本発明では以下に示す態様を提供することができる。
本発明の第1の態様によれば、無線通信システムは、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムであって、前記親無線端末および前記中継無線端末は、該親無線端末との通信を実施するために経由する他の中継無線端末数を示す情報である中継無線端末数情報を含んだビーコン信号を送信するよう構成されており、当該無線通信システムに新規参入する無線端末は、受信したビーコン信号それぞれの受信レベルを測定する測定手段と、受信したビーコン信号それぞれから前記中継無線端末数情報を取得する取得手段と、前記測定手段により測定されたビーコン信号の受信レベルが所定値以上であると判定された結果、ならびに前記情報取得手段により取得された中継無線端末数情報に基づき、前記中継無線端末数が最も少ないビーコン信号の発信元となる無線端末を接続先に決定する決定手段とを備える。
ここで、受信レベルとは例えば電界強度である。
上記した構成によると本発明に係る無線通信システムに新規参入する無線端末は、測定手段を備えるため、無線通信システムを構築している親無線端末または中継無線端末から受信したビーコン信号それぞれの受信レベルを測定することができる。
また、取得手段を備えているため、新規参入した無線端末は、ビーコン信号の発信元それぞれの前記中継無線端末数を把握することができる。
さらにまた、決定手段を備えるため、受信レベルが所定値以上であり、かつ中継無線端末数が最も小さいビーコン信号の発信元となる無線端末を接続先に決定することができる。
このように、受信するビーコン信号の受信レベル(電界強度)が所定値以上であることを保障しつつ、親無線端末と通信するにあたり経由すべき中継無線端末数が最も少ないルートを確立できる相手を接続先とすることができる。
このように、本発明に係る無線通信システムでは新規参入する無線端末側で適切な接続先を決定することができる。このため、従来技術のように中継ルートを管理する管理装置を必要とせず、簡易な構成とすることができる。また、従来技術のように管理装置を必要としないため、管理装置と無線接続できる場所にしか新たな無線端末を設置できないといった場所的制約も受けることがない。また、親無線端末および中継無線端末がビーコン信号を送信するだけでよく、従来技術のように、すべての無線端末は他の無線端末に対して電界強度測定用信号を定期的に送信する必要がない。このため、各無線端末間で実施される信号の送受信回数が多くなり各無線端末で消費される電力が大きくなることを防ぐことができる。それ故、トラフィックが増大しシステムの信頼性が低下することを防ぐことができる。
よって、本発明の第1の態様に係る無線通信システムは、新たに無線端末が追加される場合であっても、場所的制約を受けることなく簡易な構成で信頼性の高い無線通信システムを提供することができるという効果を奏する。
また、本発明の第2の態様によれば、無線通信システムは、前記決定手段は、前記測定手段により測定された各ビーコン信号の受信レベルが全て所定値未満であるときは、各ビーコン信号の中で最も受信レベルが大きいビーコン信号の発信元となる無線端末を接続先に決定する。
また、本発明の第3の態様によれば、無線通信システムは、前記所定値は、当該無線通信システムが構築される一般的な環境下における雑音レベルを考慮して決められた第一所定値と、該第一所定値よりも大きい値となるように設定された第二所定値とを含んでおり、前記決定手段は、前記中継無線端末数がゼロから所定数以下となるビーコン信号に対してはその受信レベルが前記第一所定値以上か否か確認し、前記中継無線端末数が該所定数より大きくなるビーコン信号に対してはその受信レベルが前記第二所定値以上か否か確認し、ビーコン信号の受信レベルが所定値以上であるか否か判定する。
上記した構成によると、親無線端末との通信を実施するために経由する他の中継無線端末数がゼロから所定数までの場合と、所定数よりも大きくなる場合とで前記所定値を異ならせて設定することができる。このため、例えば、前記第一所定値よりも前記第二所定値の方が大きい値とすることで、中継無線端末数が多くなることによる通信回数の増加に伴う通信信頼性の劣化を防止することができる。
また、本発明の第4の態様によれば、無線通信システムは、前記所定値は、当該無線通信システムが構築される一般的な環境下における雑音レベルを考慮して決められた第一所定値と、該第一所定値よりも大きい値となるように設定された第二所定値とを含んでおり、当該無線通信システムに新規参入する無線端末が子無線端末の場合、前記決定手段は、受信したビーコン信号の受信レベルが前記第一所定値以上か否か判定し、当該無線通信システムに新規参入する無線端末が中継無線端末の場合、前記決定手段は、受信したビーコン信号の受信レベルが前記第二所定値以上か否か判定する。
また、本発明の第5の態様によれば、無線通信システムは、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムであって、前記親無線端末および前記中継無線端末は、該親無線端末との通信を実施するために経由する他の中継無線端末数を示す情報である中継無線端末数情報を含んだビーコン信号を送信するよう構成されており、当該無線通信システムに新規参入する無線端末は、受信したビーコン信号それぞれの受信レベルを測定する測定手段と、受信したビーコン信号それぞれから前記中継無線端末数情報を取得する取得手段と、接続先とする無線端末を決定する決定手段と、を備え、前記決定手段は、前記情報取得手段により取得された中継無線端末数情報に基づき、中継無線端末数がゼロであり、かつ前記測定手段により測定されたビーコン信号の受信レベルが所定値以上であるビーコン信号がある場合、接続先とする無線端末を前記親無線端末に決定し、前記中継無線端末数がゼロでない場合、前記測定手段により測定されたビーコン信号の受信レベルが所定値以上でかつ、前記情報取得手段により取得された中継無線端末数情報に基づき、前記中継無線端末数が最も少ないビーコン信号の発信元となる無線端末を接続先に決定する。
上記した構成によると、前記測定手段により測定されたビーコン信号の受信レベルが所定値以上であるビーコン信号において、決定手段は、中継無線端末数がゼロの場合と、それ以外の場合とに分けて無線端末の接続先を決定することができる。すなわち、接続先が親無線端末となる場合とそれ以外との場合に分けて、新規参入する無線端末の接続先を決定することができる。
このため、接続先が親無線端末となるか否か決定する場合と、接続先がそれ以外、すなわち中継無線端末となるか否か決定する場合とで、ビーコン信号の受信レベルを判定する前記所定値を、例えば、前者よりも後者の方が大きくなるように設定するなど異ならせることができる。このため、中継無線端末数が多くなることによる通信回数の増加に伴う通信信頼性の劣化を防止することができる。
したがって、新たに無線端末が追加される場合であっても、簡易な構成で信頼性の高い無線通信システムを提供することができるという効果を奏する。
また、本発明の第6の態様によれば、無線通信システムは、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムであって、前記ビーコン信号は上位機器となる無線端末から下位機器となる無線端末へと定期的に送信されており、当該無線通信システムへの新規参入時に下位機器となる無線端末が、接続先として決定した上位機器の無線端末から受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルAとし、前記上位機器の無線端末から定期的に受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルBとし、前記受信レベルAから受信レベルの低下が許容される範囲で設定された値を所定レベルCとしたとき、前記下位機器となる無線端末は、受信レベルBが受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったか否か判定する受信レベル判定手段と、前記受信レベル判定手段により、受信レベルBが受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったと判定された場合、接続先とする上位機器となる無線端末を再度決定する再接続先決定手段と、をさらに備える。
上記した構成によると、受信レベル判定手段を備えるため、例えば、下位機器となる無線端末は、自局(自身)を取り巻く電波状況が変化し、上位機器となる無線端末から定期的に受信するビーコン信号の受信レベルが低下したか否か判定することができる。特に、受信レベル判定手段は、受信レベルの低下が受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となるものかどうか判定することができる。このため、定期的に上位機器となる無線端末から受信するビーコン信号の受信レベルが、受信レベルAの値から低下が許容される範囲を超えて大きく低下したか否か判定することができる。
また、再接続先決定手段を備えるため、定期的に受信するビーコン信号の受信レベルが、受信レベルAの値から低下が許容される範囲を超えて大きく低下した場合に、接続先とする上位機器の無線端末を再度決定することができる。
このため、無線通信システムでは、定期的に受信するビーコン信号の受信レベルの変動に応じて、頻繁に接続先の見直しを行なうことがなく、受信したビーコン信号の受信レベルが所望の通信品質を満たさなくなるような場合にのみ接続先の見直しを行うことができる。そして、接続先となる無線端末を再度、決定しなおして親無線端末までのルート変更を行うことができる。このため、従来技術のように中継ルートの変更を行うために、すべての無線端末が他の無線端末に対して電界強度測定用信号を定期的に送信したり、すべての無線端末が他の無線端末が送信した電界強度測定用信号をすべて受信したりする必要がない。すなわち、従来技術のように中継ルートを変更させるために各無線端末間で実施される信号の送受信回数が多くなることがないため、トラフィックが増大するという問題や電力消費が大きくなるという問題を防ぐことができる。
また、本発明の第7の態様によれば、無線通信システムは、前記再接続先決定手段は、定期的に受信したビーコン信号の受信レベルBが、連続して所定回数にわたり、前記受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったと判定された場合、接続先とする上位機器の無線端末を再度決定する。
上記した構成によると、前記受信レベルBが、連続して所定回数にわたり、前記受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったと判定された場合、接続先とする無線端末を再度決定することができる。このため、たまたま、瞬間的に受信レベルBが受信レベルAの値から低下が許容される範囲を超えて大きく低下した場合などでは、接続先とする無線端末の再度の決定を行なわないようにすることができ、頻繁に接続先の見直しを行なってしまうような状態を防ぐことができる。
また、本発明の第8の態様によれば、無線通信システムは、前記再接続先決定手段は、定期的に送信されたビーコン信号の受信レベルBが前記受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となった、所定期間での比率が所定値を超えた場合、接続先とする上位機器の無線端末を再度決定する。
上記した構成によると、前記受信レベルBが、前記受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となった、所定期間での比率が所定値を超えたと判定された場合、接続先とする無線端末を再度決定することができる。このため、たまたま、瞬間的に受信レベルBが受信レベルAの値から低下が許容される範囲を超えて大きく低下した場合などでは、接続先とする無線端末の再度の決定を行なわないようにすることができ、頻繁に接続先の見直しを行なってしまうような状態を防ぐことができる。
また、本発明の第9の態様によれば、無線通信システムは、前記所定レベルCは、前記受信レベルAの値に応じて設定された値である。
上記した構成によると所定レベルCの値を受信レベルAの値に応じて設定できるため、受信レベルAごとに最適な値を所定レベルCとして設定することができる。
ところでこの所定レベルCの値により、接続先を再度決定する処理の頻度、ならびに無線通信システムにおける通信品質が左右される。ここで所定レベルCを受信レベルAに応じて最適な値とすることができるため、接続先とする無線端末を再度決定する処理の頻度が過剰とならないように抑制することができるとともに、無線通信システムにおける通信品質を確保することができる。
また、本発明の第10の態様によれば、無線端末は、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムに新規参入する無線端末であって、前記親無線端末および前記中継無線端末は、該親無線端末との通信を実施するために経由する他の中継無線端末数を示す情報である中継無線端末数情報を含んだビーコン信号を送信するよう構成されており、受信したビーコン信号それぞれの受信レベルを測定する測定手段と、受信したビーコン信号それぞれから前記中継無線端末数情報を取得する取得手段と、前記測定手段により測定されたビーコン信号の受信レベルが所定値以上であり、かつ、前記情報取得手段により取得された中継無線端末数情報に基づき、前記中継無線端末数が最も少ないビーコン信号の発信元となる無線端末を、接続先に決定する決定手段と、を備える。
ここで、受信レベルとは例えば電界強度である。
上記した構成によると無線端末は、測定手段を備えるため、無線通信システムを構築している親無線端末または中継無線端末から受信したビーコン信号それぞれの受信レベルを測定することができる。
また、取得手段を備えているため、新規参入した無線端末は、ビーコン信号の発信元それぞれの前記中継無線端末数を把握することができる。
さらにまた、決定手段を備えるため、受信レベルが所定値以上であり、かつ中継無線端末数が最も小さいビーコン信号の発信元となる無線端末を接続先に決定することができる。
このように、受信するビーコン信号の受信レベル(電界強度)が所定値以上であることを保障しつつ、親無線端末と通信するにあたり経由すべき中継無線端末数が最も少ないルートを確立できる相手を接続先とすることができる。
このように、新規参入する無線端末の側にて適切な接続先を決定することができる。このため、従来技術のように中継ルートを管理する管理装置を必要とせず、簡易な構成とすることができる。また、従来技術のように管理装置を必要としないため、管理装置と無線接続できる場所にしか新たな無線端末を設置できないといった場所的制約も受けることがない。また、親無線端末および中継無線端末がビーコン信号を送信するだけでよく、従来技術のように、すべての無線端末は他の無線端末に対して電界強度測定用信号を定期的に送信する必要がない。このため、各無線端末間で実施される信号の送受信回数が多くなり各無線端末で消費される電力が大きくなることを防ぐことができる。それ故、トラフィックが増大しシステムの信頼性が低下することを防ぐことができる。
よって、本発明の第10の態様に係る無線端末は、場所的制約を受けることなく簡易な構成で、無線通信システムの高い信頼性を確保しつつ、該無線通信システムに新たに参入することができる。
また、本発明の第11の態様によれば、無線端末は、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムに参入している無線端末であって、前記無線通信システムに参入している無線端末では、前記ビーコン信号が上位機器となる無線端末から下位機器となる無線端末へと定期的に送信されており、当該無線通信システムへの新規参入時に下位機器となる無線端末が、接続先として決定した上位機器の無線端末から受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルAとし、前記上位機器の無線端末から定期的に受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルBとし、前記受信レベルAから受信レベルの低下が許容される範囲で設定された値を所定レベルCとしたとき、前記下位機器として機能する無線端末は、受信レベルBが受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったか否か判定する受信レベル判定手段と、前記受信レベル判定手段により、受信レベルBが受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったと判定された場合、接続先とする上位機器となる無線端末を再度決定する再接続先決定手段と、をさらに備える。
上記した構成によると、受信レベル判定手段を備えるため、例えば、下位機器として機能する無線端末は、自局(自身)を取り巻く電波状況が変化し、上位機器となる無線端末から定期的に受信するビーコン信号の受信レベルが低下したか否か判定することができる。特に、受信レベル判定手段は、受信レベルの低下が受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となるものかどうか判定することができる。このため、定期的に上位機器となる無線端末から受信するビーコン信号の受信レベルが、受信レベルAの値から低下が許容される範囲を超えて大きく低下したか否か判定することができる。
また、再接続先決定手段を備えるため、定期的に受信するビーコン信号の受信レベルが、受信レベルAの値から低下が許容される範囲を超えて大きく低下した場合に、接続先とする上位機器の無線端末を再度決定することができる。
このため、本発明の第11の態様に係る無線端末では、定期的に受信するビーコン信号の受信レベルの変動に応じて、頻繁に接続先の見直しを行なうことがなく、受信したビーコン信号の受信レベルが所望の通信品質を満たさなくなるような場合にのみ接続先の見直しを行うことができる。そして、接続先となる無線端末を再度、決定しなおして親無線端末までのルート変更を行うことができる。このため、従来技術のように中継ルートの変更を行うために、すべての無線端末が他の無線端末に対して電界強度測定用信号を定期的に送信したり、すべての無線端末が他の無線端末が送信した電界強度測定用信号をすべて受信したりする必要がない。すなわち、従来技術のように中継ルートを変更させるために各無線端末間で実施される信号の送受信回数が多くなることがないため、トラフィックが増大するという問題や電力消費が大きくなるという問題を防ぐことができる。
また、本発明の第12の態様によれば、無線端末の制御方法は、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムに新規参入する無線端末の制御方法であって、前記親無線端末および前記中継無線端末は、該親無線端末との通信を実施するために経由する他の中継無線端末数を示す情報である中継無線端末数情報を含んだビーコン信号を送信するよう構成されており、受信したビーコン信号それぞれの受信レベルを測定するステップと、受信したビーコン信号それぞれから前記中継無線端末数情報を取得するステップと、測定されたビーコン信号の受信レベルが所定値以上であり、かつ、取得された中継無線端末数情報に基づき、該中継無線端末数が最も少ないビーコン信号の発信元となる無線端末を、接続先に決定するステップと、を含む。
また、本発明の第13の態様によれば、無線端末の制御方法は、複数の無線端末から構成され、該無線端末として、最下位となる複数の子無線端末と、これら子無線端末との間で無線通信を行う最上位の親無線端末と、前記子無線端末および親無線端末の間に介在し、これらの間で無線通信の中継を行う中継無線端末とを備えている無線通信システムに参入し、下位機器として機能する無線端末の制御方法であって、前記無線通信システムに参入している無線端末では、前記ビーコン信号が上位機器となる無線端末から下位機器となる無線端末へと定期的に送信されており、前記無線通信システムへの新規参入時に下位機器となる無線端末が、接続先として決定した上位機器の無線端末から受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルAとし、前記上位機器の無線端末から定期的に受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルBとし、前記受信レベルAから受信レベルの低下が許容される範囲で設定された値を所定レベルCとしたとき、受信レベルBが受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったか否か判定するステップと、受信レベルBが受信レベルAから所定レベルCを引いた値以下となったと判定された場合、接続先とする上位機器となる無線端末を再度決定するステップと、を含む。
なお、上記無線端末は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記無線端末をコンピュータにて実現させる無線端末の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
[無線通信システムの概略構成]
本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの構成について図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの通信エリア構成を示す一例である。図2は本発明の実施の形態1に係る無線通信システムの階層構造の一例を示す図である。
図1および図2に示すように、実施の形態1に係る無線通信システムは、無線端末として、親無線端末101、中継無線端末201,301,401,501,601、および子無線端末102〜104,202〜204,302〜304,402〜404,502〜504を備えてなる構成である。なお、図2では、説明の便宜上、親無線端末を1台、中継無線端末を5台(中継無線端末201,301,401,501,601)、子無線端末を15台(子無線端末102〜104,202〜204,302〜304,402〜404,502〜504)を図示している。しかしながら、無線通信システムの構成はこれに限定されるものではなく、これら無線端末は、図示されている台数を超えて含まれてもよいし、図示されている台数未満であってもよい。無線通信システムを構築する目的に応じて適宜、中継無線端末および子無線端末が備えられる。
なお、親無線端末101、中継無線端末201,301,401,501,601、および子無線端末102〜104,202〜204,302〜304,402〜404,502〜504を特に区別して説明する必要がない場合、単に無線端末と称するものとする。
親無線端末101および中継無線端末201,301,401,501は、ビーコン信号を送信する側の無線端末であり、また、中継無線端末201,301,401,501と、子無線端末102〜104,202〜204,302〜304,402〜404,502〜504は、ビーコン信号を受信する側の無線端末である。つまり、中継無線端末201,301,401,501は、ビーコン信号を送受信できる無線端末であると言える。
無線通信システムでは、例えば、図2に示すように、子無線端末102〜104は、直接、親無線端末101と通信することができる。より具体的には、親無線端末101は、子無線端末102〜104および中継無線端末201それぞれに対してビーコン信号を送信可能であるとともに、子無線端末102〜104および中継無線端末201との間で、それぞれ無線によるデータ通信が可能となっている。したがって、図2においては、これら無線端末間を、双方向の矢印で結んでいる。また、これら親無線端末101、子無線端末102〜104、および中継無線端末201は、無線通信システムの第一階層のネットワークを構成している。なお、親無線端末101は子無線端末102〜104、および中継無線端末201から見て「上位機器」となる。逆に、親無線端末101から見て子無線端末102〜104、および中継無線端末201は、「下位機器」となる。
子無線端末202〜204は、中継無線端末201を介して親無線端末101との間で通信を確立する。より具体的には、中継無線端末201は、子無線端末202〜204、および中継無線端末301それぞれに対して、ビーコン信号を送信可能であるとともに、子無線端末202〜204および中継無線端末301との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。それゆえ、中継無線端末201は、親無線端末101から見れば「下位機器」となるが、子無線端末202〜204および中継無線端末301から見れば「上位機器」となる。これら中継無線端末201、子無線端末202〜204および中継無線端末301は、無線通信システムの第二階層のネットワークを構成している。
子無線端末302〜304は、中継無線端末301、201を介して親無線端末101との間で通信を確立する。より具体的には、中継無線端末301は、子無線端末302〜304、および中継無線端末401それぞれに対して、ビーコン信号を送信可能であるとともに、子無線端末302〜304および中継無線端末401との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。それゆえ、中継無線端末301は、中継無線端末201から見れば「下位機器」となるが、子無線端末302〜304および中継無線端末401から見れば「上位機器」となる。これら中継無線端末301、子無線端末302〜304および中継無線端末401は、無線通信システムの第三階層のネットワークを構成している。
さらに、子無線端末402〜404は、中継無線端末401,301、201を介して、子無線端末502〜504は、中継無線端末501,401,301、201を介して、親無線端末101との間でそれぞれ通信する。つまり、中継無線端末401は、子無線端末402〜404および中継無線端末501に対してビーコン信号を送信可能であるとともに、これら無線端末(無線端末402〜404,中継無線端末501)との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。そして、これら中継無線端末401と子無線端末402〜404および中継無線端末501とは、無線通信システムの第四階層のネットワークを構成している。また、中継無線端末501は、子無線端末502〜504および中継無線端末601に対してビーコン信号を送信可能であるとともに、これら無線端末(子無線端末502〜504,中継無線端末601)との間でそれぞれデータ通信が可能となっている。そして、これら中継無線端末501と子無線端末502〜504および中継無線端末601とは、無線通信システムの第四階層のネットワークを構成している。
このように、無線通信システムは、上位機器となる無線端末と、下位機器となる無線端末とによって多階層のネットワークを構築できるようになっている。なお、中継無線端末を1台介して親無線端末と接続する場合を中継段数一段、中継無線端末をn台介して親無線端末と接続する場合を中継段数n段と称するものとする。
次に、図1を参照しながら、実施の形態1に係る無線通信システムにおける通信エリアについて説明する。エリアS−1は、親無線端末101と所定の通信品質で通信できるエリアを示している。すなわちエリアS−1の範囲は親無線端末101からの電波(ビーコン信号を搬送する電波)の受信レベル、すなわち電界強度が第一所定値以上となる範囲である。第一所定値とは、例えば、熱雑音レベル等を含む、一般的な環境下において情報を伝える信号に妨害を与える雑音レベルを考慮して決めることができる。実施の形態1では、この第一所定値を、例えば−100dBmに設定する。
エリアS−2、S−3、S−4それぞれは、中継無線端末201、301、401と所定の通信品質で通信できるエリアを示している。すなわちエリアS−2、S−3、S−4の範囲は各中継無線端末からの電波の受信レベルが第二所定値以上となる範囲である。第二所定値は、第一所定値と同じであっても良いし、例えば−90dBmのように第一所定値(−100dBm)よりも大きな値に設定しても良い。第二所定値は、例えば、無線通信システムが実際に設置される環境下での人の動き、または壁等の障害物の有無を考量し、第一所定値よりもマージンをとった値とすることが好ましい。なぜならば、中継段数nが大きくなると通信エリア1つあたりの通信品質が所望の通信品質以上であってもシステム全体の通信品質でみると劣化し、所望の通信品質以下になってしまう可能性があるからである。従って中継無線端末によってカバーできる通信エリアは親無線端末101によってカバーできる通信エリアよりも通信品質を高めに設定することが望ましい。
なお、無線通信システムにおける中継段数によっては、第二所定値をさらに細かく分けて、複数の閾値としても良い。また、上記では親無線端末101によってカバーできる通信エリアを、親無線端末101から送信された電波の受信レベルが第一所定値以上となる範囲として定めていた。しかしながら、中継段数m未満に属する親無線端末101および中継無線端末201・・・までは、そのカバーできる通信エリアを、上述した第一所定値以上となる範囲として定めてもよい。
ところで、図1では、例えば、子無線端末102は親無線端末101の通信エリアS−1、中継無線端末201の通信エリアS−2、および中継無線端末301の通信エリアS−3の3つのエリアに入っている。すなわち子無線端末102は、親無線端末101から送信された電波を第一所定値以上の受信レベルで受信できる状態にある。さらに子無線端末102は、中継無線端末201および中継無線端末301から送信された電波を第二所定値以上の受信レベルで受信できる状態にもある。また、子無線端末102は、物理的には、中継無線端末201と最も近接しており、中継無線端末201から送信された電波の受信レベルが一番大きい。
このような状態において、実施の形態1では、子無線端末102は、距離的に最も近接する中継無線端末201を接続先に選択するのではなく、接続先の中で中継段数の最も小さい無線端末、すなわち図1の例では親無線端末101を接続先とする。
なお、子無線端末102は、接続先とできる無線端末(親無線端末101および中継無線端末201,301)が複数ある場合、それぞれの無線端末からビーコン信号に重畳されて受信した、後述する中継段数情報(中継無線端末数情報)に基づき中継段数の大小を判断し、中継段数の最も小さい無線端末を接続先とすることができる。
すなわち、中継段数情報はビーコン信号に重畳されているため、子無線端末102は、ビーコン信号を受信すれば該ビーコン信号を送信している無線中継端末の中継段数を知ることができる。したがって、子無線端末102は無線通信システムへの参入時に複数のビーコン信号を受信すると、受信したビーコン信号の受信レベルが第一所定値または第二所定値以上であるか否か判断する。さらに、受信したビーコン信号に重畳された中継段数情報より接続先とすべき無線端末を選択する。
また、子無線端末202、302も同様に複数の中継無線端末の通信エリアに属しているが、中継段数の最も少ない中継無線端末を接続先として選択する。その結果、子無線端末202は中継無線端末201を接続先とし、子無線端末302は中継無線端末301を接続先とする。すなわち、図2に示すツリー構造で表現すると、子無線端末202は中継無線端末201の下に、子無線端末302は中継無線端末301の下にそれぞれ従属した状態にあると言える。
なお、子無線端末402のように、1つの中継無線端末(中継無線端末401)の通信エリアだけに属している場合は、中継無線端末401を接続先とする。すなわち、子無線端末402は、中継無線端末401の下に従属する。
一方、子無線端末303のように、親無線端末101および中継無線端末201,301,401のいずれの通信エリアにも属さない場合は、子無線端末303は、最も大きな受信レベルで通信ができる親無線端末101あるいは中継無線端末201,301,401を接続先とする。例えば、中継無線端末301から受信した電波の受信レベルが最も大きい場合、子無線端末303は、中継無線端末301を接続先とし、この中継無線端末301の下に従属する。
ここで、各無線端末間で送信されるビーコン信号について詳細に説明する。ビーコン信号の信号フォーマットは図3に示すフレーム構成となっている。図3は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システムにおいて各無線端末間で送信されるビーコン信号のフレーム構成の一例を示す図である。
すなわち、ビーコン信号のフレーム構成は、ビット同期信号58、フレーム同期信号59、制御信号60、およびビーコンID62から構成されている。なお、ビーコン信号のフレーム長はT6となる。
ビット同期信号58は、ビットのサンプリング位置を決定するための信号であり、フレーム同期信号59は、ビーコン信号に含まれるデータの先頭を検出するための信号である。また、制御信号60は、各種制御情報が記録された信号であり、中継段数情報、およびビーコンIDに関する情報等が含まれる。ビーコンIDは、ビーコン信号を送信している無線端末(親無線端末101または中継無線端末201,301,401,501)を識別するための識別子である。ビーコン信号を受信した無線端末は、このビーコンIDを解析することによりビーコン信号の送信元となる無線端末を特定することができる。
[無線端末の構成]
以上説明した無線通信システムが備える無線端末それぞれの構成について図4〜6を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る親無線端末として機能する無線端末の要部構成の一例を示すブロック図である。図5は、本発明の実施の形態1に係る中継無線端末として機能する無線端末の要部構成の一例を示すブロック図である。図6は、本発明の実施の形態1に係る子無線端末として機能する無線端末の要部構成の一例を示すブロック図である。
まず、図4を参照して、実施の形態1に係る親無線端末101の構成について説明する。親無線端末101は、アンテナ1、送受信部2、制御部7、記憶部8、ビーコン送信部3、リンク接続部4、ルート情報解析作成部5、およびタイミング情報送信部6を備えている。
アンテナ1は、所定の帯域の電波を送受信できるものであれば特に限定されず、各種公的な規格で定められている帯域の電波を送受信可能な公知のアンテナが用いられる。
送受信部2は、アンテナ1を介して電波を送受信する際に、データを所定の帯域の無線信号に変調したり、所定の帯域の無線信号をデータに復調したりする無線送受信回路として構成されている。その具体的な構成は特に限定されず、無線通信ネットワークの分野で公知の高周波回路(RF回路)が用いられる。
制御部7は、例えば、CPUで構成され、親無線端末101(無線端末)の動作、特に無線通信動作に関する種々の制御を行う。なお、無線通信動作に関する種々の制御とは、例えば、ビーコン送信部3、リンク接続部4、ルート情報解析作成部5、およびタイミング情報送信部6などの各部に対する制御指示が挙げられる。
記憶部8は、読み書き可能な記録媒体であって、例えば、CPUの内部メモリ、あるいは独立した記憶装置等として構成することができる。記憶部8には、ルート情報テーブルとこれに関する種々の付随情報が記憶されている。なお、ルート情報テーブルには、無線通信システムを構築する全ての無線端末同士のつながりが分かるように、各機器の機器IDの情報が記録されている。つまり、親無線端末101の下位に従属する各無線端末までのつながりが分かるように、目的の無線端末までに経由する機器の機器IDが記録されている。例えば、親無線端末101から中継無線端末201、中継無線端末301を経由して繋がる子無線端末302については、中継無線端末201の機器ID、中継無線端末301の機器ID、子無線端末302の機器IDがそれぞれのつながり(従属関係)が分かるようにテーブルとして記録されている。
ビーコン送信部3は、制御部7からの制御指示に応じて、他の無線端末(後述する中継無線端末201、子無線端末102〜104)に対してビーコン信号を送信するものである。
リンク接続部4は、制御部7からの制御指示に応じて、他の無線端末に対してリンク接続信号50を送信し、無線リンクの接続動作(リンク接続動作)を行なうものである。リンク接続信号50の詳細については後述する。
ルート情報解析作成部5は、制御部7からの制御指示に応じて、中継要求のあった中継無線端末201に関する情報(中継無線端末情報90)を含むルート情報87の解析および作成を行うものである。
タイミング情報送信部6は、制御部7からの制御指示に応じて、子無線端末102等、自身(自局)にとって下位機器となる子無線端末における間欠受信タイミングを特定する情報(間欠受信タイミング情報)の作成および送信を行うものである。
なお、間欠受信タイミング情報は、後述するスロット位置情報91として示される情報である。また、ルート情報87には、中継無線端末情報90に加えてこのスロット位置情報91も含まれている。なお、中継無線端末情報90、スロット位置情報91の詳細については後述する。
ビーコン送信部3、リンク接続部4、ルート情報解析作成部5、およびタイミング情報送信部6の具体的な構成は特に限定されず、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。あるいは、制御部7としてのCPUが、例えば記憶部14または不図示のメモリに格納されているプログラムを読み出し実行することにより実現されるものであってもよい。
次に、図5を参照して中継無線端末の構成について説明する。なお、ここでは説明の便宜上、複数の中継無線端末のうち中継無線端末201を代表させて、その構成について説明する。中継無線端末201は、アンテナ11、送受信部12、ビーコン送信部13、ビーコン受信部14、リンク接続部15、タイミング情報解析部16、および制御部17を備えている。
中継無線端末201が備える部材のうちアンテナ11、送受信部12、制御部17、ビーコン送信部13、リンク接続部15については、その具体的な構成は親無線端末101が備えるアンテナ1、送受信部2、制御部7、ビーコン送信部3、リンク接続部4の構成と同様である。このため、これらの部材についての説明は省略するものとする。ただし、リンク接続部15は、中継無線端末201が親無線端末101から送信されたリンク接続信号50を受信することにより、リンク接続動作を行っている点でリンク接続部4と異なる。
ビーコン受信部14は、例えば親無線端末101など自身(自局)よりも上位機器から送信されたビーコン信号に基づき、当該中継無線端末201の接続先となる無線端末を決定するものである。より具体的にはビーコン受信部14は、図7に示すように中継段数解析部(取得手段)1001、受信レベル測定部(測定手段)1002、および所属無線端末決定部(決定手段)1003を有する。図7は、本発明の実施の形態1に係る無線端末のビーコン受信部14の構成の一例を示すブロック図である。これら中継段数解析部1001、受信レベル測定部1002、および所属無線端末決定部1003は、ビーコン受信部14で実現する機能の一部であり、これらの部材によって、接続先とする無線端末を決定する。
中継段数解析部1001は、受信したビーコン信号を解析して、中継段数を把握するものである。すなわち、中継段数解析部1001は、ビーコン信号を解析して、このビーコン信号の送信元である無線端末を介して親無線端末101と通信を行った場合の中継段数を把握する。
受信レベル測定部1002は、受信したビーコン信号の受信レベルを測定するものである。
所属無線端末決定部1003は、中継段数解析部1001によって解析された結果と、受信レベル測定部1002によって測定された受信レベルの結果とに基づき、中継無線端末201の接続先となる無線端末を決定し、その結果を制御部17に通知するものである。
すなわち、中継無線端末201が電源ONされ、無線通信システムに新たに参加すると、所定期間でビーコン信号をビーコン受信部14が受信するように構成されている。そして、所定期間で受信した全てのビーコン信号に対して、中継段数解析部1001は、ビーコン信号に含まれる中継段数情報より該ビーコン信号を送信した無線端末を介して接続を行なったときの中継段数を求める。一方、受信レベル測定部1002は、受信したすべてのビーコン信号の受信レベルを測定する。そして、所属無線端末決定部1003が、中継段数解析部1001による解析結果と、受信レベル1002による測定結果とに基づき、接続先とする無線端末を決定し、その決定した内容を制御部17に通知する。
タイミング情報解析部16は、制御部17からの制御指示に応じて、スロット位置情報を含むルート情報87の解析および作成を行うものである。
なお、これらビーコン受信部14およびタイミング情報解析部16も論理回路等として構成されてもよいし、制御部17が不図示のメモリ等からプログラムを読み出し、実行することで実現されるものであってもよい。
次に、図6を参照して子継無線端末の構成について説明する。なお、ここでは説明の便宜上、複数の子無線端末のうち子無線端末102を代表させて、その構成について説明する。子無線端末102は、アンテナ21、送受信部22、制御部26、記憶部27、ビーコン受信部23、リンク接続部24、およびタイミング情報送信部25を備えている。アンテナ21、送受信部22、制御部26、記憶部27、リンク接続部24、およびタイミング情報送信部25の具体的な構成は親無線端末101が備えるアンテナ1、送受信部2、制御部7、記憶部8、リンク接続部4、およびタイミング情報送信部6と同様であるため、その説明は省略する。また、ビーコン受信部23については、中継無線端末201が備えるビーコン受信部14の構成と同様であるため、その説明は省略するものとする。
また、図4〜図6に示す無線端末は、後述するように時間軸上を複数のスロットに分割して通信を行う構成となっている。そして、ビーコン送信用に用意されたスロット(ビーコン送信用スロット31)で、ビーコン送信部3またはビーコン送信部13を用いてビーコン送信を行う。また、ビーコン受信用に用意されたスロット(ビーコン受信用スロット34)で、ビーコン受信部14またはビーコン受信部23を用いてビーコン受信を行う。さらには、リンク接続用のスロット(リンク接続用スロット32,35)で、リンク接続部4、リンク接続部15、またはリンク接続部24を用いてリンク接続動作が実施される。
(接続先決定処理)
次に上述した構成を有する中継無線端末または子無線端末による接続先決定処理について図8を参照して説明する。図8は本発明の実施の形態1に係る中継無線端末および子無線端末による接続先決定処理の一例を示すフローチャートである。
実施の形態1では、無線端末(中継無線端末または子無線端末)が新たに無線通信システムに配置された場合、新たに配置された無線端末は、自局の接続先となる他の無線端末を決定するように構成されている。
具体的には、無線端末は以下のようにして接続先となる他の無線端末を決定する。なお、以下では、説明の便宜上、図1に示す無線通信システムにおいて子無線端末302が新たに配置されたものとして説明する。
まず、子無線端末302では、ビーコン受信部23が、自身(自局)よりも上位機器から送信されたビーコン信号を受信する(ステップS11)。ビーコン信号を受信すると、ビーコン受信部23の有する受信レベル測定部1002が、受信したビーコン信号の中で、受信レベルが所定値以上となるビーコン信号があるか否か判定する(ステップS12)。実施の形態1に係る子無線端末302では、受信レベル測定部1002が、受信したビーコン信号の中で、受信レベルが上述した第2所定値以上となるビーコン信号があるか否か判定する。
ここで、受信レベルが所定値以上となるビーコン信号があると判定した場合、ビーコン受信部23では、受信レベルが所定値以上となるビーコン信号のうち、中継段数が最小のビーコン信号を抽出する(ステップS13)。上述したように各ビーコン信号には中継段数情報が重畳されている。そこで、中継段数解析部1001は、受信レベルが所定値以上となるビーコン信号それぞれについて、中継段数情報を確認し、中継段数が最小となるビーコン信号を抽出する。そして、所属無線端末決定部1003は、中継段数解析部1001によって抽出されたビーコンの発信元の無線端末を接続先に決定する(ステップS14)。
なお、実施の形態1では、子無線端末302の受信レベル測定部1002により受信レベルが所定値以上となると判定されたビーコン信号は、中継無線端末301から送信されたビーコン信号と中継無線端末401から送信されたビーコン信号となる。この中で、中継段数解析部1001により中継段数が最小であると判定されたビーコン信号は、中継無線端末301から送信されたビーコン信号である。
そこで、所属無線端末決定部1003は、中継段数解析部1001によって抽出されたビーコン信号の発信元である中継無線端末301を接続先に決定する。
一方、ステップS12においてNOの場合、すなわち、受信レベル測定部1002が、受信レベルが所定値以上となるビーコン信号がないと判定した場合、受信したビーコン信号の中で受信レベルが最大となるビーコン信号の発信元を接続先に決定する(ステップS15)。
以上のようにして無線通信システムにおいて新たに設置された無線端末は、自身(自局)の接続先を決定し、自身が直接、所属する上位機器を決定することができる。
なお、実施の形態1では、無線端末が受信したビーコン信号の発信元が親無線端末101の場合、そのビーコン信号の受信レベルが第一所定値以上であるのか否か受信レベル測定部1002が判定する。一方、無線端末が受信したビーコン信号の発信元が、親無線端末101よりも下位にある中継無線端末からの場合、そのビーコン信号の受信レベルが第二所定値以上であるのか否かを受信レベル測定部1002が判定するように構成されている。このように、ビーコン信号の発信元が親無線端末であるのか、中継無線端末であるのかに応じて、ビーコン信号の受信レベルを判定する閾値を変える構成の場合、以下の図9に示すように事前に接続先が親無線端末となるのかそれ以外の無線端末(中継無線端末)となるのか判断した上で、上記した接続先決定処理を実施するように構成されていてもよい。なお、図9は、本発明の実施の形態1に係る中継無線端末および子無線端末による接続先決定処理の一例を示すフローチャートである。
より具体的には、子無線端末302において、ビーコン受信部23は、新たに無線通信システムに配置され、所定期間内に受信できたビーコン信号があるか否か判定する(ステップS21)。ここで、ビーコン受信部23がビーコン信号を受信できなかった場合(ステップS21において「NO」)、子無線端末302の無線通信システムへの参入が不可であると判断する(ステップS25)。
一方、ステップS21において「YES」の場合、中継段数解析部1001が、受信したビーコン信号のうち、中継段数が“0”となるビーコン信号の有無を確認する(ステップS22)。ここで、中継段数解析部1001は、中継段数が“0”となるビーコン信号があると判断した場合(ステップS22において「YES」)、このビーコン信号の受信レベルが第一所定値以上であるか否か受信レベル測定部1002が判定する(ステップS23)。ここで、受信レベル測定部1002がビーコン信号の受信レベルが第一所定値以上であると判定した場合(ステップS23において「YES」)、所属無線端末決定部1003は、親無線端末101を接続先に決定する(ステップS24)。
一方、ステップS22において「NO」の場合、すなわち、受信したビーコン信号の中に中継段数“0”のビーコン信号がない場合、受信レベル測定部1002は、受信したビーコン信号のうち、受信レベルが第二所定値以上となるビーコン信号があるか否か判定する(ステップS26)。また、ステップS23において「NO」の場合、すなわち、受信した中継段数“0”のビーコン信号の受信レベルが第一所定値以上ではないと受信レベル測定部1002が判定した場合も、ステップS26にすすむ。
ステップS26で、受信レベル測定部1002が、受信レベルが第二所定値以上となるビーコン信号があると判定した場合(ステップS26において「YES」)、ステップS27に進む。一方、受信レベル測定部1002が、受信レベルが第二所定値以上となるビーコン信号がないと判定した場合(ステップS26において「NO」)、ステップS29に進む。これ以降のステップS27からステップS29までの処理は、図8に示すステップS13からステップS15までの処理と同様であるため説明は省略する。
[無線通信システムにおける各無線端末の動作]
次に、再度、図2を参照しながら、無線通信システム全体における各無線端末の動作の概要について詳しく説明する。親無線端末101は子無線端末102〜104とは直接、接続することができるが、子無線端末202〜204,302〜304,402〜404,502〜504とは電波状況が悪く直接、接続して通信を確立させることができないものとする。そこで、親無線端末101は、中継無線端末201,301,401,501等を介して子無線端末202〜204,302〜304,402〜404,502〜504と接続するように構成されている。
また、上位機器である親無線端末101からはビーコン信号(時計あわせのための信号を含む)が定期的に送信されている。そして、親無線端末101と直接、接続している子無線端末102〜104、および中継無線端末201の下位機器は、このビーコン信号を定期的に捕捉し、親無線端末101の時計と同期を取る。
一方、子無線端末202〜204および中継無線端末301に対しては、中継無線端末201が上位機器として働き、ビーコン信号をこれら子無線端末202〜204および中継無線端末301に定期的に送信する。中継無線端末201に直接、接続している子無線端末202〜204および中継無線端末301の下位機器は、このビーコン信号を定期的に捕捉し、中継無線端末201の時計と同期を取る。以下同様に、子無線端末302〜304および中継無線端末401に対しては、中継無線端末301が上位機器として働き、子無線端末402〜404および中継無線端末501に対しては、中継無線端末401が上位機器として働き、子無線端末502〜504に対しては、中継無線端末501が上位機機器として働く。そして、各中継無線端末301,401,501の下位機器となる無線端末は、それぞれ自身の上位機器から定期的に送信されるビーコン信号を定期的に補足し、この上位機器の時計と同期を取る。
[無線端末のスロット構成およびスロット位置関係]
ここで、子無線端末が中継無線端末あるいは親無線端末を接続先とし、中継無線端末あるいは親無線端末に対する下位機器として従属する方法についてより具体的に説明する。子無線端末が下位機器として他の無線端末に従属する方法について説明する前に各無線端末で管理するスロット構成について図10および図11を参照して説明する。図10は本発明の実施の形態1に係る無線端末で管理するスロット構成の一例を示す図である。また、図11は、図10に示すスロット(基本スロット40)に含まれるリンク接続スロット32,35の一例を示す図である。
本実施の形態に係る無線通信システムでは、「上位機器」の無線端末と「下位機器」の無線端末との間で時分割多重方式によりデータ通信を行っている。そのため、無線通信の1周期は複数のタイムスロット(基本スロット40)に分割され、各タイムスロット(基本スロット40)には所定の通信データ(無線信号)が割り当てられて通信されることになる。
(タイムスロットの基本構成)
時分割多重方式においては、無線通信を予め設定される所定時間毎に区切り、この所定時間(1周期)をさらに複数のタイムスロットに区分する。図10に示すように、基本となるタイムスロット(基本スロット40)は、その長さ(スロット長)がT1秒(例えばT1=2秒)に設定され、通信時には、この基本スロット40が1周期の時間軸上で繰り返されることになる。実施の形態1では、1周期を256個の基本スロット40で構成しており、この256個の基本スロット40が周期ごとに繰り返される。
基本スロット40は、さらに下位スロット41および上位スロット42の2つのタイムスロットで構成されている。下位スロット41および上位スロット42のそれぞれのスロット長は、基本スロット40のスロット長であるT1の半分(1/2×T1)に設定されている。下位スロット41は下位機器と通信するためのタイムスロットであり、上位スロット42は上位機器と通信するためのタイムスロットである。
下位スロット41は、さらにビーコン送信用スロット31(図中BT)、リンク接続用スロット32(図中L)、およびデータ通信用スロット33(図中D)の3つのタイムスロットに分割されている。同様に上位スロット42も、ビーコン受信用スロット34(図中BR)、リンク接続用スロット35(図中L)、およびデータ通信用スロット36(図中D)の3つのタイムスロットに分割されている。
ここで、無線端末が上位機器として振舞う場合、ビーコン送信部3,13(図4,5参照)が、ビーコン送信用スロット31で下位機器に対して定期的にビーコン信号を送信する。ビーコン信号は、ビーコン送信用スロット31で必ず送信されてもよいし、複数回に1回毎のビーコン送信用スロット31で送信されてもよい。例えば、ビーコン送信部3,13は、ビーコン信号を、2回に1回毎のビーコン送信用スロット31で送信する(2スロット毎で送信する)ように設定した場合、T1=2秒であればビーコン信号の送信間隔は4秒となる。
また、無線端末が下位機器であれば、ビーコン受信部14,23(図5,6参照)が、ビーコン受信用スロット34で定期的に上位機器からのビーコン信号を受信する。ビーコン信号の受信間隔は、当該ビーコン信号の送信間隔の整数倍に設定することができる。例えば、送信間隔が2秒であって受信間隔を送信間隔の256倍に設定すれば、当該受信間隔=8分32秒となる。
また、無線端末が上位機器であっても下位機器であっても、リンク接続部4,15,24(図4〜6参照)が、リンク接続用スロット32,35でリンク接続動作を行う。なお、実施の形態1に係る無線通信システムでは、無線端末間でデータ通信を行うことができる構成であるが、このデータ通信はリンク接続動作の後に行われる。つまり、リンク接続用スロット32,35に続くデータ通信用スロット33,36でデータ通信(データのやり取り)を行っている。
ここで、リンク接続用スロット32,35は、図11に示すように、下位発呼用スロット37および上位応答/上位発呼用スロット38の2つのタイムスロットから構成されている。下位発呼用スロット37は、下位機器から上位機器にリンク接続したいときに当該下位機器がリンク接続信号50を送信するためのタイムスロットである。また、上位応答/上位発呼用スロット38は、下位機器からのリンク接続信号50に対して上位機器が応答を返すためのタイムスロット、あるいは上位機器から下位機器にリンク接続したいときに当該上位機器からリンク接続信号50を送信するためのタイムスロットである。
なお、リンク接続用スロット32,35のスロット長は特に限定されない。図11に示す例では、下位発呼用スロット37のスロット長がT2に設定され、上位応答/上位発呼用スロット38のスロット長がT3に設定されている。そして、図面上では、スロット長T2とスロット長T3とがほぼ同じ長さ(T2=T3)となっているが、もちろんこれに限定されず、リンク接続信号50の送信または応答に応じて適切なスロット長が設定されればよい。
(タイムスロットの位置関係)
次に、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて、上位機器および下位機器の間でのタイムスロットの位置関係を、図12を参照して具体的に説明する。図12は、各無線端末で管理する、図10に示すタイムスロット(基本スロット40)の位置関係の一例を示す図である。図12では、図2に示す無線通信システムにおいて、親無線端末101と第三階層の子無線端末302,303との間に、2台の中継無線端末201,301が介在し、親無線端末101と第四階層の子無線端末402との間に、3台の中継無線端末201,301,401が介在している場合を例に挙げて、各無線端末の1周期内でのタイムスロットの位置関係を説明している。
また、図12に示す基本スロット40において、下位スロット41を図中で「下」と記載し、上位スロット42を図中で「上」と記載するものとする。また、「上」、「下」に対応付けられその上段に付された番号は、基本スロット40のスロット番号を示している。
図12に示す例では、親無線端末101、中継無線端末201,301,401、および子無線端末302,303,402においては、1周期が256個の基本スロット40に分割され、各基本スロット40は、1から256までのスロット番号が付与されている。そして、最後のスロット番号256の基本スロット40の次には、最初のスロット番号1の基本スロット40が位置することになる。
なお、以下の説明では、便宜上、スロット番号Xの基本スロット40を「No.X−基本スロット40」と記載する。
また、図12においては、親無線端末101と中継無線端末201との間では、定期的に第一階層のビーコン信号Biが送信され、中継無線端末201と中継無線端末301との間では、第二階層のビーコン信号Biiが送信され、中継無線端末301と子無線端末302,303、および中継無線端末401それぞれとの間では、第三階層のビーコン信号Biiiが送信されている。
なお、図12では、中継無線端末301から送信されるビーコン信号Biiiのうち、子無線端末302に送信されるビーコン信号Biiiの流れについては実線で、子無線端末303および中継無線端末401に送信されるビーコン信号Biiiの流れについては破線で示されている。また、中継無線端末401と子無線端末402との間では、第四階層のビーコン信号Bivが送信されている。
また、図12においてC1〜C6の矢印で示される信号は、後述するが無線端末が無線通信システムに参入する際に送信する信号(参入要求信号)を示している。
上位機器から下位機器に向かって送信されたビーコン信号Bi〜Bivを、下位機器は、1周期毎に1回受信するように構成されている。この1周期の長さ(周期長)をT4とすれば、図12に示す例では、T4=256×T1となる。例えば、T1=2秒であれば、T4=512秒(8分32秒)となる。また、ビーコン信号Bi〜Bivは、2回に1回毎(1回置き)のビーコン送信用スロット(BT)31の周期で上位機器から送信される。したがって、2つの基本スロット40で1回の周期でビーコン信号Bi〜Biiiが送信されることになり、ビーコン信号Bi〜Biiiの送信間隔T5=2×T1となる。例えば、T1=2秒であれば、T5=4秒となる。
なお、図12においては、1周期内で送受信されるビーコン信号Bi〜Biiiの序数を括弧書きで示している。例えば、中継無線端末201から中継無線端末301に送信される第二階層のビーコン信号Biiについて見れば、No.1−基本スロット40で送信される1番目のビーコン信号Biiは「Bii(1)」と記載し、No.3−基本スロット40で送信される2番目のビーコン信号Biiは「Bii(2)」と記載し、No.255−基本スロット40で送信されるm番目のビーコン信号Biiは「Bii(m)」と記載している。
以上のように、例えば、親無線端末101より送信されるビーコン信号は中継無線端末201によって定期的に受信される。また、実施の形態1に係る無線通信システムでは、中継無線端末201は親無線端末101のスロット番号1から送信されるビーコン信号Bi(1)を受信するように構成されている。スロット番号1から送信されるビーコン信号Bi(1)にはビーコン番号1の情報が含まれている。そして、中継無線端末201でビーコン番号1のビーコン信号Bi(1)を受信すると親無線端末101の基本スロット番号1の下位スロットの先頭位置を中継無線端末201の基本スロット番号255の上位スロットの先頭位置となるようにスロットを構成しなおす。そして、中継無線端末201は親無線端末101と同様に奇数番目の基本スロット番号でビーコン信号を送信する。以下同様の動作で下位機器は上位機器の基本スロット番号1から送信されるビーコン信号を受信し、上位機器のタイミングに同期して自局のスロットを構成しなおす。なお、下位機器が上位機器のビーコン信号を受信する間隔は基本スロット256個ごとであるので、受信間隔=8分32秒である。
[ビーコン信号の送受信動作]
以下において、上記した図12に加え図13を参照して、上位機器から下位機器に対するビーコン信号Bi〜Bivの送信動作と、下位機器におけるビーコン信号Bi〜Bivの受信動作とについてより具体的に説明する。図13は、各無線端末で管理する、図10に示すタイムスロット(基本スロット40)の位置関係の一例を示す図である。なお、図13では、各基本スロット40を構成する下位スロット41および上位スロット42を、それぞれ図10に示す3つのタイムスロットに区分して記載している以外は、図12と同様の位置関係を示している。ただし、図13では、説明の便宜上、図12に示した中継無線端末201,301,401のうち、中継無線端末201,301を図示している。さらに、子無線端末302,303,402のうち子無線端末302のみを図示している。
図12および図13に示す例では、最上位の上位機器は親無線端末101であり、親無線端末101からはT5=2×T1の周期で定期的に第一階層のビーコン信号Biが下位機器に対して送信される。また、上位機器(親無線端末101)はNo.1−基本スロット40の下位スロット41に含まれるビーコン送信用スロット31から1番目のビーコン信号Bi(1)を送信する。2番目に下位機器に向かって送信されるビーコン信号Bi(2)は、No.3−基本スロット40で送信され、3番目のビーコン信号Bi(3)は、No.5−基本スロット40から送信され、4番目のビーコン信号Bi(4)は、No.7−基本スロット40から送信される(ビーコン信号Bi(4)は図13には図示せず)。その後、奇数のスロット番号の基本スロット40から順次ビーコン信号Biが送信され、再びNo.1−基本スロット40に戻ると、1番目のビーコン信号Bi(1)が送信される。
一方、親無線端末101の直下に属する下位機器は中継無線端末201であるが、この中継無線端末201は、親無線端末101から送信されるビーコン信号Biを定期的に受信している。すなわち、中継無線端末201は、ビーコン信号Biを1周期ごとに受信しており、図12に示す例では、中継無線端末201は、親無線端末101から1番目のビーコン信号Bi(1)が送信されるたびに、このビーコン信号Bi(1)を基本スロット40の上位スロット42に含まれるビーコン受信用スロット34で受信する。中継無線端末201は、ビーコン信号Bi(1)を受信すると、親無線端末101のNo.1−基本スロット40のスロット位置に、当該中継無線端末201のNo.255−基本スロット40のスロット位置を合わせる。
具体的には、図13に示すように、中継無線端末201は、No.1−基本スロット40の下位スロット41の先頭位置であるビーコン送信用スロット31(図中BT)が、No.255−基本スロット40の上位スロット42の先頭位置であるビーコン受信用スロット34(図中BR)に対応するように、自局のタイムスロットを構成し直す。つまり、中継無線端末201は、No.255−基本スロット40のビーコン受信用スロット34のスロット位置を、親無線端末101のNo.1−基本スロット40のビーコン送信用スロット411のスロット位置に合わせるように時計合わせする。
なお、図12では、ビーコン信号Bi〜Bivを受信するタイムスロットを黒く塗りつぶしている。すなわち、図12では、下位機器のNo.255−基本スロット40の上位スロット42を黒く塗りつぶして示している。また、図13では、下位機器が位置合わせ(時計合わせ)したビーコン受信用スロット421を網掛けで示している。
ここで、中継無線端末201は、親無線端末101等とともに第一階層を構成するとともに、中継無線端末301等とともに第二階層を構成している(図2参照)。このため、中継無線端末201から見て中継無線端末301は直下に属する下位機器となる。そして、中継無線端末201からは、奇数のスロット番号の基本スロット40から第二階層のビーコン信号Biiが下位機器に対して送信される。中継無線端末301は、上位機器である中継無線端末201のビーコン信号Biiのうち、1番目のビーコン信号Bii(1)を受信して、中継無線端末201のNo.1−基本スロット40と中継無線端末301のNo.255−基本スロット40とのスロット位置を合わせるよう、自局のタイムスロットを再構成する。
また、中継無線端末301は、子無線端末302等とともに第三階層を構成している(図2参照)ので、中継無線端末301から子無線端末302に対しても、T5の間隔で、奇数のスロット番号の基本スロット40から第三階層のビーコン信号Biiiが送信される。子無線端末302は、中継無線端末201および中継無線端末301と同様に、1番目のビーコン信号Biii(1)を受信して、中継無線端末301のNo.1−基本スロット40と子無線端末331のNo.255−基本スロット40とのスロット位置を合わせるよう、自局のタイムスロットを再構成する。
図12および図13に示す例では、下位機器は、上位機器が2番目のビーコン信号を送信する直前のスロット位置で、1番目のビーコン信号を送信するよう構成されている。また、下位機器は、上位機器が奇数のスロット番号ごとにビーコン信号送信するたびに、このビーコン信号を受信し、上述した時計合わせを行なうのではなく、上位機器が送信するビーコン信号を1周期(T4)ごとに受信し(図12に示す例では、56個の基本スロット40毎に受信し)、時計合わせを行う。
なお、上位機器から下位機器に向かう通信(下方向通信)では、中継無線端末は、全ての上位スロット42のリンク接続用スロット35で間欠的な受信待ち受け(受信キャリアセンス動作)を行い、上位機器からの無線信号を待ち受ける。一方、上位機器は、ビーコン信号を送信した直後のリンク接続用スロット32だけでなく、全ての下位スロット41のリンク接続用スロット32でリンク接続のための無線信号を送信することができる。ここで、受信キャリアセンス動作とは、より具体的には、中継無線端末は、上位機器から受信した電波の受信レベルが所定レベル(第一所定値または第二所定値)以上であるかどうかを検出する。そして、所定のレベル未満であれば待機状態として無線通信を行わず、所定レベル以上であれば上位機器からの後述するリンク接続信号50を受信するという動作である。
また、下位機器から上位機器に向かう通信(上方向通信)では、下位機器は、通信の必要性が生じたときに、直近で送信される上位機器からのビーコン信号を上位スロット42のビーコン受信用スロット34で受信する。そして、次に続くリンク接続用スロット35と上位機器の下位スロット41のリンク接続用スロット32のタイミングを合わせ、リンク接続用スロット35でリンク接続のための無線信号を送信する。一方、上位機器はビーコン信号を送信した直後のリンク接続用スロット32で間欠的な受信待ち受けを行う。
[子無線端末の無線通信システムへの参入]
次に、子無線端末302が無線通信システムに参入する場合の動作について説明する。例えば図12に示すように、無線通信システムが、親無線端末101、中継無線端末201、および中継無線端末301を含む構成であり、この構成の無線通信システムにおいて、例えば子無線端末302を新規に参入させるとする。子無線端末302の電源をONすれば、この子無線端末302は、受信動作を所定時間行う。すなわち、子無線端末302はビーコン送信間隔T5よりも長い期間連続受信状態でビーコン信号の受信動作を行う。この動作を図12に示すようにサーチモードと称する。
このサーチモードの期間に親無線端末101及び中継無線端末201、301、401は必ず1回以上ビーコン信号を送信するように構成されている。ここで子無線端末302がこのサーチモードの期間内に複数のビーコン信号を受信した場合、所定の判断条件に従って、接続先となる無線端末を決定し、自局の時計合わせを行う。このときの判断条件としては、受信したビーコン信号の受信レベル、受信したビーコン信号の送信元の中継無線端末201の中継段数情報となる。
例えば、通信エリアが図1に示す状態となっているとすると、子無線端末302は、中継無線端末301と中継無線端末401とからのビーコン信号Biii、Bivの受信レベルが第二所定値以上であると判定する。そして子無線端末302は、ビーコン信号の受信レベルが第二所定値以上である中継無線端末301および中継無線端末401のうち、中継段数の少ない中継無線端末301を接続先に決定する。
そして、子無線端末302は、中継無線端末301からの第三階層のビーコン信号Biiiを受信して時計合わせを行い、後述するリンク接続要求信号50を中継無線端末301に送信してリンク接続処理を実施する。例えば、子無線端末302が、ビーコン信号Biiiを、No.X−基本スロット40の上位スロット42のビーコン受信用スロット34で受信した場合、これに続くリンク接続用スロット35中の下位発呼用スロット37でリンク接続要求信号50を送信する。そして、子無線端末302は、下位発呼用スロット37に続く上位応答/上位発呼用スロット38で、中継無線端末301から、リンク接続を許可する応答信号を受信する。これにより、中継無線端末301と子無線端末302との間で無線リンクの接続が確立される。
次に、子無線端末302は、中継無線端末301の下に従属するために、No.253−基本スロット40の上位スロットで参入要求信号C1を中継無線端末301宛てに送信し、中継を依頼する。子無線端末302は、この参入要求信号C1を、無線リンク接続を確立させる際に応答信号を受信したリンク接続用スロット35(上位応答/上位発呼用スロット38)に続くデータ通信用スロット36で送信する。
なお、この参入要求信号C1には、最終宛先まで中継伝送するためのフレーム信号(後述するネットワーク層(レイヤ3)フレーム)と、子無線端末302から親無線端末101までのルート情報87とが含まれている。また、この参入要求信号C1の最終宛先は、親無線端末101となっている。このため、中継無線端末201は、子無線端末302から参入要求信号C1を受信すると、自身(自局)の上位機器である中継無線端末201に子無線端末302からの参入要求信号を中継する中継信号C2を送信する。
また、中継無線端末201が中継無線端末301から中継信号C2を受信すると、参入要求信号を中継する中継信号C3を親無線端末101に送信する。親無線端末101は中継信号C3を受信すると、子無線端末302から送信された参入要求信号C1を中継した中継信号C3に基づいて参入許可信号を作成し、中継信号C4,C5、C6を介して子無線端末302宛てに参入許可信号を送信する。以上述べた動作により子無線端末302は中継無線端末301の下に従属することになる。
上述したように、参入要求信号、参入許可信号、および中継信号であるC1〜C6は、図10に示す基本スロット40に含まれるリンク接続用スロット32、35を用いて無線リンクの接続を確立させた後、データ通信用スロット33、36を用いて送受信されている。
ここで、リンク接続用スロットで送受信されるリンク接続信号50の信号フォーマットについて図14および図15を参照して説明する。図14は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システムにおいて、無線端末間で送信されるリンク接続信号50の信号フォーマットの一例を示す図である。また、図15は、図14に示すリンク接続信号50中に含まれる繰り返しフレームのフレーム構成の一例を示す図である。
すなわち、図14に示すように、リンク接続信号50はn個の繰返しフレーム51と本体フレーム52より構成されている。このうちn個の繰返しフレーム51は、それぞれフレーム番号が1〜nまで付与されている。そして、1つの繰返しフレーム51は、図15に示すように、ビット同期信号58、フレーム同期信号59、制御信号60、および簡易ID61から構成されている。なお、繰返しフレーム51のフレーム長はT6であるので、n個の繰返しフレーム51のフレーム長(繰返し時間)T7=n×T6となる。
繰返しフレーム51を構成するビット同期信号58は、ビットのサンプリング位置を決定するための信号であり、フレーム同期信号59は、繰返しフレーム51に含まれるデータの先頭を検出するための信号である。また、制御信号60は、各種制御情報が記録された信号である。また、簡易ID61は送信先の機器を識別する識別符号(ID)を短縮したものである。短縮していない元のIDのビットサイズが64ビットであれば、簡易ID61は元のIDを4分割して得られる16ビットの情報となる。なお、簡易ID61は発信元の機器を識別する識別符号(ID)を短縮したものとすることもできる。
制御信号60に記載されている制御情報には、簡易ID61に関する情報、繰返しフレーム51のフレーム番号等が含まれる。例えば、簡易ID61に関する情報とは、元のIDを4分割したうちの何れの情報が簡易ID61となっているか、という情報である。また、n個の繰返しフレーム51にそれぞれ付与されているフレーム番号も、制御情報として制御信号60に記載されている。図14に示すように、繰返しフレーム51は、フレーム番号の大きいもの(最大のフレーム番号がn)からフレーム番号が小さくなる順に送信されており、本体フレーム52の直前の繰返しフレーム51のフレーム番号は1となる。
ところで、上述したように上位機器と下位機器との間で送信されるリンク接続要求信号を受信するために、各無線端末は、受信キャリアセンス動作を実施していた。この受信キャリアセンス動作では、上位機器および下位機器がそれぞれ備える内部時計(クロック部)の時間がずれていることを考慮する必要がある。
例えば、上位機器と下位機器の時計の最大相対誤差を±100ppmとし、下位機器が前述したようにビーコン受信間隔=8分32秒で上位機器と時計同期を取っている場合、上位機器と下位機器とは最大±51.2ms、お互いの時計がずれることになる。従って、リンク接続信号50における繰り返しフレーム長(繰り返し時間)をT7とすると、T7>=51.2ms×2=102.4msになるようにリンク接続信号50の繰返しフレーム送信回数nを設定すれば、必ず繰返しフレーム51のところで受信待ちを行うことができる。すなわち、リンク接続要求信号の受信に失敗することは回避される。
(データ通信用信号)
また、上述のようにリンク接続が完了すると子無線端末302は、最終宛先として親無線端末101宛の参入要求信号C1を、図10に示すデータ通信用スロット36でリンク接続が確立している中継無線端末301宛に送信し中継を依頼する構成であった。以下に、上位機器と下位機器との間において、データ通信用スロット36で送受信されるデータ通信用信号60(例えば、参入要求信号C1等)のフォーマットを図16および図17に示す。図16は、本発明の実施の形態1に係る無線通信システムにおいて、各無線端末間で送受信されるデータ通信用信号60の信号フォーマットの一例を示す図である。図17は、図16に示すデータ通信用信号60に含まれるネットワーク層(レイヤ3)フレーム85のフレーム構成の一例を示す図である。
図16に示すように、データ通信用信号60は、ビット同期信号80、フレーム同期信号81、制御信号82、リンク相手のID83、自局ID84、およびネットワーク層フレーム85から構成されている。
ビット同期信号80は、ビットのサンプリング位置を決定するための信号である。また、フレーム同期信号81は、データ通信用信号60に含まれるデータの先頭位置を検出するための信号である。また、制御信号82は、各種制御情報が格納された信号である。なお、制御信号82には、リンク相手のID83の先頭からネットワーク層フレーム85の末尾までの区間の信号長を示す情報も含まれている。このため、例えば、データ通信用信号60を下位機器から上位機器が受信した場合、上位機器は、この制御信号82を解析することにより、このデータ通信用信号60をどこまで受信したらよいか把握することができる。
リンク相手のID83は、データ通信用信号60を送信する相手先、すなわち無線リンクによる接続を確立させた相手先の機器を特定するIDである。例えば、データ通信用信号60を子無線端末302から、その上位機器である中継無線端末301に向かって送信する場合、このリンク相手のID83は、中継無線端末301を特定するIDとなる。また、自局ID84は、データ通信用信号60を送信する機器(送信元機器)を特定するIDである。例えば、データ通信用信号60の送信元が子無線端末302である場合、自局ID84は、子無線端末302を特定するIDとなる。
ネットワーク層フレーム85は、データ通信用信号60を最終宛先まで中継伝送するためのフレーム信号である。つまり、データ通信用信号60を構成する他の信号およびIDは、当該データ通信用信号60を送受信する下位機器および上位機器の組合せに応じて作成されて送信される。これに対して、ネットワーク層フレーム66は、発信元(最初の送信元)である子無線端末302から、中継無線端末201および中継無線端末301を経由して最終宛先である親無線端末101まで送信される。
ネットワーク層フレーム66は、図17に示すように、認証コード86、ルート情報87、ネットワーク層ID88、およびアプリケーションデータ89から構成されている。
認証コード86は、データ通信用信号60の受信側において、ネットワーク層フレーム85が正規のフレームデータであるか否かをチェックするためのコードである。
ルート情報87は、例えば、子無線端末302から親無線端末101までの中継ルートに関する情報である。より具体的には、子無線端末302と親無線端末101との間に介在する中継無線端末(中継無線端末201,301)に関する情報であり、ネットワーク層フレーム85に組み込まれる。このルート情報87は、例えば、子無線端末302から親無線端末101に至るまでに経由する各中継無線端末(中継無線端末201,301)で作成され、ネットワーク層フレーム85に組み込まれる。
ネットワーク層ID88は、データ通信用信号60の発信元である無線端末を示すIDである。例えば、データ通信用信号60の発信元が子無線端末302である場合、ネットワーク層IDは、子無線端末302を示すIDとなる。
アプリケーションデータ89は、データ通信用信号60の最終宛先となる無線端末に伝送するアプリケーションに関するデータである。
次に、ネットワーク層フレーム66に含まれるルート情報87について図18から図20を参照してより具体的に説明する。図18は、本発明の実施の形態1に係るルート情報87の構成の一例を示す図である。図19は、図18に示すルート情報87に含まれる中継無線端末情報90のビット構成を示す図である。図20は、図18に示すルート情報87に含まれるスロット位置情報のビット構成を示す図である。
図18に示すように、ルート情報87は例えば8バイトで構成されている。そして、最初の1バイト目から7バイト目までは子無線端末302から親無線端末101までの中継ルート上にある中継無線端末201,301の情報(中継無線端末情報90)が入っている。一方、8バイト目には、スロット位置情報91が格納されている。
例えば、最上位機器を親無線端末101とし、最下位機器を子無線端末302とし、両者の間に中継無線端末201,301が介在するような無線通信システムでは、子無線端末302は、自身(自局)の属する中継無線端末301、すなわち、自身が直接接続を確立させる接続先の中継無線端末301宛にデータ通信用信号60を送信するように構成されている。そして、ルート情報87における中継無線端末情報90には、データ通信用信号の発信元である子無線端末302から最終宛先である親無線端末101までの中継ルート上に存在する中継無線端末201,301に関する8ビットの情報が格納されている。ここでは、中継無線端末201および中継無線端末301の2台に関する情報が中継無線端末情報90としてルート情報87の1段目および2段目にそれぞれ格納される。なお、ルート情報87には、最大7段目までの中継無線端末情報90を格納することができるようになっている。
ここで中継無線端末情報90のビット構成について具体的に説明すると、図19に示すように、ルート情報87が上位機器から下位機器に送信される場合と、下位機器から上位機器に送信される場合とでは一部のビット構成が異なることとなる。
図19の上段に示す中継無線端末情報90は、下位機器から上位機器に送信される場合に対応している。そして、中継無線端末情報90のデータビットD7は、例えば、中継無線端末201など各段の中継無線端末が管理するテーブルが限界に達しているか否かを識別する識別子となっている。つまり、中継無線端末(例えば、中継無線端末201)は、自局の直下に属する、下位機器の中継無線端末(例えば、中継無線端末301)をテーブルにより管理するように構成されている。そこで、中継無線端末において管理対象となる下位の中継無線端の数が上限に達しているか否かを、識別子により示している。
一方、図19の下段に示す中継無線端末情報90は、上位機器から下位機器に送信される場合に対応している。そして、中継無線端末情報90のデータビットD7は、中継無線端末201など各段の中継無線端末がそれぞれ保有するテーブル番号の削除要求があるか否かを示している。なお、この削除要求は親無線端末101が自身(自局)の下位機器となる中継無線端末に対して行う。つまり、中継無線端末が保有するテーブルは、テーブル番号と管理対象の中継無線端末(下位機器)のIDとの対応が取れるように構成されているが、親無線端末101の要求によりテーブル番号を削除して、特定の中継無線端末201(下位機器)を管理対象から外すか否かを、識別子で識別することができる。
また、上段の中継無線端末情報90のデータビットD6は、直下に属する中継無線端末(下位機器)がテーブルに登録されておらず、今回、初めてテーブルに登録された中継無線端末であるか否かを識別する識別子となっている。一方、下段の中継無線端末情報90のデータビットD6は「0」に固定されている。
次に、上段の中継無線端末情報90および下段の中継無線端末情報90のいずれにおいても、そのデータビットD5〜D0には、中継ルートに介在する中継無線端末が自身(自局)の管理対象とする中継無線端末(下位機器)を示すテーブル番号が格納されている。実施の形態1では、管理できるテーブル番号は「63」までとなっている。すなわち、各中継無線端末は、テーブル番号「0」を除いて、テーブル番号「1」〜「63」までの63個の下位機器となる中継無線端末を管理することができる。
より具体的には、例えば、親無線端末101、その下位機器となる中継無線端末201、この中継無線端末201の下位機器となる中継無線端末301、この中継無線端末301、中継無線端末201を介して親無線端末101と通信を行う子無線端末302とを有するシステムを例に挙げるとルート情報87には以下の情報が格納される。すなわち、ルート情報87の1バイト目には中継無線端末201のテーブル番号が格納され、2バイト目には中継無線端末301のテーブル番号が格納される。そして、3バイト目にはテーブル番号として「0」が格納される。これは、中継無線端末301には、これ以上下位機器となる中継無線端末がないためである。なお、4バイト目以降についてもテーブル番号として「0」が格納される。
言い換えれば、無線通信システムがw階層(w:自然数)で構成されていれば、当該無線通信システムに含まれる中継無線端末の台数(すなわち中継段数)もwとなる。このため、ルート情報87の1〜7バイト目のうち1〜w−1バイト目までは、1〜w−1段目までの中継無線端末のテーブル番号が格納される。そして、wバイト目には、w段目の中継無線端末のテーブル番号が格納されることになるが、当該w段目の中継無線端末は「中継器として最下位」でありテーブル番号が不要なので、テーブル番号として「0」が格納される。
また、ルート情報87の1〜7バイト目には中継無線端末情報90が格納されるが、8バイト目は、前述したようにスロット位置情報91が格納されている。このスロット位置情報91とは、例えば、データ通信用信号の発信元が子無線端末302の場合、自身の直上に位置する中継無線端末301からの無線信号の受信を待ち受けるスロット番号(スロット位置)を意味する。前述したように子無線端末は、消費電力を削減するために、受信キャリアセンス動作を間引いて行っている。そこで、8バイト目には、子無線端末にて受信キャリアセンス動作を行うスロット位置情報91が格納される。このスロット位置情報91のサイズも8ビットである。
スロット位置情報91のビット構成について具体的に説明する。図20に示すように、スロット位置情報91は、中継無線端末情報90とは異なり、ルート情報87が上位機器から下位機器に送信される場合であっても、下位機器から上位機器に送信される場合であっても、ビット構成は基本的に同じとなる。
つまり、スロット位置情報91においては、そのデータビットD7およびD6は「0」固定となっている。また、データビットD5およびD4は、下位機器における間欠受信周期mを示している。この間欠受信周期mとは、下位機器が上位機器に対する受信キャリアセンス動作を行う周期である。例えば、下位機器が中継無線端末201であれば、通常、中継無線端末201は毎回の基本スロット40で受信キャリアセンス動作を行っているので、間欠受信周期m=1となる。一方、前述した子無線端末302のように、2スロット毎に受信キャリアセンス動作を行っている場合には、間欠受信周期m=2となる。
なお、ルート情報87が上位機器から下位機器に送信される場合には、データビットD5およびD4の間欠受信周期mは、「上位機器から見て最終宛先となる下位機器の間欠受信周期m」を示すことになる。一方、ルート情報87が下位機器から上位機器に送信される場合には、データビットD5およびD4の間欠受信周期mは、「発呼元である下位機器の間欠受信周期m」を示すことになる。
またスロット位置情報91のデータビットD3〜D0は、センターポーリングを行っているスロット位置番号xを示している。センターポーリングを行っているスロット位置番号xとは、例えば、上位機器となる中継無線端末301からの無線信号の受信を間欠的に待ち受けている(受信キャリアセンス動作を行っている)子無線端末302のスロット位置番号xを意味する。このスロット位置番号xとは、以下に定義する基準スロット番号から数えて(x−1)番目の基準スロット40であることを示している。ここで、x=1〜間欠受信周期mの範囲となる。また、基準スロット番号は以下の式(1)で定義される。なお、式(1)におけるAは、0からスロット数255(すなわちn−1)を間欠受信周期mで除した数までの整数(すなわち、A=0〜(n−1)/mのいずれかの整数)である。
基準スロット番号=A×m+1 ・・・(1)
より具体的には、基準スロット番号は、図12に示すスロット番号1、m+1、2m+1、3m+1・・・となり、mスロット毎に存在することになる。それゆえ、待ち受けスロット番号y、すなわち、実際に受信待ち受け状態にある基本スロット40のスロット番号は、次に示す式(2)で表すことができる。ただし、xは前記の通り1〜mのいずれかの整数である。
待ち受けスロット番号y=基準スロット番号+スロット位置番号(x−1) ・・・(2)
なお、親無線端末101は、子無線端末302の間欠受信周期mとスロット位置番号xとの2つの情報を受信すれば、自局から子無線端末302までのルート情報87のテーブルを作成する。ここで、間欠受信周期mは、無線通信システムを構成する各無線端末に共通の値を用いることが望ましいが、それぞれの子無線端末302で異なる値であってもかまわない。また、スロット位置番号xはそれぞれの子無線端末302で任意に設定することができる。例えば、子無線端末302で作成されたルート情報87は、この時点では1台も中継無線端末を経由していないため、8バイト目のスロット位置情報91のみであり、1バイト目から7バイト目までの中継無線端末情報90には「0x00」が挿入される。
上述したように、無線通信システムへの参入時に、子無線端末302がスロット位置を決定する利点は、以下の点である。すなわち、子無線端末302が親無線端末101宛に参入要求信号C1を送信した後、この参入要求信号C1に対する親無線端末101からの参入許可信号、すなわち中継無線端末301から送信される参入許可信号C6を受信する間欠受信待ち受けスロットを自身で決めることができる。このため、子無線端末302は、自身で決めた間欠受信待ち受けスロットまで待機状態で待つことができる。
なお、子無線端末は、ルート情報87において、自局の属する中継無線端末のスロット位置情報だけを管理する。例えば、子無線端末302は、ルート情報87において自局が属する中継無線端末301のスロット位置情報だけを管理する。
一方、中継無線端末は自局の直下にいる中継無線端末だけをテーブルとして管理し、テーブル番号と前記自局の直下にいる中継無線端末との対応が取れるように管理している。例えば、中継無線端末201の場合では、ルート情報87において、自局の直下にいる中継無線端末301だけをテーブルとして管理している。
親無線端末101は子無線端末のスロット位置情報及びこの子無線端末までのルートに存在する中継無線端末のテーブル番号情報を、ルート情報テーブルとして管理している。例えば、子無線端末302までのルート情報87を保持する場合、このルート情報には、子無線端末302のスロット位置情報、およびこの子無線端末302までのルートに存在する中継無線端末201,301に対応付けられたテーブル番号情報が記録されている。
ここで、ルート情報87を含むデータ通信用信号60の送受信について、図12に示す信号C1〜C6の流れに沿って具体的に説明する。
まず、子無線端末302がデータ通信用信号60として参入要求信号C1を中継無線端末301に送信する。子無線端末302で作成されたルート情報87は、データ通信用信号60(参入要求信号C1)に組み込まれて中継無線端末301に送信される。中継無線端末301は、子無線端末302からデータ通信用信号60(参入要求信号C1)を受信すると、これに含まれるルート情報87を解析する。具体的には、ルート情報87における自局の段数に相当するバイトを解析する。中継無線端末301は親無線端末101から見て2段目となるので、ルート情報87の2バイト目(図18参照)を解析する。解析結果が「0x00」であれば、中継無線端末301は、データ通信用信号60(参入要求信号C1)の送信元は、自局に属する子無線端末302〜304のいずれかからの中継要求であると解釈する。一方、この解析結果が、「0xFF」であれば、中継無線端末301は、データ通信用信号60の送信元は、自局に属する中継無線端末401であると解釈する。
そして、子無線端末302〜304のいずれかからの中継要求であると解釈した場合、中継無線端末301は、自局が属する段数目のバイトにテーブル番号「0」を設定する。中継無線端末301は、前記の通り2段目であるため、2バイト目のデータビットD5〜D0(図19の上段参照)にテーブル番号「0」を設定する。図12に示す例では、子無線端末302からの中継要求であるため、上述したように、2バイト目の中継無線端末情報90におけるデータビットD5〜D0にテーブル番号「0」を設定する。また、中継無線端末301は、自局が属する段数よりも1段上の段数目のバイトに「0xFF」を設定する。
仮に、解析結果が「0xFF」の場合、中継無線端末301は、中継無線端末401からの中継要求であると解釈し、中継無線端末401に対応するテーブル番号を、自局の属する段数目のバイト(2バイト目)の中継無線端末情報90におけるデータビットD5〜D0に設定する。ここで、中継無線端末301は、管理しているテーブルに中継無線端末401の中継無線端末情報90が無い場合、このテーブルに中継無線端末401の中継無線端末情報90を登録し、登録したテーブル番号を自局が属する段数目のバイトの中継無線端末情報90におけるデータビットD5〜D0に設定する。
このように、中継無線端末301で解析されて作成されたルート情報は、データ通信用信号60に組み込まれて中継無線端末201に送信される。そして、中継無線端末201においても中継無線端末301と同様にしてルート情報の解析と作成とが行われる。中継無線端末201は、自局が属する段数が1段目であるため、1バイト目の中継無線端末情報90を解析する。このとき、ルート情報87における1バイト目が「0xFF」である場合、中継無線端末201は、自局に属する下位機器のうち中継無線端末301から中継要求があったと解釈する。そして、中継無線端末201は、自局が属する段数目のバイト(ルート情報87の1バイト目)のデータビットD5〜D0に中継無線端末301に対応するテーブル番号を設定する。
このようにして、中継無線端末201で解析されて作成されたルート情報87は、データ通信用信号60に組み込まれて親無線端末101に送信される。
親無線端末101ではルート情報87を解析することにより、子無線端末302までの中継ルートを確認することができる。すなわち、ルート情報87の1バイト目には、中継無線端末201が管理する中継無線端末301のIDに対応したテーブル番号が格納されており、ルート情報87の2バイト目には、テーブル番号「0」が格納されている。このため、親無線端末101は、データ通信用信号60の発信元が、中継無線端末301の下位機器となる子無線端末302〜304のいずれであることが分かる。
さらにルート情報87の8バイト目には、発信元である子無線端末301の間欠受信周期mとスロット位置番号xが格納されている。また、発信元である子無線端末302のIDは、ネットワーク層ID85から知ることができる。
このように、親無線端末101は、例えば図2に示す無線通信システムに属するすべての子無線端末までのルート情報87を子無線端末が参入時に親無線端末101に送信するデータ通信用信号60(参入要求信号C1)に含まれるルート情報87から知ることができ、ルート情報87のテーブルを作成することができる。
すなわち、親無線端末101は、子無線端末から発信されるデータ通信用信号60により、子無線端末までの中継ルートを把握することができる。データ通信用信号60は、子無線端末が新規に参入した時点で親無線端末101に送信されるので、親無線端末101と子無線端末との間で何度も中継伝送(中継通信)をする必要がなく、親無線端末101は、初回の通信で中継ルートを確認することができる。また、データ通信用信号60に含まれるルート情報87は、前述した構成を有しているので、親無線端末101は、ルート情報を解析することにより、中継ルートを適切に確認することができる。
[ポーリング信号の送信]
次に、親無線端末101から子無線端末302に対してポーリングデータを送信する場合を例に挙げ、実施の形態1に係る無線通信システムにおける各端末間でのデータ通信について具体的に説明する。
具体的には、図2に示すツリー構造のシステムにおいて、親無線端末101から子無線端末302に対してポーリング信号を送信する場合を例に挙げ説明する。
親無線端末101は、例えば子無線端末302に対するポーリング信号の送信要求が発生すれば、自局の有するルート情報テーブルを参照し、子無線端末302までの中継ルートおよび子無線端末302の間欠受信周期mおよびスロット位置番号xを含むルート情報87を作成する。そして、親無線端末101は、ポーリング信号(データ通信用信号60)のネットワーク層(レイヤ3)フレーム66にこのルート情報87を組み込む。
次に、親無線端末101は、下位スロット41のリンク接続用スロット32中の上位応答/上位発呼用スロット38で中継無線端末201宛にリンク接続信号50を送信する。ここで、中継無線端末201は全ての上位スロット42(具体的には、上位応答/上位発呼用スロット38)で受信キャリアセンス動作を行っている。このため、中継無線端末201は、親無線端末101から受信したリンク接続信号50の受信レベルが第一所定値以上であるならば、どの上位スロット42においても受信することができる。このようにして親無線端末101と中継無線端末201との間で接続を確立させる。
その後、中継無線端末201は、上位スロット42のデータ通信用スロット36で親無線端末101から送信されるポーリング信号(データ通信用信号60)を受信し、該ポーリング信号のネットワーク層フレーム66に含まれるネットワーク層ID88を確認し、自局宛のポーリング信号であるか否かを判定する。自局宛でなければ中継要求であると判定し、ルート情報87の1バイト目(図18参照)を解析する。
ここで、中継無線端末201によるルート情報87の解析の結果、1バイト目のデータビットD5〜D0に格納されているテーブル番号が「0」である場合、受信したポーリング信号は中継無線端末201の直下に属する子無線端末202〜204のいずれか宛であることを示す。しかしながら、今回のポーリング信号は、さらに下の階層にある子無線端末302宛であるため、1バイト目のD5〜D0ビットに書かれているテーブル番号は中継無線端末301のIDが記載されているテーブル番号となる。そこで、中継無線端末201は、1バイト目のデータビットD5〜D0格納されているテーブル番号から、自局の保有するテーブルを参照し、次の中継先である中継無線端末301のIDを把握する。そして中継無線端末201は親無線端末101と同様な手順で中継無線端末301とリンク接続を行う。なお、中継無線端末301は、中継無線端末201から受信したリンク接続信号50の受信レベルが第二所定値以上であるならば、このリンク接続信号50を受信し、接続を確立させる。このようにして、中継無線端末201と中継無線端末301との間で接続が確立されると、中継無線端末201は、中継無線端末301に対してポーリング信号を中継送信する。
中継無線端末301は上記説明した中継無線端末201と同様にして、該中継無線端末201から受信したポーリング信号の解析を行なう。すなわち、中継無線端末301は、ポーリング信号に含まれるルート情報87の2バイト目のD5〜D0ビットに書かれているテーブル番号を確認する。今回は2バイト目のD5〜D0ビットに書かれているテーブル番号は「0」となるため、中継無線端末301は、受信したポーリング信号が自局の直下に属する子無線端302〜304宛であると認識する。なお、ポーリング信号の宛先が、自局の直下の子無線端末302〜304のうちいずれであるのかについては、ポーリング信号(データ通信用信号60)中に含まれるネットワーク層ID88から把握することができる。ここでは、ネットワーク層ID88には最終宛先である子無線端末302のIDが書かれることとなる。
さらに中継無線端末301は、ルート情報87の8バイト目のスロット位置情報91を解析し、子無線端末302の間欠受信周期m及びスロット位置番号xを把握する。すでに説明したように、中継無線端末301は、間欠受信周期m及びスロット位置番号xより子無線端末302が間欠受信待ち受けしているスロットを計算する。そして、そのスロットにあわせて中継無線端末301は、リンク接続信号50を送信し、子無線端末302とリンク接続を行う。また、中継無線端末301と子無線端末302との間で接続が確立されると、中継無線端末301は子無線端末302に対してポーリング信号(データ通信用信号60)を中継送信する。
なお、ネットワーク層フレーム85に格納されたデータは、中継無線端末201及び301では何ら変更されずに、親無線端末101で作成されたデータのまま子無線端末302に伝送されている。このため、子無線端末302は、親無線端末101から伝送されたネットワーク層フレーム中にあるアプリケーションデータ89をそのまま受け取ることができる。
また、本実施の形態1では、子無線端末における間欠受信タイミングに対応する基本スロット40のスロット番号は、親無線端末との通信時に子無線端末から無線信号に組み込まれて送信される。それゆえ、例えば、中継無線端末201は、自局の直下に属する中継無線端末301(下位機器)のみを管理するテーブルを保有するだけでよく、自局の直下に属する子無線端末(子無線端末202〜204)の情報を一切保有する必要がない。したがって、実施の形態1に係る中継無線端末(例えば、中継無線端末201)は、自局の直下に属する子無線端末(子無線端末202〜204)の数に制限を設ける必要がなく、従来よりも多くの子無線端末を中継することができる。言い換えれば、本実施の形態に係る中継無線端末は、従来と同じ数の子無線端末を中継しても、自局が保有するテーブルのサイズ(データ量)を小さくすることができる。
さらに、親無線端末においても、該親無線端末から子無線端末までのルート情報を格納するルート情報テーブルのデータ量を小さくすることができる。例えば、親無線端末101は、自局の直下の中継無線端末201のIDを管理する必要はあるが、自局の直下でない中継無線端末301のIDを直接管理する代わりに、中継無線端末201が管理している中継無線端末301のテーブル番号を管理するようにしてもよい。また、例えば、各中継無線端末において管理できる最大の中継無線端末数を63とした場合、各中継無線端末において必要となるテーブル数、すなわち管理すべき無線端末のIDは63であるが、これらのIDに対応付けられているテーブル番号は6ビットの情報で充分、表現できる。従って中継無線端末一つあたり、64ビットの情報を6ビットの情報で管理することになる。
また、データ通信用信号60に乗せられるルート情報87として中継ルートの中継無線端末のIDではなく前記IDに対応したテーブル番号であるため、ルート情報のバイト数を小さくできる。例えば、各中継無線端末が管理する最大の中継無線端末数を63とすれば6ビットの情報で1段あたりの中継ルートを設定できる。一般に無線端末を指定するためのIDは64ビットのように多くのビット数を必要とする。従ってルート情報87として中継ルートの中継無線端末のIDを送る方法ではルート情報87が非常に大きくなり通信に無駄が生じる。これに対して実施の形態1で示したテーブル番号をルート情報87として伝送する方法によればルート情報87を小さくでき、効率的な通信を行うことができる。
実施の形態1では親無線端末101が子無線端末のスロット位置情報を記憶管理しているが、中継無線端末が管理するように構成してもよい。そのように構成される場合、中継無線端末のテーブルのデータ量が大きくなるが、ルート情報87の8バイト目のスロット位置情報が不要となる利点がある。
なお、本実施例の説明において、親無線端末、中継無線端末、子無線端末と3種類の端末を前提に説明したが、子無線端末と中継無線端末とだけで両者の関係で見れば、中継無線端末は子無線端末にとって親無線端末であると言える。
[実施の形態2]
ところで、無線通信システムにおいて新たに無線端末を設置すると、上述した「接続先決定処理」を実施し、新たに設置された無線端末の接続先を決定していた。そして、接続先となる無線端末を決定すると、接続先として決定した無線端末との接続を確立し、参入要求信号を親無線端末101に向かって送信する構成であった。そして、この参入要求信号に対する参入許可信号を親無線端末101から受信すると、新たに設置された無線端末は、無線通信システムに参入することができる構成であった。
無線端末が無線通信システムに参入した後、この無線端末が従属している親無線端末あるいは中継無線端末との間に建物など障害物が建設されるなど、新たに参入した無線端末を取り巻く状況が変化する場合がある。このように状況が変化した場合、無線端末が従属している親無線端末または中継無線端末から受信したビーコン信号の受信レベルが低くなる場合がある。そこで、実施の形態2では、子無線端末または中継無線端末等の下位機器がこのような状況変化に対応することができるように構成されている。
例えば、図1に示す子無線端末302が無線通信システムにおいて新たに設置されたとする。このとき子無線端末302は、受信したビーコン信号のうち受信レベルが第二所定値以上で、最も小さい中継段数となるビーコン信号の発信元を接続先とする。図1の例では子無線端末302の接続先は中継無線端末301となる。ここで、子無線端末302は、中継無線端末301から受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルAとして後述する受信レベル記憶部1005に記憶しておく。すなわち、子無線端末302は、接続先を決定した際、接続先となる無線端末(中継無線端末301)から受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルAとして記憶しておく。また、子無線端末302が無線通信システムに参入した後、この子無線端末302に対して、接続先である中継無線端末301から定期的にビーコン信号が送信されるようになっている。ここで、子無線端末302が定期的に中継無線端末301から受信したビーコン信号の受信レベルは、フェージングなどの影響により受信ごとに変化する。しかしながら、子無線端末302と中継無線端末301との間に建物などの障害物が建設されるなど、恒常的にビーコン信号の伝送を妨げる要因が無い限り、子無線端末302が受信したビーコン信号の受信中央値にほぼ変動は見られない。なお、ここで受信中央値とは、例えば、子無線端末302が中継無線端末301からビーコン信号を10回受信したとする。この受信したビーコン信号を受信レベルが低い順に並べたとき中央に位置する値である。
逆に、子無線端末302と中継無線端末301との間に障害物が存在すると、子無線端末302が受信した受信中央値に大きな変動が見られる。そこで、実施の形態2に係る子無線端末302では、定期的に受信したビーコン信号の受信レベルBが上述した受信レベルAより所定レベルC以上、下がった場合には、無線通信システムへの参入後に建物が建設されるなどの大きな状況変化があったと判断する。そして、子無線端末302は、「接続先決定処理」を実施し、新たな接続先を決定し、無線通信システムへの参入動作を再度実施する。なお、再度の参入動作を再参入動作と称する。
以上のように、実施の形態2に係る下位機器(中継無線端末または子無線端末)は、新たな接続先を決定し、再参入動作を実施することができる点で実施の形態1に係る下位機器(中継無線端末または子無線端末)とは異なる。また、実施の形態2に係る下位機器(中継無線端末または子無線端末)において実施される再参入動作は、無線通信システムへの、最初の参入動作と比較して、新たな接続先を決定する「再接続決定処理」を行なう点で異なる。
[無線端末の構成]
以下において、実施の形態2に係る無線端末(親無線端末、子無線端末、中継無線端末)の構成について説明する。なお、本発明の実施の形態2に係る親無線端末として機能する無線端末の要部構成は、図4に示す親無線端末101と同じ構成であるため、特に図示せず、またその説明は省略する。同様に、本発明の実施の形態2に係る中継無線端末として機能する無線端末の要部構成は、図5に示す中継無線端末201と同じ構成であり、本発明の実施の形態2に係る子無線端末として機能する無線端末の要部構成は、図6に示す子無線端末102と同様の構成となるため特に図示しない。ただし、実施の形態2に係る中継無線端末201が備えるビーコン受信部14および子無線端末102が備えるビーコン受信部23の構成が、実施の形態1に係る中継無線端末201および子無線端末102と異なる。
そこで、ビーコン受信部14,23の構成について図21を参照して説明する。図21は、本発明の実施の形態2に係る中継無線端末201または子無線端末102が備えるビーコン受信部14,23の要部構成の一例を示すブロック図である。
図21に示すようにビーコン受信部14,23は、中継段数解析部1001,受信レベル測定部1002,所属無線端末決定部1003,受信レベル比較部1004,受信レベル記憶部1005,および再参入判定部1006を備えてなる構成である。
実施の形態1に係るビーコン受信部14,23と比較して、実施の形態2に係るビーコン受信部14,23は、受信レベル比較部(受信レベル判定手段)1004,受信レベル記憶部1005,および再参入判定部(再接続先決定手段)1006をさらに備える点で異なる。また、実施の形態2では、受信レベル測定部1002が、無線端末の接続先を最初に決定した際、この接続先から受信したビーコン信号の受信レベルを受信レベルAとして受信レベル記憶部1005に記憶する点で実施の形態1と異なる。さらに、実施の形態2では、受信レベル測定部1002が、定期的に接続先の無線端末から受信したビーコン信号の受信レベルを測定し、受信レベル比較部1004に通知している点でも異なる。
受信レベル比較部1004は、定期的に受信したビーコン信号の受信レベルBについて、上述した受信レベルAから所定レベルCを差し引いた値よりも小さいか否か判定するものである。ここで所定レベルCは、予め決められた値である。所定レベルCは固定値であってもよいし、受信レベルAの値に応じて決定さる可変値であってもよい。例えば、受信レベルAが−70dBmのときは、所定レベルC=30dB、受信レベルAが−80dBmのときは所定レベルC=25dBのように受信レベルAに応じて決定される可変値であってもよい。このように可変値とする場合、受信レベルAと所定レベルCとの対応関係を示すテーブル情報をあらかじめ保持しておく。なお、所定レベルCは、受信レベルAからこれ以上下がると通信が途絶える等弊害が生じる可能性があるレベルよりも小さい範囲で適宜決定される。
すなわち、設定した受信レベルAが大きい場合、フェージングなどに起因する状況変化により、定期的に受信したビーコン信号の受信レベルBが多少、受信レベルAの値から下がった値となっても通信に支障のない充分な受信レベルを確保できる。しかしながら、この受信レベルAが小さい場合、定期的に受信したビーコン信号の受信レベルBの値がちょっとでも受信レベルAの値から下がると通信に支障が出てしまうことがある。従って受信レベルAの大きさに応じて所定レベルCの値を可変とし、受信レベルAが大きい時には所定レベルCを大きくして多少の状況変化が生じても、すなわち、受信レベルが多少下がっても再参入動作を行わないようにすることができる。
受信レベル記憶部1005は、受信レベル測定部1002によって測定された受信レベルAの値を記憶するものである。受信レベル記憶部1005は読み書き可能な記録媒体である。
再参入判定部1006は、受信レベル比較部1004による比較結果に基づき、子無線端末102または中継無線端末201の無線通信システムへの再参入動作を実行するか否かを判定するものである。再参入判定部100は、子無線端末102または中継無線端末201の無線通信システムへの再参入動作を実行すると判定した場合、中継段数解析部1001および受信レベル測定部1002に「再接続先決定処理」を指示する。
(再接続決定処理)
次に、上記した構成を有する子無線端末または中継無線端末などの下位機器における「再接続先決定処理」について図22を参照して説明する。ここでは、説明の便宜上、図1に示す子無線端末302にてこの「再接続決定処理」が実施されるものとして説明する。図22は、本発明の実施の形態2に係る無線通信システムにおける下位機器での再接続決定処理の一例を示すフローチャートである。
まず、前提として、子無線端末302が無線通信システムに参入しており、定期的にその上位機器、すなわち、中継無線端末301からビーコン信号を受信しているものとする。また、受信レベル記憶部1005には、前記した受信レベルAが記憶保持されているものとする。
まず、子無線端末302が中継無線端末301から定期的にビーコン信号を受信し、受信レベル測定部1002がその受信レベルBを測定する(ステップS31)。受信レベル測定部1002は、測定した受信レベルBを受信レベル比較部1004に通知する。
受信レベル比較部1004は、ステップS31で測定した受信レベルBが、B<(受信レベルA−所定レベルC)の関係を満たすか否か判定する(ステップS32)。
ステップS32においてB<(受信レベルA−所定レベルC)の関係を満たさないと受信レベル比較部1004が判定した場合(ステップS32おいて「NO」の場合)、受信レベル比較部1004はレジスタXに格納している値を初期化して0にし(ステップS33)、ステップ31に戻る。そして、受信レベル比較部1004は、受信レベル測定部1002に対して、定期的に送信されるビーコン信号の受信を指示する。
再度、ステップS31、S32を繰り返して、受信レベル比較部1004がB<(受信レベルA−所定レベルC)の関係を満たすと判定した場合、レジスタXに値を1つインクリメントする(ステップS34)。
このようにレジスタの値がインクリメントされると、再参入判定部1006が、レジスタXについて、X>所定値Yの関係を満たすか否か判定を行う(ステップS35)。なお、所定値Yは、B<(受信レベルA−所定レベルC)の関係を満たすビーコン信号の受信レベルが何回発生したかを示す回数であり、適宜設定される値である。実施の形態2ではY=4となるように設定されている。
ステップS35において、再参入判定部1006がレジスタXについてX>所定値Yでなければ、ステップS31に戻る。
一方、ステップS35において、再参入判定部1006がレジスタXについてX>所定値Yであると判定した場合、再参入動作の実行を決定する(ステップS36)。すなわち、レジスタXの値が所定値Yを超えるまでは、再参入判定部1006は、再参入動作の実行を決定しないように構成されている。再参入判定部1006は、再参入動作の実行を決定すると、中継段数解析部1001および受信レベル測定部1002に指示して接続先決定処理を再度、実施させる。
以上、説明した動作により、子無線端末302などの下位機器では、自局の上位機器から定期的に送信されたビーコンを受信し、その受信レベルBが連続して所定回数Yを超えてB<(A−C)となった場合に再参入動作を行うことになる。再参入動作とは再度電源ON時と同じように所属すべき親無線端末或いは中継無線端末を決定する動作のことである。
このように実施の形態2に係る無線端末(例えば子無線端末)では、定期的なビーコン受信において所定回数(Y回)連続して、受信レベルBがB<(A−C)となった場合に参入動作時から建物が建設されるなどの大きな状況変化があったと判断する。そして、再度、参入動作を開始し、新たな接続先となる無線端末を選択する構成であった。このように、再参入動作の開始を決定する基準は、受信レベルAより所定レベルC以上下がった値となる受信レベルBの回数であったが、これに限定されるものではない。例えば、複数回、ビーコン信号を受信し、そのビーコン信号の受信レベルBの受信中央値が所定値以下となる場合を、再参入動作の開始を決定する基準としてもよい。なお、この場合、定期的に送信されたビーコ信号の受信レベルBを受信レベル測定部1002が測定し、その測定結果を受信レベルBの履歴情報として受信レベル記憶部1005に記憶させる。そして、受信レベル比較部1004が、受信レベル記憶部1005に記憶された受信レベルBの履歴情報から受信中央値を求める。そして、所定期間に求められた受信レベルBの受信中央値が、所定値以下となった場合、参入判定部1006は、再参入動作を行うように決定するように構成されていてもよい。
しかしながら実施の形態2に係る無線端末(下位機器)のように受信レベルAより所定レベルC以上下がった値となる受信レベルBの回数に応じて再参入動作の開始を決定する構成の方が、受信レベルBの受信中央値が所定値以下か否かで再参入動作の開始を決定する構成よりも処理が簡単となる点で有利である。
また、定期的なビーコン受信において所定期間にビーコン信号の受信レベルBが「受信レベルA−所定レベルC」という条件以下になる比率が所定値、例えば0.3を超えた時、再参入動作を開始し、新たな従属すべきビーコン信号を選択する動作を行うようにしても良い。なお、ここで言う比率とは、所定期間の間に受信したビーコン信号の受信レベルBにおいて、「受信レベルA−所定レベルC」という条件以下になる受信レベルBの割合である。
すなわち、定期的なビーコン受信において所定期間にビーコン信号の受信レベルBが(前記受信レベルA−所定レベルC)以下になる比率が所定値、例えば0.3を超えた時、参入動作時から建物が建設されるなどの大きな状況変化があったと判断する。そして、下位機器は再度、参入動作を開始し、新たな接続先となる上位機器を選択する。建物が建設されるなどの状況変化がない場合でも、フェージングにより所定期間に、受信レベルA−所定レベルC以下(=受信レベルB)となる場合がある。なお、フェージングに起因して受信レベルBが受信レベルA−所定レベルC以下となる確率はフェージングの分布により決まる。建物が建設されるなどの状況変化により受信中央値が下がる場合は、当然のことながら受信したビーコン信号の受信レベルBが受信レベルA−所定レベルC以下となる確率はフェージングに起因する場合よりも高くなる。
以上説明したように、実施の形態2に係る無線通信システムでは、下位機器は、自身を取り巻く電波状況が変化し、上位機器から定期的に受信するビーコン信号の受信レベルが所定のレベル以上に大きく変動(低下)した時にのみ再参入動作を行う構成である。そして、下位機器は接続先となる無線端末を新たに選択し親無線端末までのルート変更を行うことができる。このため、従来技術のように中継ルートの変更を行うために、すべての無線端末が他の無線端末に対して電界強度測定用信号を定期的に送信したり、すべての無線端末が他の無線端末が送信した電界強度測定用信号をすべて受信したりする必要がない。すなわち、従来技術のように中継ルート作成のために各無線端末間で実施される信号の送受信回数が多くなることがないため、トラフィックが増大するという問題や電力消費が大きくなるという問題を防ぐことができる。
[変形例、代表的な用途等]
ここで、前述した実施の形態1、2は、一般的な無線端末または無線通信システムに適用可能であり、それゆえ、無線端末または無線通信システムの具体的な構成は、上述した構成に限定されず、公知のさまざまな構成の無線端末または無線通信システムに適用可能である。
また、実施の形態1、2では、無線通信システムを構成する無線端末として、親無線端末、中継無線端末および子無線端末の3種類を用いる例を説明しているが、これに限定されず、無線通信システムは、親無線端末および子無線端末の2種類から構成されてもよい。
また、親無線端末、中継無線端末および子無線端末による通信動作は、コンピュータを動作させるためのプログラムによって実現可能であり、電気機器、情報機器、および/またはコンピュータ等のハードリソースと協働して実現することができる。また、このようなプログラムを記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることで、プログラムの配布および更新、プログラムのインストール作業等を簡単に行うことができる。
さらに、実施の形態1、2に係る無線端末では、ルート情報に含まれる間欠受信タイミング情報としては、受信を間欠的に待ち受けるスロット番号である「スロット位置情報」を用いているが、本発明はこれに限定されず、間欠受信タイミング(受信の間欠的な待ち受けタイミング)を特定することができれば、スロット番号に限定されず、公知の他の形式の情報を用いることができる。
また、実施の形態1、2に係る無線端末では、新規参入した無線端末の接続先が親無線端末となる場合、すなわちビーコン信号に含まれる中継段数がゼロの場合は、このビーコン信号は第一所定値レベル以上か否かが、接続先を決定する条件の1つとなっていた。一方、新規参入した無線端末の接続先が中継無線端末となる場合、すなわち、ビーコン信号に含まれる中継段数がゼロより大きい自然数となる場合は、このビーコン信号は第二所定値レベル以上か否かが、接続先を決定する条件の1つとなっていた。
しかしながら、新規参入した無線端末の接続先を決定する条件の1つはこれに限定されるものではない。
例えば、新規参入した無線端末が子無線端末の場合は、接続先を決定する条件の1つを、受信したビーコン信号が第一所定値以上であるか否かとし、新規参入した無線端末が中継無線端末の場合は、接続先を決定する条件の1つを、受信したビーコン信号が第二所定値以上であるか否かとしてもよい。つまり、無線通信システムに新規参入した無線端末が子無線端末、あるいは中継無線端末に応じて受信レベルに対する所定値を変更させてもよい。
また、このように構成される場合、無線通信システムに新規参入した中継無線端末では、受信したビーコン信号の中に第二所定値以上となるビーコン信号が含まれていないとき、所属無線端末決定部1003は、接続先となる無線端末が存在しないと決定する構成であってもよい。
また、実施の形態2に係る無線端末では、受信レベルBを求めるために受信レベルAから差し引く所定レベルCを固定値としてもよく、可変値としてもよい構成であった。また、この所定レベルCが可変値の場合は、下位機器となる無線端末が無線通信ネットワークに参入する際に設定した受信レベルAに基づきその値を決定することができる構成であった。すなわち、所定レベルCが可変値の場合は、下位機器となる無線端末が無線通信ネットワークに参入した際に決定されていた。しかしながら、所定レベルCを可変値とする場合、必ずしも下位機器となる無線端末が無線通信ネットワークに参入した時点に限定されるものではない。例えば、下位機器となる無線端末が無線通信ネットワークに参入した後、一定期間の経過後に、受信するビーコン信号の受信レベルの変動が大きい、もしくは、受信レベルAよりも下回る回数が多い場合、再度、受信レベルAの値を見直し変更させる。そして、この変更後の受信レベルAの値に応じて所定レベルCを可変としてもよい。
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。