JP2016158618A - 味噌様調味料 - Google Patents
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Abstract
【課題】無塩又は低塩で且つ旨味の強い味噌風味の調味料とこの味噌様調味料を加工資材とすることにより味噌風味の低塩且つ無菌の加工食品を提供すること。【解決手段】食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ酵母による発酵を伴うことを特徴とする大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料を製造する、さらに食品加工用資材としてこの味噌様調味料を使用する。【選択図】なし
Description
本発明は、4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエで発酵させ且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が40%以上であり且つ食塩濃度が0から6%であることを特徴とする大豆と米を原料とする水分50%未満の味噌様調味料及びこの調味料の無菌化物及びこれらの製造方法とこれらを用いた加工食品、さらには大豆と米の他の豆類と穀類を原料とする味噌様調味料とこれを用いた加工食品並びにその製造方法に関する。
味噌は、大麦や米を蒸煮して澱粉をα化した後に、麹菌を増殖せしめて麹を製造し、この麹と加熱処理して蛋白質を変性させた大豆と塩を混合し、さらに乳酸菌や酵母を添加して発酵・熟成させる調味料である。
α化された澱粉は、麹菌酵素であるα−アミラーゼやグルコアミラーゼによりグルコースまで分解される。また、変性された蛋白質はプロテアーゼやペプチダーゼによりアミノ酸まで分解される。
生成したグルコースの多くは乳酸菌と酵母の発酵基質となり、発酵生成物として乳酸やエチルアルコールが出来る。一方、蛋白質の分解により生成したアミノ酸は、その一部は微生物に利用されるが、残りは旨味調味料である味噌の旨味の主体となる。
全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が高いほど、この旨味成分であるアミノ酸の濃度が高い。大豆と米と塩を原料とする米味噌では、その原料蛋白質分解率は製品味噌で17〜24%であることが知られている(非特許文献1)。また、原料蛋白質分解率の発酵・熟成中の変化は、経時的に増加はするものの約20%でその増加は停止することも知られている(非特許文献2)。
一方、同じ旨味調味料で大豆と小麦と塩を原料とする醤油では、原料蛋白質分解率は54〜60%であることも知られている(非特許文献1)。
味噌・醤油とも麹菌酵素による原料蛋白質の分解であるが、その分解率は醤油が2.3〜3.5倍味噌より高い。味噌中には基質である大豆蛋白質が醤油と同様に存在し、同じ麹菌蛋白質分解酵素で作用させ且つ残存酵素活性も十分にある(非特許文献2)にもかかわらず、味噌と醤油では原料蛋白質分解率に大きな差がある。
味噌の原料蛋白質分解率が醤油より低い原因は、十分に解明されていないが、食塩分/(食塩分+水分)で示される対水食塩濃度が淡色辛くち米味噌では21.5%、赤色辛くち米味噌では22.1%と高いが、こいくち醤油では17.8%であり(非特許文献3)、蛋白質分解は加水分解反応であることから、加水分解反応系の食塩濃度が醤油より米味噌が2割以上高い濃度であることが米味噌の原料蛋白質分解率が低いことの原因の一つであると推定される。
このことから、米味噌の原料蛋白質分解率を向上させ、うま味、コク、濃厚感の強い米味噌又は米味噌様食品の製造方法として、食塩濃度を下げる方法が種々考案されている。
食塩濃度を低下させることにより腐敗微生物による腐敗が製造中に発生する。
この防止のため、発酵初発時の雑菌数低下を目的として、雑菌の大部分は米麹に由来することから米麹の替わりに酵素製剤を使用する、或いはブドウ糖又は加圧加熱処理した穀類或いは無菌化処理した麹のいずれか若しくはその組み合わせたものを加えて仕込む方法が特許文献1に開示されている。
この防止のため、発酵初発時の雑菌数低下を目的として、雑菌の大部分は米麹に由来することから米麹の替わりに酵素製剤を使用する、或いはブドウ糖又は加圧加熱処理した穀類或いは無菌化処理した麹のいずれか若しくはその組み合わせたものを加えて仕込む方法が特許文献1に開示されている。
また、食塩を除いた味噌原材料を所定の水分に調製し、2.5%以下のアルコールを添加して麹由来の雑菌を軽減する雑菌低減処理を施し、50〜70℃、1日〜5日の短期間高温仕込みによって酵素分解処理を促進し、前記の処理終了後に、30℃以下で発酵微生物(酵母・乳酸菌等)を添加して2週間以上の低温発酵処理を行って製造する大豆発酵食品が特許文献2に開示されている。
また、蒸煮大豆、麹及び発酵アルコールを混合して得られた仕込み混合物を、品温40〜70℃で2〜14日間保持して無塩味噌を得、該無塩味噌をホモジナイザー処理することを特徴とする味噌の製造方法も特許文献3に開示されている。
さらに、腐敗微生物の多くは細菌類であるため、これら細菌類の増殖を抑制する物質であるバクテリオシンを生産する乳酸菌を活用して、麹原料に麹菌及びバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を添加した後、除菌された空気を供給しながら、手入れ時を除き密閉された状態の製麹機内で製麹し、次に得られた麹にバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を混合し、さらに必要により1種類以上の食品素材を混合し、次に、該混合物をペースト状にして諸味を形成し、次に、該諸味を食塩非存在下で加水分解することにより無塩の速醸型味噌様食材を製造する方法が特許文献4に開示されているほか、食品素材に麹菌及びバクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を添加し、除菌された空気を連続的又は間欠供給しながら、密閉された状態の製麹機内で製麹し、次に、得られた麹に、バクテリオシン生産乳酸菌培養液若しくはその上清を混合して、さらに必要により麹重量の0.01〜50倍量の1種類以上の食品素材を混合し、該混合物をペースト状にして諸味を形成し、次に、該諸味を食塩非存在下で加水分解する方法が特許文献5に開示されている。
またさらに、雑菌の大部分は米麹に由来することから、麹菌を所定量の乳酸菌培養液又はその上清で培養して液体麹を調製し、得られた液体麹を食品素材に添加し、除菌された空気を連続的又は間欠供給しながら、密閉された状態の製麹機内で製麹して得られた麹に、乳酸菌培養液又はその上清を混合して、さらに必要により食品素材を混合し、該混合物をそのまま又はペースト状にして諸味を形成し、該諸味を食塩非存在下で加水分解する方法も特許文献6に開示されている。
これらは代替米麹や無菌化米麹の使用、あるいはバクテリオシンを活用することにより雑菌のない米麹を製造し、食塩分が低く、うま味、コク、濃厚感の強い味噌様調味料を製造する技術である。
さらに、特許文献7のような蒸米に対しこうじの糖化液と酒用酵母を添加して発酵させ、これに生味噌、味噌用酵母、乳酸菌の各々を加えて馴養、培養しアルコールを1.5〜5%含む混ぜ、味噌を、仕込み味噌に3〜20重量%添加し、これを常法により発酵熟成させることにより味噌中に菌の増殖を抑制するに必要なアルコールを生成蓄積させる技術により、低塩分化味噌も開発されている。これは、製品となった味噌が密閉容器内で過度の発酵をしないようにした味噌の製造方法であり、通常の食塩分・窒素分解率の味噌に関する技術である。
また、特許文献8の動物蛋白質の酵素分解物と植物蛋白質の酵素分解物の混合物0.5〜20.0重量%、塩化カリウム1.0〜20.0重量%及び塩基性アミノ酸0.1〜10.0、重量%を含有することを特徴とする塩味が増強された低食塩味噌又は低食塩味噌調味料や、特許文献9のアルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびシスチンを含む総合アミノ酸を添加する無塩味噌の製造方法、特許文献10の蒸煮大豆、みそ用麹、0〜5%の食塩及び種水から成る配合物に少なくとも1種の食用有機酸を添加し、混合したものを容器内に仕込み、45〜65℃の温度で熟成せしめることを特徴とする無塩又は低塩のみそ系調味料の製造法、特許文献11の食塩の全量または一部の代替としてグルコン酸のアルカリ金属塩を用いる技術)など添加物を活用した減塩及び無塩味噌が開発されている。
またさらに、中間資材としての保存性の低い減塩及び無塩味噌の製造方法として、大豆と麹を1:0.1〜10の割合で混合した後、4〜80℃で30分〜120日間発酵又は分解させる技術が特許文献12−15に開示されている。
発酵と醸造I(光琳、平成14年3月15日発行)P.132,169
醸造協会誌 第8巻第6号P.433−438(1993)
日本食品標準成分表2010(平成22年11月文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告)17045,17046
前述のように、大豆と米と塩を原料とする米味噌では、全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が製品味噌で17〜24%であり、同じ蛋白質原料である大豆を使用した発酵調味料である醤油の54〜60%と比較して低い分解率となっている。醤油では、全窒素濃度が日本農林規格で定められていることから、原料蛋白質分解率の向上のため種々の技術開発がこれまで行われてきたが、米味噌では、うま味、コク、濃厚感の強さより、その色や香りに重点が置かれて、このように大きな分解率があるにも関わらず、原料蛋白質分解率の向上のため種々の技術開発が進められることは少なかった。
また従来技術では、食塩分を50%カットした減塩味噌や30%カットした低塩味噌の製造は可能であったが、50%を超える低塩化味噌の製造は微生物的腐敗が起きるため困難であった。
さらに、味噌はその製造において、麹菌と乳酸菌・酵母を活用するため製品中にもこれら配合微生物が残存することや製麹中に雑菌が増殖するため、製品味噌の無菌化は非常に困難であった。
こうしたことより、微生物的腐敗を防止して食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ酵母による発酵を伴うことを特徴とする大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料の製造、さらにこの味噌様調味料を使用した加工食品の製造及び大豆と米の以外の豆類と穀類を原料とする味噌様調味料とこれを用いた加工食品並びにその製造方法の開発を課題とした。
そこで、本発明の第一の目的は、従来技術では解決し得なかった課題である、微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料を提供することである。
本発明の第二の目的は、45℃から65℃の中温域で加熱処理することにより無菌化した食塩濃度が0から6%で且つ原料蛋白質分解率が25%以上の4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料を提供することである。
本発明の第三の目的は、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料を使用した加工食品を提供することである。
本発明の第四の目的は、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とす酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料と、これを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料の製造方法を提することである。
本発明の第五の目的は、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆以外の豆類と米以外の穀類を原料する水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料と、これを用いた加工食品並びにその製造方法を提供することである。
本発明者は、塩分を50%カットした減塩味噌よりさらに低塩分の味噌の開発において、塩分0か6%の味噌様調味料では、うま味、コク、濃厚感が通常の味噌より強いことを新規に見いだしたことで本発明を完成するに至った。
さらに、酵母サッカロマイセス・セレビシエは通常食塩耐性を持たないが、4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエで発酵させることにより、塩分0から6%の低塩分味噌様調味料の製造において、通常の味噌酵母チゴサッカロマイセス・ルキシー遙かに凌ぐアルコールが生成するとともに、当該調味料のpHが通常の味噌より低下することにより微生物的腐敗が防止され、且つアルコール・塩分・低pHの相乗効果により、中温域で加熱処理すことで味噌様調味料が無菌化できることを見いだして、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の(1)から(5)を提供するものである。
(1)微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料を提供することである。
(2)45℃から65℃の中温域で加熱処理することにより無菌化した食塩濃度が0から6%で且つ原料蛋白質分解率が25%以上の微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料を提供することである。
(3)食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料を使用した加工食品を提供することである。
(4)食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料の製造方法を提供することである。
(5)食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料とこれを用いた加工食品並びにその製造方法を提供することである。
本発明により、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母による発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料及びこの無菌化物を提供することが実現できた。本発明によれば、これまで旨味調味料である味噌は、その高塩分濃度と多量の残存微生物のため加工食品への利用が限定されていたが、低塩分化と無菌化により新たな加工食品の製造が可能となった。
前記したように本発明者は、塩分を50%カットした減塩味噌より低塩分の味噌の開発において、塩分0から6%の味噌様調味料では、うま味、コク、濃厚感が通常の味噌より強いことを新規に見いだしたこと、さらに、酵母サッカロマイセス・セレビシエは通常食塩耐性を持たないが、4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエで発酵させることにより、塩分0から6%の低塩分味噌様調味料の製造において通常の味噌酵母チゴサッカロマイセス・ルキシーを遙かに凌ぐアルコールが生成するとともに当該調味料のpHが通常の味噌より低下することにより微生物的腐敗が防止され、且つアルコール・塩分・低pHの相乗効果により中温域で加熱処理することで味噌様調味料が無菌化できることを見いだして、本発明を完成するに至った。
本発明の味噌様調味料は、微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下であることを特徴とするものである。
本発明の無菌化味噌様調味料は、45℃から65℃の中温域で加熱処理することにより無菌化した食塩濃度が0から6%で且つ原料蛋白質分解率が25%以上の微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下であることを特徴とするものである。
本発明の加工食品は、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料を使用したことを特徴とするものである。
本発明の製造方法は、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ微生物的腐敗を防止しながら食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料とこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料を製造することを特徴とするものである。
本発明の味噌様調味料とこれを用いた加工食品並びにその製造方法は、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ微生物的腐敗を防止しながら4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った水分50%以下の大豆以外の豆類と米以外の穀類を原料とする水分50%以下であり、また、これを中温域で加熱処理することにより無菌化したことを特徴とするものである。
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1(使用酵母の比較)
大豆200gを一晩浸漬後30分水切りして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が80%になるように米麹176gと表1に示した6種類の酵母2%と食塩濃度が0〜4%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。混合した18種類をそれぞれビーカーに入れ、30℃で60日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料のアルコール濃度とpH、官能的な評価を表2に示した。
大豆200gを一晩浸漬後30分水切りして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が80%になるように米麹176gと表1に示した6種類の酵母2%と食塩濃度が0〜4%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。混合した18種類をそれぞれビーカーに入れ、30℃で60日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料のアルコール濃度とpH、官能的な評価を表2に示した。
表2に示したように、耐塩性の高い味噌用酵母A及びBでは無塩又は減塩味噌を造ると生成するアルコール濃度が低いため腐敗した。また、食塩耐性のないパン用酵母Aや清酒酵母Aでは無塩では強いアルコール臭を有するが腐敗のない味噌用調味料が製造可能であったが、減塩濃度下では急激にアルコール生成が抑制され腐敗した。食塩耐性の低い清酒用酵母Bでは無塩では強いアルコール臭を有するが腐敗のない味噌用調味料が製造可能であるが、減塩濃度下では腐敗を抑制する濃度までアルコールを生成しなかった。これらに対して、4%以上の食塩耐性を有するパン用酵母Bでは、無塩及び減塩濃度下でも高アルコール生産性を示し腐敗を抑制できた。さらに、塩分濃度が低下するに従い適度にpHが低下し、pHの面からも雑菌汚染が抑制される傾向が観察された。
実施例2(塩分濃度を0−6%とした味噌様調味料の試作)
大豆500gを一晩浸漬後30分水切りして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が80%になるように米麹440gと4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする製パン用酵母2%と食塩濃度が0〜6%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。混合した7種類をそれぞれビーカーに入れ、30℃で50日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料の色と全窒素、ホルモール窒素、全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率、水分を表3に示した。
大豆500gを一晩浸漬後30分水切りして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が80%になるように米麹440gと4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする製パン用酵母2%と食塩濃度が0〜6%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。混合した7種類をそれぞれビーカーに入れ、30℃で50日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料の色と全窒素、ホルモール窒素、全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率、水分を表3に示した。
表3において、熟成味噌様調味料は、食塩濃度が0から6%と高くなるに従って色が濃化し、味噌の淡色化には食塩濃度を低下させることが有効であることが新たに判明した。全窒素は、食塩濃度に関係なく1.9%前後であるが、ホルモール窒素は食塩6%では0.62%であったが、食塩0%では0.88%と食塩濃度が低くなるに従って高くなった。その結果、蛋白質分解率は食塩6%では33%であったが、食塩0%では48%と食塩濃度が低くなるに従い上昇した。食塩により蛋白質分解酵素活性が抑制されていると考えられた。水分は、全て50%以下であった。
実施例3(麹割合を変化させた塩分2%の味噌様調味料の試作)
大豆100gを一晩浸漬後30分水切りして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が40〜200%になるように米麹44〜2200gを加え、さらに4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする製パン用酵母2%と食塩濃度が2%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。混合した6種類をそれぞれビーカーに入れ、25℃で60日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料の全窒素とホルモール態窒素、蛋白質分解率、アルコール濃度を表2に示した。
大豆100gを一晩浸漬後30分水切りして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が40〜200%になるように米麹44〜2200gを加え、さらに4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする製パン用酵母2%と食塩濃度が2%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。混合した6種類をそれぞれビーカーに入れ、25℃で60日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料の全窒素とホルモール態窒素、蛋白質分解率、アルコール濃度を表2に示した。
表4において、麹割合が少ないと配合中の全窒素の主体を為す大豆の割合が多くなるため全窒素濃度とホルモール窒素は高いが、蛋白質分解率は逆に低い値となった。これは、蛋白質分解酵素の基質である蛋白質は十分にあるが、酵素量が少ないためと考えられた。しかしながら、分解率は最低でも35%であり、低食塩濃度により蛋白質分解酵素活性が高まっていること、あるいは活性低下が緩慢であることが高い分解率である要因と考えられた。アルコール濃度は、麹割合40%が最低の5.7%であったが、通常の味噌の1〜2%より遙かに高い濃度であり、これは配合した酵母が低食塩濃度により発酵旺盛になったことが原因であると予測された。
実施例4(酵母配合率を変化させた塩分2%麹割合80%の味噌様調味料の試作)
大豆100gを一晩浸漬後、30分水切りをして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が80%になるように米麹88gと食塩濃度が2%になるように並塩を加え、さらに製パン用酵母(秋田十條化成製)を0.5〜5%を加えてフードプロセッサーで混合した。混合した6種類をそれぞれビーカーに入れ、25℃で60日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料の全窒素とホルモール態窒素、蛋白質分解率、アルコール濃度を表3に示した。
大豆100gを一晩浸漬後、30分水切りをして、その後オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮大豆に麹割合が80%になるように米麹88gと食塩濃度が2%になるように並塩を加え、さらに製パン用酵母(秋田十條化成製)を0.5〜5%を加えてフードプロセッサーで混合した。混合した6種類をそれぞれビーカーに入れ、25℃で60日間発酵・熟成させた。熟成後の味噌様調味料の全窒素とホルモール態窒素、蛋白質分解率、アルコール濃度を表3に示した。
表5において、仕込み60日目の熟成味噌様調味料では、酵母の配合割合の違いによる全窒素・ホルモール態窒素・アルコール濃度の差は認められなかった。蛋白質分解率は、42.0%−46.6%で平均44.2%と高い分解率を示した。酵母配合割合が多いと発酵が早い傾向が観察された。
実施例5(塩分濃度2%の味噌様調味料の無菌化試験)
実施例4の酵母割合3%の熟成後の味噌様調味料を2.0mlのポリエチレン製チューブに詰め、40〜72℃の温水中で5分保持後、急冷し、適宜滅菌生理食塩水で希釈し、NaCl2%を含むYPD培地(酵母エキス0.5%、ペプトン1%、グルコース3%、寒天2%)に塗布して30℃で64時間培養し、出現したコロニーを計測し、熱処理無しの菌数を100とした場合の生存率を算出した。また、熱処理後の色も測定した。その結果を表4に示した。
実施例4の酵母割合3%の熟成後の味噌様調味料を2.0mlのポリエチレン製チューブに詰め、40〜72℃の温水中で5分保持後、急冷し、適宜滅菌生理食塩水で希釈し、NaCl2%を含むYPD培地(酵母エキス0.5%、ペプトン1%、グルコース3%、寒天2%)に塗布して30℃で64時間培養し、出現したコロニーを計測し、熱処理無しの菌数を100とした場合の生存率を算出した。また、熱処理後の色も測定した。その結果を表4に示した。
実施例4で用いた酵母は水懸濁液中で75℃の加熱で生存率が0%となるが、試作味噌中では、表6からそれより20℃以上低い温度で死滅することが観察された。加熱による味噌の着色は進行するものの、著しく着色することなく、低い温度で味噌様調味料が無菌化できることが明らかとなった。さらに、45℃処理のものは処理直後の生存率は51%であるが、この熱処理味噌様調味料を25℃で1週間保持した後に生存している酵母数を測定したところ0個/gであった。これは、熱処理直後には生存していた酵母の細胞は、大きな損傷を受けており、7%以上のアルコール濃度である味噌様調味料中ではそのダメージから回復できないまま、さらにアルコールストレスを受けて徐々に死滅していったためと考えられた。これらのことより、本発明の味噌様調味料は、秋田十條化成製の製パン用酵母と同等以下の熱耐性酵母を使用した場合、これまでの70℃以上の温度での無菌化より低温の45℃から65℃の中温域で加熱処理することにより無菌化可能であることが明らかとなった。
実施例6(試作した味噌様調味料を使用したドレッシングの試作)
実施例4の酵母割合3%の熟成後の味噌様調味料を50℃の温水で5分加熱後、25℃で7日間保持した。この味噌様調味料の生菌数は0個/gであった。この無菌味噌様調味料100部に水50部・クエン酸1.5部・唐辛子1部を加え、ミキサーで十分に乳化して味噌風味のドレッシングを試作した。
実施例4の酵母割合3%の熟成後の味噌様調味料を50℃の温水で5分加熱後、25℃で7日間保持した。この味噌様調味料の生菌数は0個/gであった。この無菌味噌様調味料100部に水50部・クエン酸1.5部・唐辛子1部を加え、ミキサーで十分に乳化して味噌風味のドレッシングを試作した。
試作ドレッシングは塩分2.1%で、30℃で一ヶ月間保存しても微生物的腐敗は観察されなかった。
実施例7(試作した無菌化味噌様調味料を使用した豚肉加工品の試作)
豚肉200gに、実施例4の酵母割合3%の熟成後の味噌様調味料を50℃の温水で10分加熱したもの220gを加えて真空包装し、25℃で20日間保持した。
豚肉200gに、実施例4の酵母割合3%の熟成後の味噌様調味料を50℃の温水で10分加熱したもの220gを加えて真空包装し、25℃で20日間保持した。
この豚肉を加熱処理し官能的試験を実施したところ、腐敗は全くなく豚肉臭のない旨味の強い良好な食味であった。
実施例8(インゲン豆とそばを原料とする味噌用調味料の試作)
赤インゲン豆100gを一晩浸漬後30分水切りして、オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮赤インゲン豆にそば麹110gを加え、さらに4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする製パン用酵母2%と食塩濃度が2%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。その後、25℃で60日間発酵・熟成させた。
赤インゲン豆100gを一晩浸漬後30分水切りして、オートクレーブで加熱処理した。この蒸煮赤インゲン豆にそば麹110gを加え、さらに4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする製パン用酵母2%と食塩濃度が2%になるように並塩を加え、フードプロセッサーで混合した。その後、25℃で60日間発酵・熟成させた。
熟成後の味噌様調味料の全窒素は1.77%、ホルモール態窒素は0.79%、蛋白質分解率44.6%、アルコール濃度6.2%であった。
本発明は、味噌様調味料とこれを使用した加工食品に関して、食塩濃度が0から6%で且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が25%以上で且つ4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエによる発酵を伴った大豆と米を原料とする水分50%以下の味噌様調味料及びこれを中温域で加熱処理することにより無菌化した味噌様調味料と、この味噌様調味料を使用した加工食品を提供するもので、本発明によれば、無塩又は低塩且つ旨味の強い味噌風味の調味料の製造が可能であり、さらにこの味噌様調味料を加工資材とすることにより味噌風味の低塩且つ無菌の加工食品の製造が可能である。
Claims (5)
- 4%以上の食塩濃度で発酵可能なことを特徴とする酵母サッカロマイセス・セレビシエで発酵させ且つ全窒素分中に含まれるホルモール態窒素量の割合で示される蛋白質分解率が40%以上であり且つ食塩濃度が0から6%であることを特徴とする大豆と米を原料とする水分50%未満の味噌様調味料
- 請求項1記載の調味料を45度から65度の中温域で加熱処理することにより無菌化することを特徴とする味噌様調味料
- 請求項1または請求項2記載の味噌様調味料を用いた加工食品
- 請求項1または請求項3記載の味噌様調味料の製造方法
- 豆類と雑穀を原料とする請求項1及び請求項2記載の味噌様調味料とこれを用いた加工食品並びにその製造方法
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