JP2016170369A - 偏光板及び円偏光板 - Google Patents

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Abstract

【課題】薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れる偏光板及び円偏光板を提供すること。【解決手段】本発明は、基材と、偏光子とを備えた偏光板であって、偏光子は、二色性色素が配向している厚さ5μm以下の偏光層を有し、下記式(I)で示される吸光度保持率が、80%以上である、偏光板に関する。式中、A1(85℃)は、85℃の耐熱オーブン中で偏光板を100時間保持した後の二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表し、A1(23℃)は、偏光板を耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表す。吸光度保持率(%)=A1(85℃)/A1(23℃)×100 (I)【選択図】図1

Description

本発明は、偏光板及び円偏光板に関する。
有機EL画像表示装置には、明所での外光反射防止のために円偏光板が用いられている。このような円偏光板として、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)をヨウ素で染色した偏光板(ヨウ素−PVA偏光板)を含むものが知られている(特許文献1参照)。
特に有機EL画像表示装置に円偏光板を適用する場合には、有機EL素子から発光する光を吸収しないように吸光度の低い偏光板が望まれている。ヨウ素−PVA偏光板の場合には、ヨウ素の染色濃度を下げることで吸光度を下げることができる。
特開平7−142170号公報
しかしながら、このように低濃度としたヨウ素−PVA偏光板は、使用環境によっては、ヨウ素が昇華・変質し、色目が変わるといった問題や、PVAの延伸が緩和されることによる反りが発生するといった問題がある。また、ヨウ素−PVA偏光板は薄膜化が難しく、より薄型化が求められる表示装置に適用する上では限界がある。
そこで、本発明の目的は、薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れる偏光板及び円偏光板を提供することである。
本発明は、以下の態様を含む。
[1] 基材と、偏光子とを備えた偏光板であって、偏光子は、二色性色素が配向している厚さ5μm以下の偏光層を有し、下記式(I)で示される吸光度保持率が、80%以上である、偏光板。
吸光度保持率(%)=A1(85℃)/A1(23℃)×100 (I)
(式中、A1(85℃)は、85℃の耐熱オーブン中で偏光板を100時間保持した後の二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表し、A1(23℃)は、偏光板を耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表す。)
[2] A1(23℃)の値が0.3以上2.0以下である、[1]に記載の偏光板。
[3] 偏光板を耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における透過軸方向の吸光度A2(23℃)の値が0.001以上0.1以下である、[1]又は[2]に記載の偏光板。
[4] 二色性色素が、有機染料である[1]〜[3]のいずれかに記載の偏光板。
[5] 偏光層が、重合性液晶化合物の重合体を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の偏光板。
[6] 重合性液晶化合物が、スメクチック液晶相を示す化合物である[5]に記載の偏光板。
[7] 重合性液晶化合物が、高次スメクチック液晶相を示す化合物である[5]に記載の偏光板。
[8] X線回折測定においてブラッグピークを示す、[1]〜[7]のいずれかに記載の偏光板。
[9] [1]〜[8]のいずれか記載の偏光板と、1/4波長板とを含む円偏光板。
[10] 1/4波長板の波長450nmの光に対する複屈折率、波長550nmの光に対する複屈折率及び波長650nmの光に対する複屈折率が、下記式(II)及び(III)で示される関係を満足する逆波長分散性を有する[9]記載の円偏光板。
Δn(450)/Δn(550)≦1.00 (II)
1.00≦Δn(650)/Δn(550) (III)
(式中、Δn(λ)は波長λnmの光に対する複屈折率を表す。)
本発明によれば、薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れる偏光板及び円偏光板を提供することができる。
偏光板の一実施形態を模式的に示す断面図である。 円偏光板の一実施形態を模式的に示す断面図である。 円偏光板の一実施形態を模式的に示す断面図である。 円偏光板の一実施形態を模式的に示す断面図である。
本実施形態の偏光板は、基材と、偏光子とを備え、偏光子は、二色性色素が配向している厚さ5μm以下の偏光層を有し、下記式(I)で示される吸光度保持率が、80%以上であるであることを特徴とする。
吸光度保持率(%)=A1(85℃)/A1(23℃)×100 (I)
上記式中、A1(85℃)は、85℃の耐熱オーブン中で偏光板を100時間保持した後の二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表し、A1(23℃)は、偏光板を耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表す。
上記A1(23℃)の値は、0.3以上2.0以下であることが好ましい。また、偏光板を耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における透過軸方向の吸光度A2(23℃)の値は、0.001以上0.1以下であることが好ましい。
本実施形態の偏光板は上記構成を備えることで、薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れるものとなる。上記吸光度保持率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
1.偏光子
本実施形態に係る偏光子は、二色性色素が配向している厚さ5μm以下の偏光層を有している。この偏光層は、二色性色素を含む組成物(以下、場合により「偏光子形成用組成物」という。)を用いて形成することができる。
1−1.二色性色素
二色性色素としては、波長380〜800nmの範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。
アゾ化合物として、波長380〜550nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(1)を用いることができる。二色性色素(1)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物(以下、場合により「化合物(1)」という。)が挙げられる。化合物(1)のアゾベンゼン部位の幾何異性は、トランスが好ましい。
式(1)におけるYは下記式(Y1)又は式(Y2)で表される基であり、好ましくは式(Y1)で表される基である。
式(Y1)及び式(Y2)において、両端の直線は結合手を表し、左側の結合手はアゾ基を有するフェニレン基と結合しており、右側の結合手はRを有するフェニレン基と結合している。Lは酸素原子又は−NR−であり、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及びt−ブチル基が挙げられる。中でも、Lは酸素原子又は−NH−であると好ましく、酸素原子であるとより好ましい。
は、下記式(R−1)、式(R−2)又は式(R−3)で表される基であり、好ましくは式(R−2)及び式(R−3)で表される基である。式中の*は結合手を表す。
式(R−2)で表される基におけるmaは、それぞれ独立に0〜10の整数であることが好ましく、0〜5の整数であることがより好ましい。2つのmaはそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であると好ましい。
は、式(R−1)、式(R−2)、式(R−3)、式(R−4)、式(R−5)又は式(R−6)で表される基であり、式(R−2)、式(R−5)又は式(R−6)で表される基であると好ましく、式(R−6)で表される基であるとより好ましい。
が式(R−1)、式(R−2)、式(R−3)、式(R−5)又は式(R−6)で表される基である場合、当該基に含まれるmbは0〜10の整数であると好ましく、0〜5の整数であるとより好ましい。
化合物(1)としては、例えば、以下の式(1−1)〜式(1−8)で表される化合物が挙げられる。
中でも、式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)、式(1−5)、式(1−7)及び式(1−8)で表される化合物が好ましく、式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)及び式(1−7)で表される化合物がより好ましい。
ここで、化合物(1)の製造方法について説明する。化合物(1)は例えば、式(1X)で表される化合物[化合物(1X)]と、式(1Y)で表される化合物[化合物(1Y)]とから、下記図式で示す反応により製造することができる。
上記図式において、R、R及びYは上記と同じ意味であり、Re及びReは、互いに反応してYで表される基となる基である。Re及びReの組み合わせとしては例えば、カルボキシ基及び水酸基の組み合わせ、カルボキシ基及びアミノ基(かかるアミノ基はRで置換されていてもよい)の組み合わせ、カルボニルハライド基及び水酸基の組み合わせ、カルボニルハライド基及びアミノ基(かかるアミノ基はRで置換されていてもよい)の組み合わせ、カルボニルオキシアルキル基及び水酸基の組み合わせ、カルボニルオキシアルキル基及びアミノ基(かかるアミノ基はRで置換されていてもよい)の組み合わせが挙げられる。また、ここでは、Rを有する化合物(1X)及びRを有する化合物(1Y)で説明するが、Rを適当な保護基で保護した化合物や、Rを適当な保護基で保護した化合物互いに反応して、その後、適当な脱保護反応を行うことで化合物(1)を製造することもできる。
化合物(1X)及び化合物(1Y)を反応する際の反応条件は、用いる化合物(1X)及び化合物(1Y)の種類に応じて適宜、最適な公知の条件を選択できる。
例えば、Reがカルボキシ基であり、Reが水酸基であり、Yが−C(=O)−O−である場合の反応条件としては、例えば、溶媒中、エステル化縮合剤の存在下で縮合する条件が挙げられる。溶媒としては、クロロホルム等の、化合物(1X)及び化合物(1Y)をともに可溶な溶媒が挙げられる。エステル化縮合剤としては、例えばジイソプロピルカルボジイミド(IPC)が挙げられる。ここでは、さらにジメチルアミノピリジン(DMAP)等の塩基を併用するが好ましい。反応温度は、化合物(1X)及び化合物(1Y)の種類に応じて選択されるが、例えば−15〜70℃の範囲が挙げられ、好ましくは0〜40℃の範囲である。反応時間は、例えば15分〜48時間の範囲が挙げられる。
反応時間は、反応途中の反応混合物を適宜サンプリングし、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段により、化合物(1X)及び化合物(1Y)の消失の度合いや、化合物(1)の生成の度合いを確認して、定めることもできる。
反応後の反応混合物から、再結晶、再沈殿、抽出及び各種クロマトグラフィーといった公知の方法により、或いはこれらの操作を組み合わせることにより、化合物(1)を取り出すことができる。
アゾ化合物として、波長550〜700nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2)を用いることができる。
二色性色素(2)は、波長550〜600nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2−1)及び/又は波長600〜700nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2−2)を含んでいてもよい。二色性色素(2−1)は波長570〜600nmの範囲に吸収極大を有するとより好ましく、二色性色素(2−2)は波長600〜680nmの範囲に吸収極大を有するとより好ましい。
二色性色素(2)としては、例えば、下記式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という。)が挙げられる。化合物(2)のアゾベンゼン部位の幾何異性は、トランスが好ましい。式(2)中、nは1又は2である。
Ar及びArはそれぞれ独立に、式(AR−1)、式(AR−2)、式(AR−3)又は式(AR−4)で表される基である。*は結合手を表す。
Arは、式(AR2−1)、式(AR2−2)又は式(AR2−3)で表される基である。
及びAはそれぞれ独立に、式(A−1)〜式(A−9)のいずれかで表される基である。式(A−2)、式(A−3)、式(A−5)及び(A−6)中、mcは0〜10の整数であり、同一の基中にmcが2つある場合、この2つのmcは互いに同一又は相異なる。
化合物(2)が波長550〜600nmの範囲に吸収極大を有するように、Ar、Ar及びArを組み合わすことで、二色性色素(2−1)として使用できる化合物(2)が定められる。同様に、化合物(2)が波長600〜700nmの範囲に吸収を有するように、Ar、Ar及びArを組み合わすことで、二色性色素(2−2)として使用できる化合物(2)が定められる。
化合物(2)を具体的に示すと、例えば、式(2−11)〜式(2−39)でそれぞれ表される化合物が挙げられる。
上記化合物(2)の具体例の中では、二色性色素(2−1)としては、式(2−12)、式(2−13)、式(2−18)、式(2−20)、式(2−21)、式(2−22)、式(2−23)、式(2−24)、式(2−26)、式(2−27)、式(2−28)、式(2−29)及び式(2−30)でそれぞれ表されるものが該当し、二色性色素(2−2)としては、式(2−31)、式(2−32)、式(2−33)、式(2−34)、式(2−35)及び式(2−36)でそれぞれ表されるものが該当する。なお、式(2−11)、式(2−15)及び式(2−16)でそれぞれ表されるものは波長550〜700nmに吸収を示す色素では無いが、他の二色性色素と併用することができる。
化合物(2)の具体例の中でも、二色性色素(2)としては、式(2−15)、式(2−16)、式(2−18)、式(2−20)、式(2−21)、式(2−22)、式(2−23)、式(2−27)、式(2−29)、式(2−31)、式(2−32)、式(2−33)、式(2−34)及び式(2−35)でそれぞれ表されるものが好ましい。
二色性色素(2)は、例えば、特開昭58−38756号公報、特開昭63−301850号公報等に記載の公知方法で製造される。
上述した二色性色素は1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせ用いてもよい。偏光子形成用組成物が2種以上の二色性色素を含有する場合、偏光子形成用組成物における二色性色素の各含有量は、後述する重合性液晶化合物100質量部に対する含有量で表して、6質量部以下が好ましく、0.1質量部以上4質量部以下がより好ましく、1質量部以上3質量部以下が更に好ましい。二色性色素の含有量が上記範囲内であれば、偏光子形成用組成物における二色性色素が溶剤に対して十分な溶解性を示すため、偏光子形成用組成物を用いて偏光子を製造したとき、欠陥の発生が無い偏光子が得られる。これにより、薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れる偏光板をより作製し易くなる。偏光子形成用組成物に含まれる二色性色素の総量は、後述する重合性液晶化合物100質量部に対する含有量で表して、20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上12質量部以下がより好ましく、1質量部以上9質量部以下が更に好ましい。
1−2.重合性液晶化合物
本実施形態に係る偏光子は、重合性液晶化合物の重合体を含む偏光層を有することが好ましい。すなわち、上記偏光子形成用組成物は、二色性色素と共に重合性液晶化合物を含有することができる。
重合性液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有する。重合性液晶化合物を含有する偏光子形成用組成物は、重合性液晶化合物を配向させた状態で重合することにより、硬化膜を形成する。重合性基はラジカル重合性基であると特に好ましい。ラジカル重合性基とは、ラジカル重合反応に関与する基を意味する。
重合性液晶化合物は、ネマチック相の液晶相(以下、場合により「ネマチック液晶相」という。)を示すものであっても、スメクチック相の液晶相(以下、場合により「スメクチック液晶相」という。)を示すものであっても、ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相の両方を示すものであってもよいが、少なくともスメクチック液晶相を示す重合性スメクチック液晶化合物であると好ましい。重合性スメクチック液晶化合物を含む偏光子形成用組成物は、二色性色素との相互作用により、ニュートラルな色相性が良好であり、より偏光性能に優れる偏光子が得られる。
重合性スメクチック液晶化合物が示すスメクチック液晶相としては、高次スメクチック液晶相がより好ましい。ここでいう高次スメクチック液晶相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相であり、中でも、スメクチックB相、スメクチックF相及びスメクチックI相がより好ましい。
重合性液晶化合物が示すスメクチック液晶相がこれらの高次スメクチック液晶相であると、配向秩序度のより高い偏光子を製造することができる。また、このように配向秩序度の高い高次スメクチック液晶相から作製した偏光子はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークであり、本実施形態に係る偏光子形成用組成物によれば、周期間隔が3.0〜5.0Åである偏光子を得ることができる。
重合性液晶化合物が、ネマチック液晶相やスメクチック液晶相を示すか否かは、例えば、以下のようにして確認できる。適当な基材を準備し、該基材に偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を形成した後、重合性液晶化合物が重合しない条件で加熱処理又は減圧処理することで塗布膜に含有される溶剤を除去する。続いて、基材上に形成された塗布膜を等方相温度まで加熱し、徐々に冷却することで発現する液晶相を、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折測定又は示差走査熱量測定により検査する。この検査において、例えば、冷却することでネマチック液晶相を示し、さらに冷却することで、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物が特に好ましい。ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相において、重合性液晶化合物と二色性色素とが相分離していないことは、例えば、各種顕微鏡による表面観察やヘイズメーターによる散乱度測定により確認できる。
重合性液晶化合物としては、例えば、式(4)で表される化合物(以下、場合により「化合物(4)」という)が挙げられる。
−V−W−X−Y−X−Y−X−W−V−U (4)
式(4)中、X、X及びXは、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表す。X、X及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよいシクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよいシクロへキサン−1,4−ジイル基を構成する−CH−は、−O−、−S−又は−NR−に置き換わっていてもよい。Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基である。
置換基を有していてもよいシクロへキサン−1,4−ジイル基は、置換基を有していてもよいトランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基であることが好ましく、置換基を有しないトランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基はであることがより好ましい。式(4)において、X、X及びXのうち少なくも2つが、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基であってもよく、置換基を有しない1,4−フェニレン基であることが好ましい。
置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロへキサン−1,4−ジイル基が任意に有する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基及びハロゲン原子が挙げられる。
式(4)中、Y及びYは、互いに独立に、−CHCH−、−CHO−、−COO−、−OCOO−、単結合、−N=N−、−CR=CR−、−C≡C−又は−CR=N−を表す。R及びRは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Yは、−CHCH−、−COO−又は単結合であると好ましく、Yは、−CHCH−、−COO−又は−CHO−であると好ましい。
式(4)中、Uは、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。Uは、重合性基である。U及びUは共に、重合性基であると好ましく、光重合性基であるとより好ましい。光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性基を有する重合性液晶化合物は、より低温条件下で重合できる点で有利である。
及びUの重合性基は互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が挙げられる。中でも、重合性基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
式(4)中、V及びVは、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する−CH−は、−O−、−S−又は−NH−に置き換わっていてもよい。炭素数1〜20のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基及びイコサン−1,20−ジイル基が挙げられる。V及びVは、好ましくは炭素数2〜12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6〜12のアルカンジイル基である。炭素数1〜20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、例えば、シアノ基及びハロゲン原子を挙げることができる。該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状であることがより好ましい。
式(4)中、W及びWは、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−COO−又は−OCOO−を表し、好ましくは単結合又は−O−である。
化合物(4)としては、例えば、式(4−1)〜式(4−43)で表される化合物が挙げられる。化合物(4)の具体例が、シクロヘキサン−1,4−ジイル基を有する場合、シクロヘキサン−1,4−ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
重合性液晶化合物は、単独で又は2種以上を混合して偏光子形成用組成物に用いることができる。重合性液晶化合物を2種以上混合する場合、少なくとも1種が化合物(4)であると好ましい。重合性液晶化合物を2種混合する場合の混合比としては、通常、化合物(4)以外の重合性液晶化合物:化合物(4)が、1:99〜50:50であり、好ましくは5:95〜50:50であり、より好ましくは10:90〜50:50である。
化合物(4)の中でも、式(4−5)、式(4−6)、式(4−7)、式(4−8)、式(4−9)、式(4−10)、式(4−11)、式(4−12)、式(4−13)、式(4−14)、式(4−15)、式(4−22)、式(4−24)、式(4−25)、式(4−26)、式(4−27)、式(4−28)及び式(4−29)で表される化合物が好ましい。これらの化合物は、その他の重合性液晶化合物との相互作用により、容易に結晶相転移温度を下回る温度条件下で、すなわち高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したままで、重合することができる。具体的には、これらの化合物は、70℃以下、好ましくは60℃以下の温度条件下で、高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したまま重合することができる。
偏光子形成用組成物における重合性液晶化合物の含有割合は、偏光子形成用組成物の固形分に対して、50〜99.9質量%が好ましく、80〜99.9質量%がより好ましい。重合性液晶化合物の含有割合が上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。固形分とは、偏光子形成用組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。
重合性液晶化合物は、例えば、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays−Bas,115, 321−328(1996)、特許第4719156号等に記載の公知方法で製造される。
1−3.溶剤
偏光子形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、二色性色素及び重合性液晶化合物を完全に溶解し得る溶剤が好ましい。また、偏光子形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;並びにクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤の含有量は、偏光子形成用組成物の総量に対して50〜98質量%が好ましい。換言すると、偏光子形成用組成物における固形分は、2〜50質量%が好ましい。固形分が2質量%以上であると、本発明の目的の一つである薄型の偏光板が得られ易くなる。また、該固形分が50質量%以下であると、偏光子形成用組成物の粘度が低くなることから、偏光子の厚みが略均一になることで、当該偏光子にムラが生じ難くなる。固形分は、偏光子の厚みを考慮して定めることができる。
1−4.添加剤
本実施形態に係る偏光子形成用組成物は、添加剤を任意に含むことができる。添加剤としては、例えば、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤及びレベリング剤が挙げられる。
1−4−1.重合開始剤
偏光子形成用組成物は、重合開始剤を含有すると好ましい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生する化合物が光重合開始剤として用いられる。当該光重合開始剤の中でも、光の作用により活性ラジカルを発生するものがより好ましい。
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン及び2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
重合開始剤は、市販のものを用いることもできる。市販の重合開始剤としては、例えば、”イルガキュア(Irgacure)907”、”イルガキュア184”、”イルガキュア651”、”イルガキュア819”、”イルガキュア250”、”イルガキュア369”(BASFジャパン(株));”セイクオールBZ”、”セイクオールZ”、”セイクオールBEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)BP100”(日本化薬(株));”UVI−6992”(ダウケミカル社製);”アデカオプトマーSP−152”、”アデカオプトマーSP−170”((株)ADEKA);”TAZ−A”、”TAZ−PP”(DKSHジャパン社);及び”TAZ−104”((株)三和ケミカル)が挙げられる。
偏光子形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、通常、重合性液晶化合物の合計100質量部に対する重合開始剤の含有量は、0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部である。重合性開始剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため好ましい。
1−4−2.光増感剤
偏光子形成用組成物は、光重合開始剤を含有する場合、光増感剤を更に含有してもよい。光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンが挙げられる。
偏光子形成用組成物が光重合開始剤及び光増感剤を含有する場合、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応がより促進される。光増感剤の含有量は、併用する光重合開始剤及び重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部である。
1−4−3.重合禁止剤
偏光子形成用組成物は、重合性液晶化合物の重合反応を安定的に進行させるために、重合禁止剤を含有していてもよい。重合禁止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤;チオフェノール類;β−ナフチルアミン類及びβ−ナフトール類が挙げられる。
偏光子形成用組成物が重合禁止剤を含む場合、その含有量は、用いる重合性液晶化合物の種類及びその量、並びに光増感剤の含有量などに応じて適宜調節されるが、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部である。重合禁止剤の含有量が、上記範囲内であれば、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため好ましい。
1−4−4.レベリング剤
偏光子形成用組成物は、レベリング剤を含有すると好ましい。レベリング剤とは、偏光子形成用組成物の流動性を調整し、偏光子形成用組成物を塗布して得られる塗布膜をより平坦にする機能を有するものであり、界面活性剤等を挙げることができる。レベリング剤としては、例えば、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤が挙げられる。
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、”BYK−350”、”BYK−352”、”BYK−353”、”BYK−354”、”BYK−355”、”BYK−358N”、”BYK−361N”、”BYK−380”、”BYK−381”及び”BYK−392”[BYK Chemie社]が挙げられる。
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、メガファック”R−08”、”R−30”、”R−90”、”F−410”、”F−411”、”F−443”、”F−445”、”F−470”、”F−471”、”F−477”、”F−479”、”F−482”及び”F−483”[DIC(株)];サーフロン”S−381”、”S−382”、”S−383”、”S−393”、”SC−101”、”SC−105”、”KH−40”及び”SA−100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[ダイキン工業(株)];エフトップ”EF301”、”EF303”、”EF351”及び”EF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]が挙げられる。
偏光子形成用組成物にレベリング剤を含有させる場合、その含有量は、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる偏光子がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる偏光子にムラが生じ易い傾向がある。なお、偏光子形成用組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
本実施形態に係る偏光子は、波長380〜760nmにおける吸収軸方向の吸光度(A1)が0.3以上2.0以下であることが好ましく、透過軸方向の吸光度(A2)は、0.001以上1.0以下であることが好ましい。
上記吸光度は、偏光子に含まれる二色性色素の種類、二色性色素の量、偏光子形成用組成物中の固形分濃度又は塗布量を調整することによって偏光子の膜厚を制御する等により適宜調整することができる。
2.偏光子の形成方法
偏光子形成用組成物を用いて偏光子を形成する方法について説明する。かかる方法では、偏光子形成用組成物を基材に、好ましくは透明基材に塗布することにより偏光子を形成する。
2−1.基材
透明基材とは光、特に可視光を透過し得る程度の透明性を有する基材である。透明性とは、波長380〜780nmに渡る光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的には、透明基材としては、例えば、ガラス基材及びプラスチック基材を挙げることができ、好ましくはプラスチック基材である。プラスチック基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドが挙げられる。中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、とりわけ好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルである。透明基材を用いて、偏光子を製造するに当たり、透明基材を運搬したり、保管したりする際に破れなどの破損を起こすことなく容易に取り扱える点で、透明基材に支持基材等を貼り付けておいてもよい。また、後述するが、偏光子から円偏光板を製造する際に、プラスチック基材に位相差性を付与することがある。この場合には、プラスチック基材に延伸処理などにより、位相差性を付与すればよい。
プラスチック基材に位相差性を付与する場合、その位相差値をコントロールし易いという点で、セルロースエステル又は環状オレフィン系樹脂からなるプラスチック基材が好ましい。
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、酢酸エステル化されたものである。このようなセルロースエステルからなるセルロースエステルフィルムは市場から容易に入手することができる。市販のトリアセチルセルロースフィルムとしては、例えば、“フジタックフィルム”(富士写真フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))が挙げられる。このような市販トリアセチルセルロースフィルムは、そのまま又は必要に応じて位相差性を付与してから透明基材として用いることができる。また、準備した透明基材の表面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理又は反射防止処理などの表面処理を施してから、透明基材として使用することができる。
プラスチック基材に位相差性を付与するには、上述のとおり、プラスチック基材を延伸する方法を用いることができる。熱可塑性樹脂からなるプラスチック基材は、いずれも延伸処理が可能であるが、位相差性を制御し易いという点で、環状オレフィン系樹脂からなるプラスチック基材がより好ましい。環状オレフィン系樹脂とは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンの重合体又は共重合体から構成されるものである。環状オレフィン系樹脂は部分的に、開環部を含んでいてもよく、開環部を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわない点や、著しく吸湿性を増大させない点で、例えば、環状オレフィンと、鎖状オレフィン又はビニル化芳香族化合物(スチレンなど)との共重合体であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィン又はビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン及びプロピレンが挙げられ、ビニル化芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン及びアルキル置換スチレンが挙げられる。このような共重合体において、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して、50モル%以下、例えば、15〜50モル%程度の範囲である。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル化芳香族化合物とから得られる三元共重合体である場合、例えば、鎖状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、該環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して5〜80モル%程度であり、ビニル化芳香族化合物由来の構造単位の含有割合は5〜80モル%程度である。このような三元共重合体の環状オレフィン系樹脂は、該環状オレフィン系樹脂を製造する際に、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、例えば、“Topas”[Ticona社(独)];“アートン”[JSR(株)];“ゼオノア(ZEONOR)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)”[日本ゼオン(株)];“アペル”[三井化学(株)製]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を例えば、溶剤キャスト法や溶融押出法などの公知の製膜手段により製膜して、フィルム(環状オレフィン系樹脂フィルム)とすることができる。また、すでにフィルムの形態で市販されている環状オレフィン系樹脂フィルムも用いることができる。このような市販の環状オレフィン系樹脂フィルムとしては、例えば、“エスシーナ”及び“SCA40”[積水化学工業(株)];“ゼオノアフィルム”[オプテス(株)];並びに“アートンフィルム”[JSR(株)]が挙げられる。
続いて、プラスチック基材に位相差性を付与する方法について説明する。プラスチック基材は、公知の延伸方法により位相差性を付与することができる。例えば、プラスチック基材がロールに巻き取られているロール(巻き取り体)を準備し、巻き取り体から、プラスチック基材を連続的に巻き出し、巻き出されたプラスチック基材を加熱炉へと搬送する。加熱炉の設定温度は、プラスチック基材のガラス転移温度近傍(℃)〜[ガラス転移温度+100](℃)の範囲、好ましくは、ガラス転移温度近傍(℃)〜[ガラス転移温度+50](℃)の範囲とする。加熱炉においては、プラスチック基材の進行方向へ、又は進行方向と直交する方向へ延伸する際に、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸又は二軸の熱延伸処理を行う。延伸の倍率は、通常1.1〜6倍程度の範囲であり、好ましくは1.1〜3.5倍程度の範囲である。また、斜め方向に延伸する方法としては、連続的に配向軸を所望の角度に傾斜させることができるものであれば、特に限定されず、公知の延伸方法が採用できる。このような延伸方法としては、例えば、特開昭50−83482号公報及び特開平2−113920号公報に記載された方法を挙げることができる。
透明基材の厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点、及び、十分な透明性が確保できる点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。ガラス基材の適当な厚みは、例えば、100〜3000μm程度であり、好ましくは100〜1000μm程度である。プラスチック基材の適当な厚みは、例えば、5〜300μm程度であり、好ましくは20〜200μm程度である。本実施形態の偏光板を、後述する円偏光板として使用する場合や、特にモバイル機器用途の円偏光板として使用する場合の透明基材の厚みは20〜100μm程度が好ましい。なお、延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前の厚みや延伸倍率によって決定される。
図1は、本発明に係る偏光板10の一実施形態を模式的に示す断面図である。偏光板10は、基材1と、該基材1上に設けられた偏光子(偏光層)3とを有している。偏光子3において、二色性色素3aが配向している。基材1上には、後述する配向層2が形成されていてもよい。
2−2.配向層
偏光子の製造に用いる基材には、配向層が形成されていることが好ましい。この場合、偏光子形成用組成物は配向層上に塗布することとなる。このため、配向層は、偏光子形成用組成物の塗布により溶解しない程度の溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。配向層は、配向性ポリマーにより形成することができる。
配向性ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ゼラチン類、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルを挙げることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
配向性ポリマーは、溶剤に溶解した配向性ポリマー組成物(配向性ポリマーを含む溶液)として、基材上に塗布することにより、基材上に配向層を形成することができる。溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶媒;並びにクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶媒が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、例えば、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)及びオプトマー(登録商標、JSR(株)製)が挙げられる。
基材に配向層を形成する方法としては、例えば、基材上に配向性ポリマー組成物又は市販の配向膜材料を塗布し、アニールする方法が挙げられる。このようにして得られる配向層の厚さは、通常、10nm〜10000nmの範囲であり、好ましくは10nm〜1000nmの範囲である。
配向膜に対して配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングを行うこと(ラビング法)が好ましい。配向規制力を付与することにより重合性液晶化合物を所望の方向に配向させることができる。
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、例えば、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを準備し、基材上に配向層形成用の塗布膜が形成された積層体をステージに載せて、回転しているラビングロールに向けて搬送することで、配向層形成用塗布膜と、回転しているラビングロールとを接触させる方法が挙げられる。
配向層は、光配向層であってもよい。光配向層とは、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと、溶剤とを含む組成物(以下、場合により「光配向層形成用組成物」という)を基材に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することによって配向規制力を付与した配向層のことをいう。光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。二量化反応又は光架橋反応を起こす光反応性基が、配向性に優れ、偏光子形成時のスメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素−炭素二重結合(C=C結合)、炭素−窒素二重結合(C=N結合)、窒素−窒素二重結合(N=N結合)及び炭素−酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
C=C結合を有する光反応性基としては、例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ−ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、例えば、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、例えば、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とする基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ−ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基又はハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。中でも、光二量化反応を起こしうる光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。さらに、光反応性基を有するポリマーとしては、ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものがより好ましい。
光配向層形成用組成物の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものが好ましく、例えば、上述の配向性ポリマー組成物に用いた溶剤が挙げられる。
光配向層形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの濃度は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの種類や製造しようとする光配向層の厚みによって適宜調節できるが、固形分濃度で表して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3〜10質量%の範囲がより好ましい。光配向層の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向層形成用組成物には、ポリビニルアルコ−ルやポリイミド等の高分子材料、光増感剤が含まれていてもよい。
配向性ポリマー組成物又は光配向層形成用組成物を基材上に塗布する方法としては、スピンコ−ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法等の塗布法や、フレキソ法等の印刷法などの公知の方法が採用される。なお、偏光子製造を、RolltoRoll形式の連続的製造方法により実施する場合、塗布方法としては、通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法等の印刷法が採用される。
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、配向方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
2−3.偏光板の製造方法
基材又は基材に形成された配向層上に、偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を得る。偏光子形成用組成物を塗布する方法としては例えば、配向性ポリマー組成物又は光配向層形成用組成物を基材に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。
次に、上記塗布膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で溶剤を乾燥除去することにより、乾燥被膜が形成される。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法が挙げられる。
好ましい形態としては、一旦、乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物の液晶状態をネマチック液晶にした後、ネマチック液晶相をスメクチック液晶相に転移させる。このようにネマチック液晶相を経由してスメクチック液晶相を形成するためには、例えば、乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物がネマチック液晶相を示す温度以上に加熱し、次いで、重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度まで冷却するといった方法が採用される。
乾燥被膜中の重合性液晶化合物をスメクチック液晶相としたり、重合性液晶化合物を、ネマチック液晶相を経由してスメクチック液晶相としたりする場合、重合性液晶化合物の相転移温度を測定することで、液晶状態を制御する条件(加熱条件)を求めることができる。相転移温度の測定条件は、本明細書の実施例で説明する。
次に、重合性液晶化合物の重合工程について説明する。ここでは、偏光子形成用組成物に光重合開始剤を含有させ、乾燥被膜中の重合性液晶化合物の液晶状態をスメクチック液晶相にした後、このスメクチック液晶相の液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を光重合させる方法について詳述する。
光重合において、乾燥被膜に照射する光としては、乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、又は重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)及びその量に応じて適宜、可視光、紫外光及びレーザー光からなる群より選択される光や活性電子線によって行うことができる。これらのうち、重合反応の進行をコントロールし易い点や、光重合に係る装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。よって、紫外光によって、光重合できるように、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。また、重合させる際には、紫外光照射とともに適当な冷却手段により、乾燥被膜を冷却することで重合温度をコントロールすることもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施できれば、基材に比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に偏光子を形成できるという利点もある。なお、光重合の際、マスキングや現像を行うことによって、パターニングされた偏光子を得ることもできる。
以上のような光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、ネマチック液晶相又はスメクチック液晶相、好ましくは、すでに例示したような高次のスメクチック液晶相を保持したまま重合し、偏光子が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック液晶相を保持したまま重合して得られる偏光子は、従来のホストゲスト型偏光子、すなわち、ネマチック液晶相の液晶状態を保持したままで重合性液晶化合物などを重合させて得られる偏光子と比較して偏光性能が高いという利点がある。さらに、リオトロピック性二色性色素のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点がある。
偏光子の厚みは、0.5μm以上5μm以下の範囲が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。したがって、偏光子形成用の塗布膜の厚みは、得られる偏光子の厚みを考慮して定められる。偏光子の厚みは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計の測定で求めることができる。
形成された偏光子は上述のとおり、X線回折測定においてブラッグピークが得られるものであると特に好ましい。ブラッグピークが得られる偏光子としては、例えば、ヘキサチック相又はクリスタル相に由来する回折ピークを示す偏光子を挙げることができる。
本実施形態に係る偏光子は、ニュートラルな色相性に優れるものである。ニュートラルな色相性に優れる偏光子とは、L*a*b*(Lab)表色系における色座標a*値及びb*値が、以下の式(1F)及び式(2F)の関係を満たすものである。
−3≦ 色度a* ≦3 (1F)
−3≦ 色度b* ≦3 (2F)
色座標a*値及びb*値のそれぞれを、「色度a*」及び「色度b*」ともいう。このa*及びb*はともに0(ゼロ)に近ければ近いほど、ニュートラルな色相を示す偏光子であると判定される。このような偏光子を備えた表示装置においては、着色の無い良好な白表示が得られる。
偏光子の色相において、吸収軸が互いに直交するように2枚の偏光子を重ね、その際の色相を上記と同様にして求め、「直交a*」及び「直交b*」を算出した場合、かかる直交a*及び直交b*のそれぞれが、以下の式(1F’)及び式(2F’)の関係を満たすとさらに好ましい。これら直交a*及び直交b*は、偏光子を備えた表示装置において、黒表示の色相がニュートラルであるか否かを示す指標である。この直交a*及び直交b*はともに0(ゼロ)に近ければ近いほど、着色の無い良好な黒表示が得られる。
−3≦ 直交a* ≦3 (1F’)
−3≦ 直交b* ≦3 (2F’)
商業的に偏光子を製造する際には、連続的に偏光子を形成できる方法が求められる。このような連続的製造方法はRolltoRoll形式によるものであり、場合により、「本製造方法」という。なお、本製造方法では、基材が透明基材である場合を中心に説明する。基材が透明基材である場合は、最終的に得られるものが、透明基材と、偏光子とを有する偏光板となる。
本製造方法は、例えば、透明基材が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、第1ロールから、透明基材を連続的に送り出す工程と、透明基材上に配向層を連続的に形成する工程と、該配向層上に、偏光子形成用組成物を連続的に塗布する工程と、塗布された偏光子形成用組成物を、重合性液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、配向層上に乾燥被膜を連続的に形成する工程と、該乾燥被膜中に含まれる重合性液晶化合物をネマチック液晶相、好ましくはスメクチック液晶相とした後、該スメクチック液晶相を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、膜を連続的に得て偏光子とする工程と、連続的に得られた偏光子を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程と、を有する。
本製造方法により得られる偏光板は、その形状がフィルム状且つ長尺状の偏光フィルムである。この偏光板は、後述する液晶表示装置などに用いる場合には、当該液晶表示装置のスケールなどに合わせ、所望の寸法になるように裁断されて用いられる。
偏光板は、透明基材/光配向層/偏光子の積層体の形態をとることができるが、光配向層や透明基材を剥離することで偏光子を単層で得ることもできる。また、偏光板は、透明基材/光配向層/偏光子以外の層又は膜を積層した形態にしてもよい。これらの層及び膜としては、すでに述べたように、偏光板は位相差フィルムを更に備えていてもよいし、反射防止層又は輝度向上フィルムを更に備えていてもよい。
例えば、本実施形態の偏光板は、1/4波長板を備えることで、円偏光板となる。図2には、本発明に係る円偏光板100の一実施形態を模式的に示す断面図である。円偏光板100は、配向層2が形成された基材1と、配向層2上に設けられた偏光子3と、基材1の配向層2が形成された面とは反対の面に設けられた1/4波長板である位相差フィルム4とを含むことができる。また、位相差フィルム4は、偏光子3側に形成されていてもよい。この場合、図3に示すように、円偏光板110は、基材1、配向層2、偏光子3及び位相差フィルム4の順に配置された形態を取ることもできる。
円偏光板を作製する際、適当な粘着剤を用い、粘着剤から形成される粘着層を介して、基材1又は偏光子3と、位相差フィルム4とを貼合してもよい。
透明基材として、予め位相差性が付与されている基材1(位相差フィルム4)を用いることで、透明基材自体が位相差層としての機能を兼ね備えていてもよい。透明基材自体を位相差フィルムとすることで、位相差フィルム/光配向層/偏光子の形態の円偏光板又は楕円偏光板とすることもできる。例えば、位相差フィルムとして1軸延伸した1/4波長板を用いた場合、偏光UVの照射方向を透明基材の搬送方向に対して略45°となるように設定することで、RolltoRollで円偏光板を作製することが可能である。このように円偏光板を製造する際に用いられる1/4波長板は、可視光に対する面内位相差値が、波長が短くなるに従って小さくなる特性を有するものが好ましい。図4は、基材自体を位相差フィルムとして機能する場合の円偏光板120の一実施形態を模式的に示す断面図である。円偏光板120は、配向層2が形成された位相差フィルム4と、配向層2上に設けられた偏光子3とから構成される形態を取ることができる。
位相差フィルムとして1/2波長板を用いて、その遅相軸と偏光子の吸収軸の角度をずらして設定したような直線偏光板ロールを作製し、偏光子を形成した面と反対側に1/4波長板を更に形成することで広帯域の円偏光板とすることも可能である。
位相差フィルムとして用いられる1/4波長板の波長450nmの光に対する複屈折率、波長550nmの光に対する複屈折率及び波長650nmの光に対する複屈折率は、下記式(II)及び(III)で示される関係を満足する逆波長分散性を有することが好ましい。式中、Δn(λ)は波長λnmの光に対する複屈折率を表す。
Δn(450)/Δn(550)≦1.00 (II)
1.00≦Δn(650)/Δn(550) (III)
このような逆波長分散特性を示す位相差フィルムは、特許第5463666号公報に記載の方法により作製することができる。
4.偏光板の用途
偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイが挙げられる。液晶表示装置としては、例えば、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置が挙げられる。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。本実施形態の偏光板は、特に有機EL表示装置又は無機EL表示装置の表示装置に有効に用いることができる。
電子ペーパーとしては、光学異方性と染料分子配向のような分子により表示されるもの、電気泳動、粒子移動、粒子回転、相変化のような粒子により表示されるもの、フィルムの一端が移動することにより表示されるもの、分子の発色/相変化により表示されるもの、分子の光吸収により表示されるもの、電子とホールが結合して自発光により表示されるものなどが挙げられる。より具体的には、マイクロカプセル型電気泳動、水平移動型電気泳動、垂直移動型電気泳動、球状ツイストボール、磁気ツイストボール、円柱ツイストボール方式、帯電トナー、電子粉流体、磁気泳動型、磁気感熱式、エレクトロウェッテイング、光散乱(透明/白濁変化)、コレステリック液晶/光導電層、コレステリック液晶、双安定性ネマチック液晶、強誘電性液晶、2色性色素・液晶分散型、可動フィルム、ロイコ染料による発消色、フォトクロミック、エレクトロクロミック、エレクトロデポジション、フレキシブル有機ELなどが挙げられる。電子ペーパーは、テキストや画像を個人的に利用するものだけでなく、広告表示(サイネージ)等に利用されるものであってもよい。本実施形態の偏光板によれば、電子ペーパーの厚みを薄くすることができる。
立体表示装置としては、例えばマイクロポール方式のように交互に異なる位相差フィルムを配列させる方法が提案(特開2002−185983号公報)されているが、本実施形態の偏光板を用いると、印刷、インクジェット、フォトリソグラフィー等によりパターニングが容易であるため、表示装置の製造工程を短くすることができ、かつ位相差フィルムが不要となる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
〔吸光度測定〕
偏光子の吸光度を、以下のようにして測定した。二色性色素の配向方向(吸収軸方向)の吸光度(A1)及び偏光子の面内であって配向垂直方向(透過軸方向)の吸光度(A2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV−3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を使用して、ダブルビーム法により2nmステップ380〜680nmの波長範囲で測定した。尚、偏光板の表面反射による光損失分の寄与を除去するために、測定サンプルをセットした後に、光吸収の無い800nmでゼロ点補正してから測定を実施した。
〔耐熱性評価〕
粘着剤を介して、偏光板におけるトリアセチルセルロースフィルム面を、ガラス基板に貼合した。そして、23℃において吸収軸方向の吸光度A1を上記の方法により測定した(A1(23℃))。その後、85℃のオーブンに100時間投入し、取り出した後に再び上記の方法により吸光度測定を実施した。下記式(I)により吸光度保持率(%)を算出した。
吸光度保持率(%)=A1(85℃)/A1(23℃)×100 (I)
式中、A1(85℃)は85℃の耐熱オーブン中で偏光板を100時間保持した後の吸収軸方向の吸光度、A1(23℃)は耐熱性試験前に23℃で測定した際の吸収軸方向の吸光度を示す。
〔膜厚測定〕
偏光板をミクロトームで切削した後、カーボン蒸着を施した断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−STEM)、型番:「S−5500」、日立製作所製)により観察することで、偏光子(偏光層)の厚みを測定した。
実施例1
[光配向層形成用組成物の製造]
下記式(3)で表される光配向性材料(2部)と、溶剤としてo−キシレン(98部)とを混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向層形成用組成物を得た。
〔偏光子形成用組成物の製造〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光子形成用組成物を得た。
重合性液晶化合物;下記式(4−6)で表される化合物 75部
下記式(4−7)で表される化合物 25部

二色性色素;下記式(2−18)で表されるMagenta色素 2.6部
下記式(2−15)で表されるYellow色素 2.6部
下記式(2−27)で表されるCyan色素 2.6部

重合開始剤;2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製) 6部
レベリング剤;ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製) 1.2部
溶剤;キシレン 250部
[偏光フィルム(偏光板)の製造]
幅600mmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製KC4UY−TAC 40μm)ロールを8m/分の速度で連続的に巻出し、フィルム表面にプラズマ処理を施した後に、スロットダイコーターにより光配向層形成用組成物を16mL/分の流量で吐出して、フィルム中央部の幅400mm範囲に塗布し、第一塗布膜を形成した。さらに、100℃に設定した通風乾燥炉中に2分間搬送させることで溶媒を除去し、第一乾燥膜を形成した。その後、フィルム搬送方向に対して45°方向に偏光した偏光UV光を該第一乾燥膜に20mJ/cm(313nm基準)の強度となるように照射することで配向規制力を付与して、光配向層付き基材フィルムを作製した。光配向層面上に、スロットダイコーターにより偏光子形成用組成物を36mL/分の流量で吐出して、フィルム中央部の幅400mm範囲に塗布し、第二塗布膜を形成した。さらに、110℃に設定した通風乾燥炉中に2分間搬送させることで溶媒を除去し、第二乾燥膜を形成した。その後、UV光を500mJ/cm(365nm基準)で照射して重合性液晶化合物を重合硬化させることで偏光子を形成した。その後、連続的にロール状に巻き上げることで、45°方向に吸収軸を有する偏光フィルムロールを作製した。このように作製した長尺の偏光フィルムロールから3cm角の大きさに切りだしたものを偏光板として用いて種々評価を行った。偏光子の膜厚、各二色性色素の極大吸収波長における吸光度及び吸光度保持率を表1に示す。
実施例2
偏光子形成用組成物の塗布流量を33mL/分とした以外は実施例1と同様にして、偏光フィルムロールを作製し、実施例1と同様の測定を実施した。
実施例3
偏光子形成用組成物の塗布流量を30mL/分とした以外は実施例1と同様にして、偏光フィルムロールを作製し、実施例1と同様の測定を実施した。
実施例4
偏光子形成用組成物の塗布流量を27mL/分とした以外は実施例1と同様にして、偏光フィルムロールを作製し、実施例1と同様の測定を実施した。
実施例5
偏光子形成用組成物中の3種の二色性色素の量をそれぞれ1.3部とした以外は実施例3と同様にして、偏光フィルムロールを作製し、実施例1と同様の測定を実施した。
実施例6
偏光子形成用組成物の塗布流量を15mL/分とした以外は実施例5と同様にして、偏光フィルムロールを作製し、実施例1と同様の測定を実施した。
比較例1
〔ヨウ素PVA偏光板の作製〕
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5.5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に60秒間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に23℃で30秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き23℃の純水で15秒間洗浄した後、70℃で2分間乾燥して、ポリビニルアルコール樹脂にヨウ素が吸着配向された偏光子を得た。この偏光子を接触式の膜厚計により測定したところ、25μmであった。このようにして得られた偏光子の両面に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔クラレ株式会社製 クラレポバールKL318〕3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂〔住化ケムテックス株式会社製 スミレーズレジン(登録商標)650(固形分濃度30%の水溶液)〕1.5部から作製したポリビニルアルコール系接着剤を介して、ケン化処理を施したトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製KC4UY−TAC 40μm)で両面を保護して偏光板を作製した。この偏光板をサンプリングし、実施例1と同様の測定を実施したところ、474nmを極大吸収波長としてI3−PVA錯体起因の光吸収が、594nmを極大吸収波長としてI5−PVA錯体起因の光吸収が測定された。
比較例2
ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.06/6/100の水溶液に23℃で30秒間浸漬した以外は比較例1と同様にして、偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムをサンプリングし、実施例1と同様の測定を実施したところ、474nmを極大吸収波長としてI3−PVA錯体起因の光吸収が、594nmを極大吸収波長としてI5−PVA錯体起因の光吸収が測定された。
比較例3
ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.06/6/100の水溶液に23℃で40秒間浸漬した以外は比較例1と同様にして、偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムをサンプリングし、実施例1と同様の測定を実施したところ、474nmを極大吸収波長としてI3−PVA錯体起因の光吸収が、594nmを極大吸収波長としてI5−PVA錯体起因の光吸収が測定された。
実施例1〜6の偏光板は、薄膜であるにもかかわらず、高い光吸収選択性能を有し、非常に高い耐熱性を有していた。また、実施例1〜6の偏光板では、耐熱試験後に反り等は全く発生しておらず、良好なフィルム形状を保持していた。
比較例1〜3の偏光板では、I5−PVA錯体の光吸収に起因する吸光度が耐熱試験後に70〜77%程度まで低下し、短波長の光吸収と比較して長波長の光吸収が弱くなったため、全体として赤味を帯びた色相となった。また、比較例1〜3の偏光板では、PVAの熱による変形が大きく、大きな反りが発生した。
本発明の偏光板は、薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れることから、液晶表示装置、(有機)EL表示装置及び投射型液晶表示装置を製造するうえで極めて有用である。
1…基材、2…配向層、3…偏光子、3a…二色性色素、4…位相差フィルム、10…偏光板、100,110,120…円偏光板。

Claims (10)

  1. 基材と偏光子とを備えた偏光板であって、
    前記偏光子は、二色性色素が配向している厚さ5μm以下の偏光層を有し、
    下記式(I)で示される吸光度保持率が、80%以上である、偏光板。
    吸光度保持率(%)=A1(85℃)/A1(23℃)×100 (I)
    (式中、A1(85℃)は、85℃の耐熱オーブン中で偏光板を100時間保持した後の二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表し、A1(23℃)は、前記偏光板を前記耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における吸収軸方向の吸光度を表す。)
  2. 前記A1(23℃)の値が0.3以上2.0以下である、請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記偏光板を前記耐熱オーブンに投入する前に23℃で測定した二色性色素の吸収極大波長における透過軸方向の吸光度A2(23℃)の値が、0.001以上0.1以下である、請求項1又は2に記載の偏光板。
  4. 前記二色性色素が、有機染料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板。
  5. 前記偏光層が、重合性液晶化合物の重合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光板。
  6. 前記重合性液晶化合物が、スメクチック液晶相を示す化合物である、請求項5に記載の偏光板。
  7. 前記重合性液晶化合物が、高次スメクチック液晶相を示す化合物である、請求項5に記載の偏光板。
  8. 前記偏光子が、X線回折測定においてブラッグピークを示す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の偏光板。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の偏光板と、1/4波長板とを含む円偏光板。
  10. 前記1/4波長板の波長450nmの光に対する複屈折率、波長550nmの光に対する複屈折率及び波長650nmの光に対する複屈折率が、下記式(II)及び(III)で示される関係を満足する逆波長分散性を有する、請求項9に記載の円偏光板。
    Δn(450)/Δn(550)≦1.00 (II)
    1.00≦Δn(650)/Δn(550) (III)
    (式中、Δn(λ)は波長λnmの光に対する複屈折率を表す。)
JP2015051787A 2015-03-16 2015-03-16 偏光板及び円偏光板 Active JP6538383B2 (ja)

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