JP2016175722A - 印刷装置、ウェブのテンション制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転軸の回転開始直後におけるウェブのテンション制御を安定して行うことを可能とする。【解決手段】回転軸と、回転軸にトルクを与えるモーターと、回転軸に保持されるウェブのテンションを検出する検出部と、検出部の検出値と目標テンションとの偏差を積分した積分値から求めたトルクをモーターに出力させる積分制御を実行することでウェブのテンションを目標テンションにフィードバック制御する制御部とを備え、制御部は、積分制御での積分値を所定値にリセットしてから回転軸の回転を開始する。【選択図】図3
Description
この発明は、モーターから回転軸に与えるトルクを制御することで回転軸に保持されるウェブのテンションを制御する技術に関する。
特許文献1には、記録紙をロール状に巻いたロール体をロールモーターで駆動する印刷装置が記載されている。この印刷装置は、ロール体から引き出された記録紙のテンションを検出した結果に基づいてロールモーターが出力するトルクを制御することで、記録紙のテンションに対してフィードバック制御を実行する。
このようなフィードバック制御では、ウェブ(記録紙)を保持する回転軸にモーターが与えるトルクに対して積分制御を実行することで、ウェブのテンションの定常偏差を小さく抑えられる。具体的には、積分制御は、ウェブのテンションの検出値と目標テンションとの偏差を積分した積分値に基づきモーターが出力するトルクを制御する。
ただし、かかる積分制御を行うことで、回転軸の回転開始直後においてウェブのテンションが不安定になるおそれがあった。つまり、ウェブのテンションの検出値が目標テンションから外れた状態で回転軸が停止していると、偏差の積分値が回転軸の停止中に時間経過とともに変化する。したがって、いずれのタイミングで回転軸の回転を開始するかによって、偏差の積分値がばらつく。そのため、積分値の大きさによっては、回転軸の回転開始直後のウェブのテンションが不安定になるおそれがあった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明にかかる印刷装置は、回転軸と、回転軸にトルクを与えるモーターと、回転軸に保持されるウェブのテンションを検出する検出部と、検出部の検出値と目標テンションとの偏差を積分した積分値から求めたトルクをモーターに出力させる積分制御を実行することでウェブのテンションを目標テンションにフィードバック制御する制御部とを備え、制御部は、積分制御での積分値を所定値にリセットしてから回転軸の回転を開始する。
本発明にかかるウェブのテンション制御方法は、回転軸に保持されるウェブのテンションを検出した検出値と目標テンションとの偏差を積分した積分値から求めたトルクを回転軸に接続されたモーターに出力させる積分制御を実行することで、ウェブのテンションを目標テンションにフィードバック制御する工程を備え、積分制御における積分値を所定値にリセットしてから回転軸の回転を開始する。
このように構成された本発明(印刷装置、ウェブのテンション制御方法)では、回転軸の回転を開始する前に積分制御の積分値が所定値にリセットされる。したがって、回転軸の回転開始のタイミングによらず、積分制御の積分値が所定値である状態から回転軸の回転を開始でき、回転軸の回転開始直後におけるウェブのテンション制御を安定して行うことができる。
ここで、所定値は例えばゼロとすることができる。この場合、回転軸の回転開始直後において、積分制御が働くことによりウェブのテンションが不安定になることを確実に抑止できる。
なお、所定値の具体例はこれに限られず、種々考えられる。そこで、所定値は、ウェブのテンションが目標テンションに収束した場合のトルクをモーターに出力させる値であっても良い。あるいは、所定値は回転軸が停止していた期間における積分値の時間平均以下であっても良いし、回転軸が停止していた期間における積分値の最大値の半分以下であっても良い。
ところで、回転軸の回転を開始するにあたっては、回転開始直後のウェブのテンション制御を安定して行うことが重要であるとともに、回転軸の回転を速やかに開始できることも重要となる。しかしながら、回転軸の回転を開始させようとモーターからトルクを出力しても、停止中の回転軸に働く静止摩擦力のために回転軸の回転が速やかに開始しない場合があった。特に、積分制御の積分値を所定値にリセットしてから回転軸の回転を開始する構成では、当該所定値が小さいために、回転軸の回転開始時に回転軸に働くトルクが小さくなることが想定される。したがって、当該所定値の大きさに拘わらず、回転軸の回転を速やかに開始できることが好適となる。
そこで、回転軸は、所定方向へ回転することでウェブを巻き取り、制御部は、ウェブに所定テンションを付与するトルクをモーターから回転軸に与えるフィードフォワード制御によりウェブのテンションを制御するテンション制御部と、回転軸の回転数に応じた大きさのトルクをモーターから回転軸に与えるフィードフォワード制御により回転軸の回転を制御する回転制御部とを有し、回転制御部は、回転軸の回転の停止中は、回転軸を回転させない範囲でゼロより大きい所定方向への所定トルクをモーターから回転軸に与えるフィードフォワード制御を実行するように、印刷装置を構成しても良い。
かかる構成では、回転軸の回転の停止中は、回転軸を回転させない範囲でゼロより大きい所定方向への所定トルクがモーターから回転軸に与えられる。したがって、当該所定トルクが静止摩擦力に抗して回転軸に作用するため、所定方向への回転軸の回転を速やかに開始することができる。
また、モーターは、ダイレクトドライブ方式で回転軸を駆動するように、印刷装置を構成しても良い。かかる構成では、モーターと回転軸との間におけるギヤボックス等の間接的機構によりモーターの出力トルクが消費されることがない。そのため、モーターの出力トルクを回転軸に確実に伝えることができ、ウェブのテンションを的確に制御することができる。
上述した本発明の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本発明の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本発明の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本発明の独立した一形態とすることも可能である。
図1は、本発明を適用したプリンターの装置構成の一例を模式的示す正面図である。図1に示すように、プリンター1では、その両端が繰出軸20および巻取軸40にロール状に巻き付けられた1枚のウェブSが搬送経路に沿って張架されており、ウェブSは、繰出軸20から巻取軸40へ向かう搬送方向Dsへ搬送されつつ、印刷を受ける。ウェブSの種類は、紙系とフィルム系に大別される。具体例を挙げると、紙系には上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙等があり、フィルム系には合成紙、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)等がある。概略的には、プリンター1は、繰出軸20からウェブSを繰り出す繰出部2(繰出領域)と、繰出部2から繰り出されたウェブSに画像を記録するプロセス部3(プロセス領域)と、プロセス部3で画像の記録されたウェブSを巻取軸40に巻き取る巻取部4(巻取領域)を備える。なお、以下の説明では、ウェブSの両面のうち、画像が記録される面を表面と称する一方、その逆側の面を裏面と称する。
繰出部2は、ウェブSの端を巻き付けた繰出軸20と、繰出軸20から引き出されたウェブSを巻き掛ける従動ローラー21とを有する。繰出軸20は、ウェブSの表面を外側に向けた状態で、ウェブSの端を巻き付けて支持する。そして、繰出軸20が図1の時計回りに回転することで、繰出軸20に巻き付けられたウェブSが従動ローラー21を経由してプロセス部3へと繰り出される。ちなみに、ウェブSは、繰出軸20に着脱可能な芯管22を介して繰出軸20に巻き付けられている。したがって、繰出軸20のウェブSが使い切られた際には、ロール状のウェブSが巻き付けられた新たな芯管22を繰出軸20に装着して、繰出軸20のウェブSを取り換えることが可能となっている。さらに、繰出部2には、繰出軸20にロール状に巻かれたウェブSのロール半径を検出するロール半径センサーS20が設けられている。
プロセス部3は、繰出部2から繰り出されたウェブSを回転ドラム30で支持しつつ、回転ドラム30の外周面に沿って配置された各機能部51、52、61、62、63により処理を適宜行って、ウェブSに画像を記録するものである。このプロセス部3では、回転ドラム30の両側に前駆動ローラー31と後駆動ローラー32とが設けられており、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32へと搬送方向Dsに向けて搬送されるウェブSが回転ドラム30に支持されて、印刷を受ける。
前駆動ローラー31は、溶射によって形成された複数の微小突起を外周面に有しており、繰出部2から繰り出されたウェブSを裏面側から巻き掛ける。そして、前駆動ローラー31は図1の時計回りに回転することで、繰出部2から繰り出されたウェブSを搬送方向Dsの下流側へと搬送する。なお、前駆動ローラー31に対してはニップローラー31nが設けられている。このニップローラー31nは、前駆動ローラー31側へ付勢された状態でウェブSの表面に当接しており、前駆動ローラー31との間でウェブSを挟み込む。これによって、前駆動ローラー31とウェブSの間の摩擦力が確保され、前駆動ローラー31によるウェブSの搬送を確実に行なうことができる。
回転ドラム30は図示を省略する支持機構により搬送方向Dsおよびその逆方向の両方向に回転可能に支持された、例えば400[mm]の直径を有する円筒形状のドラムであり、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32へと搬送されるウェブSを裏面側から巻き掛ける。この回転ドラム30は、ウェブSとの間の摩擦力を受けてウェブSの搬送方向Dsに従動回転しつつ、ウェブSを裏面側から支持するものである。ちなみに、プロセス部3では、回転ドラム30への巻き掛け部の両側でウェブSを折り返す従動ローラー33、34が設けられている。これらのうち従動ローラー33は、前駆動ローラー31と回転ドラム30の間でウェブSの表面を巻き掛けて、ウェブSを折り返す。一方、従動ローラー34は、回転ドラム30と後駆動ローラー32の間でウェブSの表面を巻き掛けて、ウェブSを折り返す。このように、回転ドラム30に対して搬送方向Dsの上・下流側それぞれでウェブSを折り返すことで、回転ドラム30へのウェブSの巻き掛け部を長く確保することができる。
後駆動ローラー32は、溶射によって形成された複数の微小突起を外周面に有しており、回転ドラム30から従動ローラー34を経由して搬送されてきたウェブSを裏面側から巻き掛ける。そして、後駆動ローラー32は図1の時計回りに回転することで、ウェブSを巻取部4へと搬送する。なお、後駆動ローラー32に対してはニップローラー32nが設けられている。このニップローラー32nは、後駆動ローラー32側へ付勢された状態でウェブSの表面に当接しており、後駆動ローラー32との間にウェブSを挟み込む。これによって、後駆動ローラー32とウェブSの間の摩擦力が確保され、後駆動ローラー32によるウェブSの搬送を確実に行なうことができる。
このように、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32へと搬送されるウェブSは、回転ドラム30の外周面に支持される。そして、プロセス部3では、回転ドラム30に支持されるウェブSの表面に対してカラー画像を記録するために、互いに異なる色に対応した複数の記録ヘッド51が設けられている。具体的には、イエロー、シアン、マゼンタおよびブラックに対応する4個の記録ヘッド51が、この色順で搬送方向Dsに並ぶ。各記録ヘッド51は、回転ドラム30に巻き掛けられたウェブSの表面に対して若干のクリアランスを空けて対向しており、対応する色のインク(有色インク)をノズルからインクジェット方式で吐出する。そして、搬送方向Dsへ搬送されるウェブSに対して各記録ヘッド51がインクを吐出することで、ウェブSの表面にカラー画像が形成される。
ちなみに、インクとしては、紫外線(光)を照射することで硬化するUV(ultraviolet)インク(光硬化性インク)が用いられる。そこで、プロセス部3では、インクを硬化させてウェブSに定着させるために、UV照射器61、62(光照射部)が設けられている。なお、このインク硬化は、仮硬化と本硬化の二段階に分けて実行される。複数の記録ヘッド51の各間には、仮硬化用のUV照射器61が配置されている。つまり、UV照射器61は弱い照射強度の紫外線を照射することで、インクの濡れ広がり方が紫外線を照射しない場合に比べて十分に遅くなる程度にインクを硬化(仮硬化)させるものであり、インクを本硬化させるものではない。一方、複数の記録ヘッド51に対して搬送方向Dsの下流側には、本硬化用のUV照射器62が設けられている。つまり、UV照射器62は、UV照射器61より強い照射強度の紫外線を照射することで、インクの濡れ広がりが停止する程度に硬化(本硬化)させるものである。
このように、複数の記録ヘッド51の各間に配置されたUV照射器61が、搬送方向Dsの上流側の記録ヘッド51からウェブSに吐出された有色インクを仮硬化させる。したがって、一の記録ヘッド51がウェブSに吐出したインクは、搬送方向Dsの下流側で一の記録ヘッド51に隣り合う記録ヘッド51に到るまでに仮硬化される。これによって、異なる色の有色インクが混ざり合うといった混色の発生が抑制される。こうして混色が抑制された状態で、複数の記録ヘッド51は互いに異なる色の有色インクを吐出して、ウェブSにカラー画像を形成する。さらに、複数の記録ヘッド51より搬送方向Dsの下流側では、本硬化用のUV照射器62が設けられている。そのため、複数の記録ヘッド51により形成されたカラー画像は、UV照射器62により本硬化されてウェブSに定着する。
さらに、UV照射器62に対して搬送方向Dsの下流側には、記録ヘッド52が設けられている。この記録ヘッド52は、回転ドラム30に巻き掛けられたウェブSの表面に対して若干のクリアランスを空けて対向しており、透明のUVインクをノズルからインクジェット方式でウェブSの表面に吐出する。つまり、4色分の記録ヘッド51によって形成されたカラー画像に対して、透明インクがさらに吐出される。この透明インクは、カラー画像の全面に吐出されて、光沢感あるいはマット感といった質感をカラー画像に与える。また、記録ヘッド52に対して搬送方向Dsの下流側には、UV照射器63が設けられている。このUV照射器63は強い紫外線を照射することで、記録ヘッド52が吐出した透明インクを本硬化させるものである。これによって、透明インクをウェブS表面に定着させることができる。
このように、プロセス部3では、回転ドラム30の外周部に巻き掛けられるウェブSに対して、インクの吐出および硬化が適宜実行されて、透明インクでコーティングされたカラー画像が形成される。そして、このカラー画像の形成されたウェブSが、後駆動ローラー32によって巻取部4へと搬送される。
巻取部4は、ウェブSの端を巻き付けた巻取軸40の他に、巻取軸40と後駆動ローラー32の間でウェブSを裏面側から巻き掛ける従動ローラー41を有する。巻取軸40は、ウェブSの表面を外側に向けた状態で、ウェブSの端を巻き取って支持する。つまり、巻取軸40が図1の時計回りに回転すると、後駆動ローラー32から搬送されてきたウェブSが従動ローラー41を経由して巻取軸40に巻き取られる。ちなみに、ウェブSは、巻取軸40に着脱可能な芯管42を介して巻取軸40に巻き取られる。したがって、巻取軸40に巻き取られたウェブSが満杯になった際には、芯管42ごとウェブSを取り外すことが可能となっている。さらに、巻取部4には、巻取軸40にロール状に巻かれたウェブSのロール半径を検出するロール半径センサーS40が設けられている。
以上がプリンター1の装置構成の概要である。続いて、プリンター1を制御する電気的構成について説明を行なう。図2は、図1に示すプリンターを制御する電気的構成を模式的に示すブロック図である。プリンター1では、プリンター1の各部を制御するプリンター制御部100が設けられている。そして、記録ヘッド、UV照射器およびウェブ搬送系の装置各部はプリンター制御部100によって制御される。これら装置各部に対するプリンター制御部100の制御の詳細は次のとおりである。
プリンター制御部100は、カラー画像を形成する各記録ヘッド51のインク吐出タイミングを、ウェブSの搬送に応じて制御する。具体的には、このインク吐出タイミングの制御は、回転ドラム30の回転軸に取り付けられて、回転ドラム30の回転位置を検出するドラムエンコーダーE30の出力(検出値)に基づいて実行される。つまり、回転ドラム30はウェブSの搬送に伴って従動回転するため、回転ドラム30の回転位置を検出するドラムエンコーダーE30の出力を参照すれば、ウェブSの搬送位置を把握することができる。そこで、プリンター制御部100は、ドラムエンコーダーE30の出力からpts(print timing signal)信号を生成し、このpts信号に基づいて各記録ヘッド51のインク吐出タイミングを制御することで、各記録ヘッド51が吐出したインクを搬送されるウェブSの目標位置に着弾させて、カラー画像を形成する。
また、記録ヘッド52が透明インクを吐出するタイミングも、同様にドラムエンコーダーE30の出力に基づいてプリンター制御部100により制御される。これによって、複数の記録ヘッド51によって形成されたカラー画像に対して、透明インクを的確に吐出することができる。さらに、UV照射器61、62、63の点灯・消灯のタイミングや照射光量もプリンター制御部100によって制御される。
また、プリンター制御部100は、図1を用いて詳述したウェブSの搬送を制御する機能を司る。つまり、ウェブ搬送系を構成する部材のうち、繰出軸20、前駆動ローラー31、後駆動ローラー32および巻取軸40それぞれにはモーターが接続されている。そして、プリンター制御部100はこれらのモーターを回転させつつ、各モーターの速度やトルクを制御して、ウェブSの搬送を制御する。このウェブSの搬送制御の詳細は次のとおりである。
プリンター制御部100は、繰出軸20をダイレクトドライブ方式で駆動する繰出モーターM20を回転させて、繰出軸20から前駆動ローラー31にウェブSを供給する。この際、プリンター制御部100は、繰出モーターM20のトルクを制御して、繰出軸20から前駆動ローラー31までのウェブSのテンション(繰出テンションTa)を調整する。つまり、繰出軸20と前駆動ローラー31の間に配置された従動ローラー21には、繰出テンションTaの大きさを検出するテンションセンサーS21が取り付けられている。このテンションセンサーS21は、例えばウェブSから受ける力の大きさを検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部100は、テンションセンサーS21の検出結果(検出値)に基づいて、繰出モーターM20のトルクをフィードバック制御して、ウェブSの繰出テンションTaを調整する。
また、プリンター制御部100は、前駆動ローラー31を駆動する前駆動モーターM31と、後駆動ローラー32を駆動する後駆動モーターM32とを回転させる。これによって、繰出部2から繰り出されたウェブSがプロセス部3を通過する。この際、前駆動モーターM31に対しては速度制御が実行される一方、後駆動モーターM32に対してはトルク制御が実行される。つまり、プリンター制御部100は、前駆動モーターM31のエンコーダーE31の出力に基づいて、前駆動モーターM31の回転速度をフィードバック制御する。これによって、ウェブSは、前駆動ローラー31によって略目標速度で搬送される。
一方、プリンター制御部100は、後駆動モーターM32のトルクを制御して、前駆動ローラー31から後駆動ローラー32までのウェブSのテンション(プロセステンションTb)を調整する。つまり、回転ドラム30と後駆動ローラー32の間に配置された従動ローラー34には、プロセステンションTbの大きさを検出するテンションセンサーS34が取り付けられている。このテンションセンサーS34は、例えばウェブSから受ける力の大きさを検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部100は、テンションセンサーS34の検出結果(検出値)に基づいて、後駆動モーターM32のトルクをフィードバック制御して、ウェブSのプロセステンションTbを調整する。
また、プリンター制御部100は、巻取軸40をダイレクトドライブ方式で駆動する巻取モーターM40を回転させて、後駆動ローラー32が搬送するウェブSを巻取軸40に巻き取る。この際、プリンター制御部100は、巻取モーターM40のトルクを制御して、後駆動ローラー32から巻取軸40までのウェブSのテンション(巻取テンションTc)を調整する。つまり、後駆動ローラー32と巻取軸40の間に配置された従動ローラー41には、巻取テンションTcの大きさを検出するテンションセンサーS41が取り付けられている。このテンションセンサーS41は、例えばウェブSから受ける力の大きさを検出するロードセルによって構成することができる。そして、プリンター制御部100は、テンションセンサーS41の検出結果(検出値)に基づいて、巻取モーターM40のトルクをフィードバック制御して、ウェブSの巻取テンションTcを調整する。ちなみに、プリンター制御部100は、巻取軸40に支持されるウェブSのロール半径の増大に応じて巻取テンションTcを減少させるテーパーテンションを実行するために、ロール半径センサーS40の検出値に応じて巻取テンションTcの目標値を変更しつつ、巻取テンションTcを制御する。
このように、ウェブSの各テンションTa、Tb、Tcに対しては、対応する領域(繰出領域、プロセス領域、巻取領域)でウェブSのテンションをセンサーS21、S34、S41により検出した検出値に基づくフィードバック制御が実行される。特に本実施形態のフィードバック制御では、積分制御が実行される。続いては、この点について説明する。
図3は、ウェブのテンションに対するフィードバック制御を実行する構成の一例を示すブロック図である。同図において、プリンター制御部100に含まれる構成は、破線で囲った。フィードバック制御はテンションTa、Tb、Tcそれぞれについて独立して実行されるが、フィードバック制御を実行する構成は各テンションTa、Tb、Tcで共通する。そこで、図3では、テンションTa、Tb、Tcのいずれに対する構成かは区別をせずに、包括的な符号でフィードバック制御を実行する構成を示す。つまり、例えば繰出テンションTaに対するフィードバック制御では、検出値TdはテンションセンサーS21の検出値となり、目標テンションTtは繰出テンションTaの目標テンションとなり、モーターMは繰出モーターM20となる。巻取テンションTcおよび巻取テンションTcについても同様である。
プリンター制御部100では、目標テンションTtから検出値Tdを減算した偏差Δが求められ(Δ=Tt−Td)、PID制御部110が偏差Δに基づくPID制御を実行する。PID制御部110は、積分回路111により偏差Δを積分した積分値に積分ゲインKiを乗じる積分演算と、微分回路112により偏差Δを微分した微分値に微分ゲインKdを乗じる微分演算と、偏差Δに比例ゲインKpを乗じる比例演算とを実行する。そして、各演算結果の加算値をトルク指令値QとしてモーターMに入力し、モーターMはトルク指令値Qに応じた大きさのトルクを出力する。プリンター制御部100は、こうした積分制御、微分制御および比例制御を実行して、ウェブSのテンションを目標テンションTtに収束させるフィードバック制御を実行する。かかるフィードバック制御は、ウェブSの搬送の実行中および停止中のいずれにおいても継続的に実行される。
さらに、プリンター制御部100は、ウェブSの搬送を開始する否かを判定する搬送開始判定部120と、搬送開始判定部120の判定結果に基づき積分回路111の積分値をゼロにリセットする偏差リセット部130とを有する。そして、搬送開始判定部120がウェブSの搬送を開始すると判定すると、プリンター制御部100は、偏差リセット部130により積分回路111の積分値をリセットしてから、ウェブSの搬送を開始する。
図4は、積分制御の積分値をリセットする効果を模式的に示す図である。同図の左側の欄では積分値のリセットを行わなかった場合が示され、同図の右側の欄では積分値のリセットを行った場合が示される。また、各欄において、上段のグラフはウェブSの搬送速度の時間変化を示し、中段のグラフはウェブSのテンションの時間変化を示し、下段のグラフはトルク指令値Qの時間的変化を示す。なお、これらのグラフは、積分制御の積分値をリセットする効果を説明するために概念的に表したものであり、実際の波形は必ずしも図4の通りとはならない。
図4に示す例では、ウェブSの搬送方向Dsの搬送が時刻tsに開始される。「リセットなし」および「リセットあり」のいずれの場合も、時刻tsより前のウェブSの搬送停止期間は、ウェブSのテンションが目標テンションTtからずれている。なお、搬送停止期間もフィードバック制御は働いているが、ウェブSの搬送を停止させるためにモーターMの回転を停止しているため、モーターMのトルクを伝えてウェブSのテンションを調整することが十分にできず、偏差Δは解消されずに残留し続ける。その結果、時刻tsまでの搬送停止期間の間、PID制御部110の積分回路111による偏差Δの積分値が増大を続け、トルク指令値Qも増大を続ける。
「リセットなし」の欄に示すように、このように積分値が蓄積された状態から時刻tsにウェブSの搬送を開始すると、PID制御部110は、蓄積された大きな積分値に応じてウェブSのテンションを大きく変化させようと動作する。その結果、時刻ts以後のウェブSのテンションが不安定になる場合があった。これに対して、「リセットあり」の欄に示すように、時刻tsの直前(例えば、100ms前)に積分値をゼロにリセットしてから時刻tsにウェブSの搬送を開始すると、積分回路111の積分値を小さく抑えることができ、時刻ts以後のウェブSのテンション変動を小さく抑えることができる。
すなわち、本実施形態では、繰出軸20、後駆動ローラー32あるいは巻取軸40といった回転軸20、32、40の回転を開始する前に積分制御の積分値が所定値(ゼロ)にリセットされる。したがって、回転軸20、32、40の回転開始のタイミングによらず、積分制御の積分値が所定値である状態から回転軸20、32、40の回転を開始でき、回転軸20、32、40の回転開始直後におけるウェブSのテンション制御を安定して行うことができる。
特に、積分値をゼロにリセットしている。したがって、積分値のリセット直後は実質的に積分制御が効いておらず、その後の回転軸の回転開始直後において、積分制御が働くことによりウェブのテンションが不安定になることを確実に抑止可能となっている。
また、繰出モーターM20および巻取モーターM40は、ダイレクトドライブ方式で回転軸20、40を駆動する。かかる構成では、モーターMと回転軸20、40との間におけるギヤボックス等の間接的機構によりモーターMの出力トルクが消費されることがない。そのため、モーターMの出力トルクを回転軸20、40に確実に伝えることができ、ウェブSのテンションを的確に制御することができる。
ところで、回転軸20、32、40の回転を開始するにあたっては、回転開始直後のウェブSのテンション制御を安定して行うことが重要であるとともに、回転軸20、32、40の回転を速やかに開始できることも重要となる。しかしながら、回転軸20、32、40の回転を開始させようとモーターMからトルクを出力しても、停止中の回転軸20、32、40に働く静止摩擦力のために回転軸20、32、40の回転が速やかに開始しない場合がある。特に、積分制御の積分値を所定値にリセットしてから回転軸20、32、40の回転を開始する構成では、積分値のリセット値(所定値)が小さいために、回転軸20、32、40の回転開始時に回転軸20、32、40に働くトルクが小さくなることが想定される。したがって、積分値のリセット値の大きさに拘わらず、回転軸20、32、40の回転を速やかに開始できることが好適となる。
特に、搬送方向Dsに搬送されるウェブSを巻き取る巻取軸40においては、巻取軸40の回転の開始が速やかでないと、後駆動ローラー32から搬送されるウェブSを巻取軸40により速やかに巻き取ることができず、巻取テンションTcが緩んでしまう。したがって、巻取軸40については、回転を速やかに開始できることが極めて好適となる。続いては、回転軸20、32、40の回転の速やかな開始を可能とする技術を巻取軸40に適用した例について説明する。
図5は、巻取テンションの制御を例示するブロック図である。同図において、プリンター制御部100に内蔵される構成は、破線内に示されている。プリンター制御部100は、FB制御量に基づきフィードバック制御を行うFB(Feed Back)系と、FF制御量に基づきフィードフォワード制御を行うFF(Feed Forward)系とを有する。FB系の基本的な構成は、図3を用いて上述した構成と同様であるので、相当符号を付して説明を適宜省略する。
ちなみに、図5のブロック図では、上述したテーパーテンションを実現する構成の詳細が記載されている。当該構成は、巻取テンションTcの目標値、すなわち目標テンションTtをロール半径センサーS40の検出値Rcの増大に応じて減少させる。具体的には、プリンター制御部100は、ロール半径Rcに対する巻取テンションTcの変化率を示すテーパー率401と、巻取テンションTcの基準値である基準巻取テンション402とを内蔵メモリーに記憶する。そして、ロール半径センサーS40の検出値Rcに応じたテーパー率401を基準巻取テンション402に乗ずることで、目標テンションTtを算出する。
FF系では、ロール半径、ウェブSの搬送速度(の推定値)およびウェブ搬送系のイナーシャのそれぞれに基づく各項(3項)を加算することで、FF制御量(トルク指令値)が求められる。1項目としては、ウェブSに目標テンションTtを与えるためのテンション付与トルクが求められる。具体的には、巻取軸40に支持されるウェブSのロール半径Rcと目標テンションTtとを乗じたトルク(Rc×Tt)がテンション付与トルクとして求められる。
2項目としては、ウェブSの搬送速度から求められる巻取軸40の回転数(回転速度)に基づいて、巻取軸40を所望の回転数で回転させるために必要な回転トルクが求められる。具体的には、搬送速度推定回路441により、ウェブSの搬送速度Vsが推定される。この際、ウェブSの搬送速度は、例えばドラムエンコーダーE30の検出値から求めても良いし、予め取得したウェブSの加減速パターンを参照しつつウェブSの搬送開始からの経過時間から求めても良い。並行して、ロール半径Rcに2πを乗じた値(2π×Rc)が求められる(図中「442」)。そして、搬送速度Vsを2π×Rcで除して巻取軸40の回転数(Vs/(2π×Rc))が求められ、後述する図6の関係を用いて、回転トルク算出回路443が回転数に応じた回転トルクを求める。
3項目としては、プリンター制御部100の内蔵メモリーに記憶されるイナーシャ444(巻取軸40を回転させる際のイナーシャ)に、微分回路445が回転数を微分した値を乗じたトルクが求められる。そして、各項のトルクを加算したFF制御量(操作量)が示すトルクを巻取モーターM40から巻取軸40に与えるフィードフォワード制御が実行される。
図6は、回転トルク算出回路が回転トルクを算出する際に用いる関係の一例を示す図である。同図のグラフでは、巻取軸40の回転数を横軸とし、巻取軸40に与えるトルク(回転トルク)を縦軸とするグラフにおいて回転数とトルクとの関係が示されている。
ちなみに、プリンター1では、搬送方向Dsおよび搬送方向Dsの逆方向の双方向へウェブSを搬送することができる。そして、巻取軸40は、搬送方向DsにウェブSを搬送する際は搬送方向Dsに回転してウェブSを巻き取り、搬送方向Dsの逆方向にウェブSを搬送する際は当該逆方向に回転してウェブSを繰り出す。かかる構成では、搬送方向Dsに巻取軸40を回転させてウェブSを巻き取る動作と、搬送方向Dsの逆方向に回転軸を回転させてウェブSを繰り出す動作とを選択的に実行できる。したがって、例えばウェブSの交換や、中断していたウェブSへの印刷の再開等の際に、ウェブSの搬送位置を調整するといったことが実行できる。
そこで、図6のグラフでは、巻取軸40の回転数を示す横軸は、搬送方向Dsへの巻取軸40の回転方向(すなわち、搬送方向Dsへ搬送されるウェブSを巻き取る巻取軸40の回転方向)を正方向(すなわち、矢印方向)とし、搬送方向Dsの逆方向への巻取軸40の回転方向(すなわち、搬送方向Dsの逆方向へ搬送されるウェブSを繰り出す巻取軸40の回転方向)を負方向とする。また、巻取軸40に与えるトルクを示す縦軸は、搬送方向Dsを正方向(すなわち、矢印方向)とし、搬送方向Dsの逆方向を負方向とする。
なお、図6を用いた説明において、巻取軸40の回転数の増減は、巻取軸40の実際の回転方向を基準とする。つまり、巻取軸40が搬送方向Dsへ回転する間は、回転数の増減とは搬送方向Dsへの回転数の増減を示し、巻取軸40が搬送方向Dsの逆方向へ回転する間は、回転数の増減とは搬送方向Dsの逆方向への回転数の増減を示すものとする。また、巻取軸40に与えるトルクの増減は、トルクの実際の印加方向を基準とする。つまり、搬送方向Dsへトルクを与える間は、トルクの増減とは搬送方向Dsへのトルクの増減を示し、搬送方向Dsの逆方向へトルクを与える間は、トルクの増減とは搬送方向Dsの逆方向へのトルクの増減を示す。要するに、回転数およびトルクの増減は、それぞれの絶対値の増減で表す。
同図では、実線と破線とが併記されている。これらのうち、実線は、回転トルク算出回路443が巻取モーターM40から巻取軸40に与えるトルクと回転数との関係を示す。一方、破線は、横軸に示す回転数で巻取軸40を等速で回転させるために必要となる回転トルクと回転数との関係を示す。回転数がNa〜Nbの範囲では、実線および破線のそれぞれが示すトルクと回転数の関係は異なる一方、それ以外の範囲では、実線および破線のそれぞれが示すトルクと回転数の関係は一致する。
同図の実線に示すように、巻取軸40の回転数がゼロ、すなわち巻取軸40の回転が停止している際には、回転トルク算出回路443は、搬送方向Dsへ向かうゼロより大きいオフセットトルクQo(>0)を巻取モーターM40から巻取軸40に与える。このオフセットトルクQoは、巻取軸40を搬送方向Dsに回転させない範囲の大きさに設定されており、予め実験的に求められてプリンター制御部100の内蔵メモリーに記憶されている。
ちなみに、巻取軸40の回転の停止時には、テンション制御系によるテンション付与トルクが巻取モーターM40から巻取軸40に与えられる。つまり、巻取軸40には、テンション付与トルクとオフセットトルクQoとが重畳して与えられることとなる。そこで、オフセットトルクQoは、次式、
0<Qo<Qs−Qtx
を満たすように設定される。
0<Qo<Qs−Qtx
を満たすように設定される。
ここで、トルクQsは、静止する巻取軸40に与えるトルクを搬送方向Dsに増加させていった場合において、巻取軸40が静止摩擦力に抗して搬送方向Dsへ回転し始める直前のトルクであり、実験により求めることができる。また、トルクQtxは、プリンター制御部100のテンション制御系が巻取モーターM40から巻取軸40に与えるテンション付与トルクの最大値、換言すれば、ウェブSの端を巻取軸40に巻き取り始める際に巻取モーターM40から巻取軸40に与える搬送方向Dsへのテンション付与トルクである。具体的には、(Qs−Qtx)の90%、80%、70%、60%あるいは50%以上にオフセットトルクQoを設定することができる。
搬送方向Dsへの巻取軸40の回転数がゼロから増加するのに応じて、回転トルク算出回路443は巻取モーターM40から巻取軸40に与える搬送方向DsへのトルクをオフセットトルクQoから増加させる。これによって、巻取軸40の回転数がゼロからNb(>0)までの範囲では、回転トルク算出回路443は、回転トルク(図6の破線)よりも大きいトルクを、巻取モーターM40から巻取軸40に与える。一方、巻取軸40の回転数がNb以上の範囲では、回転トルク算出回路443は、回転トルクに等しいトルクを、巻取モーターM40から巻取軸40に与える。
このような構成では、搬送方向Dsへの巻取軸40の回転数がゼロからNbにまで上昇するまでの期間は、実線と破線との差に相当するトルクがウェブSにテンションを与えることとなり、回転トルク算出回路443は、巻取軸40を回転させる機能のみならず、ウェブSにテンションを与える機能も果たす。そのため、巻取軸40の回転開始の際にウェブSのテンションが緩むのを抑止するにあたって有利となる。また、搬送方向Dsへの巻取軸40の回転数がNb以上となれば、回転トルク算出回路443は、巻取軸40を回転させるのに必要な回転トルクのみを、巻取モーターM40から巻取軸40に与える。そして、印刷時にウェブSを定速搬送する際の印刷時回転数Np(>Nb)まで巻取軸40の回転数が増加するのに応じて、回転トルク算出回路443は、巻取モーターM40から巻取軸40に与えるトルクを増加させる。
一方、搬送方向Dsとは逆方向へ巻取軸40の回転数がゼロからNcに増加するのに応じて、回転トルク算出回路443は、巻取モーターM40に出力させる搬送方向DsへのトルクをオフセットトルクQoからゼロにまで減少させる。続いて、搬送方向Dsとは逆方向へ巻取軸40の回転数がNcから増加するのに応じて、回転トルク算出回路443は、巻取モーターM40に出力させる搬送方向Dsとは逆方向へのトルクをゼロから増加させる。
このように、図5および図6に示す構成では、巻取軸40の回転の停止中は、巻取軸40を回転させない範囲でゼロより大きい搬送方向DsへのオフセットトルクQo(所定トルク)が巻取モーターM40から巻取軸40に与えられる。したがって、当該オフセットトルクQoが静止摩擦力に抗して巻取軸40に作用するため、搬送方向Dsへの巻取軸40の回転を速やかに開始することができる。
また、回転トルク算出回路443は、搬送方向Dsへの巻取軸40の回転数がゼロから増加するのに応じて、巻取モーターM40に出力させる搬送方向DsへのトルクをオフセットトルクQoから増加させる。これによって、搬送方向Dsへの高速搬送を、相応のトルクを巻取軸40に与えて実行できる。
また、回転トルク算出回路443は、搬送方向Dsの逆方向への巻取軸40の回転数がゼロからNc(所定回転数)に増加するのに応じて、巻取モーターM40に出力させる搬送方向DsへのトルクをオフセットトルクQoからゼロまで減少させる。つまり、搬送方向Dsの逆方向へウェブSを搬送する際は、巻取軸40は当該逆方向へ回転してウェブSを繰り出すこととなる。このようにウェブSを繰り出す際には、ウェブSの巻ほぐれが生じないように巻取軸40を制御することが好ましい。そこで、搬送方向Dsの逆方向への巻取軸40の回転を開始した際には、搬送方向Dsへのトルクを巻取モーターM40から巻取軸40に出力することで、ウェブSの巻きほぐれの発生を抑止すると良い。
また、回転トルク算出回路443は、搬送方向Dsの逆方向への巻取軸40の回転数がNcから増加するのに応じて、巻取モーターM40に出力させる当該逆方向へのトルクをゼロから増加させる。これによって、搬送方向Dsの逆方向への高速搬送を、相応のトルクを巻取軸40に与えて実行できる。
以上のように、上記実施形態では、プリンター1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、繰出軸20、後駆動ローラー32あるいは巻取軸40が本発明の「回転軸」の一例に相当し、テンションセンサーS21、S34あるいはS41が本発明の「検出部」の一例に相当し、プリンター制御部100が本発明の「制御部」「テンション制御部」あるいは「回転制御部」の一例に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、積分回路111の積分値をリセットする値(所定値)は、上述のゼロに限られず、種々変更可能である。そこで、ウェブSのテンションが目標テンションTtに収束した場合のトルク(=目標テンションTt×ロール径)をモーターMに出力させる値や、回転軸20、34、40が停止していた期間における積分値の時間平均以下の値、あるいは回転軸20、34、40が停止していた期間における積分値の最大値の半分以下の値に、積分回路111の積分値をリセットしても良い。もしくは、回転軸20、34、40の回転の開始後にウェブSのテンションが安定する結果が実験で得られた値に、積分回路111の積分値をリセットしても良い。
また、上記実施形態では、フィードバック制御において、積分制御、微分制御および比例制御が実行されていた。しかしながら、微分制御あるいは比例制御を適宜省略しても構わない。
また、上記実施形態では、積分制御の積分値をウェブSの搬送開始前にリセットする制御を、テンションTa、Tb、Tcのそれぞれに対して実行していた。しかしながら、これらテンションTa、Tb、Tcのうちの一部に対してのみ、例えば巻取テンションTcに対してのみ当該制御を実行しても良い。
また、積分回路111の積分値をリセットしてからウェブSの搬送を開始するまでの時間についても、0秒より長い範囲で適宜変更が可能である。例えば、積分値のリセットから100ms、200ms、300ms、400msあるいは500ms以内にウェブSの搬送を開始するように構成できる。
また、搬送されるウェブSを支持する部材についても、上記回転ドラム30のような円筒形状のものに限られない。したがって、ウェブSを平面で支持するフラット型のプラテンを用いることも可能である。
1…プリンター、20…繰出軸、32…後駆動ローラー、40…巻取軸、100…プリンター制御部、S21、S34、S41…テンションセンサー
Claims (8)
- 回転軸と、
前記回転軸にトルクを与えるモーターと、
前記回転軸に保持されるウェブのテンションを検出する検出部と、
前記検出部の検出値と目標テンションとの偏差を積分した積分値から求めたトルクを前記モーターに出力させる積分制御を実行することでウェブのテンションを前記目標テンションにフィードバック制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、積分制御での積分値を所定値にリセットしてから前記回転軸の回転を開始する印刷装置。 - 前記所定値は、ゼロである請求項1に記載の印刷装置。
- 前記所定値は、ウェブのテンションが目標テンションに収束した場合のトルクを前記モーターに出力させる値である請求項1に記載の印刷装置。
- 前記所定値は、前記回転軸が停止していた期間における積分値の時間平均以下である請求項1に記載の印刷装置。
- 前記所定値は、前記回転軸が停止していた期間における積分値の最大値の半分以下である請求項1に記載の印刷装置。
- 前記回転軸は、所定方向へ回転することでウェブを巻き取り、
前記制御部は、
前記ウェブに所定テンションを付与するトルクを前記モーターから前記回転軸に与えるフィードフォワード制御により前記ウェブのテンションを制御するテンション制御部と、
前記回転軸の回転数に応じた大きさのトルクを前記モーターから前記回転軸に与えるフィードフォワード制御により前記回転軸の回転を制御する回転制御部と
を有し、
前記回転制御部は、前記回転軸の回転の停止中は、前記回転軸を回転させない範囲でゼロより大きい前記所定方向への所定トルクを前記モーターから前記回転軸に与えるフィードフォワード制御を実行する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の印刷装置。 - 前記モーターは、ダイレクトドライブ方式で前記回転軸を駆動する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の印刷装置。
- 回転軸に保持されるウェブのテンションを検出した検出値と目標テンションとの偏差を積分した積分値から求めたトルクを回転軸に接続されたモーターに出力させる積分制御を実行することで、ウェブのテンションを前記目標テンションにフィードバック制御する工程を備え、
積分制御における積分値を所定値にリセットしてから前記回転軸の回転を開始するウェブのテンション制御方法。
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