JP2016160268A - 光学部材用粘着剤および光学積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクリル系重合体(A)、架橋剤(B)、及びイオン化合物(C)より得られる光学部材用粘着剤であって、アクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として(a2)カルボキシル基含有単量体を0.1〜10重量%含有し、架橋剤(B)がアクリル系重合体(A)100重量部に対して、4〜30重量部含有されており、イオン化合物(C)が特定の化学式で表わされるカチオンと、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンより選ばれるアニオンからなるイオン化合物であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜5.5×106、且つ、80℃における貯蔵弾性率が1.0×105〜2.0×106であることを特徴とする光学部材用粘着剤。
【選択図】なし
Description
偏光板用粘着剤層は、液晶素子の製造時に、通常、片面に剥離処理されたカバーフィルムが貼付された状態で偏光板上に貼付され、その後、カバーフィルムを剥がして粘着剤層を露出させてから基板に貼り付けられる。その際に、カバーフィルムや偏光板の絶縁性が高いことから静電気が発生し、液晶の配向を乱したり、電子部品を損傷させたりするなどの悪影響を及ぼすことがある。
このため、偏光板用粘着剤には、帯電防止性能も求められており、帯電防止性能を有する偏光板用粘着剤として、粘着剤を構成するベースポリマーに、イオン化合物を含有させる技術が報告されている。
本発明は、例えば以下の1.〜6.である。
アクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として(a2)カルボキシル基含有単量体を0.1〜10重量%含有し、架橋剤(B)がアクリル系重合体(A)100重量部に対して、4〜30重量部含有されており、イオン化合物(C)が下記化学式(1)で表わされるカチオンと、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンより選ばれるアニオンからなるイオン化合物であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜5.5×106、且つ、80℃における貯蔵弾性率が1.0×105〜2.0×106であることを特徴とする光学部材用粘着剤。
式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立にアルキル基である。
2.前記1.に記載のアクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として、(a1−1)ポリオキシアルキレン基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを41〜99.9重量%含有する、1.に記載の光学部材用粘着剤。
3.1.に記載のアクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として、(a1−2) (メタ)アクリル酸アルキルエステルを70〜99.9重量%の割合で含有する、前記1.に記載の光学部材用粘着剤。
4.少なくとも一方の面に保護膜を有する偏光板、及び、該保護膜上に、前記1.ないし3.の光学部材用粘着剤よりなる粘着剤層が積層されていることを特徴とする光学積層体。
5.前記保護膜がセルロース系フィルム又はシクロオレフィン系フィルムであることを特徴とする前記4.に記載の光学積層体。
6.シクロオレフィンポリマー層を有する光学部材、及び、該シクロオレフィンポリマー層上に、前記2.に記載の光学部材用粘着剤よりなる粘着剤層が積層されていることを特徴とする光学積層体。
本明細書において、アクリルおよびメタクリルを総称して「(メタ)アクリル」とも記載する。
(光学部材用粘着剤)
(メタ)アクリル系重合体(A)は、カルボキシルを有する単量体(a2)と、架橋性基を有しない(メタ)アクリル酸エステルとを含む重合性単量体混合物をラジカル重合させて得られる共重合体である。
単量体(a1−1)は、ポリオキシアルキレン基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
単量体(a1−1)は、例えば、式(2)で表される。
CH2=CR1−COOR2・・・(2)
R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、式(3)で表される基である。
−(R3O)nR4・・・(3)
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体(a1−1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
単量体(a1−2)は、ポリオキシアルキレン基、アルコキシアルキル基および架橋性基のいずれも有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
単量体(a1−2)は、例えば、式(4)で表される。
CH2=CR5−COOR6・・・(4)
R6における有機基は、炭素数1〜24のアルキル基である。
単量体(a1−2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
単量体(a2)は、カルボキシル基を含有する単量体である。
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する重合性単量体として、単量体(a2)を用いることで、架橋剤(B)によって架橋され得る架橋点を(メタ)アクリル系重合体(A)に導入することができる。
単量体(a2)は、例えば、式(5)で表される。
CH2=CR7−COOR8・・・(5)
カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体(a2)としては、式(5)で表される化合物のほか、エチレン性不飽和カルボン酸類を挙げることもできる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸が挙げられる。
単量体(a2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
単量体(a3)は、カルボキシル基以外の架橋性基を有する単量体(a3)である。
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する重合性単量体として、単量体(a3)を用いることで、架橋度調整、基材および被着体との密着性向上および架橋剤(B)の相溶性を向上することができる。
単量体(a3)は、例えば、式(6)で表される。
CH2=CR9−COOR10・・・(6)
R10における有機基としては、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜12のN−アルキル置換アミノアルキル基などが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、N−アルキル置換アミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、例えば、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体(a3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
単量体(a4)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体、脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。脂環式基または芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、(メタ)アクリルアミド類を挙げることもできる。(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−モノアルキル置換アクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等のN,N−ジアルキル置換アクリルアミドが挙げられる。更に、(メタ)アクリル系マクロモノマー、スチレン系マクロモノマー等のマクロモノマーを使用することも出来る。
単量体(a4)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、第2の態様において、さらに架橋性基を有しないポリオキシアルキレン基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a1−1)を重合性単量体混合物全量に対して0〜29.9質量%の割合で含有してもよい。
単量体(a1−1)〜単量体(a4)は第1の態様と同様の単量体を使用することが出来る。
第2の態様において、単量体(a1−1)は(メタ)アクリル系重合体(A)を形成する重合性単量体100質量%中、0〜29.9質量%、好ましくは、0〜29.75質量%である。
(メタ)アクリル系重合体(A)は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができ、これらの中でも溶液重合法が好ましい。具体的には、反応容器内に重合溶媒、重合性単量体を仕込み、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40〜100℃、好ましくは50〜80℃に設定し、通常50〜90℃、好ましくは60〜90℃の温度に反応系を維持して、4〜20時間反応させる。
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
重合中に、重合開始剤を複数回添加することも制限されない。
重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(メタ)アクリル系重合体(A)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定される重量平均分子量(Mw)が、ポリスチレン換算値で、通常20万以上であり、好ましくは30万〜120万、より好ましくは40万〜110万、さらに好ましくは50万〜100万の重合体(A)である。Mwが前記下限値以上であると、粘着剤層の耐久性、凝集力が優れる点で好ましい。Mwが前記上限値以下であると、粘着剤組成物の塗工性、濡れ性が良好である点で好ましい。
本発明の光学部材用粘着剤は、架橋剤(B)を含有する。架橋剤(B)は(メタ)アクリル系重合体(A)に導入され得る架橋性基によって適宜選択され、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物を用いることができる。粘着力、濡れ性、光漏れ抑制性、塗工品の経時安定性の観点から、1分子中のイソシアネート基が2以上の多官能イソシアネート化合物であることが好ましい。
1分子中のイソシアネート基が3つ以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基が2つまたは3つ以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ;高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
架橋剤(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の粘着剤組成物において、架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)に応じて適宜選択され、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、4〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは4〜25質量部である。
上記範囲内で架橋剤(B)を配合することにより、本発明の光学部材用粘着剤から形成される粘着剤層は、応力緩和特性と凝集力が適度なバランスで発現し、充分な耐熱性を得ることが出来る。また、柔軟性、密着性に優れる。
本発明の光学部材用粘着剤は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンおよび/またはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンから選ばれるアニオンと、下記の式(1)で示される4−アルキル−N−アルキルピリジニウムカチオンとからなるイオン化合物(C)を含有する。
式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立にアルキル基である。
光学部材用粘着剤がイオン化合物(C)を含有することにより、本発明の光学部材用粘着剤から形成される粘着剤層の表面抵抗値を低下させ、帯電防止性能を有する粘着剤層を得ることができる。
式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立にアルキル基である。
好ましくは、R11が炭素数1〜8のアルキル基であり、R12が炭素数1〜18のアルキル基である。耐湿熱性により優れた粘着剤層が得られることから、より好ましくは、R11が炭素数1〜5のアルキル基であり、R12が炭素数1〜12のアルキル基、更に好ましくは、R11が炭素数1〜3のアルキル基であり、R12が炭素数8のアルキル基である。R11およびR12におけるアルキル基は、いずれもn−アルキル基であることが好ましい。また、アルキル基が上記範囲の炭素数であることは、(メタ)アクリル系重合体(A)とイオン化合物(C)との適度な相溶性を発現する上で、望ましい。適度な相溶性を示すことで、初期の良好な帯電防止性能が発現するとともに、経時でのブリードによる帯電防止性能の劣化や、被着体との密着性劣化を抑制する。さらに、耐湿熱性に優れる。
前記式(1)で表される4−アルキル−N−アルキルピリジニウムカチオンとしては、4−メチル−N−オクチルピリジニウムカチオン、4−メチル−N−ブチルピリジニウムカチオンなどが挙げられる。理由は定かではないが、上記構造のイオン化合物であれば、特に塗膜化した後の安定化に優れ、帯電防止性能や粘着特性を一定のまま保つことが出来る。
本発明の粘着剤組成物は、前記化合物の他に、シランカップリング剤(D)を含有してもよい。シランカップリング剤(D)を用いることで、ガラス板等の基板に対して粘着剤層を強固に接着させ、高湿熱環境下での偏光板の剥がれを防止する点に寄与しうる。
本発明の光学部材用粘着剤は、その塗布性を調整するため、有機溶媒(E)を含有する粘着剤組成物を用いて得ることが好ましい。有機溶媒としては、((メタ)アクリル系重合体(A)の製造条件)の欄で説明した重合溶媒が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)および重合溶媒を含む重合体溶液と、架橋剤(B)と、イオン化合物(C)とを混合して、粘着剤組成物を調製することができる。前記粘着剤組成物において、有機溶媒の含有量は、通常50〜90質量%、好ましくは60〜90質量%である。
なお、本明細書において「固形分」とは、粘着剤組成物中の含有成分のうち上記有機溶媒(E)を除いた全成分をいい、「固形分濃度」とは、粘着剤組成物100質量%に対する前記固形分の割合をいう。
本発明の光学部材用粘着剤は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、Mw1000〜20000のアクリル系低分子量重合体、酸化防止剤、光安定剤、金属腐蝕防止剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋促進剤、界面活性剤およびリワーク剤から選択される1種または2種以上を含有してもよい。
本発明の光学部材用粘着剤は、(メタ)アクリル系重合体(A)と、架橋剤(B)と、イオン化合物(C)と、必要に応じて他の成分とを、従来公知の方法により混合することで調製することができる。例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)を合成する際に得られた、(メタ)アクリル系重合体(A)を含む重合体溶液に、架橋剤(B)と、イオン化合物(C)と、必要に応じて他の成分とを配合することが挙げられる。
前記光学部材用粘着剤は、ガラス基板又は偏光板等への密着性および高温高湿度下での耐久性に優れるため、偏光板とガラス基板との貼り合わせに好適に用いることができる。
本発明の粘着剤層は、上述の光学部材用粘着剤から形成される。例えば、上述の粘着剤中の架橋反応を進めることにより、具体的には(メタ)アクリル系重合体(A)を架橋剤(B)で架橋することにより、前記粘着剤層が得られる。
粘着剤層は、以下の条件で架橋反応を行うことが好ましい。粘着剤組成物を支持体上に塗布し、上記条件で形成された塗膜上にカバーフィルムを貼付した後、通常1日以上、好ましくは1〜10日間、通常5〜60℃、好ましくは15〜40℃、通常30〜70%RH、好ましくは40〜70%RHの環境下で養生する。上記のような熟成条件で架橋を行うと、効率よく架橋体(ネットワークポリマー)の形成が可能である。
本発明の光学積層体は、上述の光学部材用粘着剤より形成された粘着剤層を有する。粘着剤層は、例えば、上記粘着剤層のみを有する両面粘着シート、基材と、基材の両面に形成された上記粘着剤層とを有する両面粘着シート、基材と、基材の一方の面に形成された上記粘着剤層を有する片面粘着シート、およびそれら粘着シートの粘着剤層の基材と接していない面に剥離処理されたカバーフィルムが貼付された粘着シートとして形成される。
基材およびカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。
形成される粘着剤層の膜厚は、粘着性能維持の観点から、通常5〜75μm、好ましくは10〜50μmである。基材およびカバーフィルムの膜厚は、特に限定されないが、通常10〜125μm、好ましくは25〜75μmである。
偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムに偏光成分を含有させて延伸することにより得られる延伸フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニル共重合体の鹸化物が挙げられる。偏光成分としては、例えば、ヨウ素または二色性染料が挙げられる。
偏光板の厚さは、通常30〜250μm、好ましくは50〜200μmである。
また、上記偏光板には、例えば、防眩層、位相差層、視野角向上層等の他の機能を有する層が積層されていてもよい。
ポリプロピレン製ボトルに2gの水と2gのイオン化合物とを加え、濃度50質量%の試験用液を作成した。この試験溶液に、0.25g(厚さ40μm、40mm×120mm)のトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム;コニカミノルタ(株)製 K−10)を投入し、浸漬させた。前記ポリプロピレン製ボトルを、温度85℃、湿度85%環境下に300時間静置させた後、前記試験用液を採取し、液中の酢酸濃度を高速液体カラムクロマトグラフィー((株)島津製作所製)にて分析した。その結果を表1に示す。
上記評価で用いたイオン化合物は以下のとおりである。
(メタ)アクリル系重合体(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めた。
・測定装置:HLC−8320GPC(東ソー(株)製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー(株)製)
(1)TSKgel HxL−H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、n−ブチルアクリレート99.4部、アクリル酸0.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部、および酢酸エチル溶媒100部を仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃に昇温した。次いで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、窒素ガス雰囲気下、80℃で6時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し、固形分濃度25質量%の重合体溶液を調製した。得られた(メタ)アクリル系重合体A1のMwは40万であり、Mw/Mnは7.1であった。
重合反応に用いた重合性単量体を表2に記載したとおりに変更し、酢酸エチル溶媒80部を仕込んだこと以外は合成例A1と同様に行い、(メタ)アクリル系重合体A2、A4〜A8,A10を含む、固形分濃度25質量%の重合体溶液を調製した。結果を表2に示す。
重合反応に用いた重合性単量体を表2に記載したとおりに変更し、酢酸エチル溶媒70部を仕込んだこと以外は合成例A1と同様に行い、(メタ)アクリル系重合体A3、A9を含む、固形分濃度25質量%の重合体溶液を調製した。結果を表2に示す。
重合性単量体:
BA:n−ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
MEA:メトキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
AM:アクリルアミド
(1)粘着剤組成物の調整
合成例A1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液(固形分濃度25質量%)と、架橋剤(B)として(B1):日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL」(固形分濃度75質量%)と、イオン化合物(C)として(C2):4−メチル−オクチルピリジニウム/(FSO2)2N− と、シランカップリング剤(D)として信越化学工業(株)製「KBM−403」とを混合して、粘着剤組成物を得た。なお、各成分の比率は、合成例A1で得られた(メタ)アクリル系重合体溶液に含まれる重合体A1 100質量部に対して、(B1)12質量部、(C2)1.5質量部、(D)0.2質量部となる量である(いずれも固形分値)。
(2)粘着シートの作製
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、上記(1)で得られた粘着剤組成物をドクターブレードを用いて液温25℃で塗布し、90℃で3分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を形成した。塗膜の前記PETフィルムの貼付面とは反対面に、剥離処理されたPETフィルムをさらに貼り合わせ、23℃/50%RH環境下で7日間静置して熟成させて、2枚のPETフィルムに挟まれた厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。
(3)粘着剤付き偏光板の作製
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、上記(1)で得られた粘着剤組成物をドクターブレードを用いて液温25℃で塗布し、90℃で3分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を有する粘着シートを得た。前記粘着シートと偏光板(厚さ:110μm、層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/トリアセチルセルロースフィルム)とを、前記塗膜と偏光板とが接するように貼り合わせ、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させて、PETフィルムと厚さ20μmの粘着剤層と偏光板とを有する粘着剤層付き偏光板を得た。
実施例1において、配合組成を表3および表4に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物、粘着シートおよび粘着剤層付き偏光板を得た。
実施例1において、配合組成を表3および表4に記載したとおりに変更し、さらに実施例1で作成した粘着剤層付き偏光板に加えて、偏光子保護膜がシクロオレフィンフィルムである偏光板(厚さ:110μm、層構成:COPフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/COPフィルム)についても粘着剤層付き偏光板を作成したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物、粘着シートおよび粘着剤層付き偏光板を得た。
なお表3の各材料は、下記に示すとおりである。
架橋剤(B)
B1:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL、固形分濃度75質量%)
イオン化合物(C)
前記(イオン化合物の評価)で使用したイオン化合物C1〜C6に同じである。
シランカップリング剤(D)
D:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学工業(株)製、KBM−403
(ゲル分率)
実施例・比較例で得られた粘着シートから、粘着剤層約0.1gをサンプリング瓶に採取し、酢酸エチル30mLを加えて4時間振盪した後、このサンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網で濾過し、金網上の残留物を100℃で2時間乾燥して乾燥重量を測定した。次式により、粘着剤層のゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)=(乾燥重量/粘着剤層採取重量)×100(%)
実施例・比較例で得られた粘着シートを100mm×100mmの大きさに裁断して試験片を作成した。粘着シートからPETフィルムを剥離し、粘着剤層を円形の表面電極及び裏面電極で挟んだ。100Vの電圧を印加し、60秒後の表面抵抗値を測定した。なお、測定は、JIS K6911(1995年)に準拠して二重リング電極法にて実施しており、表面抵抗値測定は、R8252デジタルエレクトロメータ((株)エーディーシー製)を使用した。
実施例・比較例で得られた粘着シートからPETフィルムを剥離し、粘着剤層を23℃/50%RH環境下で複数回貼り合わせ、50℃/5atmのオートクレーブで20分間処理して、厚さ1.0mmの粘着剤層を作製した。この厚さ1.0mmの粘着剤層について、Anton Paar製「Physica MCR300」を用いて、JIS K7244に準拠した動的粘弾性測定法(温度範囲−40〜160℃、昇温速度3.67℃/分、周波数1Hzの条件)により粘弾性スペクトルを測定し、温度25℃および80℃における貯蔵弾性率を決定した。
実施例・比較例で得られた粘着剤層付き偏光板を、80mm×140mmの大きさに裁断し、厚さ1.1mmの無アルカリガラス板の両側に、吸収軸が互いに直交するようにラミネーターロールを用いて貼着し、次いで50℃、5気圧に調整されたオートクレーブに20分間保持して試験板を作成した。この試験板を温度80℃の条件下に72時間放置し、以下の基準で光漏れの観察を行った。
A:ほぼ光漏れは認められず、実用上問題無
B:わずかに光漏れが認められるが、使用可能
C:光漏れが認められ、実用上問題有
実施例・比較例で得られた粘着剤層付き偏光板(PETフィルム/粘着剤層/偏光板からなる積層体)を150mm×250mmの大きさに裁断して試験片を作成した。試験片からPETフィルムを剥離し、ラミネーターロールを用いて、粘着剤層/偏光板からなる積層体を厚さ2mmの無アルカリガラス板の片面に、粘着剤層と無アルカリガラス板とが接するように貼着した。得られた積層体を、50℃/5気圧に調整されたオートクレーブ中に20分間保持して、試験板を作成した。同様の試験板を2枚作成した。前記試験板を、温度80℃の条件下(耐熱性)または温度80℃/湿度85%RHの条件下(耐湿熱性)で500時間放置した。前記試験板の粘着剤層からの発泡、前記試験板の亀裂、粘着剤層の剥がれ等の外観欠陥を以下の基準で目視観察して評価した。
(基準)
A:浮き・剥がれ面積 3%未満
B:浮き・剥がれ面積 3%以上5%未満
C:浮き・剥がれ面積 5%以上
Claims (6)
- アクリル系重合体(A)、架橋剤(B)、及びイオン化合物(C)より得られる光学部材用粘着剤であって、
アクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として(a2)カルボキシル基含有単量体を0.1〜10重量%含有し、架橋剤(B)がアクリル系重合体(A)100重量部に対して、4〜30重量部含有されており、イオン化合物(C)が下記化学式(1)で表わされるカチオンと、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオンより選ばれるアニオンからなるイオン化合物であり、23℃における貯蔵弾性率が2.0×105〜5.5×106、且つ、80℃における貯蔵弾性率が1.0×105〜2.0×106であることを特徴とする光学部材用粘着剤。
式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立にアルキル基である。 - 請求項1において、アクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として、(a1−1)ポリオキシアルキレン基またはアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを41〜99.9重量%含有することを特徴とする光学部材用粘着剤。
- 請求項1においてアクリル系重合体(A)を構成する単量体成分として、(a1−2) (メタ)アクリル酸アルキルエステルを70〜99.9重量%の割合で含有することを特徴とする光学部材用粘着剤。
- 少なくとも一方の面に保護膜を有する偏光板、及び、該保護膜上に、請求項1項ないし3項の光学部材用粘着剤よりなる粘着剤層が積層されていることを特徴とする光学積層体。
- 前記保護膜がセルロース系フィルム又はシクロオレフィン系フィルムであることを特徴とする請求項第4項記載の光学積層体。
- シクロオレフィンポリマー層を有する光学部材、及び、該シクロオレフィンポリマー層上に、請求項第2項の光学部材用粘着剤よりなる粘着剤層が積層されていることを特徴とする光学積層体。
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