JP2016160493A - 電子基板から貴金属を分離、回収する方法およびそのための装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境負荷の高い廃液を出さずに、かつ、金パターン、基板の厚みというような基板個体差の影響を受けにくく、効率的に金を含めた貴金属を電子基板から分離し、回収することができる方法および装置を提供する。【解決手段】貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射する工程を含む、電子基板から貴金属を分離し、回収する方法、ならびに、貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射する噴射ノズルとを備える、電子基板から貴金属を分離し、回収する装置。【選択図】図1
Description
本発明は、使用済みの電子機器に用いられている電子基板から、金(Au)を含む貴金属を、簡易に高効率かつ環境に高負荷をかけずに分離し、回収する方法およびそのための装置に関する。
使用済みの電子基板から貴金属を回収する方法として、たとえば特開平8−13051号公報(特許文献1)には、金めっきされた電子部品を酸に浸漬し、金属導電体あるいは下地金属を酸に溶解させ金を剥離させ、剥離させた金を収集する工程を含む金の収集方法が開示されている。またたとえば特開2010−104923号公報(特許文献2)には、正電極と負電極の対向位置に、表面に導電性金属酸化物を有する基材を配置し、電極に電圧を印加しつつ基材を移動させ、基材表面の導電性金属酸化物を還元反応により除去する方法が開示されている。これら特許文献1、2に記載された方法以外の使用済みの電子基板から貴金属を回収する方法として、有機物を燃焼させて分離する、貴金属を機械的に削り取る、などの方法も知られている。
しかしながら、上述の特許文献1に記載された方法では、導電体あるいは下地金属を溶解させる酸として硝酸または塩酸を用いているため、環境負荷の高い強酸の廃液処理を要するという問題がある。また、上述の特許文献2に記載された方法では、基材の形状、導電性金属酸化物パターンの影響を大きく受け、電極に対する基材の配置を微調整する必要がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、環境負荷の高い廃液を出さずに、かつ、金パターン、基板の厚みというような基板個体差の影響を受けにくく、効率的に金を含めた貴金属を電子基板から分離し、回収することができる方法および装置を提供することである。
本発明の電子基板から貴金属を分離し、回収する方法は、貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm3〜4000kgf/cm3の圧力で噴射する工程を含むことを特徴とする。
本発明の電子基板から貴金属を分離し、回収する装置は、貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm3〜4000kgf/cm3の圧力で噴射する噴射ノズルを備えることを特徴とする。
本発明の方法および装置によれば、環境負荷の高い廃液を排出せずに、形状、金のパターン、厚みというような基板個体差を有する基板から、効率的に金を含む貴金属を分離し、回収できる。
<実施の形態1>
(電子基板からの貴金属の分離・回収方法)
図1は、本実施形態に係る電子基板から貴金属を分離し、回収する方法(電子基板からの貴金属の分離・回収方法。以下、「本実施形態に係る方法」と呼称する)の好ましい一例を示すフローチャートである。なお、本明細書中における「貴金属」には、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、チタン(Ti)、コバルト(Co)が含まれるものとする。本実施形態に係る方法は、貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射(すなわち、高圧噴射)する工程(図1中、電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2))を含むことを特徴とする。
(電子基板からの貴金属の分離・回収方法)
図1は、本実施形態に係る電子基板から貴金属を分離し、回収する方法(電子基板からの貴金属の分離・回収方法。以下、「本実施形態に係る方法」と呼称する)の好ましい一例を示すフローチャートである。なお、本明細書中における「貴金属」には、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、チタン(Ti)、コバルト(Co)が含まれるものとする。本実施形態に係る方法は、貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射(すなわち、高圧噴射)する工程(図1中、電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2))を含むことを特徴とする。
また本明細書中において「噴射」とは、電解液を、一定方向に圧力がかかるように対象(電子基板)に噴き出させることを指し、噴射の方向は、電子基板の基板面に垂直な方向に対し−60度〜+60度(より好ましくは−30度〜+30度)の角度を成す方向であることが好ましい。特に好ましくは、電子基板の基板面に対し垂直となるように電解液を噴射する。電子基板の基板面に垂直な方向に対し上記角度の範囲を超える角度で電解液を噴射させると、電子基板から金を効果的に削り取ることが困難となる。
本実施形態に係る方法において、電子基板に高圧噴射される電解液は、従来公知の適宜の電気分解装置を用いて製造された電解液であればよいが、電子基板からの金の分離・回収を効率的に行なうことができることから、後述する電解液製造工程(ステップS1)で製造された酸性水であることが好ましい。
ここで、図2は、本実施形態に係る方法で貴金属を分離・回収する対象となる、貴金属を含む電子基板1の一例を模式的に示す断面図である。図2に示す電子基板1は、たとえば、表面側から順に、金層2、下地金属層3および絶縁体層4を備える。表面側の金層2は、層状に形成された金からなるか、または、金を主成分とし、金以外の成分としてたとえばめっき浴成分であるカリウム(K)、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)単体またはこれらの化合物などを含んでいてもよい。下地金属層3は、金属で形成された1または複数の層であり(図2に示す例では2層)、たとえば銅、ニッケル、鉄などの金属材料を主成分とする。図2には、下地金属層3として、金層2側にニッケル層3a、絶縁体層4側に銅層3bの2層を有する場合が示されている。また絶縁体層4は、たとえば、ガラスエポキシ、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂や、ガラス、セラミックなどの絶縁性を有する材料を主材料とする。なお、本実施形態に係る方法は、金パターン、基板の厚みというような基板個体差の影響を受けにくく、図2に示すのはあくまで一例であって、貴金属を含んでいれば電子基板の構造、形成材料、大きさ、厚みは特に制限されるものではないが、図2に示す例のように表面側から順に金層、下地金属層を備えている電子基板であることが好ましい。
本実施の形態に係る方法は、上述の電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)を必須の工程として含むのであれば、その他の工程については特に制限されないが、図1に示す例のように、電解液製造工程(ステップS1)、電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)、電子基板からの金の分離工程(ステップS3)、金の回収工程(ステップS4)、電解液の中和工程(ステップS5)、ならびに、銅およびニッケルの除去工程(ステップS6)をこの順で含んでいることが、好ましい。以下、図1に示す例の各工程について順に説明する。
〔1〕電解液製造工程(ステップS1)
図1に示す例では、まず、電解液製造工程(ステップS1)において、水の電気分解を行ない、電解液を製造する。本実施形態に係る方法において、水の電気分解に用いる装置(機構)は、特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の電気分解装置(機構)を用いることができる。電気分解に供する水(原水)としては、水道水、純水、超純水、イオン交換水、蒸留水、精製水が挙げられる。電解質の役割を果たすため、原水には、中性塩が混合されていることが好ましい。原水に電解質が含まれていない場合、中性塩を添加する必要がある。中性塩としては、たとえば水中において、陽イオンとしてナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン、陰イオンとして硫酸イオン、硝酸イオン、塩酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオンに電離する組合せのpH7付近となる塩であれば特に制限されないが、食塩として広く使用されており、環境負荷が低いという理由からは、塩化ナトリウムであることが好ましい。この場合、塩酸が酸性水となり、水酸化ナトリウム水溶液がアルカリ性水となる。また、電解液製造工程における電気分解の条件(電圧、時間など)についても特に制限されるものではなく、電気分解により、pH5以下(より好ましくはpH2〜3)の酸性水と、pH8以上(より好ましくはpH10〜11)のアルカリ性水とが製造できる条件であればよい。なお、pHが5を超えて8未満の範囲内の電解液を電子基板への高圧噴射に用いた場合には、後述するように下地金属が溶解しない虞がある。本実施形態に係る方法では、水と中性塩との混合物の電気分解によって上述のように製造された酸性水を電子基板への高圧噴射に用いることが好ましい。
図1に示す例では、まず、電解液製造工程(ステップS1)において、水の電気分解を行ない、電解液を製造する。本実施形態に係る方法において、水の電気分解に用いる装置(機構)は、特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の電気分解装置(機構)を用いることができる。電気分解に供する水(原水)としては、水道水、純水、超純水、イオン交換水、蒸留水、精製水が挙げられる。電解質の役割を果たすため、原水には、中性塩が混合されていることが好ましい。原水に電解質が含まれていない場合、中性塩を添加する必要がある。中性塩としては、たとえば水中において、陽イオンとしてナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、マグネシウムイオン、陰イオンとして硫酸イオン、硝酸イオン、塩酸イオン、酢酸イオン、炭酸イオンに電離する組合せのpH7付近となる塩であれば特に制限されないが、食塩として広く使用されており、環境負荷が低いという理由からは、塩化ナトリウムであることが好ましい。この場合、塩酸が酸性水となり、水酸化ナトリウム水溶液がアルカリ性水となる。また、電解液製造工程における電気分解の条件(電圧、時間など)についても特に制限されるものではなく、電気分解により、pH5以下(より好ましくはpH2〜3)の酸性水と、pH8以上(より好ましくはpH10〜11)のアルカリ性水とが製造できる条件であればよい。なお、pHが5を超えて8未満の範囲内の電解液を電子基板への高圧噴射に用いた場合には、後述するように下地金属が溶解しない虞がある。本実施形態に係る方法では、水と中性塩との混合物の電気分解によって上述のように製造された酸性水を電子基板への高圧噴射に用いることが好ましい。
〔2〕電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)
図1に示す例では、次に、電解液製造工程(ステップS1)で製造された電解液(好ましくは前記酸性水)を、電子基板に1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射(高圧噴射)する。これにより、電子基板1の表面の金を削り取ったり、電子基板1に傷をつけることで下地金属であるニッケル、銅の少なくとも一方を露出させたりすることができる。ここで、前記圧力が1000kgf/cm2未満である場合には、電子基板1に傷をつけることができない虞があり、また、前記圧力が4000kgf/cm2を超える場合には、回収装置(たとえば後述する本実施形態に係る装置)が損傷してしまう虞がある。上記範囲内の中でも特に、高圧噴射で金を削り取るためには、2000kgf/cm2〜3000kgf/cm2の範囲内の圧力で噴射することが好ましい。この噴射の圧力は、たとえばノズル径を、しぼりのような可変な形状にし、ノズル径を調整することで、上述した範囲内となるように適宜調整することができる。
図1に示す例では、次に、電解液製造工程(ステップS1)で製造された電解液(好ましくは前記酸性水)を、電子基板に1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射(高圧噴射)する。これにより、電子基板1の表面の金を削り取ったり、電子基板1に傷をつけることで下地金属であるニッケル、銅の少なくとも一方を露出させたりすることができる。ここで、前記圧力が1000kgf/cm2未満である場合には、電子基板1に傷をつけることができない虞があり、また、前記圧力が4000kgf/cm2を超える場合には、回収装置(たとえば後述する本実施形態に係る装置)が損傷してしまう虞がある。上記範囲内の中でも特に、高圧噴射で金を削り取るためには、2000kgf/cm2〜3000kgf/cm2の範囲内の圧力で噴射することが好ましい。この噴射の圧力は、たとえばノズル径を、しぼりのような可変な形状にし、ノズル径を調整することで、上述した範囲内となるように適宜調整することができる。
本実施の形態では、電解液を高圧噴射すると同時に、当該電解液に電圧を印加する。これにより、電解液が前記酸性水の場合には、電子基板の下地金属層を形成する金属を酸化溶解させることで電子基板の最表面の金を分離することができ、高圧噴射のみの場合、または、電圧を印加した電解液を高圧噴射ではなく電子基板に単に接触させる(たとえば、電圧を印加した状態の電解液に電子基板を浸漬する)場合と比較して、さらに効率的な電子基板から金の分離が可能となる。高圧噴射する電解液に電圧を印加する方法としては、特に制限されないが、後述するように、噴射ノズルに陽極および陰極のいずれか一方を設置し、電解液を高圧噴射させる電子基板を収容する容器に陽極および陰極のいずれか他方を設置し、これらを電源に電気的に接続するようにすることで、電解液を噴射する際に陽極と陰極との間に電圧を印加する方法が挙げられる。
電解液に印加される電圧の範囲は特に制限されないが、10V〜100Vの範囲内であることが好ましく、10V〜30Vの範囲内であることがより好ましい。電解液に印加される電圧が10V未満である場合には、電子基板1に流れる電流が小さく、通電による下地金属の溶解が起こらない可能性があり、また、電解液に印加される電圧が100Vを超える場合には、陽極および陰極の少なくともいずれかが破損してしまう可能性がある。
〔3〕電子基板からの金の分離工程(ステップS3)
続く電子基板からの金の分離工程(ステップS3)では、上述の電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)を経た電子基板から金を分離させる。当該工程は、少なくとも電解液の高圧噴射により(本実施の形態ではさらに電解液への電圧の印加により)、電子基板1の表面の金が削り取られたり、電子基板1に傷をつけることで下地金属であるニッケル、銅の少なくとも一方を露出される。当該工程では、このような状態の電子基板から金を分離させる。また、本実施形態のように、電解液を高圧噴射すると同時に、当該電解液に電圧を印加する場合、高圧噴射された電解液が容器内に充填されることで、陽極と陰極とこれらの間に設置された電子基板との間には、電気的な回路が形成されることになる。これにより電子基板1の金層2および下地金属層3に電流が流れ、下地金属層3を形成する金属材料(たとえばニッケル、銅)が酸化反応を起こし、イオン(たとえばニッケルイオン、銅イオン)として電解液に溶解してくることなる。これらの酸化反応は、電解液の高圧噴射によりつけられた電子基板の傷の部分で優先的に起こることが本発明者らの研究によって分かっており、電子基板に傷をつけない場合(たとえば上述のように電圧を印加した状態の電解液に電子基板を浸漬する場合)よりも短時間で金を分離することが可能となる。
続く電子基板からの金の分離工程(ステップS3)では、上述の電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)を経た電子基板から金を分離させる。当該工程は、少なくとも電解液の高圧噴射により(本実施の形態ではさらに電解液への電圧の印加により)、電子基板1の表面の金が削り取られたり、電子基板1に傷をつけることで下地金属であるニッケル、銅の少なくとも一方を露出される。当該工程では、このような状態の電子基板から金を分離させる。また、本実施形態のように、電解液を高圧噴射すると同時に、当該電解液に電圧を印加する場合、高圧噴射された電解液が容器内に充填されることで、陽極と陰極とこれらの間に設置された電子基板との間には、電気的な回路が形成されることになる。これにより電子基板1の金層2および下地金属層3に電流が流れ、下地金属層3を形成する金属材料(たとえばニッケル、銅)が酸化反応を起こし、イオン(たとえばニッケルイオン、銅イオン)として電解液に溶解してくることなる。これらの酸化反応は、電解液の高圧噴射によりつけられた電子基板の傷の部分で優先的に起こることが本発明者らの研究によって分かっており、電子基板に傷をつけない場合(たとえば上述のように電圧を印加した状態の電解液に電子基板を浸漬する場合)よりも短時間で金を分離することが可能となる。
〔4〕金の回収工程(ステップS4)
続く金の回収工程(ステップS4)では、電子基板1から分離された金を含む電解液を、濾過する。これにより、固形物である金を回収することができる。ここで、金は、下地金属が付着したままの状態で電子基板から分離される場合にあるが、このような下地金属は酸性水である電解液に溶解するため、濾過することにより、固形物として金の濃縮物を選択的に回収することができる。
続く金の回収工程(ステップS4)では、電子基板1から分離された金を含む電解液を、濾過する。これにより、固形物である金を回収することができる。ここで、金は、下地金属が付着したままの状態で電子基板から分離される場合にあるが、このような下地金属は酸性水である電解液に溶解するため、濾過することにより、固形物として金の濃縮物を選択的に回収することができる。
〔5〕電解液の中和工程(ステップS5)
次に、金を回収後の電解液(酸性液)に、アルカリ性水を添加し、電解液を中和する。電子基板に高圧噴射させる電解液としてアルカリ性水を用いる場合には、当該工程では中和のために酸性水を添加すればよいが、上述したように電子基板に高圧噴射させる電解液として酸性水を用いることが好ましく、その場合には、当該工程で電解液の中和のために添加されるのはアルカリ性水であることが好ましい。このアルカリ性水としては、電解液製造工程(ステップS1)で酸性水と共に製造されたアルカリ性水を用いることが好ましい。上述のように電解液としては、好ましくは電解液製造工程(ステップS1)で製造された酸性水を用いており、これに電解液製造工程(ステップS1)で酸性水と共に製造されたアルカリ性水を添加することで、電解液は中和され、水と中性塩の混合溶液に戻る。これにより、電解液の廃液を、環境負荷の高い酸性水のまま、または、アルカリ性水を廃液として排出させるようなことがない。添加するアルカリ性水の量は、電解液の廃液が中和し得る量であれば特に制限されない。
次に、金を回収後の電解液(酸性液)に、アルカリ性水を添加し、電解液を中和する。電子基板に高圧噴射させる電解液としてアルカリ性水を用いる場合には、当該工程では中和のために酸性水を添加すればよいが、上述したように電子基板に高圧噴射させる電解液として酸性水を用いることが好ましく、その場合には、当該工程で電解液の中和のために添加されるのはアルカリ性水であることが好ましい。このアルカリ性水としては、電解液製造工程(ステップS1)で酸性水と共に製造されたアルカリ性水を用いることが好ましい。上述のように電解液としては、好ましくは電解液製造工程(ステップS1)で製造された酸性水を用いており、これに電解液製造工程(ステップS1)で酸性水と共に製造されたアルカリ性水を添加することで、電解液は中和され、水と中性塩の混合溶液に戻る。これにより、電解液の廃液を、環境負荷の高い酸性水のまま、または、アルカリ性水を廃液として排出させるようなことがない。添加するアルカリ性水の量は、電解液の廃液が中和し得る量であれば特に制限されない。
〔6〕銅およびニッケルの除去工程(ステップS6)
次に、下地金属層を形成する金属材料として電解液(好ましくは酸性水)に溶解していた銅イオンおよびニッケルイオンは、上述の電解液の中和工程(ステップS5)で、沈殿する。当該ステップでは、この中和後の電解液から、ニッケルと銅の沈殿物を分離する。当該沈殿物の分離は、濾過によって簡便に行なうことができる。このようにして、下地金属層を形成していた銅およびニッケルが回収できる。このうち、銅は本明細書における貴金属の1つとして回収される。なお、本実施形態では、銅およびニッケルを回収した例を示しているが、金、銅以外には、白金など、イオン化傾向の小さい貴金属もこのようなステップによって回収することが可能である。中和によって生成された水および中性塩との混合物は、そのまま廃液として廃棄されていてもよいし、上述の電解液製造工程(ステップS1)に用いる原水として循環させるようにしてもよい。
次に、下地金属層を形成する金属材料として電解液(好ましくは酸性水)に溶解していた銅イオンおよびニッケルイオンは、上述の電解液の中和工程(ステップS5)で、沈殿する。当該ステップでは、この中和後の電解液から、ニッケルと銅の沈殿物を分離する。当該沈殿物の分離は、濾過によって簡便に行なうことができる。このようにして、下地金属層を形成していた銅およびニッケルが回収できる。このうち、銅は本明細書における貴金属の1つとして回収される。なお、本実施形態では、銅およびニッケルを回収した例を示しているが、金、銅以外には、白金など、イオン化傾向の小さい貴金属もこのようなステップによって回収することが可能である。中和によって生成された水および中性塩との混合物は、そのまま廃液として廃棄されていてもよいし、上述の電解液製造工程(ステップS1)に用いる原水として循環させるようにしてもよい。
(電子基板からの貴金属の回収装置)
図3は、本実施形態に係る電子基板から貴金属を分離し、回収する装置(電子基板からの貴金属の分離・回収装置。以下、「本実施形態に係る装置」と呼称する)を模式的に示す図である。上述した本実施の形態に係る方法は、たとえば図3に示すような本実施形態に係る装置を用いることで好適に行なうことができる。本発明は、このような電子基板からの貴金属の回収装置についても提供するものである。なお、上述した本実施の形態に係る方法は、図3に示す本実施形態に係る装置を用いて好適に行われるが、必ずしも、本実施形態に係る装置を用いて行わなくともよい。
図3は、本実施形態に係る電子基板から貴金属を分離し、回収する装置(電子基板からの貴金属の分離・回収装置。以下、「本実施形態に係る装置」と呼称する)を模式的に示す図である。上述した本実施の形態に係る方法は、たとえば図3に示すような本実施形態に係る装置を用いることで好適に行なうことができる。本発明は、このような電子基板からの貴金属の回収装置についても提供するものである。なお、上述した本実施の形態に係る方法は、図3に示す本実施形態に係る装置を用いて好適に行われるが、必ずしも、本実施形態に係る装置を用いて行わなくともよい。
図3に示す例の電子基板からの貴金属の分離・回収装置10は、貴金属を含む電子基板(たとえば図2に示した構造の電子基板1)に、電解液14を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射(高圧噴射)する噴射ノズル13とを備える。噴射ノズル13としては、上述した範囲内の圧力で電解液を噴射するようなものであれば特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の噴射ノズルを用いることができる。なお、高圧噴射の圧力が上述した範囲で好ましい理由、さらに好ましい圧力の範囲は、本実施形態に係る方法において説明したとおりである。
本実施形態に係る装置10は、電解液14に電圧を印加するための陽極16および陰極17をさらに備えていることが好ましい。図3には、噴射ノズル13に、その中を通過する電解液に電気的に接続可能なように陽極16が設置され、さらに、電解液14を高圧噴射させる電子基板1を収容する容器18に、容器18に収容された電解液14に電気的接続が可能なように(たとえば容器18の底に)陰極17が設置される。これら陽極16および陰極17は、電源19に電気的に接続され、用事、電源19から陽極16および陰極17に電気を供給し得るように構成される。このような構成により、電解液14に電圧を印加しながら電子基板に高圧噴射することが可能となる。ここで、電解液14に印加する電圧の好ましい範囲およびその理由は、本実施形態に係る方法において上述したのと同様である。容器18は、電子基板1を収容し得る大きさであり、その一部に開口を有する(図3に示すように容器18の開口側から噴射ノズル13で電子基板1に高圧噴射する)ものであれば、その形成材料も特に制限されないが、耐腐食性が強いという理由からは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ステンレス鋼もしくは、それらが表面にコーティングされた材料で形成された容器18を用いることが好ましい。
本実施形態に係る装置10により、少なくとも電解液の高圧噴射により、電子基板1の表面の金を削り取ったり、電子基板1に傷をつけることで下地金属であるニッケル、銅の少なくとも一方を露出させたりすることで、電子基板1から金が分離される。図3においては、高圧噴射された後の電子基板1が容器18内で電解液14に浸漬し、電解液14の液面には当該高圧噴射によって削り取られた切削物15が浮かび、電子基板1の電解液が高圧噴射された表面には削り跡30が形成されている様子が示されている。また本実施の形態ではさらに電解液への電圧の印加により、高圧噴射された電解液14が容器18内に充填されることで、陽極16および陰極17とこれらの間に設置された電子基板1との間に、電気的な回路が形成される。これにより、電子基板1の金層2および下地金属層3に電流を流し、下地金属層3の酸化反応により、下地金属層3を形成していた金属材料(たとえば銅、ニッケル)がイオン(たとえば銅イオン、ニッケルイオン)として電解液14中に溶出する。
本実施形態に係る装置10は、水を電気分解して電解液を製造する、電気分解装置24をさらに備えることが好ましい。電気分解装置24は特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の電気分解装置を用いることができる。図3に示す例には、電気分解装置24にパイプ31fが連結され、パイプ31fの中途に設けられたバルブ11aおよびポンプ12で流量を調整しながら、電気分解に供する水(原水)を電気分解装置24に供給し得るように構成されている。原水としては、上述のように水道水、純水、超純水、イオン交換水、蒸留水、精製水というような水が挙げられるが、同様の理由から水と中性塩との混合物であることが好ましい。中性塩についても、本実施形態に係る方法で上述したのと同様のものであることが好ましい。
図3に示す例には、電気分解装置24に、電気分解で製造された酸性水14(電解液14として用いる)酸性水槽25とがパイプ31aを介して連結され、アルカリ性水27を収容するアルカリ性水槽26とがパイプ31gを介して連結される。ここで、電気分解装置24で製造される酸性水、アルカリ性水として好ましい例、pHなどは本実施形態に係る方法で上述したとおりである。酸性水槽25には、パイプ31bが連結され、噴射ノズル13で高圧噴射できるように噴射ノズル13に酸性液を電解液14として供給するように構成される。
本実施形態に係る装置10は、電解液14を噴射することで電子基板1から分離された金を含む溶液を濾過し、金を回収する回収槽23をさらに備えることが好ましい。図3に示す例では、容器18と回収槽23とが連結され、高圧噴射した後の容器18内の電解液14を回収槽23に移動できるように構成される。回収槽23には、濾過手段(図示せず)が備えられ、電解液14から、金の濃縮物2aを沈殿物として回収できる。
本実施形態に係る装置10は、濾過した後の前記溶液にアルカリ性水を添加して中和させ、金属を析出させた後、濾過し、金属を回収する中和槽28をさらに備えることが好ましい。図3に示す例では、回収槽23と中和槽28とが、パイプ31dを介して連結され、パイプ31dの中途にはバルブ11bが設けられ、用事、流量を調整しながら、回収槽23に収容されていた液(金を回収後の電解液(酸性液))を中和槽28に移すことができるように構成されている。また、中和槽28には、上述した電気分解装置24で製造されたアルカリ性水27を収容するためのアルカリ性水槽26にパイプ31eを介して連結され、パイプ31eの中途にはバルブ11cが設けられ、用事、流量を調整しながら、アルカリ性水槽26からアルカリ性水27を中和槽28に移すことができるように構成されている。ここで、アルカリ性水27は、中和槽28に移された電解液(酸性水)を中和することができるように、中和槽28に収容された電解液の量に応じて適宜調整することができる。このようにすることで、中和槽28内で電解液はアルカリ性水の添加により中和され、中和液29となる。この電解液の中和により、電解液中に溶解していたイオン(たとえば下地金属層3を形成していた金属のイオンである銅イオン、ニッケルイオン)が、単体金属(たとえば銅、ニッケル)として沈殿する。濾過手段(図示せず)により、中和槽28における中和液29中の沈殿物を取り除くことで、下地金属層を形成していた金属材料を(銅の場合には貴金属として)回収することができる。
図3に示す例では、中和槽28は、上述のバルブ12が中途に設けられたパイプ31fに連結され、下地金属層3を形成していた金属を除去した後の中和液29を、原水として電気分解装置24に供給し得るように構成されている。このような構成により、1枚目の電子基板1ついて、上述の一連の本実施形態の方法を行なった後の中和槽28から中和液を電気分解装置24に供給し、酸性水14とアルカリ性水27に電気分解後、製造された酸性水14を電解液として1枚目の電子基板とは別の電子基板(2枚目の電子基板)に高圧噴射する、というように、本実施形態に係る方法を繰り返し行なうことができる。なお、このとき電子基板と噴射ノズルとの間の直線距離などの調整は不要であり、電子基板が、陽極16および陰極17の間にあるようにすればよい。また、1枚目の電子基板と2枚目の電子基板(ならびに、3枚目以降の電子基板)は、その表面の金パターンの形状やサイズは同じでなくてもよく、基板ごとに調整は不要であることから、効率的な金の分離・回収が可能となる。
<実施の形態2>
(電子基板からの貴金属の分離・回収方法)
図4は、実施の形態2に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法の好ましい一例を示すフローチャートである。図4に示す例のフローチャートは、電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)の代わりに、電解液高圧噴射工程(ステップS2’)を行なう以外は図1のフローチャートに示した方法と同様である。すなわち、本実施の形態では、電解液への電圧の印加を行なわずに、電解液を電子基板に高圧噴射する。このような場合も本発明に包含される。この場合、上述した1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の範囲の圧力の中でも、3000kgf/cm2〜4000kgf/cm2と比較的高目の範囲の圧力で電解液を噴射するようにすることが好ましい。
(電子基板からの貴金属の分離・回収方法)
図4は、実施の形態2に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法の好ましい一例を示すフローチャートである。図4に示す例のフローチャートは、電解液高圧噴射および電圧印加工程(ステップS2)の代わりに、電解液高圧噴射工程(ステップS2’)を行なう以外は図1のフローチャートに示した方法と同様である。すなわち、本実施の形態では、電解液への電圧の印加を行なわずに、電解液を電子基板に高圧噴射する。このような場合も本発明に包含される。この場合、上述した1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の範囲の圧力の中でも、3000kgf/cm2〜4000kgf/cm2と比較的高目の範囲の圧力で電解液を噴射するようにすることが好ましい。
本実施の形態では、電子基板1に傷30をつけるだけではあるが、切削物として金のみが電子基板から分離されてもよいし、下地金属層を形成していた金属(たとえば銅、ニッケル)が付着した状態の金が電子基板から分離されてもよいし、これらの両方が電子基板から分離されてもよい。この場合、電子基板からの金の分離工程(ステップS3)では、電解液の高圧噴射のみの作用によって電子基板から金が分離され、電圧印加は不要である。電子基板から分離した金には下地金属層3が付着している場合があるが、電解液中で下地金属層3のニッケルと銅が溶解するため、続く金の回収工程(ステップS4)において、金のみが固形物の状態となるため、金を容易に回収することができる。本実施形態の方法での以降の工程は、実施の形態1に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法として上述したのと同様である。
(電子基板からの貴金属の分離・回収装置)
このような実施の形態2に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法は、たとえば図3に示したような構成の貴金属の分離・回収装置10を用い、電源19から陽極16および陰極17に電圧を印加しないようにすること以外は同様の操作を行なうことで、好適に行なうことができる。また、陽極16、陰極17および電源19を備えないこと以外は図3に示したのと同様の構成の装置を用いるようにしてもよい。
このような実施の形態2に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法は、たとえば図3に示したような構成の貴金属の分離・回収装置10を用い、電源19から陽極16および陰極17に電圧を印加しないようにすること以外は同様の操作を行なうことで、好適に行なうことができる。また、陽極16、陰極17および電源19を備えないこと以外は図3に示したのと同様の構成の装置を用いるようにしてもよい。
<実施の形態3>
(電子基板からの貴金属の分離・回収装置)
図5は、実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収装置の一部を模式的に示す図であり、図6は、図5に示す例の噴射ノズル41の切断面線VI−VIからみた断面図である。なお、図5に示す例において、図5に示す部分以外の構成は、図3に示した実施の形態1に係る電子基板からの貴金属の分離・回収装置と同様であればよい。図5および図6に示す例では、噴射ノズル41において、電解液に電気的に接続可能なように、陽極42が断面円状に設けられており、陽極42の外周を陰極43が取り囲むように構成されている。図5および図6に示す例では、陽極42と陰極43との間に絶縁体44が配置されており、電流が電子基板1の表面に流れるように配置されている。
(電子基板からの貴金属の分離・回収装置)
図5は、実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収装置の一部を模式的に示す図であり、図6は、図5に示す例の噴射ノズル41の切断面線VI−VIからみた断面図である。なお、図5に示す例において、図5に示す部分以外の構成は、図3に示した実施の形態1に係る電子基板からの貴金属の分離・回収装置と同様であればよい。図5および図6に示す例では、噴射ノズル41において、電解液に電気的に接続可能なように、陽極42が断面円状に設けられており、陽極42の外周を陰極43が取り囲むように構成されている。図5および図6に示す例では、陽極42と陰極43との間に絶縁体44が配置されており、電流が電子基板1の表面に流れるように配置されている。
また図5に示す例のように、噴射ノズル41の外周に吸引機構45を設けるようにしてもよい。吸引機構45は、たとえば、陽極42の外周と陰極43の内周との間に設けられ、電解液の高圧噴射(ならびに、場合によっては電解液への電圧の印加)による切削、傷つけなどにより電子基板から分離された金を含む電解液を、上述の陽極42の外周と陰極43の内周との間から吸引機構45により吸引するようにしてもよい。これにより、電子基板より分離した金が、容器18内の電解液に分散してしまう前に吸引し、回収することで、効率的な金の回収が可能となる。このような吸引機構45としては、従来公知の適宜の吸引機構を用いることができ、特に制限されるものではない。吸引機構45により吸引する電解液の流量は、特に制限されるものではないが、1L/min〜100L/minの範囲内であることが好ましい。吸引機構45により吸引する電解液の流量が1L/min未満である場合には、切削物15を吸引できない可能性があり、また、吸引機構45により吸引する電解液の流量が100L/minより大きいと、電子基板まで吸引してしまう可能性がある。吸引機構45によって捕集した金は、吸引機構45の上部に設けた濾過フィルター46などによってトラップされ、回収される。
(電子基板からの貴金属の分離・回収方法)
図5および図6に示した噴射ノズル41を備える実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収装置を用いることで、実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法を好適に行なうことができる。実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法においは、図5および図6に示した噴射ノズル41を用い、電解液の高圧噴射(ならびに、場合によっては電解液への電圧の印加)による切削、傷つけなどにより電子基板から分離された金を含む電解液を、陽極42の外周と陰極43の内周との間から吸引機構45により吸引するようにすればよい。この場合、金の回収工程は、吸引機構45の上部に設けた濾過フィルター46などによってトラップされ、回収されることによって行われる。これら以外の各工程については、実施の形態1、2でそれぞれ上述した方法における各工程と同様であってよい。
図5および図6に示した噴射ノズル41を備える実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収装置を用いることで、実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法を好適に行なうことができる。実施の形態3に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法においは、図5および図6に示した噴射ノズル41を用い、電解液の高圧噴射(ならびに、場合によっては電解液への電圧の印加)による切削、傷つけなどにより電子基板から分離された金を含む電解液を、陽極42の外周と陰極43の内周との間から吸引機構45により吸引するようにすればよい。この場合、金の回収工程は、吸引機構45の上部に設けた濾過フィルター46などによってトラップされ、回収されることによって行われる。これら以外の各工程については、実施の形態1、2でそれぞれ上述した方法における各工程と同様であってよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
図3に示した電子基板からの分離・回収装置10を用い、図2に示したように、金層2、2層の下地金属層3(金層2側にニッケル層3a、絶縁体層4側に銅層3b)および絶縁体層4を備える電子基板1について、図1に示したフローチャートに沿って実施の形態1に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法を行なった。
図3に示した電子基板からの分離・回収装置10を用い、図2に示したように、金層2、2層の下地金属層3(金層2側にニッケル層3a、絶縁体層4側に銅層3b)および絶縁体層4を備える電子基板1について、図1に示したフローチャートに沿って実施の形態1に係る電子基板からの貴金属の分離・回収方法を行なった。
まず、底側にニッケルの板で形成された陰極17が設けられた容器18内に、電子基板1を、金層2が上側(容器18の開口側)となるように設置した。90Lの水道水(原水)と塩化ナトリウム(添加量:10kg)とを混合し、電気分解装置24において10Vの電圧で1時間という条件で電気分解を行ない、pH2.5の酸性水(塩酸)とpH11.5のアルカリ性水(水酸化ナトリウム水溶液)を製造した(ステップS1)。
次に、製造した酸性水を電解液として、2800kgf/cm2の圧力で噴射ノズル13から電子基板1に、基板面に対し垂直となるように高圧噴射し、同時に、陽極16と陰極17との間に50Vを印加した(ステップS2)。電解液の高圧噴射により、電子基板1の表面の金層2に傷30をつけて下地金属層3を露出させ、下地金属3は電解液14と接触された。さらに、噴射された電解液14が、容器18内に充填されることで、陽極16と陰極17およびこれらの間に設置された電子基板1は、電気的な回路を形成した。電子基板1の金層2および下地金属層3に電流が流れ、下地金属層3が酸化反応を起こしてニッケルイオンおよび銅イオンとして溶解させて、金を分離させた(ステップS3)。
次に、電子基板1から分離した金を含む電解液14を回収槽23に移動させ、濾過によって固形物である金を回収した(ステップS4)。次に、金を回収した後の電解液14を、ステップS1で製造していたアルカリ性水27と混合し、中和槽28で中和させた(ステップS5)。中和によって塩化ナトリウム水溶液(中和液29)が生成し、電解液中に溶解していたニッケルイオンと銅イオンは単体金属として沈殿した。このニッケルと銅が沈殿している中和液29から、濾過などによって、ニッケルと銅を除去した(ステップS6)。
ニッケルと銅を取り除いた中和液29は、ポンプ12によって、電気分解装置24にくみ上げ、再び電解して酸性水(塩酸)とアルカリ性水(水酸化ナトリウム水溶液)に分ける。酸性水は、上述した電子基板とは別の電子基板(2枚目)から金を分離させるために使用し、アルカリ性水は、酸性水の中和に用いることができる。このとき、電子基板と噴射ノズルとの距離といった調整は不要であり、電子基板1が、陽極16を兼ねた噴射ノズル13と容器18の底に設置された陰極17の間にあればよい。
以上から、塩酸や水酸化ナトリウム水溶液といった環境負荷の高い廃液を排出することなく、電子基板から金を回収することができた。また、1枚目と2枚目の電子基板やその表面の金パターンの形状やサイズは同じでなくてもよく、基板毎に装置の調整が不要であることから、効率的に金を回収することができた。
<実施例2>
実施例1において、電圧印加をせずに、高圧噴射のみの場合を実施例2として説明する。
実施例1において、電圧印加をせずに、高圧噴射のみの場合を実施例2として説明する。
まず、(ステップS1)は実施例1と同じである。
次に、製造した酸性水を電解液として、2800kgf/cm2の圧力で噴射ノズル13から電子基板1に、基板面に対し垂直となるように高圧噴射した。電解液の高圧噴射により、電子基板1の表面の金層2に傷30をつけて下地金属層3を露出させ、下地金属3は電解液14と接触させた。さらに、噴射された電解液14が容器18内に充填され、電解液14に電子基板1が浸漬されている状態にした。電解液14の酸化力によって、露出している下地金属層3が酸化反応を起こしてニッケルイオンおよび銅イオンとして溶解し、金が分離した。本手法では、実施例1に比べて、金の分離に長時間を要する。(ステップS4)以降は、実施例1と同様である。
次に、製造した酸性水を電解液として、2800kgf/cm2の圧力で噴射ノズル13から電子基板1に、基板面に対し垂直となるように高圧噴射した。電解液の高圧噴射により、電子基板1の表面の金層2に傷30をつけて下地金属層3を露出させ、下地金属3は電解液14と接触させた。さらに、噴射された電解液14が容器18内に充填され、電解液14に電子基板1が浸漬されている状態にした。電解液14の酸化力によって、露出している下地金属層3が酸化反応を起こしてニッケルイオンおよび銅イオンとして溶解し、金が分離した。本手法では、実施例1に比べて、金の分離に長時間を要する。(ステップS4)以降は、実施例1と同様である。
<比較例1>
実施例1において、噴射圧力が100kgf/cm2の場合の比較例を説明する。
実施例1において、噴射圧力が100kgf/cm2の場合の比較例を説明する。
まず、底側にニッケルの板で形成された陰極17が設けられた容器18内に、電子基板1を、金層2が上側(容器18の開口側)となるように設置した。40Lの水道水(原水)と塩化ナトリウム(添加量:10kg)とを混合し、電気分解装置24において50Vの電圧で0.5時間という条件で電気分解を行ない、pH2.5の酸性水(塩酸)とpH11.5のアルカリ性水(水酸化ナトリウム水溶液)を製造した(ステップS1)。
次に、製造した酸性水を電解液として、100kgf/cm2の圧力で噴射ノズル13から電子基板1に、基板面に対し垂直となるように高圧噴射し、同時に、陽極16と陰極17との間に50Vを印加した(ステップS2)。電解液は、電子基板1の周囲を満たされるのみで表面の金層2に傷がつかず、下地金属層3が露出しなかった。下地金属層3と電解液14とが接触しなかったため、下地金属層3の酸化溶解反応が遅くなり、金を電子基板から分離させるのに、長時間を要した。
1 電子基板、2 金層、3 下地金属層、3a ニッケル層、3b 銅層、4 絶縁体層、10 電子基板からの貴金属の分離・回収装置、11a,11b,11c バルブ、12 ポンプ、13 噴射ノズル、14 電解液(酸性水)、15 切削物、16 陽極、17 陰極、18 容器、19 電源、23 回収槽、24 電気分解装置、25 酸性水槽、26 アルカリ性水槽、27 アルカリ性水、28 中和槽、29 中和液、30 傷、31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g パイプ、41 噴射ノズル、42 陽極、43 陰極、44 絶縁体、45 吸引機構、46 濾過フィルター。
Claims (10)
- 貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射する工程を含む、電子基板から貴金属を分離し、回収する方法。
- 前記電解液の噴射は、電解液に電圧を印加しながら行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記電解液が、水と中性塩との混合物の電気分解によって製造された酸性水である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記電解液を噴射することで電子基板から分離された金を含む溶液を濾過する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
- 濾過した後の前記溶液にアルカリ性水を添加して中和させ、金属を析出させた後、濾過する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
- 貴金属を含む電子基板に電解液を1000kgf/cm2〜4000kgf/cm2の圧力で噴射する噴射ノズルを備える、電子基板から貴金属を分離し、回収する装置。
- 前記電解液に電圧を印加するための陽極および陰極とをさらに備える、請求項6に記載の装置。
- 水と中性塩との混合物を電気分解して酸性水とアルカリ性水とを製造する電気分解装置をさらに備え、製造された酸性水を前記電解液として用いる、請求項6または7に記載の装置。
- 電解液を噴射することで電子基板から分離された金を含む溶液を濾過し、金を回収する回収槽をさらに備える、請求項8に記載の装置。
- 濾過した後の前記溶液にアルカリ性水を添加して中和させ、金属を析出させた後、濾過し、金属を回収する中和槽をさらに備える、請求項9に記載の装置。
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JP2015041084A JP2016160493A (ja) | 2015-03-03 | 2015-03-03 | 電子基板から貴金属を分離、回収する方法およびそのための装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2018123358A (ja) * | 2017-01-30 | 2018-08-09 | 株式会社アステック入江 | 金属回収方法 |
JP2018123357A (ja) * | 2017-01-30 | 2018-08-09 | 株式会社アステック入江 | 金属回収方法 |
JP2018123356A (ja) * | 2017-01-30 | 2018-08-09 | 株式会社アステック入江 | 金属回収方法 |
-
2015
- 2015-03-03 JP JP2015041084A patent/JP2016160493A/ja active Pending
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JP2018123357A (ja) * | 2017-01-30 | 2018-08-09 | 株式会社アステック入江 | 金属回収方法 |
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