JP6341518B2 - メタンガス回収付随水の処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、海底から揚水したメタンガスが溶解した海水(水W’)からメタンガスMを分離した後の水Wは、そのまま海に排水されている(段落0037、図1を参照)。
しかし、メタンハイドレート層が在る水底の水深は少なくとも400m以上であり、1000m付近に存在することもある。そのような深い水深までポンプ等によって水を返送するのはエネルギーが多くかかり、高コスト化する。
また、「メタンハイドレート」とは主にメタンを包接しているものであり、自然界で生じるそれ以外の炭化水素ガス(例えば、エタン、プロパン等)を包接するものも含むものである。
また、「メタンガス回収付随水」とは、元々メタンハイドレートのある水底に存在した水であって、メタンハイドレートからメタンガスを回収する際に、前記水底より水深の浅い領域、または水上にまで引き上げられた水を言う。また、メタンハイドレートを分解したときに生じる分解水は、該メタンハイドレートが存在した水底由来の水である。したがって、水底よりも水深の浅い領域または水上において、メタンガスを得るためにメタンハイドレートを分解して生じた分解水も「メタンガス回収付随水」に含まれる。
尚、「メタンハイドレートの在った水中」とは、前記メタンハイドレートが在った水底に連なる水域の水中であり、水質が大幅に変わらない水域であれば厳密に同じ位置でなくてもよい。
したがって、前記排出部から排出された前記二酸化炭素ハイドレートは水底まで沈む。このことにより、前記メタンガス回収付随水をハイドレートの状態で元々あった水底に容易に戻すことができる。
メタンハイドレートが在る海や湖等において、前記第1室体が浮いている水中の位置では、水上よりも水温が低く圧力が高い。したがって、水中に浮かせた第1室体内を二酸化炭素ハイドレートの生成条件の高圧、低温にするためのエネルギーは少なくて足り、以って二酸化炭素ハイドレートを生成するためのコストを抑制することができる。
ここで、前記第1室体内にあるメタンハイドレートの塊とともに水底から上昇してきた水と、メタンハイドレートの分解によって生じた水は、メタンガス回収付随水である。メタンガス回収付随水は、同じ第1室体内において二酸化炭素ハイドレートにすることにより、水中に排出して自重により水底まで沈めることができる。
したがって、前記第1室体内を、該第1室体が位置する水深の水圧において、メタンハイドレートは分解するが二酸化炭素ハイドレートは生成する温度にすることにより、第1室体内において、メタンハイドレートからのメタンガスの回収と、その回収時に生じたメタンガス回収付随水の処理を同時に行うことができる。
本態様においては、前記メタンガス回収付随水からの二酸化炭素ハイドレートの生成と、水底から浮上させたメタンハイドレートの分解を別個の室体内において行うので、第1室体内における二酸化炭素ハイドレートの生成条件を、第2室体内におけるメタンハイドレートの分解条件とは独立して設定できる。また、二酸化炭素がメタンハイドレートの分解によって生じたメタンガスに混ざることがない。以って、第1室体内における二酸化炭素ハイドレートの生成と第2室体内においてメタンハイドレートを分解して行うメタン回収をより効率よく行うことができる。
前記第1室体内における生成熱(発熱)と前記第2室体内における分解熱(吸熱)を熱交換することにより、第2室体内の加熱に必要なエネルギーを抑制することができる。
<メタンガス回収付随水の処理装置の概略構成およびメタンガス回収付随水の処理方法>
本発明に係るメタンガス回収付随水の処理装置の概略構成について、図に基づいて説明しつつ、メタンガス回収付随水の処理方法について説明する。図1は、本発明に係るメタンガス回収付随水の処理装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、水中に第1室体2を設ける場合について説明する。
一方、メタンガスとともに揚収されて気液分離部17においてメタンガスと分離された海底12付近の水W1は、本発明の処理装置10の処理対象であり、メタンガス回収付随水Wとして以下に詳説するメタンガス回収付随水の処理装置10において処理される。
第1室体2は、二酸化炭素(CO2)と回収付随水Wとを入れて、二酸化炭素ハイドレートを生成するように構成されている。回収付随水Wは、メタンガス回収船16の気液分離部17から送水ライン6を介して第1室体2に送られるようになっている。また、二酸化炭素(CO2)もメタンガス回収船16からCO2導入ライン7を介して送られて、第1室体2内に入れられる。
尚、送水ライン6やCO2導入ライン7としては、アンビリカルケーブル等の可撓性を有するケーブルを用いることができる。
本実施形態では、海中18の水圧と水温が二酸化炭素ハイドレートの生成条件となる海中18の水深位置に第1室体2を浮かせている。地域や周辺環境、海の場合は海流等により異なるが、一般的に、200m〜400mmより深い水深において、二酸化炭素ハイドレートの生成条件を満たすことができる。
したがって、浮かせ機構部4は、第1室体2を水深200mから400mの範囲内に浮かせるように構成し、第1室体2内における二酸化炭素ハイドレートの生成を行うとよい。
浮かせ機構部4(バラストタンク20)によって、第1室体2の水深位置を変えることにより、その水域において適切な水深(二酸化炭素ハイドレートの生成条件を満たす水温、水圧となる水深)に第1室体を浮かせて二酸化炭素ハイドレートの生成を行うことができる。
すなわち、第1室体2内において、メタンガス回収付随水Wを原料水として二酸化炭素ハイドレートを生成する生成工程を行い、生成工程において生成した二酸化炭素ハイドレートは、排出部8から海中18に排出する(戻し工程)。海中18は、メタンガス回収付随水Wが元々あった海底12の水域、すなわち、メタンハイドレート層14が在った水域の水中である。
また、生成した二酸化炭素ハイドレートは海中18に排出するだけで自重により海底12まで沈むので、省エネルギーでメタンガス回収付随水Wを海底12に戻すことができる。
第1室体2を浮かせる海や湖等の水中(海中18)の位置では、水上よりも水温が低く圧力が高い。したがって、海中18に浮かせた第1室体2内を二酸化炭素ハイドレートの生成条件の高圧、低温にするためのエネルギーは少なくて足り、以って二酸化炭素ハイドレートを生成するためのコストを抑制することができる。
特に、第1室体2を200m〜400m付近に浮かせれば、水圧と水温によって第1室体2内を二酸化炭素ハイドレートの生成条件にすることができる。
第1室体2の上部には、ガス排出ライン25が設けられており、第1室体2内の水(メタンガス回収付随水W)中でハイドレート化しないで通過した二酸化炭素ガスが排出されるように構成されている。ガス排出ライン25はCO2導入ライン7に合流されており、排出された二酸化炭素は第1室体2に再循環するように構成されている。
ガス排出ライン25には、圧力調整部としてのバルブ26を備え、第1室体2の室内に気液界面23ができる圧力を付与するように調整されている。バルブ26によって圧力を調整し、第1室体2の室内に、第1室体2が位置する水深の水圧とほぼ同じ圧力を付与することによって、室内に気液界面23ができる。
このことにより、第1室体2の室内に気液界面23が存在する状態で二酸化炭素ハイドレートの生成反応が行われ、安定した反応を実現することができる。
水上の第1室体2において生成した二酸化炭素ハイドレートは、水面近くの水中に投入するだけで自重により水底まで沈むので、ハイドレート化した回収付随水を容易に水底にまで戻すことができる。尚、第1室体2を水上に設ける場合には、浮かせ機構部4やスラスター24等は不要である。
実施例2では、図2に基づき、メタンガス回収付随水の処理装置の他の実施形態について説明する。図2は、本発明に係るメタンガス回収付随水の処理装置の他の例を示す概略構成図である。
尚、本実施例において実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その構成の説明は省略する。
第2室体32は、第2室体32を海中18に浮かせる浮かせ機構部33を備えている。浮かせ機構部33としては、第1室体2の浮かせ機構部4と同様にバラストタンク等を用い、バラストタンク内のバラスト水の量を調整することによって、第2室体32を浮かせる水深位置を変えることができるように構成されている。また第2室体32にも、その水平方向の位置を調整可能なスラスター37等の推進器が設けられている。
本実施形態においては、受け入れ部36に連なる筒状体であって、下方側がベル状に広がった形状のベルマウス50が導入部34として設けられている。
ベルマウス50等の導入部34によって水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を受け入れ部36に誘導することにより、メタンハイドレートを第2室体32内に安定して入れることができる。
具体的には、第2室体32は、第2室体32内の水を加熱する加熱部40と、メタンハイドレートの分解により発生したメタンガスの取り出し部38を備えている。加熱部40は、例えば、熱媒体が循環する循環ライン54に熱媒体に熱を与える熱交換部56を備える構成とすることができる。熱媒体に熱を与える熱源としてメタンガス回収船16から出る排熱を利用することもできる。
このことにより、第2室体32の室内に気液界面52が存在する状態でメタンハイドレートの加熱分解がおこなわれ、安定した分解を実現することができる。またメタンハイドレートの分解で生成したメタンガスと水は気体側と液体側のそれぞれに分かれるので、分解生成メタンガスの第2室体32内からの分離回収を容易に行うことができる。
特に、その室内が気液界面52ができる圧力に保持されていると、前記分解によって生じた水(メタンガス回収付随水W)の分だけベルマウス50の下端部付近の水が外部の海中18に押し出され、気液界面52の位置が維持される。換言すると、第2室体32内に気液界面52が存在する状態の下では、第2室体32内において、メタンハイドレートの塊は導入部34内を浮力で上昇して入るが、外部から水はほとんど入り込まない状態でメタンハイドレートが熱で分解され、メタンガスと水が生じると言える。したがって、第2室体32内におけるメタンガス回収付随水Wの割合が高くなる。
具体的には、第2室体32内の水(回収付随水W)を第1室体2内に送る送水ライン48が設けられている。送水ライン48にはポンプ44を設けることができる。
したがって、第1室体2内における生成熱(発熱)と第2室体32内における分解熱(吸熱)を熱交換することにより、第2室体32内の加熱に必要なエネルギーを抑制することができる。
よって、第1室体2内と第2室体32内との間で熱交換を行う熱交換部42を設けることが好ましい。
第2室体32において行うメタンハイドレートの分解(ガス化)について説明する。
水底メタンハイドレートからメタンガスを回収するためのガス化装置としての第2室体32は、海中18に浮かせた状態の第2室体32内にメタンハイドレート層14から分離されたメタンハイドレートの塊を受け入れて、その室内で加熱した水(海水)と接触させることにより受け入れたメタンハイドレートを加熱して分解させることができる。
筒状ネット58は、第2室体32に直接取り付けられるように構成されていてもよく、また、他部材(例えば、ベルマウス50)を介して取り付ける構成でもよい。
このような場合には、第1室体2(低圧)と第2室体32(高圧)の圧力差によって第2室体32内の水(メタンガス回収付随水W)を送水ライン48により送ることができるので、ポンプ44を省略することが可能である。
実施例3では、図3に基づき、メタンガス回収付随水の処理装置の更に他の実施形態について説明する。図3は、本発明に係るメタンガス回収付随水の処理装置の更に他の例を示す概略構成図である。
尚、本実施例において実施例1または実施例2と同一の構成については同一の符号を付し、その構成の説明は省略する。
本実施形態において第1室体2の排出部8は、メタンハイドレート層14から分離されたメタンハイドレートの塊を受け入れる受け入れ部36を兼ねており、その下方側に導入部34としてのベルマウス50が設けられている。また、水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊をベルマウス50に誘導する筒状ネット58が設けられている。
また、取り出しライン66には、第1室体2の室内に気液界面68ができる圧力を付与する圧力調整部としてのバルブ70が設けられている。バルブ70によって第1室体2の室内に、第1室体2が位置する水深の水圧とほぼ同じ圧力になるように調整することによって、その室内に気液界面68ができる。
本実施形態においては、この第1室体2内に溜まる回収付随水Wを、同じ第1室体2内において二酸化炭素と反応させて二酸化炭素ハイドレート(CO2GH)にする。
例えば第1室体2内を、第1室体2が位置する水深の水圧において、メタンハイドレートは分解するが二酸化炭素ハイドレートは生成する温度にすることにより、第1室体2内において、メタンハイドレートの分解と、その分解時に生じたメタンガス回収付随水Wの処理(二酸化炭素ハイドレート化)を同時に行うことができる。
このことにより、第1室体2をメタンハイドレートの生成条件を満たす水深(約400m)の境界付近に浮かせることができ、第1室体2内におけるメタンハイドレートの分解に必要な熱量を少なく抑えることができる。また、メタンハイドレートの生成条件を満たす水深では二酸化炭素ハイドレートも生成する。したがって、第1室体2が位置する水深の圧力および温度で二酸化炭素ハイドレートを生成させることができる。
取り出し部38から取り出されるガスは、取り出しライン66から分岐されたライン72によりCO2導入ライン7に合流可能に構成されていることが望ましい。ライン72にはライン72を開閉するバルブ74が設けられている。
第1室体2内の水(メタンガス回収付随水W)中でハイドレート化しないで通過する二酸化炭素ガスがある場合、メタンガスと二酸化炭素ガスが混ざって取り出しライン66により送られてしまう。このような場合には、バルブ74を開けるとともに取り出しライン66に設けられたバルブ70を閉じ、二酸化炭素ガスとメタンガスが混ざった混合ガスを第1室体2に循環させる。このことによって、回収するメタンガスへの二酸化炭素の混入を抑制または回避することができる。
7 CO2導入ライン、8 排出部、
10 メタンガス回収付随水の処理装置、12 海底(水底)、
13 メタンガス回収装置、14 メタンハイドレート層、
15 海面(水面)、16 メタンガス回収船、17 気液分離部、
18 海中(水中)、19 メタンガス貯留部、20 バラストタンク、
22 バラスト水、23 気液界面、24 スラスター、25 ガス排出ライン、
26 バルブ(圧力調整部)、30 メタンガス回収付随水の処理装置
32 第2室体、33 浮かせ機構部、34 導入部、
35 取り出しライン、36 受け入れ部、37 スラスター、
38 取り出し部、40 加熱部、42 熱交換部、44 ポンプ、48 送水ライン、
50 ベルマウス、52 気液界面、53 バルブ(圧力調整部)、
54 循環ライン 56 熱交換部、58 筒状ネット、
60 メタンガス回収付随水の処理装置、62 加熱部、64 取り出し部、
66 取り出しライン、68 気液界面、70 バルブ(圧力調整部)、
72 ライン、74バルブ
Claims (3)
- 水底に在るメタンハイドレートからのメタンガス回収に伴って、前記水底から当該水底より水深の浅い領域または水上に移動されたメタンガス回収付随水の処理装置であって、
二酸化炭素と前記回収付随水とを入れることが可能であって、前記回収付随水を原料水として二酸化炭素ハイドレートを生成可能な第1室体と、
前記第1室体内において生成する二酸化炭素ハイドレートを水中に排出する排出部と、
前記第1室体を水中に浮かせる浮かせ機構部と、を備え、
前記第1室体内が、
水中に位置して前記水底から水中を上昇してくるメタンハイドレートの塊を受け入れ可能に構成されているとともに、前記第1室体内で前記メタンハイドレートが分解して生成するメタンガスを取り出す取り出し部を備えていることを特徴とする、メタンガス回収付随水の処理装置。 - 請求項1に記載されたメタンガス回収付随水の処理装置において、
前記排出部が、前記第1室体の底部に設けられていることを特徴とする、メタンガス回収付随水の処理装置。 - 水底に在るメタンハイドレートからのメタンガス回収に伴って、前記水底から当該水底より水深の浅い領域または水上に移動されたメタンガス回収付随水の処理方法であって、
水中に浮かせた状態の第1室体内において、前記回収付随水を原料水として二酸化炭素ハイドレートを生成する生成工程と、
生成した前記二酸化炭素ハイドレートが自重により水中に沈むことによって前記水底に戻す戻し工程と、
水底に在るメタンハイドレートを塊の状態で上昇させて水中に位置する前記第1室体内に受け入れるメタンハイドレートの第1上昇工程と、
前記第1室体内でメタンハイドレートを加熱した水と接触させて分解する第1分解工程と、
前記分解工程で生成したメタンガスを第1室体内から取り出して回収する第1メタンガス回収工程と、
を有することを特徴とする、水底メタンハイドレートの回収付随水の処理方法。
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