[第1実施形態]
図1〜図41を参照して、第1実施形態に係る車両用シートスライド装置について説明する。
なお、図8(a)、図8(b)、図9(a)、図9(b)、図13(a)、図13(b)、図17、図18(a)、図18(b)、図20、図27(b)、図28(b)、図32(b)、図33(b)、図34(b)、図35(b)、図36(b)、図37、図39(a)、図39(b)、図40(a)、図40(b)、図47(c)、図48(c)、図49(c)、及び図50(c)は、図3のA−A線における断面図である。
図21(b)、図22(b)、図29(a)〜図29(c)、図30(a)、図30(b)、図32(a)、図33(a)、図34(a)、図35(a)、図36(a)は、図9のC−C線における断面図である。
図23(a)、図23(b)、図24(a)、図24(b)、図46(f)〜図46(j)、図47(b)、図48(b)、図49(b)、図50(b)、図52(d)〜図52(f)、及び図53(e)〜図53(h)は、図9のD−D線における断面図である。
なお、車両用シートスライド装置10について、車両フロア1aに設置した状態において車両1の前後方向に沿う方向を「前後方向DY」といい、車両1の幅方向に沿う方向を「幅方向DX」という。また、車両用シートスライド装置10について、車両1の上下方向に沿う方向を「上下方向DZ」という。
図1は、車両用シートスライド装置10を備える車両1の平面図である。図2は、シート2の側面図である。
車両用シートスライド装置10は、シート2を車両1の前後方向DYに移動させる。例えば、車両1の前側の席に車両用シートスライド装置10が取り付けられる。
車両用シートスライド装置10は、一対のレール11,11と、メモリ機構40(図8参照)と、切替部材60(図6参照)と、ロック機構50(図9参照)と、誘導機構90(図6及び図19参照)と、トリガー機構100(図6、図25及び図26参照)と、第1操作機構110(図2参照)と、第2操作機構120(図3参照)とを備える。
図3及び図4に示されるように、一対のレール11,11は幅方向DXに所定距離を隔てて並列される。レール11,11それぞれは車両フロア1aに固定される。レール11は、ロアレール20と、アッパレール30とを備える。ロアレール20はベース板12(図5参照)を介して車両フロア1aに固定される。アッパレール30は転動部材を介してロアレール20に対して摺動する。
以下、2個のレール11,11のうちの外側のレール11(図3では上側のレール11,アウターレール)について説明する。なお、2個のレール11,11のうちの内側のレール11(図3では下側のレール11,インナーレール)は、メモリ機構40がないことを除いて、外側のレール11と同様の構造を有する。
[ロアレール]
図5に示されるように、ロアレール20は、底壁部21と、底壁部21の幅方向両端それぞれから上方(アッパレール30に向かう方向)に延びる縦壁部22と、縦壁部22の上端部から内側に延びる横壁部23と、横壁部23の内側端部から下方に延びる内壁部24とを備える。内壁部24には、複数の係止爪24aが等間隔で下方に突出するように設けられている。2個の係止爪24aの間の部分(以下「挿通部24b」)には、後述のロック部52の係合部53a(または係合部54a)が挿通する(図11参照)。
ロアレール20の後部には、ロアストッパ26及び固定ストッパ29が取り付けられる。底壁部21の後部には、ロアストッパ26及び固定ストッパ29を取り付けるための複数の締結用孔が設けられている。複数の締結用孔は2列に配置されている。各列の締結用孔は等間隔で配置されている。
ロアストッパ26は、ストッパ本体部27と、ストッパ本体部27に移動可能に取り付けられたストッパピン28とを備える。
ストッパ本体部27の底部には、取付孔27cが4箇所に設けられている。ストッパ本体部27は、取付孔27cを挿通する締結部材によりロアレール20に固定される。
ストッパ本体部27は、ストッパピン28を収容しかつ上方に開口したストッパピン収容部27aを有する。ストッパピン収容部27aの底部にはスプリング27bが配置されている。ストッパピン28はスプリング27bにより上方に向けて付勢されている。ストッパピン28の頭部28aは、ロアレール20の底壁部21に設けられた貫通孔を挿通してロアレール20内に突出する。なお、以下では、ストッパピン28の頭部28aがロアレール20内に突出するときのロアストッパ26の状態を突出状態といい、ストッパピン28の頭部28aがストッパピン収容部27aに収容されているときのロアストッパ26の状態を収容状態という。
ストッパピン28の頭部28aは、幅方向DXに並列された第1部位28bと第2部位28cとにより構成されている。第1部位28bの前側には、ロアレール20の底面21aに対して垂直な面(垂直面28d)が設けられている(図40及び図41参照)。第2部位28cの前側には、前方に向かって下方に傾斜する面(以下、「傾斜面28e」という。)が設けられている(図40及び図41参照)。
固定ストッパ29には、一対の取付孔29aが設けられている。固定ストッパ29は、取付孔29aを挿通する締結部材によりロアレール20に固定される。固定ストッパ29は、ロアストッパ26よりも後方に取り付けられる。固定ストッパ29は、スライド動作(後述参照)のとき、アッパレール30の後方への移動を規制する。
[アッパレール]
図5に示されるように、アッパレール30は、上壁部31と、上壁部31の幅方向両端それぞれから下方(ロアレール20の底壁部21に向かう方向)に延びる縦壁部32と、縦壁部32の下端から外側に延びる横壁部33と、横壁部33の外側端部から上方に延びる外壁部34とを備える。
縦壁部32の前後方向中央部には、2個の開口部32aが設けられて、各開口部32aには、上端辺から下方に延びる係止爪32bが設けられている。2個の係止爪32bの間隔距離は、ロアレール20に設けられた隣り合う2個の係止爪24aの間隔距離の2倍に設定されている。係止爪32bの両隣の上方に向かう凹部(以下「挿通部32c」)には、ロック部材51のロック部52の係合部53a(または係合部54a)が挿通する(図11参照)。
縦壁部32の上部には、後述の誘導機構90の誘導部材91を案内するためのガイド孔32fが設けられている。
アッパレール30の底部であって一対の縦壁部32の間には、アッパレール30の移動を制限するためのストッパ部材36(図6参照)が取り付けられている。
ストッパ部材36(図6参照)は次のように構成されている。ストッパ部材36の前端36aは、メモリ機構40のメモリ装置44に当接する。ストッパ部材36の後端36bは、ロアストッパ26及び固定ストッパ29に当接する。ストッパ部材36の後部36cの幅方向内方(インナーレール側)には、後述のロアストッパ解除部材108の下端部108aが配置される後端収容部36dが設けられている。ストッパ部材36の後部36cと後端収容部36dとは幅方向DXに並列されている。
アッパレール30の外壁部34には、縦壁部32の2個の開口部32aに対向するように2個の開口部34aが設けられて、各開口部34aには、上端辺から下方に延びる係止爪34bが設けられている。2個の係止爪34bの間隔距離は、ロアレール20に設けられた隣り合う2個の係止爪24aの間隔距離の2倍に設定されている。係止爪34bの両隣の上方に向かう凹部(以下「挿通部34c」参照)には、ロック部材51のロック部52の係合部53a(または係合部54a)が挿通する(図11参照)。
上壁部31には、長手方向に延びる3個の開口部が設けられている。以下、3個の開口部を、前方から後方に向かって順に、第1開口部31a、第2開口部31b、第3開口部31cという。第3開口部31cの傍には、上壁部31から上方に突出する係合突起部31dが設けられている。
また、上壁部31の後部には、アッパブラケット13を固定するための2個の突出部31eが設けられている。上壁部31の中間部(第3開口部31cよりも後方かつ一対の突出部31eの前方の部位)には、第1操作機構110の操作ケーブル112のアウターケーブル端部114を支持するためのケーブル支持用ブラケット15が取り付けられている。上壁部31の前部には、後述の支持ブラケット35を固定するための2個の突出部31fが設けられている。
支持ブラケット35(図6参照)は、アッパレール30の上壁部31に固定されるブラケット本体部35aと、ブラケット本体部35aから上方に突出するハンドル支持部35bと、第1スプリング係止部35dと、第2スプリング係止部35eとを有する。第1スプリング係止部35dは、アッパレール30の上壁部31の貫通孔を挿通して上壁部31の下面から下方に突出する。本実施形態では、第1スプリング係止部35dは、ブラケット本体部35aに取り付けられるピン35cの下端部として構成されている。第2スプリング係止部35eは、ブラケット本体部35aから幅方向内方(インナーレール側)に突出する。
ハンドル支持部35bは、ハンドル回転軸122の端部に取り付けられる軸端部材123を回転可能に支持する。
第1スプリング係止部35dには、後述の切替部材60を前方に付勢するスプリング65の前端が掛けられる。第2スプリング係止部35eには、後述の誘導機構90の誘導部材91を前方に付勢するスプリング98の前端が掛けられる。
アッパレール30の上壁部31には、後述のリンク支持部106を介して、ロアストッパ26のストッパ機能を解除するロアストッパ解除部材108が回転可能に取り付けられている。例えば、ロアストッパ解除部材108は、軸ピン109を介してリンク支持部106に取り付けられる。
ロアストッパ解除部材108は、下端部108aがストッパ部材36の後端36bよりも前方に配置されるように、付勢されている。ロアストッパ解除部材108は、下端部108aが後端収容部36dに収容される位置(以下、「非解除位置」、図40(a)参照)と、下端部108aがストッパ部材36の後端36bよりも後方に出される位置(以下、「解除位置」、図40(b)参照)との間で回転する。そして、スライド動作(後述参照)を実行させる操作に伴ってロアストッパ解除部材108が解除位置まで回転する。
アッパレール30は、ストッパ部材36により次のように移動範囲が制限される。
アッパレール30は、ウォークイン動作(後述参照)で前方へ移動するとき、メモリ装置44にストッパ部材36の前端36aが当接するところ(以下、「メモリ位置」という。)で止まる。すなわち、アッパレール30の前方移動はメモリ位置で規制される。
アッパレール30は、ウォークイン動作(後述参照)で後方へ移動するとき、ロアストッパ解除部材108は非解除位置に配置される。これにより、ストッパ部材36の後端36bがロアストッパ26に当接し得るため(後述参照)、アッパレール30は、ロアストッパ26にストッパ部材36の後端36bが当接するところ(以下、「第1規制位置」という。)で止まる。すなわち、ウォークイン動作のとき、アッパレール30の後方移動は第1規制位置で規制される。
アッパレール30は、スライド動作(後述参照)で後方へ移動するとき、ロアストッパ解除部材108が解除位置(図40(b)参照)に配置される。これにより、ロアストッパ26とストッパ部材36の後端36bとが係合しなくなり、アッパレール30は第1規制位置を通過する。アッパレール30が更に後方に移動すると、アッパレール30はストッパ部材36の後端36bが固定ストッパ29に当接するところ(以下、「第2規制位置」という。)で止まる。すなわち、スライド動作のとき、アッパレール30の後方移動は第2規制位置で規制される。
以上のように、アッパレール30は、ウォークイン動作のときはメモリ位置から第1規制位置までの範囲で移動可能とされ、スライド動作のときは第2規制位置よりも前方で移動可能とされる。
また、アッパレール30は、スプリング(以下、「ヘルプスプリング16」という。)により前方に付勢される。
具体的には、ヘルプスプリング16の後端は、アッパレール30の後部に固定されたアッパブラケット13に取り付けられている。ヘルプスプリング16の前端は、ロアレール20の前部に固定されたロアブラケット14に取り付けられている。この構成によれば、シート2が予期に反して後方に移動することが抑制される。特に、後方に向かって下方に傾くようにレール11が車両フロア1aに取り付けられている場合は、ロアレール20とアッパレール30との係合が解除されたときにシート2が後方に移動し易いため、ヘルプスプリング16によるシート2の前方付勢の構成が有効に作用する。
[メモリ機構]
図7及び図8を参照してメモリ機構40を説明する。図8は、図3のA−A線に沿う断面における図である。
メモリ機構40は、シート2の位置(以下、「シート位置」)を記憶する。例えば、運転者の運転するときのシート位置を記憶する。具体的には、メモリ機構40は、ロアレール20に対するアッパレール30の位置を記憶する。
メモリ機構40は、メモリガイド41(図5参照)と、メモリ装置44とを備える。
メモリガイド41(図5参照)は、メモリガイド本体部42と、メモリガイド本体部42の幅方向両端それぞれに設けられるフランジ43とを有する。フランジ43はメモリ装置44を案内する。
メモリガイド本体部42には、メモリピン46が挿入する複数の貫通孔(以下、「メモリ孔42a」という。)が設けられている。メモリ孔42aは、メモリガイド41の長手方向に沿って等間隔に設けられている。メモリガイド41は、ロアレール20の底壁部21の上面に取り付けられている。メモリ装置44は、メモリガイド41の上面に摺動可能に配置される。
図7及び図8に示されるように、メモリ装置44は、メモリ本体部45と、メモリピン46と、メモリピン46に係合する係止部材48とを備える。
メモリ本体部45には、メモリピン46を収容しかつ上方に開口するメモリピン収容部45aが設けられている。メモリ本体部45の側面には、メモリガイド41のフランジ43が挿通するガイド溝45bが設けられている。メモリピン収容部45aの底部には、メモリピン46を上方に付勢するスプリング47(図8参照)が配置されている。
メモリピン46は、メモリピン収容部45aに収容され、上下方向DZに移動する。メモリピン46は、上端部46aが下方に移動すると下端部46bがメモリピン収容部45aから突出するように構成されている。
メモリピン46はスプリング47により上方に向けて付勢されている。メモリピン46の前面かつ上下方向DZの中間部には係止部材48が係合する係合溝46cが設けられている。メモリピン46は、係止部材48に設けられた貫通孔48cを挿通する。
係止部材48は、メモリピン46を挿通させる貫通孔48cを有する。
係止部材48は、メモリピン46の移動方向(上下方向DZ)に垂直な方向に移動するようにメモリ本体部45に設けられている。そして、係止部材48の後端部48bはメモリ本体部45から後方に突出する。係止部材48の前方には、係止部材48の前端部48aに接触するようにスプリング49が配置されている。スプリング49により係止部材48は後方に付勢される。
図8(a)及び図8(b)を参照してメモリ装置44は次のように動作する。
メモリピン46を下方に押す力が加えられていないとき、メモリピン46はスプリング47の付勢力により上方の位置に配置され、上端部46aはメモリピン収容部45aから突出し、下端部46bはメモリピン収容部45aに収容される。このとき、アッパレール30がメモリ位置に配置されていると、メモリピン46の上端部46aは、後述の補助部材70のメモリ保持部75に挿通する。このように、メモリ装置44と補助部材70とが係合するときは、アッパレール30と共にメモリ装置44が移動する。なお、このようにメモリ装置44が補助部材70に係合する状態を、以下では、「メモリ装置44がアッパレール30に保持される」ともいう。
一方、スプリング47の付勢力に抗してメモリピン46が下方に押されると、メモリピン46が下方に移動する。メモリピン46の係合溝46cが係止部材48の配置部まで移動すると、係止部材48の貫通孔48cの周縁部が係合溝46cに挿通することが可能になるため、スプリング49の付勢力により係止部材48が後方に移動する。また、このとき、係止部材48の貫通孔48cの周縁部が係合溝46cに挿入して貫通孔48cの周縁部と係合溝46cとが係合するため、メモリピン46が下方の位置で維持される。このとき、メモリピン46の下端部46bは、メモリピン収容部45aから突出してメモリガイド41のメモリ孔42aに挿通するため、メモリ装置44がメモリガイド41に固定される。
メモリピン46が下方の位置で維持されている状態のとき、係止部材48が押されて係止部材48が前方に移動すると、係止部材48の貫通孔48cの周縁部とメモリピン46の係合溝46cとの係合が解除されるため、メモリピン46はスプリング47の付勢力により上方に移動する。
[ロック機構]
図9〜図11を参照して、ロック機構50について説明する。
ロック機構50は、アッパレール30とロアレール20とを係合させるロック部材51と、ロックレバー55とを備える。
ロック部材51は、弾性部材により構成され、アッパレール30の長手方向に沿って延びる。
図9(a)及び図9(b)に示されるように、ロック部材51の前端部51aは、アッパレール30の縦壁部32の前部に設けられた係合孔32dに係止される。ロック部材51の後端部51bは、アッパレール30の縦壁部32の後部に設けられた係合部32eに係合される。
ロック部材51の中間部には、アッパレール30の係止爪32b,34bとロアレール20の係止爪24aに係合するロック部52が設けられている。
図10に示されるように、ロック部52は、外側部位53と内側部位54とを有する。ロック部52の外側部位53と内側部位54とは同じ構造であり、幅方向中心軸に対して対称な構造を有する。
外側部位53には4個の係合部53aが設けられ、内側部位54には4個の係合部54aが設けられている。係合部53a,54aのそれぞれは幅方向DXに延びる。アッパレール30の縦壁部32の挿通部32cと、アッパレール30の外壁部34の挿通部34cと、ロアレール20の内壁部24の挿通部24bとが幅方向DXに一列に配列されるとき、係合部53a,54aは、これらの挿通部32c,34c,24bに挿通する。
ロック部材51は、ロックレバー55により上から下に向けて押圧される。
図11(a)及び図11(b)に示されるように、ロック部材51がロックレバー55により押圧されていないときは、弾性力によりロック部52が上下方向DZにおいて所定位置に位置する。このとき、ロック部52は、アッパレール30の係止爪32b,34bとロアレール20の係止爪24aとに係合する。以下、このときのロック部52の位置を「係合位置」という。
ロック部材51がロックレバー55により下方に押圧されると、ロック部52が係合位置よりも低い位置(ロアレール20の底壁部21に近い位置)に移動する。ロック部52が、挿通部32c、挿通部34c及び挿通部24bよりも下方に配置されると、ロック部52とアッパレール30の係止爪32b,34bとロアレール20の係止爪24aとの係合が解除される。以下、このときのロック部52の位置を「非係合位置」という。
図12を参照して、ロックレバー55を説明する。
ロックレバー55は、ロック部材51のロック部52を下方に押圧する。
ロックレバー55は、上下方向DZに延びる支持部56と、支持部56から前後方向DYに延びる延長部57と、延長部57から延びてロック部材51のロック部52を押す押圧部58とを有する。ロックレバー55の延長部57及び押圧部58は、アッパレール30の一対の縦壁部32の間の空間(内部空間)に配置される。
ロックレバー55の延長部57は、支持部56の端部から後方に延びる基部57aと、基部57aから延びて後方に向かって上方に傾斜する第1傾斜部57bと、第1傾斜部57bから延びて後方に向かって下方に傾斜する第2傾斜部57cとを有する。すなわち、ロックレバー55の延長部57は山形に形成されている。なお、以下では、基部57aと第1傾斜部57bとの境目の部分をロックレバー55の第1屈曲部57dといい、第1傾斜部57bと第2傾斜部57cとの境目の部分(山の頂上にあたる部分)をロックレバー55の第2屈曲部57eという。また、ロックレバー55の延長部57には、後述の切替部材60のメモリ押圧部63が挿通する挿通孔57fが設けられている。
支持部56は、後述の切替部材60の開口部61a、後述のガイド部材66の第1開口部67a及びアッパレール30の上壁部31の第1開口部31aを挿通し、アッパレール30の上壁部31から上方に突出する。支持部56に設けられた孔には、軸端部材123の接続部123aが回転不能に挿通する。また、軸端部材123の接続部123aの端部は、支持ブラケット35のハンドル支持部35bに支持され、かつスプリング124により付勢されている。スプリング124は、軸端部材123を介してロックレバー55を、押圧部58が上方に移動する方向(以下、「ロックレバー付勢方向RA」という。図13(a)参照。)に付勢する。ロックレバー55に加わる付勢力に抗する力が加えられていないときは、ロックレバー55はロックレバー初期位置に配置される。
ロックレバー55は、次の2通りの手段により付勢力に抗して回転する。
第1手段は、ロックレバー55を下方に押すもの(後述の切替部材60)として構成され、第2手段は、ロックレバー55の支持部56に係合する軸端部材123に回転力を加えるもの(後述の第2操作機構120)として構成される。
図13(a)及び図13(b)を参照して、ロック機構50の動作を説明する。
ロックレバー55に力が加えられていないときは、ロックレバー55がロックレバー初期位置に配置され押圧部58はロック部材51のロック部52を下方に押さないため、ロック部52は係合位置に位置する。このため、ロック部52は、アッパレール30の係止爪32b,34bとロアレール20の係止爪24aとに係合する(図11(a)参照)。これにより、ロアレール20に対してアッパレール30が固定される。以下、この状態をロック機構50の「ロック状態」という。
ロックレバー55に力が加えられてロックレバー55が付勢力に抗して回転すると、ロックレバー55の押圧部58がロック部材51のロック部52を下方に押す。ロックレバー55の回転によりロック部52が非係合位置まで移動すると、ロック部52とアッパレール30の係止爪32b,34bとロアレール20の係止爪24aとの係合が解除される(図11(a)参照)。このとき、アッパレール30はロアレール20に対して移動可能となる。以下、この状態をロック機構50の「アンロック状態」という。
[切替部材]
図14(a)及び図14(b)を参照して、切替部材60について説明する。
切替部材60は、前後方向DYに移動して、ロックレバー55を回転させ、ロック機構50をロック状態からアンロック状態にまたはロック機構50をアンロック状態からロック状態に切り替える。すなわち、切替部材60は、ロックレバー55を回転させる第1手段である。
切替部材60は、後述のガイド部材66(図6、図15参照)に摺動可能に取り付けられる。
切替部材60は、板状の切替本体部61と、ロックレバー55の上面を押圧するロックレバー押圧部62と、メモリ装置44のメモリピン46を押圧するメモリ押圧部63と、後述の誘導機構90のフック部材92が掛かる引掛部64とを有する。
切替本体部61には、ロックレバー55の支持部56が挿通する開口部61aが設けられている。
切替本体部61の前端には、スプリング係止部61bが設けられている。スプリング係止部61bには、切替部材60を前方へ付勢するためのスプリング65の後端が掛けられる。
切替本体部61の後部には、トリガー機構100の押圧部材102の前端部102d(第1当接部)が当接する後部当接面61c(被当接部)と、後部当接面61cの幅方向外端から連続してかつ前方に向かって外方に傾斜する後部傾斜面61dと、後部当接面61cの幅方向内端から連続して後方に延びる後部側面61eとが設けられている。
後部当接面61cは、切替本体部61の後面61fよりも前方に設けられている。
後部傾斜面61dは、後述のトリガー機構100の押圧部材102が押圧部材付勢方向RCとは反対方向に回転するときに押圧部材102の前端部102dを外方に案内する。後部側面61eは、トリガー機構100の押圧部材102が規定位置に配置されるときに押圧部材102の前部側面102eが当接し得るように構成されている。
ロックレバー押圧部62は、切替本体部61の下面から下方に突出する。メモリ押圧部63は、ロックレバー押圧部62よりも後方側に配置されて、切替本体部61の下面から下方に突出する。
引掛部64は、切替本体部61の上面から上方に突出する。また、引掛部64は、後述のガイド部材66の第2開口部67b及びアッパレール30の第2開口部31bを挿通して、アッパレール30の上壁部31の上方に突出する。なお、本実施形態では、ロックレバー押圧部62と引掛部64とは、切替部材60を貫通するピン部材60aの下端部と上端部とにそれぞれ対応するように構成されている。ピン部材60aの上部には留め金60bが取り付けられている。
図15を参照してガイド部材66を説明する。
ガイド部材66は、切替部材60及び後述のトリガー機構100のトリガー本体部101を摺動可能に支持する。
ガイド部材66は、アッパレール30の上壁部31の下面に取り付けられる。ガイド部材66は、ガイド本体部67と、ガイド本体部67の幅方向両端に設けられるフランジ68とを有する。フランジ68は、切替部材60及びトリガー機構100のトリガー本体部101を支持する。ガイド部材66には、前方から後方に向かって順に、第1開口部67a、第2開口部67b、第3開口部67c、第4開口部67dが設けられている。
図16及び図17を参照して補助部材70を説明する。
補助部材70は、アッパレール30に取り付けられ、アッパレール30の内部空間内(一対の縦壁部32との間)に配置される。補助部材70は、上下方向DZに延びる根元部71と、根元部71の下端部から前方に延びる幹部72と、幹部72から分岐して下方に延びる第1枝部73と、幹部72から前方に延長する第2枝部74とを有する。
第1枝部73の中間部には、メモリ装置44の係止部材48の後端部48bに当接する当接面73aが設けられている。
第1枝部73の下端部には、後述のトリガー機構100の第1ストッパ部103が挿通する貫通孔73bが設けられており、更に、第1枝部73の下端部の後面には、貫通孔73bに連通するようにガイドチューブ76が設けられている。第1枝部73の貫通孔73bとガイドチューブ76との連通孔には、トリガー機構100の第1ストッパ部103が挿通する。
第2枝部74の前端部には、メモリ保持部75(図6参照)が設けられている。
メモリ保持部75は、メモリピン46の上端部46aが下方から挿通し得るように、かつ前方から切替部材60のメモリ押圧部63が挿通し得るように構成されている。例えば、メモリ保持部75は、第2枝部74の前端から後方に向かって延びる切欠き凹部として構成される(図6参照)。
図17に示されるように、第1枝部73の当接面73aは、ストッパ部材36の前端36aとの関係で次のように構成される。すなわち、ストッパ部材36の前端36aがメモリ装置44の後面44aに接触するとき、押圧状態の係止部材48の後端部48bに接触する。
第2枝部74のメモリ保持部75は、補助部材70及びストッパ部材36との関係で次のように構成される。すなわち、ストッパ部材36の前端36aがメモリ装置44の後面44aに接触するとき、第2枝部74のメモリ保持部75はメモリ装置44のメモリピン46の上方に配置される。
なお、本実施形態では、図6に示されるように、根元部71は第1部品70aにより構成され、幹部72及び第1枝部73は第2部品70bにより構成され、第2枝部74は第3部品70cにより構成されている。
図18(a)及び図18(b)を参照して切替部材60の動作を説明する。
図18(a)に示されるように、後方に移動させる力が切替部材60に加えられていないとき、スプリング65の付勢力により切替部材60は所定位置(以下、「ロック位置」という。)に位置する。切替部材60のロックレバー押圧部62は、ロックレバー55の第1屈曲部57dに対向するところに位置する。このとき、ロックレバー55には力が加わらないため、ロックレバー55はロックレバー初期位置に配置され、ロック部材51のロック部52は係合位置に位置する。このため、ロック機構50はロック状態になる。
一方、後方に移動させる力が切替部材60に加えられると、スプリング65の付勢力に抗して切替部材60が移動する。ロックレバー押圧部62がロックレバー55の第1傾斜部57bに接触する位置(以下、「アンロック中間位置」という。)まで切替部材60が移動すると、ロックレバー55が回転し、これに伴ってロック部材51のロック部52が下方に移動して非係合位置に配置される。このとき、ロック機構50はアンロック状態になる。なお、切替部材60にアンロック中間位置に配置されているときに切替部材60を後方に移動させる力を解放すると、切替部材60は、ロック機構50のロックレバー55の押圧力及び切替部材60に加わる付勢力により、初期位置に戻る。すなわち、アンロック中間位置は、切替部材60を後方移動させる力の解放により、切替部材60がロック位置に復帰し得る位置である。
図18(b)に示されるように、切替部材60が更に後方に移動して、ロックレバー押圧部62がロックレバー55の第2屈曲部57eに接触する位置(アンロック中間位置よりも後方の位置。この位置を「アンロック維持位置」という。)に至ると、切替部材60に加わる付勢力よりも切替部材60に加わる摩擦力が大きくなるため、後方に移動させる力が切替部材60に加わらないときでも切替部材60がアンロック維持位置に維持されるようになる。
これは次の作用による。切替部材60がアンロック維持位置に配置されるとき、ロックレバー55の回転角度の増大によりロックレバー55に加わる付勢力が増大し、かつロック部材51の弾性変形が増大することにより、ロックレバー55を介して切替部材60に加わる力(以下、これらの力の合力を「ロック機構50による反力」という。)が増大する。更に、切替部材60がアンロック維持位置に位置するときは、ロック機構50による反力の方向が、切替部材60の移動方向(すなわち前後方向DY)に対して垂直方向に加わるようになる。これらのことから、切替部材60に加わる付勢力よりも切替部材60に加わる摩擦力が大きくなり、切替部材60がアンロック維持位置に維持されるようになる。
切替部材60は、メモリ装置44に対して次のように作用する。
図18(b)に示されるように、アッパレール30がメモリ装置44を保持するとき、切替部材60がアンロック維持位置に配置されると、切替部材60のメモリ押圧部63がメモリ装置44のメモリピン46を下方に押す。これにより、メモリ装置44がメモリ状態に移行する。
アンロック維持位置に配置されている切替部材60は、次の2通りの手段により、ロック位置に移動する。
切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に移動させる第1の手段は、トリガー機構100によるものである。
後述のように、切替部材60は、トリガー機構100のトリガー本体部101の移動により押圧部材102を介して押される。これにより、切替部材60は、アンロック維持位置からロック位置に移動する。なお、トリガー機構100の押圧部材102が切替部材60を押すとき、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接し、かつ押圧部材102の前部側面102eが切替部材60の後部側面61eに接触し、スプリング102gの付勢力により押圧部材102が切替部材60の後部側面61eを押す(図30(a)参照。なお、図30(a)では、切替部材60の後部当接面61cと押圧部材102の前部側面102eとは接触していない。)。このような構成のため、トリガー機構100の押圧部材102が切替部材60を押すとき、両者の係合が解消されることが抑制される。
切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に移動させる第2の手段は、ロックレバー55の回転によるものである。
切替部材60がアンロック維持位置に配置されている状態のとき、ロックレバー55に対する回転操作(例えば、第2操作機構120による操作)により、ロック部52が更に下方に移動するようにロックレバー55が回転すると、ロックレバー55が切替部材60を押す力(ロック機構50による反力)が低下する。切替部材60のロックレバー押圧部62とロックレバー55との押圧状態が解消されると、切替部材60はスプリング65の付勢力により前方に移動してロック位置に移動する。この後、ロック部材51のロック部52を下方に押し下げる力が開放されると、ロック部52が上方に移動するためロック機構50はロック状態になる。以上のように、切替部材60がアンロック維持位置に配置されていることによるロック機構50のアンロック状態は、ロックレバー55に対する操作(例えば、第2操作機構120の操作)により解消される。
以上を纏めると、切替部材60の作用は次の通りである。
・切替部材60がロック位置に配置されるとき、ロック機構50がロック状態になる。
・切替部材60がアンロック中間位置に配置されるとき、ロック機構50がアンロック状態になる。
・切替部材60がアンロック維持位置に配置されるとき、切替部材60がアンロック維持位置に維持されるようになり、ロック機構50はアンロック状態に維持される。
・切替部材60がアンロック維持位置で維持されているとき、トリガー機構100の押圧部材102に押されることにより切替部材60はロック位置に移動する。
・切替部材60がアンロック維持位置で維持されているとき、切替部材60とロックレバー55との押圧状態が解消されるようにロックレバー55が回転すると、切替部材60はロック位置に移動する。
[誘導機構]
図19及び図20を参照して、誘導機構90を説明する。
誘導機構90は、切替部材60をロック位置からアンロック維持位置に移動させる。誘導機構90は、誘導部材91と、誘導部材91に取り付けられるフック部材92と、後述の押圧部材102と切替部材60との当接を回避させる回避ピン95と、誘導部材91に取り付けられる取付部材96とを備える。
誘導部材91は、切替部材60よりも後方に配置され、アッパレール30の上壁部31に被さるようにかつアッパレール30に対して摺動可能に取り付けられる。例えば、誘導部材91の幅方向両端それぞれにフランジ91aが設けられる。フランジ91aはアッパレール30の縦壁部32のガイド孔32fに挿通する。
取付部材96は、誘導部材91の幅方向内側(インナーレール側)に取り付けられている。取付部材96の前端部には、誘導部材91を前方へ付勢するスプリング98(図3参照)の後端が掛けられる。取付部材96に設けられる貫通孔96aには、操作ケーブル112のインナーケーブル113の端部が係止される。すなわち、スプリング98の付勢力に抗して操作ケーブル112のインナーケーブル113が引っ張られることにより、誘導部材91が移動する。
誘導部材91は、初期位置と、初期位置よりも後方の終端位置との間で移動する。
誘導部材91は、操作ケーブル112による力が加えられていないとき、スプリング98の付勢力により初期位置に配置される。誘導部材91は、操作ケーブル112による力が加えられると、スプリング98の付勢力に抗して後方に移動して、中間位置を通過して終端位置に配置される。
初期位置は、切替部材60のロック位置に対応する位置として規定されている。具体的には、切替部材60がロック位置に配置されているときに、切替部材60の引掛部64と誘導機構90のフック部94(後述参照)とが係合する位置またはこの位置よりも前方の位置に、初期位置が規定される。中間位置は、切替部材60をアンロック中間位置に配置させる位置である。終端位置は、切替部材60をアンロック維持位置に配置させる位置である。
フック部材92は、誘導部材91の下面に取り付けられて、アッパレール30の上壁部31の上側に配置される。
フック部材92は、本体部93と、本体部93から前方かつ幅方向内方(インナーレールに向かう方向)に湾曲するように延びるフック部94とを有する。フック部94は、切替部材60の引掛部64に係合する。フック部94の後方湾曲面94aは引掛部64に接触し得る。フック部94の前方湾曲面94bは、フック部94のフック先端94cに向かって後方に傾斜する。
フック部材92の後端部92aは、軸ピン97及びスプリング(図示省略)を介して誘導部材91に取り付けられる。フック部材92は、スプリングの付勢力により所定回転方向(以下、「フック係合方向RB」という。)に付勢されて、フック部94が切替部材60の引掛部64に引っ掛かる位置(以下、「フック係合位置」という。)に配置されている。
更に、フック部材92の後端部92aの側面には、アッパレール30の上壁部31に設けられた係合突起部31dに接触する面(以下、「後部側面92b」という。)が設けられている。フック部材92の後端部92aは、係合突起部31dに対して幅方向外側(インナーレール側とは反対側)に配置され、後部側面92bは後方に向かって幅方向外方(インナーレールに向く方向とは反対方向)に傾斜する。このような構成により、誘導部材91が後方に移動して係合突起部31dにフック部材92の後部側面92bが接触すると、スプリングの付勢力に抗してフック部材92がフック係合方向RBとは反対方向に回転する。誘導部材91が終端位置まで移動すると、フック部94が切替部材60の引掛部64とは接触し得ない位置(以下、「フック非係合位置」という。)までフック部材92が回転する。
回避ピン95は、誘導部材91から下方に突出し、アッパレール30の上壁部31の第3開口部31c及びガイド部材66の第3開口部67cを挿通する。回避ピン95の下端部は、トリガー機構100の押圧部材102の側面(後述の第1ピン接触面102b及び第2ピン接触面102c)に接触し得る。
図21、図22及び図23を参照して誘導機構90の動作を説明する。
まず、誘導機構90の基本動作について説明する。
誘導部材91が初期位置に配置されているときに誘導部材91に操作ケーブル112による牽引力が加わると後方に移動する。誘導部材91が、終端位置の直前の位置に至ると誘導部材91の後部側面92bがアッパレール30の係合突起部31dに接触してフック部材92がフック係合方向RBとは反対方向に回転し始める。誘導部材91が終端位置まで移動すると、フック部材92がフック非係合位置まで回転する。操作ケーブル112による牽引力が誘導部材91に加わらなくなると、誘導部材91は、スプリング98の付勢力により前方に移動して初期位置に戻る。
図21及び図22を参照して、切替部材60がロック位置に配置されているときに誘導機構90が操作ケーブル112を介して操作されるときの、切替部材60及び誘導機構90の動作について説明する。
図21(a)及び図21(b)に示されるように、誘導部材91が初期位置に配置されているとき、フック部材92はフック係合位置に配置されている。このため、切替部材60がロック位置に配置されているときは、フック部材92のフック部94が切替部材60の引掛部64に引っ掛かる。切替部材60は、誘導部材91の後方移動とともに後方に移動する。
図22(a)及び図22(b)に示されるように、誘導部材91が終端位置に配置されると、切替部材60はアンロック維持位置に配置される。また、誘導部材91の後部側面92bがアッパレール30の係合突起部31dに接触するため、フック部材92がフック係合方向RBとは反対方向に回転して、フック部材92と切替部材60の引掛部64との係合が解除される。操作ケーブル112による牽引力が誘導部材91に加わらなくなると、誘導部材91は、スプリング98の付勢力により前方に移動する。このとき、切替部材60は、摩擦力により切替部材60はアンロック維持位置に残留する。
図23を参照して、誘導部材91は終端位置に維持されて、切替部材60がロック位置とアンロック維持位置との間で移動するときの(例えば、後述の第2の操作方法によるウォークイン動作中)、切替部材60の動作について説明する。
誘導部材91が終端位置に配置されると、アッパレール30の係合突起部31dにフック部材92の後部側面92bが接触するため、ロック部材51はフック非係合位置に配置される。この状態のとき、切替部材60の引掛部64がフック部材92のフック部94に引っ掛かることなく、切替部材60がアンロック維持位置からロック位置に移動し得る。
図24を参照して、切替部材60がロック位置に配置されているときの、誘導機構90の動作について説明する。上述のように、誘導部材91が終端位置に配置される一方、切替部材60がロック位置に配置される場合がある(図23(b)参照)。
この場合において、誘導機構90が前方に移動すると、アッパレール30の係合突起部31dにフック部材92の後部側面92bとの接触が解消されるため、フック部材92がフック係合位置に配置される。そうすると、誘導部材91が終端位置から初期位置に至る途中で、フック部94の前方湾曲面94bが切替部材60の引掛部64に当接する。フック部94の前方湾曲面94bは先端に向かって後方に傾斜するため、引掛部64とフック部94との接触によりフック部94に加わる力がフック部材92をフック係合方向RBとは反対方向に回転させるように作用する。これにより、フック部材92はフック係合方向RBとは反対方向に回転し、フック部材92が回転している間に誘導部材91が前方に移動し、誘導部材91は初期位置に戻る。
[トリガー機構]
図25及び図26を参照して、トリガー機構100について説明する。
トリガー機構100は、トリガー本体部101と、トリガー本体部101に取り付けられる押圧部材102と、メモリ装置44に当接する第1ストッパ部103と、ロアストッパ26に当接する第2ストッパ部104と、リンク機構105とを備える。
トリガー本体部101は、切替部材60よりも後方側に配置され、ガイド部材66に摺動可能に取り付けられている。トリガー本体部101は、前端位置と、前端位置よりも後方の後端位置との間で移動する。前端位置(図28参照)と後端位置(図27参照)とは、後述のリンク部材107の動作により規定される。
トリガー本体部101の前部には、押圧部材102が軸ピン102fを介して回転可能に取り付けられている。トリガー本体部101の中央部には、補助部材70の根元部71が挿通する開口部101aが設けられている。トリガー本体部101の後部には第2ストッパ部104が設けられている。本実施形態では、トリガー本体部101と第2ストッパ部104とは一つの部品として構成されている。
第2ストッパ部104は、トリガー本体部101の後部から後方に突出する基部104aと、基部104aから下方に延びる第1延長部104bと、第1延長部104bから後方に延びる第2延長部104cとを有する。基部104aには、リンク機構105のリンク部材107の上端部107cが挿通する孔(以下、「挿通孔104d」という。)が設けられている。
第2ストッパ部104の後端104e(ストッパ当接部)は、ロアストッパ26及び固定ストッパ29に当接する。
第2ストッパ部104の後端104eは、アッパレール30に固定されているストッパ部材36との関係で次のように配置される。
トリガー本体部101が前端位置に配置されているとき(図28参照)、第2ストッパ部104の後端104eはストッパ部材36の後端36bと前後方向DYにおいて同じ位置に配置される。
一方、トリガー本体部101が後端位置に配置されるときは(図27参照)、第2ストッパ部104の後端104eはストッパ部材36の後端36bよりも後方に配置される。このことから、トリガー本体部101が後端位置に配置されてアッパレール30が後方に移動するとき、例えば後述のウォークイン動作のとき、第2ストッパ部104の後端104eがストッパ部材36よりも先にロアストッパ26に当接する。
押圧部材102の基部102aは、スプリング102gを介してトリガー本体部101に取り付けられている。
押圧部材102は、スプリング102gの付勢力により所定回転方向(以下、「押圧部材付勢方向RC」という。)に付勢されている。押圧部材102の側面後部102rが、トリガー本体部101の前端から突出する突起部101bに当接することにより、押圧部材102が所定位置(以下、「規定位置」という。)に位置決めされる。
押圧部材102の前端部102d(第1当接部)は、押圧部材102が規定位置に配置されているときに押圧部材102と切替部材60との間の距離が縮まると、切替部材60の後部当接面61cに接触する。また、押圧部材102が押圧部材付勢方向RCとは反対方向に回転すると、押圧部材102の前端部102dは切替部材60の後部傾斜面61dに接触し得る。
押圧部材102における押圧部材付勢方向RC側の側面には、誘導機構90の回避ピン95が接触し得る2つの面(以下、それぞれ「第1ピン接触面102b」、「第2ピン接触面102c」という。)が設けられている。第1ピン接触面102bは、後方に向かって回避ピン95側に向かうように斜めに形成されている。第2ピン接触面102cは、第1ピン接触面102bに連続して後方に向かって延びている。この構成により、回避ピン95が第1ピン接触面102bに接触しかつトリガー本体部101が前方に移動すると、回避ピン95が押圧部材付勢方向RCとは反対方向に回転するため、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接することが回避される。
押圧部材102の前方突出部の長さLP(図27参照)は、切替部材60とトリガー本体部101との関係で次の3つの条件が成立するように構成されている。なお、前方突出部とは、押圧部材102においてトリガー本体部101から前方に突出している部分の前後方向DYの長さを示す。
第1条件とは、押圧部材102の前方突出部の長さLPは、ロック位置に配置された切替部材60の後部当接面61cと前端位置に配置されたトリガー本体部101の前端との間の距離よりも短いことである。このため、切替部材60がロック位置に配置されてかつトリガー本体部101が前端位置に配置されているとき、押圧部材102の前端部102dは切替部材60の後部当接面61cに当接しない。
第2条件とは、押圧部材102の前方突出部の長さLPは、アンロック維持位置に配置された切替部材60の後部当接面61cと前端位置に配置されたトリガー本体部101の前端との間の距離よりも長いことである。このため、押圧部材102が規定位置に配置され、かつ切替部材60がアンロック維持位置に配置されているとき、トリガー本体部101が前方に移動すると、トリガー本体部101が前端位置に至るまでの途中で押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接する。また、押圧部材102が規定位置に配置され、かつトリガー本体部101が前端位置に配置されているとき、切替部材60が後方に移動すると、切替部材60がアンロック維持位置に至るまでの途中で切替部材60の後部当接面61cが押圧部材102の前端部102dに当接する。
第3条件とは、押圧部材102の前方突出部の長さLPは、アンロック維持位置に配置された切替部材60の後部当接面61cと後端位置に配置されたトリガー本体部101の前端との間の距離よりも短いことである。このため、切替部材60がアンロック維持位置に配置されてかつトリガー本体部101が後端位置に配置されているとき、押圧部材102の前端部102dは切替部材60の後部当接面61cに当接しない。
図26に示されるように、リンク機構105は、アッパレール30の上壁部31の下面に取り付けられるリンク支持部106と、リンク支持部106に回転可能に取り付けられるリンク部材107とを備える。
リンク支持部106は、アッパレール30の上壁部31に締結される固定部106aと、固定部106aの幅方向両側それぞれから下方に延びる下方延長部106bと、下方延長部106bから前方に延びる前方延長部106cとを有する。下方延長部106bには、軸ピン109を介してロアストッパ解除部材108が回転可能に取り付けられる。
リンク部材107の中間部には貫通孔107aが設けられている。リンク部材107は、貫通孔107aを挿通する回転軸107bを介して、リンク支持部106の前方延長部106cに回転可能に取り付けられる。リンク部材107は、スプリング107eにより、上端部107cが後方に移動する方向(以下、この回転方向を「リンク付勢方向RD」という。)に付勢されている。
リンク部材107の上端部107cは、トリガー本体部101の挿通孔104dに挿通する。
リンク部材107の下端部107dには、第1ストッパ部103が回転可能に取り付けられている。
第1ストッパ部103の前端103a(メモリ当接部)は、メモリ装置44に当接し得る。
第1ストッパ部103の前端103aよりも後方の部位は、補助部材70に取り付けられたガイドチューブ76に挿通して、補助部材70により支持されている。
第1ストッパ部103の前端103aは、アッパレール30に固定されているストッパ部材36との関係で次のように配置される。トリガー本体部101が前端位置に配置されているとき、第1ストッパ部103の前端103aはストッパ部材36の前端36aと前後方向DYにおいて同じ位置に配置される(図28(b)参照)。このことを言い換えると、ストッパ部材36の前端36aがメモリ装置44の後面44aに当接するとともに第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44の後面44aに当接すると、トリガー本体部101が前端位置に配置されるようになる。
トリガー本体部101が後端位置に配置されるときは(図27(b)参照)、第1ストッパ部103の前端103aはストッパ部材36の前端36aよりも前方に配置される。このことから、トリガー本体部101が後端位置に配置されてアッパレール30が前方に移動するときは、第1ストッパ部103の前端103aがストッパ部材36よりも先にメモリ装置44に当接する。
図27及び図28を参照してトリガー機構100の第1の動作を説明する。
第1の動作とは、第1ストッパ部103及び第2ストッパ部104に力に作用するときのトリガー機構100の動作である。
図27(a)及び図27(b)に示されるように、第1ストッパ部103を後方に押す力が加えられていないときは、リンク部材107に加わる付勢力によりリンク部材107の上端部107cが後方に配置されるため、トリガー本体部101は後端位置に配置される。以下、このようなトリガー機構100の状態をニュートラル状態という。
図28(a)及び図28(b)に示されるように、トリガー機構100がニュートラル状態にあるときにおいて第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接することにより第1ストッパ部103が後方に押されると、リンク部材107の上端部107cが前方に配置されるため、トリガー本体部101は前方に移動する。そして、第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接した状態でストッパ部材36の前端36aがメモリ装置44に当接するまでアッパレール30が前方に移動すると、トリガー本体部101は前端位置に配置される。
また、トリガー機構100がニュートラル状態にあるときにおいて第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接することにより第2ストッパ部104が前方に押されると、トリガー本体部101及び第2ストッパ部104が前方に移動する。そして、第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接した状態で、ストッパ部材36の後端36bがロアストッパ26に当接するまでアッパレール30が後方に移動すると、トリガー本体部101は前端位置に配置される。このとき、トリガー本体部101の前方への移動に伴ってリンク部材107の上端部107cが前方に移動するため、第1ストッパ部103は後方に移動する。すなわち、結果的に、図28(a)及び図28(b)に示されるトリガー機構100の状態と同じ状態になる。
図29及び図30を参照してトリガー機構100の第2の動作を説明する。
第2の動作とは、トリガー機構100と切替部材60との接触またはトリガー機構100と誘導部材91との接触による動作である。
図29(a)に示されるように、切替部材60がロック位置に配置されているときは、トリガー本体部101の位置に関わらず押圧部材102の前端部102dは切替部材60の後部当接面61cに接触しないため、押圧部材102は規定位置に配置される。
図29(b)及び図29(c)に示されるように、切替部材60がロック位置に配置されかつトリガー本体部101が前端位置に配置されているときに、誘導機構90の後方移動に伴って切替部材60が後方移動すると、誘導機構90の回避ピン95が押圧部材102の第1ピン接触面102bに接触し続いて第2ピン接触面102cに接触する。これにより、押圧部材102が押圧部材付勢方向RCとは反対方向に回転する。これにより、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接することが回避され、切替部材60がアンロック維持位置まで移動することが許容されるようになる。
図30(a)に示されるように、切替部材60がアンロック維持位置に配置され、かつトリガー本体部101の後端位置に配置されているときは、押圧部材102の前端部102dは切替部材60に接触しないため、押圧部材102は規定位置に配置される。
切替部材60がアンロック維持位置に配置されかつトリガー本体部101が後端位置に配置されているときに、トリガー機構100の第1ストッパ部103がメモリ装置44に当接することによりトリガー本体部101が後端位置から前方に移動すると、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに接触する。これにより、切替部材60は、押圧部材102に押されて前方に移動する。切替部材60は、押圧部材102に押されてアンロック中間位置近辺まで移動すると付勢力によりロック位置に移動する(図30(b)参照)。
[第1操作機構]
第1操作機構110は、誘導機構90を動作させる。すなわち、第1操作機構110は、誘導機構90を介してロック機構50とメモリ機構40とを動作させる。
第1操作機構110は、操作レバー111(図2参照)と、操作レバー111に接続される操作ケーブル112とにより構成される。操作ケーブル112のインナーケーブル113の一端は、誘導部材91の取り付けられた取付部材96に係止される。操作ケーブル112のインナーケーブル113の他端は、操作レバー111に取り付けられる。操作レバー111はスプリングにより初期レバー位置に付勢されている。操作レバー111の初期レバー位置は誘導部材91の初期位置に対応し、操作レバー111の終端レバー位置は誘導部材91の終端位置にする。
すなわち、操作レバー111が初期レバー位置から終端レバー位置まで回転する操作により、誘導部材91が終端位置まで移動する。操作レバー111が終端レバー位置から初期レバー位置まで戻される操作により、誘導部材91が初期位置に移動する。
[第2操作機構]
図31(a)〜図31(c)を参照して第2操作機構120について説明する。
第2操作機構120は、ロック機構50を動作させる。第2操作機構120は、図4に示されるように、ハンドル121と、ハンドル121が回転可能に取り付けられるハンドル回転軸122と、ハンドル回転軸122の両端それぞれに回転不能に取り付けられている軸端部材123と、ハンドル121とハンドル回転軸122とを係合させるハンドル係合部材125とを備える。
ハンドル121は、例えば、U字形に構成される。ハンドル121の両端それぞれは、ハンドル回転軸122に回転可能に取り付けられ、ロックレバー付勢方向RAと同じ方向(ハンドル付勢方向RF)に付勢されている。
軸端部材123の接続部123a(図3参照)は、上述のように、ロックレバー55の支持部56に係合されている。軸端部材123及びロックレバー55はロックレバー付勢方向RAに付勢されている。
ハンドル係合部材125は、ハンドル回転軸122の端部に固定される第1係合部材125aと、ハンドル121の端部に取り付けられて第1係合部材125aに当接する第2係合部材125bとにより構成される。第2係合部材125bは、第1係合部材125aの下方(第1係合部材125aからハンドル付勢方向RF側)に配置される。
図31(a)及び図31(b)に示されるように、ハンドル121を上方に回転させると、第2係合部材125bと第1係合部材125aとの係合により軸端部材123がスプリング124の付勢力に抗して回転する。ロックレバー55は、軸端部材123と共に回転するため、ロック機構50がロック状態からアンロック状態に移行する。これにより、アッパレール30が移動可能な状態となる。なお、このとき、切替部材60は移動しないためメモリ装置44の状態は変更されない。
なお、ロックレバー55は、上述したように、第1操作機構110による誘導機構90の動作によっても回転する。第1操作機構110の操作によってロックレバー55がロックレバー付勢方向RAとは反対方向に回転するときはロックレバー55の回転に伴って軸端部材123も回転するが、このとき、図31(c)に示されるように、第1係合部材125aは第2係合部材125bから離れるようになるため、ハンドル121は動かない。このように、第1操作機構110が操作されるとき第2操作機構120は動作しない。
[車両用シートスライド装置の動作]
車両用シートスライド装置10は、大別すると2つの動作を含む。
第1はスライド動作であり、第2はウォークイン動作である。スライド動作は、シート2の位置を記憶させずにシート2を移動させるときの動作であり、第2操作機構120の操作により実行される。スライド動作は、ロック機構50をロック状態とアンロック状態とで切り替える動作を含む。
ウォークイン動作は、例えば、運転者の乗降時において運転者のシート位置を記憶させるときの動作であり、第1操作機構110の操作に伴う動作である。ウォークイン動作は、メモリ機構40によりシート位置を記憶する第1動作と、第1規制位置でアッパレール30を停止及び固定させる第2動作と、第1規制位置からアッパレール30を移動させる第3動作と、アッパレール30をメモリ位置で固定する第4動作とを含む。
第1操作機構110には、第1の操作方法と第2の操作方法とがある。
第1操作機構110の第1の操作方法とは、操作レバー111を初期レバー位置から終端レバー位置に回転させてその後初期レバー位置に戻す往復操作により、第1動作(または第3動作)を実行する操作である。
第1操作機構110の第2の操作方法とは、操作レバー111を初期レバー位置から終端レバー位置に回転させる往き操作により第1動作(または第3動作)を実行し、第2動作(または第4動作)が完了した時点で、操作レバー111を終端レバー位置から初期レバー位置に戻す操作である。
[第1の操作方法によるウォークイン動作]
図18及び図32〜図34を参照して、車両用シートスライド装置10のウォークイン動作を説明する。なお、図32〜図34では、ロック機構50の構成の記載を省略しているため、ロック機構50の動作については図18(a)及び図18(b)を参照する。
次の(a)〜(d)では、第1操作機構110を第1の操作方法で操作したときの車両用シートスライド装置10の動作を説明する。
(a)アッパレール30がロアレール20に係合されているとき、第1操作機構110が操作されるときの車両用シートスライド装置10の動作。この動作は、ウォークイン動作の第1動作に対応する。
図32(a)及び図32(b)は、アッパレール30がロアレール20に係合されているときの状態を示す。このとき、ロック部材51のロック部52は係合位置に配置され、切替部材60はロック位置に配置され(図18(a)参照)、誘導機構90の誘導部材91は初期位置に配置されている。誘導機構90のフック部材92のフック部94は切替部材60の引掛部64に係合する。
メモリ装置44はアンメモリ状態にある。すなわち、メモリピン46の上端部46aがメモリ保持部75に挿通して、メモリ装置44はアッパレール30に保持されている。
メモリ装置44はアッパレール30に保持されているときは、ストッパ部材36の前端36a及びトリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44の後面44aに当接し、トリガー本体部101は前端位置に配置される。
図33(a)及び図33(b)に示されるように、第1操作機構110により誘導部材91が後方に移動すると、これに伴って切替部材60が後方に移動する。そうすると、切替部材60のロックレバー押圧部62がロックレバー55を押圧するため、ロック部材51のロック部52が下方に移動する。また、切替部材60のメモリ押圧部63がメモリ保持部75に挿通してメモリピン46を下方に押圧する。更に、誘導部材91が後方に移動することにより、誘導部材91の回避ピン95がトリガー機構100の押圧部材102の第1ピン接触面102b及び第2ピン接触面102cに接触するため、押圧部材102が押圧部材付勢方向RCとは反対方向に回転する。これにより、切替部材60の後部当接面61cと押圧部材102の前端部102d(第1当接部)とが接触することが回避される。
図34(a)及び図34(b)に示されるように、誘導部材91が終端位置に配置されると、切替部材60がアンロック維持位置に、ロック部材51のロック部52が非係合位置に配置される(図18(b)参照)。すなわち、ロック機構50はアンロック状態になる。また、メモリピン46が下方に移動することによりメモリピン46と係止部材48とが係合するため、メモリ装置44がメモリ状態になり、メモリ装置44がメモリガイド41に固定される。
また、誘導部材91が終端位置に至る直前の位置で、アッパレール30から突出する係合突起部31dがフック部材92の後部側面92bに接触する。そして、誘導部材91が終端位置まで移動すると、係合突起部31dとフック部材92の後部側面92bとの押圧によってフック部材92がフック非係合位置まで回転する(図22(b)参照)。
なお、メモリピン46と係止部材48とが係合するとき、付勢力により係止部材48が後方に突出して、係止部材48が補助部材70を押圧する。このため、アッパレール30には、補助部材70を介して後方に押す力が作用するが、係止部材48を付勢するスプリング49の力は、アッパレール30及びアッパレール30に加わっている荷重(シート2の荷重)による摩擦力(アッパレール30の移動時の摩擦力)よりも小さいため、アッパレール30が後方に移動することが抑制される。
第1操作機構110が操作されなくなると、誘導部材91はスプリング98の付勢力により初期位置に戻る。
切替部材60は、ロックレバー押圧部62とロックレバー55との間に作用する摩擦力によりアンロック維持位置に維持される。
このような状態にあるとき、すなわちロック機構50がアンロック状態でありかつメモリ装置44がメモリ状態にあるとき、アッパレール30が後方に移動すると、トリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44の後面44aから離れ、トリガー機構100の第1ストッパ部103に押圧力が加わらなくなる。そうすると、リンク部材107がスプリング107eの付勢力によりリンク付勢方向RDに回転してこれに伴ってトリガー本体部101が後方に移動する(図27(a)及び図27(b)参照)。トリガー本体部101が後端位置まで移動すると、第2ストッパ部104の後端104eがストッパ部材36の後端36bよりも後方に配置される(図27及び図35(a)及び図35(b)参照。)。
(b)アッパレール30が後方に移動して、ロアストッパ26によりアッパレール30の後方移動が規制されるときの、車両用シートスライド装置10の動作。この動作は、ウォークイン動作の第2動作に対応する。
上述(a)に示される操作が行われると、アッパレール30は、メモリ装置44を保持しない状態で移動する。このとき、上述のように、第2ストッパ部104の後端104eがストッパ部材36の後端36bよりも後方に配置される(図27(a)及び図27(b)参照)。
アッパレール30がストッパ部材36の前方手前の位置まで移動すると、第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接する。そして、更に、アッパレール30が後方に移動すると、トリガー本体部101がアッパレール30に対して前方に移動する。そうすると、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接するため、トリガー本体部101の前方移動に伴って切替部材60が前方に移動する(図36(a)及び図36(b)参照)。
図36(a)及び図36(b)に示されるように、アッパレール30が後方に移動してストッパ部材36の後端36bがロアストッパ26に当接すると、アッパレール30の後方移動が規制される。すなわち、アッパレール30は第1規制位置で止まる。このとき、トリガー本体部101は前端位置に配置される。切替部材60は、前方に移動し、更にスプリング65の付勢力によりロック位置まで戻る。そうすると、ロックレバー55はスプリング124の付勢力により押圧部58が上方に移動するように回転して、これに伴ってロック部材51のロック部52は係合位置に配置される。すなわち、ロック機構50はロック状態に移行する。
(c)アッパレール30が第1規制位置でロアレール20に係合されているとき、第1操作機構110が操作されるときの車両用シートスライド装置10の動作。この動作は、ウォークイン動作の第3動作に対応する。
このとき、ロック機構50はロック状態にある。すなわち、ロック部材51のロック部52が係合位置に配置され、切替部材60はロック位置に配置され、誘導機構90の誘導部材91は初期位置に配置されている。
第1操作機構110が操作されると、上述(a)に示した動作と同様に、誘導部材91が後方に移動し、これに伴って切替部材60が後方に移動する。そうすると、切替部材60のロックレバー押圧部62がロックレバー55を押圧し、ロック部材51のロック部52が下方に移動する。誘導部材91が後方に移動することにより、誘導部材91の回避ピン95がトリガー機構100の押圧部材102の第1ピン接触面102bに接触するため、切替部材60の後部当接面61cと押圧部材102の前端部102d(第1当接部)とが接触することが回避される。誘導部材91が終端位置に配置されると、切替部材60がアンロック維持位置に配置され、ロック部材51のロック部52が非係合位置に配置される。すなわち、ロック機構50はアンロック状態になる。これにより、アッパレール30が移動可能となる。
このような状態のとき、すなわちロック機構50がアンロック状態であるとき、アッパレール30が前方に移動すると、トリガー機構100の第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26から離れる。そうすると、リンク部材107がスプリング107eの付勢力により回転してこれに伴ってトリガー本体部101が後方に移動する。トリガー本体部101が後端位置まで移動すると、第1ストッパ部103の前端103aがストッパ部材36の前端36aよりも前方に配置される。
(d)アッパレール30が前方に移動して、メモリ装置44によりアッパレール30の前方移動が規制されるときの、車両用シートスライド装置10の動作。この動作は、ウォークイン動作の第4動作に対応する。
上述(c)に示されるように、アッパレール30がメモリ装置44を保持しない状態で移動するとき、第1ストッパ部103の前端103aがストッパ部材36の前端36aよりも前方に配置される。
図37(a)及び図37(b)は、アッパレール30がメモリ位置の後方手前のところに配置されたときの、図9のC−C線に沿う断面及びレール11の断面をそれぞれ示す。図38(a)及び図38(b)は、図37(b)のF−F線に沿う断面である。
アッパレール30がメモリ装置44を保持していないときは、第1ストッパ部103の前端103aがストッパ部材36の前端36aよりも前に位置するため(図38(a)参照)、アッパレール30がメモリ位置の後方手前の位置まで移動すると、第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44の後面44aに当接する。そして、更に、アッパレール30が前方に移動すると、トリガー本体部101がアッパレール30に対して前方に移動する。そうすると、トリガー機構100の押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接するため、トリガー本体部101の前方移動に伴って切替部材60が前方に移動する。
第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44の後面44aに当接後、アッパレール30が前方に移動する途中において、補助部材70の当接面73aがメモリ装置44の係止部材48の後端部48bに当接する。このとき、補助部材70のメモリ保持部75がメモリピン46の上方に配置される。アッパレール30の前方移動に伴って係止部材48が押されると、メモリピン46と係止部材48との係合が解除される。このとき、ストッパ部材36の前端36aがメモリ装置44の後面44aに当接するため、アッパレール30の前方移動が規制される。すなわち、アッパレール30はメモリ位置で停止する(図38(b)参照)。
一方、この間に、切替部材60は、トリガー機構100の押圧部材102に押されて前方に移動し、切替部材60のメモリ押圧部63はメモリ保持部75から脱出する。このため、メモリ保持部75には、メモリ押圧部63と入れ替わるようにして、メモリピン46の上端部46aが挿通する。これにより、メモリ装置44がアンメモリ状態に移行し、メモリ装置44がアッパレール30に保持されるようになる。
切替部材60は、スプリング65の付勢力によりロック位置まで戻る。そうすると、ロックレバー55がスプリング124の付勢力により押圧部58が上方に移動するように回転し、これに伴ってロック部材51のロック部52は係合位置に配置され、ロック機構50がロック状態に移行する。
以上のように、車両用シートスライド装置10によれば、第1操作機構110の操作によりシート2のシート位置を記憶させて、シート2を移動させることができる。シート2が第1規制位置まで移動するとトリガー機構100及び切替部材60を介してロック機構50が動作するため、シート2は第1規制位置で自動的に(すなわち、シート2を固定するための操作が行われずとも)固定される。シート2を第1規制位置から移動させるときは、第1操作機構110が操作される。シート2がメモリ位置まで移動するとトリガー機構100及び切替部材60を介してロック機構50が動作するため、シート2はメモリ位置で自動的に固定される。
[第2の操作方法によるウォークイン動作]
次に、第1操作機構110を第2の操作方法で操作したときの車両用シートスライド装置10の動作を示す。
第1操作機構110の第2の操作方法とは、アッパレール30の移動中において第1操作機構110を操作し続ける操作を示す。すなわち、第2の操作方法では、操作レバー111を初期レバー位置から終端レバー位置に回転させた状態で、アッパレール30を移動させる。
次の(e)〜(h)では、第1操作機構110を第2の操作方法で操作したときの車両用シートスライド装置10の動作を説明する。
(e)アッパレール30がロアレール20に係合されているとき、第1操作機構110が操作されるときの車両用シートスライド装置10の動作。この動作は、ウォークイン動作の第1動作に対応する。
このとき、車両用シートスライド装置10は、上述の(a)と同様に動作する。但し、第2の操作方法によれば、アッパレール30の移動中も第1操作機構110の操作レバー111が引かれる。このため、誘導部材91は終端位置に維持される。また、誘導機構90のフック部材92はフック非係合位置で維持される。
(f)アッパレール30が後方に移動して、ロアストッパ26によりアッパレール30の後方移動が規制されるときの、車両用シートスライド装置10の動作。この動作は、ウォークイン動作の第2動作に対応する。
上述(e)に示される操作が行われると、アッパレール30は、メモリ装置44を保持しない状態で移動する。このとき、上述のように、第2ストッパ部104の後端104eがストッパ部材36の後端36bよりも後方に配置される。
アッパレール30が第1規制位置の直前の位置まで移動すると、第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接する。そして、更に、アッパレール30が後方に移動すると、トリガー本体部101がアッパレール30に対して前方に移動する。そうすると、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接するため、トリガー本体部101の前方移動に伴って切替部材60が前方に移動する。
ここで、仮にフック部材92がフック係合位置に配置されているとフック部94が切替部材60の引掛部64に係合するため切替部材60の前方移動が阻止されるが、上述のように(図23(a)及び図23(b)参照)、フック部材92がフック非係合位置に維持されているため、切替部材60の前方への移動が許容される。
アッパレール30が後方に移動してストッパ部材36の後端36bがロアストッパ26に当接すると、アッパレール30の後方移動が規制される。すなわち、アッパレール30は第1規制位置で止まる。この後の動作は、上述の(b)と同様であり、ロック機構50がロック状態に移行する。
ロック機構50がロック状態になったときに、第1操作機構110の操作レバー111の操作が行われなくなると、次のように誘導機構90が動作する。
第1操作機構110の操作レバー111の操作が行われなくなると、誘導部材91はスプリング98の付勢力により前方に移動する。誘導部材91が前方に移動すると、アッパレール30の係合突起部31dとフック部材92の後部側面92bとの係合が解除されるため、フック部材92はフック係合位置に戻る。このため、誘導部材91が前方に移動することによりフック部材92のフック部94が、前方に配置されている切替部材60の引掛部64に当接する(図24(a)参照)。フック部94の前方湾曲面94bはフック先端94cに向かって後方に傾斜するように構成されているため、フック部94の前方湾曲面94bと引掛部64との当接により、フック部材92がフック係合方向RBとは反対方向に回転する。そして、フック部材92が回転している間に誘導部材91が前方に移動し、誘導部材91が初期位置に戻る(図24(b)参照)。
(g)アッパレール30が第1規制位置でロアレール20に係合されているとき、第1操作機構110が操作されるときの車両用シートスライド装置10の動作(ウォークイン動作の第3動作)は、上述の(c)と同様である。また、第1操作機構110の第1の操作方法と第2の操作方法との相違による動作の相違については、上述の(e)と同様である。
(h)アッパレール30が前方に移動して、メモリ装置44によりアッパレール30の前方移動が規制されるときの車両用シートスライド装置10の動作(ウォークイン動作の第4動作)は、上述の(d)と同様である。また、第1操作機構110の第1の操作方法と第2の操作方法との相違による動作の相違については、上述の(f)と同様である。以上のように、車両用シートスライド装置10は、第1操作機構110の第1の操作方法及び第2の操作方法のいずれの方法によっても動作し、その効果は同じである。
[ウォークイン動作中のロック操作]
図39を参照して、ウォークイン動作の第1動作後において、第1規制位置に至るまでの間で第2操作機構120のハンドル121の動作が行われたときの、車両用シートスライド装置10の動作について説明する。
第1操作機構110の操作に基づいてアッパレール30が後方移動するとき、上述の(a)に示されるように、切替部材60はアンロック維持位置に配置されている。このときロックレバー55がロックレバー付勢方向RAとは反対方向に回転し、ロックレバー55の押圧部58がロック部材51のロック部52を押圧する。
第2操作機構120のハンドル121が操作されると、ロックレバー55の押圧部58が更に下方に移動するようにロックレバー55が回転する。そうすると、切替部材60のロックレバー押圧部62とロックレバー55との押圧状態が解消されるようになり、切替部材60のロックレバー押圧部62に作用する摩擦力が低下する。このため、切替部材60は、スプリング65の付勢力によりロック位置に戻る。第2操作機構120のハンドル121が操作されなくなると、ロックレバー55はスプリング124の付勢力によりロックレバー付勢方向RAに回転し、これに伴ってロック部材51のロック部52が係合位置に移動する。このようにしてロック機構50がロック状態に移行する。
以上の示されるように、第1操作機構110の操作に基づいてアッパレール30が後方移動するとき、第2操作機構120の操作により、アッパレール30とロアレール20とを係合させることができる。
[スライド動作]
図40及び図41を参照して、スライド動作について説明する。なお、図41(a)は、図40(a)のG1−G1線に沿う断面図、図41(b)は、図40(b)のG2−G2線に沿う断面図である。上述したように、スライド動作は、第2操作機構120に伴う動作である。
(j)アッパレール30がロアレール20に係合されているとき、第2操作機構120を操作したときの車両用シートスライド装置10の動作。
このとき、ロック機構50はロック状態にある。すなわち、ロック部材51のロック部52が係合位置に配置され、切替部材60はロック位置に配置され、誘導機構90の誘導部材91は初期位置に配置されている。
メモリ装置44は、アンメモリ状態にある。すなわち、メモリピン46の上端部46aがメモリ保持部75に挿通して、メモリ装置44はアッパレール30に保持されている。
メモリ装置44はアッパレール30に保持されているときは、ストッパ部材36の前端36a及びトリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44の後面44aに当接するため、トリガー本体部101は前端位置に配置されている(図28参照)。
第2操作機構120のハンドル121が操作されると、軸端部材123の回転に伴ってロックレバー55が回転し(図13(a)及び図13(b)参照)、ロック部材51のロック部52が下方に移動する。これにより、ロック機構50がアンロック状態に移行する。
このとき、誘導機構90及び切替部材60は移動しないため、メモリ装置44はアンメモリ状態に維持される。従って、メモリ装置44がアッパレール30に保持され、トリガー本体部101は前端位置に維持される。なお、このとき、第2ストッパ部104の後端104eはストッパ部材36の後端36bと同じ位置に配置される。
また、図40及び図41に示されるように、第2操作機構120のハンドル121が操作されることにより、作動ケーブル108bを介してロアストッパ解除部材108が回転する。具体的には、ロアストッパ解除部材108が非解除位置(図40(a)、図41(a))から解除位置(図40(b)、図41(b))まで回転して、ロアストッパ解除部材108の下端部108aがストッパ部材36の後端36bよりも後方に出される。第2ストッパ部104の後端104eはストッパ部材36の後端36bと同じ位置に配置されているため、ロアストッパ解除部材108の下端部108aは、第2ストッパ部104の後端104eよりも後方に位置する。
アッパレール30が第1規制位置の直前の位置に配置されると、ロアストッパ解除部材108の下端部108aがロアストッパ26のストッパピン28の傾斜面28eに当接する。アッパレール30が更に後方に移動すると、ロアストッパ解除部材108の下端部108aによりロアストッパ26が下方に押されてストッパピン収容部27aに収容されるため、ストッパ部材36がロアストッパ26に当接しなくなる。このようにして、アッパレール30は、第1規制位置を通過する。
アッパレール30が第2規制位置に配置されると、ストッパ部材36の後端36bと固定ストッパ29とが当接する。これにより、アッパレール30の後方移動が規制される。すなわち、アッパレール30は第2規制位置で止まる。
第2操作機構120のハンドル121の操作が解除されると、スプリング124の付勢力によりロックレバー55がロックレバー付勢方向RAに回転して、これに伴いロック部材51のロック部52が上方に移動する。これにより、ロック機構50がロック状態に移行する。
本実施形態に係る車両用シートスライド装置10の主たる作用を説明する。
車両用シートスライド装置10では、アッパレール30が前方へ移動してトリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接するときトリガー本体部101がアッパレール30に対して移動し、押圧部材102を介して切替部材60を押す。そして、トリガー本体部101の移動により切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に移動させる。これにより、ロック機構50によりアッパレール30がロアレール20に係合されるようになる。このとき、トリガー本体部101は前端位置に配置され、かつトリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接する。
アッパレール30がメモリ装置44を保持しているときにロアレール20に対するアッパレール30の係合を解除するときは、切替部材60をアンロック維持位置に移動させる必要があるが、切替部材60を単にアンロック維持位置に移動させると次のような事態が生じる。すなわち、切替部材60を単にアンロック維持位置に移動させると、押圧部材102を介してトリガー本体部101が後方に押され、これに伴ってトリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44を押す。このため、押圧部材102を介してトリガー本体部101に加えられる力によりトリガー機構100が変形する。
そこで、本技術では、アッパレール30がメモリ装置44を保持しているときに、ロアレール20に対するアッパレール30の係合を解除する操作が行われると、誘導機構90は、切替部材60を移動させながら切替部材60の後部当接面61cと押圧部材102の前端部102dとが接触しないように押圧部材102を回転させる。このため、切替部材60がアンロック維持位置に移動するときに、トリガー機構100に力が加わらない。また、切替部材60がアンロック維持位置に移動するとメモリ装置44がロアレール20に固定される。このとき、メモリ装置44とトリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aとの当接により、ロアレール20とアッパレール30とがトリガー機構100を介して機械的に接続されるようになる(力が伝達される状態)が、上述したように、トリガー機構100には力が加わらない。このため、ロアレール20からの反力が生じ得ず、アッパレール30がロアレール20に対して移動しない。以上のように、車両用シートスライド装置10によれば、アッパレール30がロアレール20に係合されているときにおいて、ロアレール20とアッパレール30との係合を解除するとき、アッパレール30の移動が抑制される。
本実施形態に係る車両用シートスライド装置10の効果を説明する。
(1)本実施形態では、車両用シートスライド装置10は、ロアレール20と、アッパレール30と、ロック機構50と、切替部材60と、誘導機構90と、トリガー機構100とを備える。
切替部材60は、アッパレール30に対する移動に基づいてロック機構50を動作させるものであり、ロック位置とアンロック維持位置との間で移動する。
トリガー機構100は、切替部材60の後部当接面61c(被当接部)に当接する押圧部材102の前端部102d(第1当接部)と、メモリ装置44(またはロアストッパ26)に当接する第1ストッパ部103の前端103a(または、第2ストッパ部104の後端104e)とを有する。そして、トリガー機構100は、第1ストッパ部103の前端103a(または第2ストッパ部104の後端104e)がメモリ装置44(またはロアストッパ26)に当接すると押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接して切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に向けて移動させる。
誘導機構90は、トリガー機構100の第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接するときにおいて、切替部材60の後部当接面61c(被当接部)とトリガー機構100の押圧部材102の前端部102dとの接触を回避させながら切替部材60をロック位置からアンロック維持位置に移動させる。または、誘導機構90は、トリガー機構100の第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接するときにおいて、切替部材60の後部当接面61c(被当接部)とトリガー機構100の押圧部材102の前端部102dとの接触を回避させながら切替部材60をロック位置からアンロック維持位置に移動させる。
この構成によれば、アッパレール30に対する切替部材60の移動によりロック機構50が動作する。そして、第1ストッパ部103の前端103a(または、第2ストッパ部104の後端104e)がメモリ装置44(またはロアストッパ26)に当接すると、押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接して切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に移動させる。これにより、ロック機構50がアンロック状態からロック状態に移行する。
この逆の動作が行われるときは、誘導機構90が、切替部材60の後部当接面61cと第1ストッパ部103の前端103aとの接触を回避させながら切替部材60をロック位置からアンロック維持位置に移動させる。これにより、ロック機構50がロック状態からアンロック状態に移行する。このように、ロック機構50がロック状態からアンロック状態に移行するとき、すなわちアッパレール30とロアレール20との係合が解除されるとき、切替部材60の後部当接面61cと第1ストッパ部103の前端103aとの接触が回避される。このようにしてアッパレール30の移動が抑制される。
(2)上記実施形態において、車両用シートスライド装置10は、アッパレール30を停止させるストッパとして、メモリ装置44とロアストッパ26とを備える。
トリガー機構100は、メモリ装置44に当接する第1ストッパ部103の前端103a(メモリ当接部、第2当接部)と、ロアストッパ26に当接する第2ストッパ部104の後端104e(ストッパ当接部、第2当接部)とを有する。
トリガー機構100は、第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接すると押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接して切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に移動させる。
トリガー機構100は、第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接すると押圧部材102の前端部102dが切替部材60の後部当接面61cに当接して切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に移動させる。
この構成によれば、第1ストッパ部103の前端103aがメモリ装置44に当接することにより、または第2ストッパ部104の後端104eがロアストッパ26に当接することにより、切替部材60がロック位置に移動する。
(3)上記実施形態において、切替部材60は、メモリ装置44がアンメモリ状態にあるときにロック位置からアンロック維持位置に移動するとき、メモリ装置44をメモリ状態に移行させる。
この構成によれば、メモリ装置44がアンメモリ状態にあるときにおいて切替部材60がロック位置からアンロック維持位置に移動するとき、ロック機構50がアンロック状態に維持されかつメモリ装置44がメモリ状態になりロアレール20に対するアッパレール30の位置が記憶される。
(4)上記実施形態において、ロアストッパ26は、第2ストッパ部104の後端104eとの当接に基づいてアッパレール30の移動を阻止する突出状態と、アッパレール30の移動を許容する収容状態とを有する。
この構成によれば、第2操作機構120の操作等の所定の操作によりロアストッパ26が収容状態になるとき、ロアストッパ26によるアッパレール30の移動制限が解除される。例えば、第2操作機構120が操作されるとロアストッパ解除部材108によりストッパピン28が押されてロアストッパ26が収容状態になるため、アッパレール30をロアストッパ26よりも後方に移動させることができる。
(5)上記実施形態において、トリガー機構100は、押圧部材102の前端部102dを有する押圧部材102と、押圧部材102を回転可能に支持するトリガー本体部101とを少なくとも備える。
誘導機構90は、切替部材60をアンロック維持位置に移動させるとき、押圧部材102を回転させることにより、押圧部材102の押圧部材102の前端部102dと切替部材60の後部当接面61cとの接触を回避させる。
この構成により、切替部材60がアンロック維持位置に移動するときに押圧部材102の押圧部材102の前端部102dと切替部材60の後部当接面61cとが接触することが回避される。
(6)上記実施形態において、切替部材60は、アンロック維持位置からロック位置に向かうように付勢され、アンロック維持位置に配置されるときは、ロック機構50からの押圧力によりアンロック維持位置に維持される。
この構成によれば、切替部材60がアンロック維持位置に配置されるとき、ロック機構50が切替部材60に加える押圧力を低下させることにより、切替部材60をアンロック維持位置からロック位置に復帰させることができる。
(7)上記実施形態において、誘導機構90は、初期位置と、切替部材60をアンロック維持位置に配置させる終端位置との間で移動する。そして、誘導機構90は、初期位置から終端位置に移動するとき切替部材60に係合し、終端位置から初期位置に移動するとき切替部材60から離間する。
この構成によれば、誘導機構90は、終端位置から初期位置に移動するとき切替部材60から離間するため、誘導機構90が初期位置に戻るときは、切替部材60がアンロック維持位置に維持される。
(8)上記実施形態において、車両用シートスライド装置10は、誘導機構90を動作させる第1操作機構110を備える。この構成によれば、第1操作機構110により誘導機構90を動作させることができる。
(9)上記実施形態において、第1操作機構110は、操作レバー111と、操作レバー111と誘導機構90とを接続する操作ケーブル112とを備える。
この構成によれば、操作レバー111の操作により、誘導機構90を動作させることができる。
(10)上記実施形態において、車両1が運転状態にあるとき誘導機構90の動作が制限されることが好ましい。
例えば、車両1が停車しているとき以外(車両1の運転状態)は、誘導機構90の誘導部材91の初期位置からの移動が禁止され、かつ車両1が停車しているときに誘導部材91の初期位置からの移動が許容される。車両1が停車している状態(停車状態)は、例えば、シフトレバーの位置、パーキングブレーキの位置、GPS(Global Positioning System)信号に基づく車速、また車速センサーの出力により判定され得る。誘導機構90の動作制限は、例えば、操作レバー111の回転を制限する制限機構、操作ケーブル112の途中に設けられる動力伝達切断機構、または誘導機構90の移動を制限する制限機構により、構成され得る。
これにより、運転中に、誘導機構90を動作させる誤った操作が行われたときでも、ロアレール20とアッパレール30の係合が解除されず、シート2が移動しないため、運転の安全性が損なわれることが抑制される。
(11)上記実施形態において、メモリ装置44及びロアストッパ26は、少なくとも一部がアッパレール30の内部空間(縦壁部32の間の空間)に配置される。
この構成によれば、メモリ装置44及びロアストッパ26がアッパレール30の外側に配置される構造に比べて、レール11の外形がシンプルになる。
(12)上記実施形態において、アッパレール30はロアレール20に対して前方に付勢されている。この構成によれば、シート2が予期に反して後方に移動することが抑制される。
[第2実施形態]
図42〜図46を参照して、第2実施形態に係る車両用シートスライド装置10について説明する。本実施形態に係る車両用シートスライド装置10は、第1実施形態に係る車両用シートスライド装置10の第1操作機構110とは異なる構造の第1操作機構130を備える。
図42及び図43に示されるように、第1操作機構130は、操作部135の操作により駆動するモータ131と、接続ケーブル132とを備える。接続ケーブル132は、誘導部材91に取り付けられた取付部材96とモータ131とを接続する。操作部135は、例えば、シート2の肘掛に配置される。操作部135の操作スイッチ135aは、例えば引く操作により動作する。
図44に示されるように、モータ131の出力軸には、外周面に突起部133aが設けられたロータ133が取り付けられている。ロータ133の突起部133aの円軌道の所定箇所には、突起部133aと接触することによりモータ131の回転を停止させる停止スイッチ134が配置されている。
図45に示されるように、接続ケーブル132のアウターケーブル端部132bは、ロータ133の周囲に配置されており、インナーケーブル132aの一端は、ロータ133の回転中心から所定距離のところに接続されている。更に、インナーケーブル132aの一端がアウターケーブル端部132bに最も接近するロータ133の回転角度(以下、「ロータ初期角度」という。)において、停止スイッチ134とロータ133の突起部133aとが接触するように構成されている(図44参照)。
ロータ133の回転と誘導部材91との配置関係は次のように規定されている。
図46(a)に示されるように、ロータ133がロータ初期角度に配置されているとき、誘導部材91は初期位置に配置される。
図46(b)に示されるように、ロータ133がロータ初期角度から90度回転すると、接続ケーブル132の牽引により誘導部材91は中間位置に配置される。
図46(c)に示されるように、ロータ133がロータ初期角度から180度回転すると、接続ケーブル132の牽引により誘導部材91は終端位置に配置される。
図46(d)に示されるように、ロータ133がロータ初期角度から270度回転すると、接続ケーブル132の牽引により誘導部材91は中間位置に配置される。ロータ133がロータ初期角度に戻ると、誘導部材91は初期位置に配置される(図46(e)参照)。
本実施形態に係る第1操作機構130の動作を説明する。
操作スイッチ135aが押されることによりモータ131が駆動すると、ロータ133が回転する。ロータ133の回転に伴い接続ケーブル132が牽引されて、誘導部材91が後方に移動する。ロータ133が180度回転すると、誘導部材91が終端位置に配置される。これにより、ロック機構50がアンロック状態に移行し、メモリ機構40がメモリ状態に移行する。更に、ロータ133が回転すると、接続ケーブル132を牽引する力が低下するため、これに伴って誘導部材91は前方に移動する。そして、ロータ133が360度回転すると、誘導部材91は初期位置に戻る。
本実施形態に係る車両用シートスライド装置10の効果を説明する。
(1)上記実施形態において、第1操作機構130は、モータ131と、モータ131により回転するロータ133と、ロータ133と誘導機構90とを接続する接続ケーブル132と、モータ131を操作させる操作部135とを備える。第1操作機構130は、ロータ133の回転に基づいて誘導機構90を初期位置と終端位置との間で移動させる。この構成によれば、操作部135の操作により誘導機構90を動作させることができる。
(2)上記実施形態において、操作部135は、車両1のシート2に設置されている。この構成によれば、操作部135が運転者または助手席の同乗者の手の届く範囲に配置されているため、操作部135の操作が行い易くなる。
(3)上記実施形態において、車両1が運転状態にあるとき誘導機構90の動作が制限されることが好ましい。
例えば、車両1が停車しているとき以外(車両1の運転状態)は、誘導機構90の誘導部材91の初期位置からの移動が禁止され、かつ車両1が停車しているときに誘導部材91の初期位置からの移動が許容される。車両1が停車している状態(停車状態)は、第1実施形態に示された例と同様に判定され得る。
誘導機構90の動作制限は、例えば、誘導機構90の移動を制限する制限機構、モータ131の動作を制限する制限機構、モータ131への電力供給を制限する電力制限機構、または、操作部135からの出力信号と車両1の運転状態についての判定信号とに基づいてモータ131を制御する信号処理回路の制限プログラムにより構成され得る。
これにより、運転中に、誘導機構90を動作させる誤った操作が行われたときでも、ロアレール20とアッパレール30の係合が解除されずシート2が移動しないため、運転の安全性が損なわれることが抑制される。
[第3実施形態]
上述の実施形態の車両用シートスライド装置10には、ウォークイン動作を実行させるための第1操作機構110と、スライド動作を実行させるための第2操作機構120とが個別に設けられている。
以下に示す第3実施形態及び第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10は、第1操作機構110及び第2操作機構120に代えて両者の機能を有する操作装置(以下、「併用操作機構140(併用操作機構150)」という。)を有する。併用操作機構140(併用操作機構150)は、ウォークイン動作を実行させるための機構と、スライド動作を実行させるための機構とを有する。
本実施形態に係る併用操作機構140は、併用操作レバー141と、併用操作レバー141内に内蔵されるポールリンク機構143と、併用操作レバー141を回転支持するレバー支持部142とを有する。
併用操作レバー141の基端部141aは、レバー支持部142に回転可能に取り付けられている。
レバー支持部142には、回転軸を中心軸とする第1半径の円周に沿う第1ガイド溝142aと、第1半径よりも小さい第2半径の円周に沿う第2ガイド溝142bとが設けられている。
第1ガイド溝142a及び第2ガイド溝142bは、後述の第2ポール145の末端部145bが接触するように設けられている。併用操作レバー141が初期レバー位置から中間レバー位置まで回転する範囲(以下、「第1範囲」という。)に対応して第1ガイド溝142aが設けられ、併用操作レバー141が中間レバー位置から終端レバー位置まで回転する範囲(以下、「第2範囲」という。)に対応して第2ガイド溝142bが設けられている。
図47(a)及び図47(b)に示されるように、ポールリンク機構143は、第1ポール144と、第2ポール145と、ポールリンク部材146とを備える。
第1ポール144の先端部144aは併用操作レバー141の先端部から突出する。第1ポール144の末端部144bはポールリンク部材146の第1端部に回転可能に取り付けられている。
第2ポール145の先端部145aはポールリンク部材146の第2端部に回転可能に取り付けられている。
第2ポール145の末端部145bは併用操作レバー141の基端部141aから突出し、レバー支持部142の第1ガイド溝142a及び第2ガイド溝142bに摺動する。
ポールリンク部材146は、スプリングにより第1ポール144と第2ポール145とが離間する方向(以下、ポール付勢方向RE、図47(a)参照。)に第1ポール144及び第2ポール145を付勢する。また、ポールリンク部材146は、中間部(第1端部と第2端部との間の部位)で回転可能に併用操作レバー141内に設けられている。
第1ポール144の先端部144aが内方に押されていないときは、第1ポール144の先端部144aは併用操作レバー141の先端から所定距離だけ離れたところに配置され、かつ第2ポール145の末端部145bが併用操作レバー141の基端部141aから所定距離離れたところに配置される。このとき、第2ポール145の末端部145bは第1ガイド溝142aに接触するように突出しているため、併用操作レバー141の操作は第1範囲内に制限されている。
一方、第1ポール144の先端部144aが内方に押されると、ポールリンク部材146が回転して、第2ポール145の末端部145bが併用操作レバー141の基端部141a側に接近する。このとき、第2ポール145の末端部145bは第2ガイド溝142bに接触し得るようになるため、併用操作レバー141は第2範囲で操作され得るようになる。
併用操作レバー141は、操作ケーブル147を介して誘導機構90に接続されている。操作ケーブル147は、併用操作レバー141が初期レバー位置から中間レバー位置まで回転することに対応して誘導機構90の誘導部材91が初期位置から中間位置まで移動するように構成されている。また、操作ケーブル147は、併用操作レバー141が中間レバー位置から終端レバー位置まで回転することに対応して誘導機構90の誘導部材91が中間位置から終端位置まで移動するように構成されている。また、併用操作レバー141は、作動ケーブル148を介してロアストッパ解除部材108に接続されている。
作動ケーブル148は、併用操作レバー141が初期レバー位置から中間レバー位置まで回転することに対応してロアストッパ解除部材108が解除位置まで回転するように構成されている。また、作動ケーブル148は、併用操作レバー141が中間レバー位置から終端レバー位置まで回転することに対応してロアストッパ解除部材108が非解除位置に維持される。
本実施形態に係る併用操作機構140の動作を説明する。
図48(a)及び図48(b)に示されるように、併用操作レバー141が中間レバー位置に配置されると、誘導部材91が中間位置に配置されることに伴って切替部材60がアンロック中間位置に配置される。このため、ロック機構50はアンロック状態になる。これにより、アッパレール30はロアレール20に対して移動可能となる。また、併用操作レバー141が中間レバー位置に配置されると、作動ケーブル148を介してロアストッパ解除部材108が解除位置まで回転するため、ロアストッパ26とストッパ部材36との当接が回避されるようになる。これにより、第1規制位置よりも後方へのアッパレール30の移動が可能となる。
併用操作レバー141が中間レバー位置から初期レバー位置に戻されると、誘導部材91は付勢力により初期位置に移動し、切替部材60は付勢力によりロック位置に移動する。そうすると、ロック機構50はロック状態になる。これにより、アッパレール30がロアレール20に係合される。
併用操作レバー141の先端部から突出する第1ポール144の先端部144aが押されていないときは、上述のように、併用操作レバー141の操作は第1範囲内に制限される。一方、併用操作レバー141の先端部から突出する第1ポール144の先端部144aが押されるときは、上述のように、併用操作レバー141の操作制限が解除される。
図49(a)及び図49(b)に示されるように、アッパレール30がメモリ装置44を保持するときに第1ポール144の先端部144aが押されて併用操作レバー141が終端レバー位置に配置されると、誘導部材91が終端位置に配置され、これに伴って切替部材60がアンロック維持位置に配置される。このため、ロック機構50がアンロック状態になり、かつメモリ装置44がメモリ状態になる。
図50(a)及び図50(b)に示されるように、併用操作レバー141が終端レバー位置に配置された後、併用操作レバー141が初期レバー位置に戻されると、誘導部材91が初期位置に戻る。一方、切替部材60には摩擦力が作用するため切替部材60はアンロック維持位置に維持される。
以上のように、併用操作機構140によれば、併用操作レバー141の操作によって、誘導部材91を中間位置及び終端位置に配置させることができる。これにより、車両用シートスライド装置10はスライド動作とウォークイン動作と実行する。
本実施形態に係る車両用シートスライド装置10の効果を説明する。
(1)本実施形態では、誘導機構90を動作させる併用操作機構140を備え、併用操作機構140は、誘導機構90を介して、切替部材60をロック位置と、アンロック維持位置と、アンロック中間位置との間で移動させる。
この構成によれば、併用操作機構140を動作させることにより、ロック機構50をロック状態、アンロック維持状態、アンロック状態に切り替えることができる。すなわち、併用操作機構140によれば、第1実施形態の第1操作機構110の作用と第2操作機構120の作用を発揮させることができる。このため、車両用シートスライド装置10の操作系が視覚的にシンプルになる。
(2)本実施形態では、併用操作機構140は、併用操作レバー141と、併用操作レバー141と誘導機構90とを接続する操作ケーブル147とを備える。
併用操作レバー141は、操作ケーブル147及び誘導機構90を介して、切替部材60をロック位置と、アンロック維持位置と、アンロック中間位置との間で移動させる。
この構成によれば、併用操作レバー141の操作により、操作ケーブル147を介して誘導機構90が移動するため、ロック機構50をロック状態、アンロック維持状態、アンロック状態に切り替えることができる。
(3)上記実施形態において、車両1が運転状態にあるとき誘導機構90の動作が制限される。この構成は、例えば、第1実施形態に示された例と同様に構成され得る。また、効果も第1実施形態に示された例と同様である。
[第4実施形態]
図51〜図53を参照して第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10について説明する。
第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10は、操作機構として、併用操作機構150と、第1実施形態に示した第2操作機構120とを有する。
併用操作機構150は、上述の第2実施形態に係る車両用シートスライド装置10に設けられた第1操作機構130に準じた構成を有する。
図51に示されるように、併用操作機構150は、操作部155の操作により駆動するモータ151と、接続ケーブル152と、モータ151を動作させる操作部155とを備える。接続ケーブル152は、誘導部材91に取り付けられた取付部材96とモータ151とを接続する。
操作部155は、例えば、シート2の肘掛に配置される。操作部155は、第1操作スイッチ155aと、第2操作スイッチ155bとを有する。第1操作スイッチ155a及び第2操作スイッチ155bそれぞれは、引く操作により動作する。
モータ151の出力軸には、外周面に突起部153aが設けられたロータ153が取り付けられている。ロータ153の突起部153aの円軌道の所定箇所には、突起部153aと接触することによりモータ151の回転を停止させる停止スイッチ154が配置されている。
接続ケーブル152のアウターケーブル端部152bは、ロータ153の周囲に配置されており、インナーケーブル152aの一端は、ロータ153の回転中心から所定距離のところに接続されている。
また、インナーケーブル152aの一端がアウターケーブル端部152bに最も接近するロータ153の回転角度(ロータ初期角度)において、停止スイッチ154とロータ153の突起部153aとが接触するように構成されている。停止スイッチ154は、ロータ153の周囲においてアウターケーブル端部152bが配置されるところとは反対側のところに配置される。
ロータ153の回転と誘導部材91との配置関係は次のように規制される。
ロータ153がロータ初期角度に戻ると、誘導部材91は初期位置に配置される(図52(a)参照)。ロータ153がロータ初期角度から正方向RXに90度回転すると、接続ケーブル152の牽引により誘導部材91は中間位置に配置される(図52(b)参照)。
ロータ153がロータ初期角度から負方向に180度回転すると、接続ケーブル152の牽引により誘導部材91は終端位置に配置される(図53(c)参照)。
ロータ153は、第1操作スイッチ155a及び第2操作スイッチ155bの組み合わせ操作(第1操作と第2操作)により次のように動作する。
第1操作は、第1操作スイッチ155aだけによる操作である。
図52(b)に示されるように、第1操作スイッチ155aの操作によりロータ153は正方向RXに90度回転する。
第1操作スイッチ155aが操作されている間(例えば、引き操作)、ロータ153は正方向RXに90度回転した状態で維持される。
図52(c)に示されるように、第1操作スイッチ155aの操作が解除されると、ロータ153は負方向RYに回転してロータ初期回転位置に戻る。
第1操作によれば、ロータ153が90度回転することにより誘導部材91が中間位置に配置され、ロータ153が90度以上に回転することがないため誘導部材91が終端位置に移動することはない。このため、誘導部材91は、初期位置と中間位置との間で移動し、これにともない切替部材60は、ロック位置とアンロック中間位置との間で移動する。このようにして、第1操作により、スライド動作が実行される。
第2操作は、第1操作スイッチ155aと第2操作スイッチ155bとによる操作である。第1操作スイッチ155aと第2操作スイッチ155bとの両者が共に操作されることにより、ロータ153は次のように動作する。
図53(a)〜図53(d)に示されるように、第1操作スイッチ155aと第2操作スイッチ155bとが共に操作されると、連続して、ロータ153は負方向にロータ初期角度から360度回転する。これにより、誘導部材91は、初期位置から終端位置に移動して更に初期位置に戻る。これにともない切替部材60は、ロック位置からアンロック維持位置に移動して、アンロック維持位置で維持される。このようにして、第2操作により、ウォークイン動作が実行される。
本実施形態に係る車両用シートスライド装置10の効果を説明する。
(1)本実施形態では、誘導機構90を動作させる併用操作機構150を備える。
誘導機構90の誘導部材91は、初期位置と、中間位置と、終端位置との間で移動する。併用操作機構150は、誘導機構90を介して、切替部材60を、ロック位置と、アンロック維持位置と、アンロック中間位置との間で移動させる。
この構成によれば、併用操作機構150を動作させることにより、ロック機構50をロック状態、アンロック維持状態、アンロック状態に切り替えることができる。すなわち、併用操作機構150によれば、第1実施形態の第1操作機構110の作用と第2操作機構120の作用を発揮させることができる。このため、車両用シートスライド装置10の操作系が視覚的にシンプルになる。
(2)本実施形態では、併用操作機構150は、モータ151と、モータ151により回転するロータ153と、ロータ153と誘導機構90とを接続する接続ケーブル152と、モータ151を動作させる操作部155とを備える。併用操作機構150は、ロータ153の回転に基づいて誘導機構90を初期位置、中間位置、及び終端位置のいずれかの位置に移動させる。例えば、ロータ153を1周回転させることにより誘導機構90を初期位置と終端位置との間で移動させる。ロータ153を半周よりも小さい範囲内で往復回転させることにより誘導機構90の誘導部材91を初期位置と中間位置との間で移動させる。
この構成によれば、操作部155の操作により、誘導機構90の位置を制御することができるため、ロック機構50をロック状態、アンロック維持状態、アンロック状態に切り替えることができる。
(3)本実施形態では、操作部155は、第1操作スイッチ155aと第2操作スイッチ155bとを備える。そして、操作部155は、第1操作スイッチ155aと第2操作スイッチ155bとが共に操作されていることにより、ロータ153の回転角度を制御して誘導機構90を初期位置と終端位置との間で移動させる。また、操作部155は、第1操作スイッチ155aの操作により、ロータ153の回転角度を制御して誘導機構90の誘導部材91を初期位置と中間位置との間で移動させる。
この構成によれば、第1操作スイッチ155aと第2操作スイッチ155bとが共に操作されていなければ誘導機構90が終端位置まで移動しないため、誤って誘導機構90を終端位置まで移動させるという操作ミスの発生頻度を低減させることができる。
(4)上記実施形態において、車両1が運転状態にあるとき誘導機構90の動作が制限される。この構成は、第2実施形態に示された例と同様に構成され得る。また、効果も第1実施形態に示された例と同様である。
(5)上記実施形態において、操作部155は、車両1のシート2に設置されている。この構成によれば、操作部155が運転者または助手席の同乗者の手の届く範囲に配置されているため、操作部155の操作が行い易い。
[その他の実施形態]
・第2及び第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10では、操作部135,155は、シート2に配置されているが、操作部135,155の配置がこれに限定されない。例えば、操作部135,155は、車両1のステアリング3、車両1のドア4に設置され得る。
・第1〜第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10のロック機構50の構造は、上述の構造に限定されない。ロック機構50は、切替部材60の移動により、ロック状態とアンロック状態とが切り替わるものであればよい。上述のような弾性を有するロック部材51に代えて、次のように構成され得る。例えば、ロック部材51は、上述のロック部52に相当する部分を有する剛性部材と、剛性部材を付勢する付勢部材(例えば、スプリング)とにより構成され得る。
・第1〜第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10の誘導機構90の構造は、上述した構造に限定されない。例えば、フック部材92は、第1〜第4実施形態では、幅方向DXに回転するが、上下方向DZに回転するように構成され得る。
・第1〜第4実施形態に係る車両用シートスライド装置10では、アッパレール30の前方移動規制のためのストッパとしてメモリ装置44が用いられ、後方移動規制のためのストッパとしてロアストッパ26が用いられているが、実施形態で示される技術は、このようストッパ構成の車両用シートスライド装置10に対する適用に制限されない。すなわち、アッパレール30の前方移動規制のためのストッパとしてロアストッパ26が用いられ、後方移動規制のためのストッパとしてメモリ装置44が用いられる車両用シートスライド装置10に対しても適用される。