JP2016108867A - ガスハイドレート回収方法およびその回収システム - Google Patents
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Abstract
【課題】水底に存在するガスハイドレートを水底から効率よく分離させ、塊状のガスハイドレートを回収するガスハイドレート回収方法およびその回収システムを提供する。【解決手段】ガスハイドレートmが存在する水底2を掘削装置3により削孔する削孔工程と、この削孔工程で形成された孔10の内部を掘削装置3の一部を配置した状態でガスハイドレートmを生成させることにより閉塞させる再ハイドレート化工程と、前記孔の内部に配置された掘削装置3の一部を介して再ハイドレート化したガスハイドレート層11の内部に圧力を加えて孔10の周囲のガスハイドレートmを破砕し水底2から塊状のガスハイドレートmを分離する破砕工程と、塊状のガスハイドレートmを捕集する捕集工程とを有する。【選択図】図4
Description
本発明は、水底を掘削して塊状のガスハイドレートを回収するガスハイドレート回収方法およびその回収システムに関するものであり、詳しくは水底に存在するガスハイドレートを水底から効率よく分離させ、塊状のガスハイドレートを回収するガスハイドレート回収方法およびその回収システムに関するものである。
海底に存在するメタンガスハイドレートを回収する回収システムが種々提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
特許文献1は、海底から洋上に延びるライザー管を配置して、このライザー管内に空気を供給して上昇流を発生させ、この上昇流により海底で掘削された塊状のガスハイドレートを融解させて洋上に搬送するメタンガスハイドレート(以下、ガスハイドレートという)の回収システムを提案する。
塊状のガスハイドレートが存在している領域は、ガスハイドレートを生成する温度と圧力の条件が満たされ、かつガスハイドレートを構成する原料ガスが近傍の海水に飽和状態まで溶解している。したがって、ライザー管の海底側の端部では、海水に溶解している原料ガスの濃度が高いので、ガスハイドレートの掘削にともないガスハイドレートから飛び出した原料ガスは海水に溶解することができない。この原料ガスは、周囲の海水と接触して新たなガスハイドレートを生成する(以下、本明細書では再ハイドレート化ということがある。)。
特許文献1には、海底から塊状のガスハイドレートを分離させる方法の詳細は記載されていないが、例えば水中重機により海底を掘削することで、塊状のガスハイドレートを海底から分離して捕集する方法が考えられる。
しかし水底に存在する表層型ガスハイドレート層は、海底地盤に比べると安定性が低いので水中重機による掘削作業中に崩落する可能性があり、水中重機がこの崩落に巻き込まれるリスクがある。
特許文献2は、箱体とその底面に設置され水平面内で回転するカッターヘッドとからなるメタン解離回収装置を水底に沈め、カッターヘッドで水底を掘削しつつ、箱体に供給される水でガスハイドレートを融解させて、水上に回収するガスハイドレートの回収システムを提案する。
この回収装置はカッターヘッドが回転する範囲でしか水底を掘削できないので、水底の広い範囲で掘削を行う場合は、水上の船舶から吊り下げられた回収装置を水平方向に移動させつつ行わなければならない。このときカッターヘッドにより掘削される範囲が互いに隣接するように回収装置を移動させることにより、水底に存在するガスハイドレートをもれなく回収できる。
しかし例えば400m以深の水底で船舶から吊り下げられた回収装置を水平方向に正確に任意の距離移動させることは、水深によって方向が異なったりする潮流の影響を受けるため極めて困難となる。そのため、この回収装置では、水底に広範囲に分布しているガスハイドレートを効率的に回収することができない。
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は水底に存在するガスハイドレートを水底から効率よく分離させ、塊状のガスハイドレートを回収するガスハイドレート回収方法およびその回収システムを提供することにある。
上記の目的を達成する本発明のガスハイドレート回収方法は、ガスハイドレートが存在する水底を掘削装置により削孔する削孔工程と、この削孔工程で形成された孔の内部を前記掘削装置の一部を配置した状態でガスハイドレートを生成させることにより閉塞させる再ハイドレート化工程と、前記孔の内部に配置された前記掘削装置の一部を介して再ハイドレート化したガスハイドレート層の内部に圧力を加えて前記孔の周囲のガスハイドレートを破砕し水底から塊状のガスハイドレートを分離する破砕工程と、前記塊状のガスハイドレートを捕集する捕集工程とを有することを特徴とする。
本発明のガスハイドレート回収システムは、ドリルパイプと、その先端に設置されるビットと、前記ドリルパイプの後端側から供給される流体を前記ドリルパイプの先端近傍または前記ビットの少なくとも一方から外部へ循環させる流体循環機構とを備える掘削装置を用いて、ガスハイドレートが存在する水底からこのガスハイドレートを回収するガスハイドレート回収システムであって、水底から水上に向かう軸方向に延びるライザー管と、このライザー管の水底側端部に連結されるカバーとを備え、前記ライザー管および前記カバーの内側に前記軸方向に沿って前進および後退可能な状態に前記ドリルパイプが配置され、前記流体循環機構が前記流体に圧力を加える加圧機構を有することを特徴とする。
本発明のガスハイドレートの回収方法によれば、削孔した孔内にガスハイドレートを生成させることにより閉塞させた後に、生成したガスハイドレート層の内部から圧力を加えることにより孔の周囲に広がる表層型ガスハイドレートに亀裂を生じさせて破砕することができる。この破砕により掘削装置を構成するビットやジェット噴流で掘削可能な範囲よりも広い範囲で塊状のガスハイドレートを水底から分離させることができるので、塊状のガスハイドレートを水底から効率よく回収することが可能となる。
掘削装置がドリルパイプとこのドリルパイプの先端に設置されるビットからなり、破砕工程が、ビットまたはドリルパイプの先端近傍の少なくとも一方から流体を供給し、この流体により再ハイドレート化したガスハイドレート層の内部に圧力を加える構成にすることもできる。
流体を介してガスハイドレート層の内部に水圧を発生させることができるので、水圧が発生するビット等を中心とする球状に亀裂を生じさせることができる。亀裂が広範囲に広がるので、塊状のガスハイドレートを水底から効率よく分離させることができる。
破砕工程を、ドリルパイプの周囲のガスハイドレート層に水圧をかけて亀裂を形成する亀裂形成工程と、流体を供給し続けて亀裂を成長させる亀裂成長工程とから構成することができる。
亀裂を形成した後に、この亀裂を成長させることができるので、亀裂がより広範囲に広がる。これにより塊状のガスハイドレートを水底からさらに効率よく分離させるには、有利である。
捕集工程が、孔の周囲の上方を覆う状態でカバーが配置され、このカバーで水底から分離して浮き上ってくる塊状のガスハイドレートを捕集する構成にすることもできる。
カバーを設置することにより、浮力により浮き上がるガスハイドレートを広い範囲で余さず捕集することができる。
掘削装置またはカバーの少なくとも一方にセンサが設置され、再ハイドレート化工程の後にセンサにより孔の閉塞状態を調べる検査工程を有し、孔の閉塞状態が良好であると判断された場合は破砕工程に移行し、不良であると判断された場合は予め定めた時間待機した後に再度検査工程が実施される構成にすることもできる。
一方で、再ハイドレート化工程の後に孔の閉塞状態を調べる圧力検査工程を有し、圧力検査工程が、破砕工程で再ハイドレート化したガスハイドレート層の内部に加えられる圧力よりも小さい検査圧力をガスハイドレート層の内部に加え、この検査圧力が予め定めた時間維持される場合は孔の閉塞状態が良好であると判断され破砕工程に移行し、検査圧力が維持されず不良であると判断された場合は予め定めた時間待機した後に再度圧力検査工程が実施される構成にすることもできる。
ガスハイドレート層に破砕のための圧力を加える前に、センサまたは検査圧力により孔の閉塞状態を調べることができる。そのため孔の閉塞状態が不良であり破砕のための圧力が逃げてしまい、亀裂が形成されない事態を回避するには有利である。
破砕工程の後に、孔の内部に載置された掘削装置を孔の内部の上方に移動させ、次いで再ハイドレート化工程と破砕工程に順に移行する構成にすることもできる。
深度の異なる位置でそれぞれ亀裂を形成することにより、深さ方向に広い範囲で亀裂を形成して塊状のガスハイドレートを水底から分離させることができる。
流体循環機構が、ドリルパイプの先端近傍から略水平方向に流体を噴射できる構成にすることもできる。
略水平方向に噴射する流体により、カバーやライザー管等に付着したガスハイドレートを取り除くことができるので、ガスハイドレートの搬送経路が閉塞することを防止するには有利となる。
本発明のガスハイドレート回収システムは、上述したガスハイドレート回収方法を実施するのに好適である。
以下、本発明のガスハイドレート回収方法およびその回収システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1に例示するように本発明のガスハイドレート回収システム1は、海や湖の底である水底2に存在する表層メタンハイドレートを掘削して塊状のガスハイドレートmを水底2から分離させる掘削装置3と、分離した塊状のガスハイドレートmを捕集して水上に搬送するライザー管4とを備えている。水上にはライザー管4により搬送されるガスハイドレートmを収集する収集船5が配置されている。
水深数百メートルから数千メートルの水底2には、ガスハイドレートmが密集してその一部が水底2から露出しているいわゆる表層型メタンハイドレートや、ガスハイドレートmが水底2の砂粒の間に分散しているいわゆる砂層型メタンハイドレートが存在している。本願発明のガスハイドレート回収システム1は、表層型メタンハイドレートを主に対象としているが、他のガスハイドレートの回収にも利用できる。
ガスハイドレートmは、水分子の立体的な網状構造のすき間にメタンガス等の分子が入り込み氷状の結晶になっているものである。本明細書において網状構造を構成する海水や湖水等を原料水といい、メタンガスやメタンガスを含む複数種類のガスで構成される天然ガス等を原料ガスということがある。
掘削装置3により水底2から分離された塊状のガスハイドレートmは、比重が0.9程度なので浮力によりライザー管4内を上昇していく。
ライザー管4内の圧力(水圧)は水深が浅くなるにしたがって低くなるので、ライザー管4の上方に行くにしたがって塊状のガスハイドレートmの一部が溶けて原料ガスgの気泡が発生することがある。また水深が浅くなるにしたがって原料ガスgが水中に溶解できる量が低下(溶解度が低下)するので、溶解できなくなった原料ガスgが気泡の状態になることがある。ライザー管4の水上側端部に近いほど気泡が発生し易く、その量が増えるので、ライザー管4内を流れる流体の密度は水上側端部に近いほど低くなる。
ライザー管4の水上側端部近傍と水底側端部近傍との流体の比重差が大きくなるので、この比重差によりライザー管4内には上昇流が発生する。この上昇流によってもガスハイドレートmは、水上に向かって搬送される。いわゆるエアリフトポンプと同様の効果を得られる。ガスハイドレートmに発生する浮力やライザー管4内の比重差を利用するので、膨大なエネルギーを必要とすることなくガスハイドレートmを水底2から水上まで搬送することができる。水底2が深い位置にある場合はこのメリットが顕著となる。
ライザー管4内に強制的に気体を送り込むエアリフトポンプを設置して、ライザー管4内の比重差をさらに大きくすることもできる。比重差が大きくなるとライザー管4内に発生する上昇流の流速が上昇するので、ガスハイドレートmの移動速度を上昇させて搬送効率を向上することができる。
ライザー管4の水上側端部に搬送された塊状のガスハイドレートmは収集船5により回
収され貯蔵される。
収され貯蔵される。
次に、掘削装置3により塊状のガスハイドレートmを水底2から分離させる方法について説明する。この実施形態の掘削装置3は、収集船5から水底2に向かって延びる筒状のドリルパイプ6と、ドリルパイプ6の水底側の先端に設置されるビット7と、収集船5に設置される流体循環機構8とからなる。
ドリルパイプ6はライザー管4の内側に配置され、水底2から水上に向かうライザー管4の軸方向に沿って前進および後退することができる。ライザー管4の水底側端部には、水底側に向かって拡開したカバー9を設置することもできる。
流体循環機構8は、水上側に位置するドリルパイプ6の後端側からその内部に流体wを供給し、ドリルパイプ6の先端近傍に形成される開口部またはビット7の少なくとも一方から外部へ流体wを循環させる。
図2に例示するように、まず掘削装置3のビット7を水底2に接触させた状態で回転させて削孔する(削孔工程)。ビット7は、例えばドリルパイプ6の先端に固定され、ドリルパイプ6を回転させることにより回転する。一方で、タービンモータを設置したビット7をドリルパイプ6の先端に回転可能な状態で設置し、ドリルパイプ6を介して供給される流体wの圧力によりビット7を回転させる構成にすることもできる。
このとき、流体循環機構8からドリルパイプ6に供給される流体wを、例えばビット7の先端やドリルパイプ6の先端近傍に形成される開口部のいずれか一方または両方から水底2に形成される孔10内に噴射している。この流体wは、例えば収集船5の近傍で取水した海水や湖水で構成することができる。この海水等は水底2近傍の海水等に比べて、海水等の中に溶けている原料ガスgの濃度が低いので、孔10内の水の原料ガス濃度を下げ、孔10内でガスハイドレートが生成される再ハイドレート化を抑制することができる。またこの海水等は水底2の近傍の海水等に比べて温度も高いので、孔10内の水温をガスハイドレートの生成条件よりも高くして、再ハイドレート化を抑制することができる。
ビット7先端等から噴射する流体wは、水上近傍の海水等に限らず、削孔工程における孔10内での再ハイドレート化を抑制できる流体であればよい。例えば、水底2近傍の海水等に比べて、原料ガス濃度が低いまたは水温が高い海水等であれば水底2近傍や中層で取水した海水等であってもよい。また石油掘削リグで利用される泥水等を利用することもできる。
ビット7先端やドリルパイプ6の先端近傍から噴射される流体wが、ライザー管4の下端部やカバー9内から外部に流出することを抑制するために、カバー9等は水底2に接する状態または水底2とのすき間が可能な限り小さくなる状態で配置することが望ましい。この構成によれば、ビット7先端等から噴射される流体wが、ライザー管4内を上昇するので、ライザー管4内の上昇流の流速を大きくして、塊状のガスハイドレートmの搬送効率を向上させるには有利となる。
予め定めた深さの孔10が形成された後に、再ハイドレート化工程に移りビット7の回転を停止するとともに、流体wの循環を停止する。これにともない孔10内の水はその場に留まるので、周囲のガスハイドレートから原料ガスgが溶けだし、原料ガス濃度が非常に高い状態となる。またガスハイドレートが存在する水底2の水温および圧力(水圧)は、ガスハイドレートの生成条件を満たしている。
そのため、図3に例示するように孔10内ではガスハイドレートが生成し、この生成し
たガスハイドレートで形成されるガスハイドレート層11により孔10が閉塞される(再ハイドレート化工程)。ビット7の回転および流体wの循環停止から例えば1〜10分程度で、削孔工程に必要となる時間と比べると短時間で孔10は生成したガスハイドレート層11により閉塞される。このとき、ビット7およびドリルパイプ6の先端近傍は、孔10内に載置された状態であり、ガスハイドレート層11内に密封される状態となる。
たガスハイドレートで形成されるガスハイドレート層11により孔10が閉塞される(再ハイドレート化工程)。ビット7の回転および流体wの循環停止から例えば1〜10分程度で、削孔工程に必要となる時間と比べると短時間で孔10は生成したガスハイドレート層11により閉塞される。このとき、ビット7およびドリルパイプ6の先端近傍は、孔10内に載置された状態であり、ガスハイドレート層11内に密封される状態となる。
再ハイドレート化に必要となる時間は、孔10内の水圧と水温に依存する。また海象状況により掘削装置3の先端のビット7等が孔10内で水平方向や鉛直方向に振動したりすると再ハイドレート化する時間が長くなる傾向にある。そのため、条件によってはビット7の回転および流体wの循環停止から10分以上かかることもあり、例えば60分程度となる可能性もある。
再ハイドレート化工程では、流体wの循環を継続することもできる。流体wの循環を継続させることにより、孔10内の水を撹拌して原料ガス濃度を均一にさせることができる。孔10内で原料ガス濃度の低い部分が発生することを抑制できるので、再ハイドレート化を促進することができる。このとき、循環させる流体wの流量は、削孔工程における流体wの流量よりも小さくすることが望ましい。
ライザー管4の水底側端部に連結されているカバー9の内側壁面には、三次元ソナーで構成されるセンサ12が設置されている。このセンサ12から、孔10に向かって超音波を発振してその反射音を解析することにより、孔10の内壁面13とドリルパイプ6等の間が、液相の状態であるか、または再ハイドレート化により固相のガスハイドレート層11が形成されている状態かを検査する(検査工程)。
この検査により、ガスハイドレート層11が十分に形成されず孔10の閉塞状態が不良であると判断された場合は、予め定めた時間待機した後に再度検査する。このときの待機時間は、例えば1〜5分程度で、再ハイドレート化に必要とされる時間よりも短時間とすることが望ましい。待機時間を設けずに検査を連続的に行う構成にすることもできる。閉塞状態が良好であると判断された場合には、次の工程に進む。
センサ12は、三次元ソナーに限らず、孔10の閉塞状態を検査できるものであればよい。例えば、センサ12をレーザセンサやカメラ等で構成することもできる。またセンサ12の設置位置はカバー9に限らず、孔10の閉塞状態を検査できる位置であればよい。例えばセンサ12をライザー管4に設置することもでき、ドリルパイプ6に設置することもできる。
一方で、再ハイドレート化工程の後に、ビット7を介してガスハイドレート層11の内部に圧力(以下、検査圧力ということもある)を加えて、この検査圧力が予め定めた時間維持されるかを検査する方法を採用することもできる(圧力検査工程)。
検査圧力は、破砕工程の初めにガスハイドレート層11の内部に加える圧力の50%〜80%くらいであるとよい。検査圧力は、流体循環機構8で流体wを加圧することによりガスハイドレート層11の内部に加えることができる。固相のガスハイドレート層11が十分に形成されていない場合は、流体wが孔10から外に流れてしまうので検査圧力が維持されず、孔10の閉塞状態が不良であると判断される。この場合は、1〜5分程度の予め定めた時間待機した後に再度検査する。閉塞状態が良好であると判断された場合には、次の工程に進む。
前述の検査工程または圧力検査工程を行わない方法もある。ガスハイドレートが生成して孔10を十分に閉塞するまでの時間は、孔10内の水圧と水温に依存する。そのため孔
10の近傍の水圧と水温に基づき、再ハイドレート化工程における待機時間を予め決定しておくこともできる。ある領域の水底2において例えば4分でガスハイドレート層11が十分に形成されることがわかっていれば、検査工程等を行わずに、ビット7の回転および流体wの循環の停止から4分待機すればよい。
10の近傍の水圧と水温に基づき、再ハイドレート化工程における待機時間を予め決定しておくこともできる。ある領域の水底2において例えば4分でガスハイドレート層11が十分に形成されることがわかっていれば、検査工程等を行わずに、ビット7の回転および流体wの循環の停止から4分待機すればよい。
再ハイドレート化工程で孔10内にガスハイドレート層11を形成させた後に、図4に例示するようにガスハイドレート層11の内部に圧力を加えて亀裂cを形成し、この亀裂cを孔10の周囲に広がるガスハイドレートmに伝播させることにより、水底2に存在するガスハイドレートを破砕する(破砕工程)。この実施形態では、流体循環機構8に併設される加圧機構により流体wを加圧することで、ビット7の端部の流体wの圧力を上昇させ、ガスハイドレート層11の内部に圧力(以下、破砕圧力ということがある)を発生させる。この破砕圧力により再ハイドレート化工程で形成されるガスハイドレート層11から、孔10の外側に広がるガスハイドレートmに達する亀裂cが形成される。亀裂cにより塊状のガスハイドレートmが水底2から分離される。この破砕圧力は、前述の圧力検査工程における検査圧力よりも大きい圧力である。
破砕工程の際に、ガスハイドレート層11の内部に圧力を加えて亀裂cを形成する亀裂形成工程と、流体循環機構8により流体wを供給し亀裂cに沿って流すことにより、亀裂cを成長させる亀裂成長工程とを順に行う構成にすることもできる。亀裂成長工程では、供給される流体wにより亀裂cが押し広げられるので、塊状のガスハイドレートmを水底2から分離させ易くなる。
ドリルパイプ6の先端近傍に流体wの出口となる開口部が形成されている場合は、この開口部を介してもガスハイドレート層11およびその周囲のガスハイドレートに圧力が加えられるので、亀裂形成工程ではより広い範囲に広がる亀裂cを形成し易くなる。また亀裂成長工程では、開口部から略水平方向に流体wを高圧で圧入させることにより、亀裂cの成長を促進してかつ塊状のガスハイドレートmを水底2から分離させ易くすることができる。
図5に例示するように亀裂cにより水底2から分離された塊状のガスハイドレートmは、浮力により上昇し、孔10の周囲の上方を覆う状態で配置されるカバー9に捕集される。カバー9に捕集された塊状のガスハイドレートmは、その上方に連結されるライザー管4を経由して収集船5により回収される。
破砕工程により破砕した範囲よりも深い位置にガスハイドレートがまだ存在している場合には、破砕され塊状のガスハイドレートmが浮上した後の水底2に対して、前述の削孔工程から捕集工程までを再び実行する。水平方向に移動した位置のガスハイドレートを回収する場合には、ドリルパイプ6を後退させた後に、収集船5を移動させることにより掘削装置3をライザー管4とともに水平方向に移動させてから、前述の削孔工程から捕集工程までを実行する。
掘削装置3の一部を再ハイドレート化したガスハイドレート層11の内部に密閉した後に、圧力を加えて水底2を破砕することにより、掘削装置3を構成するビット7で掘削可能な範囲よりも広い範囲で塊状のガスハイドレートmを水底から分離させることができる。そのため塊状のガスハイドレートmを水底から効率よく分離させ、回収することができる。
例えば直径が0.3m程度のビット7を有する掘削装置3であっても、例えば直径3.0〜10.0mの範囲で亀裂cを生じさせて、塊状のガスハイドレートmを水底2から分離させることができる。またビット7により掘削する範囲も小さいので、カッターヘッド等を利用して水底を掘削する場合に比べて極めて短時間でかつ簡単に削孔することができる。
また亀裂cを発生させる範囲は、孔10の深さや破砕圧力を調整することで制御できる。そのため水底2に広範囲に分布しているガスハイドレートを回収する場合、掘削装置3を水平方向に正確に移動させなくても、亀裂cを発生させる範囲を制御することで、もれなく効率的にガスハイドレートを回収することができる。
水底2から分離して浮上する塊状のガスハイドレートmを余さず回収するために、亀裂cを発生させる範囲は、カバー9の直径よりも小さい範囲とすることが望ましい。亀裂cを発生させる範囲よりもライザー管4の直径が大きい場合は、カバー9を設置しない構成にすることもできる。
ドリルパイプ6を含む掘削装置3が収集船5から吊り下げられた状態となるので、水底2のガスハイドレートが崩落したとしても、掘削装置3がこの崩落に巻き込まれるおそれがない。
ガスハイドレートmを塊状(固体)のまま収集船5で回収することができるので、気体の状態で回収する場合に必要であった気液分離装置や圧縮装置などの設備が不要となり、収集船5に必要となる設備等をコンパクトに構成することができる。また耐圧容器等が不要となり、体積も小さくなるので、運搬の際の取り扱いも格段に良くすることができる。
図6に例示するように、ライザー管4およびカバー9に対してドリルパイプ6を水上側に後退させて、ドリルパイプ6の端部近傍の開口部から略水平方向に流体wを噴射する構成にすることもできる。これによりカバー9やライザー管4の内側に付着したガスハイドレートを融かしたり、剥がしたりできるので、その搬送管路が閉塞することを防止できる。
図7〜9に例示するように、破砕工程を深度の異なる位置で複数回実行する構成にすることもできる。まず削孔工程で比較的深い孔10を形成し、この孔10の底部で亀裂cを形成する。その後、ドリルパイプ6を後退させて孔10の比較的浅い位置で停止させ、ガスハイドレート層11を形成させる(図7)。次に図8に例示するようにガスハイドレート層11が形成された後に、ガスハイドレート層11の内部に破砕圧力を加えて、孔10の開口近傍に亀裂cを形成する。
二回に分けて形成した亀裂cが互いにつながったとき、図9に例示するように塊状のガスハイドレートmは水底2から分離して浮上する。深度の異なる位置で二回に分けて亀裂cを形成することにより、深さ方向に広い範囲で塊状のガスハイドレートmを水底2から分離させることができる。
このとき、破砕圧力を大きくすれば、水平方向にも大きく広がる亀裂cを形成することができる。深度の深い側から浅い側に位置を移動させながら実行する破砕工程は、二回に限らず三回以上とすることもできる。
掘削装置3は、ドリルパイプ6、ビット7および流体循環機構8からなる構成に限定されない。掘削装置3は、水底を削孔し、この孔内が生成したガスハイドレート層11により閉塞された後に、このガスハイドレート層11の内部に衝撃を発生させてガスハイドレート層11およびその周囲のガスハイドレートmに亀裂を形成することができれば、他の構成であってもよい。
例えば収集船5から水底2に向かって延びる円柱状のロッドと、ロッドの水底側の先端に設置される振動体とからなる掘削装置3を利用することもできる。この場合は、水底2に押し付けた振動体を振動させることにより、ガスハイドレートを融かしながら削孔していき(削孔工程)、この振動を停止させて、再ハイドレート化により孔内にガスハイドレート層を形成する(再ハイドレート化工程)。その後、ロッドを介してガスハイドレート層の内部に衝撃を発生させ、亀裂cを形成する(破砕工程)。
1 ガスハイドレート回収システム
2 水底
3 掘削装置
4 ライザー管
5 収集船
6 ドリルパイプ
7 ビット
8 流体循環機構
9 カバー
10 孔
11 ガスハイドレート層
12 センサ
13 内壁面
m ガスハイドレート
g 原料ガス
w 流体
c 亀裂
2 水底
3 掘削装置
4 ライザー管
5 収集船
6 ドリルパイプ
7 ビット
8 流体循環機構
9 カバー
10 孔
11 ガスハイドレート層
12 センサ
13 内壁面
m ガスハイドレート
g 原料ガス
w 流体
c 亀裂
Claims (10)
- ガスハイドレートが存在する水底を掘削装置により削孔する削孔工程と、この削孔工程で形成された孔の内部を前記掘削装置の一部を配置した状態でガスハイドレートを生成させることにより閉塞させる再ハイドレート化工程と、前記孔の内部に配置された前記掘削装置の一部を介して再ハイドレート化したガスハイドレート層の内部に圧力を加えて前記孔の周囲のガスハイドレートを破砕し水底から塊状のガスハイドレートを分離する破砕工程と、前記塊状のガスハイドレートを捕集する捕集工程とを有することを特徴とするガスハイドレート回収方法。
- 前記掘削装置がドリルパイプとこのドリルパイプの先端に設置されるビットからなり、
前記破砕工程が、前記ビットまたは前記ドリルパイプの先端近傍の少なくとも一方から流体を供給し、この流体により前記再ハイドレート化したガスハイドレート層の内部に圧力を加える請求項1に記載のガスハイドレート回収方法。 - 前記破砕工程が、前記ドリルパイプの周囲のガスハイドレート層に水圧をかけて亀裂を形成する亀裂形成工程と、前記流体を供給し続けて前記亀裂を成長させる亀裂成長工程とからなる請求項2に記載のガスハイドレート回収方法。
- 前記捕集工程が、前記孔の周囲の上方を覆う状態でカバーが配置され、このカバーで水底から分離して浮き上ってくる前記塊状のガスハイドレートを捕集する請求項1〜3のいずれかに記載のガスハイドレート回収方法。
- 前記掘削装置または前記カバーの少なくとも一方にセンサが設置され、前記再ハイドレート化工程の後に前記センサにより前記孔の閉塞状態を調べる検査工程を有し、
前記孔の閉塞状態が良好であると判断された場合は前記破砕工程に移行し、不良であると判断された場合は予め定めた時間待機した後に再度前記検査工程が実施される請求項1〜4のいずれかに記載のガスハイドレート回収方法。 - 前記再ハイドレート化工程の後に前記孔の閉塞状態を調べる圧力検査工程を有し、
前記圧力検査工程が、前記破砕工程で前記再ハイドレート化したガスハイドレート層の内部に加えられる圧力よりも小さい検査圧力を前記ガスハイドレート層の内部に加え、この検査圧力が予め定めた時間維持される場合は前記孔の閉塞状態が良好であると判断され前記破砕工程に移行し、前記検査圧力が維持されず不良であると判断された場合は予め定めた時間待機した後に再度前記圧力検査工程が実施される請求項1〜4のいずれかに記載のガスハイドレート回収方法。 - 前記破砕工程の後に、前記孔の内部に載置された前記掘削装置を前記孔の内部の上方に移動させ、次いで前記再ハイドレート化工程と前記破砕工程に順に移行する請求項1〜6のいずれかに記載のガスハイドレート回収方法。
- ドリルパイプと、その先端に設置されるビットと、前記ドリルパイプの後端側から供給される流体を前記ドリルパイプの先端近傍または前記ビットの少なくとも一方から外部へ循環させる流体循環機構とを備える掘削装置を用いて、ガスハイドレートが存在する水底からこのガスハイドレートを回収するガスハイドレート回収システムであって、
水底から水上に向かう軸方向に延びるライザー管と、このライザー管の水底側端部に連結されるカバーとを備え、前記ライザー管および前記カバーの内側に前記軸方向に沿って前進および後退可能な状態に前記ドリルパイプが配置され、
前記流体循環機構が前記流体に圧力を加える加圧機構を有することを特徴とするガスハイドレート回収システム。 - 前記流体循環機構が、前記ドリルパイプの先端近傍から略水平方向に前記流体を噴射できる構成を有する請求項8に記載のガスハイドレート回収システム。
- 前記カバーにセンサが設置され、該センサが、前記ビットにより形成された孔が、生成したガスハイドレートにより閉塞する閉塞状態を検知する請求項8または9に記載のガスハイドレート回収システム。
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JP2014248593A JP2016108867A (ja) | 2014-12-09 | 2014-12-09 | ガスハイドレート回収方法およびその回収システム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018008535A1 (ja) * | 2016-07-04 | 2018-01-11 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | ガスハイドレート層における水圧破砕方法と水圧破砕システム |
JP2021043165A (ja) * | 2019-09-13 | 2021-03-18 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 | 気液混相流の流動様式評価装置、流動様式評価方法、及びガス生産システム |
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2014
- 2014-12-09 JP JP2014248593A patent/JP2016108867A/ja active Pending
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