JP2016172886A - 板ガラス保持具及び板ガラスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具について、板ガラスを取り外す際、及び取り付ける際に、保持具を構成する各部への接触を可及的に抑制できる構造を提供し、高精度な膜の成膜を可能とすること。【解決手段】カルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具1について、板ガラス3を収容する収容空間6aが形成され、収容空間6aに収容された板ガラス3の外周端部を囲う枠体部6と、膜5の成膜時に旋回中の板ガラス3における上辺部3bと下辺部3cとをそれぞれ表面3a側から支持する一対の支持部7,8と、枠体部6の内周側に配置され、膜5の成膜時に旋回中の板ガラス3を裏面3d側から押しつつ一対の支持部7,8と共に板ガラス3を厚み方向に挟持するための挟持位置へと移動し、且つ、非成膜時に挟持位置から離間した退避位置へと移動可能なスライド部9とを有する構成とした。【選択図】図1

Description

本発明は、板ガラスに成膜を行うカルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具、及び、この板ガラス保持具を備えたカルーセル型スパッタリング装置によって板ガラスに膜を成膜する板ガラスの製造方法に関する。
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、及びエレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや、色素増感型太陽電池、電磁調理器等の電気・電子機器に組み込まれる板ガラスの表面には、透明導電膜、反射防止膜等の膜が必要に応じて成膜される。
このように板ガラスに成膜を行うための手法の一つとしては、スパッタリング法を挙げることができる。そして、下記の特許文献1には、スパッタリング法を利用して板ガラス(同文献では被成膜部材)に成膜を行うカルーセル型スパッタリング装置、及び、同装置用の板ガラス保持具(同文献ではホルダ)が開示されている。
上記のカルーセル型スパッタリング装置は、チャンバー内を円軌道に沿って旋回する縦置き姿勢に保持された板ガラスに向けて、円軌道の外側に配置されたターゲットから膜材料(ターゲットを構成する原子)を飛散させ、円軌道の外側に面した板ガラスの表面(被成膜面)に膜材料を堆積させて膜を成膜するように構成されている。
そして、同装置用の板ガラス保持具は、板ガラスが挿入される開口部と、この開口部の内壁から内側に向かって突出し、且つ、開口部に挿入された板ガラスに表面側から当接するフランジ部との両部を有した取付部を備えている。また、同保持具は、遠心力によって旋回中の板ガラスを裏面側から押圧し、当該板ガラスをフランジ部に押し付ける押さえ部材を備えている。
特開2013−32574号公報
ところで、上記の板ガラス保持具には以下のような問題が生じている。
すなわち、この板ガラス保持具では、その構造上、成膜後の板ガラスを当該保持具から取り外す作業、及び、未成膜の板ガラスを保持具に取り付ける作業の実行時に、作業者が保持具を構成する各部に触れることなく板ガラスを取り外したり、取り付けたりすることが極めて困難である。そして、各部には板ガラスへの膜の成膜時にターゲットから飛散した膜材料の一部が付着していることが常である。
そのため、上記作業の実行時に作業者が各部に触れることにより、これら各部に付着した膜材料が飛散し、この膜材料が新たに保持具に取り付けられる板ガラスの表面に異物として付着してしまう場合がある。このような事態が発生すると、膜を精度よく板ガラスに成膜できないばかりか、当該板ガラスに何らかの外力が作用した際に、成膜された膜が剥がれるような致命的な問題が発生してしまう。
上記の事情に鑑みなされた本発明は、カルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具について、板ガラスを取り外す際、及び取り付ける際に、保持具を構成する各部への接触を可及的に抑制できる構造を提供し、高精度な膜の成膜を可能とすることを技術的な課題とする。
上記の課題を解決するために創案された本発明は、チャンバー内を円軌道に沿って旋回する縦置き姿勢に保持された板ガラスに向けて、円軌道の外側に配置されたターゲットから膜材料を飛散させ、円軌道の外側に面した板ガラスの表面に膜を成膜するように構成されたカルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具であって、板ガラスを収容する収容空間が形成され、収容空間に収容された板ガラスの外周端部を囲う枠体部と、膜の成膜時に旋回中の板ガラスにおける上部と下部とをそれぞれ表面側から支持する一対の支持部と、枠体部の内周側に配置され、膜の成膜時に旋回中の板ガラスを裏面側から円軌道の外側に向かって押しつつ一対の支持部と共に板ガラスを厚み方向に挟持するための挟持位置へと移動し、且つ、非成膜時に挟持位置から円軌道の内側に向かって離間した退避位置へと移動可能なスライド部とを有することに特徴付けられる。
このような構成によれば、膜の成膜時における板ガラスは、枠体部に形成された収容空間に収容され、その外周端部が当該枠体部によって囲われた状態となると共に、挟持位置へと移動したスライド部と、一対の支持部とによって厚み方向に挟持された状態となる。従って、成膜時における板ガラスは、板ガラス保持具によって安定した状態で保持されることになる。一方、成膜後の板ガラスは、依然として枠体部によって外周端部が囲われた状態下にあるが、スライド部を退避位置へ移動させることで、当該スライド部と、一対の支持部とによる挟持が解除された状態となる。そのため、成膜後の板ガラスは、縦置き姿勢から傾斜した傾斜姿勢をとることが可能な状態にある。そして、成膜後の板ガラスに傾斜姿勢をとらせれば、この板ガラスは一対の支持部の相互間を通過することができるため、当該板ガラスを板ガラス保持具から取り外すことが可能となる。同様に、未成膜の板ガラス(新たに板ガラス保持具に取り付けられる板ガラス)に傾斜姿勢をとらせれば、この板ガラスは一対の支持部の相互間を通過することができるため、当該板ガラスを板ガラス保持具に取り付けることが可能になる。以上のように、本発明に係る板ガラス保持具によれば、板ガラスに傾斜姿勢をとらせさえすれば、当該板ガラスの板ガラス保持具からの取り外し、及び、板ガラス保持具への取り付けを実行することができる。このため、板ガラスの取り外し作業、及び取り付け作業を行う作業者が、板ガラス保持具を構成する各部に触れることなく作業を行いやすくなる。その結果、各部に付着した膜材料が飛散し、この膜材料が未成膜の板ガラスの表面に異物として付着するような事態の発生が抑制されるため、高精度な膜の成膜が可能となる。
上記の構成において、スライド部が、自身に作用する遠心力によって挟持位置へと移動することが好ましい。
このようにすれば、スライド部に作用する遠心力を利用して、膜の成膜時に旋回中の板ガラスを裏面側から円軌道の外側に向かって押すことができ、且つ、一対の支持部と共に板ガラスを厚み方向に挟持することが可能となる。そのため、板ガラスを円軌道の外側に向かって押すための機構を板ガラス保持具に設けなくともよくなり、当該保持具の構成を簡略化することができる。
上記の構成において、挟持位置にあるスライド部が、収容空間に収容された板ガラスにおける裏面の全面を覆うことが好ましい。
例えば、板ガラスの表面に反射防止膜を成膜する場合、当該表面に成膜される膜の厚みを調節することで板ガラスに所望の機能を付与する。そのため、板ガラスの表面のみでなく、裏面にまで膜が成膜されてしまうと、表面に意図した厚みの膜が成膜できたとしても、裏面に成膜された膜の厚みをも加えた膜の総厚み(表面側の膜の厚みと裏面側の膜の厚みとの和)は、意図した厚みとは相違してしまうことになる。このため、板ガラスに所望の機能を付与することが困難、或いは、不可能となってしまうおそれがある。しかしながら、挟持位置にあるスライド部が、板ガラスにおける裏面の全面を覆うようにすれば、ターゲットから飛散した膜材料が板ガラスの裏面側に回り込み、裏面にまで膜が成膜されてしまうような事態の発生を可及的に抑制することが可能となる。その結果、板ガラスに所望の機能を的確に付与しやすくなる。
上記の構成において、挟持位置にあるスライド部が、板ガラスにおける裏面の外周端部とのみ接触することが好ましい。
このようにすれば、板ガラスの裏面において、スライド部が外周端部の内側に存する有効面部と接触しにくくなるため、当該有効面部にスライド部との接触に起因して汚れが付着したり、傷が発生したりすることを抑制することができる。その結果、板ガラスの品質を向上させることが可能となる。
上記の構成において、板ガラスが矩形状をなし、一対の支持部が板ガラスの上辺部と下辺部とをそれぞれ支持すると共に、スライド部における板ガラスの裏面との接触部が、円軌道と同方向に湾曲した湾曲部を有することが好ましい。ここで、「矩形状」とは、板ガラスが矩形をなす場合のみでなく、矩形の四隅に位置するコーナー部に面取り加工が施される等して、板ガラスが略矩形をなす場合をも含むことを意味する。
板ガラス保持具に保持される矩形状の板ガラスについて、その縦寸法(上下方向に沿った長さ)が長くなればなるほど、旋回中の板ガラスにおいて、一対の支持部に表面側から支持されていない部位が遠心力によって円軌道の外側へと膨み、縦方向に沿って表面側が凸となるように板ガラスが湾曲するおそれが高まる。そして、このように板ガラスが湾曲してしまうと、縦方向に延びる辺部(以下、縦辺部と表記する)がスライド部から浮き上がって、ターゲットから飛散した膜材料が板ガラスの裏面側に回り込んでしまい、裏面にまで膜が成膜されてしまう不具合が生じる。しかしながら、スライド部における板ガラスの裏面との接触部が、円軌道と同方向に湾曲した湾曲部を有していれば、上記のような不具合を的確に排除することができる。すなわち、湾曲部が円軌道と同方向に湾曲していることで、この湾曲部と接触した板ガラスを積極的に円軌道と同方向に湾曲させることが可能となる。そして、板ガラスを円軌道と同方向に湾曲させることで、板ガラスが縦方向に沿って湾曲することを可及的に防止することができる。その結果、板ガラスの縦辺部がスライド部から浮き上がることを回避することが可能となり、裏面に膜が成膜されることを防止することができる。なお、板ガラスを円軌道と同方向に湾曲させたことで、板ガラスの上辺部と下辺部とがスライド部から浮き上がることが危惧される。しかしながら、上辺部と下辺部とは一対の支持部によってそれぞれ表面側から支持されているため、両辺部がスライド部から浮き上がることは的確に防止される。さらには、板ガラスを円軌道と同方向に湾曲させたことで、以下のような作用・効果もが得られる。すなわち、板ガラスが円軌道と同方向に湾曲していることから、板ガラスの表面における各領域の相互間で、円軌道の外側に配置されたターゲットからの距離(各領域とターゲットとが最も接近した際の距離)にバラつきが生じにくくなる。これにより、板ガラスの表面に成膜される膜の厚みを均一化しやすくなる。
上記の構成において、一対の支持部の各々における板ガラスの表面との接触部が、円軌道と同方向に湾曲していることが好ましい。
このようにすれば、一対の支持部の各々における板ガラスの表面(上辺部の表面、下辺部の表面)との接触部が、円軌道と同方向に湾曲していることから、より円滑に板ガラスを円軌道と同方向に湾曲させることができる。その結果、板ガラスの裏面に膜が成膜されることを更に防止しやすくなると共に、板ガラスの表面に成膜される膜の厚みを更に均一化しやすくなる。
上記の構成において、挟持位置と退避位置とが同一直線上に設けられ、スライド部が、枠体部の内周側に隙間を介して配置されると共に、円軌道の内側に向かって上記直線と平行に延びる軸部を有し、スライド部の移動に伴った軸部の軸方向に沿った移動が、リニアブッシュによって案内されることが好ましい。
このようにすれば、挟持位置と退避位置とが同一直線上に設けられ、この直線と平行に延びる軸部をスライド部が有していること、及び、リニアブッシュによって軸部の軸方向に沿った移動が案内されることから、スライド部をぶれなく確実に上記直線に沿って移動させることが可能となる。これに加えて、スライド部が枠体部の内周側に隙間を介して配置されていることで、上記直線に沿って移動中のスライド部と、枠体部との摺動を可及的に回避することができる。そのため、スライド部と枠体部との摺動に起因して塵埃が発生し、この塵埃が板ガラスの品質に悪影響を与えるような事態の発生を抑制することが可能となる。
また、上記の板ガラス保持具を備えたカルーセル型スパッタリング装置により、板ガラスに膜を成膜する板ガラスの製造方法によれば、上記の板ガラス保持具に係る説明で既に述べた事項と同一の作用・効果を得ることが可能である。
本発明によれば、カルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具について、板ガラスを取り外す際、及び取り付ける際に、保持具を構成する各部への接触を可及的に抑制できるため、高精度な膜の成膜が可能になる。
本発明の実施形態に係る板ガラス保持具を示す縦断側面図である。 本発明の実施形態に係る板ガラス保持具を示す縦断側面図である。 本発明の実施形態に係る板ガラス保持具を示す正面図である。 本発明の実施形態に係る板ガラス保持具を示す横断平面図である。 本発明の実施形態に係る板ガラス保持具が有するスライド部を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態に係る板ガラス保持具、及び板ガラスの製造方法について添付の図面を参照して説明する。はじめに、板ガラス保持具の構成について説明する。
図1及び図2に示すように、板ガラス保持具1は、カルーセル型スパッタリング装置(以下、単にスパッタ装置と表記する)用の板ガラス保持具である。スパッタ装置は、回転軸2を中心にチャンバー内を円軌道に沿って旋回する縦置き姿勢に保持された板ガラス3に向けて、円軌道の外側に配置したターゲット4から膜材料4a(ターゲット4を構成する原子)を飛散させ、円軌道の外側に面した板ガラス3の表面3aに膜材料4aを堆積させて膜5を成膜するように構成されている。板ガラス保持具1は、スパッタ装置に複数備え付けられており、これら複数の板ガラス保持具1が、回転軸2を中心として円環をなすように並べられている。各板ガラス保持具1は、スパッタ装置の稼働に伴って板ガラス3を保持した状態で旋回することが可能となっている。また、各板ガラス保持具1は、それぞれ上下方向に沿って二枚の板ガラス3を保持することが可能となっている。
板ガラス保持具1は、矩形の板ガラス3を収容する収容空間6aが形成され、収容空間6aに収容された板ガラス3の外周端部を囲う枠体部6と、膜5の成膜時(図1に示す状態でスパッタ装置の稼働時)に旋回中の板ガラス3における上辺部3bと下辺部3cとをそれぞれ表面3a側から支持する一対の支持部7,8とを有している。さらに、この板ガラス保持具1は、膜5の成膜時に旋回中の板ガラス3を裏面3d側から円軌道の外側に向かって押しつつ一対の支持部7,8と共に板ガラス3を厚み方向に挟持するための挟持位置へと移動し、且つ、非成膜時(図2に示す状態でスパッタ装置の停止時)に挟持位置から円軌道の内側に向かって離間した退避位置へと移動可能なスライド部9とを有している。
図1及び図2に示すように、枠体部6に形成された収容空間6aは、相対的に開口面積が大きく、実際に板ガラス3が収容される大開口6aaと、大開口6aaから回転軸2側に連なり、相対的に開口面積の小さい小開口6abとを有している。すなわち、収容空間6aは開口によって構成される。大開口6aaは矩形に形成されており、当該大開口6aaに収容される板ガラス3よりも一回り大きく形成されている。また、枠体部6は非成膜時にスライド部9における円軌道の内側への移動を規制するための規制部材6bを備えており、この規制部材6bは小開口6abの縁部から内周側へと食み出すように取り付けられている。さらに、図3(図3では板ガラス3の図示を省略している)に示すように、大開口6aaの縁部のうち、上下方向に沿って延びる部位には、板ガラス保持具1から板ガラス3を取り外す際、及び、板ガラス3を取り付ける際に、作業者が指を差し入れるための窪み部6cが形成されている。この窪み部6cの深さ寸法は、挟持位置と退避位置との相互間距離よりも長くなっている。これにより、非成膜時に作業者が窪み部6cを介して板ガラス3の裏面3dと、スライド部9との間に指を差し込むことが可能となっている。
図3に示すように、一対の支持部7,8は、それぞれ収容空間6aに収容される板ガラス3の上辺部3b、下辺部3cに沿って延びるように取り付けられている。この一対の支持部7,8は、それぞれ板状の部材で構成されている。また、図1及び図2に示すように、一対の支持部7,8の各々は、枠体部6に形成された大開口6aaの縁部から内周側に食み出すように取り付けられている。なお、一対の支持部7,8のうち、上方に配置された支持部7は、下方に配置された支持部8と比較して、大開口6aaの縁部から食み出した部位の寸法が長くなっている。また、一対の支持部7,8の相互間の距離は、板ガラス3の縦寸法(上下方向に沿った寸法)よりも短くなっている。これにより、膜5の成膜時にスライド部9によって円軌道の外側へと押された板ガラス3について、板ガラス保持具1からの脱落が防止される。さらに、図4(図4では板ガラス保持具1における構成要素の一部の図示を省略している)に示すように、一対の支持部7,8の各々における板ガラス3の表面3aとの接触部7a,8aは、円軌道と同方向に湾曲している。
図1及び図2に示すように、スライド部9は枠体部6の内周側に隙間を介して配置されている。スライド部9は、非成膜時には退避位置に位置しており、退避位置にあるスライド部9と一対の支持部7,8との相互間の距離は、板ガラス3の厚み寸法よりも長くなっている。そして、スライド部9は、膜5の成膜時に板ガラス保持具1の旋回に伴って自身に作用する遠心力で退避位置から挟持位置へと移動する。退避位置と挟持位置とは同一直線上に位置しており、この直線は回転軸2を中心とする円軌道の半径方向に沿って延びている。挟持位置へと移動したスライド部9は、板ガラス3の裏面3dにおける全面を覆うことが可能となっている。スライド部9における板ガラス3との接触部9aは、板ガラス3の裏面3dにおける外周端部(裏面3dの有効面部を囲う部位)とのみ接触するようになっている。
図5(図5では板ガラス保持具1における構成要素の一部の図示を省略している)に示すように、スライド部9における板ガラス3の裏面3dとの接触部9aは、矩形をなす枠体として形成されており、板ガラス3の上辺部3bに接触する上辺接触部9aaと、下辺部3cに接触する下辺接触部9abと、板ガラス3の上下方向に延びた一対の縦辺部にそれぞれ接触する一対の縦辺接触部9acとを有している。一対の縦辺接触部9acの各々は、その全長が平坦に形成されている。これに対し、上辺接触部9aaと下辺接触部9abとの各々は、その長手方向に沿って円軌道と同方向に湾曲した湾曲部となっている。これにより、図4に示すように、スライド部9が挟持位置へと移動した際に、スライド部9における板ガラス3の裏面3dとの接触部9aと、一対の支持部7,8における板ガラス3の表面3aとの接触部7a,8aとにより、板ガラス3が円軌道と同方向に湾曲した状態で挟持される。
図1及び図2に示すように、スライド部9は、円軌道の内側に向かって延びた円柱状の軸部9bを有している。軸部9bは、回転軸2を中心とする円軌道の半径方向に沿って延びている。つまり、軸部9bは、退避位置と挟持位置とを通過する直線と平行に延びている。そして、スライド部9の退避位置から挟持位置への移動、及び、挟持位置から退避位置への移動に伴った軸部9bの軸方向に沿った移動は、リニアブッシュ10によって案内される。リニアブッシュ10は、その内周部に軸部9bと接触するボール10aを備えている。また、軸部9bは、図示省略のシリンダーと連結されており、シリンダー内の減圧に伴って円軌道の内側に向かって移動し、スライド部9を挟持位置から退避位置へと移動させることが可能となっている。
以下、上記の板ガラス保持具1を備えたスパッタ装置により、板ガラス3に膜5を成膜する板ガラスの製造方法について説明する。
まず、スライド部9が退避位置にある状態の下で、作業者が板ガラス3を板ガラス保持具1に取り付ける。具体的には、作業者が窪み部6cに指を差し入れつつ、板ガラス3を縦置き姿勢から傾斜させた傾斜姿勢で保持し、当該板ガラス3に円軌道の外側から一対の支持部7,8の相互間を通過させる。このとき、先に板ガラス3の上辺部3bを支持部7(上方に配置された支持部)とスライド部9との相互間に挿入し、後から下辺部3cを支持部8(下方に配置された支持部)とスライド部9との相互間に挿入する。このようにして、板ガラス3が板ガラス保持具1に取り付けられる。
次に、スパッタ装置を稼働させ、回転軸2を中心に板ガラス保持具1を円軌道に沿って旋回させる。このとき、スライド部9が、自身に作用する遠心力によって板ガラス3を裏面3d側から円軌道の外側に向かって押しつつ退避位置から挟持位置へと移動する。これにより、挟持位置にあるスライド部9と、一対の支持部7,8とによって板ガラス3が厚み方向に挟持される。挟持された状態の板ガラス3は、縦置き姿勢で円軌道と同方向に湾曲した状態となる。そして、挟持された状態の板ガラス3の表面3aにターゲット4から飛散した膜材料4aを堆積させて膜5を成膜する。
次に、スパッタ装置を停止させ、板ガラス保持具1の旋回を停止させる。そして、シリンダー内を減圧することで、スライド部9の挟持位置から退避位置への移動を開始させる。退避位置へと円軌道の内側に向かって移動するスライド部9は、当該スライド部9が規制部材6bと当接することで移動が停止する。これにより、スライド部9の挟持位置から退避位置への移動が完了する。
最後に、スライド部9が退避位置にある状態の下で、成膜が完了した板ガラス3を板ガラス保持具1から取り外す。具体的には、作業者が窪み部6cに指を差し入れつつ、板ガラス3を縦置き姿勢から傾斜させた傾斜姿勢で保持し、板ガラス3に一対の支持部7,8の相互間を通過させる。これにより、板ガラス3が板ガラス保持具1から円軌道の外側に向かって取り外される。以上のようにして、表面3aに膜5が成膜された板ガラス3が得られる。
以下、上記の板ガラス保持具1を用いた場合の主たる作用・効果について説明する。
上記の板ガラス保持具1によれば、板ガラス3に傾斜姿勢をとらせさえすれば、当該板ガラス3の板ガラス保持具1からの取り外し、及び、板ガラス保持具1への取り付けを実行することができる。このため、板ガラス3の取り外し作業、及び取り付け作業を行う作業者が、板ガラス保持具1を構成する各部に触れることなく作業を行いやすくなる。その結果、各部に付着した膜材料4aが飛散し、この膜材料4aが未成膜の板ガラス3の表面3aに異物として付着するような事態の発生が抑制されるため、高精度な膜5の成膜が可能となる。
ここで、本発明に係る板ガラス保持具、及び板ガラスの製造方法は、上記の実施形態で説明した構成や態様に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、成膜の対象となる板ガラスが矩形をなしているが、この限りではない。成膜の対象となる板ガラスの形状は円形等、矩形以外の形状であってもよい。この場合には、一対の支持部によって板ガラスの上部と下部とをそれぞれ表面側から支持させる。また、上記の実施形態においては、スライド部が自身に作用する遠心力によって挟持位置へと移動する構成となっているが、これに限定されるものではない。変形例の一つとして、上記のシリンダー内を加圧することでスライド部が挟持位置へと移動する構成とし、遠心力によらず移動する構成としてもよい。さらに、上記の実施形態においては、挟持位置と退避位置とが円軌道の半径方向に沿って延びる同一直線上に位置する構成となっているが、この限りではない。挟持位置と退避位置とが円軌道の半径方向から傾斜した方向に延びる同一直線上に位置する構成としてもよい。加えて、上記の実施形態においては、シリンダー内を減圧することでスライド部を挟持位置から退避位置へと移動させているが、この限りではない。作業者が手動によりスライド部を挟持位置から退避位置へと移動させてもよい。例えば、スライド部の軸部を把持し、回転軸側に軸部を引くことでスライド部を挟持位置から退避位置へと移動させることができる。この場合、作業者がスライド部に触れることになるが、板ガラス保持具を構成する他の部位(一対の支持部、枠体部)と比較して、スライド部は成膜時における膜材料の付着が極めて少ないため、手動で移動させた場合であっても本発明の効果を得ることが可能である。詳述すると、成膜時にはターゲットとスライド部との間に板ガラスが介在した状態となるため、ターゲットから飛散した膜材料のスライド部への付着は極めて抑制される。
1 板ガラス保持具
3 板ガラス
3a 表面
3b 上辺部
3c 下辺部
3d 裏面
4 ターゲット
4a 膜材料
5 膜
6 枠体部
6a 収容空間
6aa 大開口
6ab 小開口
7 支持部
7a 接触部
8 支持部
8a 接触部
9 スライド部
9a 接触部
9aa 上辺接触部
9ab 下辺接触部
9ac 縦辺接触部
9b 軸部
10 リニアブッシュ

Claims (8)

  1. チャンバー内を円軌道に沿って旋回する縦置き姿勢に保持された板ガラスに向けて、前記円軌道の外側に配置されたターゲットから膜材料を飛散させ、該円軌道の外側に面した前記板ガラスの表面に膜を成膜するように構成されたカルーセル型スパッタリング装置用の板ガラス保持具であって、
    前記板ガラスを収容する収容空間が形成され、該収容空間に収容された前記板ガラスの外周端部を囲う枠体部と、
    前記膜の成膜時に旋回中の前記板ガラスにおける上部と下部とをそれぞれ前記表面側から支持する一対の支持部と、
    前記枠体部の内周側に配置され、前記膜の成膜時に旋回中の前記板ガラスを裏面側から前記円軌道の外側に向かって押しつつ前記一対の支持部と共に該板ガラスを厚み方向に挟持するための挟持位置へと移動し、且つ、非成膜時に前記挟持位置から前記円軌道の内側に向かって離間した退避位置へと移動可能なスライド部とを有することを特徴とする板ガラス保持具。
  2. 前記スライド部が、自身に作用する遠心力によって前記挟持位置へと移動することを特徴とする請求項1に記載の板ガラス保持具。
  3. 前記挟持位置にある前記スライド部が、前記収容空間に収容された前記板ガラスにおける前記裏面の全面を覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の板ガラス保持具。
  4. 前記挟持位置にある前記スライド部が、前記板ガラスにおける前記裏面の外周端部とのみ接触することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板ガラス保持具。
  5. 前記板ガラスが矩形状をなし、前記一対の支持部が前記板ガラスの上辺部と下辺部とをそれぞれ支持すると共に、
    前記スライド部における前記板ガラスの前記裏面との接触部が、前記円軌道と同方向に湾曲した湾曲部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の板ガラス保持具。
  6. 前記一対の支持部の各々における前記板ガラスの前記表面との接触部が、前記円軌道と同方向に湾曲していることを特徴とする請求項5に記載の板ガラス保持具。
  7. 前記挟持位置と前記退避位置とが同一直線上に設けられ、
    前記スライド部が、前記枠体部の内周側に隙間を介して配置されると共に、前記円軌道の内側に向かって前記直線と平行に延びる軸部を有し、
    前記スライド部の移動に伴った前記軸部の軸方向に沿った移動が、リニアブッシュによって案内されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の板ガラス保持具。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の板ガラス保持具を備えたカルーセル型スパッタリング装置により、板ガラスに膜を成膜することを特徴とする板ガラスの製造方法。
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