JP2016167524A - パッシベーション膜の製造方法、パッシベーション膜、それを用いた太陽電池素子 - Google Patents

パッシベーション膜の製造方法、パッシベーション膜、それを用いた太陽電池素子 Download PDF

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Abstract

【課題】キャリアライフタイムが長いパッシベーション膜を形成することができる形成剤、パッシベーション膜の製造方法、パッシベーション膜、それを用いた太陽電池素子に関する。
【解決手段】ジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム又はそれらの混合物からなるアルキルアルミニウム化合物、及び電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有する溶液からなるパッシベーション膜形成剤。このパッシベーション膜形成剤を平均粒径が1〜100μmの液滴にしてシリコン基材の裏面の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成すること、及び形成した塗膜を、有機溶媒を乾燥後、または有機溶媒の乾燥と並行して、加熱して酸化アルミニウムとすることでパッシベーション膜を形成する、パッシベーション膜を有するシリコン基材の製造方法。この方法により製造されたパッシベーション膜を有するシリコン基板及びこのシリコン基板を用いた太陽電池素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、パッシベーション膜の製造方法、パッシベーション膜、それを用いた太陽電池素子に関する。本発明の製造方法を用いれば、キャリアライフタイムが長いパッシベーション膜を形成することができる。
結晶シリコン太陽電池の高効率化のためには、太陽電池の裏面をパッシベーションし、キャリアの裏面再結合を抑制することが重要である。そのため、シリコン基板の裏面にパッシベーション膜が設けられる場合がある。
このパッシベーション膜としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等を採用する技術が提案されている(特許文献1)。特にp型シリコン基板に関しては、正の固定電荷を有している窒化ケイ素等は漏れ電流が発生しやすいため適切とはいえず、負の固定電荷を有する酸化アルミニウムが好適である(特許文献2)。
このパッシベーション膜としての酸化アルミニウム薄膜の製造方法としては、スパッタ法、化学蒸着(CVD、Chemical Vapor Depositon)法、原子層蒸着(ALD、Atomic Layer Depositon)法等の方法で形成される。
しかしながら、スパッタ法、CVD法、ALD法等は、大型の密閉容器を用いる必要があるため、酸化アルミニウム薄膜の製造コストが高くなる、材料使用効率が低下する等の問題があった。
スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、ダイコート法、スプレー塗布法等の塗布法は、上記の方法に比べ密閉容器を用いる必要がなく装置が簡便で、製膜速度が速く、低い製造コストで酸化アルミニウム薄膜を製造できるという利点がある。
塗布法として、スピンコート法による製造方法(非特許文献1)、スクリーン印刷法による製造方法(特許文献3)が提案されている。
特開2009−164544号公報 特許第4767110号公報 特開2014−167961号公報
Thin Solid Films,517(2009),6327−6330
しかし、上記の非特許文献1、特許文献3に記載の方法では、供に熱処理(焼成)してパッシベーション膜を製造する場合、バインダー樹脂、配位子等の残存有機物成分を焼成して脱脂する(除去する)必要があるため、焼成に長い時間が必要である、又は、650〜1000℃と高い温度での熱処理が必要であるという課題があった。
また、上記の非特許文献1、特許文献3に記載の方法で製造されたパッシベーション膜のキャリアライフタイムは、基板ウェハー厚が約700μm時に100〜500μsとALD法で製造されたパッシベーション膜よりも短く、さらなるキャリアライフタイムの向上が求められていた。
本発明の目的は、簡便なパッシベーション膜の製造方法、パッシベーション膜、それを用いた太陽電池素子を提供することである。本発明の製造方法を用いれば、キャリアライフタイムが長いパッシベーション膜を形成することができる。
本発明は以下の通りである。
[1]
ジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム又はそれらの混合物からなるアルキルアルミニウム化合物(但し、ジアルキルアルミニウム及びトリアルキルアルミニウムが有するアルキル基は炭素数1〜6であり、同一又は異なってもよい)、及び、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有するアルキルアルミニウム化合物含有溶液からなるパッシベーション膜形成剤。
[2]
前記ジアルキルアルミニウム及び/又はトリアルキルアルミニウムが下記一般式(1)又は(2)で表されるアルキルアルミニウム化合物である、[1]に記載のパッシベーション膜形成剤。
(式中、R1はメチル基又はエチル基を表す。)
(式中、R2はイソブチル基を、R3は、水素又はイソブチル基を表す。)
[3]
前記一般式(1)で表されるアルキルアルミニウム化合物がトリエチルアルミニウムである、[2]に記載のパッシベーション膜形成剤。
[4]
前記トリエチルアルミニウムのアルキルアルミニウム化合物含有溶液における含有量1質量%以上、10質量%以下である[3]に記載のパッシベーション膜形成剤。
[5]
[1]〜[4]に記載のパッシベーション膜形成剤を平均粒径が1〜100μmの液滴にしてシリコン基材の裏面の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成すること、及び形成した塗膜を、有機溶媒を乾燥後、または有機溶媒の乾燥と並行して、加熱して酸化アルミニウムとすることでパッシベーション膜を形成することを特徴とするパッシベーション膜を有するシリコン基材の製造方法。
[6]
前記液滴は、平均粒径が3〜30μmの範囲であることを特徴とする[5]記載の製造方法。
[7]
前記塗布をスプレー塗布法により行う、[5]又は[6]に記載の製造方法。
[8]
スプレー塗布時の基板温度が300〜550℃の範囲であること、及び/又は、スプレー塗布後の加熱における温度が300〜550℃の範囲である、[7]に記載の製造方法。
[9]
[5]〜[8]のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする、パッシベーション膜を有するシリコン基板。
[10]
[9]に記載のパッシベーション膜を有するシリコン基板を用いた太陽電池素子。
本発明によれば、残存有機物が少ない酸化アルミニウム薄膜を低温で簡便に製造でき、キャリアライフタイムが長いパッシベーション膜を形成することができる。
スプレー製膜装置を示す。 本発明の太陽電池素子の実施形態の一例を示す。
[パッシベーション膜形成剤]
本発明はパッシベーション膜形成剤に関する。パッシベーション膜とは、「シリコン基板の裏面の少なくとも一部に設け、シリコン基板におけるキャリアの裏面再結合を抑制する膜」を意味する。パッシベーション膜を設けるシリコン基板には特に制限はない。但し、シリコン基板におけるキャリアの裏面再結合を抑制する必要性が高いという観点からは、結晶性シリコン等のシリコン基板であることができる。
本発明のパッシベーション膜形成剤は、ジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム又はそれらの混合物からなるアルキルアルミニウム化合物(但し、ジアルキルアルミニウム及びトリアルキルアルミニウムが有するアルキル基は炭素数1〜6であり、同一又は異なってもよい)、及び、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有するアルキルアルミニウム化合物含有溶液からなる。
本発明のアルキルアルミニウム化合物含有溶液は、有機溶媒として電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有することで、ジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム又はそれらの混合物であるアルキルアルミニウム化合物を化学的に安定化させることができる。電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒が好ましい理由は定かではないが、構造中の酸素の非共有電子対のアルミニウムへの配位結合により水に対する反応性を適切にすると推定される。
本発明の溶液における前記アルキルアルミニウム化合物と前記電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒との比率は、アルキルアルミニウム化合物を化学的に安定に保つという観点からは、アルキルアルミニウム化合物に対してモル比で1以上の電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機化合物を含有することが好ましい。アルキルアルミニウム化合物に対してモル比で1以上の電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有することで、溶液の自然発火などの化学変化を抑制すること、水に対する反応性を適切にすることができる。
前記活性水素原子とは、有機化合物の分子内水素原子のうち、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の炭素原子以外の元素の原子に結合した反応性の高い水素原子を意味する。
電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒の例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサラン、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル化合物;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエチレングリコールジアルキルエーテル化合物;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル化合物;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル化合物;プロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキル化合物;ジプロピレングリコールジメチル等のジプロピレングリコールジアルキル;トリプロピレングリコールジメチル等のトリプロピレングリコールジアルキル化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル化合物;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;N−メチル−2−ピロリドン、又は1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等の環状アミド化合物;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート化合物、又はそれらの混合物を挙げることができる。
エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸系溶媒は、共に活性水素原子を有するため、前記電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒ではない。
アセチルアセトン等の共役したジケトンは、エノラート化合物になり活性水素原子を発生するため前記電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒ではない。
前記ジアルキルアルミニウム及び/又はトリアルキルアルミニウムは、ジアルキルアルミニウム及びトリアルキルアルミニウムが有するアルキル基が、炭素数1〜6であり、1個のジアルキルアルミニウム又は1個のトリアルキルアルミニウムが有する複数のアルキル基は、同一又は異なってもよい。
前記ジアルキルアルミニウムとは、配位子の2つがアルキル基であり1つがアルキル基以外の3価のアルミニウム化合物のことであり、前記トリアルキルアルミニウムとは、配位子3つが全てアルキル基である3価のアルミニウム化合物のことである。
ジアルキルアルミニウム及び/又はトリアルキルアルミニウムは、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表されるアルキルアルミニウム化合物であることができる。
(式中、R1はメチル基又はエチル基を表す。)
(式中、R2はイソブチル基を、R3は、水素又はイソブチル基を表す。)
一般式(1)で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等を挙げることができる。
一般式(2)で表される化合物の例としては、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等を挙げることができる。
前記ジアルキルアルミニウム及び/又はトリアルキルアルミニウムは、単位質量のアルミニウムに対する価格が安価であるという観点から、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムであることが好ましい。
本発明のアルキルアルミニウム含有溶液中のアルキルアルミニウム化合物の濃度は、例えば、1質量%以上、20質量%以下であることができる。前記一般式(1)で表されるアルキルアルミニウム化合物の場合には、1質量%以上、10質量%以下、前記一般式(2)で表されるアルキルアルミニウム化合物の場合1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。1質量%未満であるとパッシベーション膜の生産性が低下するので、1質量%以上であることが好ましい。アルキルアルミニウム含有溶液中のアルキルアルミニウム化合物の濃度は、特に空気中で塗布することによる酸化アルミニウム製造時において発火等の危険性に影響があるが、上記濃度範囲とすることで、特別な注意を払わずに、酸化アルミニウムからなるパッシベーション膜を安全に製造できるという利点がある。
本発明のアルキルアルミニウム含有溶液は、電子供与性を有しかつ活性水素を含有しない有機溶媒以外の有機溶媒として、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒をさらに含むことができる。電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を添加することで、極性、粘度、沸点、経済性等を調整することができる。電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、オクタン、n−デカン、等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素;ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン、石油エーテル、等の炭化水素系溶媒等を挙げることができる。電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒の添加量は、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒の効果を妨げない範囲であれば制限はなく、例えば、環状アミド化合物100質量部に対して100質量部以下とすることができる。但し、アルキルアルミニウム化合物の種類、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機化溶媒、及び、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒の種類により添加可能な範囲は変化する。尚、アルキルアルミニウム化合物含有溶液において、アルキルアルミニウム化合物に対してモル比で1以上の電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有すれば、アルキルアルミニウム化合物含有溶液中のアルキルアルミニウム化合物を化学的に安定化させることができる。従って、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を併用する場合、この点を考慮して、併用量を決定することが好ましい。
前記電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒、及び所望により、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒と、アルキルアルミニウム化合物の混合は不活性ガス雰囲気下の反応容器で行うことができ、それぞれあらゆる慣用の方法に従って導入することができる。アルキルアルミニウム化合物は、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒との混合物としても反応容器に導入することができる。
混合容器への導入順序は、アルキルアルミニウム化合物、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒、及び所望により、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒の順、又は、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒、及び所望により、電子供与性を有さず、かつ活性水素原子を含有しない有機溶媒、アルキルアルミニウムの順、又は全て同時に導入の、どれでもよい。
混合容器への導入時間は、混合する原料の種類や容量等により適宜設定できるが、例えば、1分から10時間の間で行うことができる。導入時の温度は−15〜150℃の間の任意の温度を選択できる。但し、導入時に引火する危険性排除等の安全性を考慮すると−15〜80℃の範囲であることが好ましい。
混合容器への原料の導入時、導入後の攪拌工程は、回分操作式、半回分操作式、連続操作式のいずれでもよい。
[パッシベーション膜を有するシリコン基板の製造方法]
本発明のパッシベーション膜を有するシリコン基板の製造方法は、前記本発明のパッシベーション膜形成剤として説明したアルキルアルミニウム化合物含有溶液をシリコン基材の裏面の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成すること、及び形成した塗膜を、有機溶媒を乾燥後、または有機溶媒の乾燥と並行して、加熱して酸化アルミニウムとすることで、パッシベーション膜を形成することを含む、酸化アルミニウムからなるパッシベーション膜を有するシリコン基板を得る方法である。
前記シリコン基材への塗布は、スプレー塗布法、静電スプレー塗布法、インクジェット法、ミストCVD法、等の方法で行うことが好ましく、装置がより簡便であることからスプレー塗布法がより好ましい。
前記基材への塗布は、不活性雰囲気下でも空気雰囲気下でも行うことができる。不活性雰囲気下の場合、図1のような装置一式を用いて実施できる。
前記基材への塗布は、加圧下や減圧下でも実施できるが、経済性の点から、大気圧下で行うことが装置も簡便となり好ましい。
前記基材への塗布は、アルキルアルミニウム含有溶液を平均粒径が1〜100μmの液滴にしてシリコン基材に塗布することにより実施する。アルキルアルミニウム化合物含有溶液の平均粒径が1μm未満の液滴を用いると、材料の使用効率(基材への付着効率)が低下し、平均粒径が100μmを超える液滴を用いると、塗布により形成された膜の特性(特に緻密性)が低下するため、アルキルアルミニウム含有溶液の平均粒径は、上記範囲に限定される。アルキルアルミニウム含有溶液は、平均粒径が3〜30μmの液滴にして基材に塗布することが、材料の使用効率(基材への付着効率)が高く、かつ塗布により形成された膜の特性(特に緻密性)が良好という観点から好ましい。例えば、アルキルアルミニウム含有溶液を精密塗布用スプレーノズルに通すことにより1〜100μmの液滴にすることができる。スプレーノズルは2流体ノズルであることが好ましく、液滴は3〜30μmであることが好ましい。3μm以上であることで、液滴の基材への付着効率が向上し、30μm以下であることで膜特性(透明性、面内均一性、緻密性)がより良好になる。
塗布する際の、スプレーノズルと基材との距離を50cm以内として実施することが好ましく、さらには20cm以内として実施することがより好ましい。50cm以上になると、液滴は基材に到達するまでに液滴中の溶媒が乾燥し液滴の大きさが小さくなり液滴の基材への付着効率が低下する。
塗布をする際の雰囲気温度は50℃以下であることが好ましい。
空気中でスプレー塗布する場合、例えば、25℃に換算した相対湿度が20〜90%分の水を含有した空気雰囲気であることができる。25℃に換算した相対湿度は、酸化アルミニウム薄膜の形成がスムーズである観点からは、より好ましくは30〜70%である。
不活性雰囲気下でスプレー塗布をする場合、図1の装置中、水分導入口6より水蒸気等の形態として水分を導入させることにより、基材付近の雰囲気を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下にして実施する。
前記シリコン基材としては、アモルファスシリコン、結晶シリコン;単結晶シリコン、多結晶シリコン等を挙げることができる。
前記シリコン基材の形状は、フィルム、板、又は三次元形状を有する立体構造物、例えば、球状を挙げることができる。
前記シリコン基材は、パッシベーション効果が有効であるという観点から、結晶シリコン基板であることが好ましい。
前記アルキルアルミニウム化合物含有溶液を塗布して塗膜を形成し、次いで形成した塗膜を、基材を所定の温度として、有機溶媒を乾燥後、または乾燥と同時に所定の温度で加熱することで、焼成して酸化アルミニウム薄膜を形成させる。アルキルアルミニウム化合物含有溶液を塗布して形成する塗膜の膜厚は、パッシベーション膜として要求される特性を考慮して適宜決定できる。尚、塗布前に基材を所定の温度に加熱しておくこともでき、所定の温度に加熱した基材に塗布することで、塗布と同時に溶媒を乾燥、または、乾燥と同時に焼成させることもできる。
前記溶媒を乾燥させるための所定の温度は、例えば、20〜250℃の間で任意の温度を選択できる。前記溶媒を、例えば、0.5〜60分かけて乾燥させることができる。但し、これらの範囲に限定される意図ではない。
前記酸化アルミニウムを形成させるための焼成させるための所定の温度は、例えば、300〜600℃の間で任意の温度を選択できる。但し、基材の種類を考慮して、基材がダメージを受けない温度に設定することが適当である。焼成させる所定の温度が、溶媒を乾燥させる所定の温度と同一な場合、溶媒の乾燥と焼成を同時に行うことができる。溶媒乾燥した前駆膜を、例えば、0.5〜300分かけて焼成させることができる。
特に焼成温度を350〜500℃にすることにより、より多くの負の固定電荷を発生させることができると推定される。
前記のようにして得られる酸化アルミニウムからなるパッシベーション膜の膜厚は、例えば、0.005μm〜3μmの範囲であることができ、好ましく0.01μm〜0.3μmの範囲である。0.01μm以上とすることで、膜の連続性が向上し、膜の付着がない部分ができる可能性を低くすることができ、0.3μm以下であれば、太陽電池素子製造時の焼成処理時にブリスタリングによる剥離を起こす可能性が低くなるという利点がある。
必要に応じて前記のようにして得られた酸化アルミニウム薄膜を、酸素等の酸化ガス雰囲気下、水素等の還元ガス雰囲気下、多量に水分が存在する水蒸気雰囲気下、またはアルゴン、窒素、酸素等のプラズマ雰囲気下で、所定の温度で加熱することにより酸化アルミニウムの結晶性、緻密性を向上させることもできる。紫外線等の光照射やマイクロ波処理により得られた酸化アルミニウム薄膜中の残存有機物等を除去することができる。
本発明の製造方法によれば、実効ライフタイムが、例えば、150〜2000μsの範囲であり、再結合速度が、厚みが300μmのシリコン基材使用時に、例えば、7〜100cm/sの範囲であるパッシベーション膜をシリコン基材上に形成することができる。加熱焼成により形成した酸化アルミニウム膜は、さらに、フォーミングガス雰囲気下で処理することで、実効ライフタイムをより長くし、再結合速度を早めることもできる。フォーミングガスとしては、例えば、非酸化ガス(水素含有ガス、窒素含有ガス等)を挙げることができる。
[太陽電池素子]
本発明は、前記本発明のパッシベーション膜を有するシリコン基板を用いた太陽電池素子を包含する。
図2に、本発明の太陽電池素子の実施形態の一例を示す。p型の太陽電池素子100は、厚みが180〜300μmのp型シリコン半導体基板11より構成される。11の受光面側の表面に、厚みが0.3〜1.0μmのn型不純物層であるn+層12と、その上に窒化シリコン薄膜からなる反射防止兼パッシベーション薄膜13と、銀からなるグリッド電極15がそれぞれ、SiH3とNH3を用いたプラズマCVD法等、銀粉末を含有するペースト組成物を用いたスクリーン印刷法等により形成される。
シリコン半導体基板11の受光面側と逆側の裏面には、本発明の酸化アルミニウム薄膜からなるパッシベーション薄膜14が形成され、14を貫通するように所定のパターン形状に則ったアルミニウム電極16が形成される。
アルミニウム電極16は、通常、アルミニウム粉末を含有するペースト組成物をスクリーン印刷等により塗布、乾燥させた後、アルミニウムの融点である660℃より高い温度にて1〜10秒の短時間焼成することによって形成される。この焼成(ファイアースルー)の際にアルミニウムがシリコン半導体基板11の内部に拡散することにより、アルミニウム電極16とシリコン半導体基板11の間にAl−Si合金層17が形成され、さらに同時に、アルミニウム原子の拡散による不純物層としてp+層(Back Surface Field(BSF)層)18が形成される。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
本発明のアルキルアルミニウム化合物含有溶液の調製は、窒素ガス雰囲気下で行い、溶媒は全て脱水および脱気して使用した。
<トリアルキルアルミニウムのモル数>
トリアルキルアルミニウムのモル数は以下の式より算出した。
[トリアルキルアルミニウムのモル数]
=[導入したトリアルキルアルミニウムの質量(g)]/[トリアルキルアルミニウムの分子量(トリエチルアルミニウムの場合114.16)]
<物性測定>
本発明のスプレーノズルを用いて形成された液滴の平均粒径(50%体積径)は、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置(日機装社製「スプレー粒子径分布測定装置CTエアロトラック LDSA−3500A」)を用いて、スプレーノズルより20cmの距離の液滴を測定した。
本発明の製造方法により作成された酸化アルミニウム薄膜は、高速分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製、M−2000)を用いて膜厚、屈折率を測定した。
実効キャリアライフタイムは擬定常状態光導電法(QSSPC法)によりライムタイム測定器(Sinton社製、WCT−120)を用いて測定した。なお、実施例における実効キャリアライフタイムは、過剰キャリア密度が1015cm-3における値である。
前記のように測定した実効キャリアライフタイム値を用いて、以下の式(1)に基づき表面再結合速度Sを求めた。式(1)中、Wはウェハー厚、τeffは実効ライフタイム、τbulkはバルクライフタイムを示す。Wは300μm、τbulkは∞として計算した。
[実施例1]
テトラヒドロフラン(以下THF)18.1gにトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製)2.01gを25℃で加え、十分攪拌することにより10質量%のトリエチルアルミニウムTHF溶液(以下溶液A)を得た。
得られた溶液Aを用いてスプレー塗布を行った。窒素ガス雰囲気で、2流体スプレーノズル(超小型過流式精密噴霧ノズル、アトマックス社製、AM4S−OSV−0.4、ノズル径:0.4mm)を用いて行った。スプレーノズルと基材(p型シリコン基板、Topsil社製、PV−FZ(ウェハー厚255〜305μm、配向<100>、体積抵抗1〜5Ωcm)、4インチ円板を均等に4分割したもの、5wt%フッ酸にて洗浄後使用)の距離を20cmとして行った。スプレーノズルで2ml/分の溶液Aと8NL/分の窒素ガスを混合させることにより平均粒径が3〜30μmの液滴を形成させた。形成された液滴の平均粒径(50%体積径)をレーザー光散乱方式粒度分布測定装置で測定したところ8.5μmであった。同時に、65℃に加熱された水に10NL/分の窒素ガスを導入することによって形成された水分を含有する窒素ガスを基材付近に導入した。形成された液滴を前記水分の共存下で2分間200℃に加熱された基材に噴霧した。その後、基材を完全な窒素ガス雰囲気にした後、400℃、5分間焼成した。同様な処理を裏面にも施した。
基材上に形成された薄膜の膜厚、屈折率を、高速分光エリプソメーターを用いて測定したところ69nm、1.50であった。実効ライフタイムは606μsであり、再結合速度は24.8cm/sであった。
[実施例2]
実施例1で得られた膜を、さらに水素5vol%、窒素95vol%から構成されるフォーミングガス雰囲気下で400℃、5分追加焼成した。得られた膜の実効ライフタイムは698μsに上昇し、再結合速度は21.5cm/sとなった。
[実施例3]
ジイソプロピルエーテル18.1gにトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製)2.00gを25℃で加え、十分攪拌することにより10質量%のトリエチルアルミニウムジイソプロピルエーテル溶液(以下溶液B)を得た。
溶液Bを用いた以外は実施例1と同様の方法および条件で実施例1と同様な基材にスプレー塗布、焼成した。形成された液滴の平均粒径(50%体積径)をレーザー光散乱方式粒度分布測定装置で測定したところ8.0μmであった。
基材上に形成された薄膜の実効ライフタイムは506μsであり、再結合速度は29.6cm/sであった。
[実施例4]
実施例3で得られた膜を、さらに水素5vol%、窒素95vol%から構成されるフォーミングガス雰囲気下で400℃、5分追加焼成した。得られた膜の実効ライフタイムは821μsに上昇し、再結合速度は18.3cm/sとなった。
前記までの結果を表1にまとめた。
本発明の酸化アルミニウム薄膜は、パッシベーション膜、それを用いた太陽電池素子等に供することができる。
1 スプレーボトル
2 基材ホルダ(ヒーター付)
3 スプレーノズル
4 高圧窒素ボンベ
5 基材
6 水分導入口
7 不活性ガス導入口
8 排気口
9 囲い
11 シリコン半導体基板
12 n+
13 反射防止兼パッシベーション薄膜
14 パッシベーション薄膜
15 グリッド電極
16 アルミニウム電極
17 Al−Si合金層
18 P+
100 太陽電池素子

Claims (10)

  1. ジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム又はそれらの混合物からなるアルキルアルミニウム化合物(但し、ジアルキルアルミニウム及びトリアルキルアルミニウムが有するアルキル基は炭素数1〜6であり、同一又は異なってもよい)、及び、電子供与性を有しかつ活性水素原子を含有しない有機溶媒を含有するアルキルアルミニウム化合物含有溶液からなるパッシベーション膜形成剤。
  2. 前記ジアルキルアルミニウム及び/又はトリアルキルアルミニウムが下記一般式(1)又は(2)で表されるアルキルアルミニウム化合物である、請求項1に記載のパッシベーション膜形成剤。
    (式中、R1はメチル基又はエチル基を表す。)
    (式中、R2はイソブチル基を、R3は、水素又はイソブチル基を表す。)
  3. 前記一般式(1)で表されるアルキルアルミニウム化合物がトリエチルアルミニウムである、請求項2に記載のパッシベーション膜形成剤。
  4. 前記トリエチルアルミニウムのアルキルアルミニウム化合物含有溶液における含有量1質量%以上、10質量%以下である請求項3に記載のパッシベーション膜形成剤。
  5. 請求項1〜4に記載のパッシベーション膜形成剤を平均粒径が1〜100μmの液滴にしてシリコン基材の裏面の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成すること、及び形成した塗膜を、有機溶媒を乾燥後、または有機溶媒の乾燥と並行して、加熱して酸化アルミニウムとすることでパッシベーション膜を形成することを特徴とするパッシベーション膜を有するシリコン基材の製造方法。
  6. 前記液滴は、平均粒径が3〜30μmの範囲であることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
  7. 前記塗布をスプレー塗布法により行う、請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. スプレー塗布時の基板温度が300〜550℃の範囲であること、及び/又は、スプレー塗布後の加熱における温度が300〜550℃の範囲である、請求項7に記載の製造方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする、パッシベーション膜を有するシリコン基板。
  10. 請求項9に記載のパッシベーション膜を有するシリコン基板を用いた太陽電池素子。
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