以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、シート搬送装置の例として、画像形成装置にて画像を形成する対象の用紙を搬送する搬送機構において用紙の種類を検知し、その検知結果に応じた制御を行うことを特徴として説明する。
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、エンジン13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F15がバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16及び操作部17が接続されている。
CPU10は演算手段であり、画像処理装置1全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。エンジン13は、画像処理装置1において実際に画像形成を実行する機構である。
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F15は、バス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、各種情報を表示し、ユーザが画像処理装置1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが画像処理装置1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成において、ROM12に格納されたプログラムや、HDD14若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体からRAM11に読み出されたプログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る画像処理装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、図2を参照して、本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、コントローラ20、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)21、スキャナユニット22、排紙トレイ23、ディスプレイパネル24、給紙テーブル25、プリントエンジン26、排紙トレイ27及びネットワークI/F28を有する。
また、コントローラ20は、主制御部30、エンジン制御部31、入出力制御部32、画像処理部33及び操作表示制御部34を有する。図2に示すように、本実施形態に係る画像処理装置1は、スキャナユニット22、プリントエンジン26を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
ディスプレイパネル24は、画像処理装置1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが画像処理装置1を直接操作し若しくは画像処理装置1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F28は、画像処理装置1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、上述したようにCPU10の演算によって構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、画像処理装置1全体を制御する制御部として機能する。
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって画像処理装置1が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
画像処理装置1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づいてプリントエンジン26を制御し、給紙テーブル25から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された文書は排紙トレイ27に排紙される。
画像処理装置1がスキャナとして動作する場合は、ユーザによるディスプレイパネル24の操作若しくはネットワークI/F28を介して外部のPC等から入力されるスキャン実行指示に応じて、操作表示制御部34若しくは入出力制御部32が主制御部30にスキャン実行信号を転送する。主制御部30は、受信したスキャン実行信号に基づき、エンジン制御部31を制御する。
エンジン制御部31は、ADF21を駆動し、ADF21にセットされた撮像対象原稿をスキャナユニット22に搬送する。また、エンジン制御部31は、スキャナユニット22を駆動し、ADF21から搬送される原稿を撮像する。また、ADF21に原稿がセットされておらず、スキャナユニット22に直接原稿がセットされた場合、スキャナユニット22は、エンジン制御部31の制御に従い、セットされた原稿を撮像する。即ち、スキャナユニット22が撮像部として動作する。
撮像動作においては、スキャナユニット22に含まれるCCD等の撮像素子が原稿を光学的に走査し、光学情報に基づいて生成された撮像情報が生成される。エンジン制御部31は、スキャナユニット22が生成した撮像情報を画像処理部33に転送する。画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、エンジン制御部31から受信した撮像情報に基づき画像情報を生成する。画像処理部33が生成した画像情報はHDD14等の画像処理装置1に装着された記憶媒体に保存される。即ち、スキャナユニット22、エンジン制御部31及び画像処理部33が連動して、原稿読み取り部として機能する。
画像処理部33によって生成された画像情報は、ユーザの指示に応じてそのままHDD14等に格納され若しくは入出力制御部32及びネットワークI/F28を介して外部の装置に送信される。即ち、ADF21及びエンジン制御部31が画像入力部として機能する。
また、画像処理装置1が複写機として動作する場合は、エンジン制御部31がスキャナユニット22から受信した撮像情報若しくは画像処理部33が生成した画像情報に基づき、画像処理部33が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部31がプリントエンジン26を駆動する。
次に、プリントエンジン26の機械的な構成及び用紙の搬送経路について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン26は、無端状移動手段である搬送ベルト101に沿って各色の感光体ドラム102Y、102M、102C、102K(以降、総じて感光体ドラム102とする)が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。
搬送ベルト101は、給紙テーブル25から給紙される用紙に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである。すなわち、本実施形態に係るプリントエンジン26は、搬送ベルト101に沿って、この搬送ベルト101の搬送方向の上流側から順に、複数の感光体ドラム102Y、102M、102C、102Kが配列されている。
各色の感光体ドラム102の表面においてトナーにより現像された各色の画像が、搬送ベルト101に重ね合わせられて用紙に転写されることによりフルカラーの画像が形成される。そのようにして搬送ベルト101上に形成されたフルカラー画像は、図中に破線で示す用紙の搬送経路と最も接近する位置において、転写ローラ104の機能により、経路上を搬送されてきた用紙の紙面上に転写される。
紙面上に画像が形成された用紙は更に搬送され、定着ローラ105にて画像を定着された後、排紙トレイ107に排出される。また、両面印刷の場合、片面上に画像が形成されて定着された用紙は反転パス106に搬送され、反転された上で再度転写ローラ104の転写位置に搬送される。
図4は、プリントエンジン26内部において、給紙テーブル25から給紙された用紙の搬送経路を示す図である。図4に示すように、給紙テーブル25から給紙された用紙は、搬送ローラ103によって搬送され、転写ローラ104において画像を転写するタイミングを合わせるためのレジストローラ108に突き当てられる。即ち、レジストローラ108が突き当てローラとして機能する。
レジストローラ108に突き当てられた用紙は、その状態で更に搬送ローラ103により搬送される。これにより、搬送ローラ103とレジストローラ108との間で用紙に撓み(以降、「ループ」とする)が形成される。
そして、制御されたタイミングにおいてレジストローラ108が回転を開始することにより、突き当てられていた用紙が転写ローラ104に搬送され、制御されたタイミングにおいて用紙上に画像が転写される。尚、搬送ローラ103とレジストローラ108との搬送経路の間には通紙センサ109が設けられており、搬送ローラ103とレジストローラ108との間における用紙の有無が検知される。通紙センサ109は、搬送される用紙が所定の搬送位置に到達したことを検知する。
搬送ローラ103及びレジストローラ108は、あらかじめ定められた搬送速度によって用紙を搬送するため、フィードバック制御されたモータによって回転駆動される。このうち、レジストローラ108を制御するための構成において得られる信号に基づいて用紙の機械的特性であるヤング率を検知し、その検知結果に基づいて用紙の種類を判断することが、本実施形態に係る要旨の1つである。
図5は、レジストローラ108を回転駆動するローラ駆動制御部200の機能構成を示す図である。ローラ駆動制御部200は図2に示すプリントエンジン26においてレジストローラ108を回転駆動する構成であり、エンジン制御部31からの命令に基づいて動作する。
図5に示すように、本実施形態に係るローラ駆動制御部200は、駆動制御部201、回転駆動部202、回転部203、回転検知部204、FB(FeedBack)取得部205、特徴量取得部206及びシート種類判定部207を含む。このような構成により、本実施形態に係るローラ駆動制御部200は、レジストローラ108の回転をフィードバック制御するフィードバック制御部として機能すると共に、搬送される用紙の種類を判断する機能を提供する。
駆動制御部201は、エンジン制御部31から入力される回転部203の回転速度の目標値と、FB取得部205から入力されるフィードバック信号とに基づき、回転部203を回転させるための制御値を計算し、回転駆動部202に対して出力する。駆動制御部201が出力する制御値は、回転部203を回転させるためのPWM(Pulse Width Modulation)出力である駆動電圧のデューティー比の指示値である。回転駆動部202は、駆動制御部201から入力される制御値に基づき、回転部203を回転させるための駆動電圧を生成して出力する。
尚、本実施形態に係る回転駆動部202は、駆動制御部201が出力する制御値に基づいて低電圧のPWM駆動信号を出力する機能と、PWM駆動信号に基づいて高電圧の駆動電圧を出力する機能とを含む。PWM駆動信号は、例えば5V程度のPWM信号であり、駆動電圧は24V程度の駆動電圧がPWM駆動信号に基づいてスイッチングされて出力される電圧である。
回転部203は、回転駆動部202から入力される駆動電圧に応じて回転するモータである。この回転部203の回転によって、ギアやタイミングベルト等の駆動伝達機構を介してレジストローラ108が回転する。回転部203としては、DC(Direct Current)モータを用いることが可能であり、インナーロータ型DCモータであるブラシレスDCモータやブラシ付きDCモータを用いることが可能である。本実施形態に係る回転部203は、回転速度や回転位置を検知するためのマーカーが付加された円板を含み、回転検知部204は、そのマーカーを光学的に読み取ることによって検知信号を出力する光学式エンコーダである。
具体的には、回転部203の回転に伴って回転する円板に付加されたマーカーが、回転検知部204が光学的に読み取る読み取り位置を通過する。これにより、回転検知部204による光学的な読み取り状態が変化し、回転検知部204がマーカーを検知して検知信号を出力する。
尚、本実施形態に係る回転検知部204は2組のセンサを含む。この2組のセンサは、上述した円板に付加されたマーカーの位相差がπ/2(rad)となるように配置されている。これにより、本実施形態に係る回転検知部204は、π/2(rad)の位相差を有する2つの検知信号を出力する。
FB取得部205は、回転検知部204の検知信号を取得し、単位時間あたりにマーカーが検知された回数に基づいて、回転部203の回転速度を計算し、フィードバック値として駆動制御部201に入力する。また、FB取得部205は、上述したように、π/2(rad)の位相差を有する2つの検知信号の位相差を利用して、回転部203の回転方向を検知する。
駆動制御部201は、このようにして出力されるFB取得部205のフィードバック値を取得する。そして、駆動制御部201は、エンジン制御部31から入力される目標値と、FB取得部205から入力されるフィードバック値との差分に基づき、回転部203を回転させるための制御値を出力する。
特徴量取得部206は、上述したようなローラ駆動制御部200によるフィードバック制御のサイクルにおいて、回転部203の回転状態を示す値である特徴量を取得する。図5において破線で示しているように、回転部203の回転状態を示す値としては、FB取得部205が取得した回転検知部204の検知信号や、FB取得部205が算出した回転部203の回転速度を用いることができる。
また駆動制御部201が回転駆動部202に入力する制御値を用いることができる。更に、回転駆動部202が出力する駆動電圧を用いることができる。これらの値が、フィードバック制御において処理される値、即ちフィードバック値である。特徴量取得部206は、取得した特徴量をシート種類判定部207に入力する。シート種類判定部207は、特徴量取得部206から入力された特徴量に基づき、レジストローラ108に突き当てられた用紙の厚さやヤング率を検知し、その結果に基づいて用紙の種類を判定する。
本実施形態に係るフィードバック制御においては、駆動制御部201が、回転部203の回転速度の目標値とフィードバック値とに基づいて制御値を出力する。即ち、回転速度に基づいた制御(以降、「速度制御」とする)が行われる。また、レジストローラ108の回転位置に基づいた制御(以降、「位置制御」とする)が行われる。レジストローラ108の位置制御において得られる特徴量に基づいて用紙の種類を判定することが本実施形態に係る要旨の1つである。
位置制御を行う場合、FB取得部205は、マーカーが検知された回数に基づいて回転部203の回転位置を計算し、フィードバック値として駆動制御部201に入力する。また、駆動制御部201には、回転位置までの回転量が目標値として入力される。これにより、駆動制御部201は、目標値とフィードバック値との差分に基づいて回転部203の回転を制御するための制御値を生成して出力する。これにより、回転部203の回転位置が、入力された目標値に保たれる。
特に、レジストローラ108を所定の回転位置で停止させた状態とする制御をホールド制御と呼ぶ。ホールド制御の場合、エンジン制御部31から駆動制御部201に対しては、レジストローラ108を停止させたい位置に相当する回転部203の回転位置が目標値として入力される。そして、駆動制御部201は、FB取得部205から入力されるフィードバック値と目標値との差分に基づき、回転部203の回転位置が目標値となるように回転させるための制御値を生成して回転駆動部202に入力する。
図6はホールド制御の動作を示すフローチャートである。図6に示すようにホールド制御が開始され(S601)、回転部203の回転位置が目標値となるように制御されている状態においても、所定の周期でFB取得部205からのフィードバック値が駆動制御部201に入力される。
駆動制御部201は、FB取得部205からのフィードバック値を取得する度に、回転部203の回転位置が目標値に対してずれていないか否か、即ち位置変動の有無を判断する(S602)。S602の判断の結果、位置変動が発生していなければ(S602/NO)、駆動制御部201は、引き続き現在の制御値を回転駆動部202に対して入力する。
他方、位置変動が発生していた場合(S602/YES)、駆動制御部201は、発生した位置変動に応じて回転部203の回転位置を目標値に近づけるように、回転駆動部202に入力するための制御値の出力を修正する(S603)。
このようなホールド制御においてエンジン制御部31から駆動制御部201に入力される目標値は、直接的には回転部203の回転位置を指定するための値として用いられる。しかしながら、回転部203はレジストローラ108を回転させるためのモータであり、結果的にエンジン制御部31から入力される目標値はレジストローラ108を指定された停止位置で停止させるための値として用いられる。
同様に、ホールド制御とは、直接的には回転部203を指定された回転位置で停止させるための制御であるが、結果的にはレジストローラ108を指定された回転位置で停止させるための制御となる。従って、駆動制御部201からの制御値によって回転駆動部202が出力する信号は、直接的には回転部203を回転させるための制御値であるが、結果的にはレジストローラ108を回転させるための制御値となる。
ここで、ホールド制御により回転部203の回転が停止している状態とは、回転部203に対して外部から加わっているトルクと、回転駆動部202が回転部203に与える駆動信号によって回転部203に発生するトルクとが吊り合っている状態である。従って、S602において位置変動が検知される場合とは、回転部203に対する外力が変化し、回転部203に外部から加わっていたトルクが変動した場合である。
これに対して、回転位置を目標値に戻すためには、変化した外力によって変動した位置を元に戻すためのトルクを回転駆動部202による駆動制御によって回転部203に与えると共に、変化した外力に吊り合うトルクを回転部203に与え続けることである。このような制御は、S603の処理によって回転駆動部202による回転部203の駆動制御態様が変化すると共に、S602の処理が繰り返されることにより実現される。
本実施形態に係る用紙種類の検知方法においては、このようなホールド制御がされたレジストローラ108に対して用紙が突入すると、用紙からレジストローラ108に伝わる力によってレジストローラが回転する。そして、レジストローラ108の回転位置が用紙の突き当てにより進んだ後に元に戻る際にローラ駆動制御部200において得られる値に基づいて突入した用紙の種類を検知する。
このように、ローラ駆動制御部200は、実際に回転力を発生させるモータである回転部203を含み、回転部203の回転を制御することによってレジストローラ108を駆動制御する回転駆動制御装置である。そして、ローラ駆動制御部200に含まれる構成のうち、回転部203以外の構成が、回転部203を制御することによってレジストローラ108を制御するローラ制御部として機能する。また、このローラ制御部は、直接的にはモータである回転部203の回転を制御するための回転制御装置であり、モータ制御装置として用いられる。
ローラ駆動制御部200に含まれる構成のうち回転部203以外の構成は、ソフトウェアとハードウェアとの共同によって構成される。回転部203に駆動信号を与える回転駆動部202は、駆動信号を出力するためのハードウェアによって構成される。また、回転検知部204は、上述したように回転を検知するためのハードウェアによって構成される。
他方、駆動制御部201、FB取得部205、特徴量取得部206及びシート種類判定部207は、上述した夫々の機能を実現するためのソフトウェアに従ってCPU等の演算装置が演算を行うことにより構成される。
尚、本実施形態においては、上述したように回転部203としてフィードバック制御で駆動されるモータを用い、回転駆動部202は駆動制御部201から入力される制御値に基づいた駆動電圧を生成して出力する場合を例としている。そのため、回転駆動部202の出力を上述した搬送ローラ状態値として用いる場合には、駆動電圧を用いることとなる。この場合、特徴量取得部206において、PWM出力である駆動電圧からデューティー比を示す値に変換する機能が必要となる。
この他、例えば、回転部203として電圧駆動のモータを用いる場合、回転駆動部202の出力は駆動制御部201から入力される制御値に応じた電圧となる。また、回転部203として電流駆動のモータを用いる場合、回転駆動部202の出力は駆動制御部201から入力される制御値に応じた電流となる。これらの電圧または電流の値を特徴量として用いても良い。
また、フィードバック制御のために回転部203の回転を検知するための構成として、回転部203の回転に伴って回転する円板に付加されたマーカーを検知する方式が用いられる場合を例としている。これは一例であり、回転部203の回転量及び回転速度を検知可能な構成であれば、他の態様を採用しても良い。例えば、回転駆動部202が回転部203の回転状態を認識するために回転部203に設けられているホール素子から得られる信号に基づいて2ch擬似エンコーダ信号を生成し、回転部203の回転状態を検知する態様でも良い。また、磁気式エンコーダを用いても良い。
図5においては、レジストローラ108を駆動制御するためのローラ駆動制御部200を例として説明したが、搬送ローラ103も図5において説明した構成と同様の構成により駆動制御される。ただし、搬送ローラ103において用紙の厚さを検知する必要が無い場合には、特徴量取得部206及びシート種類判定部207は省略可能である。
次に、本実施形態に係るローラ駆動制御部200によるシート種類判定の原理について説明する。図7はレジストローラ108に厚さtの用紙が突入する際の状態を示す図である。ここで、レジストローラ108は、回転部203によって回転される駆動ローラ108aと、駆動ローラ108aに押し当てられて駆動ローラ108aの回転に応じて回転する加圧ローラ108bとを含む。
用紙がレジストローラ108に突き当てられて更に搬送され、撓んで座屈する前の状態において用紙を搬送させる力である座屈力Fは、図7に示すように、夫々のローラとの接点において法線方向に伝わる。法線方向に伝わる力は、図7に示すようにX方向の力Fx、Y方向の力Fyに分解され、Fyは加圧ローラ108bによる加圧力によって打ち消される。
従って、座屈力Fは、レジストローラ108を構成する夫々のローラにおいてX方向に伝わるFxに分割され、駆動ローラ108a及び加圧ローラ108bにトルクを与えることとなる。但し、加圧ローラ108bの回転力は駆動ローラ108aによって与えられるため、加圧ローラ108bに加わるFxも結果的に駆動ローラ108aに加わることとなり、F=2×Fxの関係が成り立つ。
ここで、座屈力Fによってレジストローラ108に与えられるトルクTrは、夫々のローラの半径をr、用紙の厚さをtとすると、Tr=F(r−t/2)によって示される。ここで、実際には、rに対してt/2は十分に小さいため、F=Tr/rの関係が成り立つ。
従って、回転部203がホールド制御された状態において用紙がレジストローラ108に突入した後に撓むまでの間のレジストローラ108のトルクに基づき、用紙の座屈力Fを推定することが可能である。
これに対して、用紙の座屈力Fは、用紙の応力方向に垂直な面の面積A及び座屈応力σcrを用いてF=σcr×Aで表すことが出来る。そして、面積Aは、用紙の幅をaとするとt×aで示され、座屈応力σcr=F/(a×t)で示される。
ここで、座屈応力σcrは、端末条件係数C、ヤング率E、応力が加わる間隔bを用いて以下の式(1)によって求められる。
上記式(1)を用いて座屈応力と座屈力Fとの関係を整理すると、以下の式(2)が成り立つ。
上記式(2)を用紙のヤング率Eに基づいて整理すると、以下の式(3)が成り立つ。
上記式(3)において、座屈力F及び用紙の厚さt以外のパラメータは既知のパラメータである。従って、座屈力Fを上述したように回転部203のトルクに基づいて求めると共に、用紙の厚さtが判明すれば、レジストローラ108に突入した用紙のヤング率Eを求めることが出来る。
ここで、モータのトルクTrは、トルク定数kt及び電流Iを用いてTr=kt×Iで示される。そして、電流Iは、電圧V及び抵抗Rを用いてI=V/Rで示されるため、Tr=kt×V/Rとなる。結果的に、座屈力Fとレジストローラ108のトルクとが吊り合っている状態における座屈力Fは、上述したF=Tr/rを用いて以下の式(4)によって示される。
そして、式(4)を式(3)に適用すると、レジストローラ108に突入した用紙のヤング率Eは、以下の式(5)によって示される。
上記式(5)において用紙の厚さtが判明しているとすれば、電圧V以外のパラメータは既知のパラメータであり、定数化することが可能である。従って、レジストローラ108に突入した用紙のヤング率Eは、回転部203に与える電圧Vの一次関数によって表すことが出来る。尚、回転部203に与えられる駆動電圧はPWM出力であるため、電圧Vは駆動電圧の振幅とPWM出力のデューティー比によって算出される。
次に、搬送ローラ103によって搬送された用紙がホールド状態のレジストローラ108に突き当てられた場合のレジストローラ108の制御態様について説明する。図8(a)〜(c)は、用紙がレジストローラ108に突き当てられた後、更に搬送されて撓むまでの状態を示す図である。
図8(a)に示すように、搬送ローラ103によって搬送された用紙がレジストローラ108に突き当てられると、用紙からレジストローラ108に加わる力によってレジストローラ108が回転する。図9(a)〜(b)は、図8(a)〜(c)夫々の状態における回転部203の回転位置、回転速度、及び回転駆動部202から回転部203に与えられる電圧の時間変化を示す図である。
図9(a)〜(c)に示すタイミングt1が、図8(a)に示すように用紙がレジストローラ108に突き当てられたタイミングである。用紙がレジストローラ108に突き当てられることにより用紙から伝わる力によってレジストローラ108が回転すると、図9(a)に示すように回転部203の回転位置がホールド位置から変化すると共に、図9(b)に示すように、停止しておりゼロであった回転部203の回転速度が変化する。
これに対して、レジストローラ108はホールド制御されているため、図6において説明したように、回転部203の回転位置がホールド位置から変化すると、回転駆動部202が回転部203に与える駆動信号が修正され、図9(c)に示すように電圧が変化する。
図9(c)に示すように回転駆動部202が回転部203に与える駆動信号が変化することにより、用紙によって回転させられた回転部203の回転速度は元の停止した状態に戻り始める。そして、回転部203の回転速度が停止した状態において、図9(a)のタイミングt2に示すように、回転部203の回転位置の変化は最大となる。
図8(b)は、用紙によって変化させられたレジストローラ108の回転位置が、ホールド制御によって戻されている状態を示す図である。タイミングt2以降、回転駆動部202は、回転部203の回転位置を元に戻すために回転部203を回転させるための駆動信号を出力し続ける。
これにより、図9(b)に示すように回転部203は逆方向に回転を始め、図9(a)に示すように、回転部203の回転位置はホールド位置に戻り始める。そして、図9(a)に示すタイミングt3において、用紙が撓んで座屈する前の座屈力Fと、レジストローラ108によって用紙を押し戻すために回転部203が発揮するトルクとが吊り合った状態となる。この際に回転駆動部202から回転部203に与えられている電圧が、上記式(5)における電圧Vである。
その後、更に搬送ローラ103によって用紙が搬送されると、図8(c)に示すように用紙が撓む。これにより、図9(c)においてタイミングt4に示すように、用紙からレジストローラ108に加えられる力が弱くなり、それに伴ってレジストローラ108をホールドするために回転駆動部202が回転部203に与える電圧も変化する。
このように図9(a)〜(c)に示す変化の中で、タイミングt4の直前の電圧Vに基づいて検知された用紙のヤング率Eに基づき、用紙の種類を判断することが本実施形態に係る要旨の1つである。即ち、本実施形態においては、搬送ローラ103、レジストローラ108、搬送ローラ103を駆動制御するために図5と同様の構成を有するローラ駆動制御部に加えて、ローラ駆動制御部に命令を与えるエンジン制御部31が連動してシート搬送装置として機能する。中でも、エンジン制御部31及び搬送ローラ103を駆動制御するためのローラ駆動制御部が連動して、搬送ローラの回転を制御する搬送ローラ制御部として機能する。本実施形態に係るシート搬送動作について図10のフローチャートを参照して説明する。
図10に示すように、まずは画像処理装置1のディスプレイパネル24に対する操作により、コントローラ20がシートのサイズや搬送方向の向きを受け付ける(S1001)。図11は、S1001においてディスプレイパネル24に表示されるシート種類設定画面の例を示す図である。図11に示すように、ユーザはディスプレイパネル24に対する操作により、搬送されるシートのサイズや向きを選択する。その他、用紙が供給されるトレイに応じて自動的に判定されても良い。
ディスプレイパネル24において選択されたシートのサイズや向きは、エンジン制御部31からローラ駆動制御部200に通知されシート種類判定部207によって取得される。これにより、上記式(5)における用紙の幅aが定まる。シート種類判定部207は、例えば図12に示すようなシートサイズ、向きと用紙幅とが関連付けられた用紙幅テーブルを保持しており、取得したシートサイズ及び向きに基づいて搬送される用紙の用紙幅を認識する。
続いて、エンジン制御部31の制御により、搬送ローラ103による用紙の搬送が開始される(S1002)。図13は、搬送ローラ103の回転速度の時間変化を示す図である。図13に示すように、S1002において用紙の搬送を介した搬送ローラ103は、通常の用紙搬送速度である回転速度ωaまで加速した後、それを保って用紙を搬送する。
エンジン制御部31は、図4において説明した通紙センサ109の検知状態を監視しており、通紙センサ109が用紙を検知するまでωaでの搬送を継続する(S1003/NO)。そして、通紙センサ109が用紙を検知すると(S1003/YES)、エンジン制御部31は、用紙が突き当てられる際の準備のためにレジストローラ108を逆転制御すると共に、レジストタイミングを計るためのカウント値のカウントを開始する(S1004)。
S1004の逆転制御は、レジストローラ108と回転部203のバックラッシュを除去するために行われる。図14(a)、(b)は、レジストローラ108と回転部203のバックラッシュを示す図である。図中の右から左に用紙を搬送するため、図14(a)に示す矢印の方向にレジストローラ108を回転させて停止した状態を考える。
この場合、回転部203の動力をレジストローラ108に伝えるためのレジストギア108aと回転部203のギアとの噛み合わせは、図14(a)に示す状態である。これに対して、搬送ローラ103によって搬送された用紙が、図中の右方向からレジストローラ108に突き当てられると、その力によってレジストローラ108は図14(b)に示す矢印の方向に回転させられる。
図14(a)に示すようなギアの噛み合い状態で停止したレジストローラ108が、図14(b)に示す方向に回転すると、ギアが噛み合っていない方向への回転であるため、レジストギア108aが回転部203のギアに動力を伝えるまでに空転することとなる。図14(b)においては、その空転の部分を破線で囲って示している。これがバックラッシュである。
このような空転の間は回転部203が回転しないため、回転検知部204が回転部203の回転を検知することも無い。しかしながら本実施形態においては、図9(a)〜(c)において説明したように、回転部203の回転を検知してレジストローラ108の回転を検知し、その検知結果に基づいて用紙の厚さを判定する。従って、レジストローラ108が回転しているにも関わらず回転部203が回転しない状態があると、用紙の厚さの判定に誤差が生じてしまう。
図15(a)〜(c)は、バックラッシュの解消態様を示す図である。図15(a)は、図14(a)と同様、用紙を搬送して停止した状態である。これに対して、図10のS1004の処理によりレジストローラ108が逆転されると、図15(b)に示すように、レジストギア108aと回転部203のギアとの噛み合い状態が図15(a)とは逆の状態になる。
図15(c)は、図15(b)に示すようなギアの噛み合い状態で停止したレジストローラ108に対して図中右側から用紙が突き当てられた状態を示す図である。この場合、突き当てられた用紙によって回転させられるレジストローラ108の回転方向は、ギアが噛み合っている方向である。そのため、図15(c)に破線で示すように、レジストギア108aは空転することなく、回転部203に動力を伝えることとなる。これにより、回転部203の検知結果に基づく用紙の厚さの判定制度を向上することが出来る。
また、S1003において通紙センサ109により用紙が検知されると、エンジン制御部31は、搬送ローラ103の回転速度の減速を開始する(S1005)。S1005の処理は、図13のタイミングtaに相当する。エンジン制御部31は、駆動制御部201に入力する目標値を図13に示す回転速度ωbとすることにより、搬送ローラ103の回転速度を減速させる。回転速度ωbは、搬送される用紙をレジストローラ108に突き当てる際の搬送速度に対応している。
このように、用紙がレジストローラ108に突き当てられる際の搬送ローラ103の回転速度を減速することにより、用紙がレジストローラ108に突き当てられる際の速度が速すぎることによる弊害を解消することが出来る。用紙がレジストローラ108に突き当てられる際の速度が速すぎることによる弊害としては、用紙の先端が折れ曲がってしまうことや、レジストローラ108と用紙との間でスリップが起こってレジスト位置がずれてしまうこと等がある。
用紙が通紙センサ109により検知され、回転速度がωbに減速された状態で更に用紙が搬送される。エンジン制御部31は、用紙がレジストローラ108に突入するまで、回転速度ωbでの搬送を継続する(S1006/NO)。そして、用紙がレジストローラ108に突入すると、図9(a)〜(c)のタイミングt1に示す変化が生じる。シート種類判定部207は、特徴量取得部206から図9(a)〜(c)に示す夫々のパラメータ、即ち、回転部203の回転位置、回転速度、駆動電圧の情報を取得し、その値の変化に基づいて用紙がレジストローラ108に突入したことを検知する(S1006/YES)。
S1006における判断は、図9(a)〜(c)に示す夫々のパラメータに閾値を設定することにより可能である。即ち、シート種類判定部207は、図9(a)〜(c)に示す夫々のパラメータが所定の閾値を超えた場合に、図8(a)に示すように用紙がレジストローラ108に突入したことを判断する。尚、この判断は、図9(a)〜(c)に示す夫々のパラメータの全てについて行っても良いし、一部について行っても良い。
用紙がレジストローラ108に突入したことを検知すると、シート種類判定部207は、特徴量取得部206から取得される特徴量のうち、図9(c)のタイミングt4の直前における値を抽出する(S1007)。この値が、上記式(5)における電圧Vである。
尚、タイミングt4の直前における電圧Vを判断する方法としては、例えば図9(c)に示す電圧の変化を用いる方法がある。即ち、シート種類判定部207は、特徴量取得部206から入力される特徴量のうち、回転駆動部202が回転部203に与える電圧の時系列の変化を参照し、図10のS1006において突入を検知してからの所定期間において最も変化量が大きい状態における電圧値を採用することが出来る。
また、図10のS1006において突入を検知してから、図9(c)のタイミングt1以降のように増大していく変化量を解析し、変化量が増大から減少に転じたタイミングにおける電圧値を採用することが出来る。
また、シート種類判定部207は、S1004においてカウントを開始したレジストタイミングを計るためのカウント値を、用紙がレジストローラ108に突入したタイミングにおいて取得する。そして、そのカウント値(以降、「レジストカウント値C」とする)に基づいて用紙の厚さtを求める(S1008)。図16(a)、(b)は、S1008における用紙の厚さtの判定の原理を示す図である。
図16(a)は、ある厚さの用紙がレジストローラ108に突き当てられた状態、即ちシートの位置を示す図であり、図16(b)は、図16(a)よりも薄い用紙がレジストローラ108に突き当てられた状態を示す図である。図16(a)の場合、レジストローラ108のニップ部と用紙先端との間隔はg1である。
これに対して、図16(b)の場合、用紙の厚みが薄い分、用紙がよりレジストローラ108のニップ部に近い部分まで入り込むことになる。その結果、ニップ部と用紙先端との間隔は、g1よりも短いg2となる。即ち、図16(a)と図16(b)とで、g1−g2の分、レジスト位置に誤差が生じていることとなる。換言すると、図16(a)に示す用紙の方が、図16(b)に示す用紙よりもg1−g2の分早いタイミングでレジストローラ108に衝突することとなる。
これに対して、用紙がレジストローラ108のニップ部まで完全に搬送されたと仮定した場合のレジストカウント値、即ち基準となるレジストカウント値C0は、図13において説明したような回転速度のプロファイルに基づいて計算可能である。本実施形態に係るシート種類判定部207は、カウントされたレジストカウント値Cと、基準となるレジストカウント値C0との差分に基づき、図16に示すような原理に基づいてシートの厚さtを求める。
そのため、シート種類判定部207は、例えば図17に示すように、C0−Cと用紙の厚さtとが関連付けられた用紙厚テーブルを保持しており、C0−Cの計算結果に応じた用紙の厚さtを取得する。
S1007において電圧Vを抽出すると共にS1008においてシートの厚さtを検知したシート種類判定部207は、S1001において取得した用紙幅aを用いて、上記式(5)により用紙のヤング率Eを計算する(S1008)。尚、応力が加わる間隔bは、搬送ローラ103とレジストローラ108との間隔であり、固定値である。このような処理により、本実施形態に係る用紙の厚さの判定処理が実現される。
ヤング率Eを計算したシート種類判定部207は、その計算結果に基づいてシートの種類を判定する(S1010)。そのため、シート種類判定部207は、例えば図18に示すように、ヤング率Eとシートの種類とが関連付けられたシート種類テーブルを保持しており、ヤング率Eの計算結果に応じた用紙の種類を取得する。
また、図18に示すように、本実施形態に係るシート種類テーブルにおいては、修正制御値が関連付けられている。修正制御値とは、判定されたシート種類に応じてプリントエンジン26の制御におけるパラメータを修正するための値である。例えば、図3において説明した転写ローラ104から用紙への画像の転写に際して印加するべき転写バイアスは用紙の種類に応じて異なる。従って、図18に示す“修正制御値”としては、転写バイアスの修正値が設定される。
また、図3において説明した定着ローラ105による用紙への画像の定着に際して加えるべき熱量は用紙の種類に応じて異なる。加える温度が高すぎる場合、用紙がカールしてしまう等の弊害が生じる。従って、図18に示す“修正制御値”としては、定着温度の修正値が設定される。
また、図8(c)において説明したように用紙を撓ませる際、最適な用紙の撓み量は用紙の種類に応じて異なる。従って、図18に示す“修正制御値”としては、用紙の撓み量を修正するため、図13に示すタイミングtaからタイミングtbまでの期間(以降、「撓み形成搬送期間」とする)を修正する修正値が設定される。
シート種類判定部207によってシートの種類が判定され、修正制御値が取得されると、エンジン制御部31はその修正制御値を取得し、装置各部を制御する際の制御値の修正を行う(S1011)。S1011において修正される制御値には、上述した転写バイアス、定着温度、撓み形成搬送期間が含まれる。
ここで、本実施形態に係る撓み形成搬送期間の修正について説明する。タイミングtaとは、上述したように通紙センサ109が用紙を検知したタイミングである。これに対して、タイミングtbとは、用紙がレジストローラ108に突入した後、図8(c)に示すように用紙を撓ませた状態で搬送ローラ103の搬送を停止するために減速を開始するタイミングである。つまり、エンジン制御部31は、S1011において、搬送ローラ103の回転を停止させるための減速タイミングtbを、シート種類の判定結果に基づいて修正する。これにより、用紙がレジストローラ108に突入した後、撓みを形成するための付加的な搬送量が修正される。
ここで、タイミングtbは、図13に示すようにタイミングtaからの期間Tab、即ち、用紙が通紙センサ109により検知されてからの期間Tabによって特定される。そして、エンジン制御部31は、タイミングtaから期間Tabが経過したら、搬送ローラ103の回転を減速して停止させる。
そのため、図18において説明したシート種類テーブルにおいては、撓み形成搬送期間を修正するための値として、期間Tabが設定されている。また、図16(a)、(b)において説明したように、搬送されている用紙のレジスト位置は用紙の厚さtに応じてずれている。従って、本実施形態に係るエンジン制御部31は、シート種類テーブルから取得した期間Tabと、上述したC0−Cの計算結果に基づいて、最適な期間Tabを求める。
また、期間Tabやシート種類の判定結果の精度をより高いものとするため、図18に示すシート種類テーブルを、ヤング率Eのみではなくヤング率Eとシートの厚さtの組み合わせ毎にシート種類と関連付けても良い。
そのようにして最適な期間Tabを抽出するとエンジン制御部31は、抽出した期間Tabに基づいてタイミングtbを修正する。図19は、タイミングtbの修正態様の1つを示す図である。図19に示すように、標準の搬送プロファイルにおいては、標準の期間Tabによりタイミングtbが定められている。これに対して、図18のテーブルに基づいて標準の期間よりも短い期間TAが抽出された場合には、図19に示すように、タイミングtbは早められてタイミングt´bとなる。その結果、図19において斜線で示す部分に相当する分のシート搬送量が変化する。
その後、修正されたタイミングt´bになるまで搬送ローラ103による用紙の搬送が継続され(S1012/NO)、これにより、図8(c)に示すように用紙に撓みが形成される。この撓みは、修正されたタイミングt´bに基づくため、用紙の厚さに対して最適な撓み量となっている。
その後、修正されたタイミングt´bになると(S1012/YES)、エンジン制御部31は駆動制御部201に入力する回転速度の目標値をゼロに変更して搬送ローラ103の回転駆動を停止し(S1013)、処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るシート搬送装置においては、用紙がレジストローラ108に突き当てられたタイミングの実測値と理想値との差分に基づき、図16、図17において説明したように用紙の厚さtを求める。そのようにして求められた用紙の厚さtを用い、ホールド状態でフィードバック制御されたレジストローラ108に用紙が突き当てられた際に、フィードバック制御において得られるパラメータ値に基づいて用紙のヤング率Eを検知して用紙の種類を判定する。
この場合、レジストローラ108はホールド状態であり、用紙を搬送している状態ではないため、フィードバック制御において得られるパラメータ値には、用紙の搬送摩擦負荷等、用紙の搬送において発生する誤差要因を含まない。従って、ローラの負荷によるシート種類の検知を高精度に且つ簡易な構成で行うことが可能となる。
そして、そのように高精度に検知されたシートの種類に応じてプリントエンジン26の制御値を修正するため、搬送された用紙の種類に応じた好適な制御を行い、画像形成出力を高品質に行うことが可能となる。
また、本実施形態に係るシート搬送装置においては、レジストローラ108に用紙を突き当てた際に、レジストローラ108のホールド制御において得られたフィードバック値に基づいて用紙の種類を判定する。そのため、実際に搬送されてレジストローラ108に突き当てられた用紙の種類をリアルタイムに検知することが可能であり、プリントエンジン26の制御値を高精度に修正することが出来る。
尚、上記実施形態においては、回転駆動部202が回転部203に与える電圧値を特徴量取得部206が取得し、シート種類判定部207は、その電圧値Vを用いて上記式(5)によりシートのヤング率Eを算出する場合を例として説明した。しかしながら、これは回転駆動部202が電圧値をフィードバック値として出力する場合の例である。フィード制御において得られる回転部203を制御するための制御値に基づいてシートのヤング率Eを算出する態様であれば、他の態様を採用することも可能である。
例えば駆動電圧のデューティー比をフィードバック値として出力する場合もある。このような場合、上記式(5)のVをデューティー比に変換した式を用いることにより、フィードバック値として取得されたデューティー比に基づいて上記と同様にシートのヤング率Eを算出することが出来る。
また、上記実施形態においては、式(5)を用いて計算により用紙のヤング率Eを判定する場合を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、ローラ駆動制御部200によるフィードバック制御において得られるパラメータを用いて用紙のヤング率Eを判定する態様であれば、他の態様であっても上記と同様の効果を得ることが可能である。
例えば、搬送対象の用紙の種類が予め限定された種類のいずれかである場合を考える。その場合、夫々の種類の用紙がレジストローラ108に突き当てられた際の各パラメータの特徴量を用紙のヤング率Eと関連付けて予め記憶しておき、その中から実際に得られた特徴量に最も近い特徴量に関連付けられた用紙のヤング率Eを抽出することにより判定可能である。
図20は、そのような場合のローラ駆動制御部200の機能ブロックを示す図である。図20に示すように、概ね図5において説明した態様と同一であるが、特徴量DB208が設けられている点が異なる。図21は、特徴量DB208に含まれる情報を示す図である。
図21に示すように、特徴量DB208は、“ヤング率”が、“特徴量データ”及び“シート厚さ”に関連付けられた情報である。即ち、特徴量DB208がヤング率情報として用いられる。“特徴量データ”は、図9において説明したような、用紙がレジストローラ108に突き当てられた際に得られるフィードバック制御でのパラメータにおいて特徴となる値である。図22(a)〜(c)を参照して、特徴量データの例について説明する。
図22(a)に示すように、例えば回転部203の回転位置の場合、用紙によって回転させられて変化した回転位置の最大値θ1を用いることが出来る。また、用紙によって回転部203が回転させられてから回転位置が最大値θ1に達するまでの時間T1や、元のホールド位置に戻るまでの時間T2を用いることが出来る。
また、図22(b)に示すように、回転部203の回転速度の場合、用紙によって回転させられて変化した回転速度の一方の最大値ω1や反対方向の最大値ω2を用いることが出来る。また、用紙によって回転部203が回転させられてから回転速度がω1に達するまでの時間T3や、ω2に達するまでの時間T4を用いることが出来る。
また、図22(c)に示すように、用紙の座屈力と回転部203のトルクとが吊り合っている状態での電圧V1を用いることが出来る。また、また、用紙によって回転部203が回転させられた後にホールド状態に戻り、用紙が座屈して必要トルクが下がるまでの時間T5を用いることが出来る。
このような特徴量DB208の情報を参照することにより、シート種類判定部207は、特徴量取得部206から入力された特徴量、図10のS1001において入力された情報及びS1008において検知されたシート厚さに基づいてヤング率を判定可能である。
また、上記実施形態においては、画像形成装置において記録媒体となる用紙の搬送経路において、用紙の搬送タイミングを合わせるためのレジストローラ108に用紙が突き当てられる際の制御を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、シート状の部材が搬送されるシート搬送装置において、シートが突き当てられるローラがフィードバック制御により制御され、且つ指定された回転位置に停止するようにホールド制御されている場合であれば同様に適用可能である。
従って、上述したようにプリントエンジン26において用紙を搬送する場合の他、例えばスキャナユニット22に原稿を搬送するためのADF21に適用することも可能である。これにより、読み取り対象の原稿の種類を高精度に検知し、原稿に用いられている用紙の種類に応じた搬送制御や読み取り制御を行うことが可能となる。
また、上記実施形態においては、搬送ローラ103とレジストローラ108との間に設けられた通紙センサ109によって用紙が検知されてからの期間Tabにより、用紙に撓みを形成するための搬送期間を調整する場合を例として説明した。しかしながらこれは一例である。
例えば、搬送ローラ103の駆動制御部にもレジストローラ108と同様に特徴量取得部206及びシート種類判定部207が設けられていれば、図10のS1006と同様に搬送ローラ103に用紙が突入したことを検知することが可能である。従って、搬送ローラ103に用紙が突入してからの期間に基づいて図13のタイミングtbを制御しても良い。
また、上記実施形態においては、図19において説明したように、シート厚の検知結果に応じて期間Tabを調整することにより、用紙がレジストローラ108に突入した後の付加的な搬送量を修正する場合を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、シート厚に応じた適切な搬送量が実現されれば良い。
シートの搬送量は、搬送期間と搬送速度との積、即ち、図13に示すようなグラフと横軸とで囲まれる範囲の面積によって定まる。上記実施形態においては、搬送期間であるTabを調整することにより搬送量を調整しているが、搬送速度を調整することによっても搬送量を調整することが可能である。この搬送速度は、図13に示す減速された後の回転速度ωbによって定まる。
従って、図18において説明したように、“修正制御値”としてTabの値が関連付けられた態様に替えて、修正するべき回転速度が関連付けられたテーブルを用意し、シート厚の検知結果に応じて減速後の回転速度ωbを調整しても良い。この結果、図23に示すように減速後の回転速度ωbがω´bに調整され、図23に斜線で示す部分に相当する分のシート搬送量が変化することとなる。
また、上記実施形態においては、用紙先端が通紙センサ109を通過してからレジストローラ108に突き当てられるまでのカウント値Cの基準値C0からのずれ量に基づき、図16に示すg1やg2のようなレジストずれ量を検知する場合を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、用紙の厚さtの検知は、図16に示すg1やg2のようなレジスト位置のずれ量に基づいて検知する態様であれば他の態様であっても良い。
また、上記実施形態においては、図17に示すように、レジストずれ量と用紙の厚さtとが関連付けられたテーブルから、検知されたレジストずれ量に基づいて用紙の厚さtを取得する場合を例として説明した。しかしながらこれは一例であり、例えば、レジストずれ量をパラメータとする計算式により用紙の厚さtを算出しても良い。