JP2016169215A - 毛髪処理用組成物とそれを用いた毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法 - Google Patents

毛髪処理用組成物とそれを用いた毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線刺激、ブリーチ剤刺激、染毛剤刺激、パーマ剤刺激に対し、キューティクル損傷を抑制することができる、毛髪処理用組成物とそれを用いた毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法を提供する。【解決手段】本発明の毛髪処理用組成物は、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有する。本発明の毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法は、毛髪を紫外線曝露するか、またはブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤で処理する際に、前記曝露または処理前、前記曝露または処理と同時、あるいは前記曝露または処理後に、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有する毛髪処理用組成物で毛髪を処理する。【選択図】なし

Description

本発明は、毛髪処理用組成物とそれを用いた毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法に関する。
毛髪は、パーマネントウェーブ、ブリーチ、ヘアカラー、日光の曝露等による紫外線等の化学的または物理的刺激により損傷を受け、枝毛、切れ毛、ぱさつき、ツヤの低下などが生じる。
これらは、化学的または物理的刺激により、毛髪内部、外部、表層部の構造が変化してしまうことによるものである。特に、紫外線、ブリーチ剤、染毛剤、パーマ剤は毛髪に対して酸化ストレスを引き起こしてダメージを与え、毛髪表面ではキューティクルの剥がれ、脱落が生じてしまうことがある。その結果、健康な毛髪が本来有している感触の良さと外観の美しさは損なわれてしまう。
紫外線や酸化による毛髪の損傷を抑制するためや、着色成分が配合される場合にその着色成分が紫外線や酸化による退色を抑制するために、毛髪処理用組成物には紫外線吸収剤や抗酸化剤を配合することが行われている(特許文献1、2)。
しかし、抗酸化剤として代表的なビタミンCやコエンザイムQ10を毛髪に塗布した場合、紫外線による毛髪ダメージの抑制には、光分解等による制約があった。例えば、特許文献1に記載のビタミンCは、光分解が起こることが知られており、単独では十分な効果が得られない可能性がある。特許文献2のコエンザイムQ10も、光分解が起こることが知られており、また化粧品の場合、添加に対する配合上限がある(0.03%)。
フラーレンは、活性酸素によって有害な影響に対する保護手段として機能することができ、ラジカルスカベンジャーとして知られている。近年ではナノテクノロジーを利用した化粧品の開発が盛んに行われているが、このうちC60、C70などのフラーレン類を含有する化粧品は、各種の美肌効果を示すことが知られており、フラーレンを油分等に溶解して得られる化粧品が紫外線吸収作用を示す知見が得られている(特許文献3〜5)。
しかし従来検討されているのは、いずれもクリーム、乳液、化粧水、オイルなど、皮膚外用組成物であり、毛髪化粧料については検討されていない。すなわち、従来、フラーレンが皮膚に塗布した際に抗酸化作用を示し有用な効果が得られることが知られているが、フラーレンの適用による毛髪への影響を検討した結果は報告されていない。
特許文献6は、水溶性フラーレンとプラセンタエキスを用いた化粧品組成物が開示されている。
特許第4974807号公報 特開2007−161656号公報 特開2011−256095号公報 再表2009−113426号公報 特許第3506349号公報 特開2006−321781号公報
しかしながら、毛髪化粧料については、効果に基づく実質的な検討はされておらず、実施例に水溶性高分子(ポリビニルピロリドン)を配合して水溶液に調製した水溶性フラーレン(ビタミンC60バイオリサーチ(株):ラジカルスポンジ(登録商標))がヘアーローションとして一例記載されているのみである。すなわち、主に皮膚への適用を対象とした場合の抗酸化、紫外線防御への効果を主としており、頭皮への効果は言及されているものの、毛髪に着目して、紫外線(UVB)刺激、ブリーチ剤刺激、染毛剤刺激、パーマ剤刺激に対し、キューティクル損傷を抑制することについては検証されていない。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、紫外線刺激、ブリーチ剤刺激、染毛剤刺激、パーマ剤刺激に対し、キューティクル損傷を抑制することができる、毛髪処理用組成物とそれを用いた毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法を提供することを課題としている。
本発明者らは鋭意検討した結果、スクワラン類にフラーレン類を溶解したスクワラン溶解フラーレンは、紫外線などの様々な刺激から毛髪のキューティクルを保護する効果を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の毛髪処理用組成物は、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有することを特徴としている。
本発明の毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法は、紫外線曝露、ブリーチ剤処理、染毛剤処理、またはパーマ剤処理による毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法であって、毛髪を紫外線曝露するか、またはブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤で処理する際に、前記曝露または処理前、前記曝露または処理と同時、あるいは前記曝露または処理後に、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有する毛髪処理用組成物で毛髪を処理することを特徴としている。
上記において、フラーレン分散物は、油性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物、または水溶性高分子以外の分散剤によって水性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物であることが好ましい。
本発明によれば、紫外線刺激、ブリーチ剤刺激、染毛剤刺激、パーマ剤刺激に対し、キューティクル損傷を抑制することができる。
対照としての、無処理の毛髪の走査型電子顕微鏡写真である。 紫外線(UVB)刺激に対するスクワラン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 紫外線(UVB)刺激に対するスクワラン溶解フラーレン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 紫外線(UVB)刺激に対するアスコルビン酸前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 紫外線(UVB)刺激に対するユビキノン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 パーマ剤刺激に対するスクワラン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 パーマ剤刺激に対するスクワラン溶解フラーレン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 ブリーチ剤刺激に対するスクワラン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。 ブリーチ剤刺激に対するスクワラン溶解フラーレン前処理の影響に関する走査型電子顕微鏡写真である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の毛髪処理用組成物は、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有する。
ここでフラーレン分散物は、油性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物、または水溶性高分子以外の分散剤によって水性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物であることが好ましい。
上記フラーレン分散物のうち、油性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物としては、スクワラン類にフラーレン類を溶解したスクワラン溶解フラーレン等が挙げられる。
スクワラン溶解フラーレンに使用されるフラーレン類としては、C32、C44、C50、C60、C58、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96および、これらの塩または誘導体などを使用できるが、中でもC60、C70およびその塩または誘導体が好適に用いられる。また、これらのフラーレン類のうち2種以上の混合物を用いてもよく、例えば、C60、C70、またはこれらを含む混合物を用いることができる。
スクワラン類については、スクワランおよびスクワレンのいずれか一方、もしくは両者の混合物であってもよい。植物性由来のもの、あるいは動物や魚類からのもののいずれであってもよい。スクワランとしては、例えば、市販されている植物由来のスクワラン、動物や魚類由来のスクワラン、化学合成されたスクワラン等を用いることができる。純度は種類にもより、特に限定されないが、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上である。
フラーレン類をスクワラン類に溶解させるには、フラーレン類の溶解可能量以下であればよいが、その溶解量については、例えば、フラーレン類の濃度で0.1〜1000ppmである。
上記フラーレン分散物のうち、水溶性高分子以外の分散剤によって水性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物としては、リポソーム複合化フラーレン、分散剤として界面活性剤を用いた分散物等が挙げられる。
リポソーム複合化フラーレンは、リポソーム内にフラーレン類を包含したものである。フラーレン類としては、上記のものを使用できる。リポソーム複合化フラーレンを構成するリポソームとしては、リン脂質を使用することができ、たとえば、ホスファチジルコリン含有量が70質量%以上であるリン脂質、具体的には大豆レシチン、卵黄レシチン、ジパルトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール等のリン脂質、またはこれらの精製物や水素添加レシチン等の天然リン脂質に水素添加を行ったものを使用することができる。本発明においては、これらを1種単独で、あるいは2種以上を適宜に組み合わせて用いることができる。
また、リン脂質の膜安定化を向上するために、さらにステロールまたはその誘導体をリポソームに含有させたものを使用することができる。ステロールまたはその誘導体の具体例としては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、及びこれらの混合物であるフィトステロール、並びに、水素添加フィトステロール、ステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、ノナン酸コレステリル、酪酸コレステリル、酪酸ジヒドロコレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリルなどを挙げることができ、これらは1種単独で、あるいは2種以上を適宜に組み合わせて用いることができる。
リポソーム複合化フラーレンとしては、粘性のある固形状の製品として、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社製「モイストフラーレン(Moist Fullerene:登録商標)」が商業的に入手可能である。
代表的な抗酸化剤であるビタミンCやコエンザイムQ10を毛髪に塗布した場合、おそらく光分解等が関与していると考えられるが、後述の比較例では紫外線による毛髪ダメージを十分に抑制できなかった。これに対して、フラーレンを毛髪に塗布した場合には、明確にキューティクルが保護できており、これまでにない毛髪保護成分といえる。
毛髪として、人毛の他、その他の動物の毛髪や、人工かつらの繊維も対象とされる。ヘアカラーやブリーチ処理の繰り返された特に傷んだ毛髪では表面のキューティクルが剥がれ、しなやかさや弾力感が著しく損なわれてしまうが、これらの毛髪に対して本発明の組成物はキューティクル損傷を抑制できる。
本発明の毛髪処理用組成物には、上記フラーレン分散物の他に、化粧料原料として通常用いられる他の成分を加えることができる。このような成分としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、水溶性高分子や、流動パラフィン、スクワラン、ラノリン誘導体、高級アルコール、各種エステル油、アボガド油、パーム油、牛脂、ホホバ油、シリコーン油、ポリアルキレングリコールポリエーテルおよびそのカルボン酸オリゴエステル化合物、テルペン系炭化水素油等の油分、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の水溶性多価アルコール、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸塩等の保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルピロリドン等の樹脂類、大豆蛋白、ゼラチン、コラーゲン、絹フィブロイン、エラスチン等の蛋白または蛋白分解物、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、各種アミノ酸、ビオチン、パントテン酸誘導体等の賦活剤、γ−オリザノール、デキストラン硫酸ナトリウム、ビタミンE誘導体、ニコチン酸誘導体等の血行促進剤、硫黄、チアントール等の抗脂漏剤、エタノール、イソプロパノール、テトラクロロジフルオロエタン等の希釈剤、カルボキシビニルポリマー等の増粘剤、薬剤、香料、色剤等が挙げられる。
本発明の毛髪処理用組成物としては、ヘアーシャンプーのような洗浄剤、塗布後洗い流して使用するヘアーリンス剤もしくはヘアートリートメント剤、つけっ放しで使用するトリートメント剤、ヘアーミルク、ヘアークリーム、ヘアーワックス、ヘアージェル、ヘアーローション、トリガースプレータイプ癖毛直しスプレー、ノンエアゾール型フォームおよびヘアースプレーやヘアーフォーム等のエアゾール剤型のヘアースタイリング剤、ブリーチ剤、染毛剤、パーマ剤(パーマネントウェーブ液)等があり、毛髪に使用することにより、パーマやブリーチ、ヘアカラー等により引き起こされる毛髪表面の損傷を予防し、さらに毛髪損傷に伴う切れ毛、パサツキ等を改善することができる。
本発明の毛髪処理用組成物の剤型は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状、エアゾール等の形態にすることができる。
毛髪を紫外線曝露するか、またはブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤で処理する際に、前記曝露または処理前、前記曝露または処理と同時、あるいは前記曝露または処理後に、上記フラーレン分散物を含有する本発明の毛髪処理用組成物で毛髪を処理することによって、毛髪のキューティクル損傷を抑制することができる。
本発明の毛髪処理用組成物による毛髪の処理は、毛髪処理用組成物を毛髪に直接または道具を用いて接触させることにより行われる。接触の方法は、その毛髪処理用組成物のタイプにおいて一般に広く用いられている方法を適用でき、例えばプレシャンプートリートメントの場合、シャンプー処理をする前に、適量を乾燥状態または湿潤状態の毛髪に接触させ、数秒〜数十分間放置した後に流水で洗い流す方法、シャンプーの場合、適量を毛髪に接触させ、泡立てながら数分間マッサージした後に流水で洗い流す方法、ヘアーリンス、ヘアコンディショナー、ヘアートリートメント、アフターシャンプートリートメント等の場合、シャンプー処理後、適量を毛髪に接触させ、数秒〜数十分放置後に流水で洗い流す方法、ヘアムース、ヘアオイル、スタイリング剤等の場合、適量を毛髪に接触させ、そのまま放置する方法等が挙げられる。
本発明の毛髪処理用組成物を、ブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤の前処理剤または後処理剤として使用する場合には、上記のような方法や剤型で行うことができる。本発明の毛髪処理用組成物による処理を、ブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤による処理と同時に行う場合には、例えば、使用時にブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤と本発明の毛髪処理用組成物とを混合してから毛髪に適用してもよいし、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有するブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤をあらかじめ調製しておき、これをそのまま毛髪に適用してもよい。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
毛髪(人毛)は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ:H−7650)で観察した。図1は、図2〜図9との対照として無処理の紫外線照射しなかったものである。
1.紫外線曝露試験
<比較例1>
スクワランのみを塗布した毛髪(人毛)に紫外線UVB(東光電気株式会社:デルマレイ−200)を2〜4J/cmの強度で照射し、コーティング機器(メイワフォーシス株式会社:ネオオスミウムコータNeoc−Pro)を用いてオスミウムで試料表面をコーティングした。
この毛髪を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ:H−7650)で観察した。その結果を図2に示す。毛髪表面のキューティクルの剥離が生じていた。
<実施例1>
UV照射1時間前にスクワラン溶解フラーレン(ビタミンC60バイオリサーチ株式会社:LipoFullerene(登録商標)、フラーレンC60を0.026パーセント含む)を塗布した。
この毛髪に紫外線を実施例1と同強度で照射した。その結果を図3に示す。
キューティクルの剥離は生じず、フラーレンが紫外線によるキューティクルダメージを抑制することが明らかとなった。
<比較例2>
同様の試験を他の抗酸化剤であるビタミンC(アスコルビン酸 和光純薬株式会社:012−04802)の5%水溶液で実施した。
その結果を図4に示す。毛髪表面のキューティクルの剥離が生じていた。
<比較例3>
同様の試験を他の抗酸化剤であるコエンザイムQ10(ユビキノン 和光純薬株式会社:211−01431)の0.03%スクワラン溶解液で実施した。
その結果を図5に示す。キューティクルのうろこ状の形態が失われ、フラーレン塗布時の様なキューティクル保護効果は認められなかった。
2.パーマ剤処理試験
<比較例4>
スクワランのみを塗布した毛髪(人毛)に50倍量のパーマ剤(2−aminoethanol 1.0 w/v%、ammonia 0.45 w/v%、ammonium thioglycolate 6.0w/v%)による処理を37℃で緩やかに浸透させて2時間実施し、水で洗浄後sodium bromate7%を15分間処理して中和した。
この毛髪を洗浄後室温で乾かして走査型電子顕微鏡で表面観察した。その結果を図6に示す。毛髪表面のキューティクルの剥離が生じていた。
<実施例2>
一方、1時間前にスクワラン溶解フラーレンを塗布した毛髪に、パーマ剤による処理を実施した。
この毛髪を走査型電子顕微鏡で表面観察した。その結果を図7に示す。毛髪表面のキューティクルの剥離は生じなかった。
3.ブリーチ剤処理試験
<比較例5>
スクワランのみを塗布した毛髪(人毛)に50倍量のブリーチ剤(hydrogenperoxide 6.0w/v%、 ammonia 0.50w/v%)による処理を2時間実施し、水で洗浄後sodium bromate7%を15分間処理して中和した。
この毛髪を洗浄後室温で乾かして走査型電子顕微鏡で表面観察した。その結果を図8に示す。毛髪表面のキューティクルの剥離が生じていた。
<実施例3>
一方、1時間前にスクワラン溶解フラーレンを塗布した毛髪にブリーチ剤による処理を実施した。
この毛髪を走査型電子顕微鏡で表面観察した。その結果を図9に示す。毛髪表面のキューティクルの剥離は生じなかった。
4.毛髪のパーマ剤によるダメージ防止効果の測定
毛髪は刺激によりキューティクルの損傷を受けると、毛髪の摩擦特性が変化することが知られている。このため、パーマ剤による毛髪ダメージに対する各種試料の効果を、くし通りにかかる力と時間を測定することで比較検討した。
(1)浸漬試験
(使用したパーマ剤と試料)
[パーマ剤]
2−aminoethanol 1.0 w/v%、ammonia 0.45 w/v%
[試料]
スクワラン(日本生化学株式会社)
Lipo Fullerene(LF、スクワラン溶液:C60を0.027パーセント含む、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社製、登録商標)
Moist Fullerene(MF、リポソーム複合化フラーレン:C60を0.029%含む、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社製、登録商標)
コエンザイムQ10(CoQ10、和光純薬工業株式会社製、スクワラン溶液、0.03%)、
アスコルビン酸水溶液(VC、岩城製薬株式会社製、5%)
Radical Sponge(登録商標)水溶液(RS、PVP包接フラーレン水溶液:C60を0.03%含むように水で希釈、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社製)
(試験方法)
(1) 各毛束(人毛黒髪、10g、30cm)をシャンプーで洗浄後乾燥し、24時間放置した。
(2) 毛束をとかした後、髪を水のスプレーで濡らし、毛束を4.75〜5.43cm/secのスピードでコームを通過させた際の毛束にかかる最大の力(g)を測定した(C1)。
(3) 次に、毛束をとかした後、更に水のスプレーで濡らし、150gの重りをつけてコームを通過させた際にかかる時間(秒)を測定した(T1)。
(4) 毛髪を15分間水に浸漬し、タオルドライした後、毛束に各種試料を万遍なくつけた。
(5) 45分後、毛束を試料から取出し、余分な試料を取り除いて15分間乾燥させた。
(6) パーマ剤を60℃で3時間処理した。
(7) 2回シャンプーして乾燥した後、再び(2)、(3)の測定を行った(C2,T2)。
(8) 各試料について2回の実験を行い、各毛束について、下の式に従ってΔC、ΔTを算出し、その平均を値とした。なお、カットオフ値は、コーミング力については、髪が完全に止まった時の最大力とし、時間については30秒とした。
上記試験の結果を表1に示す。
表1に示した通り、パーマ剤処理の前にスクワランだけを処置しても、パーマ剤の処理によってくし通りは悪くなり、特にコーミング時間については2回ともカットオフ値(30秒以上)となった。
一方、スクワランに比べ、いずれの試料の処理によっても、コーミング時間の変化率も、最大コーミング力の変化率も改善した。この中でも特にLF,MFを処理したものがいずれのパラメーターももっともよく改善し、くし通りにかかる力も時間も改善することが明らかとなった。例えば、LFと同一のスクワランに溶解したほぼ同一量のコエンザイムQ10と比較すると、コーミング時間では約4倍、コーミング力では約1.4倍も改善しており、アスコルビン酸については、166倍もの低濃度でも、LFと比較してコーミング時間では6倍、コーミング力では3.2倍も、フラーレンの方が格段にくし通り改善効果に優れることが判明した。また、フラーレンが含まれているものの、RSについては、LF, MFとは異なり、コーミング時間は1回でカットオフ値となり、最大コーミング力はVCに続いて悪い結果となり、フラーレンの分散状態によって結果に違いがあった。
(2)ヘアクリームでの試験
(使用したパーマ剤とヘアクリーム)
[パーマ剤]
2−aminoethanol 1.0 w/v%、ammonia 0.45 w/v%
[試料のヘアクリーム]
Blank
LFクリーム(スクワランの代わりにLipo Fullerene(登録商標、ビタミンC60バイオリサーチ株式会社製)を配合)
VCクリーム(0.0015%配合、LFクリームに配合されているC60と等モル量)
CoQ10クリーム(0.03%配合)
ヘアクリームは次の手順で調製した。
(1) 表2に示す1〜8の原料を混合し、70℃で溶解。
(2) 別に9〜14の材料を混合して70℃で溶解。
(3) 1〜8の溶液を撹拌しながら9〜14の溶液を加えて混合する。
(4) その後25℃まで冷却して放置し、白色クリーム状のヘアクリームを調製する。
出来たクリ−ムは冷暗所保管。
なお、表2の残部とは、ヘアクリームの全重量から水以外のヘアクリームの構成成分の全重量を除いた重量であり、また、表2において構成成分の数値はw/w%で示す。
(使用試薬)
1. 日本生化学株式会社、2.ビタミンC60バイオリサーチ株式会社、3. 和光純薬工業株式会社 特級、4.健栄製薬株式会社、5. 和光純薬工業株式会社、6. 大洋製薬株式会社、7,8. 日光ケミカルズ株式会社、9.和光純薬工業株式会社 特級、10. ナカライテスク株式会社、11. 昭和化学株式会社 1級試薬、12.和光純薬工業株式会社 特級、13. 岩城製薬株式会社
(試験方法)
試験及び計算方法は、上記「(1)浸漬試験」と同様にして実施した。
試料の塗布については、毛髪10gに対して、5gを塗布し、45分間放置した後タオルで簡単に拭き取りパーマ剤を処理した。
上記試験の結果を表3に示す。
表3に示した通り、パーマ剤処理の前にBlankクリームだけを処置しても、パーマ剤の処理によってくし通りは悪くなり、特にコーミング時間については2回ともカットオフ値(30秒以上)となった。
一方、スクワランに比べ、いずれの試料の処理によっても、コーミング時間の変化率も、最大コーミング力の変化率も改善した。この中でも特にフラーレンを処理したものがいずれのパラメーターももっともよく改善し、くし通りにかかる力も時間も改善することが明らかとなった。例えば、同一のスクワランに溶解したほぼ同一量のコエンザイムQ10と比較すると、コーミング時間では約6倍、コーミング力では約3倍も改善しており、アスコルビン酸については、同一モル濃度でも、コーミング時間では20倍、コーミング力では26倍も、フラーレンの方が格段にくし通り改善効果に優れることが判明した。
これらの実験の結果は、電子顕微鏡での観察結果も踏まえると、フラーレンがパーマ剤によるキューティクルの剥離を効率的に抑制した結果、毛髪の摩擦が起こりにくくなり、くし通りが改善したものと考えられた。

Claims (4)

  1. フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有する毛髪処理用組成物。
  2. フラーレン分散物は、油性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物、または水溶性高分子以外の分散剤によって水性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物である、請求項1に記載の毛髪処理用組成物。
  3. 紫外線曝露、ブリーチ剤処理、染毛剤処理、またはパーマ剤処理による毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法であって、
    毛髪を紫外線曝露するか、またはブリーチ剤、染毛剤、もしくはパーマ剤で処理する際に、前記曝露または処理前、前記曝露または処理と同時、あるいは前記曝露または処理後に、フラーレン類を安定に分散させたフラーレン分散物を含有する毛髪処理用組成物で毛髪を処理する、毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法。
  4. フラーレン分散物は、油性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物、または水溶性高分子以外の分散剤によって水性溶媒にフラーレン類を安定に分散させた分散物である、請求項3に記載の毛髪のキューティクル損傷を抑制する方法。
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