JP5120218B2 - 変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、変速機構の中心部に回転軸を有し、該回転軸がころがり軸受によって支持されている変速機に関し、自動車用変速機の製造技術の分野に属する。
変速機構の中心部に回転軸を有する変速機においては、通常、該回転軸は、その先端がころがり軸受を介して変速機構を収納する変速機ケースの端壁部に支持されることが多い。このころがり軸受は、例えば特許文献1に記載された、図6に示すころがり軸受500のように、変速機ケースの端壁部に圧入されるアウタレース502と、該アウタレース502の内周面と回転軸504の外周面との間で転動する複数の円柱形状の回転体(ころ)506と、これらの回転体506を保持するケージ508とから構成されている。なお、回転軸に圧入されるインナレースを備え、回転体を該インナレースとアウタレースとの間で転動させるように構成されることもある。
このような回転軸の先端を支持するころがり軸受には、例えば、回転軸に変速機の出力部材である動力伝達ギヤが設けられている場合、該ギヤと噛合するギヤからの荷重で回転軸に曲げモーメントが発生し、その曲げモーメントの反力が作用する。また、回転軸に設けられている回転要素の回転によって該回転軸にねじりモーメントが発生し、そのねじりモーメントの反力が作用する。その結果、回転体と該回転体を支持するアウタレースまたはインナレース(図6の場合は回転軸)との間に大きな摩擦が発生し、その結果フレーキング(摩擦発生面の剥離)が起こる可能性がある。
この対処として、ころがり軸受に十分な潤滑油が供給される。例えば、図6に示すころがり軸受500の場合、変速機ケースの端壁部510内に形成された潤滑油供給路512から流れ出た潤滑油が、該端壁部510と回転軸504の先端との間の油溜まりとなる空間514を介して供給される。厳密には、潤滑油供給路512から流出した潤滑油は、主として空間514を介して回転軸504内に設けられた軸方向に延びる潤滑油路516内に供給され、該潤滑油路516から半径方向に設けられた油路518を介して例えばクラッチの遠心バランス室520や変速機構の各潤滑部位に供給されるとともに、矢印aで示すように、一部が前記空間514から直接ころがり軸受500に供給される。その際、回転軸504内の潤滑油路516内に十分量の潤滑油が流入するように、図6に示す例では、回転体506の反空間514側のアウタレース502の内周面と回転軸504の外周面との間に、この間を油密にする(この間の潤滑油の流れをせき止める)シール部材522が設けられている。
特開2005−61455号公報
ところが、図6に示すころがり軸受500の場合、ころがり軸受500の内部(アウタレース502、シール部材522、および回転軸504の外周面により画成される空間)は袋小路状であるために潤滑油が行き止りになる。すなわち、ころがり軸受500内部の潤滑油の入れ替えが行われない。その結果、ころがり軸受500内部に留まり続ける潤滑油は、回転体506とアウタレース502および回転軸504との間から発生する摩擦熱を長期的に受けて劣化して潤滑性能が低下し、フレーキングを防止する役目を果たせなくなり、或いは潤滑油中の金属粉等がころがり軸受500の内部に堆積し、該軸受500の耐久性を低下させる可能性がある。
そこで、本発明は、変速機構の中心部に配置された回転軸を支持するころがり軸受を有し、該転がり軸受に潤滑油を供給する変速機において、ころがり軸受内部の潤滑油が新鮮なものと入れ替えられるように潤滑油を供給することができる構造の変速機を提供することを課題とする。
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、変速機構と、該変速機構の中心部に配置された回転軸とを有し、該回転軸内に軸方向に延びる主油路と該主油路から半径方向に延びて回転軸外周面に開口する出口油路とからなる潤滑油路が設けられ、該出口油路を介して所定の部位に主油路に導入された潤滑油を供給するように構成され、かつ、前記回転軸が前記出口油路の開口部近傍で、回転体とアウタレースとを有するころがり軸受によって支持されている変速機において、
前記ころがり軸受のアウタレースを前記出口油路側へ延設し、該出口油路の開口部と軸方向にオーバーラップさせるとともに、
該ころがり軸受の反出口油路側の端部に、アウタレース内周面と回転軸外周面との間を油密にするシール部材が備えられていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の変速機において、
前記出口油路の開口部とオーバーラップするころがり軸受のアウタレースの端部に、内周側への折曲部が設けられていることを特徴とする。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の変速機において、
前記ころがり軸受は回転軸の先端部に備えられ、該ころがり軸受を介して回転軸の先端部が変速機ケースの端壁部に支持されていることを特徴とする。
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の変速機において、
変速機ケースの端壁部に潤滑油供給路が設けられ、該潤滑油供給路から供給される潤滑油が、該端壁部と回転軸先端部との間の空間を経由して該回転軸内に設けられた潤滑油路の主油路に導入されるように構成されているとともに、
前記ころがり軸受のシール部材が前記空間を臨むように設けられ、
かつ、該シール部材はリップが回転軸外周面に摺接するリップシールであって、該リップが前記空間側を向くように装着されていることを特徴とする。
以上のように構成したことにより、まず、請求項1に記載の発明によれば、回転軸内に設けられた軸方向に延びる潤滑油路の主油路を流れる潤滑油が、該主油路から半径方向に延びて回転軸外周面に開口する出口油路を介して所定の部位に供給されるとともに、出口油路の開口部と軸方向にオーバーラップするアウタレースに案内されてころがり軸受内部にも供給される。
その際、ころがり軸受の内部が、回転体の反出口油路側の端部に備えられた、アウタレース内周面と回転軸外周面との間を油密にするシール部材によって袋小路状にされているものの、ころがり軸受内部の潤滑油は、回転軸の回転によって遠心力が作用して出口油路の開口部から所定の部位に向かう勢いのある潤滑油の流れにより、該内部から吸い出されて該所定の部位に流れていく。これにより、所定の部位に対して潤滑油が十分供給されつつ、ころがり軸受内部の潤滑油の入れ替えが活発に行われる。その結果、ころがり軸受のフレーキングの発生が防止されるなど、該ころがり軸受の耐久性が向上する。
また、ころがり軸受のアウタレースの出口油路の開口部に対する軸方向のオーバーラップ量を調整することにより、簡単にころがり軸受に対する潤滑油の供給量を調整できるという効果も得られる。
また、請求項2に記載の発明によれば、出口油路の開口部とオーバーラップするころがり軸受のアウタレースの端部に、内周側への折曲部が設けられているので、出口油路の開口部から流出した潤滑油が該折曲部に受け止められ、ころがり軸受内部に確実に案内される。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、大きな荷重が作用する回転軸の先端部にころがり軸受が備えられるが、該ころがり軸受は、その内部の潤滑油の入れ替えが活発に行われるため、大きな荷重が作用してもフレーキングが発生することなく、回転軸をその先端で支持することができる。
さらにまた、請求項4に記載の発明によれば、変速機ケースの端壁部に潤滑油供給路が設けられ、該潤滑油供給路から供給される潤滑油が、該端壁部と回転軸先端部との間の空間を経由して該回転軸内に設けられた潤滑油路の主油路に導入されるように構成される場合に、ころがり軸受のシール部材としてリップシールが使用され、該リップシールが、前記空間を臨みつつ、リップが前記空間側を向いた姿勢で回転軸外周面に摺接するように装着される。これにより、前記空間内の潤滑油の圧力により、リップが回転軸外周面に密着し、前記空間からころがり軸受内部を通過する潤滑油の流れ、および前記出口油路側からころがり軸受に供給された潤滑油が前記空間側へ素通りする流れが阻止される。
その結果、回転軸内に設けられた潤滑油路内に十分量の潤滑油が流れ入り、該潤滑油路が出口油路を介して所定の部位に潤滑油を供給するだけでなく、さらに反端壁部側に延びて他の部位にも供給する場合、その他の部位に対する潤滑油の供給量が十分に確保される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る自動変速機の構成を示す骨子図であって、この自動変速機1は、フロントエンジンフロントドライブ車等のエンジン横置き式自動車に適用されるもので、主たる構成要素として、エンジン出力軸2に取り付けられたトルクコンバータ3と、該トルクコンバータ3からの動力が入力軸4を介して入力される第1クラッチ10及び第2クラッチ20と、これらのクラッチ10、20の一方または両方から動力が入力される変速機構30とを有し、これらが入力軸4の軸心上に配置された状態で、変速機ケース5に収納されている。
ここで、変速機ケース5は、外周囲を構成する本体部5aと、トルクコンバータ3を介してエンジンにより駆動されるオイルポンプ6が収納されたフロント(トルクコンバータ側)壁5bと、本体部5aのリヤ側(反トルクコンバータ側)の端部の開口を閉塞するエンドカバー5cとで構成されている。
そして、第1、第2クラッチ10、20は、フロント壁5b側に、変速機構30は、エンドカバー5c側にそれぞれ収納されているとともに、第1、第2クラッチ10、20と変速機構30との間に、変速機構30からの動力を取り出す出力ギヤ7が配置され、該出力ギヤ7から取り出された動力が、カウンタドライブ機構8を介して差動装置9に伝達され、左右の車軸9a、9bを駆動するようになっている。
トルクコンバータ3は、エンジン出力軸2に連結されたケース3aと、該ケース3a内に固設されたポンプ3bと、該ポンプ3bに対向配置されて該ポンプ3bにより作動油を介して駆動されるタービン3cと、該ポンプ3bとタービン3cとの間に介設され、かつ、変速機ケース5にワンウェイクラッチ3dを介して支持されてトルク増大作用を行うステータ3eと、ケース3aとタービン3cとの間に設けられ、該ケース3aを介してエンジン出力軸2とタービン3cとを直結するロックアップクラッチ3fとで構成されている。そして、タービン3cの回転が入力軸4を介して第1、第2クラッチ10、20や変速機構30側に伝達されるようになっている。
変速機構30は、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3ギヤセット」という)40、50、60を有し、これらが変速機ケース5内におけるエンドカバー5c側に、フロント側からこの順序で配置されている。
また、摩擦要素として、第1、第2クラッチ10、20の他に、変速機構30を構成する第1ブレーキ70、第2ブレーキ80及び第3ブレーキ90が備えられ、フロント側からこの順序で配置されている。また、第1ブレーキ70に並列にワンウェイクラッチ100が配置されている。
第1、第2、第3ギヤセット40、50、60は、いずれもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであって、サンギヤ41、51、61と、これらのサンギヤ41、51、61にそれぞれ噛み合った各複数のピニオン42、52、62と、これらのピニオン42、52、62をそれぞれ支持するキャリア43、53、63と、ピニオン42、52、62にそれぞれ噛み合ったリングギヤ44、54、64とで構成されている。
そして、入力軸4が第3ギヤセット60のサンギヤ61に連結されていると共に、第1ギヤセット40のサンギヤ41と第2ギヤセット50のサンギヤ51、第1ギヤセット40のリングギヤ44と第2ギヤセット50のキャリア53、第2ギヤセット50のリングギヤ54と第3ギヤセット60のキャリア63が、それぞれ連結されている。そして、第1ギヤセット40のキャリア43に出力ギヤ7が連結されている。
また、第1ギヤセット40のサンギヤ41及び第2ギヤセット50のサンギヤ51は、第1クラッチ10の出力部材11に連結され、該第1クラッチ10を介して入力軸4に断接可能に連結されている。また、第2ギヤセット50のキャリア53は、第2クラッチ20の出力部材21に連結され、該第2クラッチ20を介して入力軸4に断接可能に連結されている。
さらに、第1ギヤセット40のリングギヤ44及び第2ギヤセット50のキャリア53は、並列に配置された第1ブレーキ70及びワンウェイクラッチ100を介して変速機ケース5に断接可能に連結されており、第2ギヤセット50のリングギヤ54及び第3ギヤセット60のキャリア63は、第2ブレーキ80を介して変速機ケース5に断接可能に連結されており、さらに、第3ギヤセット60のリングギヤ64は、第3ブレーキ90を介して変速機ケース5に断接可能に連結されている。
以上の構成により、この自動変速機1によれば、第1、第2クラッチ10、20及び第1、第2、第3ブレーキ70、80、90の締結状態の組み合わせにより、前進6速と後退速とが得られるようになっており、その組み合わせと変速段の関係を図2の締結表に示す。
すなわち、1速では、第1クラッチ10と第1ブレーキ70とが締結され、入力軸4の回転は、第1ギヤセット40のサンギヤ41に入力され、該第1ギヤセット40により大きな減速比で減速されて該第1ギヤセット40のキャリア43から出力ギヤ7に出力される。なお、第1ブレーキ70はエンジンブレーキを作動させる1速でのみ締結され、エンジンブレーキを作動させない1速では、ワンウェイクラッチ100がロックすることにより1速を形成する。
2速では、第1クラッチ10と第2ブレーキ80とが締結され、入力軸4の回転は、第1ギヤセット40のサンギヤ41に入力されると同時に、第2ギヤセット50を介して該第1ギヤセット40のリングギヤ44にも入力され、入力軸4の回転は前記1速よりも小さな減速比で減速されて、第1ギヤセット40のキャリア43から出力ギヤ7に出力される。
3速では、第1クラッチ10と第3ブレーキ90とが締結され、入力軸4の回転は、第1ギヤセット40のサンギヤ41に入力されると同時に、第3ギヤセット60及び第2ギヤセット50を介して該第1ギヤセット40のリングギヤ44にも入力され、入力軸4の回転は前記2速よりもさらに小さな減速比で減速されて、第1ギヤセット40のキャリア43から出力ギヤ7に出力される。
4速では、第1クラッチ10と第2クラッチ20とが締結され、入力軸4の回転は、第1ギヤセット40のサンギヤ41に入力されると同時に、第2ギヤセット50を経由してそのまま第1ギヤセット40のリングギヤ44にも入力される。これにより、第1ギヤセット40の全体が入力軸4と一体的に回転し、キャリア43から減速比1の回転が出力ギヤ7に出力される。
5速では、第2クラッチ20と第3ブレーキ90とが締結され、入力軸4の回転は、第2ギヤセット50を経由してそのまま第1ギヤセット40のリングギヤ44に入力されると同時に、第3ギヤセット60及び第2ギヤセット50を介して該第1ギヤセット40のサンギヤ41にも入力され、入力軸4の回転は増速されて、第1ギヤセット40のキャリア43から出力ギヤ7に出力される。
6速では、第2クラッチ20と第2ブレーキ80とが締結され、入力軸4の回転は、第2ギヤセット50を経由してそのまま第1ギヤセット40のリングギヤ44に入力されると同時に、第2ギヤセット50を介して該第1ギヤセット40のサンギヤ41にも入力され、入力軸4の回転は、前記5速よりも大きな増速比で増速されて、第1ギヤセット40のキャリア43から出力ギヤ7に出力される。
そして、後退速では、第1ブレーキ70と第3ブレーキ90とが締結され、入力軸4の回転は、第3ギヤセット60及び第2ギヤセット50を介して第1ギヤセット40のサンギヤ41に入力される。このとき、第2ギヤセット50において回転方向が逆転されることにより、第1ギヤセット40のキャリア43から出力ギヤ7に入力軸4の回転方向と反対方向の回転が出力される。
以上のように、入力側に配置された2つのクラッチ10、20と、3つのシングルピニオン型プラネタリギヤセット40、50、60、及び3つのブレーキ70、80、90で構成された変速機構30とにより、前進6速及び後退速が可能な自動変速機1が実現される。
ここからは、本発明の特徴部である、入力軸4を支持するころがり軸受への潤滑油の供給について、具体的に図3の自動変速機1の断面図を用いて説明する。
図3は、変速機ケース5のエンドカバー5c側の変速機の部分の断面を示している。
図3に示すように、入力軸4は、ころがり軸受200を介して変速機ケース5のエンドカバー5cに支持されている。具体的には、エンドカバー5cの中心部に、変速機ケース5内部に突出する円筒形状のボス部5c1が形成されており、このボス部5c1内に挿入された入力軸4の先端部分が、ころがり軸受200を介して支持されている。
ころがり軸受200は、該ころがり軸受200およびその周辺を拡大した図4に示すように、エンドカバー5c1のボス部5c内に圧入されたアウタレース200aと、入力軸4の先端に圧入されたインナレース200bと、アウタレース200aの内周面とインナレース200bの外周面との間で転動する複数の円柱形状の回転体(ころ)200cと、複数の回転体200cを回転可能に周方向に一定の間隔をあけて保持するケージ200dと、回転体200cのエンドカバー5c側に装着されてアウタレース200aの内周面とインナレース200bの外周面との間を油密にするリップシール200eとから構成されている。
ころがり軸受200のアウタレース200aには、軸方向両端に内周側に折り曲げられてなる折曲部200a1が備えられており、これにより、回転体200c、ケージ200d、およびリップシール200eの軸方向の移動をアウタレース200aとインナレース200bとの間に規制している。言い換えると、折曲部200a1は、いわゆる抜け止めとして機能している。また、反エンドカバー5c側の折曲部200a1は、詳細は後述するが、ころがり軸受200内部(アウタレース200a、インナレース200b、およびリップシール200eにより画成される空間)に、潤滑油を案内する役割もする。
このころがり軸受200内部への潤滑油の供給について説明する。図4に示すように、ころがり軸受200には、エンドカバー5c内に形成された潤滑油供給路5c2から流出した潤滑油がエンドカバー5cのボス部5c1と回転軸4との間の空間202を介して回転軸4内に形成された軸方向に延びる潤滑油路の主油路4aに導入され、その導入された潤滑油が主油路4aから半径方向に延びて回転軸4の外周面のころがり軸受200の反エンドカバー5c側近傍部分に開口する出口油路4bを介して供給される。
厳密には、エンドカバー5c内に形成された潤滑油供給路5c2から流出した潤滑油が、エンドカバー5cのボス部5c1と回転軸4との間に油溜まりとして設けられた空間202に入る。このとき、リップシール200eにより、空間202内の潤滑油がエンドカバー5c側からころがり軸受200内部に流入することが阻止される。リップシール200eは、図5に示すように、空間202を臨むように、かつリップ200e1が該空間202側に向くように装着されており、該空間202内の潤滑油の油圧が作用してリップ200e1がインナレース200bに密着することにより、該空間202からころがり軸受200内部に向かう流れ、またはこれとは逆方向の流れを阻止している。この理由は、回転軸4内の潤滑油路の主油路4aに十分量の潤滑油が導入されるようにするためである。
説明すると、仮に空間202からころがり軸受200内部に回転軸4内の潤滑油路を介さず直接潤滑油を供給するように構成すると、該潤滑油路の主油路4aに導入される潤滑油量が少なくなり、その結果、出口油路4bを超えて反エンドカバー5c側に流れる潤滑油量が不足する。これを防止するために、すなわち出口油路4bを超えて主油路4aを流れた潤滑油が供給される部位に対して十分量の潤滑油を確保するために、リップシール200eはころがり軸受200のエンドカバー5c側に装着されている。
図5に示すように、回転軸4内の潤滑油路の主油路4aに流入した潤滑油は反エンドカバー5c方向に流れ、一部が、回転軸4が回転することにより発生する遠心力が作用して、出口油路4bの開口部から勢いよく流出する。出口油路4bの開口部から勢いよく流出した潤滑油は、その一部がアウタレース200aの折曲部200a1に受け止められて案内されてころがり軸受200内部に流入し、残りがボス部5c1と第3ギヤセット60のサンギヤ61との間の空間204に流れていく。そのために、アウタレース200aは、出口油路4bの開口部に軸方向にオーバーラップするように延びている。
ただし、出口油路4bは、ボス部5c1と第3ギヤセット60のサンギヤ61との間の空間204を介して第2ブレーキ80や第3ブレーキ90などの所定の部位に潤滑油を供給するために設けられているため(図3参照。)、出口油路4bの開口部に対するアウタレース200aの軸方向のオーバーラップ量は、必要量だけ潤滑油がころがり軸受200内部に流れるように調整されている。別の観点から言えば、オーバーラップ量を調整するだけで、すなわちアウタレース200aの軸方向寸法を変更するだけで、簡単にころがり軸受200に対する潤滑油の供給量を調整することができる。
ころがり軸受200内に流入した潤滑油は、ころがり軸受200内部が袋小路状の行き止まりであるものの、出口油路4bから空間204に向かって勢いよく流れる潤滑油により該ころがり軸受200内から吸い出され、ともに空間204に流れていく。したがって、出口油路4bの開口部から流出した潤滑油は、一部がころがり軸受200内部を通過した後に空間204に流れていくものの、結果として全てが空間204に向かって流れていく。これにより、出口油路4bが潤滑油を供給すべき第2ブレーキ80や第3ブレーキ90などの所定の部位に対して該潤滑油が十分供給されつつ、ころがり軸受200内部の潤滑油の入れ替えが活発に行われる。
本実施形態によれば、ころがり軸受200内部の潤滑油の入れ替えが活発に行われるので、ころがり軸受200の回転体200cとアウタレース200aやインナレース200bとの間に新鮮な潤滑油が供給され、それにより該間が十分潤滑される。そのため、ころがり軸受200が作用する荷重が大きい先端で回転軸4を支持していても、フレーキングの発生が防止される。その結果、ころがり軸受200の耐久性が向上する。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、上述の実施形態の場合、アウタレース200aの反エンドカバー5c側の折曲部200a1が、その内周側に折り曲げられた形状により、出口油路4bの開口部から流出した潤滑油を受け止め、ころがり軸受200内部に潤滑油を確実に案内しているが、ころがり軸受200内部に潤滑油を確実に案内できるのであれば、その手段は問わない。例えば、折曲部を設けずアウタレースの内周面を潤滑油案内手段としてもよい。ただし、この場合、インナレースの両端に折曲部を設けるなどして抜け止め手段を別途設ける必要がある。
また、上述の実施形態のころがり軸受200は、インナレース200bを有するものであったが、本発明は、インナレースを省いた、すなわち回転軸4の外周面をインナレースの転動面として利用するころがり軸受であってもよい。
さらに、上述の実施形態の場合、ころがり軸受200は、最も荷重が大きい回転軸4の先端を支持するものであるが、支持する位置は先端以外であってもよい。
以上のように、本発明は、変速機構の中心部に配置された回転軸を支持するころがり軸受を有し、該転がり軸受に潤滑油を供給する変速機において、ころがり軸受内部の潤滑油が新鮮なものと入れ替えられるように潤滑油を供給することができる。したがって、自動車用変速機の分野において好適に利用される可能性がある。
本発明の一実施形態に係る変速機の骨子図である。 図1の変速機の締結表である。 変速機の部分的断面図である。 図3の部分拡大図である。 図4の部分拡大図であって、潤滑油の流れを示した図である。 従来のころがり軸受の断面図である。
符号の説明
4 回転軸(入力軸)
4a 主油路
4b 出口油路
200 ころがり軸受
200a アウタレース
200c 回転体
200e シール部材(リップシール)

Claims (4)

  1. 変速機構と、該変速機構の中心部に配置された回転軸とを有し、該回転軸内に軸方向に延びる主油路と該主油路から半径方向に延びて回転軸外周面に開口する出口油路とからなる潤滑油路が設けられ、該出口油路を介して所定の部位に主油路に導入された潤滑油を供給するように構成され、かつ、前記回転軸が前記出口油路の開口部近傍で、回転体とアウタレースとを有するころがり軸受によって支持されている変速機において、
    前記ころがり軸受のアウタレースを前記出口油路側へ延設し、該出口油路の開口部と軸方向にオーバーラップさせるとともに、
    該ころがり軸受の反出口油路側の端部に、アウタレース内周面と回転軸外周面との間を油密にするシール部材が備えられていることを特徴とする変速機。
  2. 請求項1に記載の変速機において、
    前記出口油路の開口部とオーバーラップするころがり軸受のアウタレースの端部に、内周側への折曲部が設けられていることを特徴とする変速機。
  3. 請求項1または2に記載の変速機において、
    前記ころがり軸受は回転軸の先端部に備えられ、該ころがり軸受を介して回転軸の先端部が変速機ケースの端壁部に支持されていることを特徴とする変速機。
  4. 請求項3に記載の変速機において、
    変速機ケースの端壁部に潤滑油供給路が設けられ、該潤滑油供給路から供給される潤滑油が、該端壁部と回転軸先端部との間の空間を経由して該回転軸内に設けられた潤滑油路の主油路に導入されるように構成されているとともに、
    前記ころがり軸受のシール部材が前記空間を臨むように設けられ、
    かつ、該シール部材はリップが回転軸外周面に摺接するリップシールであって、該リップが前記空間側を向くように装着されていることを特徴とする変速機。
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