〔第1の実施形態〕
図1には本発明の一実施形態に係る画像処理システム100の全体的な構成の例が示されている。
図1において、画像処理システム100の機能は、ジョブに応じた処理画像を生成する画像処理装置1、画像処理装置1にジョブを与える1以上の端末装置3、ユーザを認証する認証サーバ4、および通信回線6などによって実現される。
画像処理装置1、端末装置3、および認証サーバ4は、これらの間で相互に通信回線6を介して通信することができる。通信回線6として、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN回線、インターネット、公衆回線、携帯電話網、または専用回線などが用いられる。通信回線6は、ハブ、ルータ、および無線基地局を有するものであってよい。
画像処理装置1は、コピー機、プリンタ、ファクシミリ機、およびスキャナなどの機能を集約した多機能機(MFP: Multi-functional Peripheral)である。画像処理装置1は、シート7に完全画像80または不完全画像90を印刷する画像形成装置、および完全画像80の画像データまたは不完全画像90の画像データを指定された保存先へ送信する画像データ出力装置などとして使用することが可能である。完全画像80および不完全画像90については後で詳述する。
端末装置3は、印刷ジョブまたは他のジョブを画像処理装置1に送信する。端末装置3として、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、または眼鏡型コンピュータなどが用いられる。「眼鏡型コンピュータ」は、ウェアラブルコンピュータの一種であり、ウェアラブルディスプレイとも呼称され、眼鏡のように顔に装着するタイプのコンピュータである。
以下、端末装置3として、タブレットコンピュータが用いられる場合を例に説明する。説明にあたって、タブレットコンピュータを「タブレット型端末装置3T」と記載することがある。
図2には画像処理装置1のハードウェア構成の例が示されている。
図2において、画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit )10a、RAM(Random Access Memory)10b、ROM(Read Only Memory)10c、大容量記憶装置10d、タッチパネルディスプレイ10e、操作キーパネル10f、通信インタフェースカード(NIC: Network Interface Card )10g、モデム10h、メモリカードリーダライタ10i、スキャンユニット10j、およびプリントユニット10kなどによって構成される。
タッチパネルディスプレイ10eは、ユーザに対するメッセージを示す画面、ユーザがコマンドまたは情報を入力するための画面、およびCPU10aなどが実行した処理の結果を示す画面などを表示する。また、タッチパネルディスプレイ10eは、タッチされた位置を示す信号をCPU10aへ送る。
操作キーパネル10fは、いわゆるハードウェアキーボードであって、スタートキー、ストップキー、およびファンクションキーなどによって構成される。
通信インタフェースカード10gは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol )などのプロトコルによって端末装置3または認証サーバ4と通信を行う。
モデム10hは、ファクシミリ端末との間でG3などのプロトコルで画像データをやり取りする。
メモリカードリーダライタ10iは、メモリカードからデータを読み取り、または、メモリカードへデータを書き込む。
スキャンユニット10jは、イメージセンサ、読取り用スリット、フラットベッド、およびADF(Auto Document Feeder)などによって構成される。ADFは、原稿シートがセットされると、それを1枚ずつ読取り用スリットへ向けて搬送する。フラットベッドには、原稿シートがユーザによってセットされる。イメージセンサは、ADFに原稿シートがセットされた場合は、原稿シートが読取用スリットを通過する際に、原稿シートをスキャンして画像データを生成する。または、フラットベッドに原稿シートがセットされた場合は、フラットベッドを走査することによって原稿シートをスキャンして画像データを生成する。
プリントユニット10kは、送給装置、プリントエンジン、および排出装置などによって構成される。送給装置は、プリントエンジンへシートを供給する。プリントエンジンは、通信回線6を介して他の装置から受信した画像またはスキャンユニット10jによって読み取られた画像などをシート7に印刷する。排出装置は、画像が印刷されたシート7を排出トレイ上へ排出する。
ROM10cまたは大容量記憶装置10dには、印刷ジョブなどの各種のジョブを実行する機能を実現するためのプログラムが記憶されている。さらに、追加実行プログラムが記憶されている。追加実行プログラムは、与えられたジョブの代わりに代替ジョブを実行し、その後にユーザから実行の許可を得て元のジョブを実行するプログラムである。
これらのプログラムは、必要に応じてRAM10bにロードされ、CPU10aによって実行される。大容量記憶装置10dとして、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive )などが用いられる。
図3にはタブレット型端末装置3Tのハードウェア構成の例が示されている。
図3において、タブレット型端末装置3Tは、CPU30a、RAM30b、ROM30c、フラッシュメモリ30d、タッチパネルディスプレイ30e、操作ボタン群30f、デジタルカメラ30g、および無線通信装置30hなどによって構成される。
タッチパネルディスプレイ30eは、フラット型ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)およびタッチパネルによって構成される。フラット型ディスプレイは、種々の画像を表示する。タッチパネルは、ユーザがタッチした位置を検知し、その位置をCPU30aへ通知する。
操作ボタン群30fは、ホーム画面に戻るためのボタン、何かを確定するためのボタン、音量を調整するためのボタン、および電源のオン/オフを切り換えるためのボタンなどによって構成される。
デジタルカメラ30gは、種々の被写体を撮影する。画像処理装置1によって生成された処理画像の撮影に用いられることもある。
無線通信装置30hは、基地局を介してTCP/IPなどのプロトコルによって画像処理装置1などの装置と通信を行う。無線通信装置30hの通信方式として、例えば、Wi−Fi、Bluetooth(登録商標)、LTE(Long Term Evolution )、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)、またはPHS(Personal Handy-phone System )などが用いられる。
ROM30cまたはフラッシュメモリ30dには、画像処理装置1にジョブを送信して処理画像の生成を要求するクライアントプログラムが記憶されている。クライアントプログラムは、RAM30bにロードされ、CPU30aによって実行される。
図4には認証サーバ4のハードウェア構成の例が示されている。
図4において、認証サーバ4は、CPU40a、RAM40b、ROM40c、大容量記憶装置40d、および通信インタフェースカード(NIC)40eなどによって構成される。
通信インタフェースカード40eは、TCP/IPなどのプロトコルによって端末装置3などの装置と通信を行う。
ROM40cまたは大容量記憶装置40dには、認証プログラムが記憶されている。認証プログラムは、RAM40bにロードされ、CPU40aによって実行される。大容量記憶装置40dとして、ハードディスクまたはSSDなどが用いられる。
さて、画像処理システム100は、一時的に画像処理装置1がジョブをその設定の通り実行することができない状態(これを「一時的エラー状態」という)であるときに、不完全ながら当該ジョブの設定に沿った処理画像(不完全画像80)を生成し、その後に一時的エラー状態が解消したときにその旨をユーザに通知することができる。そして、ユーザがジョブの実行を指示した場合に、「ユーザが改めてジョブを投入し直すことなく、既に終えた不完全画像90の生成に追加して、ジョブの設定に沿った処理画像(完全画像80)を生成する」というサービスを提供することができる。
なお、ジョブは、端末装置3から通信回線4を介して画像処理装置1に与えられるものに限らず、画像処理装置1のタッチパネルディスプレイ10eまたは操作パネルキー10fを用いる操作によって与えられるものでもよい。「ジョブの投入」とは、画像処理装置1にジョブを与えることを意味する。
「処理画像」は、入力画像に対する処理によって得られるものである。入力画像は、外部の機器からの受信、原稿シートからの読み取り、または画像処理装置1内のメモリからの読出しなどによって与えられる。処理画像は、印刷ジョブの実行によって生成される場合には、シート7に印刷された「印刷画像」である。また、指定された入力画像に応じた画像データを所定形式のファイルのデータとして保存先へ送る送信ジョブの実行によって生成される場合には、ファイルに含まれる「画像データ」である。
図5には完全画像80の例が、図6には不完全画像90の例が、それぞれ示されている。
図5に示す完全画像80は、フルカラー画像801および複数行の文字列802を含んでいる。フルカラー画像801は、モノクロ色以外の色の画素を含むものであり、写真、絵、グラフ、表などであってよい。モノクロ色は、例えばブラックおよびブラックの色材で表わされるグレースケールの色である。文字列802の色はモノクロ色である。
図5の完全画像80は、フルカラー画像801および文字列802を有する入力画像をカラーで再現するジョブをその設定の通りに実行した場合に得られる処理画像である。例えば、当該入力画像のカラー印刷を指定したジョブを実行した場合に、完全画像80が得られる。
一方、図6に示す不完全画像90は、フルカラー画像801に対応するモノクロ画像901、および文字列802を有している。図6の不完全画像90は、全体的にモノクロ画像であって、モノクロ色以外の色の画素を含んでいない。不完全画像90は、完全画像80の入力画像をモノクロで再現した処理画像である。例えば、当該入力画像のカラー印刷を指定したジョブに代えてモノクロ印刷をする代替ジョブを実行した場合に、不完全画像90が得られる。不完全画像90では、完全画像80がもつ情報のうちのカラー情報が欠落している。
図7には画像処理装置1の機能的構成の例が、図8には保持用データベースDB1の例が、図9には認証データベースDB2の例が、それぞれ示されている。
図7において、画像処理装置1は、第1の判定部101、代替通知処理部102、代替ジョブ実行制御部103、画像生成部104、ジョブ保持部105、第2の判定部106、通知処理部107、ジョブ実行制御部108、第3の判定部109、および依頼処理部110を備える。これらの要素のうち画像生成部104を除く要素の機能は、追加実行プログラムによって実現される。
画像生成部104は、完全画像80または不完全画像90を生成する要素であり、プリントユニット10k、スキャンユニット10j、および通信インタフェースカード10gといった印刷ジョブまたは送信ジョブに関係するハードウェアを含んで構成される。
第1の判定部101は、画像処理装置1に与えられたジョブ8によって指定された通りの処理画像である完全画像80の生成が可能であるかどうかを判定する。そして、完全画像80の生成が可能ではないと判定した場合には、さらに、第1の判定部101は、完全画像80のもつ情報の少なくとも一部が欠落した画像である不完全画像90の生成が可能であるかどうかを判定する。不完全画像90の生成が可能であると判定した場合には、第1の判定部101は、「代替可能」という判定結果S1を代替通知処理部102に通知する。
第1の判定部101は、ジョブ8が送信ジョブである場合に、保存先(送信先)のデータ記憶の空き容量を確認して完全画像80の生成が可能であるかどうかを判定する。
また、第1の判定部101は、使用管理者によって設定された使用条件によってジョブ8の実行が制限されている場合に、完全画像80の生成が可能ではないと判定する。
代替通知処理部102は、判定結果S1の通知を受けると、完全画像80の生成に代えて不完全画像90を生成してよいかどうかを、ユーザに問い合わせる。例えば、ジョブ8が端末装置3から与えられた場合、代替通知処理部102は、端末装置3に返答用の画面を表示させ、ユーザからの返答の入力を受け付ける。ユーザから不完全画像90を生成してよい旨の返答を受けると、代替通知処理部102は、代替実行指令S2を代替ジョブ実行制御部103に与える。
代替ジョブ実行制御部103は、代替実行指令S2を受けた場合に、不完全画像90を生成する代替ジョブ9を画像生成部104に与えて実行させる。これにより、不完全画像90が生成される。
ジョブ保持部105は、画像生成部104によって代替ジョブ9が実行された場合に、ジョブ8を破棄せずに保持する。詳しくは、図8に示す保持用データベースDB1にジョブ8を特定する「ジョブID」を登録し、ジョブ8を画像処理装置1 内の不揮発性のメモリに記憶させる。以下において、保持用データベースDB1に登録されて保持されているジョブ8を「オリジナルジョブ8」と記載することがある。
図8のように、保持用データベースDB1には、ジョブIDと対応付けて、「ユーザID」、「許可グループ」、「実行可能条件」、「必要容量」、「実行メールアドレス」、「削除メールアドレス」などの複数の項目のデータが登録される。保持用データベースDB1は、例えば大容量記憶装置10dに設けられる。
「実行ユーザID」は、オリジナルジョブ8の実行を指示する権限を有したユーザのユーザIDであり、基本的にはジョブ8を投入したユーザのユーザIDである。実行ユーザIDとして、例えばジョブ8に含まれている投入者のIDを用いることができる。以下では、実行ユーザIDで特定されるユーザを「実行ユーザ」ということがある。
「許可グループ」は、実行ユーザが属している所定のグループであって、オリジナルジョブ8の実行を指示する権限を有したメンバによって構成されるグループである。
「実行可能条件」は、オリジナルジョブ8が実行可能となる条件である。言い換えれば、オリジナルジョブ8を保持する原因となった一時的なエラーの解消されることが、実行可能条件である。例えば、ジョブ8がカラーの完全画像80を印刷するカラー印刷ジョブであって、このジョブ8の代替ジョブ9がモノクロの不完全画像90を印刷するモノクロ印刷ジョブであった場合、「カラー印刷が可能であること」が実行可能条件となる。
「必要容量」は、送信ジョブにおいて生成される完全画像80のデータ量である。「必要容量」は、ジョブ8が送信ジョブである場合であって、送信先の状態が完全画像80の保存に必要なメモリの空き容量の一時的に不足した状態であるため、完全画像80よりもデータ量の少ない不完全画像90を生成する代替ジョブ9が実行された、という場合に、保持用データベースDB1に登録される。なお、必要容量が登録される場合には、実行可能条件として「送信先の空き容量が必要容量以上であること」が登録される。
「実行メールアドレス」および「削除メールアドレス」は、オリジナルジョブ8の実行の要否を実行ユーザに問い合わせる問合せメールM2に対する返信の宛先である。「実行メールアドレス」は、実行ユーザがオリジナルジョブ8の実行を指示する場合の宛先であり、「削除メールアドレス」は、オリジナルジョブ8の削除を指示する場合の宛先である。
図7に戻って、第2の判定部106は、ジョブ保持部105によってオリジナルジョブ8が保持されている状態において、当該オリジナルジョブ8に係る完全画像80の生成が可能になったかどうかを判定する。つまり、オリジナルジョブ8を保持する原因となった一時的エラーが解消したかどうかを判定する。完全画像80の生成が可能になったと判定したとき、第2の判定部106は、「実行可能」という判定結果S6を通知処理部107に通知する。
また、第2の判定部106は、使用条件によってジョブ8の実行が制限されているために第1の判定部101によって完全画像80の生成が可能ではないと判定された場合であって、使用条件がオリジナルジョブ8の実行を制限しないように変更された場合に、完全画像80の生成が可能になったと判定する。
通知処理部107は、判定結果S6の通知を受けたとき、オリジナルジョブ8の実行が必要であるかどうかを実行ユーザに問い合せる。問合せには問合せメールM2をユーザに宛てて送信する方法を用いることができる。その場合、通知処理部107は、実行ユーザのメールアドレスに問合せメールM2を送信し、問合せメールM2に対する返信メールを返答通知S3として受け取る。
通知処理部107は、オリジナルジョブ8に対応付けて上述の許可グループが保持用データベースDB1に登録されている場合には、実行ユーザおよび実行ユーザが属している許可グループに属している他のユーザのそれぞれに、オリジナルジョブ8の実行が必要であるかどうかを問い合せる。
通知処理部107は、実行ユーザのメールアドレスに、入力欄を有したウェブページのURLを記載した問合せメールM2を送信し、ウェブページへのアクセスを返答通知S3として受け取ることができる。この場合、ウェブページにアクセスした閲覧者によって入力欄に入力された情報が、識別情報50となる。
通知処理部107は、問合せに対する返答通知S3を受け取ると、返答通知S3に含まれる識別情報50を第3の判定部109に送ることによって、返答通知S3が正しい通知であるかどうかの判定を第3の判定部109に依頼する。
通知処理部107は、オリジナルジョブ8の実行が必要であるとの返答通知S3を受け取り、かつその返答通知S3が正しい通知であることを示す「有効」という判定結果S9を第3の判定部109から受け取った場合に、実行指令S7をジョブ実行制御部108に与える。このとき、返答通知S3にジョブの設定の変更内容を示す設定変更情報Dxが含まれる場合には、実行指令S7に設定変更情報Dxを組み入れる。
ジョブ実行制御部108は、実行指令S7を受けた場合のみ、つまりオリジナルジョブ8の実行が必要であるとの返答通知S3が正しい通知であると判定された場合のみ、オリジナルジョブ8を画像生成部104に実行させる。
ジョブ実行制御部108は、実行指令S7に設定変更情報Dxが含まれる場合に、設定変更情報Dxに従ってオリジナルジョブ8の設定を変更した改変ジョブ8xをオリジナルジョブ8に代えて画像生成部104に実行させる。
オリジナルジョブ8の設定の変更の例として、複数ページを1つの画像に集約するページ集約の集約数、「フルカラー/2色/モノクロ」といった印刷色、「ステープル/パンチ穿孔」といった仕上げ加工の有無、「写真モード/文字モード」といった画質、「部数」「用紙サイズ」などの変更がある。
第3の判定部109は、通知処理部107から受け取った識別情報50に基づいて返答通知S3が正しい通知であるかどうかを判定する。詳しくは、識別情報50を認証サーバ4に転送し、予め認証データベースDB2に登録されている情報との照合を認証サーバ4に依頼する。「一致する」との照合結果が認証サーバ4から通知された場合、第3の判定部109は、返答通知S3が正しい通知であると判定し、「有効」という判定結果S9を通知処理部107に通知する。
依頼処理部110は、第2の判定部106による判定のための処理をする。詳しくは、依頼処理部110は、ジョブ保持部105によってオリジナルジョブ8が保持されている状態において、オリジナルジョブ8の実行を制限する使用条件の変更を使用管理者に依頼する。
図10および図11には問合せメールM2,M2bの例が、図12にはウェブページ650の例が、図13には問合せメールM2cの例が、図14にはグループテーブルTA1の例が、それぞれ示されている。
上述の通知処理部107は、例えば図10に示される内容の問合せメールM2を送信する。図10では、タブレット型端末装置3Tのタッチパネルディスプレイ30eに問合せメールM2の内容が表示されている。
問合せメールM2の送信元アドレス601は、保持用データベースDB1においてジョブ8に対応付けられている実行メールアドレスである。送信先アドレス602は、ジョブ8を投入したユーザのメールアドレスであり、例えば図9のように認証データベースDB4において実行ユーザIDと対応付けられている。通知処理部107は、問合せメールM2を作成する際、ジョブ8に含まれるユーザIDを認証サーバ4に送って実行ユーザのメールアドレスを取得し、それを送信先アドレス602とする。なお、端末装置3を特定するMACアドレスまたはIPアドレスなどのデバイスIDとユーザのメールアドレスとを対応付けて記憶しておき、デバイスIDからユーザのメールアドレスを取得するようにしてもよい。
問合せメールM2には、画像処理装置1の状態が変化したことを伝えるメッセージ604とともに、問合せに対する返答の方法が記載されている。すなわち、ユーザがジョブ8を実行させたい場合(つまり完全画像80を必要とする場合)には問合せメールM2の送信元アドレス601に空メールを返信し、ジョブ8を削除したい場合には本文に記載のメールアドレス603に空メールを返信すればよい、ということが記載されている。また、ジョブ8の設定を変更して実行させたい場合には、変更したい設定の内容を本文または件名に記載したメールを返信すればよいことが記載されている。メールアドレス603は、保持用データベースDB1においてジョブ8に対応付けられている削除メールアドレスである。
通知処理部107は、実行メールアドレス(送信元アドレス601)に宛てた返信メールを、ジョブ8の実行が必要であるとの返答通知S3として受け取り、削除メールアドレス(メールアドレス603)に宛てた返信メールを、ジョブ8の削除を指示する返答通知S3として受け取る。いずれにしても返信メールにはその送信元アドレスとして往信メールの送信先アドレス602が含まれる。
通知処理部107は、返答通知S3としての返信メールに含まれる送信元アドレス(送信先アドレス602)と、ジョブ8に含まれたユーザIDとを識別情報50として第3の判定部109に引き渡し、返答通知S3がジョブ8の実行ユーザからの通知である正しい通知であるかどうかの判定を依頼する。上述のとおり識別情報50が第3の判定部109によって認証サーバ4に転送される。そして、認証データベースDB4において実行ユーザのユーザIDに対応付けられているユーザのメールアドレスと識別情報50の送信元アドレスとが照合され、その結果に基づいて第3の判定部109によって返答通知S3の真偽が判定される。
このようにユーザが返信メールを送信する方法の他に、通知処理部107からの問合せに対してユーザが返答用のウェブページ650にアクセスすることによって返答する方法がある。この場合の問合せメールM2bの例が図11に示される。
図11の問合せメールM2bには、ユーザがジョブ8を実行させたい場合(つまり完全画像80を必要とする場合)には本文に記載のURL(Uniform Resource Locator)605にアクセスすればよい、という返答の方法が記載されている。
ユーザがタッチパネルディスプレイ30eにおけるURL605にタッチすると、端末装置3Tは、URL605にアクセスし、図12に示すウェブページ650を表示する。ウェブページ650は、ユーザIDおよびパスワードをそれぞれ入力するための入力欄651,652を有する。
通知処理部107は、ウェブページ650を取り込んで表示するというウェブページ650へのアクセスを、ジョブ8の実行が必要であるとの返答通知S3として受け取る。そして、ウェブページ650の閲覧者が入力欄651,652に入力した情報を、識別情報50として第3の判定部109に引き渡す。識別情報50が、認証データベースDB2に登録されているユーザITとパスワードとの組合せに一致する場合に、返答通知S3は正しい通知であると判定される。
ところで、通知処理部107は、上述のとおり実行ユーザおよび実行ユーザが属している所定のグループに属している他のユーザのそれぞれに、ジョブ8の実行が必要であるかどうかを問い合わせることができる。この場合の問合せメールM2cの例が図13に示される。
問合せメールM2cには、画像処理装置1の状態を伝えるメッセージ604cとともに、画像処理装置1の設置場所、ワンタイムパスワード506、および画像処理装置1にワンタイムパスワード506を入力することによってジョブ8を実行させることができる旨の説明が記載されている。
通知処理部107は、このような問合せメールM2cを、実行ユーザが属しているグループのメンバに宛てて送信する。グループのメンバは、図14に示すグループテーブルTA1に登録されている。図14において、実行ユーザは、「soumu 」という名称のグループの「メンバ1」として登録されている。グループ「soumu 」のメンバは、メンバ1、メンバ2およびメンバNを含む複数である。通知処理部107は、これら複数のメンバのそれぞれに宛てて問合せメールM2cを送信する。なお、予め自己以外が投入したジョブについての問合せの要否が登録されている場合には、実行ユーザおよび「問合せが必要」と登録されたているメンバに宛てて問合せメールM2cを送信する。
問合せメールM2cを受け取ったユーザ(グループ「soumu 」のメンバ)は、ジョブ8を実行させたい場合には、画像処理装置1の設置場所へ出向いて、画像処理装置1にワンタイムパスワード506を入力する。通知処理部107は、ワンタイムパスワード506が入力されたことを、ジョブ8の実行が必要であるとの返答通知S3として受け取る。そして、入力されたワンタイムパスワード506を識別情報50として第3の判定部109に引き渡す。ユーザによって入力されたワンタイムパスワード506が問合せメールM2cの送信に際して通知処理部107によって発行されたものと一致する場合に、第3の判定部109は、返答通知S3が正しい通知であると判定する。
なお、複数のユーザがオリジナルジョブ8の実行をすることができるようにした場合、いずれかのユーザがオリジナルジョブ8の実行した後もオリジナルジョブ8を破棄せずに保持を続ける。ただし、ワンタイムパスワード506に有効期限を設定し、有効期限が経過したときにオリジナルジョブ8を破棄するようにしてもよい。
次にフローチャートを参照しながら、画像処理装置1の動作をさらに説明する。
図15のフローチャートには画像処理装置1の全体的な処理の流れの例が示されている。
画像処理装置1は、ジョブ8を受け付けると(#11でYES)、第1の判定処理を実行する(#12)。
第1の判定処理では、投入されたジョブ8の実行に関わる各部の状態を検知してジョブ8の実行が可能であるかどうかを判定する。さらに、ジョブ8の実行が可能ではないと判定した場合には、代替ジョブ9の実行が可能であるかどうかを判定する。
第1の判定処理で検知する状態は、ジョブ8によって異なり、画像処理装置1の状態であったり、画像処理装置1と通信する外部の機器の状態であったりする。例えば、ジョブ8が印刷ジョブである場合には、シート収納部にシートが無い状態、色材(電子写真式ではトナー)が残り少ないエンプティ状態などは、ジョブ8を実行することができない状態である。また、ジョブ8が送信ジョブである場合には、送信先のデータ記憶の空き容量が完全画像80のデータ量よりも少ない状態は、ジョブ8を実行することができない状態である。第1の判定部101は、このような状態を検知する。
なお、ジョブ8が例えばPDFファイルを生成する送信ジョブであって、保存先の空き容量不足によりジョブ8を実行することができない場合、PDFファイルよりもデータ量の少ないコンパクトPDFファイルを生成する代替ジョブ9の実行の可否を判定することができる。さらに、コンパクトPDFファイルのデータ量が保存先の空き容量よりも多い場合、画像の解像度を下げてコンパクトPDFファイルを生成するようにしてもよい。その場合、保存先の空き容量に応じて解像度を決定すればよい。
第1の判定処理の判定結果が「ジョブの実行が可能」である場合(#13でYES)、画像処理装置1は、ジョブ8を実行して完全画像80を生成する。その後、フローはステップ#11に戻り、画像処理装置1は、次のジョブ8が投入されるのを待つ。
第1の判定処理の判定結果が「ジョブの実行が不可能」である場合(#13でNO)、画像処理装置1は、ジョブ8に代えて代替ジョブ9の実行が可能であるかどうかを判定する(#14)。
代替ジョブ9の実行が可能ではない場合(#14でNO)、画像処理装置1は、ジョブ8の実行を中止する(#22)。つまり、ユーザから与えられたジョブ8を実行しないまま次のジョブ8が投入されるのを待つ。この場合、ユーザがジョブ8の削除を指示すると、画像処理装置1はジョブ8を削除する。
なお、あるジョブ8の実行が可能ではなくても、他のジョブ8の実行は可能である、という場合がある。例えば、印刷ジョブの実行は可能でないが送信ジョブの実行は可能であったり、逆に送信ジョブの実行は可能でないが印刷ジョブの実行は可能であったりする。
代替ジョブ9の実行が可能である場合(#14でYES)、画像処理装置1は、代替ジョブ9の実行の要否をユーザに問い合わせる(#15)。
問合せに対する返答としてユーザが代替ジョブ9の実行を指示すると(#16でYES)、画像処理装置1は、ジョブ8を保持し(#17)、保持用データベースDB1にジョブIDおよび実行可能条件などを登録し(#18)、代替ジョブ9を実行して不完全画像90を生成する(#19)。
その後、画像処理装置1は、保持したジョブ8に関わる一時的エラーの解消を待ってジョブ8を実行する追加実行処理を行う(#20)。
ステップ#15の問合せに対して代替ジョブ9の実行を指示する返答がない場合(#16でNO)、画像処理装置1は、ジョブ8の実行を中止する(#22)。
図16のフローチャートには第1の判定処理の例が示されている。
図16では、画像処理装置1の使用管理者によってユーザに対してカラー印刷枚数およびモノクロ印刷枚数を制限する使用条件が設定されている場合において、カラー印刷を指定するカラー印刷ジョブが投入されたときに行われる処理の流れが示されている。
第1の判定部101は、ジョブ8がカラー印刷ジョブである場合(#101でYES)、ユーザに設定されている残りカラー印刷可能枚数を取得する(#102)。そして、ジョブ8の印刷枚数が残りカラー印刷可能枚数よりも多いかどうかをチェックする(#103)。
ステップ#103でNOの場合、第1の判定部101は、「ジョブの実行が可能」と判定する(#107)。フローは、図15のメインフローへ戻る。
ステップ#103でYESの場合、つまりカラー印刷が制限されている場合、第1の判定部101は、ユーザに設定されている残りモノクロ印刷可能枚数を取得する(#104)。そして、ジョブ8の印刷枚数が残りモノクロ印刷可能枚数よりも少ないかどうかをチェックする(#105)。
ステップ#105でNOの場合、つまりモノクロ印刷が制限されている場合、第1の判定部101は、「ジョブの実行が不可能」と判定する(#108)。
ステップ#105でYESの場合、第1の判定部101は、「ジョブの実行が可能」と判定する(#106)。
図17のフローチャートには追加実行処理の例が示されている。
ジョブ保持部105によってジョブ8が保持されている場合(#201でYES)、第2の判定部106は、第2の判定処理を行う(#202)。第2の判定処理では、「追加実行の対象無し」または「追加実行の対象有り」の判定結果が得られる。
第2の判定処理の判定結果が「追加実行の対象無し」である場合(#203でNO)、フローは、図15のメインフローへ戻る。
第2の判定処理の判定結果が「追加実行の対象有り」である場合(#203でYES)、通知処理部107は、完全画像80の生成が可能になったと判定されたと判断し、ジョブ8の実行が必要であるかどうかをユーザに問い合せる(#204)。
通知処理部107が返答通知S3を受け取ると(#205でYES)、第3の判定部109は、認証サーバ4と連携して返答通知S3が正しい通知であるかどうかの判定(第3の判定)を行う。つまり、問合せに返答したユーザがジョブ8の投入者または投入者と同じグループに属するメンバであるかどうかを判定する(#206)。
返答通知S3が正しい通知であると判定され(#207でYES)、返答通知S3がジョブ8のかつの実行が必要であるとの返答を示すものである場合(#208でYES)、画像処理装置1は保持されているジョブ8を実行して完全画像80を生成する(#209)。
返答通知S3が正しい通知ではないと判定された場合(#207でNO)、および返答通知S3がジョブ8の実行が必要であるとの返答を示すものでない場合(#208でNO)、画像処理装置1はジョブ8を実行しない(#210)。
図18、図19および図20の各フローチャートには第2の判定処理の例が示されている。
第2の判定部106は、まず、画像形成装置1の状態が変化したかどうかをチェックする(図18の#301)。画像形成装置1の状態が変化していない場合(#301でNO)、フローは図19のステップ#306へ進む。
画像形成装置1の状態が変化した場合(#301でYES)、第2の判定部106は、その変化が何らかのジョブの実行を妨げる一時的エラーの解消であるかどうかをチェックする(#302)。例えば、カラー印刷ジョブの実行を妨げる一時的エラーであるカラー印刷用色材の残量不足が解消したかどうかをチェックする。
ステップ#302でYESの場合、第2の判定部106は、ジョブ保持部105を介して保持用データベースDB1を検索する(#303)。この検索の対象は、ステップ#302で検知した一時的エラーの解消が実行可能条件として登録されているジョブ8である。実行可能条件が当該一時的エラーの解消であるジョブ8が保持用データベースDB1にある場合(#304でYES)、第2の判定部106は、「追加実行の対象有り」と判定する。ステップ#304でNOの場合、フローは図19のステップ#306へ進む。
図19のステップ#306〜#311の処理は、送信ジョブに関係する処理である。
ステップ#306において、第2の判定部106は、保持用データベースDB1を検索する。この検索の対象は、実行可能条件として「空き容量が必要容量以上(容量不足の解消)」が登録されているジョブ8である。
検索の対象に該当するジョブ8が有る場合(#307でYES)、第2の判定部106は、当該ジョブ8が登録された時点(ジョブの投入時点でもよい)または当該ジョブ8が指定する保存先の空き容量を最後に確認した時点から所定の時間(例えば数分〜30分)が経過したかをチェックする(#308)。つまり、保存先で空き容量が増加するのに要すると見込まれる時間の経過を待つ。
所定の時間が経過している場合(#308でYES)、第2の判定部106は、保存先の現在の空き容量を確認する(#309)。保存先が外部の機器である場合はその機器と通信して空き容量の情報を取得する。
続いて、第2の判定部106は、当該ジョブ8に対応づけて保持用データベースDB1に登録されている必要記憶容量よりも、保存先の空き容量の方が大きいかどうかをチェックする(#310)。そして、ステップ#301でYESの場合に、「追加実行の対象有り」と判定する。この場合、フローは、図17のフローへ戻る。
ステップ#301でYESの場合、フローは図20のステップ#312へ進む。
図20のステップ#312〜#321の処理は、画像処理装置1の各ユーザに対して印刷枚数を制限する使用条件を設定する使用形態のための処理である。
ステップ#312において、第2の判定部106は、保持用データベースDB1を検索する。この検索の対象は、実行可能条件として「印刷枚数の制限の解消」が登録されているジョブ8である。
検索の対象に該当するジョブ8が無い場合(#313でNO)、第2の判定部106は、「追加実行の対象無し」と判定する(#322)。
検索の対象に該当するジョブ8が有る場合(#313でYES)、第2の判定部106は、その旨を依頼処理部110に通知する。通知を受けると、依頼処理部110は、自動申請モードであるかどうかをチェックする(#314)。自動申請モードとは、ユーザに申請の要否を問い合わせることなく、使用条件の変更を使用管理者に依頼するモードである。自動申請モードである場合(#314でYES)、フローはステップ#317へ進む。
自動申請モードでない場合(#314でNO)、依頼処理部110は、申請の要否を問い合わせる(#315)。問合せの方法として、上述のように問合せメールと返答メールとをやりとりする方法、ユーザがウェブページにアクセスする方法などを用いることができる。
ユーザから申請を指示する返答を受け取った場合、依頼処理部110は、残り印刷可能枚数が増えるようにする使用条件の変更を使用管理者に申請する。例えば、所定の様式の申請書を添付したメールを使用管理者宛てに送信する。そして、申請をしたことを第2の判定部106に通知する。
この通知を受けると、第2の判定部106は、使用管理者が変更作業をするのに要すると見込まれる所定の時間(例えば、5〜15分)の経過を待つ(#318)。
所定の時間が経過すると(#318でYES)、第2の判定部106は、画像処理装置1がアクセス可能な記憶装置に記憶されている図示しない使用条件データベースからジョブ8のユーザに設定されている残り印刷可能枚数を取得する(#319)。このとき、ジョブ8がカラー印刷ジョブである場合には、残りカラー印刷可能枚数を取得し、ジョブ8がモノクロ印刷ジョブである場合には、残りモノクロ印刷可能枚数を取得する。
取得した残り印刷枚数がジョブ8の印刷枚数よりも多い場合(は#320でYES)、第2の判定部106は、「追加実行の対象有り」と判定する。ステップ#320でNOの場合、第2の判定部106は、所定の時間ごとに残り印刷可能枚数を取得してステップ#320のチェックを繰り返す。なお、第2の判定部106が使用条件データベースにアクセスして残り印刷可能枚数を取得する代わりに、使用管理者によって残り印刷可能枚数が変更されたときにその旨が第2の判定部106に通知されるようにしてもよい。
以上の第1の実施形態によると、実行ユーザが属しているグループの各メンバは、必要に応じて画像形成装置1にジョブ8を実行させて完全画像80を入手することができる。例えば、次の状況が考えられる。
グループのメンバによる会議に際して、メンバの一人であるユーザが、会議の資料としてカラーの印刷物を得るため、ドキュメントのカラー印刷をジョブ8として画像処理装置1に投入する。しかし、そのとき画像処理装置1はカラー印刷ができない一時的エラー発生状態であったので、ユーザはモノクロ印刷をする代替ジョブ9の実行を指示してモノクロの印刷物を取得する。そして、カラー印刷ができなかったことを他のメンバに知らせる。ユーザおよび他のメンバのそれぞれは、一時的エラー発生状態が解消した後に、必要に応じてカラーの印刷物を取得することができる。
また、ユーザが、会議の参加者に資料を配布するため、複数部のカラー印刷をするジョブ8を画像処理装置1に投入したとする。そして、画像処理装置1が一時的エラー発生状態であったので、複数部のモノクロ印刷をする代替ジョブ9を実行させたとする。この場合、ユーザおよび他のメンバのそれぞれは、一時的エラー発生状態が解消した後にカラーの印刷物を取得する際、ジョブ8の部数の設定値を例えば1に変更し、変更後の改変ジョブ8xを実行させてカラーの印刷物を1部のみ生成させることができる。
〔第2の実施形態〕
図21には本発明の一実施形態に係る他の画像処理システム200の全体的な構成の例が示されている。図21において、図1の要素に対応する要素には図1の要素と同じ符合を付し、これらの説明を省略しまたは簡略化する。
画像処理システム200の機能は、画像処理装置2、ARコンテンツの提供を受ける1以上の端末装置3、認証サーバ4、ARコンテンツを提供するARサーバ5、および通信回線6などによって実現される。
画像処理装置2、端末装置3、認証サーバ4、およびARサーバ5は、これらの間で相互に通信回線6を介して通信することができる。
画像処理装置2は多機能機であり、シート7に完全画像80または不完全画像90を印刷する画像形成装置、および完全画像80の画像データまたは不完全画像90の画像データを指定された保存先へ送信する画像データ出力装置などとして使用することが可能である。
画像処理装置2のハードウェア構成は、上述の画像処理装置1のハードウェア構成と同様でよい。すなわち、画像処理装置2は、図2のように、CPU、RAM、ROM、大容量記憶装置、タッチパネルディスプレイ、操作キーパネル、通信インタフェースカード、モデム、メモリカードリーダライタ、スキャンユニット、およびプリントユニットなどによって構成されるものでよい。
画像処理装置2のROMまたは大容量記憶装置には、追加実行プログラムが記憶されている。追加実行プログラムは、RAMにロードされ、CPUによって実行される。
端末装置3は、ARサーバ5から提供されるARコンテンツを表示する。端末装置3として、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、または眼鏡型コンピュータなどが用いられる。
以下、端末装置3として、タブレットコンピュータまたは眼鏡型コンピュータが用いられる場合を例に説明する。前者および後者をそれぞれ「タブレット型端末装置3T」および「眼鏡型端末装置3M」と区別して記載することがある。
ARサーバ5のハードウェア構成は、上述の認証サーバ4のハードウェア構成と同様でよい。すなわち、ARサーバ5は、図4のように、CPU、RAM、ROM、大容量記憶装置、および通信インタフェースカードなどによって構成されるものでよい。ただし、ARサーバ5においては、ROMまたは大容量記憶装置には、ARコンテンツ管理プログラムが記憶されている。ARコンテンツ管理プログラムは、RAMにロードされ、CPUによって実行される。
図22には眼鏡型端末装置3Mのハードウェア構成の例が示されている。
眼鏡型端末装置3Mは、CPU31a、RAM31b、ROM31c、フラッシュメモリ31d、ディスプレイ31e、操作ボタン群31f、デジタルカメラ31g、および無線通信装置31hなどによって構成される。
CPU31a、RAM31b、ROM31c、フラッシュメモリ31d、ディスプレイ31e、操作ボタン群31f、デジタルカメラ31g、および無線通信装置31hの役割は、それぞれ、図3のタブレット型端末装置3TのCPU30a、RAM30b、ROM30c、フラッシュメモリ30d、タッチパネルディスプレイ30e、操作ボタン群30f、デジタルカメラ30g、および無線通信装置30hと基本的に同様である。
ただし、画像を再現する方式が、タッチパネルディスプレイ30eとディスプレイ31eとでは相違する。タッチパネルディスプレイ30eは、上述の通り、液晶ディスプレイのような平面型のディスプレイである。一方、眼鏡型端末装置3Mのディスプレイ31eは、眼鏡の柄の根元に設けられたプロジェクタとレンズの端部付近に設けられたプリズムとによってレンズへ投光することによって、画像を再現する。
ROM31cまたはフラッシュメモリ31dに、ARサーバ2からARコンテンツを取得するクライアントプログラムが記憶されている。クライアントプログラムは、RAM31bにロードされ、CPU31aによって実行される。
さて、画像処理システム200は、画像処理装置2によってジョブ8に代えて代替ジョブ9が実行された後、ジョブ8を実行して完全画像80を生成すること可能になったことを、AR(Augmented Reality )の技術によって端末装置3のユーザに知らせるとともに、ジョブ8の実行の要否を問い合わせることができる。
また、代替ジョブ9の実行による不完全画像90の生成に際して、入力画像のもつ情報のうちの不完全画像90において欠落した欠落情報を、ARの技術によって端末装置3上で再現することができる。この際に、不完全画像90が端末装置3によって撮影される。
ARは、一般に「拡張現実」と翻訳される。ARの技術によると、ARマーカが付されている画像をスマートフォンなどで撮影すると、ARマーカに対応するコンテンツが、撮影した画像に重なるように表示される。これにより、現実の空間が拡張したかのようにユーザに感じさせることができる。眼鏡型のウェアラブルコンピュータを用いることによっても同様の効果が得られる。
図23には画像処理装置2の機能的構成の例が、図24には端末装置3およびARサーバ5の機能的構成の例が、それぞれ示されている。
図23と図7とを見比べて分かるように、画像処理装置2の機能的構成は、図7の画像処理装置1の機能的構成と基本的に同様である。すなわち、画像処理装置2は、画像処理装置1と同様に、第1の判定部101、代替通知処理部102、代替ジョブ実行部103、画像生成部104、ジョブ保持部105、第2の判定部106、ジョブ実行制御部108、第3の判定部109、および依頼処理部110を備える。
画像処理装置2と画像処理装置1との差異は、画像処理装置2が通知処理部107に代えて通知処理部107bを備えるとともに、画像処理装置1にはない画像処理部121およびAR登録部122を備えることである。
画像処理装置2において、画像生成部104を除いて、通知処理部107b、画像処理部121、AR登録部122、および他の各要素の機能は、追加実行プログラムによって実現される。
通知処理部107bは、第2の判定部106から「実行可能」の通知S6を受けると、オリジナルジョブ8の実行が必要であるかどうかをジョブ8を投入したユーザに問い合せる。通知処理部107bよる問合せの処理は、完全画像80の生成が可能になったことを知らせるARコンテンツを登録するようにARサーバ5に対してコンテンツ更新要求S10を送信する処理である。
また、通知処理部107bは、問合せに対する返答通知S3をARサーバ5から受信する。
画像処理部121は、代替ジョブ9の実行による不完全画像90の生成に際して、完全画像80がもつ情報のうちの不完全画像80がもたない欠落情報を特定するARマーカ91を、当該不完全画像90に付加する。
AR登録部122は、画像生成部104によって代替ジョブ9が実行される場合に、画像処理部121からARマーカ91の画像データを受け取ってARサーバ5に送り、当該ARマーカ91をARサーバ5の記憶部に記憶させる。その際、AR登録部122は、ジョブ8の実行可能条件をARサーバ5に通知する。
また、AR登録部122は、ARマーカを記憶部に記憶させる際に、完全画像80のうちの不完全画像90の生成に際して欠落する欠落情報を表わす部分である欠落画像を記憶部に記憶させる。
図24のように、端末装置3は、デジタルカメラ30g,31g、ARマーカ認識部301、AR表示処理部302、および送信処理部303を備える。ARマーカ認識部301、AR表示処理部302および送信処理部303のそれぞれの機能は、クライアントプログラムによって実現される。
デジタルカメラ30g,31gは、印刷されまたは表示された状態の不完全画像90、すなわち印刷物上の不完全画像90またはディスプレイの画面上の不完全画像90を撮影する。
ARマーカ認識部301は、デジタルカメラ30g,31gによる不完全画像90の撮影画像900に映り込んでいるARマーカ91を公知のアルゴリズムを用いて認識する。そして、認識したARマーカ91の画素値の配列情報を、AR表示処理部302に引き渡す。
AR表示処理部302は、ARマーカ認識部301から画素値の配列情報を受け取ると、受け取った配列情報をARサーバ5に送り、ARマーカ91に対応付けてARサーバ5内の記憶部501により記憶されているARコンテンツ70を、それを管理するARコンテンツ管理部502を介して取得する。このとき、ARコンテンツ管理部502は、AR表示処理部302から送られてきた配列情報をキーとしてARデータベースDB5に登録されている1以上のARマーカ(パターンファイル)を検索し、配列情報との一致度が所定値以上でかつ最も大きいパターンファイルを、ARマーカ認識部301によって認識されたARマーカ91とする。そして、このARマーカ91に対応付けられているARコンテンツ70をAR表示処理部302に送る。
なお、AR表示処理部302がARコンテンツ管理部502にアクセスする際に、端末装置3のユーザのユーザIDおよび端末装置3のデバイス情報をARコンテンツ管理部502に送り、これら情報に基づいてARコンテンツ管理部502がユーザ認証を行うようにすることができる。
AR表示処理部302は、ARコンテンツ70を取得すると、デジタルカメラ30g,31gによって撮影されている状態の不完全画像90に重ねてARコンテンツ70を表示する。詳しくは、AR表示処理部302は、ARコンテンツ70に含まれる位置データおよびサイズデータに基づいて、撮影画像510内のARマーカ91の位置および大きさに応じてARコンテンツ70の位置および大きさを定めてARコンテンツ70を表示する。
印刷されまたは表示されている不完全画像90がタブレット型端末装置3Tのデジタルカメラ30gによって撮影されている場合には、撮影のモニター表示手段としてのタッチパネルディスプレイ30eに表示されている不完全画像90にATコンテンツを合成して表示する。
また、不完全画像90の印刷された印刷物が眼鏡型端末装置3Mのデジタルカメラ31gによって撮影されている場合には、印刷物にARコンテンツ70が印刷されているかのようにユーザに見せるように、表示手段であるディスプレイ31eを用いて眼鏡のレンズにARコンテンツ70を投影する。表示されている不完全画像90が眼鏡型端末装置3Mのデジタルカメラ31gによって撮影されている場合も同様に、あたかもARコンテンツ70が表示されているかのようにユーザに見せるように、眼鏡のレンズにARコンテンツ70を投影する。
送信処理部303は、AR表示処理部302によってARコンテンツ70が表示された状態で入力された所定の指示に従って、返答通知S3をARサーバ5に送信する。
ARサーバ5は、記憶部510、ARコンテンツ管理部502、および転送処理部503を備える。これらの要素のそれぞれの機能は、ARコンテンツ管理プログラムによって実現される。
記憶部501は、ARデータベースDB5によってARマーカ1とARコンテンツ70とを対応付けて記憶する。
ARコンテンツ管理502は、ARマーカ91と、通知処理部107bによる問合せにユーザが返答するためのARコンテンツとを対応付けて記憶させる。また、画像処理装置2の通知処理部107bからのコンテンツ更新要求S1を受けると、要求に従って、画像処理装置2の状態がどのようになったかをユーザに伝えるARコンテンツ70をARデータベースDB5に登録する。その際、予め用意された返答要の画像のライブラリから実行可能条件に対応するものを選んでARデータベースDB5に登録することができる。
転送処理部503は、端末装置3から受信した返答通知S3を画像処理装置2に転送する。
図25にはARデータベースの例が示されている。
ARデータベースDB1には、ARマーカ91と対応付けて、ジョブID、実行可能条件、およびARコンテンツ70が登録される。ARコンテンツ70は、ユーザ認証用の画像701、返答用の画像702、および情報を表わす画像(欠落画像)801などから構成される。
なお、これら画像701,702,801のそれぞれの画像データには、ARマーカ91との位置関係を示す位置データ、およびARマーカ91と欠落画像410との大きさの関係を示すサイズデータが含まれている。
位置データは、例えばARマーカ91の中心位置と各画像701,702,801の中心位置とが水平方向および垂直方向のそれぞれにおいてどれだけずれているかを示すものであってよい。サイズデータは、例えばARマーカ91のサイズに対する各画像701,702,801のサイズの比率を示すものであってよい。
、図26には端末装置3を介して不完全画像90を見た際の様子の例が示されている。
図26において、不完全画像90はシート7に印刷されており、使用されている端末装置3は眼鏡型端末装置3Mである。
眼鏡型端末装置3Mを操作するユーザは、クライアントプログラムを起動させ、眼鏡型端末装置3Mのレンズを通してシート7(印刷物)の不完全画像90を撮影する。そうすると、眼鏡型端末装置3Mは、不完全画像90に付加されているARマーカ91を認識し、ARサーバ5から画像701のデータを取得し、画像701をレンズに投影する。このとき、ユーザには図26(A)のように画像701が印刷物に重なって実際に存在するかのように見える。
画像701は、認証情報(ユーザIDおよびパスワード)の入力をユーザに促すメッセージと認証情報の入力欄とを有している。ユーザが眼鏡型端末装置3Mを操作して認証情報を入力しているとき、図26(B)のように入力の内容を入力欄に反映させた画像701bが表示される。認証情報の入力が完了すると、ARサーバ5と認証サーバ4とが連携する認証処理が行われる。ユーザが認証されると、図26(C)または図26(D)の表示が行われる。
図26(C)は、カラー印刷ジョブの代替ジョブ9の実行によって不完全画像90が生成された後、カラー印刷ジョブの実行が可能になる以前の様子を示している。
図26(C)において、不完全画像90に重ねて欠落画像であるフルカラー画像801が表示されている。ユーザには、あたかも完全画像80を印刷した印刷物が存在するかのように見える。ユーザは、実際には生成されていない完全画像80をプレビューすることができる。
図26(D)は、不完全画像90が生成された後、カラー印刷ジョブの実行が可能になった以後の様子を示している。
図26(D)において、図26(C)と同様に不完全画像90に重ねてフルカラー画像801が表示されている。そして、返答用の画像702が表示されている。画像702は、カラー印刷が可能になったことをユーザに伝えるとともにジョブ8の実行の要否を問うメッセージ、「はい」と記されたボタン721、および「いいえ」と記されたボタン722を有する。
ユーザが「はい」と記されたボタン721を操作すると、そのことがジョブ8の実行が必要であるとの返答通知S3としてARサーバ5に通知され、画像処理装置2に転送される。この返答通知S3を受け取ると、画像処理装置2は保持しているジョブ8を実行して完全画像80を実際に生成する。
図27には端末装置3を介して不完全画像90,90b,90cを見ながらページ単位で完全画像の生成の対象を選択する際の様子の例が示されている。
図27の例は、3ページのドキュメントをカラー印刷するジョブ8が投入され、ジョブ8に代えてモノクロ印刷をする代替ジョブ9が実行され、三つのページのそれぞれに対応する不完全画像90,90b,90cが生成された場合を想定した例である。
ユーザが1ページ目の不完全画像90を例えば眼鏡型端末装置3Mを介して見たとき、図26(D)と同様に返答用の画像702が表示される。ユーザが例えば「はい」と記載されたボタン721を操作すると、ドキュメントの1ページ目がカラー印刷の対象に設定される。
ユーザが2ページ目の不完全画像90bを眼鏡型端末装置3Mを介して見たとき、画像702に代えて画像702bが表示される。画像702bは、現在見ているページをカラー印刷の対象するかどうかの選択をユーザに促すメッセージ、および二つのボタン721,722を有する。ユーザが例えば「いいえ」と記されたボタン722を操作すると、2ページ目はカラー印刷の対象に設定されない。
ユーザが最終ページである3ページ目の不完全画像90cを眼鏡型端末装置3Mを介して見たときにも、画像702bが表示される。ユーザが二つのボタン721,722のいずれかを操作すると、画像702bに代えて画像702cが表示される。画像702cは、設定の確認をユーザに促すメッセージ、および二つのボタン721,722を有する。ユーザが「はい」と記載されたボタン721を操作すると、三つのページのそれぞれについての設定が確定する。図27の例では、1ページ目のみがカラー印刷の対象に設定され、ジョブ8の実行に際して1ページ目の完全画像80のみが印刷され、2ページ目および3ページ目については印刷が行われない。
なお、ドキュメントのページ数が2または4以上である場合も、ユーザは図27と同様の手順でページ単位で印刷の要否を決めることができる。
以上の第1の実施形態および第2の実施形態において、認証サーバ4の機能を画像処理装置1,2または他の機器に設けてもよい。ARサーバ5の機能を画像処理装置2または他の機器に設けてもよい。
オリジナルジョブ8を保持する期間の長さを適宜設定することができる。また、保持するオリジナルジョブ8の数の上限を設定し、上限を超えたときに例えば古いものから順にオリジナルジョブ8を破棄してもよい。
第2の実施形態において、オリジナルジョブ8が実行され、それによって完全画像80の生成が可能になったことをユーザに知らせる必要が無くなったとき、ARデータベースDB5の当該オリジナルジョブ8のレコードのうちの返答用の画像702を削除してもよい。
ワンタイムパスワードに代えて、例えばジョブIDのようにオリジナルジョブ8を特定する他の情報を入力することにより、ユーザがオリジナルジョブ8の実行を指示するようにしてもよい。
グループのメンバに完全画像80の生成が可能になったことを通知する際、画像形成装置1を特定する情報として、設置場所、機種名、IPアドレスなどを知らせてもよい。
画像処理装置1,2は、多機能機に限らず、印刷ジョブのみまたは送信ジョブのみの実行が可能な機器であってよく、コピー機、プリンタ、ファクシミリ機などであってもよい。
画像処理システム100,200の構成、画像処理装置1,2の構成、端末装置3の構成、認証サーバ4の構成、ARサーバ5の構成、処理の流れ、複数の処理を実行する順序およびタイミング、ジョブ8の実行の要否を問い合わせる方法、問合せメールM2に記載するメッセージ、保持用データベースDB1および他のデータベースのデータ構成および記憶の形態、ARマーカ91のサイズおよびパターン、ARコンテンツ70の構成などは、本発明の趣旨に沿う範囲内で適宜変更することができる。