JP2014167310A - 自動変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸方向に重複する2つのドラム部が相対回転する際に、それらの間に介在された潤滑油を排出することで、潤滑油による攪拌抵抗を抑えて燃費を向上できる自動変速機を提供する。
【解決手段】変速機構の一部を構成すると共に、ケースにより回転自在に支持される第1クラッチC−1のドラム部22aと、変速機構の他の一部を構成すると共に、第1クラッチC−1のドラム部22aの外周側に同心で互いに相対回転自在にケースにより支持され、かつ軸方向の一方側に開口部76aを有する第3クラッチC−3のドラム部32aと、第1クラッチC−1のドラム部22aの外周側部と第3クラッチC−3のドラム部32aの内周側部との少なくとも一部に設けられ、ドラム部22a,32a同士が相対回転する場合に、ドラム部22a,32a同士の間の潤滑油を開口部76aから排出する排出溝22fと、を備える。
【選択図】図4
【解決手段】変速機構の一部を構成すると共に、ケースにより回転自在に支持される第1クラッチC−1のドラム部22aと、変速機構の他の一部を構成すると共に、第1クラッチC−1のドラム部22aの外周側に同心で互いに相対回転自在にケースにより支持され、かつ軸方向の一方側に開口部76aを有する第3クラッチC−3のドラム部32aと、第1クラッチC−1のドラム部22aの外周側部と第3クラッチC−3のドラム部32aの内周側部との少なくとも一部に設けられ、ドラム部22a,32a同士が相対回転する場合に、ドラム部22a,32a同士の間の潤滑油を開口部76aから排出する排出溝22fと、を備える。
【選択図】図4
Description
本発明は、例えば車両等に搭載される自動変速機に係り、詳しくは、複数のクラッチを備えると共に、各クラッチのドラム部同士が同心で軸方向に重複する自動変速機に関する。
従来、例えば、FFタイプ(フロントエンジン・フロントドライブ)の車両に用いて好適な自動変速機においては、自動変速機構の出力部材(カウンタギヤ)の変速比を生成する変速プラネタリギヤセットと、減速回転を生成する減速プラネタリギヤとを備え、前進8速段及び後進段を達成するものが提案されている(特許文献1参照)。この自動変速機は、変速プラネタリギヤセットのそれぞれの回転要素に、該減速プラネタリギヤからの減速回転及び入力回転を選択的に入力するための第1〜第4クラッチを備えている。また、このような多段変速が可能な自動変速機においても、コンパクト化が求められるようになっており、各クラッチの配置はお互い軸方向あるいは径方向に並列に配置される場合も多い。
例えば、第1クラッチと第3クラッチとは、互いの摩擦板が軸方向に隣接するように配置されると共に、図10(a)に示すように、第1クラッチのクラッチドラム101のドラム部(以下、第1ドラム部という)101aが、第3クラッチのクラッチドラム102のドラム部(以下、第3ドラム部という)102aの内周側に設置され、同心で相対回転可能に設けられている。
第1ドラム部101aの内周面には第1クラッチの外摩擦板に係合するためのスプライン歯101sが形成され、第1ドラム部101aの外周面は平滑に形成されており、更に内周側から外周側に潤滑油(ATF)を排出可能な貫通孔が形成されている。第3ドラム部102aの内周面には第3クラッチの外摩擦板に係合するための直線状のスプライン歯102sが形成されており、該スプライン歯102sの歯先面は平滑に形成され、更に内周側から外周側に潤滑油を排出可能な貫通孔が形成されている。また、第1ドラム部101aの外周面と第3ドラム部102aのスプライン歯102sの歯先面との隙間(以下、ドラム間空間という)Sは、コンパクト化を図ると共に各ドラム部101a,102a同士が接触することが無いように、例えば径方向に1〜数mm程度の間隔で微小に設定されている。
自動変速機の駆動時には、第1ドラム部101aの内周側を流通する潤滑油は、遠心力あるいは重力により第1ドラム部101aの貫通孔を通過してドラム間空間Sに入り込み、更に遠心力あるいは重力により第3ドラム部102aの貫通孔を通過して第3ドラム部102aの外周側に排出される。
しかしながら、特許文献1の自動変速機では、ドラム間空間Sからの潤滑油の排出は貫通孔のみにより行われていたので、各ドラム部101a,102aの回転数や油温等の条件によっては、ドラム間空間Sに潤滑油が滞留することがあった。潤滑油がドラム間空間Sに滞留すると、ドラム間空間Sにおいて潤滑油の攪拌が起こり、その攪拌抵抗によりAT損失が増加してしまい、燃費の向上が困難になる虞がある。
特に、燃費モード走行の初期段階においては、油温が低く潤滑油の粘度が高いので、攪拌抵抗が大きくなって燃費の向上が阻害される可能性がある。また、ギヤ段条件によっては、第3ドラム部102aが回転しない場合があり、この場合は潤滑油がドラム間空間Sの下部に貯留して攪拌抵抗が大きくなってしまう虞がある。
そこで、本発明は、軸方向に重複する2つのドラム部が相対回転する際に、ドラム部同士の間に介在された潤滑油を排出することで、潤滑油による攪拌抵抗を抑えて燃費を向上できる自動変速機を提供することを目的とするものである。
本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図4乃至図9参照)、変速機構(3)の一部を構成すると共に、ケース(6)により回転自在に支持される第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a,122a)と、
前記変速機構(3)の他の一部を構成すると共に、前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a,122a)の外周側に同心で互いに相対回転自在に前記ケース(6)により支持され、かつ軸方向の一方側に開口部(76a)を有する第2のクラッチ(C−3)のドラム部(32a)と、
前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a,122a)の外周側部と前記第2のクラッチ(C−3)のドラム部(32a)の内周側部との少なくとも一部に設けられ、前記ドラム部(22a,32a,122a)同士が相対回転する場合に、前記ドラム部(22a,32a,122a)同士の間の潤滑油を前記開口部(76a)から排出する排出溝(22f,32c,122f)と、を備えることを特徴とする。
前記変速機構(3)の他の一部を構成すると共に、前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a,122a)の外周側に同心で互いに相対回転自在に前記ケース(6)により支持され、かつ軸方向の一方側に開口部(76a)を有する第2のクラッチ(C−3)のドラム部(32a)と、
前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a,122a)の外周側部と前記第2のクラッチ(C−3)のドラム部(32a)の内周側部との少なくとも一部に設けられ、前記ドラム部(22a,32a,122a)同士が相対回転する場合に、前記ドラム部(22a,32a,122a)同士の間の潤滑油を前記開口部(76a)から排出する排出溝(22f,32c,122f)と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図4乃至図6参照)、前記排出溝(22f,122f)が、前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a,122a)の前記外周側部の周側面に設けられることを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図5(a)参照)、前記排出溝(22f)が、前記ドラム部(22a,32a)同士が相対回転する場合に、前記開口部(76a)の側が前記潤滑油の下流側になるように、前記軸方向に対して傾斜状であることを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図6及び図9参照)、前記排出溝(22f,32c)が、
前記ドラム部(22a,32a)同士が正回転方向で相対回転する場合は、逆回転方向に相対回転する場合よりも前記潤滑油を捕集し易く、前記ドラム部(22a,32a)同士が前記逆回転方向に相対回転する場合は、前記正回転方向に相対回転する場合よりも前記潤滑油を回転方向に流し易い断面非対称形状を有することを特徴とする。
前記ドラム部(22a,32a)同士が正回転方向で相対回転する場合は、逆回転方向に相対回転する場合よりも前記潤滑油を捕集し易く、前記ドラム部(22a,32a)同士が前記逆回転方向に相対回転する場合は、前記正回転方向に相対回転する場合よりも前記潤滑油を回転方向に流し易い断面非対称形状を有することを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図6及び図9参照)、前記排出溝(22f,32c)が断面鋸刃形状を有することを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図5(a)参照)、前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(22a)が、内周側から外周側に前記潤滑油を排出可能な複数の貫通孔(22e)を備え、
前記傾斜状の排出溝(22f)が、前記貫通孔(22e)の間に形成されることを特徴とする。
前記傾斜状の排出溝(22f)が、前記貫通孔(22e)の間に形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図5(b)参照)、前記排出溝(122f)が、前記第1のクラッチ(C−1)のドラム部(122a)の前記軸方向を中心にする螺旋状であることを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図7乃至図9参照)、前記第2のクラッチ(C−3)のドラム部(32a)の前記内周側部が、前記軸方向に沿ったスプライン歯(32s)を備え、
前記スプライン歯(32s)の歯先面に前記排出溝(32c)が設けられることを特徴とする。
前記スプライン歯(32s)の歯先面に前記排出溝(32c)が設けられることを特徴とする。
また、本発明に係る自動変速機(1)は(例えば図7乃至図9参照)、前記第2のクラッチ(C−3)のドラム部(32a)が、内周側から外周側に前記潤滑油を排出可能な複数の貫通孔(32b)を備えることを特徴とする。
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
請求項1に係る本発明によると、第1ドラム部と第2のドラム部との間に排出溝が設けられ、ドラム部同士が相対回転数で回転する場合に、ドラム部同士の間の潤滑油を開口部から排出することができるので、ドラム部同士が相対回転する際の潤滑油による攪拌抵抗の発生を抑えて、AT損失を低減し、燃費を向上することができる。
請求項2に係る本発明によると、排出溝が第1のクラッチのドラム部の外周側部の周側面に設けられるので、第2のクラッチのドラム部の内周側部に形成する場合に比べて、加工性を良好にできる。
請求項3に係る本発明によると、排出溝が軸方向に対して傾斜状であり、ドラム部同士が相対回転する場合に開口部の側が潤滑油の下流側になるので、潤滑油を開口部から排出することができる。
請求項4に係る本発明によると、排出溝が断面非対称形状を有し、ドラム部同士が正回転方向で相対回転する場合は潤滑油を捕集し易く、逆回転方向に相対回転する場合は潤滑油を回転方向に流し易くなっているので、潤滑油を開口部から排出する方向にのみ流動させることができる。これにより、潤滑油が開口部とは反対側に流動して第2のクラッチのドラム部内に滞留してドラム部同士の間に逆流してしまうことを抑制し、ドラム部同士の間の潤滑油を効率良く排出することができる。
請求項5に係る本発明によると、排出溝が断面鋸刃形状を有するので、排出溝の形成面に対して垂直な垂直壁と、傾斜した傾斜壁とを有している。このため、ドラム部同士が正回転方向で相対回転する場合は、垂直壁が潤滑油を捕集して開口部の方向に押し流し、またドラム部同士が逆回転方向で相対回転する場合は、傾斜壁が潤滑油を回転方向に流し、軸方向に流動しないようにできる。
請求項6に係る本発明によると、排出溝が貫通孔の間に形成されるので、排出溝が貫通孔に重複して形成される場合に比べて、加工性を良好にできると共に、第1のクラッチのドラム部の剛性を加工前に比べて大きく下げることなく高く維持することができる。また、第1のクラッチのドラム部が貫通孔を備えているので、ドラム部の内周側の潤滑油を貫通孔からドラム部同士の間に排出することができる。
請求項7に係る本発明によると、排出溝が第1のクラッチのドラム部の軸方向を中心にする螺旋状であるので、螺旋状ではない場合に比べて、ドラム部同士が正回転方向で相対回転する場合に、排出溝が潤滑油を押し流す方向を開口部の方向に近付けることができ、排出溝により流動される潤滑油の回転方向への移動量を低減し、排出効率を向上することができる。
請求項8に係る本発明によると、第2のクラッチのドラム部の内周側部に形成されたスプライン歯の歯先面に排出溝が設けられるので、スプライン歯を有していても潤滑油を開口部から排出することができる。
請求項9に係る本発明によると、第2のクラッチのドラム部が貫通孔を備えているので、ドラム部同士の間の潤滑油を貫通孔からも外周側に排出することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図1乃至図9に沿って説明する。
本実施の形態に係る自動変速機1は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両に搭載されて好適な自動変速機1であり、本明細書中では、エンジンが接続される側、つまりトルクコンバータ2側から見た自動変速機1を正面とする。このため、図4及び図7は側面側から見た側面断面図となる。また、軸方向において、該トルクコンバータ2側を前方側とし、第2クラッチC−2側を後方側としている。尚、本実施の形態では、自動変速機1としてFFタイプの車両に搭載されるものを適用しているが、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)タイプの車両に搭載されるものであってもよい。
[第1の実施形態]
本発明に係る第1の実施形態を図1乃至図6に沿って説明する。まず、本発明を適用し得る自動変速機1の概略構成について、図1に沿って説明する。図1に示すように、自動変速機1は、ハウジングケース及びミッションケースからなるケース6を備えており、該ケース6の前方側に、不図示のエンジンに接続される入力部材(フロントカバー及びセンターピース)10を有している。また、自動変速機1は、ロックアップクラッチ2aを有するトルクコンバータ2を備えており、ケース6内に、変速機構3、カウンタシャフト部4、及びディファレンシャル部5が配置されている。
本発明に係る第1の実施形態を図1乃至図6に沿って説明する。まず、本発明を適用し得る自動変速機1の概略構成について、図1に沿って説明する。図1に示すように、自動変速機1は、ハウジングケース及びミッションケースからなるケース6を備えており、該ケース6の前方側に、不図示のエンジンに接続される入力部材(フロントカバー及びセンターピース)10を有している。また、自動変速機1は、ロックアップクラッチ2aを有するトルクコンバータ2を備えており、ケース6内に、変速機構3、カウンタシャフト部4、及びディファレンシャル部5が配置されている。
トルクコンバータ2は、入力部材10に接続されたポンプインペラ2bと、作動流体を介して該ポンプインペラ2bの回転が伝達されるタービンランナ2cとを有しており、該タービンランナ2cは、入力部材10と同軸上に配設された変速機構3の入力軸7に接続されている。また、該トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチ2aが備えられており、該ロックアップクラッチ2aが不図示の油圧制御装置の油圧制御によって係合されると、自動変速機1の入力部材10の回転が変速機構3の入力軸7に直接伝達される。
変速機構3には、入力軸7上において、プラネタリギヤ(減速プラネタリギヤ)DPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。該プラネタリギヤDPは、サンギヤ(第1サンギヤ)S1、キャリヤ(第1キャリヤ)CR1、及びリングギヤ(第1リングギヤ)R1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1に噛合するピニオンP2及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を互いに噛合する形で有している所謂ダブルピニオンプラネタリギヤである。
また、プラネタリギヤユニットPUは、シングルピニオンプラネタリギヤPUS及びダブルピニオンプラネタリギヤPUDの2つのプラネタリギヤを連結した形で構成されており、該シングルピニオンプラネタリギヤPUSは、サンギヤ(第3サンギヤ)S3、キャリヤ(第2キャリヤ)CR3、及びリングギヤ(第2リングギヤ)R3を備え、該ダブルピニオンプラネタリギヤPUDは、サンギヤ(第2サンギヤ)S2及びキャリヤ(第2キャリヤ)CR2を備えている。更に、シングルピニオンプラネタリギヤPUS及びダブルピニオンプラネタリギヤPUDは、共通するピニオンをロングピニオンP3として有し、該ダブルピニオンプラネタリギヤPUDに備えられると共に該ロングピニオンP3と互いに噛合するショートピニオンP4を有する。そして、該シングルピニオンプラネタリギヤPUS及び該ダブルピニオンプラネタリギヤPUDは、該ロングピニオンP3を回転自在に支持するピニオンシャフトPS3と、該ショートピニオンP4を回転自在に支持するピニオンシャフトPS4とを支持するキャリヤCR2,CR3を備えている。
尚、キャリヤCR2,CR3は、ダブルピニオンプラネタリギヤPUDのキャリヤCR2及びシングルピニオンプラネタリギヤPUSのキャリヤCR3のように説明したが、共通するロングピニオンP3を有し、同一の回転をする1つのキャリヤである。即ち、プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてダブルピニオンプラネタリギヤPUDのサンギヤとなるサンギヤ(第2サンギヤ)S2、シングルピニオンプラネタリギヤPUSのサンギヤとなるサンギヤ(第3サンギヤ)S3、キャリヤ(第2キャリヤ)CR2,CR3、及びリングギヤ(第2リングギヤ)R3を有している所謂ラビニヨ型プラネタリギヤである。尚、カッコ内に示した各回転要素の数字の順序は、これら回転要素が回転する際の回転数の比率の順序となっている。即ち、図3に示すように、詳しくは後述する速度線図におけるプラネタリギヤユニットPU部分の図中左方側からの順序になっている。
更に、プラネタリギヤユニットPUは、ダブルピニオンプラネタリギヤPUDにおけるロングピニオンP3の内周側にショートピニオンP4を有している。このため、シングルピニオンプラネタリギヤPUSのサンギヤS3は、ダブルピニオンプラネタリギヤPUDのサンギヤS2よりも外径の大きなサンギヤとなっている。また、シングルピニオンプラネタリギヤPUSは、ダブルピニオンプラネタリギヤPUDよりもプラネタリギヤDP側(図中右方側)に配置されており、該プラネタリギヤDP側から延びる部材と連結する際に、サンギヤS2に連結する部材をサンギヤS3の内周側を通して配置することができるため、ダブルピニオンプラネタリギヤPUDがプラネタリギヤDP側に配置される場合よりも、自動変速機1を径方向にコンパクト化することが可能となっている。
プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、ケース6に一体的に固定されている。また、キャリヤCR1は、入力軸7の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっていると共に、第4クラッチC−4に接続されている。更に、リングギヤR1は、固定されたサンギヤS1と入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチ(第1のクラッチ)C−1及び第3クラッチ(第2のクラッチ)C−3に接続されている。
プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3は、例えばバンドブレーキからなる第1ブレーキB−1に接続されてケース6に対して固定自在となっていると共に、第4クラッチC−4及び第3クラッチC−3に接続されて、第4クラッチC−4を介してキャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC−3を介してリングギヤR1の減速回転が、それぞれに入力自在となっている。また、サンギヤS2は、第1クラッチC−1に接続されており、リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、キャリヤCR2(CR3)は、入力軸7の回転が入力される第2クラッチC−2に接続されて、第2クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及び第2ブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してケース6に対して一方向の回転が規制されると共に、該第2ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、リングギヤR3は、ケース6に対して固定された不図示のセンタサポート部材に回転自在に支持されたカウンタギヤ8に接続されている。
また、カウンタギヤ8には、カウンタシャフト部4のカウンタシャフト12上に固定されている大径ギヤ11が噛合しており、該カウンタシャフト12には、外周面上に形成されている小径ギヤ12aを介してディファレンシャル部5のギヤ14が噛合している。そして、該ギヤ14は、ディファレンシャルギヤ13に固定されており、該ディファレンシャルギヤ13を介して左右車軸15,15に接続されている。
以上のように構成された自動変速機1は、図1のスケルトン図に示す各第1〜第4のクラッチC−1〜C−4、第1及び第2のブレーキB−1,B−2、ワンウェイクラッチF−1が、図2の係合表に示す組み合わせで係脱されることにより、図3の速度線図のような回転数比で、前進1速段(1st)〜前進8速段(8th)、及び後進1速段(Rev1)〜後進2速段(Rev2)が達成される。
本実施形態では、第1クラッチC−1のクラッチドラム22と第3クラッチC−3のクラッチドラム32とが最大の相対回転数比、即ち相対回転数になる前進8速段における相対回転方向を正回転方向としている。本実施形態では、前進8速段における相対回転方向を正回転方向としているが、これには限られず、他のギヤ段における相対回転方向を正回転方向としてもよく、例えばギヤ段の使用割合や回転数の大きさ等の走行条件に応じて適宜設定することができる。
図2及び図3に示すように、前進1,2,7,8速段では、クラッチドラム22,32の相対回転数が正になり、これらクラッチドラム22,32は正回転方向に相対回転するようになっている。また、前進4速段及び前進5速段では、クラッチドラム22,32の相対回転数が負になり、これらクラッチドラム22,32は逆回転方向に相対回転するようになっている。更に、前進3速段及び前進6速段では、クラッチドラム22,32が同期して回転し、相対回転数は0になる。この場合、後述するドラム間空間Sの潤滑油が攪拌抵抗を発生することはない。
尚、本実施形態に係る自動変速機1においては、前進8速段及び後進2速段を達成するものを説明したが、例えば前進8速段(8th)を使用しない前進7速段及び後進2速段を達成するものであってもよく、つまり少なくとも2つのクラッチを備える自動変速機であれば、どのような変速段数の自動変速機であっても本発明を適用することができる。
次に、本発明に係る自動変速機1の第1クラッチC−1及び第3クラッチC−3について、図4に沿って説明する。ケース6(図1参照)の内側には、入力軸7上に、ダブルピニオンプラネタリギヤからなるプラネタリギヤDPが配置されており、キャリヤCR1と、リングギヤR1と、サンギヤS1(図1参照)とが配置されている。
キャリヤCR1は、後方側の後キャリヤプレートCR1aと前方側の前キャリヤプレート(不図示)とを有しており、この両キャリヤプレートによって第1及び第2のピニオンシャフトPSを支持している。また、各ピニオンシャフトPSが、それぞれピニオンP1,P2(図1参照)を回転自在に支持しており、ピニオンP1は外周側においてリングギヤR1と噛合すると共にピニオンP2と噛合し、ピニオンP2は内周側においてサンギヤS1と噛合している。更に、後キャリヤプレートCR1aは、内周端部において入力軸7に一体的に固定されている。これにより、キャリヤCR1は、入力軸7に対して支持されていると共に、入力軸7と同回転するように構成されている。
リングギヤR1は、外周側に、後述するハブ部51が一体的に形成されており、後方側部分において、略中空円板状に形成された支持部材53の外径端部に固着されている。該支持部材53は、内周側において、後方側がベアリング66を介して、後述する第1クラッチC−1のクラッチドラム22の中空軸部22cに回転自在に支持されており、前方側がベアリング67を介してキャリヤCR1の後キャリヤプレートCR1aに回転自在に支持されている。これにより、リングギヤR1は、第1クラッチC−1のクラッチドラム22、キャリヤCR1の後キャリヤプレートCR1a、及び支持部材53を介して入力軸7に対して回転自在に支持されている。
ハブ部51は、リングギヤR1の外周面側に一体的に形成されており、リングギヤR1の外周面部分となる基端部51c、軸方向前方側に突出する形に配置された前突出部51a、及び軸方向後方側に突出する形に配置された後突出部51bを備えている。また、ハブ部51の外周面には、該基端部51c、前突出部51a、及び後突出部51bの全体に亘ってスプライン歯51sが形成されている。そして、スプライン歯51sの前突出部51a部分には、後述する第3クラッチC−3の内摩擦板31bがスプライン係合しており、また基端部51c及び後突出部51b部分には、内摩擦板31bに隣接する形で後述する第1クラッチC−1の内摩擦板21bがスプライン係合している。後突出部51bには、スプライン歯51sの谷部と内周側とを連通する潤滑油孔51dが周方向に複数形成されている。
続いて、本発明に係る第1クラッチC−1及び第3クラッチC−3について詳しく説明する。第1ブレーキB−1の内周側にあって、プラネタリギヤDPの外周側から後方側には、第1クラッチC−1が配置されている。該第1クラッチC−1は、外摩擦板21a及び内摩擦板21bからなる摩擦板21と、この摩擦板21を接断させる油圧サーボ20とを備えており、内摩擦板21bは、ハブ部51のスプライン歯51sにスプライン係合されている。
油圧サーボ20は、クラッチドラム22、ピストン部材24、キャンセルプレート25、リターンスプリング26を有しており、これらにより、作動油室27、キャンセル油室28を構成している。クラッチドラム22は、外周側部材22Aと内周側部材22Bとが固着されて一体に構成されており、プラネタリギヤDP側(前方側)に向けて開口していると共に、内周側から外周側に延びるフランジ部22bと、該フランジ部22bの外周側から前方側にプラネタリギヤDPの外周側まで延びるドラム部(第1のクラッチのドラム部)22aと、該フランジ部22bの内周側において、前方側に延びると共に中空軸状に形成された中空軸部22cとを有している。
フランジ部22bの前方側には、ピストン部材24と対向する部分に、作動油室27を構成するためのシリンダ部22dが形成されている。中空軸部22cは、スリーブ部材72に被嵌される形で配置されており、該スリーブ部材72は、ベアリングb1によって入力軸7に対して回転自在となるように配置されている。つまり、中空軸部22cは、スリーブ部材72を介して入力軸7に対して回転自在に配置されている。
クラッチドラム22のドラム部22aは、プラネタリギヤDPの外周側において、内周面にスプライン歯22sを備えており、スプライン歯22sに外摩擦板21aがスプライン係合されている。また、摩擦板21は、スプライン歯22sの前方側において嵌合されたスナップリング29によって前方側への移動が規制されている。更に、ドラム部22aは、内周側から外周側に潤滑油を排出可能な複数の貫通孔22eと、外周面に形成された後述する排出溝22fとを備えている。
ピストン部材24は、上述のクラッチドラム22のフランジ部22bの前方側にあって、中空軸部22cの前方側に嵌合する形でシリンダ部22dに対向して軸方向に移動自在に配置されている。また、ピストン部材24は、シールリング61及びシール部材62によってシールされることにより、クラッチドラム22との間に油密状の作動油室27を構成している。更に、ピストン部材24の外周側には、押圧部24aが延設されており、該押圧部24aは、その前端が摩擦板21に対向配置されている。また、押圧部24aの外周端部には、スプライン歯が形成されており、クラッチドラム22のドラム部22aの内周側に形成されたスプライン歯22sにスプライン係合している。
キャンセルプレート25は、上述の中空軸部22cの前方側において嵌合されたスナップリング73によって前方側への移動が規制されている。キャンセルプレート25は、その後方側に配置されたピストン部材24との間に、リターンスプリング26が縮設されると共に、該キャンセルプレート25の外周部に配置されたシール部材74により油密状のキャンセル油室28を構成している。
上述した第1クラッチC−1では、作動油室27に生じる油圧によってピストン部材24を軸方向に移動させ、摩擦板21を押圧することにより第1クラッチC−1の係合・解放を行う。作動油室27には、不図示の油圧制御装置から第1クラッチC−1用の作動油圧がクラッチドラム22に形成された油路c1を通って供給される。また、作動油室27には遠心油圧が働くため、ピストン部材24を挟んで対向するキャンセル油室28にクラッチドラム22に形成された油路(不図示)を介して潤滑油が供給され、作動油室27に発生した遠心油圧と平衡させている。
第1ブレーキB−1の内周側にあって、プラネタリギヤDPの外周側から前方側には、第3クラッチC−3が配置されている。第3クラッチC−3は、外摩擦板31a及び内摩擦板31bからなる摩擦板31と、この摩擦板31を接断させる油圧サーボ(一部不図示)とを備えており、内摩擦板31bは、ハブ部51のスプライン歯51sにスプライン係合されている。
油圧サーボは、クラッチドラム32を備えており、該クラッチドラム32は、第1クラッチC−1のクラッチドラム22と対向する方向(後方側)に向けて開口する形で配置されている。クラッチドラム32は、内周側を入力軸7に対して回転自在に支持されたフランジ部の外周側から摩擦板31の外周側まで延びるドラム部32aを有している。
ドラム部32aは、プラネタリギヤDPの外周側において、内周側にスプライン歯32sを備えており、スプライン歯32sに外摩擦板31aがスプライン係合されている。また、摩擦板31は、スプライン歯32sの後方側において嵌合されたスナップリング33によって後方側への移動が規制されている。
ドラム部32aは、第1クラッチC−1のドラム部22aの外周側を通り、該ドラム部22aの後方側まで延設されており、ドラム部22aの外周側を通るドラム部32aの部位のスプライン歯32sの間には、内周側から外周側に潤滑油を排出可能な複数の貫通孔32bが形成されている(図8参照)。尚、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとは、同心で互いに相対回転自在になっている。また、これらドラム部22a及びドラム部32aの間の空間は、径方向に微小な隙間を有するドラム間空間Sとなっている。
ドラム部32aの後端部には、接続部材76がスプライン係合されている。接続部材76の外周部、即ちスプライン係合された部位では、前後方向に貫通する開口部76aが周方向に適宜間隔をおいて設けられている。即ち、第3クラッチC−3は軸方向の一方側に開口部76aを有している。尚、本実施形態では、開口部76aは接続部材76に形成された貫通孔からなるが、これには限られず、例えば、接続部材76を有していない場合はドラム部32aの後端側の開放部が開口部になる。
接続部材76は、前述のプラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3に対して接続されている。即ち第3クラッチC−3が係合すると、クラッチドラム32と接続部材76とが同回転となり、つまりプラネタリギヤDPのリングギヤR1の回転(減速回転)がプラネタリギヤユニットPUのサンギヤS3に伝達されることになる。
続いて、本発明の要部となる第1クラッチC−1のドラム部22aの排出溝22fについて説明する。
図4及び図5(a)に示すように、ドラム部22aの外周側部の周側面には複数の排出溝22fが形成されている。排出溝22fは、2つのドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する場合に、ドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aから排出するようになっている。本実施形態では、正回転方向は、上述したように最大の相対回転数となり得る前進8速段における回転方向であり、該回転方向の相対回転であれば最大の相対回転数未満の回転数であっても、排出溝22fはドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aから排出するようになっている。即ち、排出溝22fは、2つのドラム部22a,32a同士が少なくとも最大の相対回転数で回転する場合に、ドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aから排出するようになっている。
本実施形態では、排出溝22fは、軸方向に対して約20度〜30度程度の傾斜状になっており、ドラム部22a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合に、開口部76aの側が潤滑油の下流側(排出方向)になるように設けられている。尚、排出溝22fの軸方向に対する傾斜角度は、20度〜30度に限られず、他の角度であってもよい。また、各排出溝22fは、貫通孔22eの間に配置されている。
図6(b)に示すように、排出溝22fは断面非対称形状として、例えば断面鋸刃形状を有しており、各排出溝22fは、ドラム部22aの外周面に対して垂直な垂直壁22gと、外周面に対して鈍角に傾斜した傾斜壁22hとを備えている。ここで、図6中、白抜き矢印はドラム部22a,32aの回転方向を示すと共に、黒矢印は潤滑油の流れ方向を示す。例えば、図6(a)及び(b)に示すように、ドラム部22a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合は、垂直壁22gが潤滑油を捕集して排出溝22fに沿って流動させ、開口部76aの側に流動させ易くなっている。また、例えば、図6(c)及び(d)に示すように、ドラム部22a,32a同士が逆回転方向で相対回転する場合は、傾斜壁22hが潤滑油を捕集せず、回転方向に逃がすように流動させ易くなっている。
上述した自動変速機1の第1クラッチC−1のドラム部22a及び第3クラッチC−3のドラム部32aの動作を以下に説明する。
自動変速機1の駆動時に、ギヤ段として前進1,2,4,5,7,8速段のいずれかが選択された場合は、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとが相対回転する。
図4に示すように、例えばオイルポンプ(不図示)により発生した油圧に基づく潤滑油が、キャンセル油室28にキャンセル油として供給されると、キャンセルプレート25に設けられた切欠き部25aを介して、該キャンセルプレート25と支持部材53との間を通って外周側に供給される。キャンセルプレート25と支持部材53との間に供給された潤滑油は、ハブ部51の後突出部51bの内周側に供給され、該ハブ部51の潤滑油孔51dを介して摩擦板21を潤滑する。摩擦板21を潤滑した潤滑油は、第1クラッチC−1のドラム部22aに供給され、貫通孔22eを通過して、ドラム間空間Sに流入する。
ここで、ギヤ段として前進1,2,7,8速段のいずれかが選択された場合は、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとの相対回転数が正になり、これらドラム部22a,32aは正回転方向に相対回転する。このため、図6(a)及び(b)に示すように、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、垂直壁22gにより捕集され、排出溝22fに沿って流動され、開口部76aの側に流動されるようになる。また、ドラム間空間Sの潤滑油の他の一部は、ドラム部32aの貫通孔32bから外周側に排出される。ここで、ギヤ段によっては第3クラッチC−3のドラム部32aが回転しない場合があり得るが、その場合でもドラム部22a,32a同士は相対回転して潤滑油は流動するので、上述と同様に、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、垂直壁22gにより捕集され、排出溝22fに沿って流動され、開口部76aの側に流動されるようになる。
また、ギヤ段として前進4,5速段のいずれかが選択された場合は、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとの相対回転数が負になり、これらドラム部22a,32aは逆回転方向に相対回転する。このため、図6(c)及び(d)に示すように、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、傾斜壁22hにより回転方向に逃がされるように流動され、軸方向には流動し難い。これにより、ドラム間空間Sの潤滑油が前方側、即ちドラム部32aの内部に入り込んで滞留することを抑制している。また、ドラム間空間Sの潤滑油の他の一部は、ドラム部32aの貫通孔32bから外周側に排出される。
尚、ギヤ段として前進3,6速段のいずれかが選択された場合は、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとが同期して回転し、相対回転数は0になる。この場合、ドラム間空間Sの潤滑油が攪拌抵抗を発生することはなく、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、ドラム部32aの貫通孔32bから外周側に排出される。
以上説明したように、本実施形態の自動変速機1によると、第1クラッチC−1のドラム部22aに排出溝22fが設けられ、ドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する場合に、ドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aから排出することができるので、ドラム部22a,32a同士が相対回転する際の潤滑油による攪拌抵抗の発生を抑えて、AT損失を低減し、本自動変速機1を搭載した車両の燃費を向上することができる。特に本実施形態では、最大の相対回転数で回転する場合の回転方向において潤滑油を開口部76aから排出するので、潤滑油による攪拌抵抗が大きくなり易い最大相対回転数時での攪拌抵抗の発生を効果的に抑えることができる。
また、本実施形態の自動変速機1によると、排出溝22fが第1クラッチC−1のドラム部22aの外周側部の周側面に設けられるので、第3クラッチC−3のドラム部32aの内周側部に形成する場合に比べて、加工性を良好にすることができる。
また、本実施形態の自動変速機1によると、排出溝22fが軸方向に対して傾斜状であり、ドラム部22a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合に開口部76aの側が潤滑油の下流側になるので、潤滑油を開口部76aから排出することができる。
また、本実施形態の自動変速機1によると、排出溝22fが断面非対称形状で断面鋸刃形状を有し、ドラム部22a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合は垂直壁22gにより潤滑油を捕集し易く、逆回転方向に相対回転する場合は傾斜壁22hにより潤滑油を回転方向に流し易くなっているので、潤滑油を開口部76aから排出する方向にのみ流動させることができる。これにより、潤滑油が開口部76aとは反対側に流動して第3クラッチC−3のドラム部32a内に滞留してドラム間空間Sに逆流してしまうことを抑制し、ドラム間空間Sの潤滑油を効率良く排出することができる。
また、本実施形態の自動変速機1によると、排出溝22fが貫通孔22eの間に形成されるので、排出溝22fが貫通孔22eに重複して形成される場合に比べて、加工性を良好にできると共に、第1クラッチC−1のドラム部22aの剛性を加工前に比べて大きく下げることなく高く維持することができる。
尚、以上説明した本実施形態においては、図5(a)に示すように、排出溝22fは、軸方向に対して約20度〜30度程度の傾斜状である場合について説明したが、これには限られず、例えば、図5(b)に示すように、第1クラッチC−1のドラム部122aに形成される排出溝122fが、軸方向を中心にする螺旋状であるようにしてもよい。この場合、排出溝122fが螺旋状ではなく傾斜状である場合に比べて、ドラム部122a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合に、排出溝122fが潤滑油を押し流す方向を開口部76aの方向(軸方向)に近付けることができ、排出溝122fにより流動される潤滑油の回転方向への移動量を低減し、排出効率を向上することができる。尚、図5(b)に示す実施形態では、排出溝122fと一部の貫通孔122eとが重なっているが、これには限られず、螺旋状の排出溝122fの間に貫通孔122eを配置するようにしてもよい。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る自動変速機1について図7乃至図9に沿って説明する。
次に、本発明の第2の実施形態に係る自動変速機1について図7乃至図9に沿って説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、第1クラッチC−1の外周側部に排出溝22fが設けられていない点、及び第3クラッチC−3の内周側部に後述する排出溝32cが設けられている点で構成を異にしている。それ以外の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、図7及び図8に示すように、第3クラッチC−3のドラム部32aのスプライン歯32sの歯先面に排出溝32cが設けられている。図8及び図9に示すように、排出溝32cは、2つのドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する場合に、ドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aから排出するようになっている。
本実施形態では、排出溝32cは、軸方向に対して約40度〜50度程度の傾斜状になっており、ドラム部22a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合に、開口部76aの側が潤滑油の下流側(排出方向)になるように設けられている。尚、排出溝32cの軸方向に対する傾斜角度は、40度〜50度に限られず、他の角度であってもよい。また、図9(a)に示すように、各排出溝32cは、各排出溝32cに沿って流動される潤滑油の下流方向が貫通孔32bに向く位置に配置されている。
また、図9(b)に示すように、排出溝32cは断面非対称形状として、例えば断面鋸刃形状を有しており、各排出溝32cは、ドラム部32aの外周面に対して垂直な垂直壁32dと、外周面に対して鈍角に傾斜した傾斜壁32eとを備えている。ここで、図9中、白抜き矢印はドラム部22a,32aの回転方向を示すと共に、黒矢印は潤滑油の流れの方向を示す。例えば、図9(a)及び(b)に示すように、ドラム部22a,32a同士が正回転方向で相対回転する場合は、垂直壁32dが潤滑油を捕集して排出溝32cに沿って流動させ、開口部76aの側に流動させ易くなっている。また、例えば、図9(c)及び(d)に示すように、ドラム部22a,32a同士が逆回転方向で相対回転する場合は、傾斜壁32eが潤滑油を捕集せず、回転方向に逃がすように流動させ易くなっている。
この自動変速機1の駆動時に、ギヤ段として前進1,2,7,8速段のいずれかが選択された場合は、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとの相対回転数が正になり、これらドラム部22a,32aは正回転方向に相対回転する。このため、図9(a)及び(b)に示すように、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、垂直壁32dにより捕集され、排出溝32cに沿って流動され、開口部76aの側に流動されるようになる。また、ドラム間空間Sの潤滑油の他の一部は、ドラム部32aの貫通孔32bから外周側に排出される。ここで、ギヤ段によっては第3クラッチC−3のドラム部32aが回転しない場合があり得るが、その場合でもドラム部22a,32a同士は相対回転して潤滑油は流動するので、上述と同様に、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、垂直壁32dにより捕集され、排出溝32cに沿って流動され、開口部76aの側に流動されるようになる。
また、ギヤ段として前進4,5速段のいずれかが選択された場合は、第1クラッチC−1のドラム部22aと第3クラッチC−3のドラム部32aとの相対回転数が負になり、これらドラム部22a,32aは逆回転方向に相対回転する。このため、図9(c)及び(d)に示すように、ドラム間空間Sの潤滑油の一部は、傾斜壁32eにより回転方向に逃がされるように流動され、軸方向には流動し難い。これにより、ドラム間空間Sの潤滑油が前方側、即ちドラム部32aの内部に入り込んで滞留することを抑制している。また、ドラム間空間Sの潤滑油の他の一部は、ドラム部32aの貫通孔32bから外周側に排出される。
以上説明したように、本実施形態の自動変速機1によると、第3クラッチC−3のドラム部32aの内周側部に形成されたスプライン歯32sの歯先面に排出溝32cが設けられるので、スプライン歯32sを有していても潤滑油を開口部76aから排出することができる。これにより、ドラム部22a,32a同士が相対回転する際の潤滑油による攪拌抵抗の発生を抑えて、AT損失を低減し、本自動変速機1を搭載した車両の燃費を向上することができる。
尚、以上説明した本実施形態においては、第3クラッチC−3のドラム部32aの内周側部で第1クラッチC−1のドラム部22aに対向する部位に軸方向に沿った直線状のスプライン歯32sが設けられる場合について説明したが、これには限られず、例えば、当該部位においては、スプライン歯32sを形成せずに、軸方向に対して傾斜状のリブを形成するようにしてもよい。この場合、隣り合うリブ間の溝が排出溝となり、ドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aから排出することができる。更に、このリブの内周面に、上述した排出溝32cを形成してもよい。
また、以上説明した第1及び第2の実施形態においては、第1クラッチC−1のドラム部22a及び第3クラッチC−3のドラム部32aの一方のみに排出溝22f,32cを設けた場合について説明したが、これには限られず、両方に設けてもよい。
この場合、例えば、第1クラッチC−1のドラム部22aには、第1の実施形態と同様にドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する際に潤滑油を開口部76a側に排出する排出溝22fを設けると共に、第3クラッチC−3のドラム部32aには、第2の実施形態とは逆にドラム部22a,32a同士が逆回転方向に相対回転する際に潤滑油を開口部76a側に排出する排出溝を設けるようにできる。
この構成によると、自動変速機1の駆動時に、ギヤ段として前進1,2,7,8速段のいずれかが選択されてドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する際には、第1クラッチC−1の排出溝22fが潤滑油を開口部76a側に排出するようになり、一方、ギヤ段として前進4,5速段のいずれかが選択されてドラム部22a,32a同士が逆回転方向に相対回転する際には、第3クラッチC−3の排出溝が潤滑油を開口部76a側に排出するようになる。これにより、ドラム部22a,32a同士の回転方向が正回転方向及び負回転方向のいずれであっても、ドラム間空間Sの潤滑油が開口部76a側に排出されるようになる。
また、第1及び第2の実施形態においては、ドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する場合にドラム間空間Sの潤滑油を開口部76a側に排出する場合について説明したが、これには限られず、ドラム部22a,32a同士が正回転方向に相対回転する場合にドラム間空間Sの潤滑油を開口部76aとは反対側のドラム部32aの内部側に排出するようにしてもよい。あるいは、ドラム部22a,32a同士が逆回転方向に相対回転する場合に、ドラム間空間Sの潤滑油を開口部76a側、又はドラム部32aの内部側に排出するようにしてもよい。いずれの場合も、ドラム間空間Sの潤滑油が排出されるので、潤滑油による攪拌抵抗の発生を抑えることができる。尚、ドラム部22a,32a同士の相対回転方向とドラム間空間Sの潤滑油を排出する方向とは、排出溝22f,32cの軸方向に対する傾斜の向きや断面形状によって適宜設定することができる。
1 自動変速機
3 変速機構
6 ケース
22a,122a 第1のクラッチのドラム部(第1クラッチのドラム部)
22e,122e 貫通孔
22f,122f 排出溝
32a 第2のクラッチのドラム部(第3クラッチのドラム部)
32b 貫通孔
32c 排出溝
32s スプライン歯
76a 開口部
C−1 変速機構の一部,第1のクラッチ(第1クラッチ)
C−3 変速機構の他の一部,第2のクラッチ(第3クラッチ)
S ドラム部同士の間(ドラム間空間)
3 変速機構
6 ケース
22a,122a 第1のクラッチのドラム部(第1クラッチのドラム部)
22e,122e 貫通孔
22f,122f 排出溝
32a 第2のクラッチのドラム部(第3クラッチのドラム部)
32b 貫通孔
32c 排出溝
32s スプライン歯
76a 開口部
C−1 変速機構の一部,第1のクラッチ(第1クラッチ)
C−3 変速機構の他の一部,第2のクラッチ(第3クラッチ)
S ドラム部同士の間(ドラム間空間)
Claims (9)
- 変速機構の一部を構成すると共に、ケースにより回転自在に支持される第1のクラッチのドラム部と、
前記変速機構の他の一部を構成すると共に、前記第1のクラッチのドラム部の外周側に同心で互いに相対回転自在に前記ケースにより支持され、かつ軸方向の一方側に開口部を有する第2のクラッチのドラム部と、
前記第1のクラッチのドラム部の外周側部と前記第2のクラッチのドラム部の内周側部との少なくとも一部に設けられ、前記ドラム部同士が相対回転する場合に、前記ドラム部同士の間の潤滑油を前記開口部から排出する排出溝と、を備える、
ことを特徴とする自動変速機。 - 前記排出溝は、前記第1のクラッチのドラム部の前記外周側部の周側面に設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の自動変速機。 - 前記排出溝は、前記ドラム部同士が相対回転する場合に、前記開口部の側が前記潤滑油の下流側になるように、前記軸方向に対して傾斜状である、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機。 - 前記排出溝は、
前記ドラム部同士が正回転方向で相対回転する場合は、逆回転方向に相対回転する場合よりも前記潤滑油を捕集し易く、前記ドラム部同士が前記逆回転方向に相対回転する場合は、前記正回転方向に相対回転する場合よりも前記潤滑油を回転方向に流し易い断面非対称形状を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動変速機。 - 前記排出溝は、断面鋸刃形状を有する、
ことを特徴とする請求項4記載の自動変速機。 - 前記第1のクラッチのドラム部は、内周側から外周側に前記潤滑油を排出可能な複数の貫通孔を備え、
前記傾斜状の排出溝は、前記貫通孔の間に形成される、
ことを特徴とする請求項3記載の自動変速機。 - 前記排出溝は、前記第1のクラッチのドラム部の前記軸方向を中心にする螺旋状である、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機。 - 前記第2のクラッチのドラム部の前記内周側部は、前記軸方向に沿ったスプライン歯を備え、
前記スプライン歯の歯先面に前記排出溝が設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の自動変速機。 - 前記第2のクラッチのドラム部は、内周側から外周側に前記潤滑油を排出可能な複数の貫通孔を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自動変速機。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017105371A (ja) * | 2015-12-10 | 2017-06-15 | トヨタ自動車株式会社 | 車両の動力伝達装置 |
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2013
- 2013-02-28 JP JP2013038571A patent/JP2014167310A/ja active Pending
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