JP2016176141A - 低温用鋼材およびその製造方法 - Google Patents

低温用鋼材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】7質量%以下の低Ni含有量で9%Ni鋼と同等の低温靭性を有するLNG貯蔵用タンク等の素材用の低温用鋼材の容易で安価な製造方法の提供。【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.10〜0.50%、Mn:3.0〜5.0%、P:0.010%以下、S:0.003%以下、Ni:4.5〜7.0%、Al:0.005〜0.10%、N:0.0015〜0.0040%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有し、焼戻マルテンサイト相及び焼戻ベイナイト相を主相、平均円相当径:1.0μm以下の残留オーステナイトを体積率で3.0%以上、板厚中心位置を中心に板厚方向で50%以上の領域で板面に平行な{211}面の集積度が1.2以上の集合組織を有し、隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれる領域の平均粒径が円相当径で5.0μm以下の組織を有する低温用鋼材の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、LNG貯蔵用タンク等の構造部材用として好適な、低温用鋼材およびその製造方法に関する。
近年、地球環境の保全に対する要求が強くなり、クリーンなエネルギー源として天然ガス(LNG)の需要が急増している。それに伴い、LNG貯蔵用タンクの建設が、国内外で積極的に推進され、タンク本体に使用される低温用鋼材の需要も増加している。
LNG貯蔵用タンクのタンク本体には、従来から、9%Ni鋼が広く使用されている。しかし、Niは高価な元素であり、Niを約9%も含む9%Ni鋼板をLNG貯蔵用タンクのタンク本体に適用することは、タンクの建設コストの高騰を招くことになる。このため、コスト削減という観点から、タンク本体に使用される低温用鋼材として、Ni含有量が9%未満でかつ9%Ni鋼と同等の特性を備えた低温用鋼材が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.005〜0.6%、Mn:0.3〜2%、Ni:6%超8%未満、Al:0.005〜0.05%、N:0.0005〜0.005%を含み、(20C+2.4Mn+Ni)が10以上を満足する組成の鋼片を、850〜1050℃に加熱し、700〜830℃の温度域で1パス当たり5%以上で累積圧下率25%以上の圧延を行い、700〜800℃の温度域で圧延を終了したのち、直ちに600℃までの冷却速度を10℃/s以上、200℃までの冷却速度を5℃/s以上で、200℃以下の温度域まで加速冷却を行い、あるいはさらに二相域熱処理を施し、650℃以下の温度で焼き戻す、低温用鋼材の製造方法が記載されている。これにより、面積比で1.7%以上の、平均で3.5以下のアスペクト比を有し、平均円相当粒径が1.0μm以下であるオーステナイトを含む組織を有し、低いNi含有量であっても、9%のNiを含む鋼材と同等以上の機械的性質を有する低温用鋼材が得られるとしている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01%以下、Mn:0.4〜2%、Ni:7.5〜9.5%、Al:0.002〜0.05%、N:0.0015〜0.004%を含む組成を有し、1400℃で5秒間保持する溶接ボンド部の熱サイクルを模した再現熱サイクルを施した後に、抽出残渣法で抽出した残渣中のFe含有量が0.02%以上となる、溶接熱影響部CTOD特性に優れた極低温用鋼が記載されている。なお、特許文献2に記載された技術では、(3Si+5Al+50N)を0.65以下とすることが、溶接継手部のToe部を含む溶接熱影響部のCTOD特性が優れるとしている。
また、特許文献3には、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.02〜0.40%、Mn:0.2〜1.0%、Ni:7.0〜10.5%、Al:0.01〜0.10%を含む組成の鋼片を、950〜1200℃に加熱し、850℃以下の累積圧下率が15〜75%で、最終圧延終了温度を鋼板表面温度で830〜650℃とした熱間圧延を行い鋼板としたのち、板厚中心部の冷却速度を3℃/s以上、冷却終了温度を300℃以下とする直接焼入れを行ない、500〜700℃の温度で焼戻して、鋼板表面から3mmの範囲では、表面に平行な面の{110}集合組織の集積度が1.2以上であり、板厚中心部では、表面に平行な面の{100}および{211}集合組織の集積度がそれぞれ1.2以上3.0以下である、強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた低温用Ni含有鋼を得るとしている。特許文献3に記載された技術では、所定の集合組織を発達させることにより、低温靭性および脆性亀裂伝播停止特性が向上するとしている。
また、特許文献4には、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.02〜0.30%、Mn:0.65〜1.20%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0015〜0.0045%、Ni:5.5〜8.0%を含む鋼素材を1000〜1200℃に加熱し、表面温度で950℃以下840℃超の温度域における累積圧下率を30%以上、表面温度で840℃以下の温度域における累積圧下率を30〜75%とし、圧延終了温度を表面温度で820〜700℃とする熱間圧延を施したのち、板厚中心位置での温度で少なくとも550〜300℃の温度域における平均冷却速度を1℃/s以上とし、冷却終了温度を表面温度で300℃以下とする冷却を施し、その後、焼戻し、残留オーステナイトが分散した焼戻マルテンサイトからなり、板厚1/4位置で体積率で2.2〜14%の残留オーステナイトと、板厚1/4位置で旧オーステナイト粒の平均粒径が10〜60μmで、アスペクト比が4.0以下で、鋼板表面から板厚方向に1mmの位置では、表面に平行な面の{110}面集積度が1.3以上、表面に平行な面の{100}面集積度が0.9以下であり、板厚中心位置では、表面に平行な面の{111}面集積度が1.2以上2.5以下である組織を有する低温用鋼板が得られるとしている。これにより、9%Ni鋼板と同等以上の強度と低温靭性とを有し、脆性亀裂伝播停止特性にも優れた低温用鋼板が得られるとしている。
国際公開第2007/034576号パンフレット 国際公開第2007/080645号パンフレット 特開2011−214099号公報 特許第5556948号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載された技術では、Ni含有量は約7質量%程度以上の含有を必要とするか、高価なMo等の合金元素を併用したとしても実質6質量%以上の含有を必須とし、依然として、製造コストが高くなるという問題が避けられない。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、5質量%程度のNi含有で、9質量%Ni含有の鋼材と同等の低温靭性を有する低温用鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。なお、本発明低温用鋼材は、LNG貯蔵用タンク等の低温用タンク本体の素材用として好適な、9%Ni鋼材と同等の強度を有する、JIS G 3127規格に規定される降伏強さYS:590MPa以上、引張強さTS:690〜830MPaの強度を有する低温用鋼材とする。また、ここでいう「鋼材」は、その形状を問わず、例えば鋼板、厚鋼板、形鋼、鋼管等を含むものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、低温靭性に及ぼす各種合金元素の影響を鋭意研究した。その結果、Niの一部をMnに置き換え、組織をマルテンサイト相およびベイナイト相を主体とし、さらに残留オーステナイト量を適正範囲に調整し、組織の微細化および集合組織の調整を、合わせ行うことにより、Ni含有量を7質量%よりさらに少ない5質量%程度のNi含有量としても、Ni含有量が9質量%の場合と同等の低温靭性を有する鋼材を得ることができることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、つぎの通りである。
(1)質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.10〜0.50%、Mn:3.0〜5.0%、P:0.010%以下、S:0.003%以下、Ni:4.5〜7.0%、Al:0.005〜0.10%、N:0.0015〜0.0040%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、焼戻マルテンサイト相および焼戻ベイナイト相を主相とし、平均円相当径:1.0μm以下の残留オーステナイトを体積率で3.0%以上含み、板厚中心位置を中心に板厚方向で50%以上の領域で板面に平行な{211}面の集積度が1.2以上である集合組織を有し、かつ隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれる領域の平均粒径が、円相当径で5.0μm以下である組織と、を有することを特徴とする低温用鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材。
(6)鋼素材に、熱間圧延と、それに引続く直接焼入れ処理および熱処理を施す低温用鋼材の製造方法であって、前記鋼素材が、質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.10〜0.50%、Mn:3.0〜5.0%、P:0.010%以下、S:0.003%以下、Ni:4.5〜7.0%、Al:0.005〜0.10%、N:0.0015〜0.0040%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記熱間圧延が、前記鋼素材を1000〜1200℃に加熱し、850〜950℃の温度域での累積圧下率を30%以上とし、圧延終了温度を750℃以上とする圧延であり、前記直接焼入れ処理が、冷却開始温度を750℃以上とし、600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s以上である冷却速度で、300℃以下の冷却停止温度域まで冷却する処理とし、該直接焼入れ処理に引続き前記熱処理として、600〜750℃の範囲の温度に再加熱し600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s以上である冷却速度で、300℃以下の冷却停止温度域まで冷却する二相温度域熱処理と、500〜650℃の範囲の温度に加熱し空冷する焼戻処理とを施すことを特徴とする低温用鋼材の製造方法。
(7)(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材の製造方法。
(8)(6)または(7)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材の製造方法。
(9)(6)ないし(8)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材の製造方法。
(10)(6)ないし(9)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする低温用鋼材の製造方法。
本発明によれば、7質量%よりさらに少ないNi含有で、Niを9質量%含有する場合と同等の低温靱性を有する低温用鋼材を、容易にしかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明低温用鋼板の組成限定理由について、説明する。以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.02〜0.10%
Cは、鋼の強度増加に寄与するとともに、残留オーステナイトの安定化を介して低温靱性の向上に有効に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える含有は、残留オーステナイト量増加による靭性向上の効果以上に、靱性を低下させる。このため、Cは0.02〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.04〜0.08%である。
Si:0.10〜0.50%
Siは、脱酸剤として有効に作用するとともに、セメンタイト析出を抑制しオーステナイト相の安定化に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、焼戻脆化感受性が高くなる。このため、Siは0.10〜0.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.15〜0.45%である。
Mn:3.0〜5.0%
Mnは、本発明では最も重要な元素であり、オーステナイト相を安定化し、低温靭性向上に有効な残留オーステナイト量を適正な範囲に増加させるために有効に寄与する。本発明では、Niの一部に代えてMnを含有させるが、上記したような効果を得るためには、Mnは3.0%以上の含有を必要とする。一方、5.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは3.0〜5.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは3.5〜4.5%である。
P:0.010%以下
Pは、不可避的不純物であり、粒界に偏析し、母材および溶接部の靱性を低下させる元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.010%以下であれば、その悪影響は許容できる。このようなことから、Pは0.010%以下に限定した。
S:0.003%以下
Sは、不可避的不純物で、鋼中ではMnS等の硫化物系介在物として存在し、破壊の発生起点として、延性、靭性に悪影響を及ぼす。このため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.003%以下であれば許容できる。このため、Sは0.003%以下に限定した。なお、好ましくは0.002%以下である。
Ni:4.5〜7.0%
Niは、固溶して鋼の強度増加に寄与するとともに、オーステナイト相を安定化し、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、含有量が多いほど顕著になるが、Niを多量に含有すると製造コストの高騰を招くため、7.0%以下に限定した。また、9%Ni鋼と同等の特性を有する鋼材とするためには、4.5%以上の含有を必要とする。このため、Niは4.5〜7.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは5.0%以上である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、Siと同様に、脱酸剤として作用する元素であり、また、セメンタイトの析出を抑制しオーステナイトの安定化にも寄与する。このような効果を得るためには0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超えて含有すると、窒化物、炭窒化物の生成を招き、靱性が低下する。このため、Alは0.005〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.015〜0.090%である。
N:0.0015〜0.0040%
Nは、オーステナイトの安定化に寄与する元素である。また、Nは窒化物として析出し、オーステナイト粒の微細化に効果を発揮する。このような効果を得るためには、0.0015%以上含有させる必要がある。一方、0.0040%を超えて含有すると、溶接熱影響部(HAZ)靭性の低下の原因となる。このため、Nは0.0015〜0.0040%の範囲に限定した。なお、好ましい下限は0.0020%、好ましい上限は0.0035%である。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では、基本の組成に加えてさらに、必要に応じて、Cu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Nb:0.05%以下、および/または、Ti:0.05%以下、および/または、Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、を選択して含有できる。
Cu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Cr、Mo、V、Bはいずれも、強度増加に寄与する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。
Cuは、焼入れ性の向上を介して強度増加に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、靱性を低下させる。このため、含有する場合には、Cuは0.5%以下に限定することが好ましい。
Crは、焼入れ性の向上を介して鋼の強度増加に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.2%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.5%以下に限定することが好ましい。
Moは、焼入れ性の向上を介して鋼の強度増加に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上含有することが望ましいが、0.5%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Moは0.5%以下に限定することが好ましい。
Vは、析出強化を介して鋼の強度増加に寄与する元素であり、このような効果を得るためには0.005%以上含有することが望ましいが、0.1%を超えて含有すると靭性が低下する。このため、含有する場合にはVは0.1%以下に限定することが好ましい。
Bは、微量添加により、焼入れ性を向上させる元素であり、焼入れ性の向上を介して鋼の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.0003%以上含有することが望ましいが、0.005%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このため、含有する場合には、Bは0.0003〜0.005%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0005〜0.0030%、さらに好ましくは0.0005〜0.0020%である。
Nb:0.05%以下
Nbは、熱間圧延での未再結晶温度域を拡大し、熱間圧延後の組織の微細化を介して、鋼材の高強度化と高靱化に大きく寄与する。このような効果を得るには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超える含有は、靱性を低下させる。このため、含有する場合には、Nbは0.05%以下に限定することが好ましい。
Ti:0.05%以下
Tiは、Nと結合しTiNを形成し、Nを固定し、BNの析出を抑制し、Bの焼入れ性向上効果を助長することを介して、鋼材の強度増加に寄与する。このような効果を得るためには、0.005%以上含有することが望ましいが、0.05%を超えて含有すると、TiCの析出を招き、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Tiは0.05%以下の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005〜0.050%、さらに好ましくは0.010〜0.020%である。
Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ca、REM、Mgはいずれも、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有し、延性、靭性の向上に寄与する元素であり、必要に応じて、1種または2種以上を選択して含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、REM:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、それぞれ含有することが望ましい。一方、Ca:0.0040%、REM:0.0080%、Mg:0.0050%をそれぞれ超える含有は、鋼の清浄度が低下し、延性、靭性が低下する。このため、含有する場合には、Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下、にそれぞれ限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
つぎに、本発明低温用鋼材の組織限定理由について説明する。
本発明低温用鋼材は、焼戻マルテンサイト相および焼戻ベイナイト相を主相とする。これにより、所望の強度を容易に保持することができる。なお、本発明低温用鋼材では、強度、低温靭性に悪影響を及ぼす軟質なフェライト相や、硬質で粗大なパーライトの生成を極力抑制した組織とする。
なお、ここでいう、「主相」とは、体積率で90%以上を占有する相をいう。
そして、本発明低温用鋼材では、主相である、焼戻マルテンサイト相、焼戻ベイナイト相はいずれも、ラス状を呈し、隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれる領域の平均粒径が、円相当径で5.0μm以下である組織を有する。隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれる領域の平均粒径が、5.0μmを超えて大きくなると、組織が粗大となり、低温靭性が低下する。なお、隣接する結晶粒の方位差は、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)法により得られた方位マップ図をもとに判定するものとする。
残留オーステナイト相:体積率で3.0%以上
本発明低温用鋼材では、上記した主相を基地相とし、その中に、残留オーステナイト相が微細分散した組織を呈する。残留オーステナイト相は、鋼板の低温靭性の向上に大きく寄与することから、Ni含有量を低く抑えた本発明鋼板では、十分な低温靭性の向上を図るため所定量以上の残留オーステナイト相を含む必要がある。本発明では、基地相中に微細分散する残留オーステナイト相は、体積率で3.0%以上とする。残留オーステナイト相が体積率で3.0%未満では、低温靭性の向上代が少なく、所望の優れた低温靭性を確保できない。このようなことから、残留オーステナイト相は、体積率で3.0%以上に限定した。なお、好ましくは3.5%以上、さらに好ましくは4.0%以上である。
また、残留オーステナイト相は体積率で、好ましくは10%以下とする。残留オーステナイト相が体積率で10%を超えて過度に多くなると、降伏強さの極端な低下を招き、また残留オーステナイト相の安定性が低下するため、かえって低温靭性が低下する。なお、この残留オーステナイト量は、少なくとも板厚1/4位置で測定した値とする。
残留オーステナイト相の平均径:円相当径で1.0μm以下
本発明低温用鋼材では、低温靭性向上のために、基地相中に、微細な残留オーステナイト相を分散させる。分散させる残留オーステナイト相の大きさは、円相当径で平均1.0μm以下とする。残留オーステナイト相が、円相当径で平均1.0μmを超えて大きくなると、安定性が低下し、所望の低温靭性を確保できなくなる。このため、残留オーステナイト相の平均径は円相当径で1.0μm以下に限定した。なお、残留オーステナイト相の大きさは、透過型電子顕微鏡を用いて、オーステナイト相であることを確認し、その粒の面積を測定し、得られた面積に相当する円の直径を算出し、円相当径とし、大きさを評価した。なお、100個以上の残留オーステナイト相について円相当径を測定し、それらの算術平均を当該鋼材の残留オーステナイト相の平均径とするものとする。
本発明低温用鋼材では、低Ni系で、9%Niと同等の優れた低温靭性を確保するために、上記した基地相中に、上記した大きさ、分率の残留オーステナイト相を微細に分散させることに加えて、さらに、板厚中心位置を中心に板厚方向で50%以上の領域における板面に平行に、所定の結晶面が集積した組織を有するように調整する。
板厚中心位置を中心に板厚方向で50%以上の領域における板面に平行な{211}面の集積度:1.2以上
板厚中心位置を中心に板厚方向で50%以上の領域において、板面に平行に{211}面を集積させることにより、低温靭性が向上する。このような効果を得るためには、板面に平行な{211}面の集積度は1.2以上とする必要がある。板面に平行な{211}面の集積度が1.2未満では、低温靭性の改善効果が少ない。一方、{211}面の集積度が3.0を超えて過度に集積すると、かえって低温靭性に悪影響を及ぼす。なお、好ましくは3.0以下である。なお、より好ましくは2.0〜2.5である。
なお、{hkl}面の集積度とは、ランダム組織の標準試料の{hkl}面からの回折X線強度Iに対する被検試料の{hkl}面からの回折X線強度Iの相対強度比I/Iで表す値である。
つぎに、本発明低温用鋼板の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、上記した組成を有する鋼素材に、熱間圧延と、それに引続く直接焼入れ処理および熱処理と、を施し、低温用鋼材とする。
なお、鋼素材の製造方法はとくに、限定する必要はなく、常用の転炉、電気炉、さらには取鍋精錬等をもちいて、上記した組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法を用いて鋳造し、スラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
得られた鋼素材は、ついで加熱炉に装入され、加熱温度:1000〜1200℃の範囲の温度に加熱される。
加熱温度:1000〜1200℃
加熱温度が1000℃未満では、鋳造段階で析出した粗大なAlNが固溶せず、低温靭性が低下する。一方、加熱温度が1200℃を超えて高温に加熱されると、オーステナイト粒が粗大化し低温靭性が低下する。このようなことから、加熱温度は1000〜1200℃の範囲の温度に限定した。
加熱された鋼素材は、ついで熱間圧延を施される。
熱間圧延は、850〜950℃の温度域での累積圧下率を30%以上とし、圧延終了温度が750℃以上である圧延とする。
850〜950℃の温度域での累積圧下率:30%以上
本発明では、熱間圧延によりオーステナイト粒の微細化と適度な偏平化を図る。その後の直接焼入れ処理により、加工オーステナイトからマルテンサイト変態、ベイナイト変態させることにより、隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれる領域が小さい、微細なマルテンサイト相およびベイナイト相を得ることができる。このためには、850〜950℃の温度域での累積圧下率を30%以上とする必要がある。なお、微細なマルテンサイト相および微細なベイナイト相の形成に伴い、それら相の間に残留するオーステナイト相も微細化する。850〜950℃の温度域での累積圧下率が30%未満では、上記したオーステナイト粒の微細化と偏平化が不足し、微細なマルテンサイト相およびベイナイト相を得ることができなくなる。なお、累積圧下率が75%を超えて多くなると、集合組織の集積度が過度に大きくなる。そのため、850〜950℃の温度域での累積圧下率は75%以下とすることが好ましい。なお、850〜950℃の温度域は、鋼材の表面温度とする。
圧延終了温度:750℃以上
熱間圧延の圧延終了温度は、750℃以上とする。圧延終了温度が750℃未満となると、圧延中、あるいは圧延終了後にフェライト相が析出し、強度の低下や、靭性の低下が生じ、所望の強度、低温靭性を確保することが難しくなる。このようなことから、熱間圧延の圧延終了温度は、750℃以上に限定した。なお、圧延終了温度は、鋼材の表面温度とする。
熱間圧延終了後、それに引続き、冷却処理(直接焼入れ処理)および熱処理、を施す。
冷却処理(直接焼入れ処理)は、冷却開始温度を表面温度で750℃以上とし、板厚中心位置での温度で600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s以上である冷却速度で、300℃以下の冷却停止温度域まで冷却する処理とする。
冷却開始温度:750℃以上
直接焼入れ処理の冷却開始温度が750℃未満では、強度、低温靭性に悪影響を及ぼすフェライト相が析出しやすくなり、所望の強度、低温靭性を確保できなくなる。このため、直接焼入れ処理の冷却開始温度は750℃以上に限定した。
600〜300℃の温度域での平均冷却速度:1.0℃/s以上
直接焼入れ処理における600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s未満では、組織をマルテンサイトおよびベイナイトとすることができなくなり、所望の強度、低温靭性を確保できなくなる。このため、直接焼入れ処理における600〜300℃の温度域での平均冷却速度は1.0℃/s以上に限定した。なお、好ましくは3℃/s以上である。平均冷却速度の上限はとくに限定する必要はないが、実現可能な冷却速度である25℃/sとすることが好ましい。
冷却停止温度:300℃以下
上記した冷却を300℃を超える温度で停止すると、十分なマルテンサイト量を形成できず、所望の強度を確保できなくなる。このため、直接焼入れ処理の冷却停止温度は300℃以下に限定した。なお、好ましくは200℃以下である。なお、冷却停止温度は、鋼材の板厚中心位置での温度とする。
冷却処理(直接焼入れ処理)を施したのち、さらに熱処理を施す。熱処理は、二相温度域熱処理および焼戻処理とする。
二相温度域熱処理は、600〜750℃の範囲の温度に再加熱し600〜300℃の温度域での平均冷却速度で1℃/s以上である冷却速度で、300℃以下の冷却停止温度域まで冷却する処理とする。
再加熱温度:600〜750℃
再加熱温度は、二相温度域である600〜750℃の範囲の温度とする。なお、上記した温度は、鋼材の板厚中心位置での温度とする。
上記した冷却処理(直接焼入れ処理)を施したのち、(α+γ)二相温度域である600〜750℃に再加熱したのち、冷却(焼入れ)する。再加熱温度が750℃を超える高温では、マルテンサイトやベイナイトが粗大化し、大傾角粒界で囲まれる領域の平均粒径が円相当径で5.0μmを超えるため、低温靭性が低下する。なお、再加熱温度は、好ましくは650〜750℃である。これにより、マルテンサイトやベイナイトが微細化されるとともに、焼き戻され、さらに合金元素の再分配が生じる。その結果、合金元素がマルテンサイト、ベイナイトに濃縮されるとともに、あらたに残留オーステナイト相も形成される。この残留オーステナイト相は、再加熱後に施される所定条件の冷却により、平均粒径が円相当径で1.0μm以下の、より安定性の高い残留オーステナイト相として微細に分散させることができる。
600〜300℃の温度域での平均冷却速度:1.0℃/s以上
上記した二相温度域に再加熱されたのち、600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s以上の冷却速度で冷却される。600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s未満では、オーステナイトの一部がマルテンサイト変態、ベイナイト変態せず、強度の低下をもたらす。このため、二相温度域熱処理における600〜300℃の温度域での平均冷却速度は1.0℃/s以上に限定した。なお、好ましくは3℃/s以上である。平均冷却速度の上限はとくに限定する必要はないが、実現可能な冷却速度である25℃/sとすることが好ましい。なお、上記した温度は、鋼材の板厚中心位置での温度とする。
冷却停止温度:300℃以下
上記した冷却を300℃を超える温度で停止すると、残留するオーステナイトがマルテンサイトやベイナイトへ変態し、残留オーステナイト量が減少する。このため、二相温度域熱処理の冷却停止温度は300℃以下に限定した。なお、好ましくは200℃以下である。なお、上記した温度は、鋼材の板厚中心位置での温度とする。
二相温度域熱処理を施されたのち、さらに650〜500℃の温度で焼戻処理を施される。
焼戻温度:650〜500℃
焼戻処理により、マルテンサイト、ベイナイトを焼き戻し、焼戻マルテンサイト、焼戻ベイナイトとすることができる。これにより、低温靭性が向上する。焼戻温度が500℃未満では、焼戻効果が不十分であり、一方、650℃を超えると、焼戻が過度に進行し、鋼材強度の低下を招く恐れがある。このため、焼戻温度は650〜500℃の温度に限定した。なお、好ましくは600〜550℃である。また、焼戻後の冷却は、とくに限定する必要はない。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製したのち、鋳型に鋳造し150キロ鋼塊とし、鋼素材とした。得られた鋼素材(鋼塊)を加熱炉に装入し、表2に示す条件で熱間圧延を施し、板厚25mmの厚鋼板とした。熱間圧延終了後、直ちに、表2に示す冷却開始温度から、表2に示す条件で冷却処理(直接焼入れ処理)を施した。
冷却処理(直接焼入れ処理)を施された厚鋼板には、ついで、表2に示す条件で二相温度域熱処理および焼戻処理を施した。
得られた厚鋼板から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、衝撃試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から、組織観察用試験片を採取し、板厚1/4位置が観察位置となるように、圧延方向断面を研磨、腐食して、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて観察し各5視野以上で撮像した。得られた組織写真について、画像解析を用いて、組織の同定および組織分率(面積率)を求めた。なお、面積率で、90%以上を占有する相を主相とした。なお、得られた面積率を体積率に換算した。
得られた厚鋼板の板厚1/4位置からX線回折用試験片を採取し、研削および化学研磨して、研磨後の表面が板厚1/4位置となるように調整した。その後、X線回折法で、α−Feの(200)、(211)面、γ−Feの(200)、(220)、(311)面の回折強度を求め、周知の下記式を用いて残留オーステナイト量Vγ(体積分率)を求めた。
Vγ(%)=100/(1+RγIα/RαIγ)
(ここで、Iα:α−Feの積分強度、Iγ:γ−Feの積分強度、Rα:α−Feの結晶学的理論計算値、Rγ:γ−Feの結晶学的理論計算値)
また、得られた厚鋼板の板厚1/4位置から薄膜用試料を採取し、機械研磨、電解研磨、化学研磨を行なって、透過型電子顕微鏡観察用薄膜とし、透過型電子顕微鏡(倍率:10000倍)を用いて、組織を観察し、電子線回折で残留オーステナイトと確認しながら、各5視野で撮像し、画像解析装置により100個以上の残留オーステナイトについてその面積を求め、該面積から円相当径を算出し、それらを算術平均して、当該鋼材の残留オーステナイトの平均円相当粒径とした。
また、得られた厚鋼板の板厚1/4位置からEBSD解析用試験片を採取し、EBSD解析を実施し、フェライト方位マップ図を求めた。得られたデータから、粒界を挟む2つの結晶粒の方位差が15°以上の大傾角粒界を抽出し、それらの大傾角粒界で囲まれる領域の面積をもとめ、該面積から円相当径を求め、算術平均し、当該鋼材の隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大傾角粒界で囲まれる領域の平均円相当径とした。
また、得られた厚鋼板の板厚1/4位置、および板厚中心位置から板面に平行に、集合組織測定用試験材を採取し、研削、機械研磨し、腐食して表面の加工組織を除去し、集合組織測定用試験片とした。得られた試験片を用い、インバース法により板面に平行なα−Feの{211}面からの回折強度を求め、ランダム組織標準試験片を基準として、{211}面集積度を求めた。
(2)引張試験
得られた鋼板の板厚1/4位置から、引張方向が圧延方向と垂直な方向となるように、JIS Z 2241(2011)の規定に準拠して、JIS 5号試験片を採取し、引張試験を実施して、引張特性(引張強さTS、降伏強さYS)を求めた。
(3)衝撃試験
得られた鋼板の板厚1/4位置から、試験片長手方向が圧延方向と垂直な方向となるように、JIS Z 2242(2005)の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、試験温度:−196℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーvE−196(J)を求めた。なお、試験片本数は3本とし、得られた吸収エネルギー値の算術平均を、当該鋼材の−196℃における吸収エネルギー値とし、母材靱性を評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2016176141
Figure 2016176141
Figure 2016176141
本発明例はいずれも、所望の強度と、試験温度:−196℃での吸収エネルギーvE−196が200J以上と、9%Ni鋼と同等の低温靭性を有する鋼板となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、低温靭性が低下している。

Claims (10)

  1. 質量%で、
    C :0.02〜0.10%、 Si:0.10〜0.50%、
    Mn:3.0〜5.0%、 P :0.010%以下、
    S :0.003%以下、 Ni:4.5〜7.0%、
    Al:0.005〜0.10%、 N :0.0015〜0.0040%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
    焼戻マルテンサイト相および焼戻ベイナイト相を主相とし、平均円相当径:1.0μm以下の残留オーステナイトを体積率で3.0%以上含み、板厚中心位置を中心に板厚方向で50%以上の領域で板面に平行な{211}面の集積度が1.2以上である集合組織を有し、かつ隣接する結晶粒の方位差が15°以上の大角粒界で囲まれる領域の平均粒径が、円相当径で5.0μm以下である組織と、を有することを特徴とする低温用鋼材。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載の低温用鋼材。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の低温用鋼材。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の低温用鋼材。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の低温用鋼材。
  6. 鋼素材に、熱間圧延と、それに引続く直接焼入れ処理および熱処理を施す低温用鋼材の製造方法であって、
    前記鋼素材が、
    質量%で、
    C :0.02〜0.10%、 Si:0.10〜0.50%、
    Mn:3.0〜5.0%、 P :0.010%以下、
    S :0.003%以下、 Ni:4.5〜7.0%、
    Al:0.005〜0.10%、 N :0.0015〜0.0040%
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記熱間圧延が、前記鋼素材を1000〜1200℃に加熱し、850〜950℃の温度域での累積圧下率を30%以上とし、圧延終了温度を750℃以上とする圧延であり、
    前記直接焼入れ処理が、冷却開始温度を750℃以上とし、600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s以上である冷却速度で、300℃以下の冷却停止温度域まで冷却する処理とし、
    該直接焼入れ処理に引続き前記熱処理として、600〜750℃の範囲の温度に再加熱し600〜300℃の温度域での平均冷却速度が1.0℃/s以上である冷却速度で、300℃以下の冷却停止温度域まで冷却する二相温度域熱処理と、
    500〜650℃の範囲の温度に加熱し空冷する焼戻処理とを施すことを特徴とする低温用鋼材の製造方法。
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、B:0.005%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項6に記載の低温用鋼材の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Nb:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項6または7に記載の低温用鋼材の製造方法。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.05%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の低温用鋼材の製造方法。
  10. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0040%以下、REM:0.0080%以下、Mg:0.0050%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の低温用鋼材の製造方法。
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