を加えて70℃で30分間保持した後、ジブチル錫ラウレート0.02質量部を加えて80℃で6時間保持した。そして、最後にトルエン97質量部を加えて固形分濃度が50質量%となるように調製した。
<ポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサおよび窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部、メチルイソブチルケトン50質量部、ポリジメチルシロキサン系高分子重合開始剤(和光純薬(株)製「VPS−0501」)20質量部、メタクリル酸メチル30質量部、メタクリル酸ブチル26質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23質量部、メタクリル酸1質量部および1−チオグリセリン0.5質量部を仕込み、80℃で8時間反応させて、固形分濃度が50質量%のポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体を得た。
<保護フィルムの積層>
上記で作製した自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層の上に、保護フィルムとしてパナック(株)製の「パナプロテクト HPF25M」の粘着剤層の面を貼り合わせて、保護フィルム付き自己修復性積層体を得た。
<パナック(株)製の「パナプロテクト HPF25M」>
厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に粘着剤層を有し、他方の面にビーズコート層を有する。
[実施例2]
下記の保護フィルムに変更する以外は、実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<保護フィルムの作製>
厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製の「ルミラー」)の一方の面に、下記のビーズコート層を積層し、次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムのビーズコート層とは反対面に厚み0.5μmのアクリル系粘着剤層を積層し、45℃の条件下で48時間エージングして保護フィルムを作製した。
<ビーズコート層>
下記の塗料1を乾燥質量が5g/mとなるように、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で乾燥してビーズコート層を形成した。
<塗料>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「アクリディックA−187」)を固形分換算で80質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「コロネートHL」)を固形分換算で40質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「サイリシア740」平均粒子径5μm)6質量部を酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[実施例3]
ビーズコート層の塗料を下記塗料2に変更する以外は、実施例2と同様にして保護フィルムを作製し、この保護フィルムを用いること以外は実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<塗料2>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「アクリディックA−187」)を固形分換算で80質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「コロネートHL」)を固形分換算で40質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「サイリシア740」平均粒子径5μm)4質量部を酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[実施例4]
ビーズコート層の塗料を下記塗料3に変更する以外は、実施例2と同様にして保護フィルムを作製し、この保護フィルムを用いること以外は実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<塗料3>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「アクリディックA−187」)を固形分換算で80質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「コロネートHL」)を固形分換算で40質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「サイリシア740」平均粒子径5μm)3質量部を酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[実施例5]
ビーズコート層の塗料を下記塗料4に変更する以外は、実施例2と同様にして保護フィルムを作製し、この保護フィルムを用いること以外は実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<塗料4>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「アクリディックA−187」)を固形分換算で80質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「コロネートHL」)を固形分換算で40質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「サイリシア740」平均粒子径5μm)13質量部を酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[実施例6]
ビーズコート層の塗料を下記塗料5に変更する以外は、実施例2と同様にして保護フィルムを作製し、この保護フィルムを用いること以外は実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<塗料5>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「アクリディックA−187」)を固形分換算で80質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「コロネートHL」)を固形分換算で40質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「サイリシア740」平均粒子径5μm)20質量部を酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[比較例1]
ビーズコート層の塗料を下記塗料6に変更する以外は、実施例2と同様にして保護フィルムを作製し、この保護フィルムを用いること以外は実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
<塗料6>
アクリルバインダー(DIC(株)製の「アクリディックA−187」)を固形分換算で80質量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)の「コロネートHL」)を固形分換算で40質量部、ビーズ(富士シリシア化学(株)のシリカ粒子「サイリシア710」平均粒子径2.8μm)2質量部を酢酸エチルに溶解または分散して調製した。
[比較例2]
保護フィルムを、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面に粘着剤層を有する、パナック(株)製の「パナプロテクト HP25」に変更したこと以外は、実施例1と同様にして保護フィルム付き自己修復性積層体を作製した。
[評価]
上記の実施例および比較例で作製した保護フィルム付き自己修復性積層体について、保護フィルムの外表面(ビーズコート層が積層されている場合はビーズコート層表面)の中心線平均粗さRa、ビーズコート層表面における突起密度(50μm平方(2500μm)当たりの突起個数)、自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層の傷修復機能および傷消失時間、ならびに、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされたポリカーボネート樹脂板における自己修復性樹脂層表面のクレーターを評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2016179597
本発明に係る保護フィルム付き自己修復性積層体およびそれがラミネートされた樹脂板の製造方法は、自己修復性フィルムによる表面被覆が望まれるあらゆる分野の樹脂成形品に適用可能である。
1 保護フィルム付き自己修復性フィルム
2 溶融押出機
3a、3b 一対のローラ
4a 溶融押出機から押出された樹脂シート
4b 樹脂板
5 保護フィルム付き自己修復性フィルムがラミネートされた樹脂板
10 自己修復性フィルム
11 基材フィルム
12 自己修復性樹脂層
20 保護フィルム
21 基材(樹脂フィルム)
22 粘着剤層
23 外表面
24 ビーズコート層
24a ビーズ
24b バインダー被膜
30 スーツケース
31 スーツケースの収納部
32 スーツケースの蓋部

Claims (6)

  1. 基材フィルムおよび自己修復性樹脂層を含む自己修復性フィルムと、この自己修復性フィルムの自己修復性樹脂層の上に積層された保護フィルムと、を有し、
    前記保護フィルムの前記自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上であることを特徴とする、保護フィルム付き自己修復性積層体。
  2. 前記保護フィルムが、前記自己修復性樹脂層と向き合う面とは反対面にビーズコート層を有し、ビーズコート層表面の中心線平均粗さRaが0.07μm以上である、請求項1に記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
  3. 前記ビーズコート層表面にビーズによる突起を有し、ビーズコート層表面の50μm平方当たりの突起密度が2個以上である、請求項2に記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
  4. 前記基材フィルムがポリカーボネート樹脂フィルムである、請求項1〜3のいずれかに記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
  5. 前記自己修復性樹脂層が、ポリカーボネート骨格を有するウレタン樹脂を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の保護フィルム付き自己修復性積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の保護フィルム付き自己修復性積層体の保護フィルムとは反対面と樹脂板とが向き合うように、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法であって、
    溶融押出成形機から溶融状態でシート状に押出された樹脂シートと、保護フィルム付き自己修復性積層体とを、一緒に、一対のローラ間を通過させることを特徴とする、保護フィルム付き自己修復性積層体がラミネートされた樹脂板の製造方法。
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JP2019093976A (ja) * 2017-11-24 2019-06-20 川崎重工業株式会社 鞍乗型乗物及びその外観部品

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