JP2007314954A - 地質ボーリング調査における試料採取装置および試料採取方法 - Google Patents

地質ボーリング調査における試料採取装置および試料採取方法 Download PDF

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【課題】硬岩、軟岩、砂質土など地質が異なっても、ビットを効果的に冷却し試料の洗掘を防止可能な試料採取装置と試料採取方法を提供すること。
【解決手段】本発明の試料採取装置は、下端にビット2が取付けられたアウターチューブ3の内側に、水路Wを介在させて、インナーチューブ4を嵌合してなる試料採取装置において、アウターチューブ3の先端内周面とインナーチューブ4の先端外周面との間に形成される水路Wの下端部を、ビット2の刃部2a内周側に向って傾斜させた斜内向き水路Wとし、かつ、ビット2の刃部2a相互間の凹所2bに臨むアウターチューブ3の下端面21に、前記斜内向き水路Wに上端が連なる急傾斜の第一傾斜面19と、前記第一傾斜面19の下端から始まりアウターチューブ3の外周面22で終わる緩傾斜の第二傾斜面18を形成したことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、地質ボーリング調査における試料採取装置および試料採取方法に係り、特に、硬岩、軟岩および砂質土のいずれの地質でも単一の試料採取装置によりビットを適正に冷却しつつ不撹乱試料を採取可能な試料採取装置および試料採取方法に関する。
従来の地質ボーリング装置の概略を図5に示す。同図で1はウォーターウェイ(ビットの刃部相互間凹所)、2はビット、3はアウターチューブ、4はインナーチューブ、5はロッド、6は試料、7はポンプ、8はデリバリーホース、9はサクションホース、10はウォータースイベル、11はスイベルヘッド、12は巻上機、13は変速装置・操縦装置、14はオイルタンク、15はオイルポンプ、16は伝動装置、17は原動機である。
地盤をボーリングする際、原動機17の回転力が伝導装置16と変速装置・操縦装置13を介してスイベルヘッド11に伝わりロッド5を回転させる。ロッド5の下端にアウターチューブ3とインナーチューブ4が連結されており、これらアウターチューブ3とインナーチューブ4がロッド5と一体に回転する。アウターチューブ3の下端にビット2が取り付けられていて、このビット2で地盤を円筒状に掘削する。ビット2は複数の刃部を周方向等間隔に備え、刃部相互間に削孔水やスライムを流し出すウォーターウェイ1(凹所)が形成される。
ビットによる掘削中、ビットの冷却や削孔により発生したスライムを地上に排出するために、ウォーターウェイ1から削孔水を流出させる必要がある。削孔水は、サクションホース9、ポンプ7、デリバリーホース8、ウォータースイベル10、ロッド5内部を介して、アウターチューブ3とインナーチューブ4との間の筒状水路に供給される。この筒状水路の下端はビットの刃部相互間に向けて開口しており、削孔水によってビットの刃部を冷却するとともに、掘削により生じたスライムを削孔水と共にアウターチューブ3の外側に排出する。ビット2により円筒状に掘削した内側のコア部分が、試料6としてインナーチューブ4の内側に収受される。試料6は巻上機12によりロッド5を地上に引き上げた後に回収する。
従来の地質ボーリング調査では、ウォーターウェイ1から流出する削孔水はビットの冷却やスライムの除去を主な目的としている。このため、削孔水はその水量にかかわらず下向きに流出するようになっている。従って、軟岩や砂質土をボ−リングする際に、削孔水によって試料6が洗掘されやすいという問題がある。
このような試料の洗掘を防止すべく、ウォーターウェイの形状に工夫を加えた試料採取装置として、特許文献1の「軟岩試料採取装置と軟岩の簡易試料採取装置」がある。この装置は、アウターチューブ・ビット内周面とインナーチューブ外周面との間の水路の下端部において、インナーチューブ先端外周面を先細り状のテーパ面に形成して前記水路に連なる斜内向き水路を形成し、かつ、前記水路からビットの刃部相互間の凹所に連通する導出水路を刻設したものである。
特開平10−325135号公報
しかし、この特許文献1の装置は軟岩専用のものであり、砂質土を対象とした少量の削孔水でボーリングする場合や、硬岩を対象とした大量の削孔水が必要な場合は考慮されていない。このため、砂質土をボーリングする場合は試料が洗掘されて乱れを生じ、逆に硬岩をボーリングする場合はビットが十分に冷却されないなどの不都合がある。
一方、水路の改良以外の工夫により試料の乱れを抑制する手法として、削孔水に懸濁気水を用いた気泡式ボーリングエ法などがある。しかし、この工法は特別な装置や技術が必要でコストがかかる。
本発明の目的は、硬岩、軟岩、砂質土など地質が異なっても、ビットを効果的に冷却し試料の洗掘を防止可能な試料採取装置と試料採取方法を提供することにある。
すなわち、硬岩をボーリングする際には、ビットを効率的に冷却する必要があり、大量の削孔水を圧送するとともに、下向きに流出させてビットに接触させる必要がある。
また、軟岩をボーリングする際には、削孔水が試料の粘土分を洗掘し乱れを生じる恐れがある。そのため、削孔水量を硬岩と比べて抑えるとともに、削孔水と試料の接触を防ぐために、削孔水をやや外向きに流出させる必要がある。
また、砂質土は軟岩と比べて固結度がさらに低いため、削孔水が接触した場合の乱れが大きい。このため、砂質土をボーリングする際には、削孔水量は軟岩に比べてさらに抑えるとともに、やや外向きに流出させる必要がある。
従来型のウォーターウェイでは、削孔水が下向きに流出するため、軟岩や砂質土の不撹乱サンプリングが困難であり、軟岩や砂質土の不撹乱サンプリングに対応可能なウォーターウェイの開発が課題であった。さらに、地盤内の地質は、複雑な構造をなし、異なる地質が混在している場合が多い。そのため、各地質に応じて水路の形状を変えるのではなく、各地質に応じた削孔水量を送圧することで、自動的に地質に適した方向に削孔水が流出する機構を有するウォーターウェイを開発することが課題であった。
前記課題を解決するため、本発明の試料採取装置は、下端にビットが取付けられたアウターチューブの内側に、水路を介在させて、インナーチューブを嵌合してなる試料採取装置において、アウターチューブの先端内周面とインナーチューブの先端外周面との間に形成される水路の下端部を、ビットの刃部内周側に向って傾斜させた斜内向き水路とし、かつ、ビットの刃部相互間の凹所に臨むアウターチューブの下端面に、前記斜内向き水路に上端が連なる急傾斜の第一傾斜面と、前記第一傾斜面の下端から始まりアウターチューブの外周面で終わる緩傾斜の第二傾斜面を形成したことを特徴とする。
また、本発明の試料採取方法は、請求項1の試料採取装置を使用し、硬岩をボーリングする場合は大量の削孔水を前記斜内向き水路に供給して前記斜内向き水路の下端部からビットの半径方向内方に直接的に放水し、軟岩をボーリングする場合は中量の削孔水を前記斜内向き水路に供給して前記第一傾斜面に沿わせて急傾斜でビットの半径方向外方に向けて放水し、砂質土をボーリングする場合は少量の削孔水を前記斜内向き水路に供給して前記第一傾斜面から第二傾斜面に沿わせて緩傾斜でビットの半径方向外方に向けて放水するようにしたことを特徴とする。
本発明の試料採取装置ないし試料採取方法は、アウターチューブの下端面に、斜内向き水路に上端が連なる急傾斜の第一傾斜面と、前記第一傾斜面の下端から始まりアウターチューブの外周面で終わる緩傾斜の第二傾斜面を形成したので、硬岩対応として大量の削孔水を供給すると斜内向き水路の下端部からビットの半径方向内方に直接的に削孔水が流出し、軟岩対応として中量の削孔水を供給すると斜内向き水路の下端部から前記第一傾斜面に沿って急傾斜でビットの半径方向外方に向けて削孔水が流出し、砂質土対応として少量の削孔水を供給すると斜内向き水路の下端部から第一傾斜面から第二傾斜面に沿って急傾斜でビットの半径方向外方に向けて削孔水が流出する。
このように、本発明の試料採取装置は削孔水量に応じて削孔水の流れ方向が変わるので、地質が変化しても試料採取装置を交換することなく削孔水量だけを地質に応じて増減させることでビットの効果的冷却と試料の洗掘を防止することができる。
本発明は以上のように、ビットの刃部相互間の凹所に臨むアウターチューブの下端面に、前記斜内向き水路に上端が連なる急傾斜の第一傾斜面と、前記第一傾斜面の下端から始まりアウターチューブの外周面で終わる緩傾斜の第二傾斜面を形成したことを特徴とするから、硬岩を試料採取する場合は大量の削孔水を供給することにより前記第一傾斜面と第二傾斜面の影響を受けることなく斜内向き水路からビットの半径方向内方に向けて直接的に削孔水を流出させることができてビットの効果的な冷却を可能にする。また、軟岩を試料採取する場合は中量の削孔水を供給することにより斜内向き水路から前記第一傾斜面に沿ってビットの半径方向外方に向けて急傾斜で削孔水を流出させることができるため、ビットに必要な冷却と効果的なスライム排出に加えて試料の洗掘防止を可能にする。また、砂質土を試料採取する場合は少量の削孔水を供給することにより斜内向き水路から前記第一傾斜面と第二傾斜面に沿ってビットの半径方向外方に向けて緩傾斜で削孔水を流出させることができるため、ビットに必要な冷却と効果的なスライム排出に加えて試料の洗掘防止を可能にする。このため、複雑な地質構造を有する地盤においても削孔水量の増減調節のみで試料採取装置を交換する必要がないから試料採取の大幅な効率向上を実現することができる。
以下に本発明の実施形態を図1〜図4Bに基づいて説明する。図示するように、本発明に係る試料採取装置はアウターチューブ3の下面形状を工夫している。アウターチューブ3とインナーチューブ4との間に形成される円筒状の水路Wや、アウターチューブ3の内周面下端部とインナーチューブ4の外周面下端部をテーパ状にして形成した斜内向き水路Wは従来のものと同様でよい。
アウターチューブ3の下面形状は、詳しくは図2のように、ビット2の6つの刃部2a相互間のウォーターウェイとも呼ばれる6箇所の凹所2bに臨むアウターチューブ3の下面を、斜内向き水路Wの下端部に上端が連なる急傾斜の第一傾斜面19と、この第一傾斜面19の下端から始まりアウターチューブ3の外周面で終わる緩傾斜の第二傾斜面18で構成している。ビット2の刃部2aは従来同様にアウターチューブ3の下面に固定される。
第一傾斜面の傾斜角θは例えば約60°とする。第二傾斜面の傾斜角θは例えば約25°とする。傾斜角θと傾斜角θは、傾斜角θ<傾斜角θの大小関係があればよい。傾斜角θやθは60°や25°の角度に限定されるものではない。従って、傾斜角θを例えば80°、70°、50°のいずれかとし、傾斜角θを例えば10°、15°、20°のいずれかとするような組み合わせも可能である。
凹所2bは前述の如く削孔水が流れるところからウォーターウェイとも呼ばれる。この凹所2bは、図1〜図4Aに示すように、アウターチューブの下面21、刃部2aの側壁20、アウターチューブの下面の一部である第一傾斜面19と第二傾斜面18で構成される。第一傾斜面19は、アウターチューブ下面21の内側縁部に形成したV字状の切り込みであって、第二傾斜面18と連続した三角錐形状を有する構造である。第一傾斜面19の三角錐形状の頂点は、アウターチューブ3の内周面にある。第二傾斜面18はアウターチューブ下面21に形成した三角錐形状の切り込みであり、その頂点はアウターチューブ3の外周面22と一致する。刃部2aの側壁20は鉛直面であり、かつ、側壁20相互間が凹所2bの外方向に向けてややテーパー状に拡がっている。
本発明の試料採取装置は以上のように構成され、地上よりロッド5内に圧送された削孔水は、アウターチューブ3とインナーチューブ4との間の水路Wを流れてビット2の刃部2a相互間凹所(ウォーターウェイ)2bに到達する。凹所2bの両側を画成する側壁20は、前述のように外方向に向けてやや拡がっている。このように、側壁20を外向きにやや拡げる構造とすることで、軟岩や砂質土対応の削孔水量が中程度以下の場合に、アウターチューブ3とインナーチューブ4の隙間を下向きに流れてきた削孔水が側壁20に沿って外向きに導かれながら流出する。この際、硬岩対応で削孔水量が多い場合は、アウターチューブとインナーチ−ブの隙間を流れて凹所2bに到達した削孔水は、下向きの流速が大きいため側壁20に沿って外向きに導かれにくい。このため相当量の削孔水が凹所2bから下向きに流出してビット2の刃部2aを効果的に冷却する。
図4A〜図4Cは、硬岩、軟岩および砂質土の地盤を本発明装置で掘削する際の削孔水の流れを模式的に示したものである。図4Aに示すように、硬岩をボーリングして試料採取する際の削孔水(水量大)の流れ方向は、斜内向き水路Wの延長線方向、すなわちビット2の半径方向内方にやや傾斜した下向き方向である。図4Bは軟岩をボーリングして試料採取する際の削孔水(水量中)の流れ方向を示し、第一傾斜面19に沿った流れとなる。図4Cは砂質土をボーリングして試料採取する際の削孔水(水量少)の流れ方向を示し、第一傾斜面19から第二傾斜面18に沿った流れとなる。従って、削孔水量の増減調節のみでビットの冷却、スライムの排出および試料の洗掘防止を可能にし、複雑な地質構造を有する地盤においても効率的に試料採取を行うことができる。なお、硬岩、軟岩および砂質土に対する具体的な削孔水量は、試料採取装置の大きさ等の設計条件や地盤の状態を勘案して決定する。例えば、硬岩:10リットル/分、軟岩:5リットル/分および砂質土:2〜3リットル/分の削孔水量とすることができる。
本発明に係る試料採取装置の縦断面図。 本発明に係る試料採取装置の下面図。 図2のIII−III線矢視側面図。 硬岩をボーリングする際の削孔水流れを示す試料採取装置の縦断面図。 軟岩をボーリングする際の削孔水流れを示す試料採取装置の縦断面図。 砂質土をボーリングする際の削孔水流れを示す試料採取装置の縦断面図。 従来のボーリング装置の概略側面図。
符号の説明
1 ウォーターウェイ(ビット凹所)
2 ビット
2a 刃部
2b 凹所
3 アウターチューブ
4 インナーチューブ
5 ロッド
6 試料
7 ポンプ
8 デリバリーホース
9 サクションホース
10 ウォータースイベル
11 スイベルヘッド
12 巻上機
13 変速装置・操縦装置
16 伝導装置
17 原動機
18 第二傾斜面
19 第一傾斜面
20 ビット刃部側壁
21 アウターチューブ下面
22 アウターチューブ外周面
水路
斜内向き水路
θ 第一傾斜面の傾斜角
θ 第二傾斜面の傾斜角

Claims (2)

  1. 下端にビットが取付けられたアウターチューブの内側に、水路を介在させて、インナーチューブを嵌合してなる試料採取装置において、アウターチューブの先端内周面とインナーチューブの先端外周面との間に形成される水路の下端部を、ビットの刃部内周側に向って傾斜させた斜内向き水路とし、かつ、ビットの刃部相互間の凹所に臨むアウターチューブの下端面に、前記斜内向き水路に上端が連なる急傾斜の第一傾斜面と、前記第一傾斜面の下端から始まりアウターチューブの外周面で終わる緩傾斜の第二傾斜面を形成したことを特徴とする地質ボーリング調査における試料採取装置。
  2. 請求項1の試料採取装置を使用し、硬岩をボーリングする場合は大量の削孔水を前記斜内向き水路に供給して前記斜内向き水路の下端部からビットの半径方向内方に直接的に放水し、軟岩をボーリングする場合は中量の削孔水を前記斜内向き水路に供給して前記第一傾斜面に沿わせて急傾斜でビットの半径方向外方に向けて放水し、砂質土をボーリングする場合は少量の削孔水を前記斜内向き水路に供給して前記第一傾斜面から第二傾斜面に沿わせて緩傾斜でビットの半径方向外方に向けて放水するようにしたことを特徴とするボーリング調査における試料採取方法。
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