JP2016153544A - リング精紡機におけるリングレール停止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】停電発生時や手動による緊急停止などの非常停止時におけるリングレールの位置に拘わらず、リングレールを再起動時において糸切れ発生の少ない位置に停止させる。
【解決手段】非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、求められたスピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレールが到達するときのスピンドル回転数を演算する。リングレールの上昇中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、リングレールを反転させてスピンドル停止までリングレールを下降させる。リングレールの下降中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、スピンドル停止までリングレールの下降を継続する。
【選択図】図2
【解決手段】非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、求められたスピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレールが到達するときのスピンドル回転数を演算する。リングレールの上昇中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、リングレールを反転させてスピンドル停止までリングレールを下降させる。リングレールの下降中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、スピンドル停止までリングレールの下降を継続する。
【選択図】図2
Description
本発明は、リング精紡機におけるリングレール停止方法に係り、詳しくは、停電停止や非常停止時のリング精紡機おけるリングレール停止方法に関する。
リング精紡機を停止させる時は、リングレールの動きが下降方向で停止することが望ましいとされている。そのため、リング精紡機の停止ボタンによる通常停止は、リングレールが下降中に止まるように、減速に入るタイミングをコントロールして停止している。
ところが、停電による停止時には停止タイミング(停止信号出力時)をコントロールできないため、リングレールが上昇方向への移動途中で停止してしまう場合があり、再起動時の糸切れが多くなる。
従来、リフティング駆動系を含むドラフトパート駆動系と、スピンドル駆動系とをそれぞれインバータ駆動による誘導電動機で別個に回転駆動するリング精紡機において、停電後の再起動時における糸切れを防止するためのインバータ駆動誘導電動機の停止制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1では、停電時、運動エネルギーを多く保有するスピンドル駆動系を駆動する誘導電動機からの回生電力により、リングレール駆動系及びドラフトパート駆動系を駆動する誘導電動機の回転を維持させることにより、双方の誘導電動機を同期して停止させる。詳述すると、ドラフトパート駆動系を駆動する誘導電動機の回転数を検出する回転数検出手段と、リングレールの駆動位置を検出する位置検出手段と、回転数検出手段の検出信号と位置検出手段の検出信号とに基づいて、運動エネルギーを多く保有する負荷を有する誘導電動機による回生電力の低下率を計算する演算手段とを設ける。そして、該演算手段の演算結果に基づいて回生電力を制御することにより、停電時でのリングレールの停止位置が、再起動時に糸切れが発生しないよう、下降移動でスタートする位置となるようにしている。誘導電動機の減速は、インバータの主回路直流電圧を変更することによる誘導電動機のモータ損失を変化させることにより行われる。
ところが、主回路直流電圧によるモータ損失の変動幅はせいぜい数%に過ぎない。これでは、リングレールの目標停止位置と予想停止位置との差が大きな場合には、補正しきれない。そして、1チェースを100%とした場合、リングレールが上昇中あるいは下降中の任意の位置にある状態からリングレールを下降途中の目標位置に停止させるには、減速中に1チェースしかしない条件では最大50%の補正能力が必要となる。そのため、特許文献1の方法では、目標位置に停止させることができない場合も多くなる。
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は停電発生時や手動による緊急停止などの非常停止時におけるリングレールの位置に拘わらず、リングレールを再起動時において糸切れ発生の少ない位置に停止させることができるリング精紡機におけるリングレール停止方法を提供することにある。
上記課題を解決するリング精紡機におけるリングレール停止方法は、スピンドル駆動系と独立したリフティング駆動系を有するリング精紡機における停止制御方法である。そして、非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、前記スピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレールが到達するときのスピンドル回転数を演算し、リングレールの上昇中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、リングレールを反転させてスピンドル停止までリングレールを下降させ、リングレールの下降中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、スピンドル停止までリングレールの下降を継続する。
停電停止や非常停止の際には、リングレールの位置に関係なく駆動系への電源供給が停止されるため、駆動系のモータの惰性回転に従ってリングレールが停止されるとその位置は目的の位置とならない確率が高くなる。しかし、この発明では、停電発生あるいは非常時に非常停止信号が発生すると、非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、そのスピンドル減速勾配に基づいて、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレールが到達するときのスピンドル回転数が演算される。ここで、目標移動量とは、通常停止時にリングレールが上昇反転位置から下降して停止する場合の上昇反転位置から停止位置までの移動量を意味し、一般にはチェース長の20%であるが、紡出条件によっては20%以外であってもよい。
そして、リングレールの上昇中にスピンドルの回転速度が前記演算されたスピンドル回転数に達した場合は、リングレールを反転させてスピンドル停止までリングレールを下降させる。また、リングレールの下降中にスピンドルの回転速度が前記演算されたスピンドル回転数に達した場合は、スピンドル停止までリングレールの下降を継続させる。即ち、いずれの場合も、リングレールは下降中に所定のスピンドル回転数の状態から目標移動量下降して停止する。したがって、停電発生時や手動による緊急停止などの非常停止時におけるリングレールの位置に拘わらず、リングレールを再起動時において糸切れ発生の少ない位置に停止させることができる。
前記目標移動量は、チェース長の20%〜30%であることが好ましい。経験的に上昇反転位置からチェース長の20%未満の位置で停止すると巻層が安定しないことが分かっているので、目標移動量はチェース長の20%以上である方が好ましい。また、下降反転位置近傍で前記演算されたスピンドル回転数に達した場合には、本来のチェース範囲を超えて目標移動量だけリングレールが下降することになる。この場合、目標移動量がチェース長の30%を超えていると、紡出初期には糸がボビン下端を外れてしまうおそれがある。したがって、目標移動量はチェース長の30%以下である方が好ましい。
前記スピンドル減速勾配は、検出されたスピンドルの回転速度に基づいて求められることが好ましい。スピンドル駆動系への電源供給が停止された後、スピンドルの回転速度は一定の減速勾配で低下するため、スピンドルの回転速度の検出結果からスピンドル減速勾配を容易に演算することができる。
前記スピンドル減速勾配は、予め紡出条件及び停電発生時や非常停止時における管糸の状態に対応して学習されたデータに基づいて求められてもよい。ここで、管糸の状態とは、糸が巻き取られたボビンの重量及びボビンの回転速度を意味する。例えば、停電や非常停止が発生した際に、そのときの管糸の状態と、スピンドルの減速勾配とをデータとして記憶しておき、その後に停電や非常停止が発生した場合、対応する管糸の状態での減速勾配のデータが存在する場合は、そのデータを使用する。様々な管糸の状態に対応した停電や非常停止が発生するのを待って、データを蓄積するには時間がかかるため、予め様々な管糸の状態で非常停止を行って、データを蓄積することが好ましい。
本発明によれば、停電発生時や非常停止時におけるリングレールの位置に拘わらず、リングレールを再起動時において糸切れ発生の少ない位置に停止させることができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。図1に示すようにリング精紡機の駆動系は、スピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13で構成されている。スピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13はそれぞれ独立して駆動されるようになっている。
スピンドル駆動系11は、モータ14により駆動される駆動プーリ15と、被動プーリ16と、両プーリ15,16間に巻き掛けられたタンゼンシャルベルト17とを備え、タンゼンシャルベルト17がスピンドル18に圧接された状態で走行することによりスピンドル18が回転駆動される。モータ14にはインバータ19を介して制御装置Cにより駆動される可変速モータとしての誘導電動機が使用され、モータ14はロータリエンコーダ14aを備えている。制御装置Cはロータリエンコーダ14aの出力信号に基づいてモータ14の回転速度を演算してスピンドル回転数を演算する。
モータ14は、図示しない交流商用電源から給電されるインバータ19を介して駆動され、停電発生時には回生電力をインバータ19を介してドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13へ供給するようになっている。
ドラフトパート駆動系12は、フロントボトムローラ20がモータ21により駆動され、ミドルボトムローラ22がモータ23により駆動される。バックボトムローラ24は歯車列25を介してミドルボトムローラ22に連結され、モータ23により駆動されるようになっている。モータ21,23にはサーボドライバ26,27を介して制御装置Cにより駆動されるサーボモータが使用されている。サーボドライバ26,27は、メインインバータと直流で結合され、停電発生時にはモータ14の回生電力が供給されるようになっている。
リフティング駆動系13には、リングレール28等を支持するポーカピラー29を、モータ30により駆動されるラインシャフト31の正逆回転により昇降動させる構成のリフティング装置が使用されている。ラインシャフト31にはそれぞれリングレール28及びラペットアングル(図示せず)等を昇降作動する昇降ユニットが一定間隔で配設されている(1個のみ図示)。昇降ユニットは、ラインシャフト31と一体回転するねじ歯車32と、ポーカピラー29の下部に形成されたスクリュー部29aが螺入されるとともにねじ歯車32に噛合するナット体33とから構成されている。モータ30は正逆回転可能なACサーボモータからなり、モータ30は制御装置Cによりサーボドライバ34を介して駆動制御されるようになっている。サーボドライバ34は、メインインバータと直流で結合され、停電発生時にはモータ14の回生電力が供給されるようになっている。
制御装置Cはマイクロコンピュータ35及び入力装置36を備え、メモリに記憶された所定のプログラムデータに基づいて動作し、インバータ19を介してモータ14を制御し、各サーボドライバ26,27,34を介して各モータ21,23,30を制御する。制御装置Cは、入力装置36により入力された紡出条件に対応して、スピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13を同期制御する。
制御装置Cは、停電停止時に非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求める。具体的には、非常停止信号発生後、複数回(少なくとも2回)、ロータリエンコーダ14aの出力信号に基づいてモータ14の回転速度を演算してスピンドル回転数を演算し、そのスピンドル回転数からスピンドル減速勾配を求めるようになっている。
通常、リング精紡機が停電で停止する場合、停電発生から完全停止まで15〜20秒ほど掛かるが、紡出条件や運転状態によってはそれより短時間となる場合もある。そのため、スピンドル減速勾配は、停電発生から5秒後ぐらいまでに求めるのが好ましい。
制御装置Cは、求めたスピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレール28が到達するときのスピンドル回転数Nsp1(図3参照)を演算するようになっている。目標移動量とは、通常停止時にリングレール28がチェース運動の上昇反転位置から下降して停止する場合の上昇反転位置から停止位置までの移動量であり、この実施形態ではチェース長の20%である。
制御装置Cは、非常停止信号発生後、リングレール28の上昇中にスピンドル18の回転速度が演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、リングレール28を反転させてスピンドル停止までリングレール28を下降させるようにサーボドライバ34を介してモータ30を制御するようになっている。また、制御装置Cは、リングレール28の下降中にスピンドル18の回転速度が演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、スピンドル停止までリングレール28の下降を継続するようにサーボドライバ34を介してモータ30を制御するようになっている。
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。機台の運転に先立って、まず、入力装置36により紡出糸番手、紡出運転時のスピンドル回転数、紡出長、リフト長、チェース長等の紡出条件データが入力される。
制御装置Cは入力装置36により入力された紡出条件に従って、モータ14,21,23,30を同期して駆動制御する。スピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13はそれぞれ独立した状態で同期駆動され、図1に示すように、ドラフトパートから送出された糸Yはスネルワイヤ及びトラベラを経てボビンBに巻き取られ、管糸40が形成される。
次に停電停止時の作用を説明する。停電発生により非常停止信号が発生すると、制御装置Cは、モータ14の回生電力によりドラフトパート駆動系12のモータ21,23及びリフティング駆動系13のモータ30をモータ14と同期して駆動制御する。また、図2に示すフローチャートに従ってモータ30を駆動制御する。
即ち、制御装置Cは、ステップS1で非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求める(演算する)。ステップS2では、ステップS1で求めたスピンドル減速勾配に基づき、リングレール28が下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレール28が到達するときのスピンドル回転数Nsp1を演算する。
次に制御装置Cは、ステップS3でスピンドル回転数が演算されたスピンドル回転数Nsp1に達したか否かの判断を行い、スピンドル回転数が演算されたスピンドル回転数Nsp1に達したらステップS4に進み、達していなければ再びステップS3を行う。
制御装置Cは、ステップS4でリングレール28が上昇中か否かの判断を行い、リングレール28が上昇中であればステップS5に進み、上昇中でなければステップS6に進む。即ち、図3(a)に示すように、リングレールの上昇中にスピンドル速度(スピンドル回転数)がスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、ステップS5においてリングレール28が反転下降された後、下降を継続するようにモータ30が制御される状態でステップS7に進む。また、図3(b)に示すように、リングレールの下降中にスピンドル速度(スピンドル回転数)がスピンドル回転数Nsp1に達した場合、即ち、上昇中でなければステップS6に進み、リングレール28を反転させずにリングレール28が下降を継続するようにモータ30が制御される状態でステップS7に進む。
制御装置Cは、ステップS7では、スピンドル18が停止したか否の判断を行い、スピンドル18が停止すればスピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13の制御を停止し、スピンドル18が停止しなければスピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13の制御を継続する。
停電停止や手動による緊急停止などの非常停止の際には、リングレール28の位置に関係なく駆動系への電源供給が停止されるため、駆動系のモータの惰性回転に従ってリングレール28が停止されるとその位置は目的の位置とならない確率が高くなる。しかし、本実施形態では、非常停止信号が発生すると、非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、そのスピンドル減速勾配に基づいて、下降を開始してから目標移動量(例えば、チェース長の20%)だけ下降する位置にリングレール28が到達するときのスピンドル回転数Nsp1が演算される。そして、リングレール28は停電発生時の位置に拘わらず、停電停止時にスピンドル駆動系11のモータ14が惰性回転になった状態で、スピンドル18と同期して制御され、再起動時において糸切れ発生の少ない位置で下降途中に停止する。
経験的に上昇反転位置からチェース長の20%未満の位置で停止すると巻層が安定しないことが分かっているので、目標移動量はチェース長の20%以上である方が好ましい。また、下降反転位置近傍でスピンドル回転数が前記演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合には、本来のチェース範囲を超えて目標移動量だけリングレール28が下降することになる。この場合、目標移動量がチェース長の30%を超えていると、紡出初期には糸がボビン下端を外れてしまうおそれがある。したがって、目標移動量はチェース長の30%以下である方が好ましい。
特許文献1の場合と異なり、停電停止の際にリングレール28を駆動するモータ30を積極的に減速駆動するのではなく、リングレール28の反転位置を変更してリングレール28の下降方向への移動中に停止させる。そのため、リングレール28は、停電発生時の移動方向及び位置に関係なく下降途中で停止される。
リングレール28の下降中に、スピンドル18がスピンドル回転数Nsp1に達する場合は、チェース範囲の下端で反転上昇させずに下降を継続させるため、リングレール28の停止位置がチェース範囲の下端を超えた位置となる場合がある。しかし、再起動後に、リングレール28の位置を元のチェース範囲に戻せば、問題はない。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)リングレール停止方法は、非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、前記スピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレール28が到達するときのスピンドル回転数Nsp1を演算する。そして、リングレール28の上昇中にスピンドル18の回転速度が前記演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、リングレール28を反転させてスピンドル停止までリングレール28を下降させる。また、リングレール28の下降中にスピンドル18の回転速度が前記演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、スピンドル停止までリングレール28の下降を継続する。したがって、停電発生時におけるリングレール28の位置に拘わらず、リングレール28を再起動時において糸切れ発生の少ない位置に停止させることができる。そのため、使用される駆動電源の安定性が悪く、停電停止が多く発生する紡績工場においても再起動時の糸切れが多くなるという問題を解消することができる。
(1)リングレール停止方法は、非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、前記スピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレール28が到達するときのスピンドル回転数Nsp1を演算する。そして、リングレール28の上昇中にスピンドル18の回転速度が前記演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、リングレール28を反転させてスピンドル停止までリングレール28を下降させる。また、リングレール28の下降中にスピンドル18の回転速度が前記演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合は、スピンドル停止までリングレール28の下降を継続する。したがって、停電発生時におけるリングレール28の位置に拘わらず、リングレール28を再起動時において糸切れ発生の少ない位置に停止させることができる。そのため、使用される駆動電源の安定性が悪く、停電停止が多く発生する紡績工場においても再起動時の糸切れが多くなるという問題を解消することができる。
(2)スピンドル減速勾配は、検出されたスピンドルの回転速度に基づいて求められる。スピンドル18の回転速度は一定の減速勾配で低下するため、スピンドル18の回転速度の検出結果からスピンドル減速勾配を容易に演算することができる。また、スピンドル18の回転速度は、停電停止や非常停止以外の通常の制御においても検出が必要な変数であり、新たな検出手段を設けずに求めることができる。
(3)目標移動量は、チェース長の20%である。したがって、リングレール28が上昇反転位置からチェース長の20%未満の位置で停止することが回避される。また、下降反転位置近傍でスピンドル回転数が前記演算されたスピンドル回転数Nsp1に達した場合、本来のチェース範囲を超えて目標移動量だけリングレール28が下降することになるが、目標移動量がチェース長の30%を超えていないため、紡出初期には糸がボビン下端を外れてしまうおそれがない。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ 停電停止に限らず手動による緊急停止の際も、同様にしてスピンドル回転数Nsp1を求め、スピンドル18の回転速度がスピンドル回転数Nsp1になったときのリングレール28の移動方向によって、リングレール28の反転を行うか否かを決定して非常停止を行うようにしてもよい。
○ 停電停止に限らず手動による緊急停止の際も、同様にしてスピンドル回転数Nsp1を求め、スピンドル18の回転速度がスピンドル回転数Nsp1になったときのリングレール28の移動方向によって、リングレール28の反転を行うか否かを決定して非常停止を行うようにしてもよい。
○ 通常停止時にリングレール28が上昇反転位置から下降して停止する場合の上昇反転位置から停止位置までの移動量である目標移動量は、好ましくはチェース長の20%〜30%であるが、紡出条件によっては20%〜30%以外の値であってもよい。また、チェース長によらない固定値として設定してもよい。
○ 非常停止信号発生後の減速勾配を求める場合、スピンドル回転数又はスピンドル回転数に対応するモータ14の回転数を実際に検出して求める代わりに、推定で求めてもよい。例えば、過去の停電停止時や非常停止時のデータから学習してもよい。
○ 非常停止時における管糸の状態と非常停止信号発生後の減速勾配との関係のデータを、他のリング精紡機の制御装置Cで共有するようにしてもよい。この場合、精紡機機台毎に独立して学習する場合に比べて、異なる条件におけるデータの学習、蓄積を効率良く行うことができる。
○ 予め試験により種々の紡出条件及び管糸の状態において非常停止を行って非常信号発生後の減速勾配を求め、紡出条件及び管糸の状態と非常信号発生後の減速勾配との関係をデータベースとして制御装置Cのメモリに記憶させておいてもよい。
○ 制御装置Cは、紡出条件及び管糸の状態とスピンドル回転数Nsp1との関係を示すデータベースをメモリに備え、そのデータベースに無い紡出条件及び管糸の状態において停電停止を含む非常停止を行う場合にのみ、図2のフローチャートに従って停止制御を行い、データベースに対応するデータがある場合はステップS3から制御を開始してもよい。そして、制御装置Cは、図2のフローチャートのステップS1から制御を行った場合は、ステップS2で演算されたスピンドル回転数Nsp1を、対応する紡出条件及び管糸の状態と共にデータベースに記憶させる。この場合、最初から充実したデータベースがなくても、支障なく適切なスピンドル回転数Nsp1でステップS3以降の制御を行うことができる。
○ リング精紡機は、スピンドル駆動系11、ドラフトパート駆動系12及びリフティング駆動系13が独立して駆動される構成に限らず、少なくともリフティング駆動系13が他の駆動系に対して独立して駆動される構成であればよく、例えば、スピンドル駆動系11とドラフトパート駆動系12が1個の駆動モータで駆動される構成であってもよい。
○ リフティング駆動系13は、モータ30がラインシャフト31を正転駆動あるいは逆転駆動することにより、リングレール28が上昇駆動あるいは下降駆動される構成に限らない。例えば、リフティング駆動系13のモータ30として正逆回転可能なサーボモータに代えて、インバータを介して変速制御される可変速モータを使用するとともに、その出力軸とラインシャフト31との間に一対の電磁クラッチの励消磁によりラインシャフト31の回転方向を変更する機構を設けてもよい。この場合は、停電停止を含む非常停止時には、モータ30をモータ14の回生電力で駆動するとともに、電磁クラッチの励消磁をモータ14の回生電力で行う。
○ スピンドル駆動系11は、タンゼンシャルベルト17によりスピンドル18を駆動する構成に限らず、ドライビングシャフトに固定されたチンプーリとの間に巻き掛けられたスピンドルテープを介して回転駆動される構成であってもよい。
○ スピンドル駆動系11は、1個のモータが複数のスピンドル18を駆動する構成に限らず、錘毎にスピンドル駆動モータを備えた構成であってもよい。
○ ドラフトパート駆動系12は、フロントボトムローラ20、ミドルボトムローラ22及びバックボトムローラ24がそれぞれ独立してモータにより駆動される構成としたり、フロントボトムローラ20、ミドルボトムローラ22及びバックボトムローラ24が1個のモータで駆動される構成としたりしてもよい。
○ ドラフトパート駆動系12は、フロントボトムローラ20、ミドルボトムローラ22及びバックボトムローラ24がそれぞれ独立してモータにより駆動される構成としたり、フロントボトムローラ20、ミドルボトムローラ22及びバックボトムローラ24が1個のモータで駆動される構成としたりしてもよい。
11…スピンドル駆動系、13…リフティング駆動系、18…スピンドル、28…リングレール、40…管糸。
Claims (4)
- スピンドル駆動系と独立したリフティング駆動系を有するリング精紡機における停止制御方法であって、
非常停止信号発生後のスピンドル減速勾配を求め、
前記スピンドル減速勾配に基づき、下降を開始してから目標移動量だけ下降する位置にリングレールが到達するときのスピンドル回転数を演算し、
リングレールの上昇中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、リングレールを反転させてスピンドル停止までリングレールを下降させ、
リングレールの下降中にスピンドルの回転速度が前記スピンドル回転数に達した場合は、スピンドル停止までリングレールの下降を継続することを特徴とするリング精紡機におけるリングレール停止方法。 - 前記目標移動量がチェース長の20%〜30%である請求項1に記載のリング精紡機におけるリングレール停止方法。
- 前記スピンドル減速勾配は、検出されたスピンドルの回転速度に基づいて求められる請求項1に記載のリング精紡機におけるリングレール停止方法。
- 前記スピンドル減速勾配は、予め紡出条件及び非常停止時における管糸の状態に対応して学習されたデータに基づいて求められる請求項1に記載のリング精紡機におけるリングレール停止方法。
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