JP2011056701A - 太陽電池用シート及び太陽電池モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】難燃性や耐加水分解性といった耐久性に優れた太陽電池用シート、及びこれを具備する太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層による単層構成の太陽電池用シートである。また、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層12A,12bを両外層に有する複層構成の太陽電池用シートである。また、上記太陽電池用シートが設けられてなる太陽電池モジュールである。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池モジュールの保護のために用いられる太陽電池用シート及びこれを具備する太陽電池モジュールに関する。
近年、地球温暖化等の環境問題に対する意識が高まる中、特に太陽光発電については、そのクリーン性や無公害性という点から期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの中心部を構成するものである。その構造としては一般的に、複数枚の太陽電池素子(セル)を直列、並列に配線し、セルを保護するために種々パッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面を透明基材(ガラス/透光性太陽電池シート;フロントシート)で覆い、熱可塑性プラスチック(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる封止樹脂層(封止材)で間隙を埋め、裏面を裏面封止用シート(バックシート)で保護された構成になっている。
これらの太陽電池モジュールは主に屋外で使用されるため、その構成や材質構造等に種々の特性が必要とされる。上記バックシートにおいても、屋外での使用を考慮して、水蒸気や、酸素等のガスバリア性、耐久性、難燃性、寸法安定性、高い機械強度等が要求される。また、太陽電池モジュールの前面側から入射した光が、その一部につき太陽電池素子を透過した場合にも、その光が反射されて太陽電池素子に再入射し、光を有効に利用することを主目的に、光反射性が要求される。また、クリーン性や無公害性という点からは環境負荷を低減させることも求められている。さらに、ジャンクションボックスとの密着性も重要な要求特性として挙げられる。近年、上記の要求特性を満足すべく種々の層構成からなるバックシートが提案、上市されている。
上記のバックシートとしては、特許文献1では、特定のIV値を有する二軸延伸されたポリエステルフィルムからなるバックシートが提案されている。特許文献2には、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を有するポリエステルフィルム(以下「PENフィルム」ということがある)からなるバックシートが提案されている。しかし、これらのフィルムは実用的な面から、耐熱性、耐加水分解性といった耐久性や難燃性が劣ってしまう。
これらに対し、環状オレフィン共重合体フィルム(以下、「COCフィルム」ということがある)からなるバックシートが提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。特許文献5では、ポリメチルメタクリレートよりなるフィルムとCOCフィルムとの積層体からなるバックシートが提案されている。また、特許文献6では、ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層してなるバックシートが提案されている。しかしながら、このバックシートでは耐加水分解性は改良され、封止樹脂との密着性向上も期待できるが、難燃性、耐久性(特に、耐熱性)に劣るという問題がある。
また、耐候性、難燃性に優れたフッ素系樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献7及び8参照)。しかしながら、フッ素系樹脂は表面の滑り性が悪いためにシートのハンドリング性(加工性)に劣るという問題がある。さらにフッ素系樹脂は表面エネルギーが低いため隣接する層との接着性に劣り、上記ジャンクションボックスや封止樹脂との密着性に劣るという問題があった。特許文献8は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムをフッ素系樹脂からなるフィルムで挟んだバックシートを提案しているが、ポリエステルフィルムは耐加水分解性に劣るという問題があり、さらには、フッ素系樹脂からなるフィルムを外層に設けていることから、上述したフッ素系樹脂が有する問題を解消できない。
特開2007−70430号公報 特開2007−7885号公報 特開2006−294780号公報 特開2006−198922号公報 特開平8−306947号公報 特開2003−243679号公報 特許第4177590号公報 US5593532
以上から本発明は、耐久性、難燃性、耐熱性に優れるとともに、封止樹脂層やジャンクションボックス等との密着性が高い太陽電池用シート、及びこれを具備する太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
上記課題に鑑み鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明に想到し当該課題を解決した。すなわち、本発明は、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層による単層構成の太陽電池用シートである。また、本発明は、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層を両外層に有する複層構成の太陽電池用シートである。
さらに、本発明は、上記太陽電池用シートが設けられてなる太陽電池モジュールである。
本発明によれば、耐久性、難燃性、耐熱性に優れるとともに、封止樹脂層やジャンクションボックス等との密着性が高い太陽電池用シート、及びこれを具備する太陽電池モジュールを提供することができる。
本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
<太陽電池用シート>
本発明の太陽電池用シートは、太陽電池モジュールを構成するために用いられるシートであり、特に表面または裏面封止シート(フロントシートまたはバックシート)や、基板シートなどが挙げられ、特にバックシートとして好適に使用できる太陽電池用シートである。
本発明の太陽電池用シートは、ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略することがある)を主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層を有する。ここで「主成分」とは、ポリフェニレンサルファイド系樹脂層に含有される樹脂組成物のうち最大の割合を占めることを表し、下限値は特に決められないが、ポリフェニレンサルファイドが50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。この範囲であれば、耐久性、難燃性、寸法安定性及び高い機械強度、封止樹脂層等との高い密着性を達成することができる。
<ポリフェニレンサルファイド(PPS)>
次に、(I)層において、使用するポリフェニレンサルファイド(PPS)とは、下記式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上、好ましくは90モル%以上有する重合体をいう。
Figure 2011056701
上記ポリフェニレンサルファイドにおいて、繰り返し単位の20モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていてもよい。このような共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位等が挙げられ、これらのうち1つ又は2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型又はブロック型のいずれの態様であってもよい。
また、ポリフェニレンサルファイドは、分岐鎖を有した高分子でも、一部架橋構造を有した高分子であってもよいが、直鎖・線状の分子量5万以上の高分子であることが押出成形性や耐衝撃性、耐熱性、難燃性、接着性等の物性を発現する上で好ましい。
上記ポリフェニレンサルファイドに、押出成形性や耐衝撃性、耐熱性、難燃性、接着性等の物性を向上させる目的で、GPPS(汎用ポリスチレン)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、SEBS(水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SEPS(水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)等のスチレン系樹脂や、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体及びエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体等のエチレン系樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂を適量配合することが好ましい。中でも、相容性に優れるポリアミド系樹脂を配合することで、良好な物性を発現できるため好適に使用できる。
これらの添加量は、ポリフェニレンサルファイドの質量%を超えない範囲で適量配合することが好ましい。例えば、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂は1質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、この範囲で配合することにより溶融加工性、耐衝撃性を向上させることができ、また、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下の添加であれば耐熱性を低下しすぎたり、難燃性を阻害する等の問題が生じにくい。
ポリフェニレンサルファイドは単位骨格中に芳香族環と硫黄原子を有しているため、難燃性に優れた樹脂である。
さらに、臭化ビフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物難燃剤、窒素系化合物、アンチモン系化合物等の無機系難燃剤等を添加することで難燃性の向上が可能であるが、環境負荷や、難燃性の付与、機械強度の確保等の観点からリン系難燃剤の使用が好ましい。
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート等のリン酸エステル系難燃剤、芳香族縮合リン酸エステル等の縮合リン酸エステル系難燃剤、赤リン等が好ましく使用される。また、後述する押出温度を考慮すると、沸点や熱分解温度が400℃程度以上の難燃剤が好ましく、工業的に入手が容易なトリフェニルホスフェート、縮合リン酸エステル等が好適である。
これらは30質量%以下で添加されることが好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。この範囲であれば、難燃剤を添加することによって耐熱性が低下しすぎることや、溶融加工中に揮発ガスとして環境を汚染することがなく好適である。また、添加部数の下限値としては0.1質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上である。この範囲であれば、難燃性を向上させる効果が得られるため好適である。
上記の成分の他に、本発明の特徴及び効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、耐熱性や機械強度の向上ため、カーボンフィラー、ガラスフィラー、タルク、マイカ等の無機充填材、押出成形性向上のため、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、難燃性向上のため、難燃助剤、耐久性改良のため、耐候(光)性改良剤、造核剤及び各種着色剤を添加しても良い。
上述のポリフェニレンサルファイドを主成分とするポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物は、ポリフェニレンサルファイドに上述の各種成分を加えて形成されるが、あらかじめ混合されている市販品を使用することも可能である。
商業的に入手可能なポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物としては、ポリプラスチックス社製「フォートロン0220C9」、「フォートロン0220A9」、DIC社製「DIC.PPS LD10P11」、「DIC.PPS FZ2100」、「DIC.PPS Z200E5」、シェブロンフィリップス化学社製「ライトンQC160N」、「ライトンXE3202NA」等が例示できる。特にこの中でも成形性と機械物性に優れることからポリプラスチックス社製「フォートロン0220C9」が好適に使用できる。
<太陽電池用シートの製造方法>
上述した内容からなるポリフェニレンサルファイドを主成分とするポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物の形態は通常フィルム又はシート形状であり、製造方法は、従来公知の成形方法により作製することができる。各組成物は事前に混練しても、作製(製膜)時に一括して混練しても良い。
成形方法は、押出成形法、カレンダー成形法、流延成形法のいずれの方式でも良いが、薄膜品採取のし易さと生産効率の観点から、押出成形法が好ましい。
押出成形法では、いずれの組成物も、比較的高温(260℃〜320℃程度)で押出成形をすることから、成形時にメヤニや異物等の熱分解生成物を発生し、得られるフィルム又はシートの外観が損なわれ易い。対策としては、口金のリップギャップを開放し剪断速度を落とす方法や口金流路面にメッキを施す方法、金属との滑り性が良く、上記樹脂層と剥離可能な樹脂を共押出し、冷却固化後に剥離して目的のフィルム、又はシートを得る方法がある。
上記樹脂組成物を使用して押出成形を行うためには、フローテスターによって測定される上記樹脂組成物の剪断粘度が、300℃における剪断速度100sec-1のときに50Pa・s(500poise)以上が好ましく、100Pa・s(1000poise)以上がより好ましく、500Pa・s(5000poise)以上がさらに好ましい。剪断粘度がこの範囲であれば物性が劣りすぎる等の不具合を生じ難く、また、5000Pa・s(50000poise)以下が好ましく、3500Pa・s(35000poise)以下がより好ましく、2000Pa・s(20000poise)以下がさらに好ましい。剪断粘度がこの範囲であれば押出性が良好で、成形機に負荷がかかりすぎることがなく、生産性の観点から好ましい。
剪断粘度を上記の値に調整するためには、(1)使用するポリフェニレンサルファイドの分子量を調整する、(2)他成分のスチレン系樹脂やエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の成分比率を調整する、(3)難燃剤の種類と添加量を調整する、(4)その他可塑剤等を添加する手法がある。
また、ポリフェニレンサルファイドは結晶性樹脂であるため、後述する耐熱性を得るためには、結晶化処理を施すことが必要になる。この結晶化は、結晶化に適した温度(110℃〜230℃)に非晶状態のシートを処理することで達成できる。ここで、結晶化に伴う寸法変化を抑制するためには、シート端部を拘束した状態で熱処理をすることが好適である。また、結晶化速度を高めて生産性を向上させるためには、結晶化が早く進む温度(通常150℃〜190℃)に熱処理温度を調整することや、非晶状態のシートを延伸し、分子を同一方向に配向させることで達成できる。前述した押出成形を行う際は、口金から吐出した樹脂を冷却ロールで固化させる際の温度を上述の結晶化温度に設定することで、後工程を必要とせずに所望の厚みの結晶化シートを得ることができ、生産性に優れ好ましい。
本発明の太陽電池用シートは、ポリフェニレンサルファイド系樹脂層のみからなる構成でも、他の層と積層した構成でもよい。積層する場合の他の層としては、機械強度、絶縁性、耐熱性を発現するための中間層や、ガスバリア性層等が挙げられる。
(中間層)
中間層を形成することにより、太陽電池用シート全体としての厚みを増すことができ、機械強度、絶縁性、耐熱性をさらに向上させることができる。中間層に使用する樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
上記の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のオレフィン系樹脂は耐加水分解性に優れるため耐久性に優れ、また比重が軽いことからシート全体の軽量化を図れるという利点があり、ポリエステル系樹脂のうち、特に二軸延伸してなるものは非常に高い機械強度(弾性率)を有するため好ましい。フッ素系樹脂は難燃性と耐久性を兼ね備えており物性を向上させることができる。
(ガスバリア性層)
通常、シートでのガスバリア性とは、酸素バリア性、及び水蒸気バリア性を指すが、特に太陽電池では太陽電池素子の水分による性能低下を抑制するために、優れた水蒸気バリア性が要求される。太陽電池の種類、構成によってその要求水準は異なるが、水蒸気バリア性の特性である水蒸気透過率で比較した場合、もっとも普及している結晶シリコン系の太陽電池用途であれば、水蒸気透過率が10g/m2・24hr未満であることが好ましく、5g/m2・24hr未満であることがより好ましく、1g/m2・24hr未満であることがさらに好ましい。また、薄膜シリコン系、無機化合物系、有機化合物系、色素増感系等の次世代と呼ばれる太陽電池に関しては、更なる水蒸気バリア性を要求され水蒸気透過率としては0.1g/m2・24hr未満である。
このような、ガスバリア性を発現するために、要求されるガスバリア性等に応じて、下記(a)〜(e)から選択されてなることが好ましい。
(a)金属薄膜層
(b)無機薄膜層
(c)環状オレフィン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリクロロトリフルオロエチレンから選択される樹脂を主成分とする樹脂単体層
(d)平板状無機粒子を含有する樹脂層
(e)ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、及びエポキシ系樹脂から選択される樹脂を主成分とする樹脂コーティング層
このうち、(a)金属薄膜層は最もガスバリア性を発現し易い。(b)無機薄膜層は優れたガスバリア性を発現するとともに、絶縁特性、透明化ができるという利点がある。(c)樹脂単体層は成形が容易であり、金属を含まないため絶縁特性に優れる。(d)無機粒子複合化は成形が容易であり、樹脂単体より優れたガスバリア性を発現できる。(e)樹脂コーティング層は成形が容易でガスバリア性も発現し易く、絶縁特性、透明化ができるという利点がある。
以下、上記(a)〜(e)各層について説明する。
(a)金属薄膜層:
ハンドリング、入手の容易さからアルミニウム箔が好適に使用できる。厚みが20μm以上あればピンホールによるガスバリア性の低下を防止できる。
(b)無機薄膜層:
無機薄膜層を形成する基材として、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中では、フィルム物性の点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましい。なかでも、フィルム強度の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートがより好ましい。更には、耐候性、耐加水分解性の点で、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
なお、無機薄膜層を形成する基材として、耐久性、難燃性、寸法安定性、機械強度の点で、ポリフェニルサルファイド(PPS)を用いても良く、積層工程数を低減できる点などで好ましい。
無機薄膜層を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、水素化炭素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは酸化珪素、酸化アルミニウム、水素化炭素を主体としたダイアモンドライクカーボンである。特に、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
無機薄膜層の形成方法としては、蒸着法、コーティング法等の方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)等の方法が含まれる。物理気相蒸着法には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられ、化学気相蒸着法には、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
更には、上記無機薄膜層を多層化することが高いガスバリア性を厳しい環境下で長期間安定に維持、確保できる点で好ましい。その際には、公知の各種成膜方法を組み合わせても良い。例えば、真空蒸着膜/真空蒸着膜、真空蒸着膜/プラズマCVD膜、真空蒸着膜/プラズマ処理/真空蒸着膜、真空蒸着膜/プラズマCVD膜/真空蒸着膜、真空蒸着膜/Cat−CVD膜/真空蒸着膜、プラズマCVD膜/真空蒸着膜、プラズマCVD膜/真空蒸着膜/プラズマCVD膜、等の多層無機薄膜構成が挙げられる。中でも、真空蒸着膜/プラズマCVD膜の多層化は、ガスバリア性の良さ、密着性、生産性の点で好ましい。
なお、無機薄膜層/基材で構成されるフィルムを例えば公知のドライラミネート法により複数枚重ね合わせてバリア性を向上させることも可能である。
各無機薄膜層の厚さは、一般に0.1〜500nm程度であるが、好ましくは0.5〜100nm、更に好ましくは1〜50nmである。上記範囲内であれば、十分なガスバリア性が得られ、また、無機薄膜層に亀裂や剥離を発生させることなく、生産性にも優れている。
化学気相蒸着に使用し得る材料ガスは、少なくとも1種以上のガスからなることが好ましい。例えば、珪素化合物薄膜の形成においては、珪素を含む第一原料ガスに対する第二原料ガスとして、アンモニア、窒素、酸素、水素やアルゴン等の希ガスを使用することが好ましい。
珪素を含む第一原料ガスとしては、モノシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等を単独、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、原料ガスは、室温において液体でも気体でもよく、液体原料は、原料気化機により気化して装置内へ供給することができる。触媒化学気相成長法においては、加熱触媒体の劣化や反応性・反応速度の点から、モノシランガスが好ましい。
(c)樹脂単体層:
樹脂単体でガスバリア性を有する樹脂であり、結晶性を有するシートや、延伸配向したフィルムが好適に使用できる。結晶や配向によって気体の透過経路が長くなり、ガスバリア性を発現する。環状オレフィン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリクロロトリフルオロエチレンから選択される樹脂が好適に使用できる。最も好適に使用できるのはガスバリア性に優れている環状オレフィンである。
(d)平板状無機粒子を含有する樹脂層:
熱可塑性樹脂に平板状無機粒子を含有することでガスバリア性を向上することができる。平板状無機粒子としては、マイカやクレイが例示され、このような平板状の粒子を含有することで気体の透過経路が長くなり、ガスバリア性を発現できる。樹脂成分に対する含有量は通常10〜50%程度であり、樹脂と平板状無機粒子を二軸押出機で混練しながら押出成形することで、樹脂中に平板状無機粒子を均一に分散させることが出来、また生産性にも優れるために好適である。また、例えばナイロンとクレイのナノコンポジット化したものを成形し、フィルム又はシートとして好適に使用できる。
(e)樹脂コーティング層:
樹脂成分として、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、及びエポキシ系樹脂から選択される樹脂を主成分とするものであり、基材に通常の溶剤により溶解させた樹脂成分をコートすることができる。ポリ塩化ビニリデンがガスバリア性に優れており好適に使用できる。
本発明のポリフェニレンサルファイド系樹脂は単層で用いても、両外層をポリフェニレンサルファイド系樹脂層として形成し、さらに上述の中間層やガスバリア性層複層を形成した複層構成として用いても良い。表面をポリフェニレンサルファイド系樹脂層により形成することでジャンクションボックスとの長期にわたる密着性、耐久性、難燃性を発現しやすくすることができる。
複層構成として用いられる際のポリフェニレンサルファイド系樹脂層の厚みは、全体の厚みの50%を超えることが好ましく、65%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。本発明において、ポリフェニレンサルファイド系樹脂層の厚み比率が全体の厚みの50%を超えるとは、少なくとも両外層を含む各ポリフェニレンサルファイド系樹脂層の合計の厚みがシート全体の厚みの50%を超えることを意味する。
ポリフェニレンサルファイド系樹脂層を50%を超える範囲で形成することで、難燃性、耐熱性、機械強度等、厚みが影響する特性を良好に発揮することができる。
上述した各層を複層化した構成の場合、もしくはポリフェニレンサルファイド系樹脂単層の場合の全体の厚みは25μm以上であることが好ましく、50μm以上がより好ましく、75μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。厚みがこの範囲であれば機械強度が不足する等の不具合を生じがたく、また、上限値は特に決まっていないが、厚くなりすぎるとハンドリング性が低下するため、実用的には500μm以下であることが好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。
なお、ポリフェニレンサルファイド系樹脂層のみからなる構成の場合、組成の異なるポリフェニレンサルファイド系樹脂層が複数ある場合も当然構成に含まれる。
さらに、本発明の太陽電池用シートに追加して、易接着層、遮光性着色層、ハードコート層などを表面に設けても構わない。
これらの層構成からなるシートは、使用する樹脂によっては、共押出成形法によって形成することができ、また、単層のフィルムとして形成した後に、ポリウレタン系接着剤等の公知の接着剤によってドライラミネーション法により形成することができる。その際、各層との接着性を向上するため、また、封止材やジャンクションボックスとの接着性を向上させるために、コロナ放電処理等の公知の処理を施しても構わない。
上記の例示した太陽電池用シートでは、全てポリフェニレンサルファイド系樹脂層が外表面に配置されており、後述する太陽電池モジュールに付属するジャンクションボックスや、鋼板や樹脂板等の被着体との長期にわたる密着性を発現し易い。
ここで、「外表面」とは太陽電池モジュールに組み込んだ場合の外部に露出する面を意味し、「内表面」とは太陽電池モジュールに組み込んだ際の封止樹脂層に接する面を意味する。
(易接着層)
易接着層を設けることにより、封止樹脂層との密着性をより向上させることができる。易接着層は共押出、ドライラミネーション、コーティング等の公知の方法によって形成することができる。
共押出により形成する場合は、ポリオレフィン系樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンやポリプロピレン、環状ポリオレフィン)や変性ポリオレフィン系樹脂(例えば、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の共重合ビニル化合物を使用することが好ましい。
また、上述の層をそれぞれ単独で形成したのち、ドライラミネーションにより複合化しても良い。コーティングにより形成する場合は、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂を使用することが耐久性の観点から好ましい。
なお、易接着層の厚みは、共押出やドライラミネーションによって形成される場合は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましい。この範囲であれば良好な接着性を発現することができ好ましい。上限値は特に定まっていないが、150μm以下であればハンドリング性の観点から好ましい。
コーティングにより形成する場合は0.5μm以上が好ましく、1μm以上が好ましく、2μm以上が好ましい。上限値は特に定まっていないが、20μm以下であれば効率的に作製可能であり好適である。
(遮光性着色層)
遮光性着色層とは、太陽電池セルを透過した太陽光線を反射させ、発電効率を高める目的と、紫外線を反射或いは吸収させることにより太陽電池用シート構成材の紫外線劣化を防ぎ、シートの耐候性、耐久性、耐熱性、熱的寸法安定性、強度等の諸特性を向上させる目的で、通常、太陽電池用バックシートとして、封止樹脂層に接する側の構成材として用いられるものである。
特に、太陽光を光反射させ、太陽電池を通過した光を再利用することで発電効率を向上させる点においては、白色化による遮光性付与が有効である。
また更に、黒色化、青色化を始めとする各種着色による遮光性付与により太陽電池モジュールの意匠性、装飾性を向上させることができる。
なお、遮光性着色層における「光反射」には、光反射とともに光散乱も包含する。
遮光性着色層によって、光線を反射あるいは吸収させ、紫外線劣化を防ぐ目的のためには、300nm〜400nmの波長領域の光線透過率の最大値が10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。
また、光反射によって発電効率を向上させるためには、一般的な太陽電池の吸収強度のある500nm〜700nmにおける反射率の平均値が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
遮光性着色層の着色方法としては、着色剤として顔料を分散添加する方法及び/又は基材に非相溶なポリマーや微粒子を添加し、フィルム延伸時にブレンド界面で空隙、気泡を形成させる方法を用いることができる。
遮光性着色層を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
なお、遮光性着色層を構成する基材として、ポリフェニルサルファイド(PPS)を用いても良い。
上記樹脂の中でも、高い耐熱性、強度、耐候性、耐久性、水蒸気等に対するガスバリア性を有するポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂が好ましい。特にポリエステル系樹脂からなる層は、銀蒸着などが容易で反射率を高める機能を付加し易く、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムは、耐加水分解性や耐候性が高く、経時安定性に優れ、且つ太陽電池モジュールの封止樹脂層との熱溶融接着性が良好であるという特徴を有する。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えばポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂の中でも、耐熱性、耐候性等の諸機能面及び価格面のバランスが良好なポリエチレンテレフタレートが特に好ましく用いられる。また、ポリエステルの黄変を防ぐためにフィルム表面処理を施したものも好ましく用いられる。
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエン及びその誘導体、ジシクロペンタジエン及びその誘導体、シクロヘキサジエン及びその誘導体、ノルボルナジエン及びその誘導体等の環状ジエンを重合させてなるポリマー、当該環状ジエンとエチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン系モノマーの1種又は2種以上とを共重合させてなるコポリマー等が挙げられる。これらの環状ポリオレフィン系樹脂の中でも、強度、耐熱性、耐候性等に優れるシクロペンタジエン及びその誘導体、ジシクロペンタジエン及びその誘導体又はノルボルナジエン及びその誘導体等の環状ジエンのポリマーが好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体、及びこれらの混合物が挙げられる。
また、上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンの共重合体、リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー、及びこれらの混合物が例示できる。
プロピレンの共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、またはブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。前記プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜30質量%程度である。
着色に用いる顔料としては、白色顔料、黒色顔料等が好ましく挙げられる。白色顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば炭酸カルシウム、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸鉛、硫酸バリウム、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポンなどを使用することができる。酸化チタンとしては、ルチル型の方がアナターゼ型よりも光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制するのに適していることから好ましい。上記白色顔料の中でも、安定性、非重金属化合物の点から、ルチル型酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよび二酸化珪素からなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機微粒子が好ましい。
結晶シリコン型太陽電池は、温度が上がるにつれ発電効率が下がることが知られている一方で、色素増感型太陽電池では室温付近に発電効率のピークが存在するため、バックシートが光を吸収することで発電効率を向上させることが出来ると言われている。
結晶系太陽電池は、単結晶であれば黒色に近い色調を示し、多結晶であれば青色に近い色調を示す。そのため、バックシートが白色だと、モジュール全体が格子状に見え、意匠性が損なわれることがある。そこで、バックシートを黒色化、あるいは青色化することによってモジュール全体が一体化して見え、意匠性を高めることが出来る。
その他、赤色や黄色等とすることにより意匠性を高めることが出来る。
黒色化するには、カーボンブラック、黒色酸化鉄などが用いられる。長期安定性などの観点から、カーボンブラックが好ましく用いられる。その他の色(青色、赤色、黄色等)を発現させるためには、染料や顔料を添加させること上述した樹脂に添加することが挙げられるが、長期安定性の観点から顔料の添加のほうが好ましい。
(ハードコート層)
また、太陽電池モジュールとして形成されるときに外表面となる側に、耐擦傷性や防汚性等の表面特性を発現させるために公知のハードコート処理や防汚処理を施しても構わない。
上述した内容の層構成からなる太陽電池用シートでは、難燃性に優れているポリフェニルサルファイド系樹脂を使用することで、シート全体での難燃性を向上することができる。難燃性を有することで、火災が発生した際の延焼を防止することができる。難燃性の評価は燃焼試験による燃焼挙動によって判断される。
ポリフェニレンサルファイドは、前述のとおり難燃性に優れる樹脂であり、さらに難燃性を向上するためにはポリフェニレンサルファイド系樹脂層中のポリフェニレンサルファイドの含有量を上げる、難燃剤の添加量を上げる、滑剤等成分を少なくする方法があり、さらにはポリフェニレンサルファイド系樹脂層厚みの全体に対する厚み比率を大きくする等の方法がある。
太陽電池用シートは、外部環境にさらされるため、太陽電池素子を長期間安定して保護するためには、耐久性の1つである耐加水分解性が必要になる。これは、任意の環境下における促進評価後の物性を測定することで評価される。耐加水分解性を付与するには、(添加剤等の)低分子量成分を少なくしたり、加水分解性を有する組成(ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等)を少なくしたりすればよい。また、加水分解防止剤(カルボジイミド等)を混合することも可能である。
引張弾性率や引張破断伸度等で代替される機械強度は、モジュール形成工程におけるハンドリング性や、モジュール設置後の外部衝撃からの太陽電池素子の保護等のために必要となるが、これ付与するには太陽電池用シートの厚みを大きくしたり、エラストマー等の耐衝撃性を有する成分を層中に添加したりすればよい。
また、一般的な封止樹脂である架橋EVAは、架橋工程が150℃程度で、30分ほどである。従って、太陽電池モジュール形成工程においてトラブルを回避するためには、耐熱性を有し、寸法変化が小さいことが必要となる。この耐熱性を発現するためには、前述の通りポリフェニレンサルファイドの結晶化度を向上させることが有効であり、また、ポリフェニレンサルファイドの含有量を上げること、さらに、荷重たわみ温度を低下させる難燃剤や可塑剤等の添加量を下げたり、無機充填材を配合したりすることも有効である。
また、表面の滑り性を向上させ、モジュール組み立て時や施工時のハンドリング性を向上させる目的で、表面に凹凸を形成する処理を施しても良い。表面に凹凸を形成するためには、フィルム成形時にエンボスを施す方法や、表面層にシリカやタルク等の無機粒子を入れる方法、無機粒子を含有する層を共押出して、冷却固化後に剥離する方法等、任意の手段を用いて構わない。もちろん、意匠性等の観点からコーティング等公知の手法を用いて表面を平滑化しても良い。
また、ポリフェニレンサルファイドは汎用エンプラとして大量に供給されているため、今後の需要の増加が予想される太陽電池用途として、今後さらに消費量が拡大しても供給安定性を有するという点でも好ましい。
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、既述の本発明の太陽電池用シートが設けられてなる。具体的には、図1に示すように、太陽光受光側から順に、透明基板10、封止樹脂層12A、太陽電池素子14A,14B、封止樹脂層12B、本発明の太陽電池用バックシート16が積層されてなり、さらに、太陽電池用バックシート16の下面にジャンクションボックス18(太陽電池素子から発電した電気を外部へ取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子14A及び14Bは、発電電流を外部へ電導するために配線20により連結されている。配線20は、太陽電池用バックシート16に設けられた貫通孔(不図示)を通じて外部へ取り出され、ジャンクションボックス18に接続されている。
太陽電池モジュールは内部へ水分が浸入すると劣化が生じるため、ジャンクションボックスのような付属品を取り付ける際には、太陽電池モジュールの内部に外気が侵入することのないよう、シール性を十分に確保する必要があるが、本発明の太陽電池用シートによれば、後述するシリコンシーラント等で接着できるため、容易で確実に外気の浸入を防ぐことが可能となる。
ここでジャンクションボックス18と太陽電池用バックシート16との接着方法としては、シリコンやエポキシ等のシーラントで接着する方法、発泡EPDMラバーにアクリル粘着剤を塗布した粘着テープ等で接着する方法、ネジ等を用いて機械的に接着する方法などが挙げられるが、作業工程の簡便さと長期接着性からシリコンシーラントによる接着が一般的である。
透明基板としては、ガラス又はプラスチックのシート及び/又はフィルムが使用される。プラスチックの場合は、ガスバリア性を付与する目的で、これに当該太陽電池用バックシートを構成するガスバリア性フィルムと同様にして無機薄膜を形成したり、耐熱性、耐候性、機械強度、帯電性、寸法安定性等を改良する目的で、架橋剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、強化繊維、難燃剤、防腐剤等を添加したり、また、これに各種シート及び/又はフィルムを積層することができる。透明基板の厚みは、強度、ガスバリア性、耐久性等の点から適宜設定できる。
<太陽電池素子>
太陽電池素子は、封止樹脂層間に配置され配線される。例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、各種化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型等が挙げられる。
<太陽電池モジュールの製造方法>
太陽電池モジュールの製造方法としては、特に限定されないが、一般的に、透明基板、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、太陽電池用バックシートの順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。
太陽電池モジュールは、当該太陽電池用シートの優れた耐久性、難燃性、寸法安定性及び高い機械強度により、小型、大型や屋内、屋外に関わらず各種用途に好適に使用できる。
PPS:ポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物(ポリプラスチックス社製「フォートロン0220C9」、300℃、100sec-1における剪断粘度520pa・s)を用い、φ65mm押出機、バレル設定温度240〜300℃に設定し、1150mm巾単層口金(設定温度300℃)で押出、150℃に設定したキャストロールで冷却固化し、キャストロールの速度を調整することで、100μmの厚みの結晶化シートを作製した。
PET:ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム(東レ社製 ルミラーX10S、厚み50μm)。
PEN:ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム(帝人デュポン社製 テオネックスQ51C、厚み25μm)。
COC:環状オレフィンコポリマー(COC)樹脂フィルム(ポリプラスチックス社
製 TOPAS、厚み50μm)。
ETFE:ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)樹脂フィルム(旭硝子社製 アフレックス、厚み25μm)。
太陽電池用シートを構成する上記フィルムを用いて下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
・耐熱性
100mm×100mm角にサンプルを切り取り、150℃に設定した循環式オーブン中で30分サンプルを処理した後、寸法変位量の原寸に対する割合の絶対値%値で測定し、フィルムの長手方向と直行方向のいずれか大きいほうの値を記し、下記基準で評価した。
○:1.0%以下
△:1.0%を超え3.0%以下
×:3.0%を超える
・耐久性
高度加速寿命試験機(プレッシャークッカー試験機;エスペック製EHS−211M)中、温度120℃、湿度100%、2気圧の条件にて144時間サンプルを処理し、取り出したサンプルの引張破断応力値をJISK7127に準じて、温度23℃、試験速度200mm/分の条件で測定した。
初期の測定値に対する加速試験後の測定値の割合を%値で測定し、下記基準で評価した。
○:保持率が80%以上
△:保持率が50%以上80%未満
×:保持率が50%未満またはサンプル形状を維持できない
・難燃性
長さ200mm×幅50mmに試験片を切り出し、巾方向に円筒状にまき、側面を接着テープで固定した。この円筒をクランプで垂直に固定しクランプを用いて垂直にサンプルを固定し、ガスバーナを用いて20mm炎を下端に3秒間接炎を2回実施し、以下の判断基準に基づいてその難燃性を評価した。
○:燃焼持続時間が30秒以内で、溶融樹脂の滴下がない
×:燃焼持続時間が30秒を超える、あるいは溶融樹脂の滴下がある
・ジャンクションボックス接着性
サンプル表面にシリコンシーラント(モメンティブ社製「TSE392」)を塗布(乾燥後膜厚み:500μm)し、その密着力を評価した。
○:良好に密着している
×:浮きや剥がれがある。または、密着しているが容易に剥がれる
Figure 2011056701
実施例1から明らかなように、PPSを用いることで耐熱性、耐久性、難燃性、ジャンクションボックス接着性に優れることが分かる。比較例1、2からPET、PENのポリエステル系樹脂を用いると耐久性、難燃性に劣ることが分かる。比較例3からCOCを用いると難燃性に劣ることが分かる。比較例4からETFEを用いるとジャンクションボックス接着性に劣ることが分かる。
10・・・透明基板
12A,12B・・・封止樹脂層
14A,14B・・・太陽電池素子
16・・・太陽電池用バックシート
18・・・ジャンクションボックス
20・・・配線

Claims (6)

  1. ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層による単層構成の太陽電池用シート。
  2. ポリフェニレンサルファイドを主成分とする樹脂組成物からなるポリフェニレンサルファイド系樹脂層を両外層に有する複層構成の太陽電池用シート。
  3. 前記ポリフェニレンサルファイド系樹脂層の厚み比率が全体の厚みの50%を超える請求項2に記載の太陽電池用シート。
  4. リン系難燃剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用シート。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用シートが設けられてなる太陽電池モジュール。
  6. 太陽電池用シートの一方の面にジャンクションボックスが接着されてなる請求項5に記載の太陽電池モジュール。
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