JP2016169760A - 自動変速機 - Google Patents

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Daisuke Yamaoka
大祐 山岡
修大 加藤
Shuta Kato
修大 加藤
翼 出口
Tsubasa Deguchi
翼 出口
敏之 市川
Toshiyuki Ichikawa
敏之 市川
武史 鳥居
Takeshi Torii
武史 鳥居
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Abstract

【課題】回転部材の回転速度による影響を受け難く、複数の方向へ潤滑油を適宜分配して供給可能な自動変速機を提供することを目的とする。【解決手段】クラッチドラム20は、ケースに対して相対回転自在に支持され、変速段及び車速等によって回転速度が変化する。クラッチドラム20のボス部20aは、径方向内側に潤滑油を供給される油溜りo1を形成され、油溜りo1から径方向外側へ貫通する小径油路b1及び大径油路b2が形成されている。小径油路b1と大径油路b2とは、軸方向に対して異なる角度で傾斜しており、油溜りo1の潤滑油を異なる方向へ飛散させる。これにより、自動変速機は、クラッチドラム20の回転速度が変化するときにも、潤滑油を軸方向に位置の異なる2つの部位へと適宜に分配して供給することができる。【選択図】図3

Description

この技術は、潤滑油を径方向内側から外側へと供給可能な油路を形成され、ケースに対して相対回転可能に支持される回転部材を有する自動変速機に関する。
一般に、自動車等に搭載される自動変速機において、変速機構の機械要素を潤滑する潤滑油は、ケースに形成された油路と、該油路と連絡して機構の軸方向両端の中央部から内側へと陥入する油路と、を介して変速機構内部へ導入された後、径方向外側へと分配される。
従来、径方向に貫通する油路を形成された内筒部を有し、ケースと一体の固定部材に回転自在に支持されるクラッチドラムを備えた自動変速機が知られている(特許文献1参照)。上記内筒部の油路に進入した潤滑油は、供給圧及び回転部材の回転による遠心力によって径方向外側へと飛散し、遊星歯車機構及び多板式のクラッチ等を潤滑する。
特開2012−207734号公報
一般に、変速機構を構成するクラッチドラムは、変速段及び車速等の条件により、回転速度が変化する。このため、上記特許文献1に記載の自動変速機において、クラッチドラムが停止しているときには、潤滑油は軸方向に傾斜して形成された油路の延長線に沿って飛散する一方、クラッチドラムが回転するときには、遠心力の影響により潤滑油は油路の延長線よりも径方向外側に逸れて飛散していた。
これにより、クラッチドラムが高速で回転するほど、潤滑油が油路の開口部から径方向外側に位置するクラッチへと偏って飛散してしまい、遊星歯車機構等の潤滑量を確保するために多量の潤滑油を供給する必要があった。そして、必要な潤滑量よりも多く潤滑油が供給されると、潤滑油の撹拌抵抗が大きくなってしまい、変速機構の伝達効率が減少する要因となっていた。
そこで、本技術は、回転部材の回転速度による影響を受け難く、複数の方向へ潤滑油を適宜に分配して供給可能な自動変速機を提供することを目的とする。
本実施の形態に係る自動変速機(1)は、ケース(6)に対して相対回転自在に支持され、径方向内側に潤滑油が供給される供給部(o1)を形成された回転部材(20a)を備えた自動変速機(1)において、
前記回転部材(20a)は、
前記供給部(o1)から径方向外側へ向けて形成され、軸方向に対して第1の角度で傾斜した第1の油路(b1)と、
前記供給部(o1)から径方向外側へ向けて形成され、軸方向に対して前記第1の角度と異なる第2の角度で傾斜した第2の油路(b2)と、を有する、
ことを特徴とする。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
本自動変速機によると、回転部材は、径方向内側に形成された供給部から、軸方向に対して互いに異なる傾斜角度で形成された第1の油路及び第2の油路を有するため、供給部から供給された潤滑油は、第1及び第2の油路を通って軸方向に異なる位置へと到達する。これにより、回転部材の回転速度による影響を受け難く、供給部からの潤滑油が軸方向のどちらかに偏ることを抑えて、潤滑油を第1の油路の先に位置する部位と、第2の油路の先に位置する部位とに、適宜に分配して供給することができる。
本実施の形態に係る自動変速機の機構図。 (a)は本実施の形態に係る変速機構の係合表であり、(b)はその速度線図。 本実施の形態に係る自動変速機の要部の断面図。 本実施の形態に係る油路の配置を示す模式図。
以下、図面に沿って本実施の形態である自動変速機について説明する。この自動変速機は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)等のエンジン横置きの自動車の内部に配置されて好適な多段式の変速装置であり、図1及び図3は図の右方にエンジンが配置されるように描かれている。以下において、説明の便宜上、エンジン側を前方側とし、その反対側を後方側とする。
[自動変速機の概略構成]
自動変速機1は、図1に示すように、ミッションケース及びハウジングケースからなるケース6の内部に、トルクコンバータ2、変速機構3、カウンタシャフト4、及びディファレンシャルギヤ5が収められて構成されている。
トルクコンバータ2及び変速機構3は、不図示のエンジンクランク軸と同軸である変速機構3の入力軸7を中心に配置されている。カウンタシャフト4は入力軸7に対して平行に配置され、ディファレンシャルギヤ5は入力軸7及びカウンタシャフト4に対して平行に配置されている。
トルクコンバータ2は、ポンプインペラ、タービンランナ、及びステータを有し油を作動流体としてエンジン出力軸10の回転を入力軸7へと伝達するトルクコンバータ本体2aと、トルクコンバータ本体2aと並列配置され、変速機構3の入力軸7とエンジン出力軸10とを機械的に締結するロックアップクラッチ2bと、を有する。
変速機構3には、詳しくは後述するように、前方側に配置され、入力軸7の回転を減速して減速回転を生成するプラネタリギヤDP(遊星歯車機構)と、後方側に配置されて所定の変速比の下で変速された回転を生成し、出力ギヤ8に接続されるプラネタリギヤユニットPUとが備えられている。
カウンタシャフト4は、上記出力ギヤ8に噛合う大径ギヤ11と、ディファレンシャルギヤ5のリングギヤ14に噛合う小径ギヤ12aと、大径ギヤ11と小径ギヤ12aとを支持するシャフト12とを有し、出力ギヤ8の回転を減速してリングギヤ14へと伝達する。
ディファレンシャルギヤ5は、上記リングギヤ14と一体で、ピニオン13a,13aを内蔵するデフケース13と、ピニオン13a,13aに噛合って、左右のドライブシャフト15,15に接続されるサイドギヤ15a,15aとを有し、リングギヤ14の回転を左右のドライブシャフトへと分配する。
[変速機構]
次に、変速機構3について説明する。変速機構3の各回転要素は、入力軸7に対して同心状に配置されている。そのため、以下の説明において、入力軸7の軸心の方向を指して「軸方向」とする。
プラネタリギヤDPは、サンギヤS1と、キャリアCR1と、リングギヤR1とを備え、キャリアCR1に、サンギヤS1に噛合う複数のインナーピニオンP2と、リングギヤR1に噛合う複数のアウターピニオンP1とを互いに噛合うかたちで有する、所謂ダブルピニオンプラネタリギヤである。
プラネタリギヤユニットPUは、サンギヤS2,S3と、キャリアCR2と、リングギヤR2とを備え、キャリアCR2に、サンギヤS2に噛合う複数のショートピニオンP4と、サンギヤS3及びリングギヤR2に噛合う複数のロングピニオンP3とを互いに噛み合うかたちで有する、所謂ラビニヨ型プラネタリギヤである。
上記プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、ケース6に対して回り止めして取付けられている。キャリアCR1は入力軸7に接続され、入力軸7と一体に回転すると共に、第4クラッチC−4に接続されている。リングギヤR1は、第1クラッチC−1及び第3クラッチC−3のそれぞれに接続されている。
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、第1クラッチC−1を介してリングギヤR1の回転が入力自在となっている。サンギヤS3は、第3クラッチC−3を介してリングギヤR1の回転が、第4クラッチC−4を介してキャリアCR1の回転が、それぞれ入力自在となっていると共に、第1ブレーキB−1に接続されてケースに固定自在となっている。
また、プラネタリギヤユニットPUのキャリアCR2は、第2クラッチC−2を介して入力軸7の回転が入力自在となっていると共に、ワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2に接続されて、ワンウェイクラッチF−1によってケース6に対して一方向の回転を規制自在となっている一方、第2ブレーキB−2によってケース6に固定自在となっている。そして、リングギヤR2は、ケース6に対して回転自在に支持された出力ギヤ8に接続されている。
変速機構3は、上記第1ないし第4クラッチC−1〜C−4並びに第1及び第2ブレーキB−1,B−2が掴み換えされることで、図2(a)の係合表及び図2(b)の速度線図に示すように、前進1速段(1ST)〜8速段(8TH)及び後進1速段(Rev1)〜後進2速段(Rev2)の変速比を達成し、入力軸7に入力された回転を変速して出力ギヤ8を回転させ、カウンタシャフト4へと出力する。
[変速機構前方側の構成]
次いで、上述の変速機構3の前方側の構成について、図3に基づいて説明する。変速機構3の前方側において、第3クラッチC−3及び第4クラッチC−4、第3クラッチC−3が径方向外側に配置された二階建て状に構成され、第3及び第4クラッチC−3,C−4の後方側にプラネタリギヤDPが配置されている。
変速機構3の径方向中央には、入力軸7がケース6と一体の固定部材60により回転自在に支持されている。固定部材60は、不図示のオイルポンプのボディと一体に成形された円筒部60aと、トルクコンバータ2のステータを支持してオイルポンプを貫通して配置されたステータシャフト60bとが、嵌合されて一体に形成されている。
第3クラッチC−3は、クラッチドラム20と、複数の摩擦板29と、ピストン21と、キャンセルプレート22と、リターンスプリング23と、を有し、クラッチドラム20の内側に形成されている。
クラッチドラム20は、上記固定部材60にシール部材61及びニードルベアリング62を介して回転自在に支持されるボス部20a(回転部材)と、ボス部20aの前方側端から径方向に広がる延設部20bと、延設部20bの径方向外側端から後方側へ延出するドラム部20cと、延設部20bの途中で後方側へ突出する固定部20dとを有し、2つの部材が延設部20bの途中で溶接されて一体に形成されている。
複数の摩擦板29として、ドラム部20cにスプライン係合する外摩擦板と、後述するリングギヤR1の前方部43にスプライン係合する内摩擦板とが、軸方向に交互に並んで配置され、ドラム部20cに固設されたスナップリングにより後方側端の移動が規制されている。
ピストン21は、内周端においてシール部材を介して固定部20dに当接して径方向に広がり、外周部においてシール部材を介してドラム部20cに当接して、軸方向に摺動可能に支持されており、延設部20b、ドラム部20c、及び固定部20dとの間に油密性の作動油室25を形成している。また、ピストン21はドラム部20cとの当接部から後方側へ延出し、摩擦板29に当接して押圧可能な押圧部を有している。
キャンセルプレート22は、内周部でリベット63により固定部20dに固定されて径方向に広がり、外周端においてシール部材を介してピストン21に当接し、ピストン21との間にキャンセル油室26を形成している。リターンスプリング23はキャンセルプレート22とピストン21との間に軸方向に縮設され、ピストン21を摩擦板29から離間させるように付勢している。
第4クラッチC−4(多板式摩擦係合要素)は、クラッチドラム30と、複数の摩擦板39と、ピストン31と、キャンセルプレート32と、リターンスプリング33とを有する。
クラッチドラム30は、上記キャンセルプレート22と共に、リベット63によってクラッチドラム20の固定部20dに固定され、固定部20dから後方側へ延出する円筒形状部を有する。
複数の摩擦板39として、外側のクラッチドラム30にスプライン係合する外摩擦板と、内側のクラッチハブ42にスプライン係合する内摩擦板とが、軸方向に交互に並んで配置され、クラッチドラム30に固設されたスナップリングにより後方側端の移動が規制されている。
ピストン31は、内周端においてシール部材を介してボス部20aに当接して径方向に広がり、外周部においてシール部材を介して固定部20dに当接して、軸方向に摺動可能に支持されており、ボス部20a、延設部20b、及び固定部20dとの間に油密性の作動油室35を形成している。また、ピストン31は後方及び径方向外側にさらに延出し、摩擦板39に当接して押圧可能な押圧部を有している。
キャンセルプレート32は、内周端においてシールリングを介してボス部20aに支持されて径方向に広がり、ボス部20aに固設されたスナップリングにより軸方向の移動を規制されている。そして、キャンセルプレート32は、外周端においてシール部材を介してピストン31に当接し、ピストン31との間にキャンセル油室36を形成している。リターンスプリング33はキャンセルプレート32とピストン31との間に軸方向に縮設され、ピストン31を摩擦板39から離間させるように付勢している。
プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、ボス部20aの後方端の後方において、固定部材60により相対回転不能に支持されている。サンギヤS1の後方には、入力軸7から径方向に立ち上り、アウターピニオンシャフト52a及びインナーピニオンシャフト52bを支持するキャリアプレート51が配置されている。インナーピニオンシャフト52bにベアリングを介して支持され、サンギヤS1に噛合うインナーピニオンP2と、アウターピニオンシャフト52aにベアリングを介して支持され、リングギヤR1に噛合うアウターピニオンP1とは、互いに噛み合って配置され、キャリアプレート51と反対側の側面をキャリアカバ53に覆われている。キャリアカバ53は、該キャリアカバ53から前方に位置する第4クラッチC−4のクラッチハブ42の支持部材を兼ねている。
リングギヤR1は、内周面においてアウターピニオンP1に噛合うと共に、外周面において第1クラッチC−1の内摩擦板を支持するスプライン溝を形成された後方部41と、該後方部41から前方に延出し、第3クラッチC−3の内摩擦板を支持するスプライン溝を形成された前方部43とが一体に形成されている。
[潤滑油の供給構造]
次いで、変速機構3の前方側を潤滑する油の供給経路について説明する。ケース6はオイルパンを兼ねており、ミッションケース下部に滞留した油は不図示のオイルポンプにより吸入された後に不図示の油圧制御装置にあって潤滑圧に調圧され、ケース6に形成された油路へと供給される。
固定部材60には、図3に示すように、ケース6に形成された油路に連通して軸方向に延びる油路a1と、油路a1の後方端から径方向外側かつ後方へ向けて開口する油路a2と、油路a2より前方で油路a1から径方向外側へ向けて開口する油路a3と、油路a1から径方向内側へと向けて開口する油路a4とが形成されている。
油路a2の開口部は、クラッチドラム20のボス部20aと、シール部材61と、ニードルベアリング62とによって形成された油溜りo1(供給部)に面している。ボス部20aには、油溜りo2から径方向外側かつ軸方向後方へ向けて貫通する油孔として、小径油路b1(第1の油路)及び小径油路b1より大径の大径油路b2(第2の油路)が形成されている。
小径油路b1及び大径油路b2の径方向外側には、油溜りo1から供給される潤滑油の第1の潤滑対象部位であるプラネタリギヤDPと、第2の潤滑対象部位である第4クラッチC−4とを軸方向に隔てるレシーバ56(分岐部)が配置されている。レシーバ56は、プラネタリギヤDPのキャリアカバ53の径方向内側かつ軸方向に重なり合う位置に配置され、周方向にわたるプレート部56aと、プレート部56aの外周端からキャリアカバ53の前方側面に沿って外周方向に延出する延出部56bとを有する。
プラネタリギヤDPの前方側の側面には、レシーバ56の前方側で径方向内側に開口する開口部57が配置されている。そして、開口部57から後方に延びる管状の挿入部55は、アウターピニオンシャフト52a及びインナーピニオンシャフト52bの側面から軸方向に陥入する油路70(第3の油路)に挿入されており、これら挿入部55、開口部57、及びレシーバ56は、例えば一体成形された樹脂材料からなる。上記油路70は、シャフト内部で径方向に分岐して、アウターピニオンシャフト52a及びインナーピニオンシャフト52bの内側に開口している。
また、円筒形状からなる第3クラッチC−3及び第4クラッチC−4のクラッチドラム20,30、クラッチハブ42、及びリングギヤR1の前方部43及び後方部41には、径方向に貫通する油路が形成されており、潤滑油が径方向外側へと移動する経路となっている。
油路a3の開口部は、ボス部20aと、シール部材61,61とによって形成された油溜りo2に面している。ボス部20aには、油溜りo2からボス部20aの内部に向かう油路b3と、油路b3から分岐してキャンセル油室36に連通する油路b4と、油路b3から分岐して放射状に広がりキャンセル油室26に連通する油路b5とが形成されている。また、油路a4の開口部は、固定部材60と入力軸7との間隙に面している。
[油路の詳細構成]
本開示技術に係る小径油路b1及び大径油路b2の構成を詳しく説明する。小径油路b1は、大径油路b2に比して軸方向に対する角度が小さく設定されているため、油溜りo1から上記レシーバ56の後方側へと向かって形成される一方、大径油路b2は、油溜りo1から上記レシーバ56の前方側へと向かって形成されている。
小径油路b1の管径は、使用時における潤滑油の流速を考慮して設定されている。すなわち、油路の断面積を小さくするほど流速が大きくなり、油路の延長線に近い位置に潤滑油が飛散するため、クラッチドラム20の回転による潤滑油の供給位置のずれを軽減することができる。一方、断面積が小さいほど流量は小さくなり、潤滑油の供給量を確保するには多数の油路を形成する必要があり、工程を増加させてしまう。これらを考慮して、小径油路b1の管径は大径油路b2に比して設定されている。
そして、小径油路b1の断面積の合計と大径油路b2の断面積の合計とが略等しくなるように、図4の模式図に示すように、ボス部20aには小径油路b1が8箇所、大径油路b2が4箇所に形成されている。小径油路b1及び大径油路b2の数は、油圧制御装置(不図示)で調圧される潤滑圧、エンジン稼働時のクラッチドラム20の平均回転数、小径油路b1及び大径油路b2の管径、及び油の粘性等を考慮して設定されている。これら8個の小径油路b1と4個の大径油路b2とは、それぞれがボス部20aの軸心を中心とする正多角形の頂点に位置して、周方向均等に配置されている。また、小径油路b1及び大径油路b2は、同位相に重ならない一方、図3に示すように、軸方向に重なり合うように配置されている。
[潤滑油の供給]
自動変速機1は、上述した構成からなるため、変速機構3の前方側において、潤滑油は、ケース6の油路から固定部材60の油路a1を介して供給される
油路a1に供給された潤滑油は、油路a2,a3を通過して油溜りo1,o2に一時滞留すると共に、油路a4を介して入力軸7と固定部材60との間を潤滑する。油溜りo2の潤滑油の一部は、油路b3,b5を介して第3クラッチC−3のキャンセル油室26へと供給され、他の一部は、油路b3,b4を介して第4クラッチC−4のキャンセル油室36へと供給される。これにより、作動油室25,35に発生する遠心油圧をキャンセルして、リターンスプリング23,33によるピストン21,31の戻し作用を確実に働かせることができる。
油溜りo1の潤滑油の一部は、ニードルベアリング62を潤滑し、残りの潤滑油は小径油路b1及び大径油路b2を通って、径方向外側に飛散する。小径油路b1はレシーバ56の後方側へ向けて形成されているため、小径油路b1から供給された潤滑油は、プラネタリギヤDPのサンギヤS1及びインナーピニオンP2に到達し、アウターピニオンP1及びリングギヤR1に受け渡されて、これらギヤ群の噛合い面を潤滑すると共に、リングギヤR1の油路を通って、さらに図3にて図示を省略した第1クラッチC−1の摩擦板や第1ブレーキB−1の摩擦板などを通って、最終的にケース6の内周面へと到達して回収される。
大径油路b2はレシーバ56の前方側へ向けて形成されているため、大径油路b2から供給された潤滑油は、レシーバ56及びキャリアカバ53とキャンセルプレート32との間を通ってクラッチハブ42の内周面に到達し、クラッチハブ42の油路を通って第4クラッチC−4の摩擦板39を潤滑する。そして、クラッチドラム30の油路及びリングギヤR1の前方部43の油路を通って、第3クラッチC−3の摩擦板29を潤滑した潤滑油は、ドラム部20cの油路を通って最終的にケース6の内周面へと到達して回収される。
大径油路b2から供給された潤滑油の一部は、開口部57の内面に到達して、挿入部55及び油路70を通ってアウターピニオンP1及びインナーピニオンP2の内側のベアリングを潤滑する。そして、アウターピニオンP1及びインナーピニオンP2の側面から漏出した潤滑油は、リングギヤR1の油路を通って、さらに図3にて図示を省略した第1クラッチC−1の摩擦板や第1ブレーキB−1の摩擦板などを通って、最終的にケース6の内周面へと到達して回収される。
ところで、本実施形態において、クラッチドラム20はプラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3と一体に回転する(図1参照)。サンギヤS3は出力ギヤ8等を介してドライブシャフト15,15に連結されているため、車速によって回転速度が変化する。また、図2(b)に示すように、クラッチドラム20及びサンギヤS3の入力軸7に対する回転数及び回転方向は、変速機構3の変速段によっても変化する。
そして、クラッチドラム20の回転が停止されているときには、油溜りo1の潤滑油は、潤滑圧に基づき油溜りo1に供給されてくる潤滑油によって押し出されて、小径油路b1及び大径油路b2を通って飛散する。潤滑油が押し出される力は潤滑油にかかる重力に比して大きいため、潤滑油は概ね小径油路b1及び大径油路b2の延長線に沿って飛散して、上述のようにレシーバ56の前方と後方とに振り分けられる。
クラッチドラム20が正回転又は逆回転するときには、小径油路b1及び大径油路b2において潤滑油に遠心力が発生し、潤滑油の飛散方向が小径油路b1及び大径油路b2の形成された方向から径方向外側へとシフトする。
クラッチドラム20の回転数が比較的小さい場合には、潤滑油は概ね小径油路b1及び大径油路b2の延長線に沿って飛散する。クラッチドラム20の回転数が増加するほど、潤滑油に作用する遠心力は大きくなり、潤滑油の飛散方向のシフト量が大きくなる。このとき、小径油路b1の管径が大径油路b2に比して小さく設定され、小径油路b1を通る潤滑油の流速が大きいため、小径油路b1を通った潤滑油がレシーバ56の前方側へと飛散してしまうことを抑えることができる。
これにより、クラッチドラム20の回転状態が変化するときにも、油溜りo1から供給される潤滑油は、小径油路b1及び大径油路b2により、プラネタリギヤDPと第4クラッチC−4とに適宜分配して供給され、いずれか一方に偏ることが抑えられている。
また、軸方向に位置が異なる複数の潤滑対象部位に潤滑油を供給するために、潤滑対象部位に軸方向位置を合わせた油路を設ける必要がなく、変速機構3を軸方向にコンパクトに構成することができる。
さらに、小径油路b1の断面積の合計と大径油路b2の断面積の合計とが、略等しくなるように設定されているため、油溜りo1の潤滑油を略等分してレシーバ56の前方側と後方側とに振り分けることができる。
<本実施の形態のまとめ>
本実施の形態に係る自動変速機(1)は、ケース(6)に対して相対回転自在に支持され、径方向内側に潤滑油が供給される供給部(o1)を形成された回転部材(20a)を備えた自動変速機(1)において、
前記回転部材(20a)は、
前記供給部(o1)から径方向外側へ向けて形成され、軸方向に対して第1の角度で傾斜した第1の油路(b1)と、
前記供給部(o1)から径方向外側へ向けて形成され、軸方向に対して前記第1の角度と異なる第2の角度で傾斜した第2の油路(b2)と、を有する、ことを特徴とする。
本自動変速機によると、回転部材は、径方向内側に形成された供給部から、軸方向に対して互いに異なる傾斜角度で形成された第1の油路及び第2の油路を有するため、供給部から供給された潤滑油は、第1及び第2の油路を通って軸方向に異なる位置へと到達する。これにより、回転部材の回転速度による影響を受け難く、供給部からの潤滑油が軸方向のどちらかに偏ることを抑えて、潤滑油を第1の油路の先に位置する部位と、第2の油路の先に位置する部位とに、適宜に分配して供給することができる。
また、本自動変速機(1)にあって、前記第1の油路(b1)は、軸方向について前記第2の油路(b2)と同じ側に傾斜し、かつ前記第1の角度が前記第2の角度に比して小さく、
前記第1の油路(b1)の断面積は、前記第2の油路(b2)の断面積に比して小さい、ことを特徴とする。
これにより、第1の油路を通る潤滑油の流速が、第2の油路を通る潤滑油の流速に比して大きくなるため、回転部材の回転数が大きくなったとしても、第1の油路を通った潤滑油の供給経路が遠心力によって変化することを抑えることができる。これにより、回転部材が高速で回転する場合でも、第1の油路の先に位置する潤滑対象部位に十分な量の潤滑油を供給することができる。
また、本自動変速機(1)にあって、前記回転部材(20a)は、複数の前記第1の油路(b1)と、複数の前記第2の油路(b2)とを有し、
前記複数の第1の油路(b1)は、前記複数の第2の油路(b2)に比して数が多い、ことを特徴とする。
これにより、第2の油路に比して断面積の小さい第1の油路を設けた場合であっても、第1の油路の先に位置する潤滑対象部位に十分な量の潤滑油を供給することができる。
また、本自動変速機(1)にあって、前記複数の第1の油路(b1)と、前記複数の第2の油路(b2)とは、それぞれ周方向均等に配置される、ことを特徴とする。
これにより、回転部材が回転停止している場合であっても、供給部からの潤滑油を周方向均等に分配して、第1及び第2の油路の先に位置する潤滑対象部位のそれぞれを、周方向に偏りなく潤滑することができる。
また、本自動変速機(1)にあって、複数の摩擦板(39)を有する多板式摩擦係合要素(C−4)と、
遊星歯車機構(DP)と、
前記第1の油路(b1)及び前記第2の油路(b2)よりも径方向外側に配置され、前記供給部(o1)からの潤滑油を軸方向に分離して前記多板式摩擦係合要素(C−4)と前記遊星歯車機構(DP)とに振り分ける分岐部(56)と、を備え
前記第1の油路(b1)は、前記分岐部(56)の軸方向のいずれか一方へ向かって形成され、
前記第2の油路(b2)は、前記分岐部(56)の軸方向のいずれか他方へ向かって形成される、ことを特徴とする。
これにより、第1及び第2の油路の形成方向に加えて、分岐部によっても潤滑油が軸方向に振り分けられるため、2つの潤滑対象部位である多板式摩擦係合要素と遊星歯車機構とのそれぞれに、確実に潤滑油を供給することができる。
また、本自動変速機(1)にあって、前記遊星歯車機構(DP)は、
ピニオンギヤ(P1,P2)を回転自在に支持し、前記ピニオンギヤ(P1,P2)の内側に潤滑油を供給可能な第3の油路(70)を形成されたピニオンシャフト(52a,52b)を有し、
前記分岐部(56)に対して、軸方向に前記多板式摩擦係合要素(C−4)の側にあって、径方向内側へ向けて開口し、前記第3の油路(70)へ潤滑油を導入する開口部(57)を備える、ことを特徴とする。
これにより、分岐部によって多板式摩擦係合要素の側に振り分けられた潤滑油の一部が、開口部及び第3の油路を介してピニオンギヤの内側へと供給され、ピニオンギヤとピニオンシャフトとの間を効率的に潤滑することができる。
<他の実施の可能性>
本技術は、多段式の自動変速機として適用したが、径方向内側から供給される潤滑油を径方向外側へ供給する回転部材を有する装置であれば同様に適用である。例えば、ベルト式の無段変速機(CVT)の一部を構成するクラッチドラムに適用してもよい。
なお、第1及び第2の油路に加えて、第1及び第2の油路と軸方向に対する傾斜角度が異なる油路を新たに設けて、油溜りo1の潤滑油を軸方向に位置が異なる3つ以上の潤滑対象部位へと供給する構成としてもよい。
また、第2の油路は、軸方向に関して第1の油路と反対側に傾斜する構成としてもよい。あるいはまた、第1及び第2の油路のいずれか一方が、軸方向に対して垂直に形成される構成としてもよい。
また、第1及び第2の油路の管径及び数は、上述した構成に限らず、潤滑対象部位の必要とする潤滑量を考慮して適宜変更してもよい。
1…自動変速機
6…ケース
20a…回転部材(ボス部)
39…摩擦板
52a…ピニオンシャフト(アウターピニオンシャフト)
52b…ピニオンシャフト(インナーピニオンシャフト)
56…分岐部(レシーバ)
57…開口部
70…第3の油路(油路)
C−4…多板式摩擦係合要素(第4クラッチ)
DP…遊星歯車機構(プラネタリギヤ)
P1…ピニオンギヤ(アウターピニオン)
P2…ピニオンギヤ(インナーピニオン)
b1…第1の油路(小径油路)
b2…第2の油路(大径油路)
o1…供給部(油溜り)

Claims (6)

  1. ケースに対して相対回転自在に支持され、径方向内側に潤滑油が供給される供給部を形成された回転部材を備えた自動変速機において、
    前記回転部材は、
    前記供給部から径方向外側へ向けて形成され、軸方向に対して第1の角度で傾斜した第1の油路と、
    前記供給部から径方向外側へ向けて形成され、軸方向に対して前記第1の角度と異なる第2の角度で傾斜した第2の油路と、を有する、
    ことを特徴とする自動変速機。
  2. 前記第1の油路は、軸方向について前記第2の油路と同じ側に傾斜し、かつ前記第1の角度が前記第2の角度に比して小さく、
    前記第1の油路の断面積は、前記第2の油路の断面積に比して小さい、
    ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
  3. 前記回転部材は、複数の前記第1の油路と、複数の前記第2の油路とを有し、
    前記複数の第1の油路は、前記複数の第2の油路に比して数が多い、
    ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機。
  4. 前記複数の第1の油路と、前記複数の第2の油路とは、それぞれ周方向均等に配置される、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動変速機。
  5. 複数の摩擦板を有する多板式摩擦係合要素と、
    遊星歯車機構と、
    前記第1の油路及び前記第2の油路よりも径方向外側に配置され、前記供給部からの潤滑油を軸方向に分離して前記多板式摩擦係合要素と前記遊星歯車機構とに振り分ける分岐部と、を備え
    前記第1の油路は、前記分岐部の軸方向のいずれか一方へ向かって形成され、
    前記第2の油路は、前記分岐部の軸方向のいずれか他方へ向かって形成される、
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動変速機。
  6. 前記遊星歯車機構は、
    ピニオンギヤを回転自在に支持し、前記ピニオンギヤの内側に潤滑油を供給可能な第3の油路を形成されたピニオンシャフトを有し、
    前記分岐部に対して、軸方向に前記多板式摩擦係合要素の側にあって、径方向内側へ向けて開口し、前記第3の油路へ潤滑油を導入する開口部を備える、
    ことを特徴とする請求項5に記載の自動変速機。
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