JP2016166455A - メタンハイドレートのガス化装置及び水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、メタンハイドレートをスラリー状態にして海面上に揚収する装置及び方法が提供されている(特許文献2)。
また、特許文献2の技術では、メタンハイドレートをスラリー状態にして海面上まで長尺な管内を揚収するので、その揚収の途中でメタンハイドレートが固まって閉塞する虞があった。また、水深400m付近から海水の温度及び圧力がメタンハイドレートの相平衡において分解側になるので、スラリー状態のメタンハイドレートは分解しつつ海面上まで揚収されることになり、揚収を安定して制御するのが困難であった。これらによりメタンガスの回収効率を高めることが難しいという問題があった。
また、「第1熱媒体」とは、メタンハイドレートと接触して熱を与えることで分解できる流体である。この第1熱媒体として、海洋であれば海水、湖であれば湖水を利用できるが、前記海水や湖水以外の他の淡水、真水、汽水等を利用してもよい。
また、「水中に浮かせる」とは、水底に位置する状態ではなく水面に位置する状態でもなく、水底と水面の間に浮いている状態を意味する。
第1室体が浮いている水中の位置では、海底等の水底よりも水温は高く水圧は低い。そのためメタンハイドレートの分解に必要な熱エネルギーは、水底よりも少なくて足り、以って高コスト化を抑制することができる。
また、メタンハイドレートの塊を揚収する範囲は、水中に浮かせた第1室体の位置までであり、水面までの揚収は行わない。従って、揚収の途中でメタンハイドレートが固まって閉塞する虞を低減することができる。また、水面上まで揚収しないので揚収途中での分解に伴う揚収の不安定化を低減することが可能となる。これにより、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることができる。
ここで、「気液界面ができる圧力を付与する」における付与する「圧力」は、第1室体が位置する水深の水圧である。
ここで、「回収先」とは、メタンガスを貯留するタンク等の貯留設備や、メタンガスを燃料として利用するガスタービン等のガス燃料利用設備を含む意味で使われている。
ここで、「メタンハイドレートが在る水底に連なる水域の水」とは、例示的に説明すると、海洋であればメタンハイドレートが存在する海底を有する海の水(海水)である。
本態様によれば、メタンハイドレートの塊が第1室体内に入る経路と別に、第1室体内の第1熱媒体を室外に排出可能な排出部を備えているので、メタンハイドレート由来の水を別途処理する場合に当該排出部から室外に出して回収することで、別の処理を行うことが可能となる。また、別の処理をする必要がない場合は、排出部から室外の水中に排出することで、新たな第1熱媒体の利用が可能となる。
また、第1室体内でメタンハイドレートの分解で生じた水は、その室内は気液界面ができる圧力に保持されている場合には、液面を上昇させることなく、当該導入部の下端部において外部に押し出される。別の言い方では、第1室体内では、前記気液界面が存在する状態の下で、メタンハイドレートは当該導入部内を浮力で上昇して第1室体内に入るが水はほとんど入り込まない状態でメタンハイドレートが熱で分解され、メタンガスと水が生じると言える。
水深が深くなるほど低温、高圧条件となるので、400mより深い領域(メタンハイドレートの生成条件を満たす領域)において、水深が深くなるほどメタンハイドレートの分解に必要なエネルギーは多くなり、水深400m付近(メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界)に近づくほど前記エネルギーは少なくて足りる。
前述したように、メタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界である約400mより浅い所ではメタンハイドレートが分解を始めるので、分解により生成したメタンガスがネットの目穴から逃げてしまい、メタンガスの回収効率が低下する。しかし、400m以深であればメタンハイドレートは分解しない。よって400m付近に第1室体を浮かせれば、400m以深では筒状ネットで足り、無駄がない。
本態様によれば、前記ガス化装置は移動機構によって水中を移動可能であるので、一つの場所で水底のメタンハイドレートの分解回収が終わったら、別の場所へ容易に移動して、その場所で水底のメタンハイドレートの分解回収を始めることができる。
本態様によれば、第1の態様のメタンハイドレートのガス化装置における作用効果と同様の作用効果を奏する。
<メタンハイドレートのガス化装置の概略構成および水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法>
水底に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置の概略構成について、図に基づいて説明しつつ、当該ガス化装置による水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法について説明する。図1は、本発明に係るメタンハイドレートのガス化装置の一例を示す概略構成図である。図2は、加熱部の構成の一例を説明する図である。
図1に示すように、本実施例では水底としての海底12の表層型のメタンハイドレート層14から、メタンガスを回収する場合について説明する。
第1室体2は、室内に第1熱媒体6を入れることが可能で、且つ水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入ることが可能に構成されている。
第1室体2の上方には第1室体2内でメタンハイドレートが分解して生成するメタンガスの取り出し部28が設けられており、取り出し部28から取り出されるメタンガスは、取り出しライン32により送られて、例えば、回収先としてのメタンガス回収船16において回収される。取り出しライン32としては、アンビリカルケーブル等の可撓性を有するケーブルを用いることができる。
すなわち、メタンハイドレートのガス化装置10において、水中に浮かせた第1室体2内に、メタンハイドレート層14から分離されて水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を受け入れ(上昇工程)、その室内で第1熱媒体と接触させることによりメタンハイドレートを加熱して分解させる(分解工程)ことができる。
第1室体2が浮いている水中の位置(海底12と海面15の間の位置)では、海底12よりも水温は高く水圧は低い。そのためメタンハイドレートの分解に必要な熱エネルギーは、海底12おいて必要な熱エネルギーよりも少なくて足り、以って高コスト化を抑制することができる。
従って、メタンハイドレートの塊の揚収の途中でメタンハイドレートが固まって、揚収管等が閉塞する虞を低減することができる。また海面15上まで揚収しないので、揚収途中での分解に伴う揚収の不安定化を低減することが可能となる。これにより、水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収効率を高めることができる。
また本実施形態において、浮かせ機構部4としては、バラストタンク20が用いられている。バラストタンク20内のバラスト水22の量を調整することによって、第1室体2を浮かせる水深位置を変えることができる。バラスト水22としては、メタンハイドレート層14が在る水底に連なる水域の水、すなわち、メタンハイドレート層14が在る海底12と同じ海の水を用いることが望ましい。
例えば、メタンハイドレートの生成条件を確実に満たす水深(例えば水深500m)に第1室体2を浮かせることで、海底12から分離したメタンハイドレートをほとんど分解無しの状態で第1室体2内に入れ、第1室体2内で第1熱媒体を介して与える熱量を増減調整することで、分解生成するメタンガスの量を増減調整することができる。
よって、第1室体2をメタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界付近に浮かせることにより、第1室体2内におけるメタンハイドレートの分解のために第1熱媒体6を介して与える熱量を少なく抑えることができ、より省エネルギーに水底メタンハイドレートからのメタンガスの回収を行うことができる。
このことにより、第1室体2の室内に気液界面52が存在する状態でメタンハイドレートの加熱分解がおこなわれ、安定した分解を実現することができる。またメタンハイドレートの分解で生成したメタンガスと水は気体側と液体側のそれぞれに分かれるので、分解生成メタンガスの第1室体2内からの分離回収を容易に行うことができる。
ベルマウス30等の導入部34によって水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を受け入れ部36に誘導することにより、メタンハイドレートを第1室体内に安定して入れることができる。
第1室体2内においてメタンハイドレートが分解することでメタンガスと水が生成する。生成した水はメタンハイドレート由来の水であり、基本的に淡水である。
ここで、第1室体2内においてメタンハイドレートの分解を続けると、メタンハイドレート由来の水が生成することにより第1室体2内の海水の成分濃度は薄くなる。
このメタンハイドレート由来の水を含む海水を別途処理する場合に、排出部38から室外に出して回収することで、別の処理を行うことが可能となる。また、別の処理をする必要がない場合は、排出部38から室外の水中に排出することで、新たな第1熱媒体6の利用が可能となる。
例えば、本実施形態における回収先としてのメタンガス回収船16のディーゼルエンジン48からの排熱54を利用することができる(図2を参照)。また、回収先がメタンガスを燃料として利用するガスタービン等のガス燃料利用設備である場合には、ガス燃料利用時の排熱を利用することができる。また、回収先以外から出る排熱を用いてもよい。
尚、第1熱媒体6の加熱は、第2熱媒体が循環する循環ライン44によるものに限られず、第1室体2内の第1熱媒体6をヒーター等により直接加熱するように構成することもできる。
筒状ネット50は、第1室体2に直接取り付けられるように構成されていてもよく、また、他部材(例えば、ベルマウス30)を介して取り付ける構成でもよい。
しかし、本実施形態においては、筒状ネット50を設けることにより、メタンハイドレートの塊を誘導する管体を水面上から水底までの全長にわたって延設する必要がないので、各構成部材の設置が容易になると共にコストダウンを図ることができる。
しかし、第1室体2をメタンハイドレートの生成条件を満たす水深の境界である約400m以深に浮かせる場合には、筒状ネット50が設けられる水深においてメタンハイドレートは分解しないので、タンハイドレートの塊の誘導は筒状ネット50で足り、無駄がない。
例えば、発破等によりメタンハイドレート層14を塊状のメタンハイドレートにした場合には、一度に多量のメタンハイドレートの塊が水中を上昇する虞がある。そのような場合には、例えば筒状ネット50内における海底12寄りの位置に、発破によってできたメタンハイドレートの塊の上昇を一旦塞き止める補助ネット56等を量調整部として設け、補助ネット56を少しずつ外して上昇させるメタンハイドレートの塊の量を調整することによって第1室体2に入るメタンハイドレートの塊の導入量を調整する。
これにより、メタンハイドレートの塊の導入量が調整されて第1室体2内に入るので、第1室体2内におけるメタンハイドレートの分解を安定して行うことができる。
実施例2では、図3に基づき、メタンハイドレートのガス化装置の他の実施形態について説明する。図3は、本発明に係るメタンハイドレートのガス化装置の他の一例を示す概略構成図である。
尚、本実施例において実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その構成の説明は省略する。
具体的には、第1室体2は、海上(水上)を移動可能なプラットフォーム62等の移動機構64により牽引可能に接続可能な接続部66を備え、接続部66によりプラットフォーム62と第1室体2とが接続された状態で牽引されることにより、移動可能に構成されている。
本実施形態においてプラットフォーム62は、メタンガスを回収する回収先でもある。
加えて、ガス化装置60の移動中に位置制御用スラスター70を作動させることにより、ガス化装置60のスムースな移動を実現できる。
加えて、一つの場所で水底のメタンハイドレートの分解回収が終わった後に、別の場所へ容易に移動して、移動先で水底のメタンハイドレートの分解回収を始めることができる。以って、海底12に点在するメタンハイドレート層からのメタンガスの回収を効率よく行うことができる。
10 メタンハイドレートのガス化装置、12 海底(水底)、
14 メタンハイドレート層、15 海面(水面)、16 メタンガス回収船、
18 海中(水中)、20 バラストタンク、22 バラスト水、
24 スラスター、26 圧力調整部、28 取り出し部、30 ベルマウス、
32 取り出しライン、34 導入部、36 受け入れ部、
38 排出部、40 加熱部、42 第2熱媒体、44 循環ライン、
46 熱交換部、48 ディーゼルエンジン、50 筒状ネット、
52 気液界面、54 排熱、60 メタンハイドレートのガス化装置、
62 プラットフォーム64 移動機構、66 接続部、
68 メタンハイドレート層、70 位置制御用スラスター
Claims (14)
- 水底に在るメタンハイドレートをガス化して回収するためのメタンハイドレートのガス化装置であって、
室内に第1熱媒体を入れることが可能で且つ水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が入ることが可能な第1室体と、
前記第1室体を水中に浮かせる浮かせ機構部と、
前記第1室体内の前記第1熱媒体を加熱する加熱部と、
前記第1室体内で前記メタンハイドレートが分解して生成するメタンガスの取り出し部と、を備えることを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記第1室体の室内に気液界面ができる圧力を付与する圧力調整部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項2に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記圧力調整部は、前記取り出し部から室外に出たメタンガスを回収先に送る取り出しラインに設けられている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記第1熱媒体は、前記メタンハイドレートが在る水底に連なる水域の水である、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1又は請求項4に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊が前記第1室体の室内に入る経路とは別に、室内の第1熱媒体を室外に排出可能な排出部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を室内に導く導入部を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊は、量調整部によって導入量が調整されて前記第1室体内に入るように構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記浮かせ機構部は、前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせるように構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記加熱部は、
第2熱媒体を循環する循環ラインと、
前記循環ラインに設けられ、前記第2熱媒体に熱を与える熱交換部と、
を備える、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記第1室体は、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を該第1室体に誘導する筒状ネットを直接又は他部材を介して取り付け可能に構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 請求項1又は請求項10のいずれか一項に記載されたメタンハイドレートのガス化装置において、
前記ガス化装置が、移動機構によって水中を移動可能に構成されている、ことを特徴とするメタンハイドレートのガス化装置。 - 水底に在るメタンハイドレートを塊の状態で上昇させて水中に位置する第1室体内に受け入れるメタンハイドレートの上昇工程と、
前記第1室体内でメタンハイドレートを加熱した第1熱媒体と接触させて分解する分解工程と、
前記分解工程で生成したメタンガスを第1室体内から取り出して回収するメタンガス回収工程と、を有する水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法。 - 請求項12に記載された水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法において、
前記第1室体の室内に気液界面ができる圧力を付与した状態でメタンハイドレートを分解する、ことを特徴とする水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法。 - 請求項12又は請求項13に記載されたメタンハイドレートのメタンガス回収方法において、
前記第1室体を水深300mから500mの範囲内に浮かせる、ことを特徴とする水底メタンハイドレートからのメタンガス回収方法。
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