JP3853644B2 - 毛髪処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、両親媒性脂質を配合した毛髪化粧料を用いて毛髪を処理する方法、および毛髪のキューティクルを保護するための該毛髪化粧料の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
毛髪は種々の外的要因(紫外線、乾燥、洗髪、ブラッシング、熱、化学処理等)により、ダメージを受けている。更に、毛髪の手入れのための日常行為(洗髪、洗髪後のドライヤー乾燥、ブラッシング等)がダメージを進行させ、そのため毛髪は本来の健康を失い、最終的には枝毛・切れ毛等へ進行してしまう。
これらの毛髪ダメージを防ぐため、種々の検討がなされている。例えば、ブラッシングの摩擦による影響を低減させるため、シリコーン等を含有する毛髪化粧料を用いて滑り性を向上させる方法、毛髪の構成成分であるアミノ酸を補う等の方法が用いられてきた。
一方、毛髪内部にはセラミドが存在し、毛髪の健康に寄与していることが知られている。よって、セラミド類又はその類縁体(擬セラミド)が毛髪化粧料に配合され、毛髪ケア効果を期待した商品が市場に出ている。
しかし、このセラミド類又は類縁体は、一般に高融点で、結晶性が高く、他の化合物との相溶性が低い等の特徴を有しているため、一般には配合量には限界があり、微量のため、その効果を充分に引き出せるだけの量を配合することが困難である。
これに関連して、特開昭64−9913号の毛髪化粧料ではアミド誘導体を毛髪化粧料中に可溶化もしくは乳化系で安定させている。この毛髪化粧料を用いて、アミド誘導体を毛髪へ浸透させ保護効果を高めることを記載している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開昭64−9913号記載の方法では高度の毛髪保護効果を得るにはまだ不充分であった。
本発明は、効果的に毛髪に対するダメージを緩和し、キューティクル(表皮)の剥がれを補修し、枝毛・切れ毛を予防する毛髪ケア方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、平均粒径0.5〜80μmであり、分子中に1以上のヒドロキシ基及び1以上のアミド基を有する両親媒性脂質を0.01〜30重量%含有する洗い流し型もしくは洗い流さない型の毛髪化粧料を毛髪へ適用し、該両親媒性脂質の融点より10℃低い温度以上の熱を毛髪に加える毛髪処理方法である。
また本発明は、平均粒径0.5〜80μmであり、分子中に1以上のヒドロキシ基及び1以上のアミド基を有する両親媒性脂質を0.01〜30重量%含有する洗い流し型もしくは洗い流さない型の毛髪化粧料を毛髪へ適用し、該両親媒性脂質の融点より10℃低い温度以上の熱を毛髪に加える、毛髪のキューティクルを保護するための該毛髪化粧料の使用方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の毛髪化粧料を毛髪へ適用した後、毛髪への付着性を向上させる観点から、該毛髪化粧料中に含有される両親媒性脂質の融点より10℃低い温度以上、好ましくは融点より5℃低い温度以上、更に好ましくは融点以上で、また、毛髪の熱による損傷を防ぐ観点から好ましくは150℃以下の温度、更に好ましくは120℃以下の温度の熱を毛髪に加える。該毛髪化粧料中に2種以上の両親媒性脂質が含まれる場合、毛髪への付着性を向上させる観点から、最も融点の高い両親媒性脂質の融点より10℃低い温度以上、好ましくは該融点より8℃低い温度以上、更に好ましくは該融点以上とするのが好ましい。
【0006】
本発明に使用される分子中に1以上のヒドロキシ基及び1以上のアミド基を有する両親媒性脂質とは、天然セラミド類、合成セラミド類及び合成等により得られるそれらの類縁体(擬セラミド)であって室温(25℃)で固体状のものをいう。これら両親媒性脂質として、Ceramide H03(登録商標、Sederma)、Ceramide II(登録商標、Sederma)、Questamide H(登録商標、Quest)、Ceramide TIC-001(登録商標、高砂香料)、ソフケアセラミド SL-E(登録商標、花王)等が挙げられる。本発明の毛髪化粧料が両親媒性脂質を分散した形態を有するため、その安定性、及び熱による融解性を考慮すると、両親媒性脂質の融点は50〜120℃であるものが有用である。
合成により得られるセラミド類縁体の特に好ましい例としては、上記ソフケアセラミド SL-Eを含む次の一般式(1)で表されるアミド誘導体(1)が挙げられる。
一般式:
【0007】
【化1】
Figure 0003853644
【0008】
〔式中、R1及びR2は同一又は異なって、1以上のヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数7〜39の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、リン酸塩残基、硫酸塩残基又は糖残基を示す。ただし、1分子中に1以上のヒドロキシ基を有する。〕
【0009】
一般式(1)において、R1の炭化水素基としては、炭素数9〜25の直鎖又は分岐鎖の飽和もしくは不飽和の炭化水素基が好ましく、R2の炭化水素基としては、炭素数10〜26の直鎖又は分岐鎖の飽和もしくは不飽和の炭化水素基が好ましく、R3及びR4としては、水素原子が好ましい。
上記アミド誘導体(1)の製造法については特開昭62−228048号公報、特開昭63−216852号公報等に詳述されている。
本発明の両親媒性脂質は分子中に1以上のヒドロキシ基及び1以上のアミド基を有するものであれば、1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
本発明の上記両親媒性脂質を平均粒径0.5〜80μmに整えるために、その両親媒性脂質5〜40重量%、界面活性剤2〜55重量%及び水を、両親媒性脂質の融点以上に加熱し、融解させた後冷却し、両親媒性脂質を晶析させる方法を用いることが出来る。この方法で得た上記両親媒性脂質の分散液を配合して本発明の毛髪化粧料を調製することが可能である。この分散液調製方法を適用する場合は、両親媒性脂質の融点は50〜100℃であることが望ましい。
ここでいう平均粒径は、光学顕微鏡を用いて透過光下で写真撮影した後、写真上で任意に粒子を30個選び、各粒子について、直線距離で最長の部分を計測した際の算術平均値である。
上記両親媒性脂質を配合した洗い流し型の毛髪化粧料の場合、洗い流し操作による両親媒性脂質の流出を最小限に止め、毛髪保護効果を出せる量を毛髪に残留させなければならない。毛髪への残留量は、両親媒性脂質の粒径とキューティクル間距離に関係があり、平均粒径が0.5〜80μm、好ましくは0.5〜50μm、更に好ましくは1〜30μmの両親媒性脂質であれば効果的に毛髪へ残留させることが可能である。
【0011】
両親媒性脂質分散液の調製に使用される界面活性剤としては、一般に化粧品用として用いられるもの、例えば非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。このうち、非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル若しくはアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。また、陰イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸又はその塩、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン及びアミドアミノ酸(イミダゾリン系ベタイン)等が挙げられる。
【0012】
上記界面活性剤中でも好ましいものとして、非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸又はその塩が挙げられる。該非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキル若しくはアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれるものが好ましい。
特に好ましい上記非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグリコシド、例えばアルキル基の炭素数8〜14で糖(グルコース)の縮合度1〜2のもの;ポリオキシアルキレンアルキル若しくはアルケニルエーテル、例えばアルキル基若しくはアルケニル基の炭素数が8〜18でエチレンオキシドの平均付加モル数が4〜25、好ましくは4〜15のもの;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば脂肪酸の炭素数が8〜20でエチレンオキシドの平均付加モル数が5〜25のもの;ソルビタン脂肪酸エステル、例えば炭素数8〜20の脂肪酸のモノエステル等、が特に好ましい。また、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸又はその塩としては、炭素数8〜20でエチレンオキシド平均付加モル数が3〜15の酸そのもの若しくはそのアルカリ金属等の塩が挙げられる。すなわち、該ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸は、中和せずそのまま用いてもよいし、適宜中和して用いてもよい。またカチオン界面活性剤を更に添加することにより、毛髪への両親媒性脂質の吸着性を上げることができる。
【0013】
両親媒性脂質分散液の調製に使用される界面活性剤は、いずれかを単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができ、分散液中に2〜55重量%、好ましくは5〜40重量%配合される。
【0014】
両親媒性脂質分散液中の両親媒性脂質(a)と界面活性剤(b)の配合比率は、重量比(a)/(b)が90/10〜25/75、更に80/20〜30/70、特に70/30〜40/60が好ましい。
尚、この分散液製造方法については特開2000−239151号公報または特開2000−122724号公報に詳しく記載されている。
【0015】
また、上記両親媒性脂質の分散液を用いなくとも、毛髪化粧料中に上記両親媒性脂質を0.01〜30重量%となるよう配合し、融解、冷却の操作で平均粒径0.5〜80μmの両親媒性脂質を晶析する方法を取ることも出来る。この両親媒性脂質を毛髪化粧料中で晶析する方法を適用する場合、両親媒性脂質の融点は50〜100℃であることが望ましい。また、上記両親媒性脂質を粉砕等の操作で平均粒径0.5〜80μmとなるよう調整し、これを毛髪化粧料中に0.01〜30重量%となるよう配合してもよい。
【0016】
本発明の洗い流し型の毛髪化粧料としては、シャンプー、コンディショナー(リンス)、トリートメント、パック、パーマ剤、染毛料等が挙げられる。これら洗い流し型毛髪化粧料中に上記の両親媒性脂質を0.01〜30重量%、特に0.1〜20重量%含有するのが好ましい。この洗い流し型の毛髪化粧料は、一般に洗い流し型の毛髪化粧料に配合される成分を用いて作ることが出来る。両親媒性脂質の他に本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品等に配合される成分、界面活性剤、油剤、コンディショニング成分、水溶性高分子、粘度調整剤、溶解助剤、キレート剤、防腐剤、栄養成分、動植物抽出物、ポリマー微粉体、消炎剤、抗菌剤、抗フケ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、着色料、香料、染料、浸透促進剤、還元剤、酸化剤等を適宜配合することが出来る。
【0017】
洗い流し型の毛髪化粧料に配合される界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤が挙げられる。
該陰イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩:例えばアルキル基の炭素数が12〜18でエチレンオキサイド平均付加モル数が2〜4のもの、アルキル基の炭素数12〜18のアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、例えばアルキル基の炭素数が12〜18でエチレンオキサイド平均付加モル数が3〜12のもの;アシル化アミノ酸塩、例えばアシル基の炭素数が12〜18で、アラニン、サルコシン、グリシン、グルタミン酸の誘導体であるもの、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩、アシル基の炭素数が12〜18のアシル化イセチオン酸塩、アシル基の炭素数が12〜18のN−アシルメチルタウリン塩、アルキル基の炭素数12〜18のα−スルホ脂肪酸塩、アルキル基の炭素数12〜18のα−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩:例えば脂肪酸の炭素数が12〜18のもの、アルキルリン酸塩:例えばアルキル基の炭素数が12〜18のもの;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩:例えばアルキル基の炭素数が12〜18でエチレンオキサイド平均付加モル数が1〜5のものが更に好ましい。塩としては、水溶液となる塩、すなわちアルカリ金属塩やアルカノールアミン塩が好ましい。
該両性イオン界面活性剤としては、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アミドアミノ酸系界面活性剤(イミダゾリン系ベタイン)が好ましい。
該非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えばアルキル基の炭素数が12〜18でエチレンオキサイド平均付加モル数が2〜30のもの、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリンモノエステルが好ましい。
該陽イオン界面活性剤としては、直鎖又は分岐鎖のモノ−又はジ−長鎖アルキル第四級アンモニウム塩、アルキル鎖長にエーテル基、エステル基、アミド基等の官能基を導入した直鎖又は分岐鎖のモノ−又はジ−長鎖アルキル第四級アンモニウム塩が好ましい。
例えばこの洗い流し型の毛髪化粧料に用いられる界面活性剤の配合量は、洗浄目的の洗い流し型毛髪化粧料の5〜95重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは10〜35重量%である。柔軟、コンディショニング目的の洗い流し型毛髪化粧料においては非イオン界面活性剤もしくは陽イオン界面活性剤を毛髪化粧料の0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲で配合する。
【0018】
洗い流し型の毛髪化粧料に配合される界面活性剤以外の成分として、油剤:例えば高級アルコール、高級3級アミン、高級脂肪酸、エステル油、炭化水素、シリコーン類等、水溶性高分子:例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、多糖類(キサンタンガム等)等、コンディショニング成分:例えばカチオン化セルロース、カチオン化グアガム、マーコート550(メルク)等、粘度調整剤や溶解助剤:例えばポリオキシアルキレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、エタノール、グリセリン、ソルビトール等、キレート剤:例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ホスホン酸塩類等、防腐剤:例えばメチルパラベン、ブチルパラベン等、栄養成分:例えばビタミン類又はその前駆体等、動植物抽出物又はその誘導体:例えばレシチン、ゼラチン等、ポリマー微粉体:例えばナイロン、ポリエチレン等、消炎剤:例えばグリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン等、抗菌剤や抗フケ剤:例えば塩化ベンザルコニウム、セチルリン酸ベンザルコニウム(花王,サニゾールP)、トリクロサン、トリクロロカルバン、オクトピロックス、ジンクピリチオン等、酸化防止剤:例えばジブチルヒドロキシトルエン等、その他の成分を、目的の洗い流し型毛髪化粧料を得るために適宜適量配合することができる。
【0019】
また、本発明の洗い流し型の毛髪化粧料は、液状、ペースト状、ゲル状、クリーム状、ワックス状、固形状あるいはエアゾール等任意の剤型にすることが出来る。また、ミスト状、フォーム状等任意の形態でも使用することが出来る。
【0020】
本発明の洗い流さない型の毛髪化粧料は、一般にトリートメント剤、スタイリング剤、整髪剤、育毛剤、養毛剤に分類される化粧料である。これら洗い流さない型の毛髪化粧料中に上記の両親媒性脂質を0.01〜30重量%、特に0.1〜20重量%配合するのが好ましい。この洗い流さない型の毛髪化粧料は、一般に洗い流さない型の毛髪化粧料に配合される成分を用いて作ることが出来る。本発明の両親媒性脂質の他に本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品等に配合される成分、例えば油剤、界面活性剤、シリコーン類、粘度調整剤、薬効成分、pH調整剤、無機塩類、ゲル化剤、水和剤、感触向上剤、緩和剤、着色料、保存剤、香料、紫外線吸収剤、栄養成分、浸透促進剤等を適宜配合することが出来る。
【0021】
洗い流さない型の毛髪化粧料に配合される油剤として、炭化水素類:例えばワセリン、固体状若しくは液体状パラフィン、クリスタルオイル、セレシン、オゾケライト、モンタンロウ、スクワラン、スクワレン等、エステル油:例えばオリーブ油、カルナウバロウ、ラノリン、ホホバ油、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、イソプロピルステアリン酸エステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等、高級脂肪酸:例えばステアリン酸、パルミチン酸等、高級アルコール:例えばセタノール、ステアリルアルコール等、高級3級アミン:例えばアルキル鎖長にエーテル、アミド基等の官能基を導入した直鎖又は分岐鎖の3級アミンを用いることができる。これらの油剤を配合する場合には、毛髪化粧料中に、0.01〜50重量%配合するのが好ましく、特に0.1〜30重量%配合するのが好ましい。
【0022】
洗い流さない型の毛髪化粧料に配合される油剤以外の成分として、界面活性剤:例えば非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグリセリド等)、陽イオン界面活性剤(直鎖又は分岐鎖のモノ−又はジ−長鎖アルキル第四級アンモニウム塩、アルキル鎖長にエーテル基、エステル基、アミド基等の官能基を導入した直鎖又は分岐鎖のモノ−又はジ−長鎖アルキル第四級アンモニウム塩)、シリコーン類:例えばメチルポリシロキサン、環状メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、各種変性シリコーン、粘度調整剤:例えばポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、トラガントガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、アガロース、アルギン酸ナトリウム、エタノール、ベンジルアルコール等、薬効成分:例えば抗消炎剤(グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン等)、殺菌・抗フケ剤(塩化ベンザルコニウム、セチルリン酸ベンザルコニウム(花王、サニゾールP)、トリクロサン、トリクロロカルバン、オクトピロックス、ジンクピリチオン等)、養毛・育毛成分(ホルモン、動植物抽出物及び誘導体等)、その他の成分を、目的の洗い流さない型の毛髪化粧料を得るために適宜適量配合することができる。
【0023】
また、本発明の洗い流さない型の毛髪化粧料は、液状、ペースト状、ゲル状、クリーム状、ワックス状、固形状あるいはエアゾール等任意の剤型とすることが出来る。これからミスト状、フォーム状等の任意の形態で使用することも出来る。
【0024】
毛髪化粧料の適用後に毛髪に熱を加える器具として、ヘアドライヤー、ヘアアイロン、ヘアカーラー、ヘアスチーマー、遠赤外線ヒーター、遠赤外線ドライヤー等、家庭用あるいは理美容業務用器具を用いることが可能である。これらの毛髪へ熱を加える器具としては150℃程度の熱を加えられる能力であれば十分である。この器具を用いて、毛髪が熱変性を起こさない程度に加熱時間、熱源からの距離等を調整しながら、両親媒性脂質の融点より10℃低い温度以上〜150℃、好ましくは両親媒性脂質の融点より10℃低い温度〜120℃となるよう毛髪へ熱を加える。
【0025】
これらの器具を用いることなく本発明の毛髪化粧料を毛髪へ適用後、毛髪の乾燥、スタイリング等を行うことは可能であり、また、その毛髪へのダメージ緩和効果も認められる。しかし、より一層のキューティクル保護による毛髪ケア効果を得るには上記に列挙した器具を用いて熱を加える必要がある。
具体的には、毛髪化粧料を毛髪へ適用後、手櫛、櫛、ブラシ等を用いながら熱源となる器具、例えばドライヤー、ヒーター、スチーマー等を近づけて使用し、乾燥またはブロー仕上げを行う方法である。また、毛髪化粧料を毛髪へ適用後、毛髪への癖付けを行うためのカーラー、ブラシ、櫛等の道具で髪型を整えながら熱源となる器具、例えばドライヤー、ヒーター、スチーマー等を近づけて使用する方法である。毛髪化粧料を毛髪へ適用後、毛髪への癖付けを行うために毛髪へ直接熱を加えることが出来る器具、例えば電気カーラー、ヘアアイロン、電気こて等を直接毛髪へあてる方法である。更には、櫛、ブラシ等を使用し毛髪を整えながら熱を毛髪に加えると、より効果的に両親媒性脂質が毛髪をコーティングすることができる。
【0026】
毛髪へ両親媒性脂質を接触させる方法として、予め両親媒性脂質分散液を配合した毛髪化粧料を使用する方法、毛髪へ施す直前に毛髪化粧料を両親媒性脂質分散液またはその希釈液と混合する方法、直接毛髪へ両親媒性脂質分散液またはその希釈液を塗布する方法等が挙げられる。また、上記の両親媒性脂質分散液もしくはその希釈液またはそれらを配合した毛髪化粧料を他の毛髪化粧料の使用前後に使用することも可能である。
【0027】
【実施例】
調製例1(分散液の調製)
両親媒性脂質〔一般式(1)においてR1=C15H31,R2=C16H33,R3=H,R4=Hで融点74〜76℃のもの〕20重量部、マイドール10〔有効分40重量%,デシルグルコシド(縮合度1〜1.35);花王〕37.5重量部及び水42.5重量部を80〜85℃に昇温した後、攪拌しながら冷却して両親媒性脂質を晶析させ、更に攪拌しながら室温まで冷却し、両親媒性脂質分散液を調製した。得られた分散液はパール様外観を有しており、この分散液中の両親媒性脂質の粒子は、平均粒径15.1μmの針状結晶であった。
【0028】
調製例2、3(分散液の調製)
調製例1と同様にして、表1に示す両親媒性脂質分散液を調製し、目的とするパール状の分散液を得た。
【0029】
【表1】
Figure 0003853644
【0030】
調製例4〜5、比較調製例1(シャンプーの調製)
表2に示すシャンプーを調製した。
調製方法:
調製例4、5:調製例1以外の原料を70℃で混合し、均一溶解確認後、冷却する。40℃で調製例1の原料を添加し、均一分散後、室温まで冷却し、操作を終了する。
比較調製例1:式(1)の化合物を含む全ての原料を70℃で混合し、均一溶解確認後、室温まで冷却し、操作を終了する。
【0031】
【表2】
Figure 0003853644
【0032】
調製例6〜9、比較調製例2〜3(シャンプー、コンディショナーの調製)
市販のシャンプーD(主成分:ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)、コンディショナーDT(主成分:塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルアルコール)をビーカーに取り、全体の5%となるよう調製例1〜3の両親媒性脂質分散液を40℃にて添加し、均一混合した。
【0033】
【表3】
Figure 0003853644
【0034】
調製例10、比較調製例4(ジェルタイプヘアスタイリング剤の調製)
下記表のジェルタイプヘアスタイリング剤を調製した。
【0035】
【表4】
Figure 0003853644
【0036】
調製例11、比較調製例5(洗い流さない型のヘアトリートメントの調製)
表5に示す洗い流さない型のヘアトリートメントを調製した。
調製方法:
調製例11:調製例1の分散液と水以外の原料を50℃で均一混合する。撹拌しながら水を徐々に加え、水を加えた後40℃で調製例1の分散液を徐々に加えながら均一混合し、室温まで冷却し終了とする。
比較調製例5:水以外の原料を50℃で均一混合する。撹拌しながら水を徐々に加え、室温まで冷却し終了とする。
【0037】
【表5】
Figure 0003853644
【0038】
実施例1〜2、比較例1〜2(両親媒性脂質の毛髪への収着)
20代女性の化学的未処理毛でトレスを作った。このトレスに調製直後の調製例4、5のシャンプーを一定量用い、洗髪、すすぎをした後、櫛通しを行いながらドライヤー乾燥、ブローを行った。この時、ドライヤー温度は、吹き出し口平均温度:105℃、吹き出し口から10cm離れた位置の平均温度:95℃に設定し、吹き出し口から10cm離れた位置でトレスにあてた。この処理トレスをメタノールに浸し、40℃、30分間抽出した。その後、抽出液を濃縮し、HPLCに供し、毛髪へ収着した両親媒性脂質量を定量した。比較のため、調製直後の比較調製例1のシャンプーで同様に洗髪、すすぎを行い、ドライヤー乾燥、ブローを行ったもの、調製直後の調製例5のシャンプーで洗髪、すすぎを行った後、自然乾燥し、その後の櫛通しを行ったものについても、両親媒性脂質の収着量を定量した。
結果を表6に示す。
【0039】
【表6】
Figure 0003853644
【0040】
調製例1の分散液を配合したシャンプーを施すと、両親媒性脂質が毛髪へ効果的に収着することが示された。毛髪化粧料を施した後、ドライヤーの熱を加えると、一度毛髪へ収着した両親媒性脂質の脱落が抑えられることが示された。
【0041】
実施例3、比較例3(摩擦ダメージからの保護)
20代女性の化学的未処理毛髪をパーマ液浸透後、ブラッシング処理し、損傷毛トレスを作った。損傷毛トレスに調製例6及び7のシャンプー及びコンディショナーそれぞれを一定量用いて、洗髪、すすぎ、コンディショニング処理を行い、ドライヤー乾燥、及びブローを行った。この時、ドライヤー温度は、吹き出し口で平均105℃、吹き出し口から10cm離れた位置で平均95℃に設定し、吹き出し口から10cm離れた位置で毛髪にあてた。このトレスを枝毛発生装置(117r/minのブラッシング)に75分間かけ、枝毛及び切れ毛の本数をトレスの総本数に対する割合(%)で示した。比較のため、比較調製例2及び3のシャンプー及びコンディショナーを施した損傷毛トレスについて同様に試験をした。
結果を表7に示す。
【0042】
【表7】
Figure 0003853644
【0043】
この結果から、調製例1の分散液配合毛髪化粧料処理後、熱を加えることにより枝毛・切れ毛発生率が押さえられ、摩擦ダメージから毛髪を保護出来ることがわかった。
【0044】
実施例4〜7、比較例4〜7(官能評価)
20代女性同一人の化学的未処理毛髪で作ったトレスを2本用意し、1つには両親媒性脂質配合の毛髪化粧料を施し、ドライヤー乾燥、ブロー後のトレスを専門パネラー9名により下記の各表に示した項目について評価した。比較のため、両親媒性脂質を配合しない毛髪化粧料を施したもう1本のトレスについても同様に評価を行った。
評価基準は以下の通りである:
3:「良い」が7人以上/9人中
2:「良い」が3〜6人以上/9人中
1:「良い」が2人以した/9人中
結果を表8〜11に示す。
【0045】
【表8】
Figure 0003853644
【0046】
【表9】
Figure 0003853644
【0047】
【表10】
Figure 0003853644
【0048】
【表11】
Figure 0003853644
【0049】
調製例1〜3の分散液配合毛髪化粧料で処理し、その後ドライヤーの熱を加え乾燥、ブローを行うと、毛髪の滑り性、やわらかさ、まとまり、つや、スタイルのつけ易さ、しっとり感について効果感が高いことが示された。
【0050】
実施例8、比較例8(ダイナミックコーミングフォース評価)
20代女性の化学的未処理毛髪で作ったトレスに、調製例6と調製例7のシャンプー及びコンディショナーを施し、シャンプー、すすぎ、コンディショナー、タオルドライ、ドライヤーブロー乾燥時のそれぞれのコーミングフォースをダイナミックコーミングフォース法(鈴木ら;毛髪のくし通り力に関する動的、質的評価J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. Vol. 27, No.1, P11-13 1993)を用いて測定した。この時、ドライヤー温度は、吹き出し口で平均105℃、吹き出し口から10cm離れた位置で平均95℃に設定し、吹き出し口から10cm離れた位置で毛髪にあてた(実施例8)。比較のため、シャンプー及びコンディショナーとして比較調製例1及び2を用いて同様に測定した(比較例8)。結果を図1に示す。すすぎ時とドライヤーでの完全乾燥後に、調製例1の分散液を配合したシャンプー、コンディショナーで処理し、ドライヤーの熱を加えた毛髪の抵抗力が小さいことが示された。特に、毛髪の完全乾燥後にはドライヤーによる両親媒性脂質の融解、再結晶で毛髪表面のキューティクルのめくれが接着され(SEMにて確認、図2参照)、これによって滑り性が向上した(図1参照)と考えられる(ヒートケア効果)。
【0051】
実施例9、比較例9
調製例11及び比較調製例5の洗い流さない型のヘアトリートメントを専門パネラー2名(頭髪の長さ:セミロング1名、ショート1名)により下記の表に示した項目について評価した。
評価方法:市販のシャンプー、コンディショナーを施し、タオルドライ後の頭髪に調製例11又は比較調製例5の洗い流さない型のヘアトリートメントを適量つけ、全体にむらなくなじませる。その後、ヘアドライヤーを用いてヘアブラシで整えながら頭髪の乾燥、スタイリングを行った。ヘアドライヤーの温度は吹き出し口で平均105℃に設定したものを使用した。
評価結果を表12に示す。
評価基準
4:よい
3:ややよい
2:ややよくない
1:よくない
2人の平均を表す。
【0052】
【表12】
Figure 0003853644
【0053】
表12から、両親媒性脂質配合の毛髪化粧料を施し、その後、ドライヤーの熱を加えると、髪のまとまりが良く、滑らかな仕上がりを持つことが専門パネラー2名のいずれにも確認され、両親媒性脂質の効果が確認できることが分かった。
【0054】
【発明の効果】
両親媒性脂質を結晶として分散させた毛髪化粧料を毛髪へ適用後、両親媒性脂質の融点より10℃低い温度以上の熱を毛髪に加えることで、両親媒性脂質を融解し、その後の自然冷却による再結晶化させる。これにより、キューティクルをコーティングし、キューティクルのリフトアップ防止、キューティクルのリフトアップ補修が行われる。結果として、毛髪保護効果が発現される。この両親媒性脂質を配合することによって、毛髪化粧料本来の特性は損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例8及び比較例8のダイナミックコーミングフォース抵抗力トレンドの測定チャートである。
【図2】実施例8及び比較例8におけるドライヤー乾燥後の毛髪表面のSEM写真である。

Claims (3)

  1. 一般式(1)
    Figure 0003853644
    式中、R 1 及びR 2 は同一又は異なって、1以上のヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数7〜39の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R 3 及びR 4 は同一又は異なって、水素原子、リン酸塩残基、硫酸塩残基又は糖残基を示す。ただし、1分子中に1以上のヒドロキシ基を有する。
    で表わされ、平均粒径5.1〜15.1μmであ固体状の両親媒性脂質を0.01〜30重量%含有する洗い流し型もしくは洗い流さない型の毛髪化粧料を毛髪へ適用し、該両親媒性脂質の融点以上ないし120℃以下の温度の熱を毛髪に加える毛髪処理方法。
  2. 上記両親媒性脂質が融点50〜120℃である、請求項1記載の毛髪処理方法。
  3. 一般式(1)
    Figure 0003853644
    式中、R 1 及びR 2 は同一又は異なって、1以上のヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数7〜39の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R 3 及びR 4 は同一又は異なって、水素原子、リン酸塩残基、硫酸塩残基又は糖残基を示す。ただし、1分子中に1以上のヒドロキシ基を有する。
    で表わされ、平均粒径5.1〜15.1μmであ固体状の両親媒性脂質を0.01〜30重量%含有する洗い流し型もしくは洗い流さない型の毛髪化粧料を毛髪へ適用し、該両親媒性脂質の融点以上ないし120℃以下の温度の熱を毛髪に加える毛髪のキューティクルを保護するための該毛髪化粧料の使用方法。
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