JP2016167506A - 太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物、樹脂フィルム、積層体及び太陽電池モジュールのバックシート - Google Patents

太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物、樹脂フィルム、積層体及び太陽電池モジュールのバックシート Download PDF

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雅之 日野
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正道 赤津
哲也 小松崎
Tetsuya KOMATSUZAKI
哲也 小松崎
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Abstract

【課題】隠蔽性や耐熱性を向上させるために酸化チタン等の無機顔料を多量に含有し、使用環境下でフィルムの機械特性の経時劣化が極めて少ない太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂組成物;及び、該フィルムを提供すること。【解決手段】フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン重合体(好ましくはフッ化ビニリデン共重合体)からなる樹脂成分100質量部に対し、無機顔料10〜50質量部を含有する太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物;並びに、該組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルム、該樹脂フィルムからなる層を備える積層体、並びに、太陽電池モジュール用バックシート。【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池モジュールのバックシート等の用途に適するフッ化ビニリデン重合体組成物、並びに、該組成物から形成される樹脂フィルム、並びに、該樹脂フィルムからなる層を備える積層体及び太陽電池モジュールのバックシートに関する。
ポリフッ化ビニリデンを始めとするフッ素系樹脂は、その優れた耐候性、耐熱性、耐汚染性、耐薬品性、耐溶剤性、機械特性、二次加工性を活かし長期耐久性を求められる分野に幅広く使用されている。例えば、フッ素系樹脂からなるフィルムは、薄膜化によるコストメリットを活かし、各種表面の保護材料として、建築物の内外装用部材等や、耐薬品性・耐有機溶剤性が求められる容器表面材、更には長期信頼性が重要となる太陽電池モジュールの表面保護材または裏面保護材、燃料電池部材等に広く用いられている。
昨今の地球温暖化対策の推進に向け、クリーンエネルギーの開発が盛んに行われ、中でも太陽光を利用した太陽光発電が欧米を中心に大きく伸張し、太陽電池の普及が進んでいる。耐候性、耐熱性、耐汚染性、耐薬品性、耐溶剤性、機械特性、二次加工性に優れているフッ素系樹脂は、単層で、または、他の熱可塑性樹脂層との積層体として、太陽光発電に使用する太陽電池モジュールの表面保護材または裏面保護材として用いられるようになってきた。
太陽電池は、太陽光を直接電気エネルギーに変換する発電装置である。太陽電池には、シリコン半導体を材料にするものと、化合物半導体を材料にするものとに大別される。シリコン半導体太陽電池には、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、及びアモルファスシリコン太陽電池がある。
太陽電池の代表的なモジュールは、表面保護材、封止材、太陽電池セル、裏面保護材(以下、「バックシート」ということがある。)、及びフレームから構成されている。複数の太陽電池セルを配列して配線により直列に接続し、表面保護材、封止材、及び裏面保護材を用いてパッケージにしたものが、太陽電池モジュールであり、太陽電池モジュールの端部または周縁部には、フレームが配置される。複数の太陽電池モジュールを連結したものを太陽電池アレイという。
表面保護材としては、例えば、強化ガラス板、透明プラスチック板、透明プラスチックフィルムが用いられている。封止材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が汎用されている。裏面保護材(バックシート)としては、例えば、プラスチックフィルム、プラスチック板、強化ガラス板、金属板(アルミニウム板、塗装鋼板など)が用いられている。フレームとしては、例えば、軽量で耐環境性に優れるアルミニウムが汎用されている。
太陽電池セルの構造は、太陽電池の種類によって異なる。例えば、シリコン半導体太陽電池セルは、n型シリコンとp型シリコンとを接合し、それぞれに電極を配置した構造のものが代表的なものである。他の太陽電池セルとして、例えば、「集電電極/透明導電層/半導体光活性層/反射層/導電性基体」の層構成を有するものがある。半導体光活性層は、例えば、アモルファスシリコン半導体である。
太陽電池モジュール(太陽電池アレイも同様である。)は、一般に屋外に設置され、その後、長期間にわたって稼動状態が維持される。太陽電池モジュールが屋外で長期間にわたって満足に稼動するには、苛酷な環境下で優れた耐久性を有する必要がある。このため、太陽電池モジュールの表面保護材、封止材、及び裏面保護材(バックシート)には、該太陽電池モジュールを取り巻く苛酷な自然環境下で長期間にわたって太陽電池セルを保護する機能を有することが求められる。
太陽電池モジュールのバックシートは、太陽電池セルから遠い表面(太陽電池モジュールの裏側の最外面となる。)が屋外に直接暴露される。一方、太陽電池モジュールのバックシートの太陽電池セルに近い表面(封止材との隣接面である。)が各太陽電池モジュールの間隙で太陽光に曝される。このため、太陽電池用バックシートには、耐光性、耐候性、耐熱性、耐湿性、酸素または水蒸気バリア性、電気絶縁性、耐電圧性、機械特性、耐薬品性、耐塩性、防汚性、封止材との接着性などの諸特性に優れることが求められている。
太陽電池モジュールのバックシートとして、一般に、単層または多層のプラスチックフィルム、プラスチック板、強化ガラス板、金属板、プラスチックフィルムと金属板との複合体、プラスチックフィルムと金属箔との複合体などが用いられている。金属板としては、その表面に合成樹脂塗膜を形成したものも用いられている。
プラスチックフィルムとしては、太陽電池モジュールのバックシートに求められる耐光性、耐候性、耐熱性、防汚性などの諸特性を満足させる観点からは、フッ素系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、及びこれらの複合フィルムが好ましく使用される。
フッ素系樹脂フィルムを使用する例として、特許文献1には、外面樹脂層として、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライドの三元共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系樹脂を溶融押出し、積層する太陽電池用裏面保護シートが開示され、過酷な環境条件下で長期間使用されても、太陽電池としての機能が長期にわたり保持できるとされている。また、特許文献2には、外皮フィルムまたは防湿フィルムの基材として、ポリテトラフルオロエチレン、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体、ポリ3−フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂フィルムを備える太陽電池用セルのバックカバー材が開示され、高耐久性かつ高性能の太陽電池が提供できるとされている。
太陽電池モジュールのバックシートには、上記諸特性に優れることに加えて、その太陽電池セル側の表面の外観が美麗であること、さらには、該バックシートに入射した太陽光を効率的に反射する機能を有することが求められている。各太陽電池セルの間隙を透過した入射光をバックシートにより効率的に反射することができれば、反射光により太陽電池セルの電力変換効率が向上する。このため、該バックシートに顔料等の着色剤を配合してなる、太陽電池モジュール用の着色バックシートが知られている。
顔料等の着色剤としては、太陽光の反射率を高めて太陽電池の発電効率を高めたり、耐熱性を向上させるために、熱可塑性樹脂に無機白色顔料を配合した白色樹脂フィルムが知られており、特許文献3及び特許文献4には、酸化チタンが、無機白色顔料の中でも色調と隠蔽力(光散乱性)が特に優れており、白色樹脂フィルムの色調と反射特性の向上に寄与することが開示されている。フィルムを形成する樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートや、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂、セルロース系樹脂など多くの樹脂が挙げられている。
したがって、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂に顔料を含有させたフッ素系樹脂組成物からなるフッ素系樹脂フィルムを太陽電池モジュールのバックシートとして用いれば、外観を美麗にすることができる上、太陽電池セルの電力変換効率の向上に寄与することが期待される。
ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂は、表面張力が最も小さい樹脂に属し、各種の材料に対する濡れ性や接着性が乏しいことが知られている。そこで、太陽電池モジュールのバックシート用のフィルムを形成するためのフッ化ビニリデン重合体組成物においては、加工性、耐衝撃性、接着性、耐熱性等の特性を改善するために、他の熱可塑性樹脂を含有することがあった。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエステルウレタン、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどが挙げられる。
特に、太陽電池モジュールのバックシートの用途に使用するフッ化ビニリデン共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体には、該フッ化ビニリデン系重合体と相溶性があり、他の部材に対する接着性向上効果があるポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」ということがある。)を含有させることが、好ましく実施されることがあった。例えば、特許文献5には、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)に、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(誘導体)とともに、樹脂成分としてメタクリル酸エステル系樹脂を含有させることにより、耐候性、耐汚染性等のフッ素樹脂の持つ優れた特性を損なうことなく顔料の分散性を向上させることが開示されている。なお、PVDFとは、フッ化ビニリデンのホモポリマー、またはフッ化ビニリデンを主成分とした共重合可能な単量体との共重合体をいうとされている。特許文献6には、フッ化ビニリデン樹脂に、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(誘導体)とともに、樹脂成分としてメタクリル酸エステル系樹脂を含有させることにより、基材との接着性を改善することが開示されている。なお、フッ化ビニリデン樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体でもよく、フッ化ビニリデンと他のビニル化合物単量体の共重合体でもよいとされている。さらに、特許文献7には、50〜70重量部の少なくとも1種のポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、10〜40重量部の少なくとも1種のポリメチルメタアクリレート(PMMA)と、10〜25重量部の少なくとも1種の無機充填材とを含む(全体で100重量部)組成物Aの層を有する多層構造物が開示されている。なお、PVDFとは、フッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマー、及び好ましくは少なくとも50重量%のVDFと、VDFと共重合可能な少なくとも1種の他のフルオロモノマーとを含むVDFのコポリマーを意味するとされている。
本発明者らは、耐候性に優れるポリフッ化ビニリデンを含有し、隠蔽性向上のために酸化チタン等の無機顔料を多量に含有するフッ素系樹脂組成物、更には無機顔料の分散性や接着性向上のためにPMMAを含有するフッ素系樹脂組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシート用フィルムについて、更に研究を進めた。その結果、これらのフィルムは、フィルムを形成した当初は、十分な強度や伸度を有しているが、一定期間経過後には、伸度が大きく低下する場合があることを見いだした。太陽電池モジュールのバックシート用フィルムの伸度が低下すると、バックシート用フィルムが、長期間太陽光や風雨に曝される太陽電池セルにおいて、太陽電池セルが直接またはごく近接して載置される屋根部材の伸縮に追随できないようになり、場合によっては、バックシート用フィルムに亀裂が入ったり、その結果、該亀裂から水や水蒸気が太陽電池セル内に浸入して太陽電池の発電機能が損なわれたり、また、皺が発生して美観を損ねたりするおそれがある。
そこで、隠蔽性や耐熱性を向上させるために酸化チタン等の顔料を多量に含有する太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂組成物において、太陽電池モジュールの使用環境下で、機械特性の経時劣化が極めて少ない前記フッ素系樹脂組成物が求められていた。また、該組成物から形成され、太陽電池モジュールの使用環境下で、機械特性の経時劣化が極めて少ない耐久性に優れるフッ素系樹脂フィルムが求められていた。
特開2008−181929号公報 特開2000−294813号公報 特開2002−100788号公報 特開2007−208179号公報 特開平2−235953号公報 特開2010−92942号公報 特許第5270373号公報
本発明の課題は、隠蔽性や耐熱性を向上させるために酸化チタン等の無機顔料を多量に含有する太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂組成物において、太陽電池モジュールの使用環境下で、機械特性の経時劣化が極めて少ない前記フッ素系樹脂組成物を提供することにあり、更に、該組成物から形成され、太陽電池モジュールの使用環境下で、機械特性の経時劣化が極めて少ない耐久性に優れるフッ素系樹脂フィルム、及び積層体、並びに、太陽電池モジュールのバックシートを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決することについて鋭意研究した結果、フッ素系樹脂として、厳密に制御されたコモノマー単位組成を有するフッ化ビニリデン重合体に対して、特定範囲の量の無機顔料を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物とすることにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物であって、
フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含み、かつ、
フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しない
ことを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、その実施の態様として、以下(1)〜(6)のフッ化ビニリデン重合体組成物が提供される。
(1)フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン共重合体である前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
(2)他のフッ素含有コモノマーが、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
(3)無機顔料が、酸化チタンである前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
(4)熱安定剤0.01〜10質量%を含有する前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
(5)熱安定剤が、ホスファイト系安定剤である前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
(6)温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムを形成することができる前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
また、本発明によれば、前記のフッ化ビニリデン重合体組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムが提供され、好ましくは、温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムが提供される。
さらに、本発明によれば、前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体が提供され、その実施の態様として、無機顔料を含有しないフッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える前記の積層体、好ましくは、温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である前記の積層体が提供される。
そして、本発明によれば、前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える太陽電池モジュール用バックシートが提供される。そしてまた、前記の積層体からなる太陽電池モジュール用バックシートが提供され、好ましくは、無機顔料を含有しないフッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層を外表面層として備える前記の積層体からなる太陽電池モジュール用バックシートが提供される。
本発明によれば、フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物であって、
フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含み、かつ、
フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しない
ことを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物であることにより、隠蔽性や耐熱性を向上させるために酸化チタン等の無機顔料を多量に含有する太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂組成物において、太陽電池モジュールの使用環境下で、機械特性の経時劣化が極めて少ない前記フッ素系樹脂組成物が提供されるという効果が奏される。
また、本発明によれば、該組成物から形成され、太陽電池モジュールの使用環境下で、機械特性の経時劣化が極めて少ない耐久性に優れるフッ素系樹脂フィルム、及び積層体、並びに、太陽電池モジュールのバックシートが提供されるという効果が奏される。
I.太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物は、フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物であって、
フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含み、かつ、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しないことを特徴とする。
1.樹脂成分(フッ化ビニリデン重合体)
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物は、樹脂成分として、以下に説明するフッ化ビニリデン重合体を含有し、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しない。すなわち、本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物は、フッ化ビニリデン重合体からなる樹脂成分を含有するものである。
(1)フッ化ビニリデン重合体
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物(以下、単に「本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物」ということがある。)に含有されるフッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むことを特徴とする、特有のモノマー組成、特にコモノマー組成を有するフッ化ビニリデン重合体である。なお、フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位100質量%(他のフッ素含有コモノマー単位0質量%)を含むものである場合は、いうまでもなくフッ化ビニリデンホモポリマーを意味する。
すなわち、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%、他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%、及び、更に所望により他のモノマー単位(コモノマー単位である。)を含み、フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とするフッ化ビニリデン重合体である。また、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン共重合体、またはフッ化ビニリデンホモポリマーであってもよい。
したがって、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体の態様としては、i)フッ化ビニリデン単位89質量%以上〜100質量%未満及び他のフッ素含有コモノマー単位0質量%超過〜11質量%以下(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含む実質的に1種類のフッ化ビニリデン共重合体(「実質的に1種類」とは、コモノマー組成を同じくし、溶融粘度、溶融温度や重量平均分子量等の物性において異なるもののブレンドでもよいことを意味する。以下、同様である。)、ii)2種類以上のフッ化ビニリデン共重合体からなり、合計のフッ化ビニリデン単位89質量%以上〜100質量%未満、及び、合計の他のフッ素含有コモノマー単位0質量%超過〜11質量%以下(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン共重合体のブレンド、またはiii)1種類または2種類以上のフッ化ビニリデン共重合体と、フッ化ビニリデンホモポリマーとからなり、合計のフッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び合計の他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーとのブレンド、更にはiv)1種類または2種類以上のフッ化ビニリデンホモポリマー(フッ化ビニリデン単位100質量%に該当する。)等を例示することができる。フッ化ビニリデン単位及び/または他のフッ素含有コモノマー単位の比率の調整が容易である観点から、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体として好ましくは、前記ii)のフッ化ビニリデン共重合体のブレンド、または、前記iii)のフッ化ビニリデン共重合体とフッ化ビニリデンホモポリマーとのブレンドであり、より好ましくは前記ii)のフッ化ビニリデン共重合体のブレンド、具体的には、フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の比率を異にする2種類以上のフッ化ビニリデン共重合体のブレンドである。すなわち、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体は、1種または2種以上のフッ化ビニリデン重合体からなり、該1種または2種以上のフッ化ビニリデン重合体に含有されるフッ化ビニリデン単位の合計が89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマーの合計が0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を意味するものである。
〔フッ化ビニリデン単位〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体(フッ化ビニリデン共重合体でもよい。)におけるフッ化ビニリデン単位は、フッ化ビニリデン重合体(フッ化ビニリデン共重合体でもよい。)を形成するために使用されるフッ化ビニリデンに由来する、式:−CH2CF2−で表される繰り返し単位であり、フッ化ビニリデン重合体におけるその比率は89〜100質量%の範囲である(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むコモノマー単位の合計を100質量%とする。以下、同様である。)。フッ化ビニリデン単位の比率が低すぎると、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシートの耐熱性、耐久性、耐溶剤性や防汚性が不足することがある。また、フッ化ビニリデン単位の比率が高くなると、フッ化ビニリデン重合体組成物からフィルムを形成する際の加工性が不足したり、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフィルムの伸度が不足したりする傾向がある。フッ化ビニリデン単位の比率は、好ましくは89.05〜99質量%、より好ましくは89.07〜98質量%、更に好ましくは89.1〜96質量%の範囲である。
〔他のフッ素含有コモノマー単位〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体(フッ化ビニリデン共重合体でもよい。)における他のフッ素含有コモノマー単位は、フッ化ビニリデンと共重合して、フッ化ビニリデン共重合体を得ることができるフッ化ビニリデン以外の他のフッ素含有モノマー(コモノマー)に由来する繰り返し単位であって、フッ化ビニリデン重合体におけるその比率は0〜11質量%の範囲である。他のフッ素含有コモノマー単位の比率が高すぎると、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシートの耐熱性、耐久性、耐溶剤性や防汚性が不足することがある。また、他のフッ素含有コモノマー単位の比率が低くなると、フッ化ビニリデン重合体組成物からフィルムを形成する際の加工性が不足したり、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフィルムの伸度が不足したりする傾向がある。他のフッ素含有コモノマー単位の比率は、好ましくは1〜10.95質量%、より好ましくは2〜10.93質量%、更に好ましくは4〜10.9質量%の範囲である。
〔他のフッ素含有コモノマー〕
他のフッ素含有コモノマー単位を形成する他のフッ素含有コモノマーとしては、フッ化ビニリデンと共重合してフッ化ビニリデン共重合体を得ることができる限り、特に限定されず、従来フッ化ビニリデン共重合体を得るために使用されているフッ素含有モノマーをコモノマーとして使用することができる。具体的には、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(1,3−ジオキソール)などが挙げられ、好ましくはHFP、TFE、CTFE、及びトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。他のフッ素含有コモノマーとしては、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。例えば、TFEとHFP、CTFEとHFPを組み合わせて使用することができる。
したがって、好ましいフッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン三元共重合体などが挙げられ、更にこれらの共重合体の2種以上の混合物が挙げられる。
〔その他のコモノマー〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体は、所望によっては、フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位のほかに、更にその他のモノマー(コモノマー)に由来するその他のモノマー単位を有していてもよい。その他のモノマー(コモノマー)としては、フッ化ビニリデン及び/または先に説明した他のフッ素含有コモノマーと共重合してフッ化ビニリデン共重合体を得ることができる限り、特に限定されず、従来フッ化ビニリデン共重合体を得るために使用されているコモノマーを使用することができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブタジエン及びスチレンなどの公知のビニルモノマーが挙げられる。フッ化ビニリデン共重合体におけるその他のコモノマー単位の比率は、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%の範囲(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)であり、特に好ましくは0質量%である。すなわち、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体としては、1種または2種類以上のフッ化ビニリデン共重合体からなり、合計のフッ化ビニリデン単位89〜100質量%、及び、合計の他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン重合体がより好ましく、フッ化ビニリデン共重合体が特に好ましく、最も好ましくは前記の2種類以上のフッ化ビニリデン共重合体からなるブレンドである。
〔溶融粘度及び固有粘度〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体の溶融粘度は、溶融成形によってフィルムを形成することができ、得られるフィルムが所要の機械特性(伸度や強度)を有するものとすることができる限り、特に限定されないが、通常700〜2500Pa・s、好ましくは800〜2200Pa・sの範囲である。なお、溶融粘度は、温度245℃、せん断速度91sec-1で測定するものである。同様に、フッ化ビニリデン重合体の固有粘度は、特に限定されないが、通常0.7〜1.5、好ましくは0.8〜1.3の範囲である。前記固有粘度は、重合体4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の温度30℃における対数粘度であり、ウベローデ粘度計により測定する。
〔融点〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体の融点は、溶融成形によってフィルムを形成する際の溶融温度の指標となるものであり、得られるフィルムが所要の機械特性(伸度や強度)を有するものとすることができる限り、特に限定されないが、通常150〜185℃、好ましくは155〜183℃の範囲である。なお、融点は示差走査熱量計(DSC)によって測定するものである。
(2)フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、樹脂成分として、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しない。すなわち、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、樹脂成分として、特有のモノマー組成、特にコモノマー組成を有するフッ化ビニリデン重合体のみ(ブレンドでもよい。)を含有するものであって、従来、太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物において、加工性、耐衝撃性、接着性、耐熱性等の特性を改善するために含有されることがあった他の熱可塑性樹脂、例えばPMMA等を含有しない。先にも説明したように、フッ化ビニリデン重合体組成物が、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分、例えばPMMAを含有する場合には、伸度の経時低下が著しいことが多い。
2.無機顔料
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して無機顔料10〜50質量部を含有することを特徴とする。本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、所定量の無機顔料を含有することにより、該フッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフィルムが、隠蔽性を有し、かつ、所要の機械特性(伸度及び強度等)を有することができる。フッ化ビニリデン重合体100質量部に対する無機顔料の含有量は、好ましくは15〜47質量部、より好ましくは25〜45質量部の範囲である。
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有される無機顔料としては、太陽電池モジュールのバックシートの用途に適合するように、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフィルムが、隠蔽性を有し、かつ、所要の機械特性(伸度及び強度等)を有するものとすることができる限り、特に限定されず、例えば、酸化チタン等の無機白色顔料やカーボンブラック等の無機黒色顔料などが挙げられるが、隠蔽性と色調とが優れる観点から、無機白色顔料(以下、「白色顔料」ということがある。)が好ましい。
〔白色顔料〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有される無機顔料として好ましく用いられる白色顔料(無機白色顔料)としては、TiO2、Al23・nH2O、[ZnS+BaSO4]、CaSO4・2H2O、BaSO4、2PbCO3・Pb(OH)2等が挙げられる。色調と隠蔽力(光散乱性)が極めて優れており、フィルムの色調と反射特性の向上に寄与することができることから、酸化チタン(TiO2)がより好ましい。
酸化チタンは、アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶形のものが広く利用されている。本発明では、これら2種類の結晶形のものを用いることができるが、これらの中でも、高温でのフッ化ビニリデン重合体への分散性に優れ、揮発性が極めて小さいことから、ルチル型の結晶形を有する酸化チタンが好ましい。
酸化チタンとしては、顔料用グレードのものを好ましく用いることができる。酸化チタンの平均粒子径(平均一次粒子径)は、通常150〜1000nm、好ましくは200〜700nm、より好ましくは200〜400nmの範囲内である。酸化チタンの平均粒子径が小さすぎると、隠蔽力が低下する。酸化チタンは、その平均粒子径が前記範囲内にあることによって、屈折率が大きく光散乱性が強いため、白色顔料としての隠蔽力が高くなる。なお、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡撮影画像の画像解析によるものである。酸化チタンのBET法による比表面積は、通常1〜15m2/g、多くの場合5〜15m2/gの範囲である。酸化チタンは、一般に一次粒子が凝集した二次粒子の形態で存在している。
酸化チタンは、表面処理剤で表面処理することにより、分散性、隠蔽性、耐候性などの特性を向上させることができる。表面処理剤としては、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、錫、セリウム、ビスマスなどの金属酸化物;酸化亜鉛などの水和金属酸化物;有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物などの有機金属化合物;シランカップリング剤やポリシロキサンなどの有機ケイ素化合物;リン酸アルミニウム、有機リン酸エステルなどのリン化合物;アミン化合物;などが挙げられる。
〔黒色顔料〕
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、所望によっては、無機顔料として好ましく使用される白色顔料に代えて、黒色顔料を使用することもできる。黒色顔料としては、カーボンブラックが好ましく、通常、太陽電池モジュールのバックシート等に使用されるカーボンブラックであれば、特に限定されず、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどを使用することができ、カルボキシル基等によって表面が変性されたカーボンブラックも使用することもできる。カーボンブラックの平均粒子径(平均一次粒子径)は、通常10〜150nm、好ましくは13〜100nm、より好ましくは15〜40nmの範囲である。カーボンブラックのBET法による比表面積は、通常20〜250m2/g、好ましくは50〜200m2/g、より好ましくは80〜200m2/gの範囲である。なお、カーボンブラック等の黒色顔料は、無機顔料として好ましく使用される白色顔料に少量加えることにより、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシート用フィルムの色調や質感を調整することができる。この場合、カーボンブラック等は、色味の調整剤として使用され、その含有量は通常0.001〜1質量部程度である。
3.その他の添加剤
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物は、特有のモノマー組成、特にコモノマー組成を有するフッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有することを特徴とするものであるが、必要に応じて、更にその他の添加剤を含有してもよい。
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物には、必要に応じて、安定剤(熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤等)、紫外線吸収剤、色味の調整剤、顔料分散剤、他の顔料または染料、つや消し剤、滑剤、核剤(「結晶核剤」ということもある。)、加工助剤、機械物性改良剤などのその他の添加剤を含有させることができる。なお、本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物は、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しないものであるので、前記のその他の添加剤は、組成物中において樹脂成分となるものではないことが必要であり、好ましくは樹脂成分を含有しないものである。
〔熱安定剤〕
例えば、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、安定剤、中でも熱安定剤を含有することにより、フッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体の熱分解温度の低下を十分に抑制することができるので好ましい。熱安定剤としては、特に制限がなく、従来フッ化ビニリデン重合体組成物に含有させて使用されていた熱安定剤を使用することができ、ホスファイト系安定剤、フェノール系安定剤、カルシウム化合物、金属酸化物等が挙げられる。熱安定性向上の効果及び機械特性の経時劣化防止の効果のバランスの観点等から、ホスファイト系安定剤が好ましく挙げられる。熱安定剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。熱安定剤は、フッ化ビニリデン重合体中への分散性の観点から、通常、粉末の形状のものが用いられるが、限定されるものではない。フッ化ビニリデン重合体組成物における熱安定剤の含有量は、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。熱安定剤の含有割合が小さすぎると、熱安定化効果が小さくなり、フッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフィルム中のフッ化ビニリデン重合体成分の熱分解温度の低下を十分に抑制することが困難になる。熱安定剤の含有割合が大きすぎると、前記フィルムの隠蔽性や色調、機械特性などに悪影響を及ぼすおそれがある。熱安定剤による熱安定化効果を効率的に高めるために、フッ化ビニリデン重合体組成物中の無機顔料の含有割合に応じて、熱安定剤の含有割合を調整することが好ましい。熱安定剤の含有割合は、通常、無機顔料の含有割合よりも小さくすることが好ましく、無機顔料と熱安定剤の質量比は、100:1〜3:1、より好ましくは80:1〜4:1、更に好ましくは50:1〜5:1の範囲である。
(ホスファイト系安定剤)
熱安定剤としては、例えば、以下の化合物からなる熱安定剤が具体的に挙げられる。ホスファイト系安定剤としては、ペンタエリスリトール、プロパントリオール等の炭素数3〜5の多価アルコールまたはそのオリゴマーに1〜3個のリン原子(3価)がエステル結合した化合物であって、P≡(O−アルキルまたはフェニル)3で表されるホスファイトエステルの1〜3個が上記多価アルコールとのエステル交換により得られるホスファイト系安定剤が好ましく挙げられる。より具体的には、ビス−(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(ジフェニルホスファイト)ペンタエリスリトール、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、トリフェニルジペンタエリスリトールホスファイト、トリペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルネオペンチルホスファイト、トリメチロールプロパンホスファイトなどを例示できる。また、トリ(アルキル基置換または無置換フェニル)ホスファイト、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリアルキルホスファイト、例えば、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイトなど、更にはジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイトなども用いることができる。特に好ましいホスファイト系安定剤としては、熱耐久性等の耐熱性の効果や成形性等の観点から、ビス−(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイトやジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のペンタエリスリトール骨格を有するホスファイト系安定剤が挙げられ、市販品としては、株式会社ADEKA製のアデカスタブ(登録商標)PEP−36やPEP−8、城北化学工業株式会社製のJPP−2000PT等が知られている。
(その他の熱安定剤)
フェノール系安定剤(「フェノール系酸化防止剤」ということもある。)としては、1〜3個のアルキル基とヒドロキシル基を置換したベンゼン環を分子中に1〜4個有し、かつフェノール性OH基を有する化合物からなるフェノール系安定剤が好ましく挙げられる。より具体的には、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、ステアリル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオ酸アミド〕、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−tert−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−tert−ブチル−4−メチル−5−メチルベンジル)フェノール等が挙げられる。カルシウム化合物としては、グルコン酸カルシウム等のポリヒドロキシモノカルボン酸カルシウム塩;ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム等の炭素数5〜30の脂肪族カルボン酸カルシウム塩;炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の無機カルシウム化合物などが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
また、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、機械物性改良剤を含有することができる。機械物性改良剤は、フッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフィルムの伸度、引張強度、耐衝撃性などの機械特性を向上させるために、従来から使用されているものを使用することができる。機械物性改良剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、特有のモノマー組成、特にコモノマー組成を有するフッ化ビニリデン重合体を含有することにより、優れた機械特性を有するので、通常上記した機械物性改良剤を含有させることは必要でない。
さらに、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、滑剤、核剤や加工助剤を含有するものとすることによって、太陽電池モジュールのバックシートの用途に適合するフィルムの成形を容易とすることができる。これら滑剤、核剤や加工助剤としては、従来フッ素系樹脂フィルムの成形において使用されるものを使用することができる。例えば、加工助剤としては、脂肪酸の1価アルコールエステル、多塩基酸の1価アルコールエステル、多価アルコール脂肪酸エステル、及びそれらの誘導体、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
これらその他の添加剤は、それぞれに適した割合で用いられ、フッ化ビニリデン重合体組成物中において、各々独立して、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。
4.フッ化ビニリデン重合体組成物の調製方法
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、所定量のフッ化ビニリデン重合体及び無機顔料、並びに必要に応じて含有させるその他の添加剤などの原材料を均一に混合して組成物とすることができる限り、特にその調製方法は限定されない。例えば、原材料をドライブレンドする方法等により調製することができる。また、フッ化ビニリデン重合体の粉末またはペレットを、他の原材料とともに、押出機に供給して溶融混練し、ストランド状に溶融押出し、所定長さにカットしてペレット化してもよい。これらの調製方法により、温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムを形成することができる太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物を得ることができる。
II.太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルム
1.フッ素系樹脂フィルム
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物は、押出成形機に供給し、押出成形機の先端に配置したTダイからフィルム状に溶融押出して成形することにより、太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムを形成することができる。なお、本発明においてフィルムとは、厚みが250μm未満のフィルムに限定されず、厚みが250μm以上のシート(板を含む。)まで含むものとする。
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルム(以下、「本発明のフッ素系樹脂フィルム」ということがある。)の厚みは、特に限定されないが、好ましくは3〜500μm、より好ましくは4〜300μm、更に好ましくは5〜200μmの範囲である。フッ素系樹脂フィルムの厚みが薄すぎると、十分な色調や隠蔽力を得ることが困難になり、伸度や強度等の機械特性が低下する。フッ素系樹脂フィルムの厚みが厚すぎると、柔軟性が損なわれたり、軽量化が困難になったりする。
〔伸度〕
本発明のフッ素系樹脂フィルムは、太陽電池モジュールのバックシートの用途に適合する機械特性である伸度が向上したフッ素系樹脂フィルムである。フッ素系樹脂フィルムの伸度は、JIS K7113に準拠して測定される引張破壊伸びを意味する(以下、「破断伸度」ということがある。)。伸度の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、フッ素系樹脂フィルムから、長手方向(以下、「MD」または「縦方向」ということがある。押出フィルムにおいては、押出方向に相当する。)及び幅方向(以下、「TD」または「横方向」ということがある。押出フィルムにおいては、押出方向と直交する方向に相当する。)に沿って平行に、縦100mm及び幅10mmの大きさに切り出した短冊形試験片(N=5)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmとして、温度23±2℃、相対湿度50±5%で測定する。本発明のフッ素系樹脂フィルムは、縦方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれの方向についても、伸度が、好ましくは300%以上、より好ましくは350%以上、特に好ましくは400%以上である。フッ素系樹脂フィルムの伸度は、上限が特にないが、通常700%以下であり、多くの場合650%以下である。これに対して、フッ素系樹脂フィルムの伸度が、縦方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれかについて50%未満であると、フィルムの柔軟性が不足し、例えば、太陽電池モジュールのバックシート等の用途には不適当であると評価されることがある。
〔強度〕
本発明のフッ素系樹脂フィルムは、太陽電池モジュールのバックシートの用途に適合する機械特性である強度が向上したフッ素系樹脂フィルムである。フッ素系樹脂フィルムの強度は、JIS K7113に準拠して測定される引張破壊強さを意味する(以下、「破断強度」ということがある。)。強度の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、フッ素系樹脂フィルムから、長手方向(MD)及び幅方向(TD)に沿って平行に、縦100mm及び幅10mmの大きさに切り出した短冊形試験片(N=5)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmとして、温度23±2℃、相対湿度50±5%で測定する。本発明のフッ素系樹脂フィルムは、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれの方向についても、強度が、20MPa以上、好ましくは25MPa以上、より好ましくは30MPa以上である。フッ素系樹脂フィルムの強度は、上限が特にないが、通常100MPa以下であり、多くの場合80MPa以下である。
〔機械特性の経時変化−プレッシャークッカーテスト〕
本発明のフッ素系樹脂フィルムは、上記した伸度及び強度によって表される機械特性に優れるフッ素系樹脂フィルムであり、さらに、機械特性の経時的低下が少ない耐久性に優れるフッ素系樹脂フィルムである。本発明のフッ素系樹脂フィルムの耐久性は、以下に説明するフッ素系樹脂フィルムの機械特性の経時変化(以下、「耐PCT性」ということがある。)によって確認することができる。
(耐PCT性)
フッ素系樹脂フィルムの耐PCT性は、以下の方法によって測定し評価する。すなわち、フッ素系樹脂フィルムから、先に説明したように縦100mm及び幅10mmに切り出した試験片を、温度121℃、湿度100%、2気圧の雰囲気下で96時間静置処理するプレッシャークッカーテスト(PCT)に供した後、先に説明した破断伸度及び破断強度を測定する。温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理後(以下、「PCT後」ということがある。)の破断伸度または破断強度の、処理前の破断伸度または破断強度に対する比率(以下、それぞれ「PCT後の伸度保持率」または「PCT後の強度保持率」ということがあり、総称して「PCT後の保持率」ということがある。)が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれの方向についても(以下、同様である。)、50%以上であれば、耐PCT性が優れているということができ、PCT後の保持率60%以上であれば、耐PCT性がより優れているということができ、PCT後の保持率が70%以上であれば、耐PCT性が特に優れているということができ、PCT後の保持率が80%以上であれば、耐PCT性が極めて優れているということができる。本発明のフッ素系樹脂フィルムは、好ましくはPCT後の伸度保持率が50%以上であるフッ素系樹脂フィルム、すなわち破断伸度の耐PCT性が優れているフッ素系樹脂フィルムである。より好ましくは破断伸度の耐PCT性が特に優れているフッ素系樹脂フィルム(PCT後の保持率が70%以上)、更に好ましくは破断伸度の耐PCT性が極めて優れているフッ素系樹脂フィルム(PCT後の保持率が80%以上)を得ることができる。本発明のフッ素系樹脂フィルムとしては、併せて、破断強度の耐PCT性が極めて優れているものとすることができる。
〔機械特性の経時変化−紫外線照射〕
本発明のフッ素系樹脂フィルムの耐久性は、また、以下に説明する紫外線照射によるフッ素系樹脂フィルムの機械特性の経時変化(以下、「耐UV性」ということがある。)によっても確認することができる。
(耐UV性)
フッ素系樹脂フィルムの耐UV性は、以下の方法によって測定し評価する。すなわち、フッ素系樹脂フィルムから、先に説明したように縦100mm及び幅10mmに切り出した試験片に対して、光源:キセノンランプ、放射照度:340nm、0.55W/m2、温度:60℃、相対湿度:65%、照射時間:60時間の条件にて、紫外線照射を行った後、先に説明した破断伸度及び破断強度を測定する。紫外線照射後(以下、「UV照射後」ということがある。)の破断伸度または破断強度の、処理前の破断伸度または破断強度に対する比率(以下、それぞれ「UV照射後の伸度保持率」または「UV照射後の強度保持率」ということがあり、総称して「UV照射後の保持率」ということがある。)が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれの方向についても(以下、同様である。)、55%以上であれば、耐UV性が優れているということができ、UV照射後の保持率が70%以上であれば、耐UV性が特に優れているということができ、UV照射後の保持率が80%以上であれば、耐UV性が極めて優れているということができる。本発明のフッ素系樹脂フィルムとしては、多くの場合、破断伸度の耐UV性及び破断強度の耐UV性が極めて優れているもの(UV照射後の保持率が80%以上)とすることができる。
2.フッ素系樹脂フィルムの製造方法
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムは、それ自体公知の押出成形による樹脂フィルムの製造方法を採用して製造することができる。また、本発明のフッ素系樹脂フィルムは、通常、未延伸(未配向)のフィルムである。例えば、スリット状のTダイを備える押出成形機を使用し、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物を溶融混練し、210〜280℃、好ましくは220〜270℃のダイス温度で、シート状に押し出し、40〜150℃、好ましくは60〜135℃の表面温度に保持した冷却ドラムで急冷固化させて未延伸シートを形成することにより、本発明のフッ素系樹脂フィルムを得ることができる。
なお、通常は必要ないが、所望により、本発明の樹脂フィルムは、延伸(配向)されたフィルムとしてもよい。その場合は、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物を溶融製膜して、未延伸のシートを製造した後、延伸温度20〜160℃、好ましくは30〜150℃で、面積倍率で2〜100倍、好ましくは4〜60倍で、一軸延伸、または、逐次若しくは同時二軸延伸を行い、その後、80〜200℃、好ましくは90〜160℃の温度で、緊張下または20%以下の弛緩下で熱処理する。なお、これらの温度条件及び延伸条件は、樹脂の組成に応じて最適範囲を選定すればよい。
III.太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体
本発明のフッ素系樹脂フィルムは、単層のフッ素系樹脂フィルムとして、太陽電池モジュールのバックシートとすることができるが、該太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体として、太陽電池モジュールのバックシートを形成することができる。
本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体(以下、「本発明のバックシート用積層体」ということがある。)は、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層と、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層以外のその他の層とを備える積層体である。本発明のバックシート用積層体は、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層(通常1層でよいが、所望によっては、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層を2層以上備えてもよく、その際、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物の組成は、同一でも異なるものでもよい。)に加えて、以下に説明するような「その他の層」を備えることにより、耐衝撃性や柔軟性等の機械的強度、耐久性、更には表面特性などの諸特性を一層向上させることができ、太陽電池モジュールのバックシートとしてより適合する積層体とすることができる。本発明のバックシート用積層体に備えられる「その他の層」としては、先に説明した諸特性において一層の向上が求められる特性を考慮して選択することができる。
〔無機顔料を含有しないフッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層〕
本発明のバックシート用積層体の表面特性を一層向上させる観点から、本発明のバックシート用積層体は、「その他の層」として、無機顔料を含有しないフッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層(以下、「顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層」ということがある。)を備える前記の積層体とすることができる。本発明のバックシート用積層体は、「その他の層」として、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を備えることにより、例えば、後に詳述するように、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を外表面層として備える太陽電池モジュール用バックシートとすることにより、太陽電池モジュール用バックシートの外表面層、すなわち、太陽電池モジュールを載置する屋根等に対向する表面に擦過跡のような模様が形成されにくいという効果が奏されるとともに、所望により望まれることのある外表面層が光沢を有する太陽電池モジュール用バックシートとすることもできる。
本発明のバックシート用積層体が、「その他の層」として、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を備えるものである場合、該積層体を、先に説明したPCT後の伸度の保持率が50%以上である積層体とすることができる。なお、バックシート用積層体の機械特性の測定方法は、先に説明したフッ素系樹脂フィルムの機械特性の測定方法と同様である。
顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を形成するために使用するフッ化ビニリデン重合体の組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体としては、本発明のフッ素系樹脂フィルムを形成するために使用する本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物に含有されるフッ化ビニリデン重合体と同一でもよいが、異なるフッ化ビニリデン重合体でもよい。すなわち、フッ化ビニリデンホモポリマーまたはフッ化ビニリデン共重合体のいずれを使用することもでき、耐候性、耐光性や耐汚染性等の観点から、好ましくはフッ化ビニリデンホモポリマーである。
本発明のバックシート用積層体が、「その他の層」として、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を備える場合、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層と顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層との厚みの比率は、好ましくは20:1〜1:1、より好ましくは15:1〜1.5:1、更に好ましくは12:1〜2:1の範囲である。
〔その他の樹脂フィルム層〕
本発明のバックシート用積層体に備えることができる、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層以外の「その他の層」としては、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層に代えて、または更に加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;PMMA等のメタクリレート樹脂;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステルウレタン、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどのその他の樹脂から形成されるフィルムからなる層(以下、「その他の樹脂フィルム層」)が挙げられる。また、その他の樹脂フィルム層としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル等のフッ化ビニリデン重合体以外のフッ素系樹脂から形成される樹脂フィルムからなる層が挙げられる。本発明のバックシート用積層体は、これらその他の樹脂フィルム層を備えることにより、太陽電池モジュール用バックシートに求められる強度等の機械特性を有することを容易にできるようにすることができる。その他の樹脂フィルム層には、所要の機械特性、耐熱性、耐候性、耐光性などを考慮して、先に例示した樹脂の1種または2種以上を選択し、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、顔料または染料などの添加剤や、更に例示した以外の他の熱可塑性樹脂を含有させることができる。
〔バリア層等その他の層〕
本発明のバックシート用積層体は、具体的な用途や適用部位等に応じて、所望により、先に挙げたその他の樹脂フィルムからなる層に代えて、またはこれに加えて、更に、バリア層等その他の層を備えることができる。バリア層等その他の層としては、例えば、金属板;金属箔、金属蒸着層または無機酸化物(酸化ケイ素や酸化アルミニウム等)蒸着層を備える樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ということがある。)フィルム等のバリア性樹脂フィルムなどのバリア層;防湿フィルム;強化ガラス板などが挙げられる。
〔積層体の厚み〕
本発明のバックシート用積層体(前記その他の樹脂フィルム層及び/または前記バリア層等その他の層を備えてもよいものである。)の厚みは、特に限定されず、該積層体に備えられる層の構成や組合せによって適宜定めることができるが、通常10〜500μmであり、好ましくは12〜400μm、より好ましくは15〜300μm、更に好ましくは18〜250μmである。バックシート用積層体の厚みが小さすぎると、該積層体の強度が不足し、所要の機械特性が得られないおそれがある。一方、バックシート用積層体の厚みが大きすぎると、バックシート用積層体の柔軟性が不足するおそれがあり、また、軽量化や薄肉化を図ることができない。本発明のバックシート用積層体における、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層の厚みの比率は、特に限定されないが、好ましくは1〜92%、より好ましくは2〜90%、更に好ましくは3〜88%、特に好ましくは5〜85%の範囲である。
〔積層体の製造方法〕
本発明のバックシート用積層体の製造方法は、特に限定されず、接着剤を使用する接着積層(ドライラミ、ホットメルト接着等)、共押出、押出ラミネーション(押出被覆)、塗工その他、通常採用される積層方法を採用することができ、バックシート用積層体の層構成及び材料の組合せに応じて、これらの積層方法を適宜組み合わせて行うことができる。
IV.太陽電池モジュールのバックシート、及び太陽電池モジュール
本発明のフッ素系樹脂フィルム、または、本発明のバックシート用積層体は、太陽電池モジュールのバックシートとして使用するのに適するものである。
〔太陽電池モジュール〕
太陽電池モジュールとしては、通常、表面保護材、封止材、太陽電池セル、及び、バックシート(裏面保護材)を順次備える構造のものが採用される。そして、複数の太陽電池セルを配線により直列に接続することにより、太陽電池モジュールを構成する。太陽電池モジュールの端部または周縁部には、フレームが配置されている。
表面保護材としては、例えば、強化ガラス板、透明プラスチック板、単層若しくは多層の透明プラスチックフィルム、または、これらを複合化した複合材料などが用いられるが、これらに限定されない。封止材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂などの透明な樹脂が用いられる、これらに限定されるものではないが、EVAが特に好ましく使用される。太陽電池セルの構造は、太陽電池の種類によって異なるが、本発明の太陽電池モジュールのバックシートは、各種太陽電池セルを備える太陽電池モジュールに適用することができる。なお、封止材としてEVAを使用する場合、EVAはシートとして供給されることが多い。太陽電池セルを2枚のEVAシートで挟んで、加熱加圧することにより、太陽電池セルをEVAで封止することもできる。また、封止材としてEVAシートを用いる場合は、本発明のフッ素系樹脂フィルム等とあらかじめ複合化して供給することができる。
〔太陽電池モジュールのバックシート〕
バックシート(裏面保護材)としては、本発明のフッ素系樹脂フィルムの単層フィルムや、本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体を使用することができる。本発明の太陽電池モジュール用バックシートとして、該積層体を使用する場合、フッ素系樹脂フィルムは、機械特性や耐候性に優れるので、太陽電池モジュールの裏面側、すなわち太陽電池セルから遠い位置に配置されることが好ましい。
特に、本発明の太陽電池モジュール用バックシートが、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を備える場合は、該顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を外表面層として備える、すなわち、太陽電池セルから最も遠い位置である最裏面側に配置することが好ましい。これによれば、特定量の無機顔料を含有する本発明のフッ素系樹脂フィルムが外表面に露出せず、その結果、太陽電池モジュール用バックシートの外表面層、すなわち、太陽電池モジュールを載置する屋根等に対向する表面に、無機顔料に由来する非光沢が観察されることがなく、表面が美麗なものとなるとともに、また、太陽電池モジュールを屋根等に載置するまでの工程中、及び、太陽電池モジュールが屋根等に載置された後の使用期間中に、外表面に無機顔料に由来する一見擦過跡のようにもみえる模様が形成されにくいという観点からも表面特性が向上するという効果が奏される。
本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える太陽電池モジュールのバックシートの好ましい層構成としては、例えば、以下を例示することができるが、これらに限定されるものではない。複数層の層構成を有するバックシートは、太陽電池セル(及び封止材)に近い側の面を右端として示す。なお、顔料不含有フッ素系樹脂フィルム層を「顔料不含有」と表し、それ以外の本発明のフッ素系樹脂フィルムからなる層以外のその他の層を「その他の層」と表記した。
1)フッ素系樹脂フィルム(すなわち単層の太陽電池モジュールのバックシートである。)
2)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム
3)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム/その他の層
4)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/その他の層
5)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
6)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム/その他の層/接着剤/EVA
7)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/その他の層/接着剤/EVA
8)顔料不含有/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/その他の層/接着剤/フッ素系樹脂
9)その他の層/フッ素系樹脂フィルム
10)その他の層/接着剤/フッ素系樹脂フィルム
11)その他の層/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
12)その他の層/接着剤/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
フィルム
13)顔料不含有/その他の層/フッ素系樹脂フィルム
14)顔料不含有/その他の層/接着剤/フッ素系樹脂フィルム
15)顔料不含有/その他の層/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
16)顔料不含有/その他の層/接着剤/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
フィルム
17)ガラス板/接着剤/フッ素系樹脂フィルム
18)ガラス板/接着剤/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
19)金属板/接着剤/フッ素系樹脂フィルム
20)金属板/接着剤/フッ素系樹脂フィルム/接着剤/EVA
本発明の太陽電池モジュールのバックシートがフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体である場合、フッ素系樹脂フィルムを封止材(例えば、EVA)層に直接または接着剤層を介して隣接させて太陽電池モジュールを形成してもよい。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例における「部」は質量部を意味する。実施例及び比較例におけるフッ素系樹脂フィルムまたは積層体の特性の測定方法は、以下のとおりである。
〔伸度(破断伸度)〕
フッ素系樹脂フィルムまたは積層体の伸度(破断伸度)は、株式会社島津製作所製のオートグラフAGS−Jを使用して、JIS K7113に準拠し、MDまたはTDに沿って縦100mm及び幅10mmの大きさに切り出した短冊形試験片(N=5)について、引張破壊伸びをMD方向及びTD方向について測定した。具体的な測定条件は、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmとして、温度23±2℃、相対湿度50±5%とした。
〔強度(破断強度)〕
フッ素系樹脂フィルムまたは積層体の強度(破断強度)は、株式会社島津製作所製のオートグラフAGS−Jを使用して、K7113に準拠し、MDまたはTDに沿って縦100mm及び幅10mmの大きさに切り出した短冊形試験片(N=5)について、伸度(破断伸度)と同じ条件で測定した。
〔耐PCT性〕
フッ素系樹脂フィルムまたは積層体の耐PCT性は、以下の方法によって測定した。すなわち、フッ素系樹脂フィルムまたは積層体から縦100mm、幅10mmに切り出した試験片を、温度121℃、湿度100%、2気圧の雰囲気下で96時間静置処理するプレッシャークッカーテスト(PCT)に供した後、先に説明した方法により破断伸度及び破断強度を測定し、PCT後の保持率を算出した。
〔耐UV性〕
フッ素系樹脂フィルムまたは積層体の耐UV性は、以下の方法によって測定した。すなわち、フッ素系樹脂フィルムまたは積層体から縦100mm、幅10mmに切り出した試験片を、光源:キセノンランプ、放射照度:340nm、0.55W/m2、温度:60℃、相対湿度:65%、照射時間:60時間の条件にて、紫外線照射を行った後、先に説明した方法により破断伸度及び破断強度を測定し、UV照射後の保持率を算出した。
〔バックシート用積層体の製造〕
以下に、太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体を得る具体例を示す。本発明の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物、並びに、太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルム、積層体、及び太陽電池モジュール用バックシートは、以下の実施例に制約されるものではない。
[実施例1]
第1層を形成するフッ化ビニリデン重合体組成物(以下、単に「第1層を形成する組成物」ということがある。)として、以下の材料からなるフッ化ビニリデン重合体の組成物(以下、「第1層組成物」ということがある。);
フッ化ビニリデン重合体: フッ化ビニリデン単位88.0質量%及びヘキサフルオロプロピレン単位12.0質量%(「HFP含有量12.0質量%」と表すことがある。以下、同様である。)であるフッ化ビニリデン共重合体〔株式会社クレハ製。以下、「PVDF1」ということがある。〕 59.9質量部と、HFP含有量2.5質量%であるフッ化ビニリデン共重合体(株式会社クレハ製。以下、「PVDF2」ということがある。) 8.2質量部とのブレンド(HFP含有量10.9質量%である。)、
無機顔料: 酸化チタン〔デュポン社製TI−PURE(登録商標)R101;ルチル型酸化チタン、平均粒子径0.29μm。以下、「TiO2(1)」ということがある。〕 27.5質量部〔PVDF100質量部に対して無機顔料40.4質量部に相当する。該質量部を、以下、「質量部/対PVDF100」として表すことがある。)、並びに、
炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、加工助剤、核剤及びカーボンブラック(色味の調整剤)を、表1に示す含有量で配合して、単軸押出機に供給し、シリンダー温度220℃で溶融混練し、ダイからストランド状に溶融押出し、冷水中でカットしてペレットを作製した。
第2層を形成するフッ化ビニリデン重合体の組成物として、PVDF1に代えて、フッ化ビニリデンホモポリマー〔株式会社クレハ製KF(登録商標)#850。固有粘度0.85。HFP含有量0質量%である。以下、「PVDF3」ということがある。〕を使用したこと、及び、TiO2(1)を含有しなかったことを除いて第1層組成物と同様であるフッ化ビニリデン重合体の組成物(以下、「第2層組成物」ということがある。)を使用して、ペレットを作製した。
共押出成形機に、第1層組成物から形成したペレットと、第2層組成物から形成したペレットとを供給して、それぞれに由来するフィルムの層の厚みが、17μm及び3μmとなるようにして、温度240℃でTダイから溶融共押出して、温度90℃の冷却ロールで冷却して、幅303mm、合計厚み20μmであるフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体(以下、「フッ素系樹脂積層フィルム」ということがある。)を作製した。得られたフッ素系樹脂積層フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例2]
第1層組成物及び第2層組成物に由来する層の厚みを、13μm及び7μmとなるようにしたことを除いて、実施例1と同様にして、合計厚み20μmであるフッ素系樹脂積層フィルムを作製した。得られたフッ素系樹脂積層フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例3]
第1層を形成する組成物として、第1層組成物に代えて、表1に示す組成物を使用したこと、すなわち、樹脂成分をPVDF3(フッ化ビニリデンホモポリマー)に変更したこと(HFP含有量0質量%である。)、熱安定剤であるホスファイト系安定剤〔株式会社ADEKA製のアデカスタブ(登録商標)PEP−36〕を含有したこと、更に、無機顔料、炭酸カルシウム、加工助剤、核剤及びカーボンブラックの含有量を変更したこと(含有しない、すなわち、含有量0質量部とした場合も含む。)を除いて、実施例1と同様にして、合計厚み20μmであるフッ素系樹脂積層フィルムを作製した。得られたフッ素系樹脂積層フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層を形成する組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例4]
第1層及び第2層の厚みをそれぞれ、表1に示すとおりに変更したことを除いて、実施例3と同様にして、合計厚み25μmであるフッ素系樹脂積層フィルムを作製した。得られたフッ素系樹脂積層フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層を形成する組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例5]
実施例3において、第1層を形成する組成物に由来する層の厚みを20μmとなるように変更し、第2層組成物に由来する層の厚みを0μmとなるように変更したこと、すなわち、第1層を形成する組成物に由来する厚み20μmの単層のフッ素系樹脂フィルムを作製した。得られた単層のフッ素系樹脂層フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例6]
第1層を形成する組成物における樹脂成分をフッ化ビニリデンホモポリマー(株式会社クレハ製KF(登録商標)#1000。固有粘度1.00。以下、「PVDF4」ということがある。)〕に変更したこと(HFP含有量0質量%である。)を除いて、実施例5と同様にして、第1層を形成する組成物に由来する厚み20μmの単層のフッ素系樹脂フィルムを作製した。得られた単層のフッ素系樹脂フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例7]
第1層を形成する組成物における樹脂成分を、PVDF2のみからなるものに変更したこと(HFP含有量2.5質量%である。)を除いて、実施例5と同様にして、第1層を形成する組成物に由来する厚み20μmの単層のフッ素系樹脂フィルムを作製した。得られた単層のフッ素系樹脂フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層組成物の組成とともに、表1に示す。
[実施例8]
第1層を形成する組成物における樹脂成分を、PVDF1の64.7質量部とPVDF2の8.8質量部とのブレンド(HFP含有量10.9質量%である。)に変更したこと除いて、実施例5と同様にして、第1層を形成する組成物に由来する厚み20μmの単層のフッ素系樹脂フィルムを作製した。得られた単層のフッ素系樹脂フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層組成物の組成とともに、表1に示す。
[比較例1]
第1層を形成する組成物として、第1層組成物に代えて、表1に示す組成物を使用した〔フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分であるPMMA〔旭化成ケミカルズ株式会社製のデルパウダ(登録商標))9.0質量部を含有させた。〕ことを除いて、実施例1と同様にして、合計厚み20μmであるフッ素系樹脂積層フィルムを作製した。得られたフッ素系樹脂積層フィルムの伸度及び強度、並びに耐PCT性及び耐UV性の測定結果を、第1層を形成する組成物の組成とともに、表1に示す。
Figure 2016167506
表1から、フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物であって、フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含み、かつ、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しない太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルム層を備える実施例1〜実施例8のフッ素系樹脂積層フィルム(積層体)または単層のフッ素系樹脂フィルムは、PCT後の伸度保持率が、MD方向及びTD方向のいずれについても70%以上であることから、伸度についての耐PCT性が極めて優れており、かつ、PCT後の強度保持率が、MD方向及びTD方向のいずれについても80%以上であることから、強度についての耐PCT性も極めて優れるものであることが分かった。さらに、UV照射後の伸度保持率が、MD方向及びTD方向のいずれについても55%以上であることから、伸度についての耐UV性が優れており、かつ、UV照射後の強度保持率が、MD方向及びTD方向のいずれについても80%以上であることから、強度についての耐UV性も極めて優れるものであることが分かった。
これに対して、フッ化ビニリデン重合体とともに、フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分であるPMMAを含有するフッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える比較例1のフッ素系樹脂積層フィルム(積層体)は、PCT後の伸度保持率が、MD方向及びTD方向のいずれについても50%未満であることから、耐PCT性が優れているといえないものであることが分かった。さらに、UV照射後の伸度保持率が、MD方向については80.8%であるもの、TD方向については5.6%と極めて低い伸度保持率であることから、耐UV性に劣るものであることが分かった。なお、比較例1のフッ素系樹脂積層フィルム(積層体)の機械特性が劣ることとなった要因としては、PMMA及びゴム成分を含有することの影響もあるものと推察される。
本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物は、フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物であって、フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むことを特徴とする前記の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物であることによって、太陽電池モジュールのバックシートの用途に適する伸度その他の諸特性を有し、耐久性に優れるフッ素系樹脂フィルムを効率的に形成することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明のフッ化ビニリデン重合体組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムは、単体フィルムとして、または、該フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体として、太陽電池モジュールのバックシート等の用途に適する伸度その他の諸特性を有し、耐久性に優れるフッ素系樹脂フィルムであるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (15)

  1. フッ化ビニリデン重合体100質量部に対して、無機顔料10〜50質量部を含有するフッ化ビニリデン重合体組成物であって、
    フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位を含むモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含み、かつ、
    フッ化ビニリデン重合体以外の樹脂成分を含有しない
    ことを特徴とする太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  2. フッ化ビニリデン重合体が、フッ化ビニリデン単位89〜100質量%及び他のフッ素含有コモノマー単位0〜11質量%(フッ化ビニリデン単位及び他のフッ素含有コモノマー単位の合計を100質量%とする。)を含むフッ化ビニリデン共重合体である請求項1記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  3. 他のフッ素含有コモノマーが、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  4. 無機顔料が、酸化チタンである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  5. 熱安定剤0.01〜10質量%を含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  6. 熱安定剤が、ホスファイト系安定剤である請求項5記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  7. 温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムを形成することができる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物。
  8. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ化ビニリデン重合体組成物から形成される太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルム。
  9. 温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である請求項8記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルム。
  10. 請求項8または9記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える積層体。
  11. 無機顔料を含有しないフッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層を備える請求項10記載の積層体。
  12. 温度121℃、湿度100%及び2気圧の雰囲気下で96時間静置処理した後の破断伸度の、静置処理前の破断伸度に対する比率が50%以上である請求項11記載の積層体。
  13. 請求項8または9記載の太陽電池モジュールのバックシート用フッ素系樹脂フィルムからなる層を備える太陽電池モジュール用バックシート。
  14. 請求項10乃至12のいずれか1項に記載の積層体からなる太陽電池モジュール用バックシート。
  15. 無機顔料を含有しないフッ化ビニリデン重合体の組成物から形成されるフッ素系樹脂フィルムからなる層を外表面層として備える請求項11または12記載の積層体からなる太陽電池モジュール用バックシート。
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CN114369211A (zh) * 2021-12-27 2022-04-19 万华化学集团股份有限公司 一种聚偏氟乙烯树脂组合物、制备方法及其应用

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