JP5316878B2 - メタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法 - Google Patents

メタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産するための装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法に関する。
石油資源に替わる新資源としてメタンハイドレートが注目を集めており、我が国近海は、世界最大のメタンハイドレート埋蔵量を誇るといわれている。このメタンハイドレートは、水素結合による水分子の籠状構造の中にメタンが入り込んだ氷状の固体結晶であり、低温且つ高圧下で安定的に存在する。そして、永久凍土の地下数百〜千mの堆積物中や海底、湖底でこの低温高圧条件が満たされるため、メタンハイドレートは永久凍土や海底、湖底の地盤内に存在している。
また、海底(湖底)のメタンハイドレートは、水深数百m以深の海底(湖底)地盤の地下数百mの深層部に存在する深層型メタンハイドレートと、海底面(湖底面)に露出するなどして浅層部に存在する表層型メタンハイドレートとがある。そして、現在、我が国でも検討が進められている南海トラフなどの深層型メタンハイドレートに対し、表層型メタンハイドレートの研究例は世界的にもまだ限られており、我が国では、オホーツク海及び日本海直江津沖の表層型メタンハイドレートに関する調査研究が開始されたばかりである。しかしながら、資源開発の観点からは、表層型メタンハイドレートの方が経済的な生産が可能であるため、その資源量の評価と併せて諸物性の解明が急務とされている。
ここで、メタンハイドレートは、僅かに温度、圧力条件を変化させるだけで相平衡状態が崩れ、分解(解離)させることができる。そのため、深層型メタンハイドレートにおいては、メタンガスを生産する手法として、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法など温度や圧力の条件を変化させ、相平衡状態を変化させることによってメタンハイドレートをメタンガスと水に分解し、メタンガスを回収する手法が検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
図8は、メタンハイドレートの温度と圧力の相平衡条件を示したものである。この図において、実線は、メタンハイドレートが生産される境界を示しており、図中左上側の低温、高圧側がメタンハイドレートの安定領域である。そして、水域(海、湖)では、水深約400m以深でこの温度、圧力条件に達するが、海底(湖底)の地盤温度が地下深度とともに増加するため、メタンハイドレートの生成条件が満たされる下限の地盤深度が存在し、この地盤深度は概ね地下100m〜300m程度である。深層型メタンハイドレートは、この下限地盤深度の直上に存在し、言い換えれば、温度と圧力の相平衡条件に極めて近い状態で存在している。
また、図8に、深層型メタンハイドレートとして南海トラフの代表的なメタンハイドレート、表層型メタンハイドレートとしてバイカル湖とオホーツク海のそれぞれの代表的なメタンハイドレートの温度、圧力条件を示している。この図示から、深層型メタンハイドレートに比べ、表層型メタンハイドレートは、温度と圧力の相平衡条件から離れた状態にあることが分かる。
特開2004−321952号公報 特開2004−204562号公報 特開平9−158662号公報
そして、このように表層型メタンハイドレートは、温度と圧力の相平衡条件から離れた状態で安定しているため、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法等の温度や圧力の条件を変化させてメタンガスを生産する方法を用いた場合、温度と圧力の相平衡状態を変化させるために大きなエネルギーが必要になる。
また、表層型メタンハイドレートは、深層型メタンハイドレートと異なり、バッファとなる地盤が存在しない場合があるため、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法等によるメタンガスの生産中に予期せぬメタンガスの漏洩が発生すると、直接水中にメタンガスが放出されるおそれがある。このため、熱刺激法、減圧法、インヒビター注入法等の温度や圧力の条件を変化させてメタンガスを生産する場合には、海底、湖底の生態系や地球環境への影響が懸念される。
これに対し、本願の出願人(本願の発明者ら)は、温度と圧力の相平衡状態を変化させることなくメタンハイドレートを分解してメタンガスを生産する方法及び装置について、既に特許出願(特願2008−176936、特願2008−312714)を行っている。
このメタンガス生産装置1は、図9及び図10に示すように、上端2aが閉塞し、下端2bに開口部2cを備えて略円筒状に形成された解離チャンバー2と、解離チャンバー2の内部にメタン濃度が低い水Wを供給するための送水管3と、解離チャンバー2の内部の水W’を揚水するための揚水管4とを備えて構成されている。また、解離チャンバー2には、送水管3から送られたメタンの度が低い水Wを噴射させるウォータージェット機構5が設けられている。さらに、ウォータージェット機構5は、解離チャンバー2の開口部2cを形成する先端部(下端2b)側から軸線O1方向外側に水W(メタン濃度が低い水)を噴射させる第1噴射管6と、解離チャンバー2の内面側から軸線O1直交方向内側に水Wを噴射させる第2噴射管7とを解離チャンバー2の外周側に設けて構成されている。
このメタンガス生産装置1を用いて海底(あるいは湖底)の表層型メタンハイドレート10からメタンガスを生産する場合には、図11に示すように、フロート11に取り付けて浮遊状態にした解離チャンバー2をメタンガス回収船12で曳航し、解離チャンバー2をフロート11から降下させて海底に設置する。次に、第1噴射管6からメタン濃度が低い水Wを軸線O1方向外側に噴射させることにより、メタンハイドレート10上の地盤Gを掘削除去(切削除去)し、解離チャンバー2の先端部2bをメタンハイドレート10まで貫入させる。また、第2噴射管7から軸線O1直交方向内側に水Wを噴射させることにより、メタンハイドレート10上の地盤Gを掘削除去するとともに、解離チャンバー2の内部をウォータージェット水流で撹拌させ、メタンハイドレート10から効率的にメタンMを解離させる。そして、解離チャンバー2の内部のメタンMが溶解した水W’を揚水管4で揚水する。このとき、ある深度までメタンが溶解した水W’が上昇すると、圧力降下によりメタンMがガス化して水W’から自動的に自噴する。これにより、容易に水W’とメタンガスMとを分離して、メタンガスMを生産(回収)することが可能になる。
しかしながら、日本近海など、硬い地盤Gが表層に存在する場合、上記のウォータージェット機構5によるウォータージェット水流では、この硬い地盤Gを掘削できないおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑み、硬い地盤が存在する場合であっても、確実に地盤及びメタンハイドレートを掘削でき、効率的に、温度や圧力の条件を変化させることなくメタンハイドレートからメタンガスを生産することを可能にするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置は、海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産するための装置であって、筒状の側壁部と側壁部の上端側の開口を閉塞する天板部とを備えて形成された外殻体と、筒状の側壁部と側壁部の上端側の開口を閉塞する天板部とを備えて形成されるとともに、底部の開口部側と天板部側を区画する仕切り板を内部に備えて形成され、前記外殻体の軸線と上下の同方向に軸線を配した状態で、前記外殻体の内部に配設された内殻体と、前記内殻体と前記外殻体を上下方向に相対的に進退させる推進機構と、切刃を下方に向け、且つ回転軸線を前記内殻体の軸線と同軸上に配し、前記内殻体の開口部を閉塞させるように配設されたカッターヘッドと、前記内殻体に支持され、前記カッターヘッドを支持しつつ回転軸線周りに回転させるカッターヘッド回転支持機構と、前記仕切り板と前記カッターヘッドの間に形成された導入室にメタン濃度が低い水を供給するための送水管と、前記導入室内の水を揚水するための揚水管とを備えて構成されていることを特徴とする。
この発明においては、海底あるいは湖底の所定位置に設置した段階で、カッターヘッド回転支持機構を駆動してカッターヘッドを回転させるとともに、ジャッキなどの推進機構によって内殻体及びカッターヘッドを外殻体から軸線方向下方に進出させる。これにより、メタンハイドレートの表層に硬い地盤が存在する場合であっても、カッターヘッドによってこの地盤を掘削することが可能になる。また、このとき、自重と、外殻体と地盤の間の周面摩擦とによって反力を確保し、推進機構によって内殻体及びカッターヘッドを外殻体の内部側から地盤内に順次進出させて掘進することが可能になる。さらに、推進機構によって内殻体及びカッターヘッドが外殻体の内部から最大ストロークまで進出した段階で、推進機構を縮長すると(内殻体が外殻体の内部側に退避するように推進機構を駆動すると)、外殻体が推進機構の縮長及び自重によって内殻体を内部に納めるように降下する。これにより、外殻体に対し、推進機構で内殻体及びカッターヘッドを順次相対的に進退させながら地盤内を推進させることができ、カッターヘッドによって地盤及びメタンハイドレートを掘削することが可能になる。すなわち、メタンハイドレートの表層に硬い地盤が存在する場合に限らず、賦存深度が深いメタンハイドレートの掘削も可能になる。
また、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置においては、一つの前記外殻体に対し、前記内殻体と前記カッターヘッドと前記カッターヘッド回転支持機構が複数設けられていてもよい。
この発明においては、内殻体とカッターヘッドとカッターヘッド回転支持機構を複数備えることで全体の自重が増加するため、自重によって反力を確保することができ、推進機構で内殻体及びカッターヘッドを確実に推進させることが可能になる。これにより、効率的に地盤及びメタンハイドレートを掘削することが可能になる。また、複数の内殻体及び各内殻体に設けられたカッターヘッドを適宜選択しながら掘削、沈設(推進)することが可能になるため、装置全体の姿勢制御を行うことも可能になる。
さらに、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置においては、前記外殻体の上に内部が隔壁によって複数の室で区画された函体を備えるとともに、該函体の各室内に対し、水を注排水するための注排水機構と、空気を送排気するための送排気機構を備えて構成されていてもよい。
この発明においては、函体の各室に海水や湖水を注水すると、函体と注水した水による荷重を外殻体ひいてはカッターヘッドに作用させることができ、また、函体内に空気を送気することによって、各室から水を排水させることができる。すなわち、函体内の注水量(貯水量)をコントロールして、装置の自重を自在に調整することが可能になる。これにより、カッターヘッドによる掘削時に、確実に反力を得ることが可能になるとともに、掘削効率ひいてはメタン回収効率を向上させることが可能になる。また、函体の各室から水を排水すると、各室内の空気によって浮力が得られるため、装置を引き上げて回収する際に、この浮力を利用することが可能になり、効率的に装置の回収作業を行うことが可能になる。
本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産方法は、海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産する方法であって、上記のいずれかのメタンハイドレートからのメタンガス生産装置を用いてメタンガスを生産することを特徴とする。
この発明においては、上記のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置による作用効果を得ることが可能になる。
本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法においては、外殻体に対し、推進機構で内殻体及びカッターヘッドを順次相対的に進退させながら地盤内を推進させることができ、カッターヘッドによって地盤及びメタンハイドレートを掘削することが可能になる。また、メタンハイドレートの表層に硬い地盤が存在する場合に限らず、同様にして、賦存深度が深いメタンハイドレートの掘削も可能になる。
そして、カッターヘッドで掘削した地盤やメタンハイドレートは、掘削とともに順次内殻体の仕切り板とカッターヘッドの間の導入室に導入される。このため、メタン濃度が低い水を送水管を通じて導入室に供給して混合撹拌するとともに、揚水管で導入室内の水(泥水、海水、湖水)を地上に汲み上げることによって、掘削した地盤やメタンハイドレートを順次回収することが可能になる。また、このとき、揚水管によって、メタンが溶解した導入室内の水を揚水すると、ある程度までこのメタンが溶解した水が上昇するとともにメタンがガス化して水から自動的に自噴する。これにより、温度と圧力の相平衡状態を変化させることなく、容易に水とメタンガスを分離して、メタンガスを生産(回収)することが可能になる。
さらに、推進機構を伸縮させて、内殻体に対し順次外殻体を上方に移動させながら装置(外殻体、内殻体、カッターヘッドなど)を引き上げて、回収することも可能になる。
よって、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法によれば、硬い地盤が存在する場合であっても、確実に地盤及びメタンハイドレートを掘削でき、従来と比較し、より効率的に、温度や圧力の条件を変化させることなくメタンハイドレートからメタンガスを生産することが可能になる。
本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置を用いてメタンガスを生産している状態を示す図である。 本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置(メタン解離回収装置)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置の変形例(複数の内殻体、カッターヘッドを備えたメタン解離回収装置)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置の変形例(複数の内殻体、カッターヘッドを備えたメタン解離回収装置)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置の変形例(複数の内殻体、カッターヘッドを備えたメタン解離回収装置)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置の変形例(函体を備えたメタン解離回収装置)を示す図である。 本発明の一実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置の変形例(函体を備えたメタン解離回収装置)を示す図である。 メタンハイドレートの温度と圧力の相平衡条件を示す図である。 従来のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置(解離チャンバー)を示す図である。 図9のX1−X1線矢視図である。 従来のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置を用いてメタンガスを生産している状態を示す図である。
以下、図1及び図2を参照し、本発明の実施形態に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法について説明する。本実施形態においては、海底(あるいは湖底)に存在する表層型メタンハイドレートからメタンガスを好適に生産可能なメタンガス生産装置及びメタンガス生産方法に関するものである。
本実施形態のメタンガス生産装置Aは、図1に示すように、メタンガス回収船12と、メタンハイドレート10からメタンMを解離/回収するためのメタン解離回収装置20と、メタンガス回収船12によって浮遊状態でメタン解離回収装置20を曳航するためのフロート11と、送水管3と、揚水管4と、ガスセパレーター21とを備えて構成されている。
また、本実施形態のメタン解離回収装置20は、図2に示すように、外殻体22と、内殻体23と、推進機構24と、カッターヘッド25と、カッターヘッド回転支持機構26とを備えて構成されている。
外殻体22と内殻体23はそれぞれ、筒状の側壁部22a、23aと側壁部22a、23aの上端側の開口を閉塞する天板部22b、23bとを備えて形成されている。そして、これら外殻体22と内殻体23は、互いの軸線O1、O2を上下の同方向(上下方向T1)に向け、且つ底部の開口部22c、23cを下方に向け、内殻体23を外殻体22の内部に配した状態で設けられている。また、内殻体23は、その内部に開口部23c側と天板部23b側を区画する仕切り板23dを設けて形成されている。
推進機構24は、内殻体23を外殻体22に対し上下の軸線O1、O2方向に進退させるためのものであり、すなわち、内殻体23を外殻体22の内部から外側に進出又は内殻体23を外殻体22の内部に後退させるためのものであり、本実施形態では、推進機構24としてジャッキを用いている。そして、推進機構24は、外殻体22の内部に配設されるとともに、その伸縮方向を上下方向T1に向け、上端を外殻体22の天板部22bに、下端を内殻体23の天板部23bに繋げて配設されている。すなわち、この推進機構24は、外殻体22の天板部22bと外殻体22の内部に設けられた内殻体23の天板部23bの間に配設されている。
カッターヘッド25は、TBM(トンネルボーリングマシン)が具備するカッターヘッドと同様のものであり、本実施形態では、カッタービットやディスクカッタなどの切刃25aを下方に向け、且つ回転軸線O3を外殻体22及び内殻体23の軸線O2、O3と同軸上に配した状態で、内殻体23の開口部23cを閉塞させるように設けられている。
カーターヘッド回転支持機構26は、カッターヘッド25を回転軸O3周りに回転させるための機構であり、仕切り板23dに支持されて内殻体23の仕切り板23dと天板部23bの間に設けられている。また、カッターヘッド25の軸部25bが内殻体23の開口部23c側から仕切り板23dを貫通して、仕切り板23dと天板部23bの間に延設されており、カッターヘッド回転支持機構26は、この軸部25bを支持しつつ回転させて、カッターヘッド25を回転軸O3周りに回転させるように構成されている。
さらに、本実施形態のメタン解離回収装置20においては、TBMと同様に、外殻体22の内部から軸線O1直交方向外側に進退自在に設けられたグリッパー(不図示)を備えている。
送水管3と揚水管4はそれぞれ、外殻体22の天板部22b、内殻体23の天板部23bを貫通して、外殻体22の内部から内殻体23の内部に延設されている。そして、これら送水管3と揚水管4は、一端側が仕切り板23dに取り付けて支持され、内殻体23の仕切り板23dとカッターヘッド25の間の導入室27に到達して連通するように設けられている。
次に、上記構成からなるメタンガス生産装置Aを用いて海底の表層型メタンハイドレート10からメタンガスMを生産(回収)する方法について説明するとともに、本実施形態のメタンガス生産装置A及びメタンガス生産方法の作用及び効果について説明する。
本実施形態のメタンガス生産装置Aを用いて海底の表層型メタンハイドレート10からメタンガスMを生産する際には、図1に示すように、メタンガス回収船12のワイヤドラムに巻き回されたワイヤ15の一端をメタン解離回収装置20の上端(外殻体22の天板部22b)に接続し、この上端側をフロート11に着脱可能に繋げ、浮遊した状態でメタン解離回収装置20を所定位置まで曳航する。そして、メタン解離回収装置20に送水管3と揚水管4をそれぞれ接続し、メタンガス回収船12のワイヤドラムからワイヤ15を繰り出してメタン解離回収装置20を降下させ、海底の地盤G上に設置する。なお、メタンガス回収船12に設けられたGPS、方位計、トランスデューサー、送水管3あるいは揚水管4に設けられたトランスポンダーなどを用いることで、メタン解離回収装置20は、海底の所定位置に設置される。
そして、上記のようにメタン解離回収装置20を海底の所定位置に設置した段階で、カッターヘッド回転支持機構26を駆動してカッターヘッド25を回転させるとともに、推進機構24を伸長させて内殻体23及びカッターヘッド25を外殻体22から軸線O1、O2、O3方向下方に向け進出させる。このようにすると、メタンハイドレート10の表層に硬い地盤Gが存在する場合であっても、カッターヘッド25によって地盤Gが掘削される。また、このとき、本実施形態のメタン解離回収装置20では、通常のシールド工法(TBM)のようにセグメントで反力を確保するのではなく、装置20の自重と、外殻体22と地盤G間の周面摩擦とによって反力を確保する。
さらに、このようにカッターヘッド25によって地盤Gを掘削するとともに、推進機構24で押圧された内殻体23が外殻体22の内部から相対的に下方に移動し、地盤G内に順次推進してゆく。そして、推進機構24がジャッキストローク(最大ストローク)まで伸長した段階で、この推進機構24を縮長すると、外殻体22が推進機構24の縮長及び自重によって内殻体23を内部に納めるように降下する。このようにカッターヘッド25で地盤Gを掘削するとともに推進機構24を順次伸縮させることによってメタン解離回収装置20が地盤G内を推進し、メタンハイドレート層10に到達するとともにカッターヘッド25によってこのメタンハイドレート10が掘削される。
カッターヘッド25で掘削した地盤Gやメタンハイドレート10は、掘削とともに順次内殻体23の仕切り板23dとカッターヘッド25の間の導入室27に導入される。そして、このように地盤Gやメタンハイドレート10を掘削すると同時に、送水ポンプの駆動を開始して、例えば浅水域の海水(メタン濃度が低い水W)を取水するとともに送水管3を通じて導入室27に供給する。
これと同時に、揚水ポンプを駆動して、揚水管4で導入室27内の水(泥水、海水)W’を地上に汲み上げる。このとき、カッターヘッド25で地盤Gを掘削している際には、浅水域の海水Wと泥土が混合した泥水W’が揚水管4で地上に汲み上げられ、導入された泥土が導入室27内から順次除去される。一方、メタンハイドレート10を掘削している際には、順次導入室27内に導入されたメタンハイドレート10と送水管3から供給された浅水域の海水Wが撹拌混合され、メタンハイドレート10からメタンMが解離し、海水WにメタンMが溶解する。
メタンハイドレート10から解離したメタンMを含む海水W’は、揚水ポンプを駆動するとともに、導入室27内から順次メタンガス回収船12に向けて揚水される。そして、このようにして導入室27の海水W’を揚水する際に、海水W’がある深度まで上昇すると、溶解したメタンMがガス化して自噴し、海水W’から自動的に解離して海水面上のガスセパレーター21に導かれる。これにより、ガスセパレーター21のセパレータータンク内で容易に海水W’’とメタンガスMが分離され、メタンガスMが回収される。
一方、メタン解離回収装置20を引き上げる際には、外殻体22に設けられたグリッパーを軸線O1直交方向外側に突出させ、グリッパーで地盤面を押圧することにより、外殻体22を支持させる。そして、推進機構24を縮長して外殻体22の内部に内殻体23を納めるとともに、メタン解離回収装置20の下方の掘削孔に流動化処理土などの充填材(固化材)を充填して埋め戻す。また、グリッパーを外殻体22内に納めて外殻体22の支持状態を解除した段階で推進機構24を伸長すると、外殻体22が内殻体23に対し上方に相対的に移動する。そして、再度グリッパーで外殻体22を支持させる。このような操作を順次繰り返し行うことにより、メタン解離回収装置20が引き上がって回収でき、また、掘削孔を充填材で埋め戻すことが可能になる。
したがって、本実施形態のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置A及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法においては、メタン解離回収装置20を海底(あるいは湖底)の所定位置に設置した段階で、カッターヘッド回転支持機構26を駆動してカッターヘッド25を回転させるとともに、推進機構24によって内殻体23及びカッターヘッド25を外殻体22から軸線O1、O2、O3方向下方に進出させる。これにより、メタンハイドレート10の表層に硬い地盤Gが存在する場合であっても、カッターヘッド25によってこの地盤Gを掘削することが可能になる。また、このとき、自重と、外殻体22と地盤Gの間の周面摩擦とによって反力を確保し、推進機構24によって内殻体23及びカッターヘッド25を外殻体22の内部側から地盤G内に順次進出させて掘進することが可能になる。さらに、推進機構24によって内殻体23及びカッターヘッド25が外殻体22の内部から最大ストロークまで進出した段階で、推進機構24を縮長すると(内殻体23が外殻体22の内部側に退避するように推進機構24を駆動すると)、外殻体22が推進機構24の縮長及び自重によって内殻体23を内部に納めるように降下する。これにより、外殻体22に対し、推進機構24で内殻体23及びカッターヘッド25を順次相対的に進退させながら地盤G内を推進させることができ、カッターヘッド25によって地盤G及びメタンハイドレート10を掘削することが可能になる。また、メタンハイドレート10の表層に硬い地盤Gが存在する場合に限らず、同様にして、賦存深度が深いメタンハイドレート10の掘削も可能になる。
そして、カッターヘッド25で掘削した地盤Gやメタンハイドレート10は、掘削とともに順次内殻体23の仕切り板23dとカッターヘッド25の間の導入室27に導入される。このため、メタン濃度が低い水Wを送水管3を通じて導入室27に供給して混合撹拌するとともに、揚水管4で導入室27内の水(泥水、海水、湖水)W’を地上に汲み上げることによって、掘削した地盤Gやメタンハイドレート10を順次回収することが可能になる。また、このとき、揚水管4によって、メタンMが溶解した導入室27内の水W’を揚水すると、ある深度までこのメタンMが溶解した水W’が上昇するとともにメタンMがガス化して水W’から自動的に自噴する。これにより、容易に水W’’とメタンガスMを分離して、メタンガスMを生産(回収)することが可能になる。
さらに、推進機構24を伸縮させて、内殻体23に対し順次外殻体22を上方に移動させながら装置20(外殻体22、内殻体23、カッターヘッド25など)を引き上げて、回収することも可能になる。
よって、本発明のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置A及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法によれば、硬い地盤Gが存在する場合であっても、確実に地盤G及びメタンハイドレート10を掘削でき、従来と比較し、より効率的に、温度や圧力の条件を変化させることなくメタンハイドレート10からメタンガスMを生産することが可能になる。
以上、本発明に係るメタンハイドレートからのメタンガス生産装置及びこれを用いたメタンハイドレートからのメタンガス生産方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、略円筒状の外殻体22と内殻体23とカッターヘッド25をそれぞれ一つずつ備えてメタン解離回収装置20が構成されているものとしたが、図3から図5に示すように、外殻体22の内部に複数の内殻体23、カッターヘッド25を備えてメタン解離回収装置20を構成してもよい。また、図3から図5に示すように、外殻体22と内殻体23は、円形に限定する必要はなく、四角形などの多角形、ハニカム構造で構成されていてもよい。すなわち、外殻体22や内殻体23の形状、数などは、全体の反力、バランスが取りやすいように設定されていればよく、本実施形態のように限定する必要はない。
そして、図3から図5に示すように、外殻体22の内部に複数の内殻体23、カッターヘッド25を備えてメタン解離回収装置20を構成した場合には、メタン解離回収装置20全体の自重が増加するため、メタン解離回収装置20の推進力を増加させることできる。すなわち、メタン解離回収装置20の自重によって反力を確保することができ、より確実にカッターヘッド25によって地盤Gを掘削し、メタン解離回収装置20を推進させながら、効率的にメタンハイドレート10からメタンガスMを回収することが可能になる。また、複数の内殻体23及び各内殻体23に設けられたカッターヘッド25を適宜選択しながら掘削、沈設することができるため、メタン解離回収装置20全体の姿勢制御を行うことも可能になる。
また、本実施形態では、海底の表層型メタンハイドレート10からメタンガスMを生産するものとして説明を行ったが、湖底の表層型メタンハイドレート10に対しても、本実施形態と同様にしてメタンガスMを生産することが可能である。さらに、カッターヘッド25によって地盤Gを順次掘削してメタン解離回収装置20を地盤深くに推進させることも可能であるため、深層型メタンハイドレート10からメタンガスMを生産する場合に適用してもよい。
また、メタンハイドレート10の賦存深度が深い場合には、例えば図6及び図7に示すように、隔壁28によって内部が複数の室29で区画された函体30をメタン解離回収装置20の外殻体22の上に備えてメタンガス生産装置Aを構成してもよい。この函体30は、隔壁28ごとに電磁開閉弁などが設けられ、隣り合う室29同士が密閉、連通可能とされている。また、函体30内に対し、水を注排水するための注水/排水ポンプ、注水/排水管などの注排水機構31、函体30内に対し、空気を送排気する送排気管などの送排気機構32が設けられている。
そして、このように構成した函体30を備えた場合には、函体30の各室29に水を注水すると、函体30と注水した水による荷重をメタン解離回収装置20に作用させることができ、函体30内に空気を送気することにより、各室29から水を排水させることができる。すなわち、函体30内の注水量(貯水量)をコントロールして、メタン解離回収装置20に作用する荷重を自在に調整することが可能になる。これにより、カッターヘッド25による掘削時に函体30の各室29に水を注水し、函体30と注水した水の荷重をメタン解離回収装置20に作用させることで、確実に反力を得ることが可能になる。これにより、掘削効率ひいてはメタン回収効率を向上させることが可能になる。また、空気を送気して函体30の各室29から水を排水すると、各室29内の空気によって浮力が得られるため、メタン解離回収装置20を引き上げて回収する際に、この浮力を利用することができ、効率的にメタン解離回収装置20の回収作業を行うことが可能になる。
また、このような函体30は、図6に示すように、メタン解離回収装置20に掘進に応じ、函体30を沈設しながら、各室29ごと個別に形成した函体(セル)20を順次海上(あるいは湖上)で組み立てるようにしてもよい。さらに、図7に示すように、予め各室(セル)29が一体で組み立てられた函体30を用いてもよい。また、このような函体30、特に、図7に示す一体で組み立てられた函体30を用いる場合には、隔壁28を補強部材として兼用するなどして、函体30をメタン解離回収装置20で掘進した地盤Gの土留めに利用することも可能になる。
さらに、メタン解離回収装置20や函体30の外周部にウォータージェット機構5(ウォータージェット配管6、7)を設けてメタンガス生産装置Aを構成してもよい。このようにウォータージェット機構5を備えた場合には、ウォータージェット機構5から噴射したウォータージェット水流で周囲の地盤Gとの縁切り、周面摩擦抵抗の低減を図ることが可能になる。このため、掘進及びメタン解離回収装置20の引き上げ、回収の補助として利用することが可能になる。
さらに、本実施形態では、メタン濃度が低い水Wとして浅水域の海水を用いるものとしたが、メタン濃度が低い水であれば、必ずしも浅水域の水を用いることに限定しなくてもよい。
1 従来のメタンガス生産装置
2 解離チャンバー
3 送水管
4 揚水管
5 ウォータージェット機構
11 フロート
12 メタンガス回収船
15 ワイヤ
20 メタン解離回収装置
21 ガスセパレーター
22 外殻体
22a 側壁部
22b 天板部
22c 開口部
23 内殻体
23a 側壁部
23b 天板部
23c 開口部
23d 仕切り板
24 推進機構
25 カッターヘッド
25a 切刃
25b 軸部
26 カッターヘッド回転支持機構
27 導入室
28 隔壁
29 室
30 函体
31 注排水機構
32 送排気機構
A メタンガス生産装置
M メタン(メタンガス)
O1 外殻体の軸線
O2 内殻体の軸線
O3 カッターヘッドの軸線
T1 上下方向
W 浅水域の海水(メタン濃度が低い水)
W’ 導入室内の海水(メタンが溶解した水)

Claims (4)

  1. 海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産するための装置であって、
    筒状の側壁部と側壁部の上端側の開口を閉塞する天板部とを備えて形成された外殻体と、
    筒状の側壁部と側壁部の上端側の開口を閉塞する天板部とを備えて形成されるとともに、底部の開口部側と天板部側を区画する仕切り板を内部に備えて形成され、前記外殻体の軸線と上下の同方向に軸線を配した状態で、前記外殻体の内部に配設された内殻体と、
    前記内殻体と前記外殻体を上下方向に相対的に進退させる推進機構と、
    切刃を下方に向け、且つ回転軸線を前記内殻体の軸線と同軸上に配し、前記内殻体の開口部を閉塞させるように配設されたカッターヘッドと、
    前記内殻体に支持され、前記カッターヘッドを支持しつつ回転軸線周りに回転させるカッターヘッド回転支持機構と、
    前記仕切り板と前記カッターヘッドの間に形成された導入室にメタン濃度が低い水を供給するための送水管と、
    前記導入室内の水を揚水するための揚水管とを備えて構成されていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
  2. 請求項1記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、
    一つの前記外殻体に対し、前記内殻体と前記カッターヘッドと前記カッターヘッド回転支持機構が複数設けられていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置において、
    前記外殻体の上に内部が隔壁によって複数の室で区画された函体を備えるとともに、
    該函体の各室内に対し、水を注排水するための注排水機構と、空気を送排気するための送排気機構を備えて構成されていることを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産装置。
  4. 海底あるいは湖底に存在するメタンハイドレートからメタンガスを生産する方法であって、
    請求項1から請求項3のいずれかに記載のメタンハイドレートからのメタンガス生産装置を用いてメタンガスを生産することを特徴とするメタンハイドレートからのメタンガス生産方法。
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