JP2016169045A - 熱可塑性樹脂容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐熱性、透明性等の特性を要求される食品用トレーなどの成型品に関するものであり、耐熱性と透明性を両立する加熱成型品を提供すること。
【解決手段】 ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aおよびポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bを含み、組成あるいは物性の異なる層が交互に積層されている構造を有し、その層数が1000以上であり、かつその層の平均層厚みが150nm以下であり、厚みが10〜1000μmである熱可塑性樹脂成型容器。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂容器に関する。更に詳しくは、高温での使用が可能でありかつ透明性の高い熱可塑性樹脂容器に関する。本発明の成形品の最も典型的な用途は、電子レンジによる加熱が可能な食品容器であるが、耐熱性と透明性が要求される各種用途に広く用いることができる。
従来、コンビニエンスストアなどで販売されている弁当や惣菜の容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂シートを真空成形機などでトレーやカップの形状に加熱成形して製造されている。
その中で原料に結晶性ポリエステル系樹脂を用いた加熱成型容器は、加熱成型時に結晶化させる事で、耐熱性を向上できる事が一般的に知られており、成型性の向上を含めた様々な検討が進められてきた。(例えば特許文献1,2参照)
しかし、かかる従来技術は加熱成型工程で生成、成長した球晶によって成型品の透明性が
損なわれるという問題点があった。
意匠性の観点から、透明性維持と耐熱性付与を両立する容器に対する要望は以前から多くあり、様々な検討がなされてきた。
例えば特許文献3〜5にあるような造核剤を添加することにより、球晶の大きさを制御して結晶化度向上と透明性を両立させる方法が挙げられる。しかし、かかる従来技術は結晶核剤の効果で結晶化速度が早くなりすぎて、成型加工条件が著しく狭くなり、生産性が不良となる問題があった。
また特許文献6にはポリエステルシートを縦方向、横方向へ加熱延伸処理することで分子鎖の配向結晶化を促進させ、透明性と耐熱性を両立するシートが開示されている。しかし、かかる従来技術は延伸により生じた残留ひずみによって、加熱成型加工時に熱収縮が発生し、成型性が著しく悪化するという問題点があった。
また特許文献7にはポリエチレンテレフタレート(熱可塑性樹脂A)からなる層と、ポリブチレンテレフタレート(熱可塑性樹脂B)とを用いてなる層とからなり、平均層厚みが12nm以下で総積層数が1001以上である積層2軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。これらのフィルムは剛性や寸法安定性を有し、真空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形、プレス形成、インモールド成形など種々の方法で成形されて用いられるが、トレーやカップの形状に加熱成形には適さない。
特開2005−194331号 特許第4614044号 特公昭48−4097号 特開昭54−158452号 特開2012−41516号 特開2012−245700号 特許第5105459号
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の課題は、透明性が高くなおかつ耐熱性にも優れる熱可塑性樹脂成型容器を提供することである。
本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、
<1>
ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aおよびポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bを含み、組成あるいは物性の異なる層が交互に積層されている構造を有し、その層数が1000以上であり、かつその層の平均層厚みが150nm以下であり、厚みが10〜1000μmである熱可塑性樹脂成型容器である。
<2>
結晶核剤が実質的に含まれていない<1>に記載の熱可塑性樹脂成型容器。
<3>
可塑剤が実質的に含まれていない<1>または<2>に記載の熱可塑性樹脂成型容器。
<4>
ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aあるいはポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bがポリエチレンテレフタレートである<1>〜<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成型容器。
<5>
結晶化度が25%以上であり、かつ、ヘイズ値が10%以下となり、かつ、温度150℃、振動数10Hzにおける貯蔵弾性率(G’)が100MPa以上となる<1>〜<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成型容器。
本発明により、透明性が高くなおかつ耐熱性にも優れる加熱成型品を提供することができる。
本発明は、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aおよびポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bを含み、組成あるいは物性の異なる層が交互に積層されている構造を有し、その層数が1000以上であり、かつその層の平均層厚みが150nm以下であり、厚みが10〜1000μmである熱可塑性樹脂成型容器である。
本発明の熱可塑性シートにおいて、シートの断面全体が、上記積層構造で満たされていることが好ましいが、現実にそのようなシートを製造することは極めて困難である。このため、本発明の効果を損ねない範囲で、表面近傍の積層構造が乱れていたり、積層構造の表面に他の層が形成されていたりしても、差し支えない。
本発明の熱可塑性樹脂成型容器は、後述の樹脂組成物Aと樹脂組成物Bを原料として用いるのが好ましい。
このとき、結晶化速度が速い層と遅い層を交互に積層するのが好ましく、このとき結晶化速度が速い層の中で、結晶化が早い層と遅い層の界面を開始点として球晶が成長を始める。このため、界面に結晶の壁が形成され結晶成長が分断される。また結晶化速度が遅い層も遅れて結晶化するが、上記結晶の壁で結晶化が分断される。
本発明の熱可塑性樹脂成型容器の厚み(μm)の上限は好ましくは1000であり、より好ましくは800であり、さらに好ましくは750である。上記を越えると厚みが大きすぎて成型性が低下することがあり、また平均層厚みを150nm以下にするために、積層数を大幅に増加させる必要がある。
厚み(μm)の下限は好ましくは50であり、より好ましくは100であり、さらに好ましくは150であり、上記未満であると成型体とした際の剛性が不足し、食品容器としての強度が不足することがある。
本発明の熱可塑性樹脂成型容器の平均層厚みおよび層数は下記のようにして測定した。
成型後の容器の底部の異なる箇所3ヶ所からサンプルを採取し、サンプルをエポキシ樹脂中に包埋した後、温度60℃にてエポキシ樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
得られた包埋ブロックを、ダイアモンドナイフを装着したミクロトーム(Leica Microsystems社製)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした超薄切片をRuO蒸気中で30分間染色後、カーボン蒸着を施した。電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2100を用いて、加速電圧200kVの条件で実施した。
得られた観察画像の濃淡界面を各層の界面と決定し、その界面の間隔を1層当たりの厚みとした。次に得られた観察画像より任意に20層を選定し、その20層の厚みを20で除した数を、1層あたりの層厚みとし、これを1サンプルにつき5箇所で実施した時の平均値を層厚みとして求めた。さらに、その値を平均して平均層厚みを計算した。
層数は、上記サンプルの厚みを平均層厚みで除して求めた。
熱可塑性樹脂成型容器の厚みは、サンプルをJIS−Z−1702準拠の方法で測定して得た。
平均層厚みの上限は好ましくは150であり、より好ましくは140であり、さらに好ましくは130である。150を超えると加熱成形時に球晶が層厚みを直径としたサイズまで成長し、透明性が損なわれてしまう。
平均層厚みの下限は好ましくは20であり、より好ましくは40である、20未満である層の維持が困難になる場合があり、効果が飽和することもある。
層数の上限は好ましくは100000である。1000000を越えると工業的に実施する際の難易度が高く、また効果も飽和してしまう。
層数の下限は好ましくは1000であり、より好ましくは1500であり、さらに好ましくは2000である。
(熱可塑性樹脂)
本発明に用いられるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aおよびポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bに使用される樹脂としてはたとえばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロへキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂が挙げられる。
ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bそれぞれには、上記ポリエステル系熱可塑性樹脂のいずれか一つを選んで使用することができ、また、上記ポリエステル系熱可塑性樹脂のいずれか2つあるいは3つ、あるいは4つを選んで混合し、使用することができる。
ただし、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bにおける結晶性とは、DSC測定において23℃から320℃まで10℃/分で昇温したときに結晶融解による発熱ピークが観察されることを意味する。
上記ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBは、その固有粘度が0.60dL/g以上、好ましくは0.62dL/g以上である。固有粘度が0.60dL/g以下である場合、得られたシートおよびその成形品は機械的強度に劣り、また容器成形時のシート予熱工程でシート垂れ下がりによる操業不良発生が起こりやすいため好ましくない。
上記ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBは、その酸成分の一部として、他種芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を用いても良い。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヒドロキシ安息香酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸としてはシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらは樹脂の融点および結晶性を大きく低下させない範囲で用いられ、その共重合量は全酸成分の20モル%未満、好ましくは10モル%未満である。
上記ポリエステル系結晶性熱可塑性樹A及びB脂は、そのグリコール成分の一部として他種のグリコールすなわち炭素数が1〜25のアルキレングリコールを用いることができる。例えばジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロバンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキサイド誘導体(XはA,S,F)などである。これらのグリコールは各種特性のバランスにより適切な組み合わせで用いられるが、ポリマー中の主となるエステル単位の結晶性を妨げないことが前提であるため、その共重合量は全グリコール成分の20モル%以下であることが望ましい。
上記ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBは、少量に限って三官能以上のポリカルボン酸やポリオール成分を含むこともできる。例えば無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、無水ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、5−ヒドロキシイソフタル酸などを3モル%以下使用できる。
上記ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBは、少量に限って二官能性のポリエーテル成分を含むこともできる。
例えばPTMG、エチレンオキサイド変成PTMGなどを10重量%以下使用できる。また、p−フェニルフェノール、ベンジルオキシ安息香酸、ナフタレンモノカルボン酸、ポリエチレングリコールモノメチレンエーテル等の化合物も10重量%以下使用できる。
ポリエチレングリコールモノメチレンエーテル等の化合物も10重量%以下使用できる。
上記ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBは互いに異なる組成のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。最も好適な組み合わせはポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体とポリプチレンテレフタレートあるいはその共重合体の組み合わせである。
本発明における熱可塑性樹脂シートに用いることのできるその他の成分としては、結晶化核剤添加やその他の成分を挙げることができる。その他の成分は、主成分であるポリエステル系熱可塑性樹脂A及びBとは異なる非晶性熱可塑性樹脂であってもよい。
結晶化核剤としては、構造上の分類からリン酸エステル塩系、ソルビトール系、カルボン酸塩系などがあり、具体的には、アデカ製アデカスタブNAシリーズ、新日本理化製ゲルオール、RIKAFASTなどがある。また、非晶性ポリマーとしては共重合ポリエステルやポリカーボネートなどが挙げられる。共重合ポリエステルの具体例としてはイソフタル酸、オルソフタル酸、コハク酸、セバシン酸、シクロヘキシルジカルボン酸などのテレフタル酸以外の多価カルボン酸や、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、シクロヘキサンジメチロールなどを共重合したものがを用いることができる。ポリカーボネートの具体例としては住化スタイロン製ガリバー、SDポリカ、三菱エンジニアリングプラスチックス製ユーピロン、ノバレックスなど、帝人化成製パンライト、出光化学タフロンがある。結晶化核剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物全体に対し1〜10重量%の範囲が好ましい。また、非晶性ポリマーの含有量は、熱可塑性樹脂成型容器全体に対し0〜60重量%の範囲が好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂成型容器に用いることのできるその他の成分としては、各種の添加剤を挙げることができる。添加剤の例としては、可塑剤、離型剤、難燃剤、滑剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、防曇剤、接着促進剤などが挙げられる。これらの添加材は、目的に応じて適宜使用することができる。添加剤の添加量(重量%)の下限は好ましくは0であり、より好ましくは0.01であり、さらに好ましくは0.05である。これらは目的に応じて適宜添加量を調整されることが好ましい。添加剤量(重量%)の上限は好ましくは10であり、より好ましくは8であり、さらに好ましくは5である。上記を超えると樹脂の物性低下が大きいほか、ブリードアウトなどで外観の低下などが起こることがある。
本発明における熱可塑性樹脂成型容器に用いることのできるその他の成分は、レジンとともに押出機にそのまま投入して使用してもよいが、事前にレジンと混合してマスターバッチ化して使用してもよい。結晶化核剤を含有するマスターバッチの例としては、大日精化製クリアマスターなど挙げられる。
本発明におけるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBには、特定の結晶化速度の範囲にあるものを用いる。ここで言う結晶化速度としては、高分子学会編、新高分子実験学8のP.117に参考文献121として挙げられている Y.P.Khanna: Polym. Eng. & Sci.,24,1615(1990)を参考にして測定した値を使用した。具体的な測定手順の例は、実施例の項に別途示す。
本発明における2種のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBのうち結晶化速度が小さい方の結晶化速度が0.05min−1以上、1.5min−1以下であることが好ましい。
また、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBのうち結晶化速度が大きい方の結晶化速度が1.6min−1以上、より好ましくは1.8min−1以上であることが良い。
これは、組成あるいは物性の異なる層が交互に積層された場合に、そのうちのいずれかの層が、先に結晶化していることで、もう一方の層との界面が明確となり、もう一方の層の樹脂が結晶化する際に、もう一方の層の結晶のサイズをもう一方の層の厚み以下に抑えることができるからである。
結晶化速度が大きい方のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂は、結晶化が早いので、熱成形前のシートの状態ですでに結晶化しているか、あるいは加熱成形時に先に結晶化する。
結晶化速度が小さい方のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度が1.5min−1以下であっても結晶化速度が大きい方のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度が1.6min−1未満の場合、シート成型時に界面が保持できず、達成すべき特性を発現させるために必要な層の維持ができない。
結晶化速度が小さい方のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度が0.5min−1未満であれば、成型時に自実質的に結晶化せず、得られた成型品は耐熱性に劣るものとなる。
また結晶化速度が小さい方のポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度が1.5min−1を超える場合溶融樹脂を冷却ロールでシート状に固化させる際に、結晶化が進みすぎて硬化してしまい、成型用途には不向きとなる場合があるか、あるいは熱成型時に結晶化が早く進みすぎて、例えば型に追随できなくなるなど成形不良が生じる。
本発明のおけるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBの溶融粘度(MFR)の下限は特に限定されないが、好ましくは0.01g/10分であり、より好ましくは0.05g/10分であり、さらに好ましくは0.10g/10分である。上記未満であると溶融粘度が高すぎて成型時の生産性が低下することがある。樹脂の溶融粘度(MFR)の上限は好ましくは50g/10分であり、より好ましくは45g/10分であり、さらに好ましくは40g/10分である。上記を超えると吐出時の圧力が低すぎて均一な厚みでのキャスティングか困難となることがある。なお、本発明におけるMFRは、JIS K 7210:2014記載の方法によって測定された値とする。
本発明のおけるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂A及びBの融点(℃)の下限は好ましくは100であり、より好ましくは110であり、さらに好ましくは120である。上記未満であると耐熱性が劣り用途が限られるとなることがある。ポリエステル系樹脂の融点(℃)の上限は好ましくは350であり、より好ましくは340であり、さらに好ましくは330である。上記を超えると耐熱性の効果が飽和することがあり、また、シート製造の際およびシートの加熱成型品の製造の際の工程温度を高くする必要があり、それに対応する製造設備が必要となる。なお、本発明におけるポリエステル系熱可塑性樹脂の融点には、DSC装置を用いてポリエステル系熱可塑性樹脂10mgを昇温速度20℃/分で加熱した際に検知される融解吸熱ピーク温度を用いることとする。
(熱可塑性樹脂シートの製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂成型容器の製造方法は、下記工程(1A)、工程(1B)、工程(2)、工程(3)を少なくとも有するのが好ましい。
工程(1A);結晶化速度が0.05min−1以上1.5min−1以下であるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物A1を溶融し、溶融流体A2を形成する。
工程(1B);結晶化速度が1.6min−1以上であるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1を溶融し、溶融流体B2を形成する。
工程(2);前記溶融流体A1と前記溶融流体B1からなる理論積層数1000以上の積層流体AB2を形成する。
工程(3);前記積層流体AB2を、ダイスから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させる工程。
工程(1)と工程(2)、工程(2)と工程(3)の間には、他の工程が挿入されていても差し支えない。例えば、工程(1)と工程(2)の間には濾過工程、温度変更工程等が挿入されていても良い。また、工程(2)と工程(3)の間には、温度変更工程、電荷付加工程等が挿入されていても良い。但し、工程(2)と工程(3)の間には、工程(2)で形成された積層構造を破壊する工程があってはならない。
ここで、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物A1とは、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物Aに上述したその他の成分を添加したものや、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物Aそのものを意味する。
また、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1とは、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物Bに上述したその他の成分を添加したものや、ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物Bそのものを意味する。
工程(1)において、ポリエステル系結晶性熱塑性樹脂組成物A1及びB1を溶融して溶融流体を形成する方法は特に限定されないが、好適な方法としては、一軸押出機や二軸押出機を用いて加熱溶融する方法を挙げることができる。
工程(2)における積層流体を形成する方法は特に限定されないが、メルトラインに設置されたスタティックミキサー、多層フィードブロックおよび多層マニホールドのいずれか1種または2種以上に溶融したポリエステル系結晶性熱塑性樹脂組成物A1及びB1を通過させることが好ましい。設備の簡便さや保守性の面から、スタティックミキサーおよび/または多層フィードブロックがより好ましい。また、シート幅方向の均一性の面から、矩形のメルトラインを有するものがより好ましい。矩形のメルトラインを有するスタティックミキサーまたは多層フィードブロックを用いることがさらに好ましい。なお、複数のポリエステル系結晶性熱塑性樹脂組成物A1及びB1を合流させることによって形成された複数層からなる樹脂組成物を、スタティックミキサー、多層フィードブロックおよび多層マニホールドのいずれか1種または2種以上に通過させてもよい。
工程(2)における理論積層数は200以上である必要がある。理論積層数の下限は、好ましくは500であり、より好ましくは1000である。理論積層数が少なすぎると、結晶化を加速する効果が不足し、あるいは、層界面間距離が長くなって結晶サイズが大きくなりすぎ、本発明の効果が得られない傾向にある。また、シート両端近傍で成型後の透明性が低下することがある。工程(2)における理論積層数の上限は特に限定されないが、好ましくは100000であり、より好ましくは10000であり、さらに好ましくは7000である。理論積層数を極端に大きくしてもその効果が飽和するうえ、生産効率の点で問題が生じる場合がある。
工程(2)における積層をスタティックミキサーで行う場合、スタティックミキサーのエレメント数を選択することにより、理論積層数を調整することができる。スタティックミキサーは、一般的には駆動部のない静止型混合器(ラインミキサー)として知られており、ミキサー内に入った流体は、エレメントにより順次撹拌混合される。ところが、高粘度流体をスタティックミキサーに通過させると、高粘度流体の分割と積層が生じ、積層流体が形成される。スタティックミキサーの1エレメントを通過するごとに、高粘度流体は2分割され次いで合流し積層される。このため、高粘度流体をエレメント数nのスタティックミキサーに通過させると、理論積層数N=2の積層流体が形成される。また、スタティックミキサーに供給する高粘度流体として積層流体を使用することも可能である。スタティックミキサーに供給する高粘度流体の積層数がmである場合、積層流体の理論積層数NはN=m×2となる。
典型的なスタティックミキサーエレメントは、長方形の板を180度ねじった構造を有し、ねじれの方向により、右エレメントと左エレメントがあり、各エレメントの寸法は直径に対して1.5倍の長さを基本としている。本発明に用いることのできるスタティックミキサーはこの様なものに限定されない。
工程(2)における積層を多層フィードブロックで行う場合、多層フィードブロックの分割・積層回数を選択することによって、理論積層数を調整することができる。多層フィードブロックは複数直列に設置することが可能である。また、多層フィードブロックに供給する高粘度流体自体を積層流体とすることも可能である。例えば、多層フィードブロックに供給する高粘度流体の積層数がp、多層フィードブロックの分割・積層数がq、多層フィードブロックの設置数がrの場合、積層流体の積層数Nは、N=p×qとなる。
工程(3)において、積層流体をダイスから吐出し、冷却ロールに接触させて固化させる。
ダイス温度(℃)の下限は好ましくは本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられている熱可塑性樹脂の融点であり、より好ましくは融点+10である。ダイス温度(℃)の上限は好ましくは融点+60であり、より好ましくは融点+50である。
冷却ロール温度(℃)の下限は好ましくは5であり、より好ましくは10であり、さらに好ましくは15である。上記未満であると急冷の効果が飽和する。冷却ロール温度(℃)の上限は好ましくは60であり、より好ましくは40であり、さらに好ましくは20である。上記を超えると後続の設備での冷却時のシワなどの対策が必要となることがある。
(シートにおける各層の理論層厚み)
本発明の熱可塑性樹脂組成物シートにおけるポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物A1からなる層とポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1からなる層の理論層厚みの比率は特に限定されない。
ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物からなる層の理論厚みは下記の式により計算できる。
ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物Aからなる層の理論厚み=〔シート厚み×[ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物A1の体積吐出速度/(ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物A1の体積吐出速度+ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1の体積吐出速度)]〕/(理論積層数/2)
ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1からなる層の理論厚み=〔シート厚み×[ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1の体積吐出速度/(ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物A1の体積吐出速度+ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂組成物B1の体積吐出速度)]〕/(理論積層数/2)
(シートの面配向係数)
本願発明のシートの面配向係数 ΔP(−)の上限は好ましくは0.1であり、より好ましくは0.09であり、さらに好ましくは0.08である。上記を超えると絞り加工時の延展性が低下し、成型性が低下することがある。分子鎖がフィルム面に平行に配向すると透明性は向上しやすいが、容器成形に支障がある場合がある。面配向係数はフィルム製造時の延伸の程度に関係し、延伸を加えると高くなる傾向にある。本発明の熱可塑性樹脂組成物シートの製造に際しては、過度の延伸を行なわないよう、注意が必要である。
(シートのヘイズ)
本願発明のシートのヘイズ(%)の下限は好ましくは0であり、より好ましくは0.5である。上記未満であると傷が目立ちやすくなることがある。
本願発明のシートのヘイズ(%)の上限は好ましくは20であり、より好ましくは18である。上記を超えると透明性が低下し、容器としての品位が低下することがある。
(シートの成型性)
真空成形装置を用いて加熱した試料に、カップ状の金型を押し当て、さらにカップ内の空気を抜き取って真空にして成形した。
得られた成型品について、実施例に示すように透明性と賦形性とについて評価し、両者を総合して5〜0の6段階で評価点を判定した。
(容器のヘイズ)
本願発明のシートを容器に成形した後のヘイズ(%)の上限は好ましくは20であり、より好ましくは18であり、特に好ましくは15である。上記を超えると透明性が低下し、容器としての品位が低下することがある。
(容器の結晶化度)
本願発明の熱可塑性樹脂成型容器の結晶化度(%)の下限は好ましくは20であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは30である。上記未満であると経時での結晶化の進行により変形したり、耐熱性が低下したりすることがある。
本願発明の熱可塑性樹脂成型容器の結晶化度(%)の上限は好ましくは50であり、より好ましくは60である。上記を超えると効果が飽和する。
(容器の動的粘弾性)
本願発明の熱可塑性樹脂成型容器は、結晶化度20%以上に結晶化させた場合の、150℃、振動数10Hzにおける貯蔵弾性率(G’)(MPa)の下限は好ましくは100であり、より好ましくは130であり、さらに好ましくは150である。上記未満であると容器として使用するには強度不足となるがある。150℃、振動数10Hzにおける貯蔵弾性率(G’)(MPa)の上限は好ましくは10000であり、より好ましくは5000であり、さらに好ましくは3000である。上記を越えると特に問題はないが効果が飽和することがある。
貯蔵弾性率はその温度に加熱した際の剛性と関係しており、上記請求の範囲は食品等の容器として電子レンジ加熱した際においても変形を抑制できることを意図している。
貯蔵弾性率は動的粘弾性特性試験にて測定しており、測定温度に関しては油分を含む食品をレンジ加熱した際の温度が約150℃といわれていることを考慮している。
ここで、貯蔵弾性率(G’)は、以下に説明するようなパラメータである。すなわち、樹脂組成物のような粘弾性体は、粘性と弾性を兼ね備えて持っている。理想弾性体の場合は、応力とひずみは同一位相で観察される。一方で理想液体の場合は、応力の位相に対してひずみの位相は90度遅れる。粘弾性体はその中間の挙動を示し、位相差は0度から90度の間の値となる。
弾性率は応力(σ*)とひずみ(γ*)の比として複素数により複素弾性率G*として、下記数式(F1)のように表現できる。
G*=σ*/γ*=(σ0/γ0)eiδ=(σ0/γ0)(cosδ+isinδ) :(F1)
複素弾性率G*を実数部分と虚数部分に分けて、下記数式(F2)としたとき、実数部分のG’は粘弾性のうち弾性部分、G”はそれより90度遅れた位相にあるので粘性部分を表す。G’は貯蔵弾性率、G”は損失弾性率を呼ばれ、測定試料に振動変形を加え、ひずみの振幅と力計で検出される応力の振幅およびそれらの間の位相差を測定すると、粘弾性体の弾性の寄与、粘性の寄与が評価できる。
G*=G’+iG” (F2)
本発明においては、150℃での貯蔵弾性率(G’)を100MPa以上にすることで、耐熱性が良好なポリエステル成型容器を得ることができる。
(用途)
本願発明の熱可塑性樹脂成型容器の加熱成型方法は特に限定されず、真空成型、熱板成型など、一般的な方法を使用できる。成型温度は、用いる熱可塑性樹脂組成物に合わせて決定する。成型温度が低すぎると余熱温度との差が大きくなるため急冷となり耐熱性が劣ることがある。成型温度が高すぎると透明性が低下する場合があるほか、脆くなったり成型後に冷却する際に反りなどが発生しやすくとなったりすることがある。
本発明の成型品の用途は特に限定されないが、透明性と耐熱性に優れるので食品容器に好適であり、特に電子レンジによる加熱に耐える電子レンジ対応食品容器に最適である
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
<ポリエステル原料の調製>
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、二塩基酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/gのポリエステル(a)を得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。また、上記と同様な方法により、表1に示すポリエステル(b),(c),(d),(e)を合成した。なお、表中BDが1,4−ブタンジオール、NPGがネオペンチルグリコール、である。それぞれのポリエステルの固有粘度は、(b)0.75l/g、(c)1.15dl/g、(d)0.70dl/g、(e)が0.72dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
<ポリエステル原料の結晶化速度測定>
上記で得られたポリエステル(a)、(b)、(c)、(d)、(e)の結晶化速度は、(a)が1.1min−1、(b)が1.0 min−1、(c)が2.4min−1、(d)が2.5min−1、(e)が結晶化せずであった。(c)と(e)を重量比1/1で混合したサンプルは2.1min−1であった。(a)と(e)を重量比1/1で混合したサンプルは0.6min−1であった。
実施例、比較例で使用したポリエステル原料の組成を表1に示す。
[樹脂の結晶化速度]
SII製示差走査型熱量計(DSC6200)を用いて以下の操作を行った。樹脂組成物試料10mgを40℃/minにて室温から樹脂組成物の融点に対し更に30℃高温までに昇温し、その温度で5分間保持した。次に、1.25℃/minで−30℃まで冷却し、結晶化ピーク温度を読み取った。次に冷却温度を40℃/minとして同様に結晶化ピーク温度を読み取った。得られた2つの結晶化温度について、横軸を結晶化温度(℃)、縦軸を冷却速度(℃/min)としてプロットし、その傾きの絶対値を結晶化速度(min−1)とした。
[シートの成型性]
真空成形装置(布施真空(株)製 PIMF−0305W)を用いて、加熱した試料に、深さ15mm、直径50mmのカップ状の金型を押し当て、さらにカップ内の空気を一瞬で抜き取って真空にして成形した。成型圧力は、0.5MPa、表1に示す成形時の金型温度は表1に示す温度で行なった。
得られた成型品について、透明性と賦形性とについて評価し、両者を総合して5〜0の6段階で評価点を判定した。
透明性評価は、成形品底部について、シートから透明性がどの程度変化したかについて目視観察により評価した。賦形性評価は、底部、胴部、口縁部の3つの部位について、金型への追従性の良否と破断の有無について目視観察により評価した。

評価点 透明性評価 賦形性評価
5 低下なし〜わずかに低下 良好である
4 低下なし〜わずかに低下 1部位において転写不足が認められる部分がある
3 低下なし〜わずかに低下 2部位において転写不足が認められる部分がある
2 低下なし〜わずかに低下 3部位において転写不足が認められる部分がある
1 大幅に低下 破断なく賦形されている(転写不足は不問)
0 不問 賦形されないまたは破断が認められる
[シート及び容器の厚み]
JIS−Z−1702準拠の方法で測定した。
[容器の平均層厚みおよび層数]
成型後の容器の底部の異なる箇所3ヶ所からサンプルを採取し、サンプルをエポキシ樹脂中に包埋した後、温度60℃にてエポキシ樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
得られた包埋ブロックを、ダイアモンドナイフを装着したミクロトーム(Leica Microsystems社製)を用いて超薄切片を切りだした。切りだした超薄切片をRuO蒸気中で30分間染色後、カーボン蒸着を施した。電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2100を用いて、加速電圧200kVの条件で実施した。
得られた観察画像の濃淡界面を各層の界面と決定し、その界面の間隔を1層当たりの厚みとした。次に得られた観察画像より任意に20層を選定し、その20層の厚みを20で除した数を、1層あたりの層厚みとし、これを1サンプルにつき5箇所で実施した時の平均値を層厚みとして求めた。さらに、その値を平均して平均層厚みを計算した。
層数は、上記サンプルの厚みを平均層厚みで除して求めた。
[容器のヘイズ]
上記成型後の容器の底部の異なる箇所3ヶ所からサンプルを採取し、ヘイズを求めた。JIS−K−7105に準ずる方法で、試料をヘイズメーター(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。その平均値をヘイズとした。
[容器の結晶化度]
上記成型後の容器の底部の異なる箇所3ヶ所からサンプルを採取し、密度を測定した。その平均値を結晶化度とした。
樹脂成分は完全非晶と完全結晶の混合物であり、その密度が後述のとおりであり、サンプルの密度はサンプルを構成する各成分の質量の総和を各成分の体積の総和で除した値となる、との仮定に基づき、各樹脂の結晶化度(重量比)を推算した。なお、サンプルの密度測定は、JIS K−7112−1980準拠の方法(密度勾配管法)に従って行った。また、各成分単独の密度は下記の値を用いた(単位:g/cm
ポリエチレンテレフタレート樹脂:完全非晶1.34、完全結晶1.46
ポリブチレンテレフタレート樹脂:完全非晶1.28、完全結晶1.40。
[容器の動的粘弾性特性試験]
上記成型後の容器の底部の異なる箇所3ヶ所からサンプルを採取し、アイティー計測(株)製動的粘弾性測定装置により測定した。
サンプルは、容器の底部の外周円部から中心部の方向と平行に長さ30mm×幅5mmに切り出して用いた。
測定長20mm、変位0.25%周波数10Hz、測定温度は30℃から300℃まで5℃/分の速度で昇温しながら測定した。サンプルは、結晶化度が25%以上のものを使用し、成型後の容器の底部から長さ30mm×幅5mmに切り出して用いた。
得られたデータから150℃のときの貯蔵弾性率(G’)を得た。
(実施例1)
ポリエステル系樹脂Aとしてポリエステル(a)、ポリエステル系樹脂Bとしてポリエステル(c)をそれぞれ押出機に投入し、ポリエステル(a)は285℃、ポリエステル(c)は260℃で溶融させた後合流させた。それを280℃に加熱した積層用フィードブロックに導入し、ポリエステル(a)とポリエステル(c)が交互に積層され、両表面層がポリエステル(a)となり、理論積層数が2049層になるように積層した。ここで、積層厚み比がポリエステル(a)/ポリエステル(c)=5/5になるよう、吐出量にて調整した。このようにして得られた積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度15℃に保たれたキャスティングロール上で急冷固化した。
得られたシートの厚みは250μmであり、積層数は2000層以上、平均層厚みは120nmであった。得られたシートを容器成型処理し、結晶化度33%としたが、ヘイズは5%、150℃における貯蔵弾性率(G‘)は140MPaとなる、透明性と耐熱性を両立した容器となった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(実施例2)
ポリエステル系樹脂Aとポリエステル系樹脂Bの積層厚み比をポリエステル(a)/ポリエステル(c)=7/3になるよう吐出量にて調整し、シート厚みを200μmにした以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は、透明性と耐熱性を両立していた。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(実施例3)
ポリエステル系樹脂Aとポリエステル系樹脂Bの積層厚み比をポリエステル(a)/ポリエステル(c)=3/7になるよう、吐出量にて調整した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は、透明性と耐熱性を両立していた。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(実施例4)
ポリエステル系樹脂Aをポリエステル(b)に変更した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は、透明性と耐熱性を両立していた。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(実施例5)
ポリエステル系樹脂Bをポリエステル(d)に変更した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は、透明性と耐熱性を両立していた。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(実施例6)
理論積層数を1025層とし、シート厚みは100μm、平均層厚みは120nmになるように変更した実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は、透明性と耐熱性を両立していた。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(実施例7)
ポリエステル系樹脂Bを、ポリエステル(c)と(e)を50/50の重量比に混合した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は、透明性と耐熱性を両立していた。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表2に示した。
(比較例1)
ポリエステル系樹脂Bをポリエステル(a)に変更した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られたシートの透過型電子顕微鏡による断面観察では、層状のコントラストが発生しないため、積層数や層厚みは測定できず、成型容器のヘイズは85%となり透明性は得られなかった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
(比較例2)
ポリエステル系樹脂Bをポリエステル(a)と(e)を50/50の重量比に混合した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られたシートの透過型電子顕微鏡による断面観察では、層状のコントラストは確認できたが、成型容器の150℃における貯蔵弾性率(G‘)は1.5MPaとなり耐熱性が不足する結果となった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
(比較例3)
理論積層数を8層とし、平均層厚みが31250nmになるように変更した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器のヘイズは75%となり透明性は得られなかった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
(比較例4)
シート厚みを500μmとし、平均層厚みが244nmになるように変更した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器のヘイズは69%となり透明性は得られなかった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
(比較例5)
実施例1同様に製膜されたシートを、85℃に加熱してフィルム長手方向に2.0倍延伸し、一旦冷却後テンター式延伸機に導入して100℃で3.0倍に幅方向延伸し、そのまま幅方向に5%のリラックスを室温まで徐冷後ロール上に巻取りフィルムを得た。
得られたシートの面配向係数ΔPは0.175となり、また成型容器は、残留応力による延展性不良によって著しく劣る結果となった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
(比較例6)
ポリエステル系樹脂Aをポリエステル(a)に結晶核剤として、Milliken社製NX8000を10000ppm添加し、単層でシート化した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型容器は成型中に結晶化してしまい割れが発生した。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
(比較例7)
ポリエステル系樹脂Aをポリエステル(a)に可塑剤として、ジェイプラス社製DOPを10%添加し、単層でシート化した以外は、実施例1同様にシート製膜及び容器成型を実施した。
得られた成型品の150℃における貯蔵弾性率(G‘)は50MPaとなり耐熱性が不足する結果となった。得られたシート及び成型容器の製膜条件、物性および評価結果を表3に示した。
本発明は、熱可塑性樹脂容器に関する。更に詳しくは、高温での使用が可能でありかつ透明性の高い熱可塑性樹脂容器に関する。本発明の成形品の最も典型的な用途は、電子レンジによる加熱が可能な食品容器であるが、耐熱性と透明性が要求される各種用途に広く用いることができ、産業上有用なものである。

Claims (5)

  1. ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aおよびポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bを含み、組成あるいは物性の異なる層が交互に積層されている構造を有し、その層数が1000以上であり、かつその層の平均層厚みが150nm以下であり、厚みが10〜1000μmである熱可塑性樹脂成型容器。
  2. 結晶核剤が実質的に含まれていない請求項1に記載の熱可塑性樹脂成型容器。
  3. 可塑剤が実質的に含まれていない請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂成型容器。
  4. ポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Aあるいはポリエステル系結晶性熱可塑性樹脂Bがポリエチレンテレフタレートである請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成型容器。
  5. 結晶化度が25%以上であり、かつ、ヘイズ値が10%以下となり、かつ、温度150℃、振動数10Hzにおける貯蔵弾性率(G’)が100MPa以上となる請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成型容器。
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