JP2016151036A - アーク式底吹き電気炉における撹拌方法 - Google Patents
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Abstract
Description
1)ガスを容器下部から溶融金属内に吹込む方法。
2)ガスを溶融金属の上方から溶融金属内に吹込む方法。
3)電磁力を用いる方法。
なお、上記した3つの方法を複合的に用いる場合もある。
上記1)の方法は、転炉やAOD等の一次吹酸脱炭精錬工程や、VODやVD及びLF等の仕上精錬工程で、最終目標成分となるまでの脱炭精錬や還元精錬を行う場合、また、電気炉等で鉄屑等の溶解を行う場合、等に用いられている。
上記2)の方法は、トーピードカーもしくは溶融金属搬送容器で溶銑予備処理を行う場合、TNやPI等で粉体吹込みを行う場合、還元精錬を行う場合、等に用いられている。
上記3)の方法は、電気炉等で鉄屑等の溶解を行う場合、また、ASEA−SKF等で還元精錬を行う場合、等に用いられている。
また、上記3)の方法は、撹拌力を高めるために強力な電磁力が必要となることから、新たな設備が必要となって設備コストが高額となり、また、多くの電力が必要となってランニングコストがかさむ、といった課題がある。
このため、撹拌方法としては、上記1)の方法が、現在主流となっている。
しかし、上記1)の方法を用いても、容器の形状やガスの吹込み位置によって撹拌力が左右されるため、最適な形態下でのガス吹込み条件の設定が困難であり、容器内での溶融金属の反応効率を十分に高く維持できないといった課題があった。
この方法は、同一の電気炉でステンレス鋼と一般鋼(機械構造用鋼)の切換え溶解を行う方法であり、電気炉の操業回数全体のうち、比較的初期のガスの吹込み流量が安定している時期に、ガスの吹込み流量を高流量にして、強撹拌力を必要とするステンレス鋼を溶解処理し、その後、ガスの吹込み流量を低流量にして、一般鋼を溶解処理する方法である。これにより、高流量の確保と羽口寿命の延長ができる。
そして、特許文献3には、電気炉の炉床耐火物の温度分布から炉内の未溶解状況を推定し、この状況に応じて、羽口(炉床羽口)からのガス吹込み流量を制御し、溶解を促進する方法が提案されている。
更に、特許文献4には、電気炉の炉底に配設する羽口の配設位置を、この羽口と電極及び炉壁との離間距離が、羽口からのガス吹込み条件で算出される値以上に確保された位置とすることで、羽口から大流量のガス吹込みを行った際の電極及び炉壁の損耗を防止する方法が提案されている。
特許文献1の方法では、ステンレス鋼の溶解処理時のガス吹込みが、必ずしも最適な形態でなされているとはいえず、また、ステンレス鋼と一般鋼との抱き合わせ処理が必要であり、汎用的な方法とはいえない。
特許文献2の方法は、浸漬ランスといった新たな設備を必要とすること、溶融金属上方からのランスの浸漬では物理的な制約から複数化が難しいこと、ステンレス鋼の溶解時の酸素吹精は溶融金属中のクロムの酸化を招くことから、好ましくない。
特許文献3の方法では、一般に断熱特性のある耐火物の温度変化が炉内の温度変化に対して時間遅れを生じるため、羽口から吹込むガスの流量制御に遅れが生じるといった課題や、炉床耐火物の損耗状況に伴って炉床耐火物の温度が変化するため、炉内の未溶解状況を正確に把握するのが困難であるといった課題がある。
更に、特許文献4の方法では、羽口を配設する箇所が炉底の狭い範囲に限られることから、隣り合う羽口間の距離を確保できず、設置可能な羽口の数が制限されるという課題があった。
このため、例えば、熱伝導率の低い合金鉄等の難溶解性原料の溶解において、安定して効率的に溶解させることができず、また、金属酸化物を含む製鉄所発生物のリサイクル時においても、スラグ−メタル間の反応促進による高速で安定した高効率な還元処理ができなかった。
(1)式を満足するような前記ガス吹込み用羽口の数Nを用い、該ガス吹込み用羽口の数Nに応じて、(2)式を満足するようなガスの吹込み流量Qを用いる。
N≧{(D/2)2/(H×tan12°)2}×{(1+R/100)/50} ・・・(1)
1000≧(371×Q×N×TL/W)×[ln{1+(9.8×ρ×H)/P}+(1−Tn/TL)]≧100 ・・・(2)
ここで、D:容器の内径(m)、H:容器内の溶融金属の深さ(m)、N:ガス吹込み用羽口の数(本)、Q:ガス吹込み用羽口1本当たりのガスの吹込み流量(Nm3/秒/本)、W:容器内の溶融金属の重量(トン)、TL:溶融金属の温度(K)、Tn:ガスの温度(K)、P:雰囲気の圧力(Pa)、ρ:溶融金属の密度(トン/m3)、R:溶融金属の湯面における吹込みガス面積の重複率(%)、である。
まず、本発明のアーク式底吹き電気炉における撹拌方法に想到した経緯について説明する。
使用にあっては、電気炉10の容器11に、鉄(Fe)やクロム(Cr)等の金属原料、必要に応じて種湯となる溶銑や副原料を装入し、アーク加熱により溶解する。なお、金属原料には、鉄スクラップやFe−Cr合金鉄、金属酸化物を含む製鉄所発生物等があり、副原料には、炭材、付加的に添加されるSi含有合金やAl含有合金等がある。
・MxO2+Si → XM+SiO2
・MxO2+C → XM+CO2
・3MxO2+4Al → 3XM+2Al2O3
ここで、Si、C、Alはそれぞれ、溶鉄中の珪素成分、炭素成分、アルミニウム成分を、また、MxO2は製鉄所発生物中の金属酸化物の成分を、意味する。
本発明者らは、上記した電気炉における溶解において、適正な撹拌条件を満足していなければ、容器内の不均一な溶解進行により未溶解が発生し、通電が抑制されて通電時間が長くなる場合があること、また、酸化物原料の還元処理が十分に行われず還元速度や還元効率が低下する場合があること、を知見した。
その結果、難溶解性原料を未溶解なく効率的に溶解でき、しかも、金属酸化物を十分な効率で還元処理できるために必要な撹拌条件を特定できた。
これら知見を基に、本発明者らは、種々の溶解実験の結果、底吹きによる湯面位置での溶湯の撹拌領域(溶湯の撹拌面積)と、容器内の溶湯の湯面面積(溶湯の表面積)の比率をある一定以上に高めることで、固形物の溶解促進や溶湯に浮遊する酸化物原料の溶解反応と還元反応を効率的に進めることが可能であることを特定した。
N≧{(D/2)2/(H×tan12°)2}×{(1+R/100)/50} ・・・(1)
1000≧εM≧100 ・・・(2)
ここで、D:容器11の内径(m)、H:容器11内の溶融金属14の深さ(m)、N:ガス吹込み用羽口13の数(本)、R:溶融金属14の湯面における吹込みガス面積の重複率(ガスプルーフ重なり率:%)、εM:撹拌動力密度(ワット/トン)である。
ここで、(1)式中の「tan12°(=0.21)」は、図2に示すように、内径D1(m)の羽口13から吹込まれたガスの挙動を観察することで得られた値であり、「H×tan12°」は、湯面位置での溶融金属14の撹拌領域の直径D2と、羽口13の内径D1との差の1/2の値、即ち、羽口13位置に対する湯面位置におけるガスの広がり幅の半分を意味する。なお、図2において、羽口13の内径D1は、撹拌領域の直径D2に比べて小さいことから、羽口1本あたりの撹拌領域の半径D2/2は、上記(1)式において、「H×tan12°」で、近似している。
また、溶融金属14の湯面における吹込みガス面積の重複率Rは、図2に示すように、隣り合う羽口13から吹込まれたガスの湯面における面積の重複率を意味する。
S1=(L/2)×{(D2/2)2−(L/2)2}1/2 ・・・(3)
S2=π(D2/2)2×[2×cos−1{(L/2)/(D2/2)}]/360 ・・・(4)
R=2×(S2−S1)/{π(D2/2)2} ・・・(5)
例えば、L:0.400(m)、D1:0.050(m)、H:1(m)、の場合、上記したtan12°と(3)式と(4)式から、D2:0.475(m)、S1:0.0256(m2)、S2:0.0321(m2)、となり、(5)式から、R:0.073(7.3%)、となる。
εM=(371×Q×N×TL/W)×[ln{1+(9.8×ρ×H)/P}+(1−Tn/TL)]
ここで、Q:ガス吹込み用羽口13の1本当たりのガスの吹込み流量(Nm3/秒/本)、N:ガス吹込み用羽口13の数(本)、W:容器11内の溶融金属14の重量(トン)、TL:溶融金属14の温度(K)、Tn:ガスの温度(K)、H:容器11内の溶融金属14の深さ(m)、P:雰囲気の圧力(Pa)、ρ:溶融金属14の密度(トン/m3)、である。
従って、撹拌動力密度εMを100以上1000以下としたが、下限を200、更には300、上限を900、更には800、とすることが好ましい。
以下、実験では、溶解後の溶鉄成分が、Cr濃度:30質量%、C濃度:4質量%、Si濃度:0.5質量%、となるように、鉄スクラップ、Fe−Cr合金、及び、ステンレス鋼の転炉未還元スラグ、炭材、Si含有合金、を配合した。
そして、これらの材料を、黒鉛電極(電極)からのアーク加熱により溶解し、還元処理を行った。
また、還元処理後のスラグの組成は、CaO濃度:40質量%、SiO2濃度:30質量%、Al2O3濃度:10質量%、であり、(CaO質量%)/{(SiO2質量%)+(Al2O3質量%)}は、1.0であった。なお、還元条件の良否判定としては、還元処理後のCr2O3濃度が、10質量%以下の場合を「良」とし、10質量%超の場合を「不良」とした。
また、ガス吹込用羽口の配置(羽口数、配置位置)を、図3に示す各水準に変更し、羽口からのガス吹込み流量を羽口1本当たり100〜1400NL(ノルマルリットル)/分/本の範囲で調整した。なお、図3は、電気炉の平面視した状態を示している。
このことから、電極と羽口の配置を最適化することで、炉内の溶湯流動を改善し、炉内での原料溶解の均一化を図ることが可能となり、また、溶湯と上部浮遊スラグとの反応性向上も図ることが可能となることを見出した。
F={−(2μS×I1×I2)/DA}×10−8
ここで、F:電磁力(kg/m)、μS:比透磁率(−)、I1,I2:導体を流れる電流(A)、DA:導体の中心間距離(m)、である。
また、電極の例えばR相のアークに働く電磁力の最大値FRmaxは、下式で表される。
FRmax={√3×(Im 2)/DB}×10−8
ここで、Im:最大アーク電流(A)、DB:アーク間距離(m)、である。
この結果、3相アークにおいては、アークは電極サークルに対し、常に外向きの力が働いているため、アーク体は垂直ではなく、炉壁に向かって傾けられる。
従って、底吹きガス撹拌による溶湯流動は、アークジェット流による溶湯流動を阻害しない位置に配置することが望ましい。
これにより、溶解対象物の未溶解の発生がなく、金属酸化物の還元性も良好であり、結果として、溶解と還元の処理時間も更に短縮され、より安定した操業を継続することが可能となる。
ここでは、90トンの溶鉄を溶製できる実機のアーク式底吹き電気炉(電気炉)を用い、黒鉛電極(電極)からのアーク加熱により、鉄スクラップ、Fe−Cr合金、及び、ステンレス鋼の転炉未還元スラグの溶解と還元の処理を行った。
この鉄スクラップ、Fe−Cr合金、及び、転炉未還元スラグは、溶解後の溶鉄成分が、Cr濃度:30質量%、C濃度:4質量%、Si濃度:0.5質量%、となるように配合した。
また、溶解と還元の処理を行うに際しては、羽口の数を3〜9箇所の範囲内で変更し、羽口を図3に示す位置にそれぞれ配置し、ガスの吹込み流量を、羽口1本当たり100〜1400(NL/分)の範囲で調整した。
上記した溶解と還元の処理条件及び処理結果を、表1に示す。
また、表1中の処理結果の評価は、以下に示す通りである。
溶解性は、溶解と還元の処理途中の溶解状況を炉内貫通扉より目視で観察し、未溶解が確認されなければ「◎」、未溶解が軽微であれば「△」、未溶解が確認されれば「×」、と評価した。
還元性は、還元後のCr2O3濃度が5質量%以下であれば「◎」、5質量%超10質量%以下の範囲であれば「△」、10質量%超であれば「×」、と評価した。
処理時間は、理論溶解必要電力量から決まる通電時間の105%以下であれば「◎」、105%超110%以下の範囲であれば「○」、110%超120%以下の範囲であれば「△」、120%超であれば「×」、と評価した。
操業安定性は、底吹きガス流量の変動や羽口の異常損耗、電極の異常損耗等の不安定現象が確認されなければ「◎」、不安定現象が確認されれば「×」、と評価した。
なお、溶解性、還元性、処理時間、及び、操業安定性の全ての評価が「○」以上の場合の条件を、電気炉において良好な撹拌を実施できる条件と判断した。
この場合、溶解性、還元性、処理時間、及び、操業安定性の全ての評価が「○」以上であり、電気炉における溶解と還元性に優れた条件であることがわかった。
この場合、底吹きによる湯面位置での溶鉄の撹拌領域と、炉内の溶鉄の湯面面積の比率の最小値以上を維持するのに必要な羽口の数を満足しないため、溶解性、還元性、及び、処理時間の評価が「△」となり、操業安定性の評価が「×」であった。
この場合、ガスの吹込み流量Qが少な過ぎて、撹拌強度が不十分であったため、溶解性、還元性、処理時間、及び、操業安定性の全ての評価が「×」であった。
この場合、ガスの吹込み流量Qが多過ぎて、撹拌強度が過大であったため、撹拌流に伴う溶湯揺動による通電安定性の阻害や電極損耗量の増大、底吹きガス吹抜けによる溶湯の歩留り低下や地金飛散のトラブル発生により、操業安定性の評価が「×」であった。
なお、前記実施の形態においては、アーク加熱を行う電極を3本使用した場合について説明したが、1本でもよい。
Claims (2)
- 容器の底部に設けられたガス吹込み用羽口から前記容器内の溶融金属にガスを吹込んで溶融金属を撹拌するアーク式底吹き電気炉における撹拌方法において、
(1)式を満足するような前記ガス吹込み用羽口の数Nを用い、該ガス吹込み用羽口の数Nに応じて、(2)式を満足するようなガスの吹込み流量Qを用いることを特徴とするアーク式底吹き電気炉における撹拌方法。
N≧{(D/2)2/(H×tan12°)2}×{(1+R/100)/50} ・・・(1)
1000≧(371×Q×N×TL/W)×[ln{1+(9.8×ρ×H)/P}+(1−Tn/TL)]≧100 ・・・(2)
ここで、D:容器の内径(m)、H:容器内の溶融金属の深さ(m)、N:ガス吹込み用羽口の数(本)、Q:ガス吹込み用羽口1本当たりのガスの吹込み流量(Nm3/秒/本)、W:容器内の溶融金属の重量(トン)、TL:溶融金属の温度(K)、Tn:ガスの温度(K)、P:雰囲気の圧力(Pa)、ρ:溶融金属の密度(トン/m3)、R:溶融金属の湯面における吹込みガス面積の重複率(%)、である。 - 請求項1記載のアーク式底吹き電気炉における撹拌方法において、前記溶融金属の湯面上方には、アーク加熱を行う3本の電極が、その中心が平面視して正三角形の頂点位置となるように配置され、しかも、平面視して、前記正三角形の重心で定義される前記容器の中心から前記電極の中心を通って炉壁方向に延びる仮想線を中心とした前記電極の径を幅とする前記電極から前記炉壁までの範囲のバンド領域を除く底部領域に、前記ガス吹込み用羽口を配置することを特徴とするアーク式底吹き電気炉における撹拌方法。
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