次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに図1から図3を参照して、本実施形態のエンジン100の基本的な構成について説明する。エンジン100は、ディーゼルエンジンであり、トラクタ等の農業機械及びスキッドステアローダ等の建設機械等に搭載される。
図3に示すように、エンジン100は、ECU(Engine Control Unit)80を備える。ECU80は、CPU等から構成される演算部と、ROM及びRAM等から構成される記憶部と、を備える。演算部は、センサ群の様々なセンサからの情報に基づいて、アクチュエータ群の様々なアクチュエータに制御指令を送り、エンジン100の動作に関する値(例えば、燃料噴射量や、空気吸入量や、排気ガス還元量等)を制御する。記憶部は、各種プログラムを記憶するとともに、エンジン100の制御に関して予め設定された複数の制御情報を記憶している。
図1及び図2に示すように、エンジン100は、吸気系の部材として、吸入部11と、過給機12と、吸気スロットル(吸気絞り装置)14と、吸気マニホールド15と、を備える。吸入部11から吸入された気体は、過給機12にて圧縮された後に、吸気スロットル14を介して、吸気マニホールド15へ供給される。吸気マニホールド15には、図2に示すように、吸気マニホールド温度センサ84が取り付けられている。吸気マニホールド温度センサ84は、吸気マニホールド15内の気体の温度を検出してECU80へ出力する。
なお、図3に示すように、エンジン100は、図略の吸気管に配置され外気温度を検出してECU80へ出力する外気温度センサ81と、大気圧を検出してECU80へ出力する大気圧センサ82と、を備える。
吸気マニホールド15の下方には図略のコモンレールが配置されている。コモンレールは、燃料を高圧で蓄え、シリンダヘッドに配置されたインジェクタ23(燃料噴射装置、図2を参照)へ供給する。
インジェクタ23は、インジェクタ電磁弁24(図3を参照)を備える。インジェクタ電磁弁24は、ECU80の指示に応じたタイミングで開閉することにより、燃焼室に燃料を噴射する。
なお、エンジン100は、エンジン回転数(回転速度、所定時間あたりのクランクシャフトの回転数)を検出するエンジン回転数検出センサ83を備える。エンジン回転数検出センサ83は、検出したエンジン回転数をECU80へ出力する。
また、図1及び図2に示すように、エンジン100は、排気マニホールド31と、EGR装置32と、排気ガス浄化装置40と、を備える。
排気マニホールド31には、排気マニホールド温度センサ85が取り付けられている。排気マニホールド温度センサ85は、排気マニホールド31内の気体の温度を検出してECU80へ出力する。排気マニホールド31を通過した気体は、一部がEGR装置32へ供給されるとともに、残りが排気ガス浄化装置40へ供給される。
EGR装置32は、EGRクーラ33と、EGR管34と、EGRバルブ35と、を備えている。EGRバルブ35のバルブ開度は、ECU80によって制御される。
排気ガス浄化装置40は、DPF装置50と、SCR装置60と、を備える。エンジン100は、排気ガス浄化装置40の支持及び固定を行う部材として、支持台41と、ケース固定体42と、ケース締結バンド43と、を備える。
支持台41は、シリンダヘッドの上部に配置され、縁が下方に折り曲げられた矩形状の部材である。ケース固定体42は、支持台41の上部に配置され、DPF装置50及びSCR装置60の下方に接触する部材である。ケース締結バンド43は、ケース固定体42に取り付け可能に構成された可撓性を有する部材である。ケース固定体42及びケース締結バンド43でDPF装置50及びSCR装置60を挟み込むことで、DPF装置50及びSCR装置60が固定される。
DPF装置50は、排気ガスに含まれる粒子状物質(particulate matter、PM)を除去する。DPF装置50は、DPFケース51と、酸化触媒52と、フィルタ53と、を備える。
DPFケース51は、略円筒状の中空の部材であり、内部に酸化触媒52及びフィルタ53が配置される。酸化触媒52は、白金等で構成されており、排気ガスに含まれる未燃燃料、一酸化炭素、一酸化窒素等を酸化(燃焼)するための触媒である。フィルタ53は、例えばウォールフロー型のフィルタとして構成されており、酸化触媒52で処理された排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集する。
また、DPFケース51には、酸化触媒温度センサ86と、フィルタ温度センサ87と、差圧センサ88と、が取り付けられている。酸化触媒温度センサ86は、DPFケース51の入口近傍(酸化触媒52の排気上流側)の温度を検出してECU80へ出力する。フィルタ温度センサ87は、酸化触媒52及びフィルタ53の間(フィルタ53の上流側)の温度を検出してECU80へ出力する。差圧センサ88は、フィルタ53の上流側(酸化触媒52の下流側)と、フィルタ53の下流側の圧力差を検出してECU80へ出力する。
DPF装置50を通過した排気ガスは、DPF出口管44、尿素混合管45、及びSCR入口管46を経由して、SCR装置60へ送られる。DPF出口管44は、DPF装置50の下流側の端部と接続されている。DPF出口管44には、排気ガスのNOx濃度を検出する上流NOxセンサ89が取り付けられている。上流NOxセンサ89は、図3に示すように、検出部89aとヒータ部89bとを備える。検出部89aは、排気ガスのNOx濃度を検出することができる。検出部89aが排気ガス中のNOx濃度を適切に検出するためには、検出部89aを高温(例えば800度程度)にする必要がある。以下では、検出部89aがNOx濃度を検出可能な程度まで当該検出部89aを加熱する処理を「加熱処理」と称する。ヒータ部89bは、検出部89aを例えば100度程度に予熱しておき、加熱処理を行う指示を受けた場合に、検出部89aを高温に加熱する。上流NOxセンサ89は、検出したNOx濃度をECU80へ出力する。
尿素混合管45は、DPF出口管44と略直角をなすように接続されている。尿素混合管45の長手方向は、DPF装置50及びSCR装置60の長手方向と平行である。尿素混合管45の上流側の端部近傍には、尿素水噴射部47が取り付けられている。尿素水噴射部47は、尿素水を噴射する尿素水噴射ノズル47aと、尿素水噴射管47bと、尿素水ポンプ47cと、を備える。尿素水ポンプ47cは、後述の尿素水タンクから尿素水を吸い上げ、尿素水噴射管47bを介して尿素水噴射ノズル47aへ送り出す。なお、尿素水ポンプ47cと尿素水タンクとは、尿素水を供給するホース及び尿素水を戻すホースの2本のホースで接続されている。尿素混合管45に尿素水を噴射することで、尿素が加水分解してアンモニアが発生する。
なお、尿素水噴射部47は、DCU(Dosing Control Unit)95によって、尿素水の噴射の有無及び噴射量が制御されている。DCU95は、例えば排気ガスの温度が、尿素がアンモニアに加水分解する温度を経過したときに、尿素水の噴射を開始する。
SCR装置60は、SCR入口管46を介して導入された排気ガスに含まれるNOxを除去する。SCR装置60は、SCRケース61と、SCR触媒62と、アンモニア酸化触媒63と、を備える。
SCRケース61は、略円筒状の中空の部材であり、内部にSCR触媒62及びアンモニア酸化触媒63が配置される。SCR触媒62は、アンモニアを吸着するゼオライト及びセラミック等の素材で構成されている。尿素水噴射部47が尿素水を噴射することで生成されたアンモニアはSCR触媒62に吸着する。排気ガスに含まれるNOxは、アンモニアを吸着したSCR触媒62に触れることで還元され、窒素と水に変化する。
アンモニア酸化触媒63は、SCR触媒62から脱離したりSCR触媒62に吸着されなかったアンモニアが外部に放出されることを防止する触媒である。アンモニア酸化触媒63は、アンモニアを酸化させる白金等の酸化触媒であり、アンモニアを酸化させて窒素、一酸化酸素、水等に変化させる。排気ガスは、アンモニア酸化触媒63を通過した後に所定の排気管を通った後に外部へ放出される。以上のように尿素水噴射部47及びSCR触媒62を備えることで、排気ガスに含まれるNOxを除去することができる。
また、SCR触媒62の上流側には、SCR触媒入口温度センサ(排気温度センサ)90が取り付けられている。SCR触媒入口温度センサ90は、SCR触媒62の直ぐ上流の排気ガスの温度(以下、SCR触媒入口温度)を検出してDCU95へ出力する。SCR触媒入口温度は、SCR触媒62へ供給される排気ガスの温度を検出するため等に用いられている。
また、アンモニア酸化触媒63の下流側には、下流NOxセンサ(NOxセンサ)91が取り付けられている。下流NOxセンサ91は、上流NOxセンサ89と同様に、検出部91aとヒータ部91bとを備える。下流NOxセンサ91は、検出したNOx濃度をDCU95へ出力する。なお、上流NOxセンサ89が検出したNOx濃度は、主として尿素水の噴射量を決定するために用いられる。また、下流NOxセンサ91が検出したNOx濃度は、主として、演算で求めたNOx浄化率の補正又はシステムの故障や不正改造の検知に用いられる。
上述したように、外気温度が非常に低い環境(0度以下又は−30度以下)で使用される作業機械等に本実施形態のエンジン100が搭載される場合、外気温度の影響を受けて排気経路を構成する部材が冷却される。これにより、排気ガスに含まれる水分が凝縮し、凝縮水が発生する。加熱処理により高温となった検出部89a,91aに水滴が付着すると、検出部89a,91aはセラミックを含んでいるため破損する可能性がある。
以上を考慮して、本実施形態のエンジン100では、高温となった検出部89a,91aに凝縮水が付着しないように様々な制御を行っている。初めに、図4のフローチャートを参照して、排気ガスの温度に基づいて下流NOxセンサ91の加熱処理の開始を許可するか否かを決定する処理について説明する。なお、図4及びその他のフローチャートは一例であり、処理の追加、処理の順序の変更、処理の省略等を適宜行うことができる。また、下流NOxセンサ91ではなく上流NOxセンサ89についても同様の制御を行うことができる。
初めに、DCU95は、外気温度センサ81から外気温度を取得する(S101)。なお、外気温度の取得方法は任意であり、吸気マニホールド温度センサ84が検出した温度を用いても良いし、別の位置(例えば吸気経路以外)に配置された温度センサを用いても良い。
次に、DCU95は、SCR触媒入口温度センサ90が検出した温度(以下、排気温度)を取得する(S102)。ここで、SCR触媒入口温度センサ90はSCRケース61の上流側の端部近傍に配置され、下流NOxセンサ91は下流側の端部近傍に配置される。従って、外気温度が非常に低い環境では、SCR触媒入口温度センサ90を通過してから下流NOxセンサ91に到達する前に排気ガスが冷却されることで排気ガスの温度が低下する。そのため、取得した排気温度に基づいて、下流NOxセンサ91の周囲の凝縮水の有無を正確に判定することは困難である。
次に、DCU95は、温度閾値算出マップを用いて温度閾値を算出する(S103)。温度閾値とは、加熱処理の開始を許可するか否か(即ち検出部91aの800度程度までの加熱を許可するか否か)を決定するための閾値である。本実施形態では、DCU95は、S101で検出した外気温度に基づいて、温度閾値を算出する。具体的には、エンジン100は、外気温度と温度閾値を対応付けた温度閾値算出マップ(温度閾値算出テーブル)を記憶しており、外気温度が入力されることで、この外気温度に対応付けられた温度閾値が出力される。
外気温度が低い場合、SCR触媒入口温度センサ90が検出した温度は、下流NOxセンサ91の周囲の温度よりも高い。従って、外気温度が通常の場合よりも温度閾値を上げることで、両者の温度差を考慮して凝縮水の有無を判定できる。従って、DCU95は、外気温度が低くなるほど、より高い温度閾値を算出する。
なお、本実施形態では外気温度に温度閾値が対応付けられているが、以下のようにして温度閾値を求めても良い。即ち、温度閾値は、外気温度に依存しない固定値と、外気温度に依存する変動値と、を足し合わせることで求められる。この場合、外気温度と変動値とを対応付けたマップ又はテーブルが用いられる。何れの場合においても、外気温度に応じて、温度閾値を算出する点では同じである。
次に、DCU95は、S102で取得した排気温度と、S103で求めた温度閾値と、を比較する(S104)。DCU95は、排気温度が温度閾値未満である場合、下流NOxセンサ91のヒータ部91bによる加熱処理の開始を許可しない(S105)。一方、DCU95は、排気温度が温度閾値以上となった場合、下流NOxセンサ91のヒータ部91bによる加熱処理の開始を許可する(S106)。
以上のように外気温度に基づいて温度閾値を算出することで、SCR触媒入口温度センサ90から下流NOxセンサ91へ排気ガスが流れる際の温度低下を考慮して、凝縮水の有無を判定することができる。従って、凝縮水が残存した状態で加熱処理が行われないので、下流NOxセンサ91の破損を防止できる。
本実施形態では、外気温度に基づいて温度閾値を算出するが、代わりに排気温度を補正しても良い。具体的には、外気温度及びSCR触媒入口温度センサ90から下流NOxセンサ91までの距離等に基づいて排気温度の低下量を算出する。DCU95は、SCR触媒入口温度センサ90が検出した排気温度から低下量を減算することで、下流NOxセンサ91の周囲の温度を推測する。そして、推測した温度と、温度閾値と、を比較して加熱処理を許可するか否かを判定する。なお、排気温度を補正する場合は、温度閾値は一定の値を用いることができる。
また、本実施形態では、外気温度のみに基づいて温度閾値を算出(補正)したが、図5のフローチャートに示すように、外気温度に加えて排気ガスの熱流束を用いて温度閾値を算出しても良い。
この場合、DCU95は、上記と同様に外気温度センサ81から外気温度を取得するとともに、排気ガスの熱流束を算出する(S201)。熱流束は、排気ガスの質量流量及び排気温度から算出される。排気ガスの質量流量は、エンジン100の運転状態等に基づいて算出される。
次に、DCU95は、外気温度と熱流束に基づいて温度閾値を算出する(S203)。熱流束を用いることにより、外気温度が排気ガスの温度に与える影響を考慮することができるので、より的確な温度閾値を算出することができる。例えば、排気ガスの熱流束が小さいほど(単位時間あたりに通過する熱量が小さいほど)、排気ガスは外気温度に影響され易くなる。従って、SCR触媒入口温度センサ90から下流NOxセンサ91を流れる排気ガスの温度が一層低下するため、それを考慮して、より大きな温度閾値が算出される。S204以降の処理は、S104以降の処理と同等なので説明を省略する。
本実施形態では、SCR触媒入口温度センサ90が検出した温度に基づいて下流NOxセンサ91を制御したが、SCR触媒入口温度センサ90ではなく他の排気温度センサに基づいて下流NOxセンサ91を制御しても良い。ただし、排気温度センサと下流NOxセンサ91の距離が遠くなるほど、排気ガスの温度の低下量が大きくなるため、凝縮水の有無についての判定精度が落ちることがある。
また、本実施形態では、SCR触媒入口温度センサ90の(排気ガスの流れる方向の)下流側に下流NOxセンサ91が配置されている。しかし、排気温度センサの上流側にNOxセンサが配置されていても良い。この場合、排気温度センサが検出する温度はNOxセンサの周囲の温度よりも低くなる。従って、上記で説明した場合と異なり、外気温度が低くなるほど、低い温度閾値が算出される。なお、図4及び図5のフローチャートは、加熱処理の開始を許可するか否かを判断するものであるが、同様のフローチャート(温度閾値は異なる)を用いて、加熱処理の停止を許可するか否かを判断することもできる。
次に、図6のフローチャートに基づいてDCU95が行う処理について説明する。外気温度が非常に低い環境において、エンジンをアイドリング状態で長時間放置した場合、エンジンの排気管の温度が低下するため、排気温度が低下して凝縮水が大量に発生する。従って、この状況で加熱処理を開始すると、高温となった検出部89a,91aに凝縮水が付着して破損してしまうことがある。
この点、本実施形態では、アイドリング状態で長時間放置されたことを検出して、検出内容に応じて加熱処理を禁止する。初めに、DCU95は、外気温度センサ81から外気温度を取得する(S301)。
次に、DCU95は、取得した外気温度に基づいて判定時間を算出する(S302)。判定時間とは、アイドリング状態がどの程度継続した場合に加熱処理を禁止するかを定める値である。ここで、外気温度が低いほど、排気ガスの温度が低下し易く凝縮水が発生し易い。従って、DCU95は、外気温度が低いほど判定時間が短くなるように、判定時間を算出する。判定時間の算出は、予め作成されたマップを用いても良いし、数式等を用いて算出しても良い。また、外気温度に基づいて判定時間を算出しても良いし、外気温度に基づいて変動値を算出し、この変動値に固定値を足し合わせて判定時間を算出しても良い。
次に、DCU95は、エンジン100がアイドリング状態か否かを判定する(S303)。本実施形態においてアイドリング状態とは、エンジン回転数が所定の回転数閾値以下の状態である。なお、回転数閾値としては、例えば1200rpmを用いることができるが、1200rpm以下の回転数を用いても良い。
DCU95は、エンジン100がアイドリング状態であった場合(S303でYesの場合)アイドリング状態が連続して続いた時間と判定時間とを比較する(S304)。DCU95は、アイドリング状態が連続して続いた時間が判定時間よりも長い場合、上流NOxセンサ89及び下流NOxセンサ91のヒータ部89b,91bによる加熱処理を禁止する(S305)。
以上により、アイドリング状態で長時間放置された状況(凝縮水が大量に存在する状況)を検出して、これらの状況に合致する場合に加熱処理を禁止することができる。従って、凝縮水が存在する状況で加熱処理が行われて検出部89a,91aに水が付着することを防止できる。
次に、エンジン100がアイドリング状態で長時間放置された後に、作業機械が作業を開始する際にDCU95が行う処理について図7のフローチャートを参照して説明する。
上述したようにエンジン100がアイドリング状態で長時間放置された場合は大量の凝縮水が存在しているため、通常と同じタイミングで加熱処理を行った場合、蒸発しきれなかった凝縮水が上流NOxセンサ89、下流NOxセンサ91に付着する可能性がある。
これを考慮して、DCU95は、作業を開始する指示(エンジン回転数を上昇させる指示)を受けた場合(S306)、外気温度センサ81から外気温度を取得するとともに(S307)、アイドリング状態で連続して経過した時間を取得する(S308)。
次に、DCU95は、取得した外気温度と、アイドリング状態で連続して経過した時間と、に基づいて遅れ量を算出する(S309)。ここで、遅れ量とは、加熱処理を開始するタイミングをどれだけ遅らせるかを示す値である。そのため、凝縮水の量が多いほど、大きな遅れ量が算出される。従って、外気温度が低いほど又は経過した時間が長いほど、大きな遅れ量が算出される。遅れ量の算出は、例えばマップ又はテーブル処理によって行うことができるが、算出方法は任意である。
DCU95は、遅れ量の算出後、算出した遅れ量が経過した後に、上流NOxセンサ89及び下流NOxセンサ91の加熱処理の開始を許可する(S310)。
以上の処理を行うことで、凝縮水が完全に蒸発した後に加熱処理を開始することができるので、上流NOxセンサ89及び下流NOxセンサ91の破損を防止することができる。また、アイドリング状態で連続して経過した時間に基づいて加熱処理を遅らせる制御は、ドライビングサイクルを跨いで使用することもできる。具体的に説明すると、エンジン100は、ステップS309で算出した遅れ量をDCU95等に記憶しておく。そして、次のドライビングサイクル時(即ち次にエンジンが始動した後)に図4の処理を行う際に、記憶した遅れ量を更に考慮して、NOxセンサの加熱処理を開始するか決定する。
次に、上記で説明したエンジン100を農業機械及び建設機械に適用した例について説明する。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、車両が前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。
初めに、図8及び図9を参照して、上記のエンジン100を備えるトラクタ110について説明する。トラクタ110は、アタッチメントを装着して除雪等の作業を行う作業車両である。
トラクタ110は、車体111と、左右一対の前輪112と、左右一対の後輪113と、を備える。車体111の前部にはボンネット114が配置されており、当該ボンネット114の内部にはエンジン100が配置されている。
ボンネット114の内部であって、冷却ファン4の向かいにはラジエータ5が配置されている。また、ボンネット114の内部には、エアクリーナ122が配置されている。エアクリーナ122は、吸入された外気に含まれる塵等を除去する。
左右一対の後輪113の間には、ミッションケース115が配置されている。エンジン100の出力は、このミッションケース115内の変速装置によって変速されて、後輪113及び作業機へ伝達される。
ミッションケース115の後部には、ロワーリンク116、トップリンク117、及びPTO軸118が配置されている。また、ミッションケース115の上部には、作業機は、ロワーリンク116及びトップリンク117に連結され、PTO軸118によって駆動される。
ミッションケース115の上方であってボンネット114の後方には、オペレータが搭乗するためのキャビン119が配置されている。キャビン119の内部には、運転座席が設けられており、運転座席の近傍にはオペレータが操作するための多数の操作具が設けられている。
キャビン119の下方には、尿素水タンク120及び燃料タンク121が配置されている。尿素水タンク120は、尿素水噴射管47bによって尿素水噴射ノズル47aに接続されている。
次に、図10及び図11を参照して、上記のエンジン100を備えるスキッドステアローダ150について説明する。スキッドステアローダ150は、後述するローダ装置151を装着し、ローダ作業を行うように構成されている。スキッドステアローダ150には、左右一対のクローラ部152が装着されている。クローラ部152の上方には、ボンネット153が配置されている。
ボンネット153の内部には、エンジン100が配置されている。また、ボンネット153の内部であって、エンジン100の冷却ファン4の向かいにはラジエータ5が配置されている。また、ボンネット153の内部であってエンジン100の前方には、尿素水タンク154が配置されている。
エンジン100の前方には、油圧ポンプ155と、トランスミッション装置156と、が配置されている。エンジン100の動力は、トランスミッション装置156を介して、クローラ部152に伝達される。
ボンネット153の前方には、オペレータが搭乗するキャビン157が配置されている。キャビン157の内部には運転座席が設けられており、運転座席の近傍にはオペレータが操作するための多数の操作具が設けられている。
また、ローダ装置151は、左右両側に配置されたローダポスト158と、各ローダポスト158の上部に回動可能に連結された左右一対のリフトアーム159と、リフトアーム159の先端部に回動可能に連結されたバケット160とを有している。
各ローダポスト158とリフトアーム159との間には、リフトアーム159を上下に回動させるためのリフトシリンダ161がそれぞれ設けられている。リフトアーム159とバケット160との間には、バケット160を上下に回動させるためのバケットシリンダ162が設けられている。オペレータが図略の操作具を操作することにより、油圧ポンプ155の油圧力が制御される。これにより、リフトシリンダ161又はバケットシリンダ162が伸縮して、リフトアーム159又はバケット160が回動する。オペレータは、このようにして土砂等の運搬作業を行うことができる。
以上に説明したように、エンジン100は、尿素水噴射部47と、SCR触媒62と、エンジン回転数検出センサ83と、NOxセンサ89,91と、DCU95と、を備える。尿素水噴射部47は、排気ガスが通過する経路に尿素水を噴射する。SCR触媒62は、排気ガスが通過する経路に配置され、尿素水噴射部47が噴射した尿素から得られるアンモニアを取り込むことで、通過する排気ガスに含まれる窒素酸化物を除去する。エンジン回転数検出センサ83は、所定時間あたりのクランクシャフトの回転数であるエンジン回転数を検出する。NOxセンサ89,91は、排気ガスに含まれる窒素酸化物を検出する検出部89a,91a、及び、窒素酸化物を検出可能な温度(窒素酸化物を精度良く検出可能な温度)まで検出部89a,91aを加熱する加熱処理を行うヒータ部89b,91bを有する。DCU95は、エンジン回転数が回転数閾値以下であるアイドリング状態で連続して経過した時間が判定時間を超えた場合に、ヒータ部89b,91bによる加熱処理を禁止する。
これにより、外気温度が非常に低い環境でエンジン100がアイドリング状態で長時間放置された場合は大量の凝縮水が発生するので、ヒータ部89b,91bによる加熱処理を禁止することで、高温の検出部89a,91aに凝縮水が付着することを確実に防止することができる。
また、本実施形態のエンジン100は、外気温度又は外気温度に連動する温度を検出する外気温度センサを備える。DCU95は、外気温度センサが検出した温度が低くなるに従って、短い判定時間を用いる。
これにより、外気温度が低くなるに従って凝縮水が発生し易くなるため、上記のように判定時間を短くすることにより、高温の検出部89a,91aに凝縮水が付着することを確実に防止することができる。
また、本実施形態のエンジン100において、DCU95は、アイドリング状態の後にエンジン回転数を上昇させた場合、アイドリング状態で連続して経過した時間及び外気温度に基づいて遅延時間を算出し、当該遅延時間の経過後に加熱処理を開始することが好ましい。
これにより、エンジン100がアイドリング状態で長時間放置されたことで発生した大量の凝縮水を蒸発させた後に、NOxセンサ89,91の検出部89a,91aを動作温度(高温)まで加熱することができる。
また、本実施形態のエンジン100は、外気温度を検出する外気温度センサ81を備える。DCU95は、外気温度センサ81が検出した温度が低くなるに従って、長い遅延時間を算出する。
これにより、外気温度が低くなるに従って凝縮水が発生し易くなるため、上記のように判定時間を短くすることにより、凝縮水が蒸発した後に加熱処理を開始することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、外気温度を直接取得して、外気温度に基づいて制御を行う構成であるが、外気温度を直接的に取得せずに、外気温度に連動する温度(例えば吸気温度)を取得しても良い。例えば吸気温度を取得した場合、吸気温度から外気温度を推測して上記と同様の処理を行っても良いし、吸気温度に対応付けられたマップ等を用いても良い。
上記実施形態では、温度センサが取得した温度に基づいて外気温度を取得したが、ユーザが周囲の温度を指示可能な構成であっても良い。例えば、複数の温度範囲を図略のディスプレイに表示し、該当する温度範囲をユーザが選択する。そして、DCU95は、指示された温度範囲内に応じて温度閾値又は判定時間等を算出し、それに応じて図4から図7に示す制御を行う。
上記実施形態では、DPF装置50及びSCR装置60がエンジン100の上部に位置しているが、DPF装置50及びSCR装置60の配置は任意であり、例えばシリンダブロックから比較的離れた位置に配置されていても良い。また、本明細書では、仮にDPF装置50及びSCR装置60がシリンダブロックから離れていても、それらを含めて「エンジン」に該当するものとする。
上記では、過給機を備えるディーゼルエンジンに本発明を適用する例を示したが、本発明は、自然吸気式のディーゼルエンジンにも適用することができる。