JP2016155700A - ナノ複合酸化物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は、本発明の一実施形態に係るチタン酸バリウム−チタン酸ストロンチウム/ナノ複合酸化物の3次元構造を示す模式図である。本発明のナノ複合酸化物は図1に示す通り、例えばチタン酸バリウムとチタン酸ストロンチウムのような2種の誘電体の結晶子が3次元的に配列していることが特徴である。その際、各々の結晶子は、規則的に配列していてもよく、ランダムに配列していても良い。なお、2種以上の誘電体の結晶子を3次元的に複数ずつ配列することも可能である。3次元構造にすることによる誘電特性及び圧電特性の向上は、前述の通りではあるが、ナノ複合酸化物に2種の誘電体であるチタン酸バリウム(強誘電体)とチタン酸ストロンチウム(常誘電体)とを導入することによって、各結晶子のエピタキシャル界面では、各結晶子のミスマッチングにより格子歪みが生じている。従って、チタン酸バリウムの自発分極が不安定となり、外部電界や応力をかけると、容易に反転し、大きな誘電効果と圧電効果を生じさせることができると考えられる。
本発明において、前記2種以上の誘電体は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、及びチタン酸鉛からなる群から選ばれる2種以上のチタン酸化合物を含むことができる。誘電体としては、任意の成分として、チタン酸ビスマスナトリウム、チタン酸ビスマスカリウム、チタン酸ビスマスからなる群より選ばれるチタン酸化合物を採用することもできる。2種の誘電体を用いる場合は、誘電特性及び圧電特性を向上させる観点からは、それぞれチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムであることが好ましい。これにより、各結晶子のエピタキシャル界面で生じる格子歪みを最適化することができるとともに、チタン酸バリウムの自発分極の反転を最適化できるため、誘電特性及び圧電特性をより向上できる。
層状構造を有するチタン酸水和物の組成は、例えば一般式H4x/3Ti2−x/3O4・nH2O(ここでxは0<x<1.0の正の数であり、nは正の数である)で表すことができる。
本発明における第2の工程において、残存するチタン酸水和物と反応させるためのイオン源としては、Ba2+,Sr2+,Ca2+等のアルカリ土類金属イオンやPb2+イオンをあげることができる。第1の工程においてBa源を導入してBaTiO3を形成している場合、Ba2+イオンを他のイオンで置き換えられないようにするため、Ba2+よりも溶解度の低い二価のイオン源が好ましく、例えば、Sr、Ca又はPb源がより好ましい。
コンデンサーは前記ナノ複合酸化物を誘電体として含むことが好ましい。このようなコンデンサーは、前記ナノ複合酸化物を配合した後、公知の形成方法により得ることができる。このようなコンデンサーは成形性や作業性に優れるとともに、誘電特性及び圧電特性が高いため、大容量化、小型化が可能となる。
(1)透過型電子顕微鏡
透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社、JEM−3010)(以下、TEM)を用いて加速電圧300kV、電流50μAでマイクログリッド上に載せた粉体サンプルを測定して、TEM像と制限視野電子回折(以下、SAED)パターンを得た。
実施例及び比較例で得られた生成物1gにエタノールを50μL滴下したものを、単軸プレス機(理研精機株式会社、S1−255)にて200〜400kg/cm2の荷重を約3分かけることにより、直径約15mm×厚さ約1mmの円錐状のペレットとした。得られたペレットを900℃で3時間の熱処理を行った。熱処理後のペレットの両端面に銀ペースト(昭栄化学工業株式会社、H−5698)を2μm厚さにスクリーン印刷で塗布し、700℃で1時間乾燥させ、試験体とした。
原子吸光分析装置(株式会社島津製作所、AA6200)を用いて測定した。
X線回折装置(株式会社リガク、RINT−2500)CuのKアルファ線、40kV、50mA)を用いて、走査間隔は0.03°、走査速度は5.0°/minで3〜60°の範囲で測定した。
(層状構造のチタン酸水和物の調製)
容量30mLの密閉容器内に、原子比でTi:K:Li=5:4:1となるように、酸化チタン3.5g(和光純薬株式会社)、水酸化カリウム2.0g(和光純薬株式会社)、水酸化リチウム1水和物0.37g(和光純薬株式会社)、水16mLを加えて、17rpmで撹拌しながら密閉状態で250℃、20時間加熱保持して、水熱条件下で反応させた。この時の昇温速度は300℃/時間であった。その後、容器内が室温になるまで放冷し、反応物を取り出して、吸引ろ過して、60℃で6時間乾燥した。得られた粒子は、K0.80Li0.27□<0.01Ti1.73O4の層状粒子であった。なお、Tiの欠陥部位を示す□は一般に0.01未満の小さな正数である。層状粒子の組成は、原子吸光分析で求め、チタン酸カリウムリチウムであることはX線回折測定(XRD)で確認した。層状粒子9gを1MのHNO3水溶液1000mL(層状粒子1モル当たりHNO3 20モル)と室温で24時間、300rpmで撹拌しながら反応させて、層状構造のH1.07Ti1.73O4・xH2O(以下、HTO)を得た。
容量50mLの密閉容器内に、原子比でBa:Ti=0.5:1.0となるように、HTO 0.10g及び水酸化バリウム8水和物0.18g(和光純薬株式会社)を、水とエタノール(和光純薬株式会社)との混合溶媒30mL(水:エタノールの体積比=5mL:25mL)に加えて、オートクレーブ装置に入れて、17rpmで撹拌しながら密閉状態で200℃、12時間加熱保持して、水熱条件下で反応させた。この時の昇温速度は300℃/時間であった。その後、容器内が室温になるまで放冷し、反応物を取り出して、0.1M酢酸溶液で洗浄した後蒸留水で洗浄し、吸引ろ過後、室温で乾燥した。このようにして、チタン酸バリウム−HTOナノ複合酸化物(以下、BaTiO3/HTO)を得た。そのTEM像とSAEDパターンを図3に示す。得られたBaTiO3/HTOのTEM像から、層状のHTO中に2次元的に複数配列したBaTiO3ナノ粒子を確認した。TEM像中の点線円で示したSAED部分から、HTOのパターンとBaTiO3のパターンとが共存しており、HTOの(200)面とBaTiO3の(002)面の回析スポット等がほぼ一致していることから、エピタキシャル効果によりチタン酸バリウムの結晶子が生成していることが分かる。
容量50mLの密閉容器内に、原子比でSr:Ti=1.0:1.0となるように、BaTiO3/HTO0.10g及び水酸化ストロンチウム8水和物0.17g(和光純薬株式会社)を、水とエタノール(和光純薬株式会社)との混合溶媒30mL(水:エタノールの体積比=10mL:20mL)に加えて、オートクレーブ装置に入れて、17rpmで撹拌しながら密閉状態で200℃、12時間加熱保持して、水熱条件下で反応させた。この時の昇温速度は300℃/時間であった。その後、容器内が室温になるまで放冷し、反応物を取り出して、0.1M酢酸溶液で洗浄した後蒸留水で洗浄して、吸引ろ過後、室温で乾燥した。このようにして、チタン酸バリウム-チタン酸ストロンチウム/ナノ複合酸化物(以下、BaTiO3/SrTiO3)を得た。そのTEM像とSAEDパターンを図4に示す。得られたBaTiO3/SrTiO3のTEM像及びSAEDパターンから、両者の(002)面の回折スポット等がほぼ一致していることから、両者の結晶子の結晶方位が同一方向に揃っていることが分かる。また、両者の(002)面等の回折スポットが若干ずれていることから、両者の格子サイズが若干相違していることがわかる。
実施例1において、各条件を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でBaTiO3/SrTiO3を作製した。そのTEM像とSAEDパターンを図4に示す。得られたBaTiO3/SrTiO3のTEM像及びSAEDパターンから、実施例1と同様に結晶方位が揃っていることを確認した。また、両者の(002)面等の回折スポットが若干ずれていることから、両者の格子サイズが若干相違していることがわかる。
実施例1において、各条件を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でBaTiO3/SrTiO3を作製した。得られたBaTiO3/SrTiO3のTEM像及びSAEDパターンから、実施例1と同様に結晶方位が揃っていることを確認した。
実施例1において、各条件を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で(Ba,Sr)TiO3固溶体を得た。そのTEM像とSAEDパターンを図5に示す。得られた(Ba,Sr)TiO3固溶体のTEM像及びSAEDパターンから、固溶体の回折スポットだけが確認できた。
実施例1において、各条件を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で生成物を得た。
Claims (10)
- 2種以上の誘電体の結晶子が3次元的に複数ずつ配列したナノ複合酸化物であって、前記2種以上の誘電体は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、及びチタン酸鉛からなる群から選ばれる2種以上のチタン酸化合物を含むナノ複合酸化物。
- 前記誘電体は、それぞれチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムである請求項1に記載のナノ複合酸化物。
- 全体の組成式は、AxByTiO3(ここで、A及びBは、互いに異なってBa,Sr,Ca、及びPbからなる群から選ばれ、0<x<1、0<y<1、x+y≒1)である請求項1又は2に記載のナノ複合酸化物。
- 前記ナノ複合酸化物における各々の前記結晶子の結晶方位は、前記ナノ複合酸化物の内部で少なくとも一方向に揃っている請求項1〜3いずれか1項に記載のナノ複合酸化物。
- 請求項1〜4いずれか1項に記載のナノ複合酸化物を誘電体として含む、コンデンサー。
- 層状構造のチタン酸水和物にバリウム化合物を反応させてチタン酸水和物結晶子内部にチタン酸バリウムナノ結晶子が複数配列した複合体を形成する第1の工程と、
前記第1の工程で残存するチタン酸水和物にストロンチウム化合物、カルシウム化合物又は鉛化合物を反応させる第2の工程と、
を含むナノ複合酸化物の製造方法。 - 前記第1の工程において、Ti元素1molに対して、Ba元素を0.05mol以上の割合で添加して反応させて、
前記第2の工程において、Ti元素1molに対して、Sr元素を0.05mol以上の割合、Ca元素を0.05mol以上の割合、又はPb元素を0.05mol以上の割合で添加して反応させる請求項6に記載のナノ複合酸化物の製造方法。 - 前記バリウム化合物とは、水酸化バリウム、酸化バリウム、炭酸バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、及び酢酸バリウムからなる群から選ばれる1種以上のバリウム化合物であり、
前記ストロンチウム化合物とは、水酸化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、及び酢酸ストロンチウムからなる群から選ばれる1種以上のストロンチウム化合物であり、
前記カルシウム化合物とは、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、及び酢酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上のカルシウム化合物であり、
前記鉛化合物とは、水酸化鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化鉛、硝酸鉛、硫酸鉛、及び酢酸鉛からなる群から選ばれる1種以上の鉛化合物である請求項6又は7に記載のナノ複合酸化物の製造方法。 - 前記第1の工程において、反応時に使用する溶媒は、水又は水とアルコールとの混合液であり、
前記第2の工程において、反応時に使用する溶媒は、水とアルコールとの混合液である請求項6〜8いずれか1項に記載のナノ複合酸化物の製造方法。 - 前記第1の工程において、100℃〜370℃の温度、0.1時間〜1000時間で水熱条件下で反応させて、
前記第2の工程において、100℃〜370℃の温度、0.1時間〜1000時間で水熱条件下で反応させる請求項6〜9いずれか1項に記載のナノ複合酸化物の製造方法。
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