JP2016166455A - メタンハイドレートのガス化装置及び水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法 - Google Patents

メタンハイドレートのガス化装置及び水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、メタンハイドレートの分解に要する熱エネルギーを少なく抑えることを可能にして高コスト化を抑制し、また、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることにある。【解決手段】水底12に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置10であって、室内に第1熱媒体6を入れることが可能で且つ水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入ることが可能な第1室体2と、第1室体2を水中に浮かせる浮かせ機構部4と、第1室体2内の第1熱媒体6を加熱する加熱部40と、第1室体2内でメタンハイドレートが分解して生成するメタンガスの取り出し部28とを備えることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、海底や湖底等の水底に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置及び水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法に関するものである。
従来、水底に在るメタンハイドレートを回収するに際して、水底に在るメタンハイドレートを水底付近で分解してメタンガスに変え、該メタンガスの状態で海面上に回収する装置及び方法が提供されている(特許文献1)。
また、メタンハイドレートをスラリー状態にして海面上に揚収する装置及び方法が提供されている(特許文献2)。
特開2006−46009号公報 特開2014−201875号公報
特許文献1の技術では、水底に在るメタンハイドレートを水底付近で分解するため、その分解のために供給する熱エネルギーは過大となり、高コスト化する問題があった。
また、特許文献2の技術では、メタンハイドレートをスラリー状態にして海面上まで長尺な管内を揚収するので、その揚収の途中でメタンハイドレートが固まって閉塞する虞があった。また、水深400m付近から海水の温度及び圧力がメタンハイドレートの相平衡において分解側になるので、スラリー状態のメタンハイドレートは分解しつつ海面上まで揚収されることになり、揚収を安定して制御するのが困難であった。これらによりメタンガスの回収効率を高めることが難しいという問題があった。
本発明の目的は、メタンハイドレートの分解に要する熱エネルギーを少なく抑えることを可能にして高コスト化を抑制し、また、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることにある。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、水底に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置であって、室内に第1熱媒体を入れることが可能で且つ水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入ることが可能な第1室体と、前記第1室体を水中に浮かせる浮かせ機構部と、前記第1室体内の前記第1熱媒体を加熱する加熱部と、前記第1室体内で前記メタンハイドレートが分解して生成するメタンガスの取り出し部とを備えることを特徴とする。
ここで、「水底」とは、水が在る場所の底の部分を意味し、海洋であれば海底、湖であれば湖底である。
また、「第1熱媒体」とは、メタンハイドレートと接触して熱を与えることで分解できる流体である。この第1熱媒体として、海洋であれば海水、湖であれば湖水を利用できるが、前記海水や湖水以外の他の淡水、真水、汽水等を利用してもよい。
また、「水中に浮かせる」とは、水底に位置する状態ではなく水面に位置する状態でもなく、水底と水面の間に浮いている状態を意味する。
本態様によれば、メタンハイドレートの塊を熱分解する第1室体を水底でもなく水面でもない水底と水面の間の水中に浮かせる。この水中に浮かせた第1室体内に水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入り、室内で第1熱媒体との接触によって熱の供給を受けてメタンハイドレートが分解される。
第1室体が浮いている水中の位置では、海底等の水底よりも水温は高く水圧は低い。そのためメタンハイドレートの分解に必要な熱エネルギーは、水底よりも少なくて足り、以って高コスト化を抑制することができる。
また、メタンハイドレートの塊を揚収する範囲は、水中に浮かせた第1室体の位置までであり、水面までの揚収は行わない。従って、揚収の途中でメタンハイドレートが固まって閉塞する虞を低減することができる。また、水面上まで揚収しないので揚収途中での分解に伴う揚収の不安定化を低減することが可能となる。これにより、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることができる。
本発明の第2の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様において、前記第1室体の室内に気液界面ができる圧力を付与する圧力調整部を備えることを特徴とする。
ここで、「気液界面ができる圧力を付与する」における付与する「圧力」は、第1室体が位置する水深の水圧である。
本態様によれば、圧力調整部によって第1室体の室内に気液界面が存在する状態でメタンハイドレートの加熱分解がおこなわれる。これにより、安定した分解を実現することができ、またメタンハイドレートの分解で生成したメタンガスと水は気液界面のそれぞれに分かれるので、分解生成メタンガスの第1室体内からの分離回収を容易に行うことができる。
本発明の第3の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第2の態様において、前記圧力調整部は、前記取り出し部から室外に出たメタンガスを回収先に送る取り出しラインに設けられていることを特徴とする。
ここで、「回収先」とは、メタンガスを貯留するタンク等の貯留設備や、メタンガスを燃料として利用するガスタービン等のガス燃料利用設備を含む意味で使われている。
本態様によれば、圧力調整部は、前記取り出し部から室外に出たメタンガスを回収先に送る取り出しラインに設けられているので、第1室体内に気液界面ができるように付与した圧力より高くなった分(メタンハイドレートの分解で発生したメタンガスの量に対応する)をリリーフバルブ等を利用して容易に回収先に送ることができる。
本発明の第4の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、前記第1熱媒体は、前記メタンハイドレートが在る水底に連なる水域の水であることを特徴とする。
ここで、「メタンハイドレートが在る水底に連なる水域の水」とは、例示的に説明すると、海洋であればメタンハイドレートが存在する海底を有する海の水(海水)である。
本態様によれば、メタンハイドレートのガス化装置を設置する水中の水を第1室体内に入れることで、メタンハイドレートに分解用の熱を供給するための第1熱媒体として利用することができる。即ち、第1熱媒体の調達が容易である。
本発明の第5の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様又は第4の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が前記第1室体の室内に入る経路とは別に、室内の第1熱媒体を室外に排出可能な排出部を備えることを特徴とする。
第1室体内においてメタンハイドレートが分解することでメタンガスと水が生成するが、該水はメタンハイドレート由来の水である。また基本的に淡水である。
本態様によれば、メタンハイドレートの塊が第1室体内に入る経路と別に、第1室体内の第1熱媒体を室外に排出可能な排出部を備えているので、メタンハイドレート由来の水を別途処理する場合に当該排出部から室外に出して回収することで、別の処理を行うことが可能となる。また、別の処理をする必要がない場合は、排出部から室外の水中に排出することで、新たな第1熱媒体の利用が可能となる。
本発明の第6の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、前記第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を室内に導く導入部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
本態様によれば、第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を室内に導く導入部を備えるので、メタンハイドレートを第1室体内に安定して入れることができる。この導入部としては、ベルマウス等が挙げられる。
また、第1室体内でメタンハイドレートの分解で生じた水は、その室内は気液界面ができる圧力に保持されている場合には、液面を上昇させることなく、当該導入部の下端部において外部に押し出される。別の言い方では、第1室体内では、前記気液界面が存在する状態の下で、メタンハイドレートは当該導入部内を浮力で上昇して第1室体内に入るが水はほとんど入り込まない状態でメタンハイドレートが熱で分解され、メタンガスと水が生じると言える。
本発明の第7の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊は、量調整部によって導入量が調整されて前記第1室体内に入るように構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、メタンハイドレートの塊は量調整部によって導入量が調整されて第1室体内に入るので、第1室体内におけるメタンハイドレートの分解を安定して行うことができる。
本発明の第8の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、前記浮かせ機構部は、前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせるように構成されていることを特徴とする。
水温および水圧がメタンハイドレートの生成条件を満たす水深では、メタンハイドレートは分解しない。地域や周辺環境、海の場合は海流等により異なるが、一般的に、メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界は約400mである。
水深が深くなるほど低温、高圧条件となるので、400mより深い領域(メタンハイドレートの生成条件を満たす領域)において、水深が深くなるほどメタンハイドレートの分解に必要なエネルギーは多くなり、水深400m付近(メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界)に近づくほど前記エネルギーは少なくて足りる。
本態様によれば、浮かせ機構部は、前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせるように構成されているので、前記メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界付近に前記第1室体を浮かせることができる。従って、前記第1室体内におけるメタンハイドレートの分解のために第1熱媒体を介して与える熱量を、少なく抑えることができる。以上から、本発明の効果を最も効果的に得ることができる。
本発明の第9の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、前記加熱部は、第2熱媒体を循環する循環ラインと、前記循環ラインに設けられ前記第2熱媒体に熱を与える熱交換部と、を備えることを特徴とする。
「第2熱媒体」は、循環ラインを流通できる流体である。流体の一例としては海水、湖水等の水等の液体や、空気等の気体が挙げられる。前記流体は、海洋であれば海水、湖であれば湖水を利用できるが、前記海水や湖水以外の他の淡水、真水、汽水等を利用してもよい。
本態様によれば、加熱部は、第2熱媒体を循環する循環ラインと、前記循環ラインに設けられ前記第2熱媒体に熱を与える熱交換部とを備えて構成されるので、第1熱媒体を加熱する加熱部を構造簡単にして実現することができる。
本発明の第10の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置において、前記第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を該第1室体に誘導する筒状ネットを直接又は他部材を介して取り付け可能に構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、水面上から水底までの全長にわたって管体を延設する必要がないので、各構成部材の設置が容易になると共にコストダウンを図ることができる。
前述したように、メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界である約400mより浅い所ではメタンハイドレートが分解を始めるので、分解により生成したメタンガスがネットの目穴から逃げてしまい、メタンガスの回収効率が低下する。しかし、400m以深であればメタンハイドレートは分解しない。よって400m付近に第1室体を浮かせれば、400m以深では筒状ネットで足り、無駄がない。
本発明の第11の態様に係るメタンハイドレートのガス化装置は、第1の態様又は第10の態様のガス化装置において、前記ガス化装置が、移動機構によって水中を移動可能に構成されていることを特徴とする。
水底におけるメタンハイドレートの存在状態は一つの場所に在るというより点在しているのが通常である。
本態様によれば、前記ガス化装置は移動機構によって水中を移動可能であるので、一つの場所で水底のメタンハイドレートの分解回収が終わったら、別の場所へ容易に移動して、その場所で水底のメタンハイドレートの分解回収を始めることができる。
本発明の第12の態様に係る水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法は、水底に在るメタンハイドレートを塊の状態で上昇させて水中に位置する第1室体内に受け入れるメタンハイドレートの上昇工程と、前記第1室体内でメタンハイドレートを加熱した第1熱媒体と接触させて分解する分解工程と、前記分解工程で生成したメタンガスを第1室体内から取り出して回収するメタンガス回収工程とを有することを特徴とする。
ここで、「分解工程」におけるメタンハイドレートの分解は、前記第1室体の位置する水深に対応する圧力の下で行われるものである。
本態様によれば、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置における作用効果と同様の作用効果を奏する。
本発明の第13の態様に係る水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法は、第12態様において、前記第1室体の室内に気液界面ができる圧力を付与した状態でメタンハイドレートを分解することを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様のメタンハイドレートのガス化装置における作用効果と同様の作用効果を奏する。
本発明の第14の態様に係る水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法は、第12態様又は第13の態様において、前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせることを特徴とする。
本態様によれば、第8の態様のメタンハイドレートのガス化装置における作用効果と同様の作用効果を奏する。
本発明に係るメタンハイドレートのガス化装置の一例を示す概略構成図。 加熱部の構成の一例を説明する図。 本発明に係るメタンハイドレートのガス化装置の他の一例を示す概略構成図。
[実施例1]
<メタンハイドレートのガス化装置の概略構成および水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法>
水底に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置の概略構成について、図に基づいて説明しつつ、当該ガス化装置による水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法について説明する。図1は、本発明に係るメタンハイドレートのガス化装置の一例を示す概略構成図である。図2は、加熱部の構成の一例を説明する図である。
図1に示すように、本実施例では水底としての海底12の表層型のメタンハイドレート層14から、メタンガスを回収する場合について説明する。
メタンハイドレートのガス化装置10(以下、単にガス化装置10という場合がある)は、水中に設けられる第1室体2と、第1室体2を水中18に浮かせる浮かせ機構部4を備えている。
第1室体2は、室内に第1熱媒体6を入れることが可能で、且つ水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入ることが可能に構成されている。
第1熱媒体6は、メタンハイドレートと接触して熱を与えることで分解できる流体である。第1熱媒体6としては、メタンハイドレート層14が在る水底に連なる水域の水、すなわち、メタンハイドレート層14が在る海底12と同じ海の水を用いることが望ましい。このことにより、第1熱媒体6を容易に調達することができる。尚、前記海の水以外の水を利用することももちろん可能である。
尚、メタンハイドレート層14は、例えば爆薬等による発破によって砕き、塊状のメタンハイドレートを水底から分離することができる。また、ドリルやバケット等を備えた掘削機による掘削によって、メタンハイドレート層14を塊状のメタンハイドレートに砕くこともできる。海底12のメタンハイドレート層14から分離されたメタンハイドレート(図中のMGH)の塊が水中を上昇して、第1室体2に受け入れられる。第1室体2は、その下方にメタンハイドレートの塊を受け入れる受け入れ部36を有している。受け入れ部36には、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を室内に導く導入部34が設けられている。導入部34については後に詳述する。
また、第1室体2は、その室内の第1熱媒体6を加熱する加熱部40を備えている。加熱部40によって加熱された第1熱媒体6との接触によって、第1室体2内に受け入れられたメタンハイドレートの塊が分解し、メタンガスが生成する。尚、加熱部40の構成については後に更に詳述する。
第1室体2の上方には第1室体2内でメタンハイドレートが分解して生成するメタンガスの取り出し部28が設けられており、取り出し部28から取り出されるメタンガスは、取り出しライン32により送られて、例えば、回収先としてのメタンガス回収船16において回収される。取り出しライン32としては、アンビリカルケーブル等の可撓性を有するケーブルを用いることができる。
以上のように、水底と水面の間に浮いている状態の第1室体2において、水底メタンハイドレートから分離したメタンハイドレートの塊を分解してメタンガスを回収することにより、以下の作用効果が得られる。
すなわち、メタンハイドレートのガス化装置10において、水中に浮かせた第1室体2内に、メタンハイドレート層14から分離されて水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を受け入れ(上昇工程)、その室内で第1熱媒体と接触させることによりメタンハイドレートを加熱して分解させる(分解工程)ことができる。
第1室体2が浮いている水中の位置(海底12と海面15の間の位置)では、海底12よりも水温は高く水圧は低い。そのためメタンハイドレートの分解に必要な熱エネルギーは、海底12おいて必要な熱エネルギーよりも少なくて足り、以って高コスト化を抑制することができる。
また、メタンハイドレートの塊を揚収する範囲は、水中に浮かせた第1室体2の位置までであり、海面15までの揚収は行わない。第1室体2における前記分解工程で生成したメタンガスは、第1室体2の取り出し部28から取り出され、取り出しライン32を介して回収先に回収される(メタンガス回収工程)。
従って、メタンハイドレートの塊の揚収の途中でメタンハイドレートが固まって、揚収管等が閉塞する虞を低減することができる。また海面15上まで揚収しないので、揚収途中での分解に伴う揚収の不安定化を低減することが可能となる。これにより、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることができる。
<メタンハイドレートのガス化装置の他の構成>
また本実施形態において、浮かせ機構部4としては、バラストタンク20が用いられている。バラストタンク20内のバラスト水22の量を調整することによって、第1室体2を浮かせる水深位置を変えることができる。バラスト水22としては、メタンハイドレート層14が在る水底に連なる水域の水、すなわち、メタンハイドレート層14が在る海底12と同じ海の水を用いることが望ましい。
浮かせ機構部4(バラストタンク20)によって、その水域において適切な水深に第1室体を浮かせてメタンハイドレートの分解を行うことができる。
例えば、メタンハイドレートの生成条件を確実に満たす水深(例えば水深500m)に第1室体2を浮かせることで、海底12から分離したメタンハイドレートをほとんど分解無しの状態で第1室体2内に入れ、第1室体2内で第1熱媒体を介して与える熱量を増減調整することで、分解生成するメタンガスの量を増減調整することができる。
浮かせ機構部4は、第1室体2を水深300mから500mの範囲内に浮かせるように構成し、水深300mから500mの範囲内のメタンハイドレートの生成条件を満たす水深において、第1室体2内におけるメタンハイドレートの分解を行うとよい。
既述の通り、メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界は約400mである。また、その約400mより深い領域において、水深が深くなるほどメタンハイドレートの分解に必要なエネルギーは多くなり、水深400m付近に近づくほど前記エネルギーは少なくて足りる。
よって、第1室体2をメタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界付近に浮かせることにより、第1室体2内におけるメタンハイドレートの分解のために第1熱媒体6を介して与える熱量を少なく抑えることができ、より省エネルギーに水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収を行うことができる。
また第1室体2には、第1室体2の深さ方向の位置を調整する浮かせ機構部4に加え、第1室体2の水平方向の位置を調整可能なスラスター24等の推進器が設けられている。これにより、第1室体2を所望の位置に水平移動させることができる。また、第1室体2が設けられる水域の流れが速い場合には、スラスター24の推進力によって前記流れに抗し、第1室体2の水平位置を保持させることができる。
更に、第1室体2の室内に気液界面52ができる圧力を付与する圧力調整部26を備えている。圧力調整部26によって第1室体2の室内に、第1室体2が位置する水深の水圧とほぼ同じ圧力を付与することによって、その室内に気液界面52ができる。
このことにより、第1室体2の室内に気液界面52が存在する状態でメタンハイドレートの加熱分解がおこなわれ、安定した分解を実現することができる。またメタンハイドレートの分解で生成したメタンガスと水は気体側と液体側のそれぞれに分かれるので、分解生成メタンガスの第1室体2内からの分離回収を容易に行うことができる。
圧力調整部26は、取り出し部28から室外に出たメタンガスを回収先(本実施形態におけるメタンガス回収船16)に送る取り出しライン32に設けられていることが望ましい。このことによって、第1室体2内に気液界面52ができるように付与した圧力より高くなった分(メタンハイドレートの分解で発生したメタンガスの量に対応する)を、リリーフバルブ等を利用して容易に回収先に送ることができる。
また既述の通り、第1室体2は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を室内に導く導入部34を備えている。本実施形態においては、受け入れ部36に連なる筒状体であって、下方側がベル状に広がった形状のベルマウス30が導入部34として設けられている。
ベルマウス30等の導入部34によって水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を受け入れ部36に誘導することにより、メタンハイドレートを第1室体内に安定して入れることができる。
尚、本実施形態において、第1室体2内でメタンハイドレートの分解で生じた水は、その室内が気液界面52ができる圧力に保持されているので、液面を上昇させることなく、ベルマウス30の下端部において外部の海中18に押し出される。換言すると、第1室体2内に気液界面52が存在する状態の下では、第1室体2内において、メタンハイドレートの塊は導入部34内を浮力で上昇して入るが、水はほとんど入り込まない状態でメタンハイドレートが熱で分解され、メタンガスと水が生じると言える。
また第1室体2には、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が第1室体2の室内に入る経路(受け入れ部36と導入部34)とは別に、室内の第1熱媒体6を室外に排出可能な排出部38を設けることができる。
第1室体2内においてメタンハイドレートが分解することでメタンガスと水が生成する。生成した水はメタンハイドレート由来の水であり、基本的に淡水である。
ここで、第1室体2内においてメタンハイドレートの分解を続けると、メタンハイドレート由来の水が生成することにより第1室体2内の海水の成分濃度は薄くなる。
このメタンハイドレート由来の水を含む海水を別途処理する場合に、排出部38から室外に出して回収することで、別の処理を行うことが可能となる。また、別の処理をする必要がない場合は、排出部38から室外の水中に排出することで、新たな第1熱媒体6の利用が可能となる。
室内の第1熱媒体6(海水)を加熱する加熱部40は、例えば図2に示すように、第2熱媒体42を循環する循環ライン44と、循環ライン44に設けられ、第2熱媒体42に熱を与える熱交換部46とによって構成することができる。第2熱媒体42としても、調達が容易な、メタンハイドレート層14が在る海底と同じ海の水を用いることができるが、前記海の水以外の水を利用することももちろん可能である。
このように加熱部40を構成することによって、構造簡単にして第1熱媒体の加熱を実現することができる。また、近隣に排熱が生じる設備や施設等がある場合には、その排熱を利用して熱交換部46から第2熱媒体42に熱を与えることができる。
例えば、本実施形態における回収先としてのメタンガス回収船16のディーゼルエンジン48からの排熱54を利用することができる(図2を参照)。また、回収先がメタンガスを燃料として利用するガスタービン等のガス燃料利用設備である場合には、ガス燃料利用時の排熱を利用することができる。また、回収先以外から出る排熱を用いてもよい。
尚、第1熱媒体6の加熱は、第2熱媒体が循環する循環ライン44によるものに限られず、第1室体2内の第1熱媒体6をヒーター等により直接加熱するように構成することもできる。
また第1室体2には、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を該第1室体2に誘導する筒状ネット50が設けられている。
筒状ネット50は、第1室体2に直接取り付けられるように構成されていてもよく、また、他部材(例えば、ベルマウス30)を介して取り付ける構成でもよい。
従来、水底においてメタンハイドレートを分解して生成したメタンガスを回収する場合や、メタンハイドレートを含むスラリーを揚収する場合には、回収したメタンガスや前記スラリーを送る管体を、水底(海底12)から水面(海面15)上までの全長にわたって延設していた。
しかし、本実施形態においては、筒状ネット50を設けることにより、メタンハイドレートの塊を誘導する管体を水面上から水底までの全長にわたって延設する必要がないので、各構成部材の設置が容易になると共にコストダウンを図ることができる。
尚、メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界である約400mより浅い所ではメタンハイドレートが分解を始めるので、分解により生成したメタンガスがネットの目穴から逃げてしまい、メタンガスの回収効率が低下する。
しかし、第1室体2をメタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界である約400m以深に浮かせる場合には、筒状ネット50が設けられる水深においてメタンハイドレートは分解しないので、タンハイドレートの塊の誘導は筒状ネット50で足り、無駄がない。
更に、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊は、導入量が調整されて第1室体2に入るように構成されていることが好ましい。
例えば、発破等によりメタンハイドレート層14を塊状のメタンハイドレートにした場合には、一度に多量のメタンハイドレートの塊が水中を上昇する虞がある。そのような場合には、例えば筒状ネット50内における海底12寄りの位置に、発破によってできたメタンハイドレートの塊の上昇を一旦塞き止める補助ネット56等を量調整部として設け、補助ネット56を少しずつ外して上昇させるメタンハイドレートの塊の量を調整することによって第1室体2に入るメタンハイドレートの塊の導入量を調整する。
これにより、メタンハイドレートの塊の導入量が調整されて第1室体2内に入るので、第1室体2内におけるメタンハイドレートの分解を安定して行うことができる。
[実施例2]
実施例2では、図3に基づき、メタンハイドレートのガス化装置の他の実施形態について説明する。図3は、本発明に係るメタンハイドレートのガス化装置の他の一例を示す概略構成図である。
尚、本実施例において実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その構成の説明は省略する。
本実施形態に係るメタンハイドレートのガス化装置60は、移動機構によって水中を移動可能に構成されている点が特徴である。
具体的には、第1室体2は、海上(水上)を移動可能なプラットフォーム62等の移動機構64により牽引可能に接続可能な接続部66を備え、接続部66によりプラットフォーム62と第1室体2とが接続された状態で牽引されることにより、移動可能に構成されている。
本実施形態においてプラットフォーム62は、メタンガスを回収する回収先でもある。
ガス化装置60が水底メタンハイドレートの在る場所に移動した後、接続部66の接続状態を解除した状態で、第1室体2を浮かせる水深位置をバラストタンク20により調整する。
また、本実施形態において筒状ネット50は、ベルマウス30の下端部に設けられている。このことによって、よりコンパクトに筒状ネット50を設けることができ、ガス化装置60を移動する際の水の抵抗を抑制することができる。
更に、筒状ネット50の下端には、筒状ネット50の位置制御用スラスター70が複数設けられている。これにより、ガス化装置60の移動後に、移動先のメタンハイドレート層68を覆うように筒状ネット50の裾(下端)を広げることができる。
加えて、ガス化装置60の移動中に位置制御用スラスター70を作動させることにより、ガス化装置60のスムースな移動を実現できる。
以上のように構成されたメタンハイドレートのガス化装置60においても、実施例1のガス化装置10と同様に、水中に浮かせた第1室体2においてメタンハイドレートを分解してメタンガスを回収するので、前記メタンハイドレートの分解にかかるエネルギーを抑え、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることができる。
加えて、一つの場所で水底のメタンハイドレートの分解回収が終わった後に、別の場所へ容易に移動して、移動先で水底のメタンハイドレートの分解回収を始めることができる。以って、海底12に点在するメタンハイドレート層からのメタンガスの回収を効率よく行うことができる。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
2 第1室体、4 浮かせ機構部、6 第1熱媒体、
10 メタンハイドレートのガス化装置、12 海底(水底)、
14 メタンハイドレート層、15 海面(水面)、16 メタンガス回収船、
18 海中(水中)、20 バラストタンク、22 バラスト水、
24 スラスター、26 圧力調整部、28 取り出し部、30 ベルマウス、
32 取り出しライン、34 導入部、36 受け入れ部、
38 排出部、40 加熱部、42 第2熱媒体、44 循環ライン、
46 熱交換部、48 ディーゼルエンジン、50 筒状ネット、
52 気液界面、54 排熱、60 メタンハイドレートのガス化装置、
62 プラットフォーム64 移動機構、66 接続部、
68 メタンハイドレート層、70 位置制御用スラスター

Claims (14)

  1. 水底に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置であって、
    室内に第1熱媒体を入れることが可能で且つ水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入ることが可能な第1室体と、
    前記第1室体を水中に浮かせる浮かせ機構部と、
    前記第1室体内の前記第1熱媒体を加熱する加熱部と、
    前記第1室体内で前記メタンハイドレートが分解して生成するメタンガスの取り出し部と、を備えることを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  2. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記第1室体の室内に気液界面ができる圧力を付与する圧力調整部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  3. 請求項2に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記圧力調整部は、前記取り出し部から室外に出たメタンガスを回収先に送る取り出しラインに設けられている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  4. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記第1熱媒体は、前記メタンハイドレートが在る水底に連なる水域の水である、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  5. 請求項1又は請求項4に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が前記第1室体の室内に入る経路とは別に、室内の第1熱媒体を室外に排出可能な排出部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  6. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を室内に導く導入部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  7. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊は、量調整部によって導入量が調整されて前記第1室体内に入るように構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  8. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記浮かせ機構部は、前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせるように構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  9. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記加熱部は、
    第2熱媒体を循環する循環ラインと、
    前記循環ラインに設けられ、前記第2熱媒体に熱を与える熱交換部と、
    を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  10. 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を該第1室体に誘導する筒状ネットを直接又は他部材を介して取り付け可能に構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  11. 請求項1又は請求項10のいずれか一項に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
    前記ガス化装置が、移動機構によって水中を移動可能に構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。
  12. 水底に在るメタンハイドレートを塊の状態で上昇させて水中に位置する第1室体内に受け入れるメタンハイドレートの上昇工程と、
    前記第1室体内でメタンハイドレートを加熱した第1熱媒体と接触させて分解する分解工程と、
    前記分解工程で生成したメタンガスを第1室体内から取り出して回収するメタンガス回収工程と、を有する水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法。
  13. 請求項12に記載された水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法において、
    前記第1室体の室内に気液界面ができる圧力を付与した状態でメタンハイドレートを分解する、ことを特徴とする水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法。
  14. 請求項12又は請求項13に記載されたメタンハイドレートのメタンガス回収方法において、
    前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせる、ことを特徴とする水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法。
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