JP2016156098A - 超伝導安定化材、超伝導線及び超伝導コイル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超伝導線に用いられる超伝導安定化材であって、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素を合計で3質量ppm以上400質量ppm以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物とされるとともに、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く前記不可避不純物の濃度の総計が16.9質量ppm以上100質量ppm以下とされた銅材からなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
この超伝導線は、Nb−Ti合金、Nb3Snなどの超伝導体からなる複数の素線を、超伝導安定化材を介在させて束ねた多芯構造を有している。また、超伝導体と超伝導安定化材とを積層したテープ状の超伝導線も提供されている。
特許文献1においては、特定の元素(Fe,P,Al,As,Sn及びS)の含有量を規定した不純物濃度が非常に低い高純度銅が提案されている。
また、特許文献2においては、酸素濃度の低い高純度銅にZrを微量添加したCu合金が提案されている。
ここで、特許文献1においては、特定の元素(Fe,P,Al,As,Sn及びS)の含有量を0.1ppm未満に限定しているが、これらの元素を0.1ppm未満にまで低減することは容易ではなく、やはり製造プロセスが複雑となるといった問題があった。
また、特許文献2においては、酸素及びZrの含有量を規定しているが、酸素及びZrの含有量を制御することは難しく、高い残留抵抗比(RRR)を有する銅合金を安定して製造することが困難であるといった問題があった。
また、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く不可避不純物の濃度の総計が16.9質量ppm以上100質量ppm以下とされた銅を用いているので、過度に銅の高純度化を図る必要がなく、製造プロセスが簡易となり、製造コストを低減することができる。
不可避不純物の中でも、Fe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pといった特定不純物の元素は、残留抵抗比(RRR)を低下させる作用を有している。そこで、これらの元素の含有量を上述のように規定することで、確実に残留抵抗比(RRR)を向上させることが可能となる。
この場合、S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが上述の範囲内とされているので、銅中のS,Se,TeをLa,Ceから選択される1種又は2種の添加元素との化合物として確実に固定することができ、S,Se,Teによる残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制することができる。
この場合、銅中に存在するS,Se,Teが、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素との化合物によって確実に固定されており、S,Se,Teによる残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制することができる。
この場合、残留抵抗比(RRR)が250以上と比較的高いことから、極低温での抵抗値が十分に低く、超伝導体の超伝導状態が破れた際に電流を十分に迂回させることができ、超伝導安定化材として特に優れている。
この構成の超伝導線においては、上述のように、高い残留抵抗比(RRR)を有する超伝導安定化材を備えているので、超伝導体の超伝導状態が破れた場合であっても、超伝導体を流れている電流を超伝導安定化材に確実に迂回させることができ、超伝導体全体に常伝導状態が伝播してしまうことを抑制できる。
この構成の超伝導コイルにおいては、上述のように、高い残留抵抗比(RRR)を有する超伝導安定化材を備えた超伝導線を用いているので、安定して使用することが可能となる。
図1に示すように、本実施形態における超伝導線10は、コア部11と、このコア部11の外周側に配置された複数のフィラメント12と、これら複数のフィラメント12の外周側に配置される外殻部13と、を備えている。
ここで、超伝導安定化材20は、図2に示すように、超伝導体からなる素線15の一部において超伝導状態が破れて常伝導領域Aが発生した場合に、超伝導体からなる素線15を流れる電流Iを一時的に迂回させるものである。
また、本実施形態では、超伝導安定化材20を構成する銅材は、不可避不純物であるFeの含有量が10質量ppm以下、Niの含有量が10質量ppm以下、Asの含有量が5質量ppm以下、Agの含有量が50質量ppm以下、Snの含有量が4質量ppm以下、Sbの含有量が4質量ppm以下、Pbの含有量が6質量ppm以下、Biの含有量が2質量ppm以下、Pの含有量が3質量ppm以下とされている。
さらに、本実施形態である超伝導安定化材20においては、S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦100の範囲内とされている。
さらに、本実施形態である超伝導安定化材20においては、残留抵抗比(RRR)が250以上とされている。
銅に含まれる不可避不純物のうちS,Se,Teは、銅中に固溶することによって残留抵抗比(RRR)を大きく低下させる元素である。このため、残留抵抗比(RRR)を向上させるためには、これらS,Se,Teの影響を排除する必要がある。
ここで、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素は、S,Se,Teと反応性が高い元素であることから、S,Se,Teと化合物を生成することによって、これらS,Se,Teが銅中に固溶することを抑制することが可能となる。これにより、残留抵抗比(RRR)を十分に向上させることができる。
なお、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素は、銅中に固溶しにくい元素であり、さらに銅に固溶しても残留抵抗比(RRR)を低下させる作用が小さいことから、S,Se,Teの含有量に対して過剰に添加した場合であっても、残留抵抗比(RRR)が大きく低下することはない。
なお、S,Se,Teを確実に固定するためには、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素の含有量の下限を3.5質量ppm以上とすることが好ましく、4.0質量ppm以上とすることがさらに好ましい。一方、加工性の低下を確実に抑制するためには、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素の含有量の上限を300質量ppm以下にすることが好ましく、100質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
ガス成分(O,H,C,N,S)を除く不可避不純物については、その濃度を低くすることで残留抵抗比(RRR)が向上することになる。一方、不可避不純物の濃度を必要以上に低減しようとすると、製造プロセスが複雑となって製造コストが大幅に上昇してしまう。そこで、本実施形態では、ガス成分(O,H,C,N,S)を除く不可避不純物の濃度を総計で16.9質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内に設定している。
ガス成分(O,H,C,N,S)を除く不可避不純物の濃度を総計で16.9質量ppm以上100質量ppm以下の範囲内とするために、原料としては、純度99〜99.9999質量%の高純度銅や無酸素銅(C10100,C10200)を用いることができる。ただし、Oが高濃度にあると、La,CeがOと反応してしまうため、O濃度が20質量ppm以下とすることが好ましく、更に好ましくは10ppm以下である。より好ましくは5質量ppm以下である。
なお、残留抵抗比(RRR)を確実に向上させるためには、不可避不純物の上限を90質量ppm以下とすることが好ましく、80質量ppm以下とすることがさらに好ましい。
不可避不純物のうちFe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pといった特定不純物の元素は、残留抵抗比(RRR)を低下させる作用を有することから、これらの元素の含有量をそれぞれ規定することで、残留抵抗比(RRR)の低下を確実に抑制することが可能となる。そこで、本実施形態では、Feの含有量を10質量ppm以下、Niの含有量を10質量ppm以下、Asの含有量を5質量ppm以下、Agの含有量を50質量ppm以下、Snの含有量を4質量ppm以下、Sbの含有量を4質量ppm以下、Pbの含有量を6質量ppm以下、Biの含有量を2質量ppm以下、Pの含有量を3質量ppm以下に規定している。
上述のように、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素は、S,Se,Teといった元素と化合物を生成することになる。ここで、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xが0.5未満では、添加元素の含有量が不足し、S,Se,Teといった元素を十分に固定できなくなるおそれがある。一方、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xが100を超えると、S,Se,Teと反応しない余剰の添加元素が多く存在することになり、加工性が低下してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xを0.5以上100以下の範囲内に規定している。
なお、S,Se,Teといった元素を化合物として確実に固定するためには、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xの下限を0.75以上とすることが好ましく、1.0以上とすることがさらに好ましい。また、加工性の低下を確実に抑制するためには、S,Se,Teの合計含有量と添加元素の合計含有量との比Y/Xの上限を75以下とすることが好ましく、50以下とすることがさらに好ましい。
上述のように、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素は、S,Se,Teといった元素と化合物を生成することにより、S,Se,Teといった元素が銅中に固溶することを抑制している。よって、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素と、S,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素と、を含む化合物が存在することにより、残留抵抗比(RRR)を確実に向上させることが可能となる。
なお、本実施形態においては、S,Se,Teといった元素の含有量が十分に少ないことから、上述の化合物(粒径0.1μm以上)の個数密度の上限は0.1個/μm2以下となり、更に好ましくは0.09個/μm2以下である。より好ましくは0.08個/μm2以下である。
本実施形態である超伝導安定化材20においては、残留抵抗比(RRR)が250以上とされていることから、極低温において、抵抗値が低く電流を良好に迂回させることが可能となる。残留抵抗比(RRR)は、280以上であることが好ましく、300以上であることがさらに好ましい。より好ましくは400以上である。
なお、連続鋳造圧延法(例えばSCR法)等によって、本実施形態で示した組成の荒引銅線を製造し、これを素材として本実施形態である超伝導安定化材20を製造してもよい。この場合、本実施形態である超伝導安定化材20の生産効率が向上し、製造コストを大幅に低減することが可能となる。ここでいう連続鋳造圧延法とは、例えばベルト・ホイール式連続鋳造機と連続圧延装置とを備えた連続鋳造圧延設備を用いて、銅荒引線を製造し、この銅荒引線を素材として引抜銅線を製造する工程のことである。
また、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く不可避不純物の濃度の総計が16.9質量ppm以上100質量ppm以下とされた銅を用いているので、過度に銅の高純度化を図る必要がなく、製造プロセスが簡易となり、製造コストを低減することができる。
特に本実施形態では、粒径0.1μm以上の化合物の個数密度が0.001個/μm2以上とされているので、S,Se,Teを確実に化合物として固定でき、残留抵抗比(RRR)を十分に向上させることができる。
そして、本実施形態である超伝導線10は、上述のように残留抵抗比(RRR)が高い超伝導安定化材20を備えているので、超伝導体からなる素線15において超伝導状態が破れた常伝導領域Aが発生した場合であっても電流を超伝導安定化材20に確実に迂回させることができ、安定して使用することができる。
例えば、超伝導線10を構成するコア部11及び外殻部13についても、本実施形態である超伝導安定化材20と同様の組成の銅材によって構成してもよい。
本実施例では、研究室実験として、純度99.9999質量%の高純度銅及びCe、Laの母合金を原料として用いて、表1記載の組成となるように調整した。また、Fe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,P及びその他の不純物については、純度99.9質量%以上のFe,Ni,As,Ag,Sn,Sb,Pb,Bi,Pと純度99.9質量%の純銅とから各々の元素の母合金を作成し、その母合金を用いて調整した。まず、高純度銅をN2+COの還元性ガス雰囲気中で電気炉を用いて溶解し、その後、各種添加元素及び不純物の母合金を添加して所定濃度に調製し、所定の鋳型に鋳造することにより、直径:70mm×長さ:150mmのインゴットを得た。このインゴットから、断面寸法:25mm×25mm角材を切り出し、これに850℃で熱間圧延を施して直径8mmの熱延線材とし、この熱延線材から冷間圧延により直径2.0mmの細線を成形し、これに500℃で1時間保持の歪取り焼鈍を施すことにより、表1に示す評価用線材を製造した。
なお、本実施例では、溶解鋳造の過程において不純物元素の混入も認められた。
これらの評価用線材を用いて、以下の項目について評価した。
四端子法にて、293Kでの電気比抵抗(ρ293K)および液体ヘリウム温度(4.2K)での電気比抵抗(ρ4.2K)を測定し、RRR=ρ293K/ρ4.2Kを算出した。
残留抵抗比(RRR)を測定したサンプルを用いて、成分分析を以下のようにして実施した。ガス成分を除く元素について、10質量ppm未満の場合はグロー放電質量分析法、10質量ppm以上の場合は誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いた。また、Sの分析には赤外線吸収法を用いた。Oの濃度は全て10質量ppm以下であった。なお、Oの分析は赤外線吸収法を用いた。
La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素と、S,Se,Teのうち1種又は2種以上と、を含む化合物粒子の有無を確認するために、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて粒子観察し、この化合物粒子のEDX分析(エネルギー分散型X線分光法)を実施した。
また、化合物の個数密度(個/μm2)を評価するために、化合物の分散状態が特異ではない領域について、10000倍(観察視野:2×108nm2)で観察し、10視野(観察視野合計:2×109nm2)の撮影を行った。化合物の粒径については、化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とした。そして、粒径0.1μm以上の化合物の個数密度(個/μm2)を求めた。
比較例2は、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素を添加しなかったものであり、残留抵抗比(RRR)が157と比較的低かった。
比較例3は、Caの添加量が1030質量ppmとされており、塑性加工中に割れが生じた。このため、残留抵抗比(RRR)及び組織観察を実施しなかった。
また、図4に示すように、Caを添加した参考例5においては、CaとSを含む化合物が観察された。さらに、図5に示すように、Laを添加した本発明例16においては、LaとSを含む化合物が観察された。
以上のことから、本発明によれば、製造プロセスが比較的簡単で廉価で製造でき、残留抵抗比(RRR)が十分に高い超伝導安定化材を提供できることが確認された。
20、120 超伝導安定化材
Claims (7)
- 超伝導線に用いられる超伝導安定化材であって、
La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素を合計で3質量ppm以上400質量ppm以下の範囲内で含有し、残部がCu及び不可避不純物とされるとともに、ガス成分であるO,H,C,N,Sを除く前記不可避不純物の濃度の総計が16.9質量ppm以上100質量ppm以下とされた銅材からなることを特徴とする超伝導安定化材。 - 前記不可避不純物であるFeの含有量が10質量ppm以下、Niの含有量が10質量ppm以下、Asの含有量が5質量ppm以下、Agの含有量が50質量ppm以下、Snの含有量が4質量ppm以下、Sbの含有量が4質量ppm以下、Pbの含有量が6質量ppm以下、Biの含有量が2質量ppm以下、Pの含有量が3質量ppm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の超伝導安定化材。
- S,Se,Teの合計含有量(X質量ppm)と、La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素の合計含有量(Y質量ppm)との比Y/Xが、0.5≦Y/X≦100の範囲内とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超伝導安定化材。
- La,Ceから選択される1種又は2種の添加元素とS,Se,Teから選択される1種又は2種以上の元素とを含む化合物が存在していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超伝導安定化材。
- 残留抵抗比(RRR)が250以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の超伝導安定化材。
- 超伝導体を含む素線と、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の超伝導安定化材と、を備えていることを特徴とする超伝導線。
- 請求項6に記載の超伝導線が巻枠の周面に巻回されてなる巻線部を備えた構造を有することを特徴とする超伝導コイル。
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