JP2016155723A - 塩の製造方法 - Google Patents

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泰輔 鎌田
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孝 涌井
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Abstract

【課題】電気透析処理による塩の製造を効率的かつ長期的に安定して行うことが可能な、十分なイオン交換性能及び耐久性を有するイオン交換膜を用いる塩の製造方法を提供する。【解決手段】電気透析処理により濃縮処理される塩の製造方法において、該電気透析を、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜を、カチオン交換膜及び/又はアニオン交換膜として用いて行う、塩の製造方法。【選択図】図3

Description

本発明は塩の製造方法に関する。さらに詳しくは、海水中に含まれる塩類を電気透析法により効率的かつ長期的に安定して濃縮する塩の製造方法に関する。
現在、わが国における製塩は、イオン交換膜電気透析装置を用いて海水(塩分3%程度)を濃縮し濃い塩水(かん水)を得る工程(採かん工程)、真空蒸発缶を用いてこれを更に濃縮・乾燥し塩結晶を得る工程(せんごう工程)により行われている。
採かん工程で用いられるイオン交換膜電気透析法では、カチオン交換膜及びアニオン交換膜を利用した電気透析槽が用いられている。電気透析槽に利用するイオン交換膜に求められている性能は、電気抵抗、濃縮性能、耐久性等であり、製造費低減のためには、膜の電気抵抗を増加させることなく、濃縮性能を向上させることが必要である。さらには、長時間の安定操業のためには難溶性塩の析出によるスケール発生や海水中の汚染物質(有機性浮遊物質等)による汚れ(ファウリング)への耐性が必要となる。
特許文献1には、主目的とするNaClを多く濃縮し、また、せんごう工程におけるスケール発生によるトラブルを防止するために、硫酸イオン難透過性のアニオン交換膜とカチオン交換膜からなるイオン交換膜法により電気透析処理を行う精製塩の製造方法が開示されている。
特許文献2には、高分子フィルム基材にカチオン交換基を結合させてなるカチオン交換膜において、該高分子フィルム基材として、超高分子量ポリエチレンフィルムを融点付近まで加温し一部溶融させ、前記加温条件下で前記フィルムが収縮しない程度に厚み方向に加圧することにより得られるフィルムを用いることを特徴とする製塩用カチオン交換膜が開示されている。
さらに近年、イオン交換膜として、イオン交換能や選択透過能に優れ、かつ耐有機汚染性に優れるとともに加工性が高く、コスト抑制が可能なポリビニルアルコール系イオン交換膜が注目されている(特許文献3及び4)。
特開昭63−282114号公報 特開2009−256638号公報 特許第4776683号公報 国際公開第2010/110333号パンフレット
しかしながら、特許文献1及び2に記載のイオン交換膜を用いる場合には、海水からの塩濃縮の処理における有機物由来のファウリングにより電気透析処理時の塩濃縮能力が低下する場合があった。また、特許文献3及び4に記載されるようなポリビニルアルコール系共重合体を用いるイオン交換膜は、親水性のポリビニルアルコールを基材に用いることから、通常、グルタルアルデヒドのような二官能性の水酸基架橋剤やホルムアルデヒドのような水酸基変性剤による不溶化処理が不可欠であり、不溶化処理後も含水率が高く寸法安定性に乏しい場合がある。このようなイオン交換膜を用いる電気透析処理装置を長時間運転した場合には、イオン交換膜が含水することにより膨潤し十分な寸法安定性が得られず、イオン交換膜の耐久性が十分でないために長期的に安定して電気透析を行うことが困難な場合がある。
そこで本発明は、電気透析処理による塩の製造を効率的かつ長期的に安定して行うことが可能な、十分なイオン交換性能及び耐久性を有するイオン交換膜を用いる塩の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために電気透析処理により濃縮処理される塩の製造方法に用いるイオン交換膜について詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕電気透析処理により濃縮処理される塩の製造方法において、該電気透析を、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜を、カチオン交換膜及び/又はアニオン交換膜として用いて行う、塩の製造方法。
〔2〕前記共重合体(P)は、共重合体(P)の全構成単位を100モル%として0.05〜89.1モル%のビニルアルコール系重合体成分(A)、5〜98.901モル%のビニレン系重合体成分(B)及び1〜50モル%のイオン性基を有する重合体成分(C)を含む、前記〔1〕に記載の塩の製造方法。
〔3〕前記共重合体(P)は下記一般式(1):
Figure 2016155723
[式中、0.5000≦(o+p)/(n+o+p)≦0.9999であり、0.100≦p/(n+o+p)≦0.999であり、0.01≦m/(m+n+o+p)≦0.50であり、Mはイオン性基を有する単量体M’に由来する構成単位である。]
で示される共重合体(P1)である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の塩の製造方法。
〔4〕前記共重合体(P)は下記一般式(2):
Figure 2016155723
[式中、0.5000≦(o+p)/(n+o+p)≦0.9999であり、0.100≦p/(n+o+p)≦0.999であり、0.001≦q/(n+o+p+q)≦0.050であり、0.01≦q/(q+n+o+p)≦0.50であり、Rは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Lは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rがカルボキシル基の場合やRがカルボキシル基又はカルボキシメチル基の場合は、隣接する水酸基と環を形成していてもよい。Mはイオン性基を有する単量体M’に由来する構成単位である。]
で示される共重合体(P2)である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の塩の製造方法。
〔5〕前記イオン性基がアニオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をカチオン交換膜として用いる、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の塩の製造方法。
〔6〕前記イオン性基がカチオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をアニオン交換膜として用いる、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の塩の製造方法。
〔7〕前記イオン性基がアニオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をカチオン交換膜として用い、前記イオン性基がカチオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をアニオン交換膜として用いる、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の塩の製造方法。
〔8〕前記共重合体(P)に架橋結合が導入されている、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の塩の製造方法。
〔9〕前記共重合体(P)を含有するイオン交換膜は補強材料を含む、前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の塩の製造方法。
〔10〕前記補強材料は多孔膜、メッシュ又は不織布からなる連続した支持体である、前記〔9〕に記載の塩の製造方法。
〔11〕前記不織布はポリビニルアルコール系短繊維の湿式不織布である、前記〔10〕に記載の塩の製造方法。
〔12〕前記共重合体(P)を含有するイオン交換膜の膜抵抗は10Ωcm以下である、前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の塩の製造方法。
十分なイオン交換性能及び耐久性を有する特定のイオン交換膜を用いて海水等の塩水に対して電気透析処理を行い、塩水中の塩を濃縮する本発明の製造方法によれば、塩を効率的かつ長期的に安定して製造することができる。
本発明の製造方法に用いられるイオン交換膜の動的輸率の測定に用いる装置の説明断面図である。 本発明の製造方法に用いられるイオン交換膜の膜抵抗の測定に用いる装置の説明断面図である。 本発明の製造方法に用いられる製造システムの一例を示す部分概略構成図である。
本発明の製造方法は、塩水(海水、鹹水など)を電気透析処理することにより、塩水中の塩を濃縮処理する塩の製造方法である。
本発明の製造方法において、電気透析において使用するカチオン交換膜及び/又はアニオン交換膜として、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜を用いる。
本発明の製造方法において、
(1)ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜をカチオン交換膜として用い、該カチオン交換膜が上記特定のイオン交換膜とは異なる他のアニオン交換膜等と組み合わせて配列された構成の電気透析槽を用いて電気透析を行ってもよいし、
(2)ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜をアニオン交換膜として用い、該アニオン交換膜が上記特定のイオン交換膜とは異なる他のカチオン交換膜等と組み合わせて配列された構成の電気透析槽を用いて電気透析を行ってもよいし、
(3)ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜をカチオン交換膜及びアニオン交換膜として用い、該カチオン交換膜及び該アニオン交換膜が配列された構成の電気透析槽を用いて電気透析を行ってもよい。
〔イオン交換膜〕
本発明の製造方法で使用するイオン交換膜は、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有する。
ビニルアルコール系重合体成分(A)としては、例えばポリ酢酸ビニル成分を含むポリビニルアルコール成分が挙げられる。ビニレン系重合体成分(B)としては、例えば炭素―炭素1重結合と炭素―炭素2重結合と交互に連結したオリゴエン成分又はポリエン成分が挙げられる。イオン性基を有する重合体成分(C)に含まれるイオン性基はアニオン性基又はカチオン性基であり、このような重合体成分(C)としては、例えばポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)やポリ(パラスチレンスルホン酸ナトリウム)やポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。
本発明の製造方法で使用する、共重合体(P)を含有するイオン交換膜は、分離性能及び強度の観点から、該イオン交換膜の総量に基づいて好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上の共重合体(P)を含有する。イオン交換膜の総量に基づく共重合体(P)の含有量の上限は100質量%であってよい。本発明の製造方法で使用するイオン交換膜は、共重合体(P)のみを含むイオン交換膜であってもよいし、共重合体(P)と補強材料とを含むイオン交換膜であってもよい。
本発明の製造方法で使用するイオン交換膜が、イオン性基を有する重合体成分(C)におけるイオン性基としてアニオン性基を有する場合、該イオン交換膜をカチオン交換膜として使用することができる。本発明の製造方法で使用するイオン交換膜が、イオン性基を有する重合体成分(C)におけるイオン性基としてカチオン性基を有する場合、該イオン交換膜をアニオン交換膜として使用することができる。
本発明の製造方法で使用するイオン交換膜における共重合体(P)は、共重合体(P)の全構成単位を100モル%として好ましくは0.05〜89.1モル%、より好ましくは0.7〜72.75モル%、さらに好ましくは3.75〜47.5モル%のビニルアルコール系重合体成分(A)を含む。ビニルアルコール系重合体成分(A)の量が上記の上限以下であると、イオン交換膜の耐水性が良好であり好ましい。ビニルアルコール系重合体成分(A)の量が上記の下限以上であると、イオン交換膜の靭性が良好であり好ましい。
本発明の製造方法で使用するイオン交換膜における共重合体(P)は、共重合体(P)の全構成単位を100モル%として好ましくは5〜98.901モル%、より好ましくは17.5〜96.03モル%、さらに好ましくは37.5〜90.25モル%のビニレン系重合体成分(B)を含む。ビニレン系重合体成分(B)の量が上記の上限以下であると、イオン交換膜の靭性が良好であり好ましい。ビニレン系重合体成分(B)の量が上記の下限以上であると、イオン交換膜の耐水性が良好であり好ましい。
本発明の製造方法で使用するイオン交換膜における共重合体(P)は、共重合体(P)の全構成単位を100モル%として好ましくは1〜50モル%、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%のイオン性基を有する重合体成分(C)を含む。イオン性基を有する重合体成分(C)の量が上記の上限以下であると、イオン交換膜の膨潤を良好に抑制できるため好ましい。イオン性基を有する重合体成分(C)の量が上記の下限以上であると、イオン伝導性が良好であり、イオン交換性能を高めやすいため好ましい。
本発明の好ましい一態様において、前記共重合体(P)は、下記一般式(1):
Figure 2016155723
[式中、0.5000≦(o+p)/(n+o+p)≦0.9999であり、0.100≦p/(n+o+p)≦0.999であり、0.01≦m/(m+n+o+p)≦0.50であり、Mはイオン性基を有する単量体M’に由来する構成単位である。]
で示されるブロック共重合体(以下において「共重合体(P1)」とも称する)である。
本発明の別の好ましい一態様において、前記共重合体(P)は、下記一般式(2):
Figure 2016155723
[式中、0.5000≦(o+p)/(n+o+p)≦0.9999であり、0.100≦p/(n+o+p)≦0.999であり、0.001≦q/(n+o+p+q)≦0.050であり、0.01≦q/(q+n+o+p)≦0.50であり、Rは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Lは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rがカルボキシル基の場合やRがカルボキシル基又はカルボキシメチル基の場合は、隣接する水酸基と環を形成していてもよい。Mはイオン性基を有する単量体M’に由来する構成単位である。]
で示されるグラフト共重合体(以下において「共重合体(P2)」とも称する)である。
前記一般式(1)及び(2)中の記号について説明する。
一般式(1)における(o+p)/(n+o+p)は、ビニルアルコール系重合体成分(A)及びビニレン系重合体成分(B)中に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。(o+p)/(n+o+p)の下限は、好ましくは0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。(o+p)/(n+o+p)の上限は、好ましくは0.9999以下であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。(o+p)/(n+o+p)が上記の範囲内であることが製造しやすさの観点から好ましい。
一般式(1)におけるp/(n+o+p)は、ビニルアルコール系重合体成分(A)及びビニレン系重合体成分(B)中に含まれるビニレン系重合体成分(B)の比率を示す。本明細書において、この値を「ポリエン化率」と称する。ポリエン化率の下限は、好ましくは0.100以上であり、より好ましくは0.250以上であり、さらに好ましくは0.500以上である。ポリエン化率の上限は、好ましくは0.999以下であり、より好ましくは0.99以下であり、さらに好ましくは0.95以下である。ポリエン化率が上記の上限以下であると、イオン交換膜の靱性が良好であるため好ましく、上記の下限以上であると、イオン交換膜の耐水性が良好であるため好ましい。
一般式(1)におけるm/(m+n+o+p)は、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)中に含まれるイオン性基を有する重合体成分(C)の比率を示す。m/(m+n+o+p)の下限は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。m/(m+n+o+p)の上限は、好ましくは0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。m/(m+n+o+p)が上記の上限以下であると、イオン交換膜の膨潤を良好に抑制できるため好ましく、上記の下限以上であると、イオン伝導性が良好であり、イオン交換性能を高めやすいため好ましい。
一般式(2)における(o+p)/(n+o+p)は、ビニルアルコール系重合体成分(A)及びビニレン系重合体成分(B)中に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。(o+p)/(n+o+p)の下限は、好ましくは0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。(o+p)/(n+o+p)の上限は、好ましくは0.9999以下であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。(o+p)/(n+o+p)が上記の範囲内であることが製造しやすさの観点から好ましい。
一般式(2)におけるp/(n+o+p)は、ビニルアルコール系重合体成分(A)及びビニレン系重合体成分(B)中に含まれるビニレン系重合体成分(B)の比率を示す。本明細書において、この値もまた「ポリエン化率」と称する。ポリエン化率の下限は、好ましくは0.100以上であり、より好ましくは0.250以上であり、さらに好ましくは0.500以上である。ポリエン化率の上限は、好ましくは0.999以下であり、より好ましくは0.99以下であり、さらに好ましくは0.95以下である。ポリエン化率が上記の上限以下であると、イオン交換膜の靱性が良好であるため好ましく、上記の下限以上であると、イオン交換膜の耐水性が良好であるため好ましい。
一般式(2)におけるq/(n+o+p+q)は、一般式(2)で示される化合物に含まれる枝分かれ構造を有する構成単位の比率を示す。q/(n+o+p+q)の下限は、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.002以上であり、さらに好ましくは0.003以上である。q/(n+o+p+q)の上限は、好ましくは0.050以下であり、より好ましくは0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。q/(n+o+p+q)が上記の範囲内であることが共重合反応を制御しやすい観点から好ましい。
一般式(2)におけるq/(q+n+o+p)は、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)中に含まれるイオン性基を有する重合体成分(C)の比率を示す。q/(q+n+o+p)の下限は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。q/(q+n+o+p)の上限は、好ましくは0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。q/(q+n+o+p)が上記の上限以下であると、イオン交換膜の膨潤を良好に抑制できるため好ましく、上記の下限以上であると、イオン伝導性が良好であり、イオン交換性能を高めやすいため好ましい。
一般式(1)及び(2)における、n、o、p、n、o、p及びqは、各繰返し単位の数を表し、それぞれ互いに独立して、好ましくは1〜10000、より好ましくは5〜9000、さらに好ましくは10〜8000であり得る。前記一般式(1)及び(2)は、括弧内の繰返し単位が表示されたとおりに配置されていることを意味するのではなく、単に各繰り返し単位が存在することを表している。繰返し単位は、通常は互いにランダムに配置されているが、同一の繰返し単位が連続して配置されてもよい。
一般式(2)におけるRは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基である。R及びRは、各出現において互いに独立して選択される。
一般式(2)におけるLは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基である。Lが含む窒素原子及び/又は酸素原子の数は特に限定されない。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖又は分岐状である。前記脂肪族炭化水素基が分岐状であると、脂肪族炭化水素基の主鎖(硫黄原子と窒素原子との間で原子が連続する鎖)から分岐した部位の炭素数は、1〜5であることが好ましい。Lが窒素原子及び/又は酸素原子を含む場合の例としては、例えば、前記脂肪族炭化水素基が、窒素原子及び/又は酸素原子を、前記脂肪族炭化水素基に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エーテル結合(−O−)、アミノ結合〔−NR−(Rは水素原子又はNと結合する炭素を含む基)〕、アミド結合(−CONH−)等として含む場合や、前記脂肪族炭化水素基が、窒素原子及び/又は酸素原子を、前記脂肪族炭化水素基を置換する、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)等として含む場合がある。原料入手性、合成上の容易さから、Lは、合計炭素数が1〜20の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることが好ましく、合計炭素数が2〜15の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがより好ましく、合計炭素数が2〜10の、カルボキシル基を有していてもよい直鎖状又は分岐状のアルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(1)及び(2)におけるMは、イオン性基を有する単量体(以下において「単量体M’」とも称する)に由来する構成単位である。単量体M’としては、少なくとも1つのイオン性基と少なくとも1つのエチレン性不飽和単量体とから構成される単量体が挙げられる。
イオン性基としては、アニオン性基又はカチオン性基が挙げられる。イオン性基がアニオン性基である場合、イオン交換膜を本発明の製造方法においてカチオン交換膜として使用することができる。イオン性基がカチオン性基である場合、イオン交換膜を本発明の製造方法においてアニオン交換膜として使用することができる。
単量体M’におけるアニオン性基としては、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基、スルホニルイミド基等が挙げられる。カウンターのカチオンとしては特に限定されないが、アルカリ金属イオン、H、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンが好ましい。
単量体M’におけるカチオン性基としては、無置換アミノ基、N−アルキルアミノ基、N−ジアルキルアミノ基等のアミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基等の含窒素複素環や、N−トリアルキルアンモニウム基、N-アルキルピリジニウム基、N-アルキルイミダゾリウム基、チオウロニウム基、イソチオウロニウム基等の四級アンモニウム基が挙げられる。四級アンモニウム基のカウンターのアニオンとしては特に限定されないが、PF 、SbF 、AsF 等の5B族元素のハロゲン化アニオン、BF 等の3B族元素のハロゲン化アニオン、I(I )、Br、Cl等のハロゲンアニオン、ClO 等のハロゲン酸アニオン、AlCl 、FeCl 、SnCl 等の金属ハロゲン化物アニオン、NO で示される硝酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CHSO 、CFSO 等の有機スルホン酸アニオン、CFCOO、CCOO等のカルボン酸アニオン、OH等の1価のアニオンが好ましい。
単量体M’におけるエチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル等のアクリル酸又はそのエステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸又はそのエステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン等のメタクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n―プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸又はそのエステル類等が挙げられる。
アニオン性基とエチレン性不飽和単量体とから構成される単量体Mの例としては、例えば、次の一般式(3)〜(9)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2016155723
[式中、Rは水素原子又はアルカリ金属原子である。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義であり、Rは水素原子又はメチル基である。]
Figure 2016155723
[式中、RとRは前記と同義である。]
カチオン性基とエチレン性不飽和単量体とから構成される単量体Mの例としては、例えば、次の一般式(10)〜(19)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2016155723
[式中、Xは、PF 、SbF 、AsF 等の5B族元素のハロゲン化アニオン、BF 等の3B族元素のハロゲン化アニオン、I(I )、Br、Cl等のハロゲンアニオン、ClO 等のハロゲン酸アニオン、AlCl 、FeCl 、SnCl 等の金属ハロゲン化物アニオン、NO で示される硝酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、CHSO 、CFSO 等の有機スルホン酸アニオン、CFCOO、CCOO等のカルボン酸アニオン、OH等の1価のアニオンであり、Rは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Xは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Xは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Xは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Xは前記と同義である。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義であり、相互に同一であっても異なっていてもよい。]
Figure 2016155723
[式中、Rは前記と同義である。]
Figure 2016155723
Figure 2016155723
Figure 2016155723
〔イオン交換膜の製造〕
本発明の製造方法で使用するイオン交換膜は、共重合体(P)を含有する。共重合体(P)を含有するイオン交換膜は、通常、ビニルアルコール系重合体成分(A’)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P’)を含有する中間体(前駆体)を調製する工程Iと、該中間体に所望の形態を付与し膜状成形体を作製する工程IIと、脱水ポリエン化反応により共重合体(P)を含有するイオン交換膜を作製する工程IIIとを含む製造方法により製造することができる。
工程Iは、中間体を調製する工程である。工程Iは、次の方法(Ia)又は(Ib)のいずれかである。
(Ia)ビニルアルコール系重合体を製造した後、該ビニルアルコール系重合体にイオン性基を結合させて、共重合体(P’)を含有する中間体を製造する方法、又は
(Ib)ビニルアルコール系重合体と、イオン性基を有する少なくとも1つの単量体とを重合させて共重合体(P’)を含有する中間体を製造する方法。
(Ia)の方法としては、ビニルアルコール系重合体の存在下、1つ以上の水酸基変性剤(例えばブチルアルデヒドスルホン酸又はそのアルカリ金属塩、ベンズアルデヒドスルホン酸又はそのアルカリ金属塩、カチオン性アンモニウムアルデヒドなど)を反応させて、ビニルアルコール系重合体にイオン性基を導入し共重合体(P’)を含有する中間体を製造することが、工業的な容易さから好ましい。(Ib)の方法としては、メルカプト基を含有するビニルアルコール系重合体の存在下、イオン性基を含有する少なくとも1つの単量体をラジカル重合させることにより共重合体(P’)を含有する中間体を製造することが、工業的な容易さから好ましい。各成分の種類や量を容易に制御できることから、(Ib)の方法がより好ましい。
共重合体(P’)の好ましい構造としては、一般式(20);
Figure 2016155723
[式中、0.5000≦o/(n+o)≦0.9999であり、0.01≦m/(m+n+o)≦0.50であり、Mは前記と同義である。]
で示されるブロック共重合体(以下において「共重合体(P1’)」とも称する)、又は一般式(21):
Figure 2016155723
[式中、0.5000≦o/(n+o)≦0.9999であり、0.001≦q/(n+o+q)≦0.05であり、0.01≦q/(q+n+o)≦0.50であり、R、R、L及びMは前記と同義である。]
で示されるグラフト共重合体(以下において「共重合体(P2’)」とも称する)が挙げられる。
前記一般式(20)及び(21)中の記号について説明する。
一般式(20)におけるo/(n+o)は、ビニルアルコール系重合体成分(A’)に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。o/(n+o)の下限は、好ましくは0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。o/(n+o)の上限は、好ましくは0.9999以下であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。o/(n+o)が上記の範囲内であることが製造しやすさの観点から好ましい。
一般式(20)におけるm/(m+n+o)は、ビニルアルコール系重合体成分(A’)及びイオン性基を有する重合体成分(C)中に含まれるイオン性基を有する重合体成分(C)の比率を示す。m/(m+n+o)の下限は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。m/(m+n+o)の上限は、好ましくは0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。m/(m+n+o)が上記の上限以下であると、イオン交換膜の膨潤を良好に抑制できるため好ましく、上記の下限以上であると、イオン伝導性が良好であり、イオン交換性能を高めやすいため好ましい。
一般式(20)で示される化合物を脱水ポリエン化することにより、ビニルアルコール系重合体成分(A’)がビニルアルコール系重合体成分(A)及びビニレン系重合体成分(B)に変換される。そのため、一般式(20)で示されるブロック共重合体(P1’)を中間体として用いた場合、前記一般式(20)におけるo/(n+o)は、前記一般式(1)における(o+p)/(n+o+p)と同等である。また、前記一般式(20)におけるm/(m+n+o)は、前記一般式(1)におけるm/(m+n+o+p)と同等である。
一般式(21)におけるo/(n+o)は、ビニルアルコール系重合体成分(A’)に含まれる酢酸ビニル単位以外の比率を示す。o/(n+o)の下限は、好ましくは0.5000以上であり、より好ましくは0.7000以上であり、さらに好ましくは0.8000以上である。o/(n+o)の上限は、好ましくは0.9999以下であり、より好ましくは0.999以下であり、さらに好ましくは0.995以下である。o/(n+o)が上記の範囲内であることが製造しやすさの観点から好ましい。
一般式(21)におけるq/(n+o+q)は、一般式(21)で示される化合物に含まれる枝分かれ構造を有する構成単位の比率を示す。q/(n+o+q)の下限は、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.002以上であり、さらに好ましくは0.003以上である。q/(n+o+q)の上限は、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.02以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。q/(n+o+q)が上記の範囲内であることが共重合反応を制御しやすい観点から好ましい。
一般式(21)におけるq/(q+o+n)は、ビニルアルコール系重合体成分(A’)及びイオン性基を有する重合体成分(C)に含まれるイオン性基を有する重合体成分(C)の比率を示す。q/(q+o+n)の下限は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。q/(q+o+n)の上限は、好ましくは0.50以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。q/(q+o+n)が上記の上限以下であると、イオン交換膜の膨潤を良好に抑制できるため好ましく、上記の下限以上であると、イオン伝導性が良好であり、イオン交換性能を高めやすいため好ましい。
一般式(21)で示される化合物を脱水ポリエン化することにより、ビニルアルコール系重合体成分(A’)がビニルアルコール系重合体成分(A)及びビニレン系重合体成分(B)に変換される。そのため、一般式(21)で示されるブロック共重合体(P2’)を中間体として用いた場合、前記一般式(21)におけるo/(n+o)は前記一般式(2)における(o+p)/(n+o+p)と同等である。前記一般式(21)におけるq/(n+o+q)は前記一般式(2)におけるq/(n+o+p+q)と同等である。また、前記一般式(21)におけるq/(q+o+n)は前記一般式(2)におけるq/(q+n+o+p)と同等である。
一般式(20)及び(21)における、n、n、o、o及びqは、各繰返し単位の数を表し、それぞれ互いに独立して、好ましくは1〜10000、より好ましくは5〜9000、さらに好ましくは10〜8000であり得る。前記一般式(20)及び(21)は、括弧内の繰り返し単位が表示されたとおりに配置されていることを意味するのではなく、単に各繰り返し単位が存在することを表している。繰返し単位は、通常は互いにランダムに配置されているが、同一の繰返し単位が連続して配置されてもよい。
共重合体(P1’)は、例えば、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体と、イオン性基有する単量体(M)とを用いて、例えば前記特許文献3や前記特許文献4等に記載された重合方法で製造することができる。
上述の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単位の含有率(すなわち、末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは80モル%以上である。ビニルアルコール単位の含有率の上限は、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
上述の末端メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されず、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が上記の下限以上であることが、誘導される共重合体の機械的強度の観点から好ましい。粘度平均重合度が上記の上限以下であることが、ビニルアルコール系重合体を工業的に製造しやすいため好ましい。
共重合体(P2’)は、例えば、一般式(22):
Figure 2016155723
[式中、R、R及びLは前記と同義である。]
で示される構成単位及びビニルアルコール系構成単位から構成される、一般式(23):
Figure 2016155723
[式中、n、o、q、L、R及びRは前記と同義である。]
で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体と、イオン性基を有する単量体(M)とを用いて、例えば前記特許文献3や前記特許文献4等に記載された重合方法で製造することができる。
一般式(22)で示される構成単位は、該構成単位に変換可能な不飽和単量体より誘導することができ、好ましくは一般式(24):
Figure 2016155723
[式中、R1a及びR1bは、水素原子又はカルボキシル基であり、但しR1a及びR1bの少なくとも一方は水素原子であり、Rはメチル基であるか、Lに含まれる特定の炭素原子と共有結合して環状構造を形成し、R及びLは前記と同義である。]
で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体から誘導することができる。
一般式(24)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体は、公知の方法に準じて製造することができる。
一般式(24)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体の好ましい具体例としては、例えば、チオ酢酸S−(3−メチル−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−17−オクタデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−15−ヘキサデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−14−ペンタデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−13−テトラデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−12−トリデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−11−ドデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−10−ウンデセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−9−デセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−8−ノネン−1−イルエステル、チオ酢酸S−7−オクテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−6−ヘプテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−5−ヘキセン−1−イルエステル、チオ酢酸S−4−ペンテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−3−ブテン−1−イルエステル、チオ酢酸S−2−プロペン−1−イルエステル、チオ酢酸S−[1−(2−プロペン−1−イル)ヘキシル]エステル、チオ酢酸S−(2,3−ジメチル−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(1−エテニルブチル)エステル、チオ酢酸S−(2−ヒドロキシ−5−ヘキセン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(2−ヒドロキシ−3−ブテン−1−イル)エステル、チオ酢酸S−(1,1−ジメチル−2−プロペン−1−イル)エステル、2−[(アセチルチオ)メチル]−4−ペンテン酸、チオ酢酸S−(2−メチル−2−プロペン−1−イル)エステル等、ならびに下記化学式(a−1)〜(a−30)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2016155723
Figure 2016155723
Figure 2016155723
Figure 2016155723
Figure 2016155723
上記化合物群の中でも、原料入手性、合成上の容易さの観点から、チオ酢酸S−7−オクテン−1−イルエステル、化学式(a−6)、(a−7)、(a−9)、(a−10)、(a−11)、(a−12)、(a−14)、(a−15)、(a−16)、(a−17)、(a−19)、(a−20)、(a−21)、(a−22)、(a−24)、(a−25)、(a−26)、(a−27)、(a−29)、(a−30)で示される化合物が好ましい。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体における、一般式(22)で示される構成単位の含有率は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは0.1〜5モル%であり、より好ましくは0.2〜2モル%であり、さらに好ましくは0.3〜1モル%である。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、式(22)で示される構成単位を1種又は2種以上有することができる。2種以上の当該構成単位を有する場合、これら2種以上の構成単位の含有率の合計が上記範囲にあることが好ましい。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単位の含有率(すなわち、側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のけん化度)は特に限定されないが、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。ビニルアルコール単位の含有率の上限は、重合体中の全構成単位を100モル%として、好ましくは99.99モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体におけるビニルアルコール単位は、加水分解や加アルコール分解等によってビニルエステル単位から誘導することができる。ビニルアルコール単位へと変換されるビニルエステル単位のビニルエステルとしては特に限定されないが、酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体は、本発明の効果が得られる限り、式(22)で示される構成単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の構成単位をさらに有することができる。当該構成単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能でありかつ式(22)で示される構成単位に変換可能な不飽和単量体及びビニルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位である。エチレン性不飽和単量体は、単量体M’について記載した前記エチレン性不飽和単量体と同義である。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体における式(22)で示される構成単位、ビニルアルコール単位、及びその他の任意の構成単位の配列順序は特に限定されず、ランダム、ブロック、交互等のいずれであってもよい。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されず、好ましくは100〜5,000であり、より好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が上記の下限以上であることが、誘導される共重合体の機械的強度の観点から好ましい。粘度平均重合度が上記の上限以下であることが、ビニルアルコール系重合体を工業的に製造しやすいため好ましい。
一般式(23)で示される側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体の製造方法は、目的とする側鎖メルカプト基含有ビニルアルコール系重合体が製造できる限り特に限定されない。例えば、そのような製造方法としては、ビニルエステルと、該ビニルエステルと共重合可能であり、かつ一般式(22)で示される構成単位に変換可能な不飽和単量体とを共重合する共重合工程と、得られた共重合体のビニルエステル単位を加溶媒分解によりビニルアルコール単位に変換し、一方で一般式(22)で示される構成単位に変換可能な不飽和単量体に由来する構成単位を一般式(22)で示される構成単位に変換する変換工程とを含む方法が挙げられる。
特に、ビニルエステルと一般式(24)で示される不飽和二重結合を有するチオエステル系単量体(以下において「チオエステル系単量体(24)」と称する)とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合、及び、チオエステル系単量体(24)由来の構成単位のチオエステル結合を、加水分解又は加アルコール分解して、それぞれビニルアルコール単位及び一般式(22)で示される構成単位に変換する方法が簡便であり好ましく用いられる。
一般式(23)で示される重合体の上記の好ましい製造方法において、ビニルエステルとチオエステル系単量体(24)との共重合は、ビニルエステルを単独重合する際の公知の方法及び条件を採用して行うことができる。共重合の際、ビニルエステル及びチオエステル系単量体(24)と共重合可能な単量体をさらに共重合させてもよい。当該共重合可能な単量体は、単量体M’について記載した前記エチレン性不飽和単量体と同様である。
得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合、及び、チオエステル系単量体(24)由来の構成単位のチオエステル結合は、ほぼ同じ条件で加水分解又は加アルコール分解することができる。したがって、得られた共重合体のビニルエステル単位のエステル結合及びチオエステル系単量体(24)由来の構成単位のチオエステル結合の加水分解又は加アルコール分解を、ビニルエステルの単独重合体をけん化する際の公知の方法及び条件を採用して行うことができる。
工程IIは、前記工程Iで得た共重合体(P’)を含有する中間体に所望の形態を付与し、膜状成形体を作製する工程である。
膜状成形体を作製する際の中間体の形態としては特に限定されないが、加工性の観点から、共重合体(P’)を含有する中間体の溶液を用いて膜状成形体を作製することが好ましい。溶媒としては特に限定されず、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等の極性溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。共重合体(P’)の溶解性の観点から、溶媒として水を使用することが好ましい。溶液の濃度は特に限定されないが、上記の溶媒100質量部に対する共重合体(P’)の量が、0.1〜50質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
共重合体(P’)を含有する中間体の溶液中には、共重合体(P’)及び溶媒の他に、必要に応じて任意の添加剤を添加してよく、添加順序も任意に選択することができる。添加剤としては、公知の添加剤等の中から適宜選択することができ、例えば、金属微粒子、無機微粒子、無機塩、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤、増粘剤、導電補助剤、表面改質剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、消泡剤、可塑剤等が挙げられる。これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合体(P’)を含有する中間体の溶液中には、共重合体(P’)及び溶媒の他に、共重合体成形物の強度向上を目的として、適宜ポリビニルアルコールを添加してもよい。該ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は特に限定されず、JIS K6726に準拠して測定して、好ましくは500〜8,000であり、より好ましくは1000〜7,000である。
中間体の溶液のpHは、続く工程IIIにおけるビニレン系重合体成分の導入を容易にする観点から、3.0未満であることが好ましく、2.0未満であることがより好ましい。中間体の溶液のpHの調整方法は特に限定されず、例えば、該pHを、硫酸、塩酸、酢酸、塩化アンモニウム等の酸性化合物や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物を中間体の溶液中に添加して調整してもよいし、アニオン交換樹脂やカチオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を用いて調整してもよいし、電気透析法により調整してもよい。
前記中間体に所望の形態を付与しポリビニルアルコール系の膜状成形体を製造する方法としては、特に限定されないが、例えばポリビニルアルコール系重合体を加熱することにより当該重合体を可塑化させて成形する溶融成形方法(例えば押出成形法、射出成形法、インフレ成形法、プレス成形法、ブロー成形法)や、溶液を膜状にキャストした後に、乾燥により溶媒を除去することにより、膜状に成形する溶媒キャスト法などが挙げられる。これらの成形方法により、フィルム、シートなどの所望の厚みを有する膜状成形体が得られる。
溶融成形法を用いる場合、中間体の溶液に必要に応じて任意の熱可塑性樹脂を添加してもよく、その添加する順序も任意に選択することができる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されることなく、一般の熱可塑性樹脂を用いることができる。
溶媒キャスト法を用いる場合、キャスティングマシーン、フィルムアプリケーター等を用いることができるが、特にそれらに限定されるものではない。ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレン等のポリマーフィルム上や、銅箔、アルミ箔等の金属箔上や、ガラス基板、シリコン基板等の無機基板上に、膜状成形体を積層させてもよく、膜状成形体が多層構造を有してもよい。また、膜状成形体を、多孔性フィルム、メッシュ、不織布、多孔性セラミックス、ゼオライト等の多孔性材料に複合化させてもよく、あるいは三次元加工されたポリマー、金属、セラミックス、ガラス等の成形体の表面に形成させてもよい。
本発明の製造方法に用いるイオン交換膜の膜厚は、電気透析用電解質膜として必要な性能、機械的強度、ハンドリング性等の観点から、30〜1000μm程度であることが好ましく、40〜500μmであることがより好ましく、50〜300μmであることがさらに好ましい。膜厚が上記の下限以上であることが、得られる膜の機械的強度の観点から好ましい。膜厚が上記の上限以下であることが、膜抵抗を小さくし、イオン交換性を高めやすい観点から好ましい。上記工程IIにおいて、上記好ましい範囲の膜厚を有する膜状成形体を形成することが好ましい。なお、膜厚は、マイクロメーターにより測定することができる。
工程IIにおいて、上記記載の製法と併せて、無機材ないし有機材又は有機無機ハイブリッド材からなる補強材料を添加することにより、膜状成形体を補強することもできる。補強材料は繊維状物でもよいし、粒子状物質でもよいし、薄片状物質でもよい。また、多孔膜、メッシュ及び不織布などの連続した支持体でもよい。補強材料を添加することにより、最終的に得られるイオン交換膜の力学強度及び寸法安定性をさらに向上させることができる。特に繊維状物又は上述の連続した支持体を補強材料に用いることが、最終的に得られるイオン交換膜の力学強度及び寸法安定性を向上しやすいため、好ましい。また、補強しない層と上記補強層した層とを任意の方法で多層状に積層したものも好ましい。
補強材料を膜状成形体に加工する際に、補強材料を共重合体(P’)を含有する中間体の溶液に添加、混合して使用してもよいし、補強材料に共重合体(P’)を含有する中間体の溶液を含浸させてもよいし、補強材料と製膜後の膜状成形体とを積層させてもよい。
補強材料は、強度及び工程通過性観点から、多孔膜、メッシュ又は不織布からなる連続した支持体であることが好ましく、不織布であることがより好ましい。不織布としては、短繊維(繊維長:1〜30mm)から形成される湿式不織布が好ましい。不織布を形成するポリマー(又は主体繊維の構成ポリマー)としては、特に限定されないが、例えばポリエステル(PET、PTTなど)、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。特に好ましい不織布シートとしては、ポリビニルアルコール短繊維を主体繊維とする湿式不織布が挙げられる。ここで、湿式不織布は、主体繊維と、主体繊維間を結合する少量のバインダー繊維とを、水中に分散させ、緩やかな撹拌下で、均一なスラリーとし、このスラリーを丸網、長網、傾斜式などのワイヤーのうち少なくとも1つを有する抄紙用の装置を用いてシートを形成して製造することができる。
補強材料として不織布を用いる本発明の一態様において、ポリビニルアルコール系主体繊維としては、90℃以下の水には溶解せず、ケン化度が99.9モル%以上のものが好ましい。また、アセタール化処理が施されているポリビニルアルコール主体繊維も好ましい。なお、アセタール化度は15〜40モル%が好ましく、25〜35モル%がより好ましい。ポリビニルアルコール系主体繊維を構成するポリビニルアルコールの重合度は1000〜2500であることが好ましい。ポリビニルアルコール系主体繊維の製法は、公知の方法を採用することでき、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法のいずれかを採用すればよい。本態様において使用するポリビニルアルコール系主体繊維は、湿式不織布として使用されるため、その繊度は好ましくは0.3〜10dtexであり、より好ましくは0.5〜5dtexである。
補強材料として用いる無機材は補強効果のあるものであれば特に限定されず、例えばガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ藻土、ケイ砂、鉄フェライト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。補強材として用いる有機材も、補強効果のあるものであれば特に限定されず、例えばポリビニルアルコール、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルスルホン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエステル、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ビニロン繊維、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロース、ポリケトン、ポリアセタール、ポリプロピレン及びポリエチレンなどが挙げられる。有機無機ハイブリッド材もまた補強材として用いることができ、例えば、POSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxanes)やシリコーンゴム等のシルセスキオキサン構造やシロキサン構造を有した有機ケイ素高分子化合物などが挙げられる。
工程IIIは、前記工程IIで得たビニルアルコール系重合体成分(A’)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P’)を含有する膜状成形体に脱水ポリエン化反応を施し、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜を作製する工程である。
脱水ポリエン化反応を行う方法としては、膜状成形体を熱処理することが挙げられる。熱処理の方法は、膜状成形体の種類や形態によって適宜選択してよく、一般に公知の方法を用いることができる。熱処理を、例えば熱風乾燥機、ホットプレス、ホットプレート、赤外線ヒーター、ローラーヒーター等を用いて行うことができる。大面積の熱処理を行う場合、面状加熱手段が好ましく、ホットプレス、ホットプレート、赤外線ヒーター、ローラーヒーター等がより好ましい。熱処理の条件としては特に限定されず、大気下、窒素などの不活性ガス雰囲気下又は減圧下で、好ましくは100〜250℃、より好ましくは140〜200℃の加熱処理温度で、好ましくは5秒〜4時間、より好ましくは1分〜2時間の加熱時間で熱処理を行ってよい。熱処理を、複数回に分けて行ってもよい。
本発明の製造方法において使用するイオン交換膜に、必要に応じて架橋処理を施してもよい。架橋処理を施すことにより架橋結合を導入することが、電気透析性能をさらに向上させやすく、イオン交換膜の機械的強度をより高めやすいため好ましい。架橋処理の方法は、重合体の分子鎖同士を化学結合によって結合できる方法であればよく、特に限定されない。通常、架橋処理剤を含む溶液にイオン交換膜を浸漬する方法などが用いられる。該架橋処理剤としては、例えばホルムアルデヒド、或いはグリオキザールやグルタルアルデヒドなどのジアルデヒド化合物が挙げられる。
架橋処理を施す方法としては、上記架橋剤を予め混合した中間体の溶液を用いて工程IIにおいて膜状成形体を製造し、工程IIIにおいてポリエン化と同時に架橋処理を行う方法、及び、工程IIIにおいて熱処理によるポリエン化を行った後に、得られたイオン交換膜を、酸性条件下で、水、アルコール又はそれらの混合溶媒にジアルデヒド化合物を溶解させた溶液に浸漬させることにより、架橋処理を行う方法が挙げられる。工程通過性を考慮すると、後者の方法で架橋処理を行うことが好ましい。後者の方法で架橋処理を行う場合、通常、溶液に対する架橋処理剤の体積濃度が0.001〜10体積%である溶液が用いられる。
上記のようにして得られる本発明の製造方法において使用する共重合体(P)を含有するイオン交換膜の膜抵抗は、電力コストの観点から、10Ωcm以下であることが好ましく、5Ωcm以下であることがより好ましい。該イオン交換膜の膜抵抗は、0Ωcm以上であればよく、通常は0.1Ωcm程度以上である。
本発明の製造方法において、電気透析槽に、(1)カチオン交換膜としての上記特定のイオン交換膜を、上記特定のイオン交換膜とは異なる他のアニオン交換膜等と組み合わせて配列してもよいし、(2)アニオン交換膜としての上記特定のイオン交換膜を、上記特定のイオン交換膜とは異なる他のカチオン交換膜等と組み合わせて配列してもよいし、(3)カチオン交換膜及びアニオン交換膜としての上記特定のイオン交換膜を配列してもよい。
上記(1)の態様においてカチオン交換膜と組み合わせて用いられる、上記特定のイオン交換膜とは異なる他のアニオン交換膜としては、特に限定されず、第4級アンモニウム基等の強塩基性基を有するポリマーからなる膜、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基等の弱塩基性官能基を有するポリマーからなる膜を適宜選択して使用できる。
上記(2)の態様においてアニオン交換膜と組み合わせて用いられる、上記特定のイオン交換膜とは異なる他のカチオン交換膜としては、特に限定されず、スルホン酸基、スルホニルイミド基等の強酸性官能基を有するポリマーからなる膜、リン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基等の弱酸酸性官能基を有するポリマーからなる膜を適宜選択して使用できる。
〔電気透析〕
本発明の製造方法において使用される電気透析槽として、陽極と陰極との間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを配列して構成される基本構造を有し、カチオン交換膜及び/又はアニオン交換膜が上記に述べた特定のイオン交換膜であれば、公知の電気透析槽を特に制限なく使用することができる。例えば、アニオン交換膜及びカチオン交換膜を交互に配列しこれらのイオン交換膜と室枠とによって脱塩室と濃縮室とが形成された基本構造から構成されるフィルタープレス型やユニットセル型などのような電気透析槽が好適に使用できる。なお、かかる電気透析槽に用いる膜数あるいは脱塩室及び濃縮室の流路間隔(膜間隔)等は、処理される塩水の種類や処理量により適宜選定してよい。
海水などの塩水を処理する本発明の塩の製造方法に用いられる製造システムの実施態様の一例を図3に基づいて説明する。
母液(塩水)をフィルター1で処理して母液に含まれる固形物を除去した後、母液槽2に移し、循環ポンプ3で電気透析装置4に供給し、電気透析を行う。電気透析中に、電気透析装置4とかん水槽5との間で循環ポンプ3により処理液を循環させながら濃縮を行い、最終的に濃縮された濃縮液が、かん水槽から排出される。また、電気透析装置4と母液槽2との間で循環ポンプ3により処理液を循環させながら脱塩を行い、最終的な脱塩液が母液槽から排出される。
なお、本発明の製造方法において用いられる製造システムの実施形態の一例を示す図3の概略構成図には示していないが、システム全体が効率的かつ安全正確に連続操業されるように、電気透析装置4などの設備、各種タンクのポンプなどは、それぞれが運転制御されていてよい。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔動的輸率の測定〕
イオン交換膜の動的輸率は、図1に示される白金黒電極板を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、イオン交換膜の両側に0.5mol/L−NaCl溶液を満たし電気透析を行った。イオンクロマトグラフィーを用いて、透析前後のイオン量の変化を計算し、下式に代入することで動的輸率t を算出した。
=Δm/Ea
:動的輸率
Ea:理論当量=I・t/F
Δm:移動当量
F:Faraday定数
〔膜抵抗の測定〕
膜抵抗は、図2に示される白金黒電極板を有する2室セル中にイオン交換膜を挟み、膜の両側に0.5mol/L−NaCl溶液を満たし、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定し、該電極間抵抗とイオン交換膜を設置しない場合の電極間抵抗との差により求めた。上記測定に使用する膜は、あらかじめ0.5mol/L−NaCl溶液中で平衡にしたものを用いた。
〔ポリエン化率の測定〕
製膜後に熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥させた後の重量を[ポリエン化前重量]とし、その後高温熱処理機を用いて160℃30分間の条件で熱処理を行った後の重量を[ポリエン化後重量]とし、上記の重量減少([ポリエン化前重量]−[ポリエン化後重量])全てが、共重合体中に含まれるビニルアルコール系重合体成分(44.05g/mol)が、熱処理により脱水されてビニレン系重合体成分(26.04g/mol)に変換されたことによる重量減少によるものとして、その変換率をポリエン化率と規定した。補強材料を含むものは、膜の総重量から補強材料の重量を引いたものを共重合体の重量とした。
合成例1:末端メルカプト基含有ポリビニルアルコールの合成
特開昭59−187003号公報に記載された方法(末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体及びその方法)によって、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(PVA−1,−2,−3)を合成した。得られたPVA−1のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は99.9モル%であった。得られたPVA−2のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1500、けん化度は97.4モル%であった。得られたPVA−3のJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は500、けん化度は99.8モル%であった。
合成例2:チオエステル系単量体変性ポリビニルアセテートの合成(側鎖メルカプト基含有ポリビニルアルコール合成の前段階)
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、コモノマー添加口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル450質量部、コモノマーとして前記化学式(a−11)で示されるチオエステル系単量体、0.64質量部、及びメタノール330質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。これとは別に、コモノマーの逐次添加溶液(以降ディレー溶液と表記する)としてチオエステル系単量体(a−11)のメタノール溶液(濃度4質量%)を調製し、30分間アルゴンをバブリングした。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を添加し重合を開始した。重合反応の進行中は、調製したディレー溶液を系内に滴下することで、重合溶液におけるモノマー組成(酢酸ビニルとチオエステル系単量体(a−11)のモル比率)が一定となるようにした。60℃で210分間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。次に、30℃の減圧下でメタノールを追加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーを留去し、チオエステル系単量体(a−11)が導入された変性ポリビニルアセテートのメタノール溶液を得た。
合成例3:側鎖メルカプト基含有ポリビニルアルコールの合成
合成例2で得られたチオエステル系単量体(a−11)が導入されたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液にメタノールを加え、さらに水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度12.8%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のチオエステル系単量体(a−11)が導入されたポリ酢酸ビニル濃度30%、チオエステル系単量体(a−11)が導入されたポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.040)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約8分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で52分間放置してけん化を進行させた。これに酢酸メチルを加えて残存するアルカリを中和した後、メタノールでよく洗浄し、真空乾燥機中40℃で12時間乾燥することにより、側鎖メルカプト基含有PVA(PVA−4)を得た。また、H−NMR測定により得られた化学シフト値を以下に示す。H−NMR測定により求めた式(I):
Figure 2016155723
で表される構成単位の含有量(変性量)は1.0mоl%であった。また、JIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は1000、けん化度は97.9モル%であった。
H−NMR(270MHz,DO(DSS含有),60℃) δ(ppm):1.3−1.9(−CHCH(OH)−)、2.0−2.2(−CHCH(OCOCH)−)、2.5−2.6(CONHCHCHSH)、3.5−4.2(−CHCH(OH)−,−CH(COOH)CH−,CONHCHCHSH)
合成例4:水溶液P−1(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水115g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS,純度97%:和光純薬工業製)を6.2g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液5.6mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−1を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−1の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は5モル%であった。
合成例5:水溶液P−2(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水136g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS,純度97%:和光純薬工業製)を13.1g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液11.9mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−2を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−2の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は10モル%であった。
合成例6:水溶液P−3(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水154g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS,純度97%:和光純薬工業製)を19.2g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液17.4mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−3を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−3の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は14モル%であった。
合成例7:水溶液P−4(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水185g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS,純度97%:和光純薬工業製)を29.4g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液26.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−4を作製した。該水溶液のpHは0.8であった。水溶液P−4の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は20モル%であった。
合成例8:水溶液P−5(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水247g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS,純度97%:和光純薬工業製)を50.5g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液45.9mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−5を作製した。該水溶液のpHは0.8であった。水溶液P−5の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は30モル%であった。
合成例9:水溶液P−6(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
合成例3の末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)の代りに末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−2)を用いた以外は同様の操作を行い、ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−6を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−6の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は14モル%であった。
合成例10:水溶液P−7(ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液)
合成例3の末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)の代りに末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−3)を用いた以外は同様の操作を行い、ブロック共重合体PVA−b−AMPSの水溶液P−7を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−7の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は14モル%であった。
合成例11:水溶液P−8(グラフト共重合体PVA−g−AMPSの水溶液)
合成例1の末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)の代りに側鎖メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−4)を用いた以外は同様の操作を行い、グラフト共重合体PVA−g−AMPSの水溶液P−8を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−8の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、AMPS単位の変性量は14モル%であった。
合成例12:水溶液P−9(ブロック共重合体PVA−b−VSAの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水117g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gとビニルスルホン酸(VSA,純度95%:旭化成ファインケム製)を7.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液6.2mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に24時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールとビニルスルホン酸のブロック共重合体PVA−b−VSAの水溶液P−9を作製した。該水溶液のpHは0.9であった。水溶液P−9の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、VSA単位の変性量は10モル%であった。
合成例13:水溶液P−10(ブロック共重合体PVA−b−PSSの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水136g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を25.0gとパラスチレンスルホン酸ナトリウム(純度90%:東ソー有機化学製)を14.0g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液11.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールとパラスチレンスルホン酸ナトリウムのブロック共重合体PVA−b−PSSの水溶液P−10を作製した。該水溶液のpHは7.0であった。水溶液P−10の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、PSS単位の変性量は10モル%であった。
合成例14:水溶液P−11(ブロック共重合体PVA−b−MAPTACの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水138g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を25.0gと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC,純度96%:東京化成製)を14.1g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液12.7mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドのブロック共重合体PVA−b−MAPTACの水溶液P−11を作製した。該水溶液のpHは9.3であった。水溶液P−11の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、MAPTAC単位の変性量は10モル%であった。
合成例15:水溶液P−12(ブロック共重合体PVA−b−DAPMAの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた300mLの四つ口セパラブルフラスコに、水138g、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしてPVA−1を25.0gとN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(DAPMA,純度97%:和光純薬工業製)を10.7g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液9.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に4時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールとN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドのブロック共重合体PVA−b−DAPMAの水溶液P−12を作製した。該水溶液のpHは10.3であった。水溶液P−12の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、DAPMA単位の変性量は10モル%であった。
合成例16:水溶液P−13(ブロック共重合体PVA−b−VBTACの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水137g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC,純度97%:AGCセイミケミカル製)を13.4g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液12.2mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に24時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドのブロック共重合体PVA−b−VBTACの水溶液P−13を作製した。該水溶液のpHは8.0であった。水溶液P−13の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、VBTAC単位の変性量は10モル%であった。
合成例17:水溶液P−14(ブロック共重合体PVA−b−VBTACの水溶液)
還流冷却管、攪拌翼を備え付けた500mLの四つ口セパラブルフラスコに、水155g、末端メルカプト基含有ポリビニルアルコール(PVA−1)を25.0gとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC,純度97%:AGCセイミケミカル製)を19.6g仕込み、攪拌下90℃まで加熱して窒素をバブリングしつつ溶解した。窒素置換後、上記水溶液に2,2'-アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−プロピオンアミド]の2.0%水溶液17.8mLを1.5時間かけて逐次的に添加して重合を開始させ、進行させた後、系内温度を90℃に24時間維持して重合をさらに進行させ、ついで冷却して、ポリビニルアルコールとビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドのブロック共重合体PVA−b−VBTACの水溶液P−14を作製した。該水溶液のpHは8.8であった。水溶液P−14の一部を乾燥した後、重水に溶解し、500MHzでのH−NMR測定に付した結果、VBTAC単位の変性量は14モル%であった。
製造例1:カチオン交換膜Q−1〜Q−9の製造
合成例4〜12で得た水溶液P−1〜P−9を、pHを調整せずに、PETフィルム上にアプリケーターバーを用いてギャップ500μmにて塗布した後、熱風乾燥機にて80℃で30分乾燥させた。その後、PETフィルムを剥離して、高温熱処理機を用いて160℃30分間の条件で熱処理を行い、ポリエン化された重合体成分を含むカチオン交換膜Q−1〜Q−9を得た。得られたイオン交換膜のポリエン化率、膜抵抗、動的輸率を測定した。結果を表1に示す。
製造例2:カチオン交換膜Q−10及びアニオン交換膜Q−11〜Q−14の製造
合成例13〜17で得た水溶液P−10〜P−14に対して、濃硫酸を添加してpHを1.0に調整した後、PETフィルム上にアプリケーターバーを用いてギャップ500μmにて塗布した後、熱風乾燥機にて80℃で30分乾燥させた。その後、PETフィルムを剥離して、高温熱処理機を用いて160℃30分間の条件で熱処理を行い、ポリエン化された重合体成分を含むカチオン交換膜Q−10及びアニオン交換膜Q−11〜Q−14を得た。得られたイオン交換膜のポリエン化率、膜抵抗、動的輸率を測定した。結果を表1に示す。
製造例3:カチオン交換膜Q−15及びQ−16の製造
合成例6で得た水溶液P−3、及び合成例13で得た水溶液P−10に対して濃硫酸を添加してpHを1.0に調整した水溶液をPETフィルム上にアプリケーターバーを用いてギャップ500μmにて塗布した後、ビニロン不織布BNF No.2(株式会社クラレ製)を貼合し、熱風乾燥機を用いて80℃で30分乾燥させた。その後、PETフィルムを剥離して、高温熱処理機にて160℃30分間の条件で熱処理を行い、ポリエン化された重合体成分を含むカチオン交換膜Q−15及びQ−16を得た。得られたイオン交換膜のポリエン化率、膜抵抗、動的輸率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2016155723
比較製造例1:イオン交換膜R−1〜R−9の製造
合成例4〜12で得た水溶液P−1〜P−9に対して、1.0M水酸化ナトリウムを添加してpHを7.0に調整した後、PETフィルム上にアプリケーターバーを用いてギャップ500μmにて塗布した後、熱風乾燥機にて80℃で30分乾燥させた。その後、PETフィルムを剥離して、高温熱処理機にて160℃30分間の条件で熱処理を行い、イオン交換膜R−1〜R−9を得た。得られたイオン交換膜のポリエン化率、膜抵抗、動的輸率を測定した。結果を表2に示す。得られたイオン交換膜は水への溶出が激しく膜抵抗、動的輸率の測定が出来なかった。
比較製造例2:イオン交換膜R−10〜R−14の製造
合成例13〜17で得た水溶液P−10〜P−14を、pHを調整せずに、PETフィルム上にアプリケーターバーを用いてギャップ500μmにて塗布した後、熱風乾燥機にて80℃で30分乾燥させた。その後、PETフィルムを剥離して、高温熱処理機を用いて160℃30分間の条件で熱処理を行い、イオン交換膜R−10〜R−14を得た。得られたイオン交換膜のポリエン化率、膜抵抗、動的輸率を測定した。結果を表2に示す。得られたイオン交換膜は水への溶出が激しく膜抵抗、動的輸率の測定が出来なかった。
Figure 2016155723
表1に示されるように、ポリエン化反応によりビニレン系重合体成分を導入して得た本発明の製造方法に使用するイオン交換膜は、架橋処理を施さずとも耐水性が付与されており、イオン交換膜としての性能が発現していることが分かる(製造例1〜3)。これに対し、表2に示されるように、ポリエン化反応を行わなかった場合は、イオン交換膜の耐水性が劣っていた(比較製造例1及び2)。
実施例1
濃度0.5mol/Lの塩化ナトリウム及び濃度300ppmのフミン酸を含んだ水溶液を母液に用いて、図3に示す電気透析装置を用いる製造方法により塩濃縮を実施した。電気透析装置4として、小型電気透析装置CH−0型(AGCエンジニアリング(株)製)を用い、カチオン交換膜としてQ−1を用い、アニオン交換膜としてセレミオンAMV(AGCエンジニアリング(株)製)を用いた。陰極と陽極の両電極間にカチオン交換膜及びアニオン交換膜を交互に配列してスタックを組み立て、25℃で電流密度1A/dmにて7時間濃縮試験を実施した。7時間後の濃縮液の塩濃度を、イオンクロマトグラフィICS−5000(DIONEX社製)を用いて測定した。得られた結果を表3に示す。
実施例2〜12
カチオン交換膜を表3に示すカチオン交換膜に変更した以外は、実施例1と同じ条件で測定した結果を表3に示す。
実施例13〜16
カチオン交換膜を市販のカチオン交換膜(セレミオンCMV(AGCエンジニアリング(株)製))に変更し、アニオン交換膜を表3に示すアニオン交換膜に変更した以外は、実施例1と同じ条件で測定した結果を表3に示す。
実施例17〜18
カチオン交換膜を表3に示すカチオン交換膜に変更し、アニオン交換膜を表3に示すアニオン交換膜に変更した以外は、実施例1と同じ条件で測定した結果を表3に示す。
比較例1〜16
カチオン交換膜を表3に示すカチオン交換膜に変更し、アニオン交換膜を表3に示すアニオン交換膜に変更した以外は、実施例1と同じ条件で測定した結果を表3に示す。
Figure 2016155723
表3の結果から、実施例1〜18で用いたイオン交換膜は、比較例1〜16と比べて、十分なイオン交換性能及び耐久性を有するため、塩を効率的かつ長期的に安定して製造することが可能であり、電気透析装置を長時間運転してもイオン交換性能が低下しにくいことがわかる。
本発明の処理方法に用いる、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜は、イオン交換膜がビニレン系重合体成分を含むことにより低含水率であり高い耐水性を有するイオン交換膜となる。そのため、イオン交換膜が含水することによる膨潤が抑制され、寸法安定性に優れるイオン交換膜となる。このようなイオン交換膜を、カチオン交換膜及び/又はアニオン交換膜として用いて電気透析を行う本発明の方法によれば、長期的に安定な電気透析が可能となり、塩を効率的かつ長期的に安定して製造することができる。
共重合体(P)を含有するイオン交換膜を用いて海水等の塩水に対して電気透析処理を行い、塩水中の塩を濃縮する本発明の製造方法によれば、塩を効率的かつ長期的に安定して製造することができる。そのため、本発明の製造方法は、塩水(海水、鹹水等)中の塩の濃縮に好適に使用することができる。
以上、本発明の好ましい実施態様を例示的に説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に開示した本発明の範囲及び精神から逸脱することなく多様な修正、付加及び置換ができることが理解可能であろう。
A 電源
B アンペアメーター
C クーロンメーター
D ボルトメーター
E モーター
F スターラー
G カソード電極
H アノード電極
I 0.5M NaCl水溶液
J イオン交換膜(有効膜面積8.0cm
K イオン交換膜(有効膜面積1.0cm
L 白金電極
M NaCl水溶液
N 水浴
O LCRメーター
1 フィルター
2 母液槽
3 循環ポンプ
4 電気透析装置
5 かん水槽

Claims (12)

  1. 電気透析処理により濃縮処理される塩の製造方法において、該電気透析を、ビニルアルコール系重合体成分(A)、ビニレン系重合体成分(B)及びイオン性基を有する重合体成分(C)を構成成分とする共重合体(P)を含有するイオン交換膜を、カチオン交換膜及び/又はアニオン交換膜として用いて行う、塩の製造方法。
  2. 前記共重合体(P)は、共重合体(P)の全構成単位を100モル%として0.05〜89.1モル%のビニルアルコール系重合体成分(A)、5〜98.901モル%のビニレン系重合体成分(B)及び1〜50モル%のイオン性基を有する重合体成分(C)を含む、請求項1に記載の塩の製造方法。
  3. 前記共重合体(P)は下記一般式(1):
    Figure 2016155723
    [式中、0.5000≦(o+p)/(n+o+p)≦0.9999であり、0.100≦p/(n+o+p)≦0.999であり、0.01≦m/(m+n+o+p)≦0.50であり、Mはイオン性基を有する単量体M’に由来する構成単位である。]
    で示される共重合体(P1)である、請求項1又は2に記載の塩の製造方法。
  4. 前記共重合体(P)は下記一般式(2):
    Figure 2016155723
    [式中、0.5000≦(o+p)/(n+o+p)≦0.9999であり、0.100≦p/(n+o+p)≦0.999であり、0.001≦q/(n+o+p+q)≦0.050であり、0.01≦q/(q+n+o+p)≦0.50であり、Rは、水素原子又はカルボキシル基であり、Rは、水素原子、メチル基、カルボキシル基又はカルボキシメチル基であり、Lは、窒素原子及び/又は酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rがカルボキシル基の場合やRがカルボキシル基又はカルボキシメチル基の場合は、隣接する水酸基と環を形成していてもよい。Mはイオン性基を有する単量体M’に由来する構成単位である。]
    で示される共重合体(P2)である、請求項1又は2に記載の塩の製造方法。
  5. 前記イオン性基がアニオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をカチオン交換膜として用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の塩の製造方法。
  6. 前記イオン性基がカチオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をアニオン交換膜として用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の塩の製造方法。
  7. 前記イオン性基がアニオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をカチオン交換膜として用い、前記イオン性基がカチオン性基である共重合体(P)を含有するイオン交換膜をアニオン交換膜として用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の塩の製造方法。
  8. 前記共重合体(P)に架橋結合が導入されている、請求項1〜7のいずれかに記載の塩の製造方法。
  9. 前記共重合体(P)を含有するイオン交換膜は補強材料を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の塩の製造方法。
  10. 前記補強材料は多孔膜、メッシュ又は不織布からなる連続した支持体である、請求項9に記載の塩の製造方法。
  11. 前記不織布はポリビニルアルコール系短繊維の湿式不織布である、請求項10に記載の塩の製造方法。
  12. 前記共重合体(P)を含有するイオン交換膜の膜抵抗は10Ωcm以下である、請求項1〜11のいずれかに記載の塩の製造方法。
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