JP2016151648A - 位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法、偏光板および垂直配向型液晶表示装置 - Google Patents

位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法、偏光板および垂直配向型液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】含水後にフィルムが乾燥したり、使用環境が高温高湿となった場合でも、フィルムのリタデーションRthの変動を抑え、液晶表示装置に適用したときの表示ムラを低減する。【解決手段】位相差フィルム13は、セルロースエステル系樹脂を含む。位相差フィルムを水に浸漬した後の厚み方向のリタデーションから、水に浸漬する前の厚み方向のリタデーションを差し引いた値をΔRth1(nm)としたとき、ΔRth1≧−14nmである。水浸漬後、位相差フィルムを23℃55%RHで乾燥させたときの水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量、および、該フィルムを60℃90%RHの環境に晒した後の、水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量を、ともにΔRth2(nm)としたとき、−4nm≦ΔRth2≦4nmである。【選択図】図1

Description

本発明は、位相差フィルムおよびその製造方法と、その位相差フィルムを用いた偏光板と、その偏光板を用いた垂直配向型(VA型;Virtical Alignment)液晶表示装置とに関するものである。
液晶表示装置は、コストダウンを目的として、セルのみの梱包や簡易包装によって輸送されるようになってきており、従来に比べて結露が生じやすい環境下で輸送されるようになってきている。偏光板の位相差フィルムの1つであるセルロースエステルフィルムは、吸湿性が高いため、上記のように結露が生じやすい環境下で液晶表示装置が輸送されると、上記セルロースエステルフィルムの光学特性(例えば厚み方向のリタデーションRth)が変動し、その変動に起因する表示ムラが生じる。
そこで、含水による厚み方向のリタデーションRthの変動を抑制するための抑制剤として、所定のリタデーション上昇剤をセルロースエステルフィルムに含有させることが知られている。例えば特許文献1では、ピリミジン環またはピリジン環を含み、環上の所定の位置に所定の置換基を有する化合物群をセルロースエステルフィルムに添加することにより、使用環境の湿度変化に伴うリタデーションRthの変動を抑えるようにしている。
特開2012−216483号公報(請求項1、13、段落〔0006〕等参照)
ところが、特許文献1で提案されているリタデーション上昇剤を、セルロースエステルフィルムに含有させると、含水によるリタデーションRthの変動を抑えることはできても、含水後の常温乾燥や、高温高湿の環境となった場合には、リタデーションRthの変動が発生し、そのようなセルロースエステルフィルムを使用した液晶表示装置において表示ムラが発生することがわかった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、含水後にフィルムが常温で乾燥したり、使用環境が高温高湿となった場合でも、フィルムの光学性能(特に厚み方向のリタデーションRth)の変動を抑えて、そのフィルムが適用される液晶表示装置の表示ムラを低減することができる位相差フィルムおよびその製造方法と、その位相差フィルムを用いた偏光板と、その偏光板を用いた垂直配向型液晶表示装置とを提供することにある。
1.セルロースエステル系樹脂を含む位相差フィルムであって、
該フィルムを水に浸漬した後の厚み方向のリタデーションから、水に浸漬する前の厚み方向のリタデーションを差し引いた値をΔRth1(nm)としたとき、
ΔRth1≧−14nm
であり、
水浸漬後、該フィルムを23℃55%RHで乾燥させたときの水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量、および、該フィルムを60℃90%RHの環境に晒した後の、水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量を、ともにΔRth2(nm)としたとき、
−4nm≦ΔRth2≦4nm
であることを特徴とする位相差フィルム。
2.リタデーション上昇剤としての含窒素複素環化合物を含み、
前記含窒素複素環化合物は、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環を有する化合物の中から選択される少なくともいずれか1種であることを特徴とする前記1に記載の位相差フィルム。
3.前記含窒素複素環化合物が、下記一般式で表される構造を有する化合物であることを特徴とする前記2に記載の位相差フィルム。
Figure 2016151648
(式中Aはピラゾール環を表し、Ar及びArはそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。Rは水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、qは1〜2の整数を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
4.膜厚が20〜40μmであり、
前記セルロースエステル系樹脂の総アシル基置換度が、2.2〜2.8であることを特徴とする前記1から3のいずれかに記載の位相差フィルム。
5.耐水系の添加剤をさらに含んでいることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載の位相差フィルム。
6.前記添加剤は、糖エステルおよび重縮合エステルの少なくとも一方を含むことを特徴とする前記5に記載の位相差フィルム。
7.前記1から6のいずれかに記載の位相差フィルムと、
前記位相差フィルムが貼り合わされる偏光子とを有していることを特徴とする偏光板。
8.前記7に記載の偏光板と、
前記偏光板が貼り合わされる液晶セルとを有していることを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
9.前記偏光板は、前記液晶セルに対して視認側に位置し、かつ、前記位相差フィルムが前記偏光子に対して前記液晶セル側となるように、前記液晶セルに貼り合わされていることを特徴とする前記8に記載の垂直配向型液晶表示装置。
10.前記1から6のいずれかに記載の位相差フィルムを溶液流延製膜法によって製造する位相差フィルムの製造方法であって、
前記セルロースエステル系樹脂を含むドープを支持体上に流延して乾燥させ、前記支持体から流延膜を剥離する工程と、
剥離した前記流延膜を延伸する工程と、
前記延伸した前記流延膜を100℃以上で5分以上乾燥させる工程とを有していることを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
11.前記流延膜を乾燥させる工程では、前記流延膜を110〜150℃で10〜20分間乾燥させることを特徴とする前記10に記載の位相差フィルムの製造方法。
位相差フィルムにおいて、含水前後での厚み方向のリタデーション変動が抑えられているのみならず、含水後の常温乾燥および高温高湿による厚み方向のリタデーションの変動が抑えられている。これにより、含水後にフィルムが常温で乾燥したり、使用環境が高温高湿となった場合でも、液晶表示装置において、位相差フィルムの厚み方向のリタデーションの変動に起因する表示ムラを低減することができる。
本発明の実施の形態に係る垂直配向型の液晶表示装置の概略の構成を示す断面図である。 上記液晶表示装置の偏光板に適用される位相差フィルムを製造する装置の一例を模式的に示す説明図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をA〜Bと表記した場合、その数値範囲に下限Aおよび上限Bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
〔垂直配向型液晶表示装置〕
図1は、本実施形態に係る垂直配向型(VA型)の液晶表示装置1の概略の構成を示す断面図である。液晶表示装置1は、液晶表示パネル2およびバックライト3を備えている。バックライト3は、液晶表示パネル2を照明するための光源である。
液晶表示パネル2は、VA方式で駆動される液晶セル4の視認側に偏光板5を配置し、バックライト3側に偏光板6を配置して構成されている。液晶セル4は、液晶層を一対の透明基板(不図示)で挟持して形成される。液晶セル4としては、カラーフィルタが液晶層に対してバックライト3側の透明基板、つまり、TFT(Thin Film Transistor)形成側の基板に配置された、いわゆるカラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造の液晶セルを用いることができるが、カラーフィルタが液晶層に対して視認側の透明基板に配置された液晶セルであってもよい。
偏光板5は、偏光子11と、光学フィルム12・13とを備えている。偏光子11は、所定の直線偏光を透過する。光学フィルム12は、偏光子11の視認側に配置される保護フィルムである。光学フィルム13は、偏光子11のバックライト3側(液晶セル4側)に配置される保護フィルム兼位相差フィルムである。偏光板5は、液晶セル4の視認側に粘着層7を介して貼り付けられている。つまり、偏光板5は、液晶セル4に対して視認側に位置し、かつ、光学フィルム13が偏光子11に対して液晶セル4側となるように、液晶セル4に貼り合わされている。
偏光板6は、偏光子14と、光学フィルム15・16を備える。偏光子14は、所定の直線偏光を透過する。光学フィルム15は、偏光子14の視認側に配置される保護フィルムであり、位相差フィルムとして機能することもできる。光学フィルム16は、偏光子14のバックライト3側に配置される保護フィルムである。このような偏光板6は、液晶セル4のバックライト3側に粘着層8を介して貼り付けられている。なお、視認側の光学フィルム15を省略し、偏光子14を粘着層8に直接接触させても良い。偏光子11と偏光子14とは、クロスニコル状態となるように配置される。
本実施形態の位相差フィルムは、例えば偏光板5の光学フィルム13や、偏光板6の光学フィルム15として用いることができる。以下、位相差フィルムの詳細について説明する。
〔位相差フィルム〕
本実施形態の位相差フィルムは、後述する溶液流延製膜法により製膜される。位相差フィルムは、熱可塑性樹脂から構成されているフィルムであれば何でも良いが、光学用途に使用する場合には、所望の波長に対して透明な性質を有する樹脂からなるフィルムであることが好ましい。このようなフィルムを構成する樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、脂環構造を有するオレフィンポリマー系樹脂(脂環式オレフィンポリマー系樹脂)、セルロースエステル系樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、透明性や機械強度などの観点から、ポリカーボネート系樹脂、脂環式オレフィンポリマー系樹脂、セルロースエステル系樹脂が好ましい。その中でも、光学フィルムとした場合の位相差を調整することが容易であるセルロースエステル系樹脂が更に好ましい。
(セルロースエステル系樹脂)
好ましいセルロースエステル系樹脂としては、下記式(1)および(2)を満たすセルロースアシレートが挙げられる。
式(1) 2.0≦Z1<3.0
式(2) 0≦X<3.0
(式(1)および(2)において、Z1はセルロースアシレートの総アシル基置換度を表し、Xはセルロースアシレートのプロピオニル基置換度およびブチリル基置換度の総和を表す。)
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、例えば綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。また、それらから得られたセルロースエステルを各々任意の割合で混合して使用することができる。
セルロースアシレートは、総アシル基置換度が2.2〜2.8の範囲内のセルロースアシレートであることが、耐水性を向上する観点から好ましく、また、製膜の際の流延性及び延伸性を向上させ、膜厚の均一性が一層向上する観点からは、セルロースアシレートの総アシル基置換度は、2.1〜2.5であることが好ましい。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM(American Society for Testing and Materials;米国試験材料協会)が策定・発行する規格の一つであるASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
セルロースアシレートとしては、特にセルロースアセテート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましいが、これらの中でより好ましいセルロースアシレートは、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートである。
セルロースアシレートの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアシレート樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000以上であれば、セルロースアシレート層自身の自己成膜性や密着の改善効果が発揮され、好ましい。本実施形態では、2種以上のセルロースアシレート樹脂を混合して用いることもできる。
セルロースアアシレートの平均分子量(Mn、Mw)は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより以下の測定条件で測定することができる。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜2800000の範囲内の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(厚み方向のリタデーション変動について)
本実施形態では、セルロースエステル系樹脂を含む位相差フィルムにおいて、該フィルムを水に浸漬した後の厚み方向のリタデーションから、水に浸漬する前の厚み方向のリタデーションを差し引いた値(厚み方向のリタデーションRthの変動量)をΔRth1(nm)としたとき、
ΔRth1≧−14nm
であり、
水浸漬後、該フィルムを23℃55%RHで乾燥させたときの水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量、および、該フィルムを60℃90%RHの環境に晒した後の、水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量を、ともにΔRth2(nm)としたとき、
−4nm≦ΔRth2≦4nm
である。
位相差フィルムが水分を吸収すると、水分吸収前に比べて、厚み方向のリタデーションRthは減少する。しかし、ΔRth1≧−14nmであることで、含水によるリタデーションRthの低下が抑えられており、結果として、含水前後でのリタデーションRthの変動が抑えられている。
本実施形態では、上記のように含水前後でのリタデーションRthの変動が抑えられているのみならず、含水後の常温乾燥(例えば23℃55%RHでの乾燥)によるリタデーションRthの変動、および含水後の高温高湿(例えば60℃90%RH)によるリタデーションRthの変動も抑えられている。これにより、輸送中の結露によって含水した後にフィルムが乾燥したり、使用環境が高温高湿となった場合でも、本実施形態の位相差フィルムが適用される液晶表示装置において、位相差フィルムのリタデーションRthの変動に起因する表示ムラを抑えることができる。
なお、ΔRth1の上限は、絶対値が下限と同じ14nmであることが望ましく、5nmであることがさらに望ましく、0nmであることがより望ましい。ΔRth1の望ましい範囲は、上記した下限(−14nm)と上限とを適切に組み合わせて設定することができる。
なお、ΔRth2の望ましい範囲は、
−3nm≦ΔRth2≦3nm
であり、さらに望ましい範囲は、
−1nm≦ΔRth2≦1nm
である。
本実施形態の位相差フィルムは、含水、含水後の自然乾燥および高温高湿(以下、含水等と称する場合がある)によるリタデーションRthの変動量(ΔRth1およびΔRth2)を上記範囲に確実に抑える観点から、リタデーション上昇剤としての含窒素複素環化合物を含むことが望ましい。特に、含窒素複素環化合物は、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環を有する化合物の中から選択される少なくともいずれか1種であることが望ましい。中でも、含窒素複素環化合物が、後述する一般式(3)で表される構造を有する化合物(ピラゾール系化合物)であることが、上記の表示ムラを抑える効果がより高い点で望ましい。なお、含窒素複素環化合物の詳細については後述する。
ここで、上述した液晶表示装置での表示ムラは、以下の原因(1)および(2)によって生じるものと推測している。すなわち、(1)液晶表示装置の輸送(例えば船積みによる海上輸送)での結露によって位相差フィルムが水分を吸収し、リタデーションRthの低下による光漏れや色味の変化が起こる。(2)含水後の位相差フィルムの乾燥によるリタデーションRthの不可逆変動によって色味の変化が起こる。
セルロースエステル系樹脂に上述した含窒素複素環化合物を添加することにより、含水時のセルロースエステル系樹脂と水との相互作用を遮断できる。これにより、上記(1)で述べた、位相差フィルムの含水時のリタデーションRthの低下を抑えることができる。しかし、添加剤(リタデーション上昇剤)とセルロースエステル系樹脂との相互作用が十分でない場合には、含水およびその後の乾燥の影響(熱の影響も含む)によって、セルロースエステル系樹脂と添加剤の配向にずれが生じ、リタデーションRthの不可逆変動が生じる。結果として、上記(2)のように、結露後(含水後)の位相差フィルムの乾燥によるリタデーションRthの変化によって、表示パネルからの光漏れが生じ、表示ムラが生じる。
含窒素複素環化合物(例えば後述する5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物や、芳香族環としてピラゾール環を有する化合物)は、セルロースエステル系樹脂との相互作用が強く、溶液流延製膜法での位相差フィルムの製膜の際に、延伸後に100℃以上(望ましくは110〜150℃)、5分以上(望ましくは10〜20分間)乾燥を行うことで、セルロースエステル系樹脂と添加剤の配向の一致が強化され、安定化される。すなわち、セルロースエステル系樹脂と添加剤の配向ずれが生じにくくなる。これにより、上記(1)および(2)のリタデーションRthの変動が両方とも小さくなり、表示ムラが生じにくくなるものと考えている。
位相差フィルムを薄膜化すると、含水等によるリタデーションRthの変動(低下)を抑えるために、リタデーション上昇剤の添加量を増大させる必要がある。したがって、位相差フィルムが特に膜厚20〜40μmと薄膜である場合には、リタデーション上昇剤を添加して、ΔRth1およびΔRth2を上記した所定の範囲に収める本実施形態の構成がより有効となる。
本実施形態の位相差フィルムは、耐水系の添加剤をさらに含んでいることが、含水等によるリタデーションRthの変動をさらに抑えることができる点で望ましい。このような添加剤としては、糖エステルおよび重縮合エステルの少なくとも一方を挙げることができる。なお、糖エステルおよび重縮合エステルの詳細については後述する。
上記した位相差フィルムは、例えば溶液流延製膜法によって製造することができる。この溶液流延製膜法では、上記したセルロースエステル系樹脂を含むドープを支持体上に流延して乾燥させ、支持体から流延膜(ウェブ)を剥離する工程と、剥離した流延膜を延伸する工程と、延伸した流延膜を100℃以上で5分以上乾燥させる工程とを有している。このように延伸後の乾燥における温度条件および乾燥時間を適切に設定することにより、上述したように、セルロースエステル系樹脂と添加剤の配向ずれを小さくできる。これにより、含水後の位相差フィルムの乾燥(常温乾燥、高温高湿による乾燥)によるリタデーションRthの変動を抑えて、表示ムラを抑えることができる。特に、上記した流延膜を乾燥させる工程では、流延膜を110〜150℃で10〜20分間乾燥させることが、上記配向ずれを確実に小さくして、表示ムラを確実に抑えることができる点で望ましい。
〔リタデーション上昇剤〕
次に、上記したリタデーション上昇剤の詳細について説明する。リタデーション上昇剤とは、測定波長590nmにおけるフィルムのリタデーション(特に厚み方向のリタデーションRth)を、リタデーション上昇剤が未添加のものに比べて増大させる機能を有する化合物をいう。
位相差フィルムがリタデーション上昇剤を含むことにより、位相差フィルムの面内方向のリタデーションRoおよび厚み方向のリタデーションRthが以下の範囲となる位相差フィルムを実現することができる。
30nm<Ro<70nm
100nm<Rth<300nm
上記のRoおよびRthは、例えば、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下、測定波長590nmにおいて、三次元屈折率測定を行って得られた屈折率n、n、nから、以下の式に基づいて算出できる。
Ro=(n−n)×d(nm)
Rth={(n+n)/2−n}×d(nm)
(式中、nはフィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nはフィルムの面内方向において前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nはフィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
本実施形態では、分子量が100〜800の範囲内である含窒素複素環化合物をリタデーション上昇剤として使用することができる。中でも、含窒素複素環化合物は、下記一般式(1)で表される構造の化合物であることが好ましい。下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を樹脂とともに用いることにより、RoおよびRthが上記範囲の位相差フィルムを実現できるほか、環境の湿度変動によるリタデーションの変動を抑えることもできる。
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物〉
Figure 2016151648
前記一般式(1)において、A、A及びBは、それぞれ独立に、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。この中で、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が好ましく、特に、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましい。
5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の構造に制限はないが、例えば、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、イソオキサジアゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イソチアジアゾール環等が挙げられる。
、A及びBで表される5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(2−ピロール基、2−フリル基、2−チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、ピラゾリノン基、ピリジル基、ピリジノン基、2−ピリミジニル基、トリアジン基、ピラゾール基、1,2,3−トリアゾール基、1,2,4−トリアゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、1,2,4−オキサジアゾール基、1,3,4−オキサジアゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、1,2,4−チオジアゾール基、1,3,4−チアジアゾール基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等の各基が挙げられる。
前記一般式(1)において、A、A及びBは、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表すことが、光学特性の変動効果に優れ、かつ耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムが得られるために好ましい。
前記一般式(1)において、T及びTは、それぞれ独立に、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表すことが好ましい。これらの中で、ピラゾール環、トリアゾール環又はイミダゾール環であることが、湿度変動に対するリタデーションの変動抑制効果に特に優れ、かつ耐久性に優れた樹脂組成物が得られるために好ましく、ピラゾール環であることが特に好ましい。T及びTで表されるピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環、イミダゾール環は、互変異性体であってもよい。ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環の具体的な構造を下記に示す。
Figure 2016151648
式中、※印は、一般式(1)におけるL、L、L又はLとの結合位置を表す。Rは水素原子又は非芳香族置換基を表す。Rで表される非芳香族置換基としては、前記一般式(1)におけるAが有してもよい置換基のうちの非芳香族置換基と同様の基を挙げることができる。Rで表される置換基が芳香族基を有する置換基の場合、AとT又はBとTがねじれやすくなり、A、B及びTがセルロースアシレートとの相互作用を形成できなくなるため、光学的特性の変動を抑制することが難しい。光学的特性の変動抑制効果を高めるためには、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアシル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
前記一般式(1)において、T及びTは置換基を有してもよく、当該置換基としては、前記一般式(1)におけるA及びAが有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(1)において、L、L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は、2価の連結基を表し、2個以下の原子を介して、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が連結されている。2個以下の原子を介してとは、連結基を構成する原子のうち連結される置換基間に存在する最小の原子数を表す。連結原子数2個以下の2価の連結基としては、特に制限はないが、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、NR、S、(O=S=O)からなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらを2個組み合わせた連結基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基の例には、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基等が含まれる。L、L、L及びLで表される2価の連結基は置換基を有してもよく、置換基としては特に制限はないが、例えば、前記一般式(1)におけるA及びAが有してもよい置換基と同様の基を挙げることができる。
前記一般式(1)において、L、L、L及びLは、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の平面性が高くなることで、水を吸着する樹脂との相互作用が強くなり、光学的特性の変動が抑制されるため、単結合又は、O、(C=O)−O、O−(C=O)、(C=O)−NR又はNR−(C=O)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
前記一般式(1)において、nは0〜5の整数を表す。nが2以上の整数を表すとき、前記一般式(1)における複数のA、T、L、Lは同じであってもよく、異なっていてもよい。nが大きい程、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物と水を吸着する樹脂との相互作用が強くなることで光学的特性の変動抑制効果が優れ、nが小さいほど、水を吸着する樹脂との相溶性が優れる。このため、nは1〜3の整数であることが好ましく、1〜2の整数であることがより好ましい。
〈一般式(2)で表される構造を有する化合物〉
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、一般式(2)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2016151648
(式中、A、A、T、T、L、L、L及びLは、それぞれ前記一般式(1)におけるA、A、T、T、L、L、L及びLと同義である。A及びTは、それぞれ一般式(1)におけるA及びTと同様の基を表す。L及びLは、前記一般式(1)におけるLと同様の基を表す。mは0〜4の整数を表す。)
mが小さい方が、セルロースアシレートとの相溶性に優れるため、mは0〜2の整数であることが好ましく、0〜1の整数であることがより好ましい。
<一般式(1.1)で表される構造を有する化合物>
一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(1.1)で表される構造を有するトリアゾール化合物であることが好ましい。
Figure 2016151648
(式中、A、B、L及びLは、上記一般式(1)におけるA、B、L及びLと同様の基を表す。kは、1〜4の整数を表す。Tは、1,2,4−トリアゾール環を表す。)
さらに、上記一般式(1.1)で表される構造を有するトリアゾール化合物は、下記一般式(1.2)で表される構造を有するトリアゾール化合物であることが好ましい。
Figure 2016151648
(式中、Zは、下記一般式(1.2a)の構造を表す。qは、2〜3の整数を表す。少なくとも二つのZは、ベンゼン環に置換された少なくとも一つのZに対してオルト位又はメタ位に結合する。)
Figure 2016151648
(式中、R10は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。pは1〜5の整数を表す。*はベンゼン環との結合位置を表す。Tは1,2,4−トリアゾール環を表す。)
前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される構造を有する化合物は、水和物、溶媒和物若しくは塩を形成してもよい。なお、本実施形態において、水和物は有機溶媒を含んでいてもよく、また溶媒和物は水を含んでいてもよい。即ち、「水和物」及び「溶媒和物」には、水と有機溶媒のいずれも含む混合溶媒和物が含まれる。塩としては、無機又は有機酸で形成された酸付加塩が含まれる。無機酸の例として、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭化水素酸など)、硫酸、リン酸などが含まれ、またこれらに限定されない。また、有機酸の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸など)、アリルスルホン酸(ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸など)などが挙げられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくは、塩酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩である。
塩の例としては、親化合物に存在する酸性部分が、金属イオン(例えばアルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム又はマグネシウム塩、アンモニウム塩アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオンなど)により置換されるか、あるいは有機塩基(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、など)と調整されたときに形成される塩が挙げられ、またこれらに限定されない。これらのうち好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
溶媒和物が含む溶媒の例には、一般的な有機溶剤のいずれも含まれる。具体的には、アルコール(例、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン、ヘプタン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ニトリル(例、アセトニトリル)、ケトン(アセトン)などが挙げられる。好ましくは、アルコール(例、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブタノール)の溶媒和物である。これらの溶媒は、前記化合物の合成時に用いられる反応溶媒であっても、合成後の晶析精製の際に用いられる溶媒であってもよく、又はこれらの混合であってもよい。
また、2種類以上の溶媒を同時に含んでもよいし、水と溶媒を含む形(例えば、水とアルコール(例えば、メタノール、エタノール、t−ブタノールなど)など)であってもよい。
なお、前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される構造を有する化合物を、水や溶媒、塩を含まない形態で添加しても、本実施形態における光学フィルム(以下、「光学フィルム」は基本的に位相差フィルムを指す。)中において、水和物、溶媒和物又は塩を形成してもよい。
前記一般式(1)、(2)、(1.1)又は(1.2)で表される構造を有する化合物の分子量は特に制限はないが、小さいほど樹脂との相溶性に優れ、大きいほど環境湿度の変化に対する光学値の変動抑制効果が高いため、150〜2000であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましく、300〜1000であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る含窒素複素環化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることがより好ましい。
Figure 2016151648
(式中、Aはピラゾール環を表し、Ar及びArはそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。Rは水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、qは1〜2の整数を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
Ar及びArで表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、それぞれ一般式(1)で挙げた5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましい。また、Ar及びArの置換基としては、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物で示したのと同様な置換基が挙げられる。
の具体例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)等が挙げられる。
qは1〜2の整数を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。
以下に、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物の具体例を例示する。前記5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有する化合物は、以下の具体例によって何ら限定されることはない。なお、前述のように、以下の具体例は互変異性体であってもよく、水和物、溶媒和物又は塩を形成していてもよい。
Figure 2016151648
含窒素複素環化合物の具体例としては、上記で示した例示化合物1〜3のほか、国際公開番号WO2014/109350A1の段落〔0140〕〜〔0214〕に記載の化合物を挙げることができる。
〔一般式(1)で表される構造を有する化合物の合成方法〕
次に、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の合成方法について説明する。
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、公知の方法で合成することができる。前記一般式(1)で表される構造を有する化合物において、1,2,4−トリアゾール環を有する化合物は、いかなる原料を用いても構わないが、ニトリル誘導体又はイミノエーテル誘導体と、ヒドラジド誘導体を反応させる方法が好ましい。反応に用いる溶媒としては、原料と反応しないと溶媒であれば、いかなる溶媒でも構わないが、エステル系(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル等)、アミド系(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル系(エチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等)、芳香族炭化水素系(例えば、トルエン、キシレン等)、水を挙げられることができる。使用する溶媒として、好ましくは、アルコール系溶媒である。また、これらの溶媒は、混合して用いても良い。
溶媒の使用量は、特に制限はないが、使用するヒドラジド誘導体の質量に対して、0.5〜30倍量の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは、1.0〜25倍量であり、特に好ましくは、3.0〜20倍量の範囲内である。
ニトリル誘導体とヒドラジド誘導体を反応させる場合、触媒を使用しなくても構わないが、反応を加速させるために触媒を使用する方が好ましい。使用する触媒としては、酸を用いても良く、塩基を用いても良い。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等が挙げられ、好ましくは塩酸である。酸は、水に希釈して添加しても良く、ガスを系中に吹き込む方法で添加しても良い。塩基としては、無機塩基(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)及び有機塩基(ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート、ナトリウムブチラート、カリウムブチラート、ジイソプロピルエチルアミン、N,N′−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルモルホリン、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、ピリジン等)のいずれを用いて良く、無機塩基としては、炭酸カリウムが好ましく、有機塩基としては、ナトリウムエチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムブチラートが好ましい。無機塩基は、粉体のまま添加しても良く、溶媒に分散させた状態で添加しても良い。また、有機塩基は、溶媒に溶解した状態(例えば、ナトリウムメチラートの28%メタノール溶液等)で添加しても良い。
触媒の使用量は、反応が進行する量であれば特に制限はないが、形成されるトリアゾール環に対して1.0〜5.0倍モルの範囲内が好ましく、更に1.05〜3.0倍モルの範囲内が好ましい。
イミノエーテル誘導体とヒドラジド誘導体を反応させる場合は、触媒を用いる必要がなく、溶媒中で加熱することにより目的物を得ることができる。
反応に用いる原料、溶媒及び触媒の添加方法は、特に制限がなく、触媒を最後に添加しても良く、溶媒を最後に添加しても良い。また、ニトリル誘導体を溶媒に分散若しくは溶解させ、触媒を添加した後、ヒドラジド誘導体を添加する方法も好ましい。
反応中の溶液温度は、反応が進行する温度であればいかなる温度でも構わないが、好ましくは、0〜150℃の範囲内であり、更に好ましくは、20〜140℃の範囲内である。また、生成する水を除去しながら、反応を行っても良い。
反応溶液の処理方法は、いかなる手段を用いても良いが、塩基を触媒として用いた場合は、反応溶液に酸を加えて中和する方法が好ましい。中和に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸又は酢酸等が挙げられるが、特に好ましくは酢酸である。中和に使用する酸の量は、反応溶液のpHが4〜9になる範囲であれば特に制限はないが、使用する塩基に対して、0.1〜3倍モルが好ましく、特に好ましくは、0.2〜1.5倍モルの範囲内である。
反応溶液の処理方法として、適当な有機溶媒を用いて抽出する場合、抽出後に有機溶媒を水で洗浄した後、濃縮する方法が好ましい。ここでいう適当な有機溶媒とは、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン、エーテル等非水溶性の溶媒、又は、前記非水溶性の溶媒とテトラヒドロフラン又はアルコール系溶媒との混合溶媒のことであり、好ましくは酢酸エチルである。
一般式(1)で表される構造を有する化合物を晶析させる場合、特に制限はないが、中和した反応溶液に水を追加して晶析させる方法、若しくは、一般式(1)で表される構造を有する化合物が溶解した水溶液を中和して晶析させる方法が好ましい。
(例示化合物1の合成)
例示化合物1は以下のスキームによって合成することができる。
Figure 2016151648
脱水テトラヒドロフラン520mlに、アセトフェノン80g(0.67mol)、イソフタル酸ジメチル52g(0.27mol)を加え、窒素雰囲気下、氷水冷で撹拌しながら、ナトリウムアミド52.3g(1.34mol)を少しずつ滴下した。氷水冷下で3時間撹拌した後、水冷下で12時間撹拌した。反応液に濃硫酸を加えて中和した後、純水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶にメタノールを加えて懸濁洗浄することにより、中間体Aを55.2g得た。
テトラヒドロフラン300ml、エタノール200mlに中間体A55g(0.15mol)を加え、室温で撹拌しながら、ヒドラジン1水和物18.6g(0.37mol)を少しずつ滴下した。滴下終了後、12時間加熱還流した。反応液に純水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製することによって、例示化合物1を27g得た。
得られた例示化合物1のH−NMRスペクトルは以下のとおりである。なお、互変異性体の存在により、ケミカルシフトが複雑化するのを避けるために、測定溶媒にトリフルオロ酢酸を数滴加えて測定を行った。
H−NMR(400MHz、溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):8.34(1H、s)、7.87〜7.81(6H、m)、7.55〜7.51(1H、m)、7.48−7.44(4H、m)、7.36−7.33(2H、m)、7.29(1H、s)
(例示化合物2の合成)
例示化合物2は以下のスキームによって合成することができる。
Figure 2016151648
n−ブタノール40mlに、1,3−ジシアノベンゼン2.5g(19.5mmol)、ベンゾイルヒドラジン7.9g(58.5mmol)、炭酸カリウム9.0g(68.3mmol)を加え、窒素雰囲気下、120℃で24時間撹拌した。反応液を冷却後、純水40mlを加え、室温で3時間撹拌した後、析出した固体を濾別し、純水で洗浄した。得られた固体に水及び酢酸エチルを加えて分液し、有機層を純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、例示化合物2を5.5g得た。収率は、1,3−ジシアノベンゼン基準で77%であった。
得られた例示化合物2のH−NMRスペクトルは以下のとおりである。
H−NMR(400MHz、溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):8.83(1H、s)、8.16〜8.11(6H、m)、7.67−7.54(7H、m)
その他の化合物についても同様の方法によって合成が可能である。
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物の使用方法について〉
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、適宜量を調整して光学フィルムに含有することができるが、添加量としては、光学フィルムを構成する樹脂に対して、0.1〜10質量%含むことが好ましく、特に、0.5〜5質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、光学フィルムの機械強度を損なうことなく、環境湿度の変化に依存した位相差の変動を低減することができる。
また、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の添加方法としては、光学フィルムを形成する樹脂に粉体で添加しても良く、溶媒に溶解した後、光学フィルムを形成する樹脂に添加しても良い。
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の中でも、末端にベンゼン環を有するもの(例示化合物1〜3など)は、後述する溶液流延製膜法で主溶媒として使用されるメチレンクロライドに対する溶解性(飽和溶解度)が10%以下と低い。このため、そのような難溶性の化合物を溶解釜に直接投入すると、輝点異物の原因となる不溶解物が生じる。そこで、含窒素複素環化合物のうち、難溶性の化合物を用いる場合は、上記化合物を溶媒(メチレンクロライド単体)に添加して、攪拌し、分散させた後、光学フィルムを形成する樹脂とともに溶解釜に投入することが望ましい。
〔有機エステル〕
本実施形態の光学フィルム(位相差フィルム)は、有機エステルとして、糖エステル、重縮合エステル、多価アルコールエステルから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、上記の重縮合エステルが、構造中に窒素原子を含まないことが、製造ライン内で冷却されたときに液状化してフィルターに付着し、含窒素複素環化合物のフィルター捕集物の嵩高さを小さくできるため、好ましい。中でも、糖エステルおよび重縮合エステルは、耐水系の可塑剤として機能するため、含水によるリタデーションRthの変動を抑える本実施形態の位相差フィルムに好適である。
(糖エステル)
糖エステルとは、フラノース環又はピラノース環の少なくともいずれかを含む化合物であり、単糖であっても、糖構造が2〜12個連結した多糖であってもよい。そして、糖エステルは、糖構造が有するOH基の少なくとも一つがエステル化された化合物が好ましい。糖エステルにおける平均エステル置換度が、4.0〜8.0の範囲内であることが好ましく、5.0〜7.5の範囲内であることがより好ましい。
糖エステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(A)で表される糖エステルを挙げることができる。
一般式(A)
(HO)−G−(O−C(=O)−R
上記一般式(A)において、Gは、単糖類又は二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基又は芳香族基を表し、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+n≦8であり、n≠0である。
一般式(A)で表される構造を有する糖エステルは、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(n)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(n)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本実施形態の光学フィルムの場合、平均エステル置換度が、5.0〜7.5の範囲内である糖エステルが好ましい。
上記一般式(A)において、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される糖エステルの単糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、これら例示する化合物には限定されない。
Figure 2016151648
また、二糖類残基の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロース等が挙げられる。
以下に、一般式(A)で表される糖エステルの二糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、これら例示する化合物には限定されない。
Figure 2016151648
一般式(A)において、Rは、脂肪族基又は芳香族基を表す。ここで、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(A)において、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計である。そして、3≦m+n≦8であることが必要であり、4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。なお、nが2以上である場合、−(O−C(=O)−R)基は互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシル等の各基が挙げられる。
また、Rの定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等の各環が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含む環が好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等の各環が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
糖エステルは、一つの分子中に二つ以上の異なった置換基を含有していても良く、芳香族置換基と脂肪族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の芳香族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の脂肪族置換基を1分子内に含有することができる。
また、2種類以上の糖エステルを混合して含有することも好ましい。芳香族置換基を含有する糖エステルと、脂肪族置換基を含有する糖エステルを同時に含有することも好ましい。
以下、一般式(A)で表される糖エステルの好ましい例を下記に示すが、これらの例示する化合物には限定されない。
Figure 2016151648
Figure 2016151648
〈合成例:一般式(A)で表される糖エステルの合成例〉
以下に、糖エステルの合成例を示す。
Figure 2016151648
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖を34.2g(0.1モル)、無水安息香酸を180.8g(0.8モル)、ピリジンを379.7g(4.8モル)、それぞれ仕込み、撹拌下で窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエンを1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を300g添加し、50℃で30分間撹拌した後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水を100g添加し、常温で30分間水洗した後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%で、糖エステルの平均エステル置換度が、6.57であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
当該糖エステルの添加量は、光学フィルムを構成する樹脂(例えばセルロースアシレート)に対して0.1〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、1〜15質量%の範囲で添加することがより好ましい。
糖エステルとしては、色相が10〜300であるものが好ましく、10〜40のものが好ましい。
(重縮合エステル)
本実施形態の光学フィルム(位相差フィルム)においては、有機エステルとして、下記一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルを用いることが好ましい。当該重縮合エステルはその可塑的な効果から、光学フィルムを構成する樹脂に対して1〜30質量%の範囲で含有することが好ましく、5〜20質量%の範囲で含有することがより好ましい。
一般式(4)
−(G−A)−G−B
上記一般式(4)において、B及びBは、それぞれ独立に脂肪族又は芳香族モノカルボン酸残基、若しくはヒドロキシ基を表す。Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコール残基、炭素数6〜12のアリールグリコール残基又は炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基を表す。Aは、炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。
重縮合エステルは、ジカルボン酸とジオールを反応させて得られる繰り返し単位を含む重縮合エステルであり、Aは重縮合エステル中のカルボン酸残基を表し、Gはアルコール残基を表す。
重縮合エステルを構成するジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸であり、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。特に芳香族、脂肪族を混合させることが好ましい。
重縮合エステルを構成するジオールは、芳香族ジオール、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであり、好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜4のジオールである。ジオールは、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
中でも、少なくとも芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことが好ましく、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを含むジカルボン酸と、炭素数1〜8のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことがより好ましい。
重縮合エステルの分子の両末端は、封止されていても、封止されていなくてもよい。
一般式(4)のAを構成するアルキレンジカルボン酸の具体例としては、1,2−エタンジカルボン酸(コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸(グルタル酸)、1,4−ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、1,5−ペンタンジカルボン酸(ピメリン酸)、1,8−オクタンジカルボン酸(セバシン酸)などから誘導される2価の基が含まれる。Aを構成するアルケニレンジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。Aを構成するアリールジカルボン酸の具体例としては、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
Aは、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸と炭素原子数8〜12のアリールジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
一般式(4)中のGは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、又は炭素原子数4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
における炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
における炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
は、1種類であっても、2種類以上が組み合わされてもよい。中でも、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基が好ましく、2〜5がさらに好ましく、2〜4が最も好ましい。
一般式(4)におけるB及びBは、各々芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基、若しくはヒドロキシ基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも安息香酸、パラトルイル酸が好ましい。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。中でも、アルキル部分の炭素原子数が1〜3であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
本実施形態において、重縮合エステルの重量平均分子量は、500〜3000の範囲であることが好ましく、600〜2000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量は前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
以下、一般式(4)で表される構造を有する重縮合エステルの具体例を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2016151648
Figure 2016151648
Figure 2016151648
以下、上記説明した重縮合エステルの具体的な合成例について記載する。
〈重縮合エステルP1〉
エチレングリコール180g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP1を得た。酸価0.20、数平均分子量450であった。
〈重縮合エステルP2〉
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸103g、アジピン酸244g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、下記重縮合エステルP2を得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
Figure 2016151648
〈重縮合エステルP3〉
1,4−ブタンジオール330g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,4−ブタンジオールを減圧留去することにより、重縮合エステルP3を得た。酸価0.50、数平均分子量2000であった。
〈重縮合エステルP4〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP4を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP5〉
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、p−トロイル酸680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、下記重縮合エステルP5を得た。酸価0.30、数平均分子量400であった。
Figure 2016151648
〈重縮合エステルP6〉
180gの1,2−プロピレングリコール、292gのアジピン酸、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP6を得た。酸価0.10、数平均分子量400であった。
〈重縮合エステルP7〉
180gの1,2−プロピレングリコール、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP7を得た。酸価0.10、数平均分子量320であった。
〈重縮合エステルP8〉
エチレングリコール251g、無水フタル酸244g、コハク酸120g、酢酸150g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中200℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルP8を得た。酸価0.50、数平均分子量1200であった。
〈重縮合エステルP9〉
上記重縮合エステルP2と同様の製造方法で、反応条件を変化させて、酸価0.10、数平均分子量315の重縮合エステルP9を得た。
〈多価アルコールエステル〉
本実施形態の位相差フィルムにおいては、多価アルコールエステルを含有することも好ましい。
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる化合物であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本実施形態で好ましく用いられる多価アルコールは、次の一般式(5)で表される。
一般式(5) R11−(OH)
ただし、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/又はフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアシレートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2016151648
Figure 2016151648
Figure 2016151648
Figure 2016151648
多価アルコールエステルは、位相差フィルム(セルロースエステル系樹脂)に対して0.5〜5質量%の範囲で含有することが好ましく、1〜3質量%の範囲で含有することがより好ましく、1〜2質量%の範囲で含有することが特に好ましい。
多価アルコールエステルは、従来公知の一般的な合成方法に従って合成することができる。
〔その他の添加剤〕
〈リン酸エステル〉
本実施形態の位相差フィルムは、リン酸エステルを含有することもできる。リン酸エステルとしては、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等が挙げられる。
具体的なリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
〈グリコール酸のエステル類〉
また、多価アルコールエステル類の1種として、グリコール酸のエステル類(グリコレート化合物)を用いることができる。グリコレート化合物としては、特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられ、好ましくはエチルフタリルエチルグリコレートである。
〈微粒子(マット剤)〉
位相差フィルムは、表面の滑り性を高めるため、必要に応じて微粒子(マット剤)をさらに含有してもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムなどが含まれる。中でも、二酸化ケイ素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化ケイ素である。
二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。中でも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させるため特に好ましい。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmの範囲であることが好ましく、7〜20nmの範囲であることがより好ましい。一次粒子径が大きい方が、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの範囲の二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子又はその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50〜200万倍で一次粒子又は二次凝集体を観察し、一次粒子又は二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、位相差フィルムを形成する樹脂に対して0.05〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量%の範囲であることがより好ましい。
〈位相差制御剤〉
液晶表示装置等の画像表示装置の表示品質の向上のため、位相差フィルム中に位相差制御剤を添加するか、配向膜を形成して液晶層を設け、偏光板保護フィルムと液晶層由来の位相差を複合化することにより、位相差フィルムに光学補償能を付与することができる。
位相差制御剤としては、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているような、2以上の芳香族環を有する芳香族化合物、特開2006−2025号公報に記載の棒状化合物等が挙げられる。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。この芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む芳香族性ヘテロ環であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、一般に不飽和ヘテロ環である。なかでも、特開2006−2026号公報に記載の1,3,5−トリアジン環が好ましい。
なお、一般式(1)で表される構造を有する化合物は、位相差制御剤としても機能する。このため、一般式(1)で表される構造を有する化合物は、一つの化合物で位相差制御機能と、含水によるリタデーションRthの変動の抑制機能との両方を発揮することができる。
これらの位相差制御剤の添加量は、フィルム基材として使用する樹脂100質量%に対して、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましく、1〜10質量%の範囲内であることがより好ましい。
〔位相差フィルムの製造方法〕
本実施形態の位相差フィルムは、例えば溶液流延製膜法や溶融流延製膜法によって製造することができる。ただし、薄膜の位相差フィルムを製造する場合は、含水によるリタデーションRthの低下を抑えるために、リタデーション上昇剤としての含窒素複素環化合物の添加量を多くする必要がある。含窒素複素環化合物の添加量が多い場合、溶融流延製膜法では、含窒素複素環化合物が溶融せず、製膜過程で焦げ付き等が発生するため、溶液流延製膜法で製膜することが望ましい。以下、本実施形態の位相差フィルムを溶液流延製膜法で製造する例について説明する。
(溶液流延製膜法)
図2は、溶液流延製膜法によって位相差フィルムを製造する装置の一例を模式的に示している。溶液流延製膜法では、(1)少なくともセルロースエステル系樹脂、含窒素複素環化合物及び有機エステルなどの添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、(2)ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、(3)金属支持体上で流延したドープの溶媒を蒸発させてウェブを得る工程、(4)ウェブを金属支持体から剥離する工程、(5)剥離したウェブ(フィルム)を延伸し、乾燥させる工程、6)フィルムを冷却した後に巻き取る工程、が順に行われる。
(1)ドープ調製工程
この工程では、セルロースエステル系樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜31中で当該セルロースエステル系樹脂、場合によって、含窒素複素環化合物、糖エステル、重縮合エステル、多価アルコールエステル、又はその他の化合物を撹拌しながら溶解し、ドープを形成する。あるいは、当該セルロースエステル系樹脂溶液に、含窒素複素環化合物、糖エステル、重縮合エステル、多価アルコールエステル、又はその他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する。
位相差フィルムを溶液流延製膜法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル系樹脂及びその他の化合物を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができる。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ないときは非塩素系有機溶媒系でのセルロースエステル系樹脂及びその他の化合物の溶解を促進する役割もある。位相差フィルムの製膜においては、得られる位相差フィルムの平面性を高める点から、アルコール濃度が0.5〜15.0質量%の範囲内にあるドープを用いて製膜する方法を適用することができる。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、セルロースアシレート及びその他の化合物を、計15〜45質量%の範囲で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からメタノール及びエタノールが好ましい。
セルロースエステル系樹脂、含窒素複素環化合物、糖エステル、重縮合エステル、及び多価アルコールエステル、又はその他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースエステル系樹脂の濃度は、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時に発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去できる。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
(2)流延工程
この工程では、溶解釜31中のドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ32に送液し、無限に移送する無端の金属支持体33上の流延位置に、加圧ダイ32からドープを流延する。加圧ダイ32は、ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい点で好ましい。加圧ダイ32には、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために、加圧ダイ32を金属支持体33上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
金属支持体33は、2個のローラ34・34によって張架されるステンレススティールベルトで構成されている。金属支持体33としては、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、上記のステンレススティールベルト以外に、鋳物で表面をメッキ仕上げした金属ドラム等を用いることもできる。
流延(キャスト)の幅は、1〜4mの範囲、好ましくは1.5〜3mの範囲、さらに好ましくは2〜2.8mの範囲とすることができる。流延工程での金属支持体33の表面温度は、−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度、さらに好ましくは、−30〜0℃の範囲に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃の範囲が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態で支持体から剥離することも好ましい方法である。
金属支持体33の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体33の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体33の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は、溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
(3)溶媒蒸発工程
この工程では、金属支持体33上に流延されたドープによって形成された膜(ウェブ)を加熱し、溶媒を蒸発させる。溶媒を蒸発させるには、ウェブの表面(金属支持体33とは反対側)から風を吹かせる方法、金属支持体33の裏面(ウェブとは反対側の面)から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の金属支持体33上のウェブを、40〜100℃の雰囲気下で、金属支持体33上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で当該ウェブを金属支持体33から剥離することが好ましい。
(4)剥離工程
この工程では、金属支持体33上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離ローラ35によって所定の剥離位置で剥離する。以降、剥離後のウェブを、ウェブ36とする。ウェブ36は、次工程に送られる。
金属支持体33上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃の範囲であり、さらに好ましくは、11〜30℃の範囲である。
なお、剥離時点での金属支持体33上でのウェブの残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体33の長さ等により、50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましい。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。なお、ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/
(ウェブの加熱処理後質量)×100
ここで、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体33からウェブを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本実施形態においては、金属支持体33上の剥離位置における温度を、−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
(5)延伸、乾燥工程
この工程では、予備乾燥工程、延伸工程、本乾燥工程が順に行われる。予備乾燥は、必要に応じて行われればよい。
〈予備乾燥工程〉
金属支持体33から剥離して得られたウェブ36を乾燥させる。ウェブ36の乾燥は、ウェブ36を、上下に配置した多数のローラにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のようにウェブ36の両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブ36を乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラ、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブ36の乾燥工程における乾燥温度は、好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下、100℃以上で、10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃の範囲内、更に好ましくは110〜160℃の範囲内であることが望ましい。
〈延伸工程〉
この工程では、金属支持体33から剥離され、必要に応じて予備乾燥されたウェブ36に対して、MD方向及び/又はTD方向への延伸が行われる。このとき、少なくともテンター延伸装置37によって、TD方向に延伸することが好ましい。
延伸工程での延伸は、一軸延伸又は二軸延伸とすることができる。二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。
本実施形態の位相差フィルムは、延伸後の膜厚が所望の範囲になるように、MD方向及び/又はTD方向に、好ましくはTD方向に、(Tg+15)〜(Tg+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。なお、Tgは、フィルムのガラス転移温度(℃)である。上記温度範囲で延伸を行うと、リタデーションの調整がしやすく、また延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れた偏光板用の位相差フィルムが得られる。延伸温度は、(Tg+20)〜(Tg+40)℃の範囲であることが好ましい。
なお、ここでいうガラス転移温度Tgは、市販の示差走査熱量測定器を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。具体的な位相差フィルムのガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定する。
本実施形態の位相差フィルムは、ウェブ36を少なくともTD方向に1.1倍以上延伸することが好ましい。延伸の範囲は、元幅に対して1.1〜1.5倍であることが好ましく、1.05〜1.3倍であることがより好ましい。上記範囲内であれば、フィルム中の分子の移動が大きく、所望のリタデーション値が得られるばかりではなく、フィルムの寸法変化の挙動を所望の範囲内に制御することができる。
さらに、当該延伸は製膜した後残留溶剤量が40質量%以上であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始することが好ましく、残留溶剤量が40質量%未満であるときにTD方向に延伸することが好ましい。
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは150〜170N/mである。剥離後のウェブは高残留溶剤状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行うことができる。ウェブが乾燥し、残留溶剤量が減少するに従って、MD方向への延伸率は低下する。
なお、MD方向の延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とテンター運転速度から算出できる。
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
本実施形態の位相差フィルムは、延伸することにより必然的にリタデーションを有するが、面内リタデーションRo、及び厚さ方向のリタデーションRtの各値は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率nx、ny、nzから算出することができる。
本実施形態の位相差フィルムは、下記式(i)で定義される面内方向のリタデーションRoおよび下記式(ii)で定義される厚さ方向のリタデーションRthが以下の範囲内にあることが、VAモード型液晶表示装置に具備された場合に視認性を向上する観点から好ましい。位相差フィルムは、少なくともTD方向に延伸倍率を調整しながら延伸することで、リタデーションRo、Rthを上記範囲内に調整することができる。
30nm<Ro<70nm
100nm<Rth<300nm
式(i):Ro=(nx−ny)×d(nm)
式(ii):Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
〔式(i)及び式(ii)において、nxは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nyは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nzは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、フィルムの厚さ(nm)を表す。〕
〈本乾燥工程〉
延伸後のウェブ36は、フィルムFとして乾燥装置38に搬送され、そこで上述した予備乾燥と同様の手法で乾燥が行われる。なお、本乾燥工程での乾燥条件は、予備乾燥工程と異なっていてもよい。本乾燥工程では、セルロースエステル系樹脂と添加剤の配向ずれを生じにくくして、含水およびその後の乾燥および湿熱変動によるリタデーションRthの変動を抑える観点から、延伸後に、延伸温度よりも低い温度である100℃以上で、5分以上乾燥が行われることが望ましく、110〜150℃で10〜20分間の乾燥が行われることがより望ましい。
〈ナーリング加工〉
上記の本乾燥の終了後、フィルムFの巻取前に、スリッターを設けてフィルムFの端部を切り落とすことが、良好な巻姿を得るため好ましい。更に、フィルム幅手両端部には、ナーリング加工を施すことが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーを押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。フィルムFの幅手両端部のナーリングの高さは、4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。
(6)巻取工程
この工程では、残留溶媒量が2質量%以下となってから、巻取装置39にてフィルムFを巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより、寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
フィルムFの巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
〔位相差フィルムの物性〕
(ヘイズ)
本実施形態の位相差フィルムは、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学用途のフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
(平衡含水率)
本実施形態の位相差フィルムは、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平衡含水率を4%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
(フィルム長、幅、膜厚)
本実施形態の位相差フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本実施形態の位相差フィルムの幅は、1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
位相差フィルムの膜厚は、表示装置の薄型化、生産性の観点から、10〜100μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が10μm以上であれば、一定以上のフィルム強度や位相差を発現させることができる。膜厚が100μm以下であれば、熱や湿度による位相差の変動を抑えることができる。好ましい膜厚の範囲は、20〜70μmであり、さらに好ましくは、20〜40μmである。
位相差フィルムの膜厚ムラは、厚さ方向又は幅方向のいずれも0〜5μmの範囲内が好ましく、より好ましくは0〜3μmの範囲内であり、さらに好ましくは0〜2μmの範囲内である。
〔実施例〕
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<位相差フィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、微粒子分散液1を調製した。
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分撹拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
〈ドープの調製〉
次に、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。そして、溶剤の入った加圧溶解タンクに総アシル基置換度2.56のセルロースアセテートを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。そして、以下のものを密閉されている溶解釜に投入し、撹拌しながら溶解してドープを調製した。
《ドープの組成》
メチレンクロライド 365質量部
エタノール 50質量部
セルロースアシレート(セルロースアセテート、アセチル基置換度2.56)
100質量部
含窒素複素環化合物(例示化合物1、ピラゾール系化合物) 2質量部
糖エステル 10質量部
重縮合エステル1−15 2質量部
微粒子添加液1 1質量部
なお、上記の糖エステルとしては、BzSc(ベンジルサッカロース:糖残基がB−2で、置換基が化14に記載のa1〜a4の混合物、平均エステル置換度=5.5)を用いた。
〈フィルムの製膜〉
次に、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したドープによって形成されるウェブ中の残留溶媒量が75質量%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上からウェブを剥離した。その後、剥離したウェブを、テンターを用いて幅方向に30%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。なお、テンターでの延伸温度は160℃であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させた。延伸後の乾燥温度は100℃であり、乾燥時間は5分であった。以上のようにして、乾燥膜厚35μmの位相差フィルム101を得た。
<位相差フィルム102の作製>
セルロースアシレートとして、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9.プロピオニル基置換度0.6)を用いてドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム102を作製した。
<位相差フィルム103の作製>
ウェブの延伸後の乾燥温度を120℃とし、乾燥時間を12分とした以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム103を作製した。
<位相差フィルム104の作製>
含窒素複素環化合物(例示化合物1)の添加量を6質量部に変更してドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム104を作製した。
<位相差フィルム105の作製>
含窒素複素環化合物を例示化合物1から例示化合物2(トリアゾール系化合物)に変更し、その添加量を3質量部としてドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム105を作製した。
<位相差フィルム106の作製>
含窒素複素環化合物を例示化合物1から例示化合物3(イミダゾール系化合物)に変更し、その添加量を3質量部としてドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム106を作製した。
<位相差フィルム107の作製>
含窒素複素環化合物を例示化合物1から下記構造式のピリミジン系化合物に変更し、その添加量を4質量部としてドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム107を作製した。
Figure 2016151648
ただし、Y=−N−、Z=−CH、−Q−R=−H、R=m(メタ)−Me(メチル基)である。
<位相差フィルム108の作製>
ピリミジン系化合物の添加量を3質量部に変更してドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム107の作製と同様にして、位相差フィルム108を作製した。
<位相差フィルム109の作製>
リタデーション上昇剤(含窒素複素環化合物)を添加せずにドープを調製し、このドープを用いてフィルムを製膜した以外は、位相差フィルム101の作製と同様にして、位相差フィルム109を作製した。
<RoおよびRthの測定>
上記作製した位相差フィルム101〜109の面内方向のリタデーションRoおよび厚み方向のリタデーションRthを、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて測定した。RoおよびRthは、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下、測定波長590nmにおいて、三次元屈折率測定を行って得られた屈折率n、n、nから、以下の式に基づいて算出される。
Ro=(n−n)×d(nm)
Rth={(n+n)/2−n}×d(nm)
(式中、nはフィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nはフィルムの面内方向において前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nはフィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dはフィルムの厚さ(nm)を表す。)
<Rth変動量の測定>
上記作製した位相差フィルム101〜109について、下記のようにして、厚み方向のリタデーションRthの変動量を測定した。
(1.含水によるRth変動量)
まず、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、作製した位相差フィルムを2枚のスライドガラスで挟んだ状態で、面内方向のリタデーションRoおよび厚み方向のリタデーションRthを測定し、これをRo1、Rth1とした。ちなみに、このRo1、Rth1は、上記で測定したRoおよびRthと同じであった。
次に、位相差フィルムを23℃の純水中に24時間浸した後、水で湿った位相差フィルムをスライドガラスで挟み、上記と同様の方法でRo、Rthを測定し、これをRo2、Rth2とした。このとき、スライドガラスとフィルムの間に気泡が入らないように注意した。
そして、測定した水浸漬前の厚み方向のリタデーションRth1と、水浸漬後の厚み方向のリタデーションRth2とから、下記式により、含水によるリタデーションRthの変動量ΔRth1(nm)を算出した。
ΔRth1=Rth2−Rth1
(2.含水後のRth変動量)
〈乾燥によるRth変動量〉
上記の水浸漬後、常温(温度23℃)、相対湿度55%の環境下で位相差フィルムを24時間放置して自然乾燥させた。そして、上記と同様の方法で位相差フィルムの乾燥後の厚み方向のリタデーションRth3を測定し、水浸漬前の23℃、相対湿度55%での上記Rth1と、乾燥後のRth3とから、下記式により、変動量ΔRth2(nm)を算出した。
ΔRth2=Rth3−Rth1
〈高温高湿によるRth変動量〉
上記の水浸漬後、高温高湿(温度60℃、相対湿度90%)の環境下で位相差フィルムを強制乾燥させた。そして、乾燥後の厚み方向のリタデーションRth4を上記と同様の方法で測定し、水浸漬前の23℃、相対湿度55%での上記Rth1と、乾燥後のRth4とから、下記式により、変動量ΔRth2(nm)を算出した。
ΔRth2=Rth4−Rth1
<偏光板の作製>
(偏光子の作製)
厚さ70μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g及び水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ15μmの偏光子を得た。
(偏光板の作製)
偏光子の一方に貼合するセルロースアシレートフィルムとして、市販の偏光板保護フィルムである厚さ60μmのコニカミノルタ製KC6UAを用意した。
工程1:位相差フィルムおよびKC6UAを、それぞれ60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側にケン化処理を施した。
工程2:偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、この一方の面に、工程1で処理した位相差フィルムを、反対側の面にKC6UAを載せて配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルム、偏光子、KC6UAを、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に、工程4で貼合した積層体を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
以上の工程を、作製した位相差フィルム101〜109のそれぞれについて行って、偏光板を作製した。
≪パネル評価≫
SAMSUNG製の液晶表示装置(型番:UN55HU-8500)の液晶セルの両面に予め貼合されていた偏光板を剥がし、上記で作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に、位相差フィルムが液晶セル側となるように、アクリル系粘着剤を用いて貼合した。そして、このようにして作製した液晶表示装置を、濡れた布を表面に貼り付けて3日間放置した。その後、上記布を剥がして23℃・55%RHの環境で24時間放置して乾燥させた。さらにその後、液晶表示装置のバックライトを1時間連続点灯させ、バックライトの熱によって高温高湿環境とした後、画面を黒表示にしてムラが観察されるかを、以下の評価基準に基づいて目視評価した。そして、このような評価を、位相差フィルム101〜109を有する偏光板をそれぞれ貼り付けた液晶表示装置ごとに行った。
〈評価基準〉
◎:ムラが全く観察されない。
○:目視の角度によってはやや弱いムラが観察されるが、問題のないレベルである。
△:目視の角度によらず弱いムラが観察され、問題となるレベルである。
×:画面に強いムラがはっきりと観察される。
表1は、各位相差フィルム101〜109についての評価の結果を示している。また、実施例と比較例との対応関係についても併せて表1に示す。
Figure 2016151648
表1の結果より、実施例の位相差フィルムを用いた液晶表示装置では、偏光板を湿らせて乾燥させた後でも、表示ムラがほとんどないことがわかる。これは、実施例の位相差フィルムでは、
ΔRth1≧−14nm
−4nm≦ΔRth2≦4nm
を両方とも満足しており、含水前後での厚み方向のリタデーション変動、含水後の常温乾燥および高温高湿による厚み方向のリタデーションの変動が抑えられているためと考えられる。
なお、ΔRth2の上限(4nm)は、室温乾燥によるΔRth2の値であって、実施例1等のΔRth2の値(1nm)と、比較例3のΔRth2の値(6nm)との間の値を採用している。また、ΔRth2の下限(−4nm)は、湿熱耐久によるΔRth2の値であって、実施例1等のΔRth2の値(−1nm)よりも小さい範囲で、ΔRth2の上限と絶対値が同じ値を採用している。
また、位相差フィルムに含まれるリタデーション上昇剤としての含窒素複素環化合物が、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環を有する化合物のいずれかであることで、ΔRth1およびΔRth2を上記の範囲に、バランスよく抑えることができると言える。特に、含窒素複素環化合物が、ピラゾール系化合物である場合は、使用するセルロースエステル系樹脂の種類に関係なく、ΔRth1およびΔRth2をバランスよく抑えることができ、より望ましい形態であると言える。
また、総アシル基置換度が、2.2〜2.8であるセルロースエステル系樹脂を用いて、位相差フィルムを膜厚20〜40μmの薄膜で構成する場合において、リタデーション上昇剤を添加しない場合は、含水によるリタデーションRthの低下を抑えることが困難となる(比較例4参照)。また、リタデーション上昇剤を添加しても、その種類および添加量によっては、ΔRth2が所望の範囲に収まらない場合もある(比較例2、3参照)。各実施例のように、上記セルロースエステル系樹脂を用いて薄膜の位相差フィルムを構成する場合において、リタデーション上昇剤の種類および添加量を適切に選択(調整)することにより、ΔRth1およびΔRth2の両方を所望の範囲に確実に収めることができる。
また、各実施例の結果より、位相差フィルムを溶液流延製膜法で製膜する場合において、リタデーション上昇剤の種類および添加量を適切に設定し、延伸後の乾燥条件を、延伸温度よりも低い温度である100℃以上で5分以上とすることにより、ΔRth1およびΔRth2を上記した所望の範囲に収めることができると言える。特に、実施例3の結果より、延伸後の乾燥温度を110〜150℃とし、乾燥時間を10〜20分間とすることにより、ΔRth1およびΔRth2を抑えて、液晶表示装置における表示ムラを確実に抑えることができると言える。
なお、上記した乾燥温度範囲の下限(110℃)は、実施例1等の乾燥温度100℃と実施例3の乾燥温度120℃との間の温度を採用しており、乾燥温度150℃は、実施例3の乾燥温度120℃と実施例1等の延伸温度160℃との間の温度を採用している。また、上記した乾燥時間の範囲の下限(10分)は、実施例1等の5分と実施例3の12分との間の値を採用しており、上限(20分)は、実施例3の12分よりも長く、フィルムの生産性に支障を来さない値を採用している。
本発明の位相差フィルムは、偏光板およびVA型の液晶表示装置に利用可能である。
1 液晶表示装置(垂直配向型液晶表示装置)
4 液晶セル
5 偏光板
11 偏光子
13 光学フィルム(位相差フィルム)
33 金属支持体
36 ウェブ(流延膜)

Claims (11)

  1. セルロースエステル系樹脂を含む位相差フィルムであって、
    該フィルムを水に浸漬した後の厚み方向のリタデーションから、水に浸漬する前の厚み方向のリタデーションを差し引いた値をΔRth1(nm)としたとき、
    ΔRth1≧−14nm
    であり、
    水浸漬後、該フィルムを23℃55%RHで乾燥させたときの水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量、および、該フィルムを60℃90%RHの環境に晒した後の、水浸漬前からの厚み方向のリタデーションの変動量を、ともにΔRth2(nm)としたとき、
    −4nm≦ΔRth2≦4nm
    であることを特徴とする位相差フィルム。
  2. リタデーション上昇剤としての含窒素複素環化合物を含み、
    前記含窒素複素環化合物は、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環を有する化合物の中から選択される少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 前記含窒素複素環化合物が、下記一般式で表される構造を有する化合物であることを特徴とする請求項2に記載の位相差フィルム。
    Figure 2016151648
    (式中Aはピラゾール環を表し、Ar及びArはそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。Rは水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、qは1〜2の整数を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
  4. 膜厚が20〜40μmであり、
    前記セルロースエステル系樹脂の総アシル基置換度が、2.2〜2.8であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の位相差フィルム。
  5. 耐水系の添加剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位相差フィルム。
  6. 前記添加剤は、糖エステルおよび重縮合エステルの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項5に記載の位相差フィルム。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の位相差フィルムと、
    前記位相差フィルムが貼り合わされる偏光子とを有していることを特徴とする偏光板。
  8. 請求項7に記載の偏光板と、
    前記偏光板が貼り合わされる液晶セルとを有していることを特徴とする垂直配向型液晶表示装置。
  9. 前記偏光板は、前記液晶セルに対して視認側に位置し、かつ、前記位相差フィルムが前記偏光子に対して前記液晶セル側となるように、前記液晶セルに貼り合わされていることを特徴とする請求項8に記載の垂直配向型液晶表示装置。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の位相差フィルムを溶液流延製膜法によって製造する位相差フィルムの製造方法であって、
    前記セルロースエステル系樹脂を含むドープを支持体上に流延して乾燥させ、前記支持体から流延膜を剥離する工程と、
    剥離した前記流延膜を延伸する工程と、
    前記延伸した前記流延膜を100℃以上で5分以上乾燥させる工程とを有していることを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
  11. 前記流延膜を乾燥させる工程では、前記流延膜を110〜150℃で10〜20分間乾燥させることを特徴とする請求項10に記載の位相差フィルムの製造方法。
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