JP2016146779A - 新規微生物、ならびにそれを用いる2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法 - Google Patents

新規微生物、ならびにそれを用いる2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価な3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料として2,3−ジヒドロキシナフタレンを生産するための方法を提供すること。
【解決手段】フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現し、かつ2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱した性質を有する微生物であって、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる芳香環水酸化オキシゲナーゼの大サブユニット蛋白質と小サブユニット蛋白質を発現している微生物を用いることによって、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料として2,3−ジヒドロキシナフタレンを製造できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規微生物、ならびに当該微生物を用いてエポキシ樹脂の原料や染料・医薬品の合成原料として有用な2,3−ジヒドロキシナフタレンを安価な3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料として製造する方法に関する。
2,3−ジヒドロキシナフタレンは、エポキシ樹脂の原料、ジアゾ型複写材料、感熱記録媒体、静電荷現像用トナー、その他医薬の合成原科として有用なことが知られている。2,3−ジヒドロキシナフタレンの工業的製法としては、2−ナフトールから化学合成によって得た2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウムを希硫酸中で加熱する方法が知られているが、多段階の合成反応を必要とすることから、製造コストが高くなるという問題点がある〔非特許文献1〕。
微生物を用いたジヒドロキシナフタレンの生産については、ナフタレン・ジオキシゲナーゼとナフタレン1,2−ジヒドロジオール・デヒドロゲナーゼを発現している大腸菌を用いてナフタレンを原料として1,2−ジヒドロキシナフタレンを生産できることが知られている〔非特許文献2〕。アントラセンを分解する微生物がアントラセンを3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸と2,3−ジヒドロキシナフタレンを経由して代謝することが知られている〔非特許文献3〕。しかしながら、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を2,3−ジヒドロキシナフタレンに転換する酵素は単離されていない。バシラス・サーモレオボランス(Bacillus thermoleovorans)がナフタレンを2,3−ジヒドロキシナフタレンを経由して代謝することが知られているが、2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成する酵素は単離されていない〔非特許文献4〕。また、これらの代謝経路に関わる酵素を利用した工業的生産に適した2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法については報告されていない。
FUNDAMENTAL PROCESSES OF DYE CHEMISTRY、HANS EDUARD FIERZ-DAVIDand Louis BLANGEY共著、INTERSCIENCE PUBLISHERS LTD., LONDON (1949) Tetrahedron Letters, Vol. 38, No. 35, p.6267-6270 (1997) Biodegradation, Vol. 3, p..351-368 (1992) Ap.l. Environ. Microbiol., Vol. 66, No. 2, p..518-523 (2000) J. Ind. Microbiol. Biotechnol. Vol. 23, p.284-293 (1999) Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol. 327, p.656-6621 (2005) J. Bacteriol., Vol. 181, No. 9, p..2675-2682 (1999) Appl. Environ. Microbiol., Vol. 67, No. 6, p.2507-2514 (2001)
本発明の課題は、安価な3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料として2,3−ジヒドロキシナフタレンを生産するための方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アントラセン資化能を
有するグラム陰性細菌であるスフィンゴモナス・ヤノイクヤエ(Sphingomonas yanoikuyae)B1株〔非特許文献5〕がアントラセンを代謝することにより2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成することを見い出した。
続いて、ナショナル・センター・フォア・バイオテクノロジー・インフォメーション(以下、NCBIと略記する)のジェンバンク(GenBank;以下、GBと略記する)データベースから、アクセッション番号NZ_JGVR00000000.1 として得たスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株のゲノム配列情報を解析し、配列番号2に示すアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号KFD28101.1)に示す芳香環水酸化ジオキシゲナーゼ・大サブユニットと相同性を有する蛋白質(以下、オキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質という)をコードする配列番号1に示すDNA、および配列番号6に示すアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号KFD28100.1)の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼ・小サブユニットと相同性を有する蛋白質(以下、オキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質という)をコードする配列番号5に示すDNAをクローニングした。これら2種類の蛋白質は、それぞれ芳香環水酸化ジオキシゲナーゼの大サブユニット蛋白質および小サブユニット蛋白質と相同性を有するが、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の2位を水酸化するモノオキシゲナーゼ反応を行うことが知られていることから、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼでなく、芳香環水酸化オキシゲナーゼと呼ぶことにする〔非特許文献6〕。
続いて、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli;以下、適宜「大腸菌」と呼ぶ)K12株を宿主として、組換えDNA技術を用いてこれら2種類の蛋白質を発現する菌株を構築した。該菌株を培養し、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を加えたところ、該菌株菌が2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成することがわかった。さらに、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生成量を増大させるために、スフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株の配列番号10に示すアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号KFD28099.1)に示すフェレドキシン蛋白質をコードする配列番号9に示すDNA、および配列番号14に示すアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号KFD28072.1)のフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードする配列番号13に示すDNAをクローニングした後、これら2種類の蛋白質をオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質とオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質とともに発現する大腸菌株を構築した。該大腸菌株を培養し、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を加えたところ、著量の2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成することがわかった。これらの結果から、これら2種類の蛋白質は1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から1,2−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わることが知られていたが、予期せぬことに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を2,3−ジヒドロキシナフタレンに転換する機能を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(8)に関する。
(1)フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現し、かつ2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱した性質を有する微生物であって、以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)に示すDNA、ならびに以下の(f)、(g)、(h)、(i)または (j)に示すDNAを保有し、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンを生産する能力を有する微生物
(a)配列番号2または4に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(b)配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(c)配列番号2または4に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレ
ンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(d)配列番号1または3に示される塩基配列からなるDNA。
(e)配列番号1または3に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(f)配列番号6または8に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(g)配列番号6または8に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(h)配列番号6または8に示されるアミノ酸配列と67%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(i)配列番号5または7に示される塩基配列からなるDNA。
(j)配列番号5または7に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(2)フェレドキシン蛋白質および/またはフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードする組換えDNAを導入することにより該蛋白質を発現させることを特徴とする前記(1)に記載の微生物。
(3)フェレドキシン蛋白質が以下の(k)、(l)、(m)、(n)または(o)に示すDNAがコードする蛋白質であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の微生物。
(k)配列番号10または12に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(l)配列番号10または12に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつ電子伝達機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(m)配列番号10または12に示されるアミノ酸配列と38%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ電子伝達機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(n)配列番号9または11に示される塩基配列からなるDNA。
(o)配列番号9または11に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ電子伝達機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(4)フェレドキシン・レダクターゼ蛋白質が以下の(p)、(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAがコードする蛋白質であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の微生物。
(p)配列番号14または16に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
(q)配列番号14または16に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフェレドキシン蛋白質を還元する機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(r)配列番号14または16に示されるアミノ酸配列と33%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつフェレドキシン還元活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(s)配列番号13または15に示される塩基配列からなるDNA。
(t)配列番号13または15に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフェレドキシン蛋白質を還元する機能を有する蛋白質をコードするDNA。
(5)本来的に2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する酵素蛋白質をコードするDNAを持たないことを特徴とする前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の微生物。
(6)変異導入処理または組換えDNA技術を用いて、2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱するように改変された前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の微生物。
(7)前記(1)から(6)のいずれか1項に記載の微生物を3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含有する培地中で3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸と反応させることにより、該培地中に2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成、蓄積させ、該培地から2,3−ジヒドロキシナフタレンを採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法。
(8)前記(1)から(6)のいずれか1項に記載の微生物の培養物または該培養物の処理物および3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を水性媒体中で混合させることにより、該媒体中に2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成、蓄積させ、該媒体から2,3−ジヒドロキシナフタレンを採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法。
本発明によれば、フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現し、かつ2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱した性質を有する微生物であって、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる2種類の蛋白質(オキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質およびオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質)を発現する微生物を用いて、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料として2,3−ジヒドロキシナフタレンを安価に製造する方法を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質としては、たとえばスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株由来の配列番号2のアミノ酸配列を有する蛋白質、またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)F199株由来の配列番号4のアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号AAD04009.1)を有する蛋白質があげられる。また、本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質としては、配列番号2または4のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、配列番号2の蛋白質と配列番号4の蛋白質間のアミノ酸配列の同一性は80%であることから、本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質としては、配列番号2または4のアミノ酸配列と80%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。
ここで、「3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能」とは、フェレドキシン蛋白質とフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現する微生物に、当該オキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質をオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質とともに発現させたときに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成しうる機能を意味する。
本発明で用いられるオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質としては、たとえばスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株由来の配列番号6のアミノ酸配列を有する蛋白質、または
ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来の配列番号8のアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号AAD04008.1)を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質としては、配列番号6または8のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。また、配列番号6の蛋白質と配列番号8の蛋白質間のアミノ酸配列の同一性は67%であることから、本発明のオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質としては、配列番号6または8のアミノ酸配列と67%以上の同一性、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をあげることができる。
ここで、「3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能」とは、フェレドキシン蛋白質とフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現する微生物に、当該オキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質とともに発現させたときに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成しうる機能を意味する。
芳香環水酸化ジオキシゲナーゼは、活性中心の非ヘム鉄、および電子伝達系から電子を受け取るためのリスケ(Rieske)型クラスターを含んでいる。本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質とオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質からなる芳香環水酸化オキシゲナーゼの場合には、NAD(P)Hから電子を受け取るフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質、およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質による還元反応により電子を受け取るフェレドキシン蛋白質が電子伝達系を構成している。そして、フェレドキシン蛋白質が受け取った電子がリスケ(Rieske)型クラスターに伝達され、酸化反応に利用される。
本発明で用いられるフェレドキシン蛋白質としては、たとえばスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株由来の配列番号10のアミノ酸配列を有する蛋白質、またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来の配列番号12のアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号AAD04007.1)を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるフェレドキシン蛋白質としては、配列番号10または12のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ本発明の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼへの電子伝達機能を有する蛋白質をあげることができる。配列番号10の蛋白質と配列番号12の蛋白質間のアミノ酸配列の同一性は82%である。また、後述の実施例で示すように、大腸菌K−12株が持つフェレドキシン蛋白質でも、本発明の芳香環水酸化オキシゲナーゼに対して電子伝達を行うことができる。大腸菌K−12株が持つフェレドキシン蛋白質の中で、配列番号10の蛋白質と配列番号12の蛋白質に対してアミノ酸配列において相同性が高い蛋白質は、GBアクセッション番号NP_417035.1のアミノ酸配列を持つフェレドキン蛋白質であるが、その同一性はそれぞれ40%、38%である。したがって、本発明で用いられるフェレドキシン蛋白質としては、配列番号10または12のアミノ酸配列と38%以上の同一性、好ましくは82%以上、特に好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ本発明の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼに電子を伝達する機能を有する蛋白質をあげることができる。一般に、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼのリスケ型クラスターに電子を伝達するフェレドキシン蛋白質も1種類と限らず、互いに相同性が低いフェレドキシン蛋白質でも、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼのリスケ型クラスターへの電子伝達機能を有することが知られている。たとえば、本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質とオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質を大腸菌K12株に発現させたときに、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンが生成することを確認できている。
本発明で用いられるフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質としては、たとえばスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株由来の配列番号14のアミノ酸配列を有する蛋白質、またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来の配列番号16のアミノ酸配列(NCBIのGBのアクセッション番号AAD03978.1)を有する蛋白質があげられる。また、本発明で用いられるフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質としては、配列番号14または16のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ本発明の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼへの電子伝達機能を有する蛋白質をあげることができる。配列番号14の蛋白質と配列番号16の蛋白質間のアミノ酸配列の同一性は78%である。また、後述の実施例で示すように、大腸菌K−12株が持つフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質でも、本発明の芳香環水酸化オキシゲナーゼに対して電子伝達を行うことができる。大腸菌K−12株が持つフェレドキシン蛋白質の中で、配列番号14の蛋白質と配列番号16の蛋白質に対してアミノ酸配列において相同性が高い蛋白質は、GBアクセッション番号NP_417037.1のアミノ酸配列を持つフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質であるが、その同一性はそれぞれ33%、34%である。したがって、本発明で用いられるフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質としては、配列番号14または16のアミノ酸配列と33%以上の同一性、好ましくは78%以上、特に好ましくは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ本発明の芳香環水酸化オキシゲナーゼに電子を伝達する機能を有する蛋白質をあげることができる。
上記のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質またはオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質、ならびに上記のフェレドキシン蛋白質またはフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質においてまたは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ電子伝達機能を有する蛋白質は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Res., 10, 6487 (1982)、Proc. Natl.
Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Res., 13,
4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、たとえば配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質において特定の位置に欠失、置換もしくは付加が導入されるように、それぞれコードする配列番号1、3、5、7、9、11、13または15に表わされるDNAに部位特異的変異を導入することにより取得することができる。欠失、置換または付加される1または数個というアミノ酸の数は、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能または電子伝達機能が維持される限り特に限定されないが、配列番号2、4、6、8、10、12、14または16のアミノ酸配列との違いの個数以内であることが望ましく、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個が特に好ましい。
本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質をコードするDNAとしては、たとえば、配列番号1または3で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明のオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするDNAとしては、たとえば、配列番号5または7で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるフェレドキシン蛋白質をコードするDNAとしては、たとえば、配列番号9または11で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明で用いられるフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードするDNAとしては、たとえば、配列番号13または15で表される塩基配列を有するDNAがあげられる。
本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質またはオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするDNAには、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの変異が導入されたDNA、たとえば、配列番号1、3、5、または7に表わされるDNAの全部もしくは一部をプローブとして、ハイブリダイゼーション法によってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも包含する。
本発明で用いられるフェレドキシン蛋白質をコードするDNAには、本発明の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼへの電子伝達機能を失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの変異が導入されたDNA、たとえば、配列番号9または11に表わされるDNAの全部もしくは一部をプローブとして、ハイブリダイゼーション法によってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも包含する。
本発明で用いられるフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードするDNAには、本発明で用いられるフェレドキシン蛋白質を還元する機能を失わない範囲内で置換変異、欠失変異、挿入変異などの変異が導入されたDNA、たとえば、配列番号13または15に表わされるDNAの全部もしくは一部をプローブとして、ハイブリダイゼーション法によってストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも包含する。
ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7 〜1.0 M のNaClの存在下で65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1 倍濃度から2倍濃度までの間の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを意味する。なお、ハイブリダイゼーションの実験法は、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning, A laboratory manual)、第2版〔サンブルック(Sambrook)、フリッチ(Fritsch)、マニアチス(Maniatis)編集、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press) 、1989年刊〕に記載されている。
本発明の微生物としては、フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現し、かつ2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱した性質を有する微生物であって、オキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質をコードするDNAおよびオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするDNAを保有し、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を2,3−ジヒドロキシナフタレンへ転換する能力を有する微生物であれば、いずれの微生物を用いることができる。すなわち前記(1)記載の微生物を用いることができる。上記性質を有する微生物は、前記(1)に記載したDNAのうち1つ以上のDNAを組換え技術を用いて宿主細胞に導入した形質転換体であってもよい。また、前記(1)に記載したフェレドキシン蛋白質および/またはフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質については、該蛋白質をコードする組換えDNAを導入することにより該蛋白質を発現させた形質転換体であってもよい。
本発明の微生物が、スフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株のように、本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質および、オキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質、ならびにフェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をそれぞれコードするDNAを有している場合には、該蛋白質をコードする組換えDNAを導入することにより該蛋白質を発現させる方法だけでなく、ゲノムDNA中に変異を導入し、これら蛋白質の発現量を増大させること、またはこれらのタンパク質をコードするゲノムDNAの天然プロモーターを強力なプロモーターに置換することによっても、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへ転換する能力を向上させることができる。
本発明の微生物は、2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱した性質を有する。大腸菌12株などは、野生型菌株が本来的に2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力を欠損しているが、当該性質は本発明の微生物の必要条件である。一方、スフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株のように、2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力を有している場合には、2,3−ジヒドロキシナフタレンの分解または修飾に関わる酵素蛋白質をコードするDNAに変異を導入することにより、2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力を欠損または減弱させる必要がある。減弱としては、微生物の2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力を、改変前の10%以下に減弱させることが好ましく、改変前の1%以下に減弱させることが好ましい。または、組換え技術などを用いて2,3−ジヒドロキシナフタレンの分解または修飾に関わる酵素蛋白質をコードするDNAの転写に関わるプロモーターへの変異導入、または当該蛋白質の翻訳開始領域への変異導入、またはアンチセンスRNA法により、当該蛋白質の発現を欠損または減弱させること、または遺伝子破壊により2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱するように改変してもよい。
本発明の微生物が形質転換体である場合は、モレキュラー・クローニング第2版に記載の方法にしたがって組換えDNAを作製し、該組換えDNAを用いて宿主細胞を形質転換することにより取得することができる。以下に、DNAのクローニングと形質転換体の作製方法について詳しく述べる。なお、その他の形質転換体も同様の方法により取得することができる。
上記のスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株をスフィンゴモナス属細菌またはノボスフィンゴビウム属細菌の培養に通常用いられる公知の方法により培養する。培養後、公知の方法(たとえば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の方法)により、該微生物の染色体DNAを単離・精製する。この染色体DNAから合成DNAを用いて、ハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有するオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質およびオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするDNAを含む断片、ならびに芳香環水酸化ジオキシゲナーゼに電子を伝達する機能を有するフェレドキシン蛋白質をコードするDNAを含む断片、ならびにフェレドキシン蛋白質を還元する機能を有するフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードするDNAを含む断片を取得することができる。
該合成DNAは、スフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質をコードするDNAの配列番号1または3で表される塩基配列、およびスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来のオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするDNAの配列番号5または7で表される塩基配列、およびスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来のフェレドキシン蛋白質をコードするDNAの配列番号9または11で表される塩基配列、およびスフィンゴモナス・ヤノイクヤエB1株またはノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来のフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードするDNAの配列番号13または15で表される塩基配列に基づいて設計することができる。
上記DNAを連結するベクターとしては、大腸菌K12株などにおいて自立複製可能なベクターであればプラスミドベクター、ファージベクター等いずれも使用可能であるが、具体的には、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイア
グノスティクス社製)、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 58 (1992)〕、pBluescript II SK(+)〔ストラタジーン社製、Nucleic Acids Res., 17, 9494 (1989)〕、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
該ベクターに上記で取得したDNAを連結して得られる組換えDNAの宿主に用いる大腸菌(エシェリヒア・コリ)は、エシェリヒア・コリに属する微生物であればいずれでも用いることができるが、具体的には、エシェリヒア・コリK−12株から派生した菌株であるエシェリヒア・コリMG1655〔Science, 277, 1453 (1997)〕、エシェリヒア・コリ XL1-Blue MRF'〔ストラタジーン社製、Strategies, 5, 81 (1992)〕、エシェリヒア・コリC600〔Genetics, 39, 440 (1954)〕、エシェリヒア・コリJM105〔Gene, 38, 275 (1985)〕、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリBL21等をあげることができる。
ロドコッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属またはラルストニア(Ralstonia)属、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する微生物の中に、上記DNAを導入するときは、これら微生物の中で自立複製可能なベクターを用いる。好ましくは、該微生物のいずれかと大腸菌K12株の両方の微生物の中で自立複製可能なシャトル・ベクターを用いて、組換えDNAを宿主となる該微生物に導入することができる。
組換えDNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、たとえば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕等をあげることができる。
上記のようにして得られた形質転換体から組換えDNAを抽出し、該組換えDNAに含まれる本発明のDNAの塩基配列を決定することができる。塩基配列の決定には、通常用いられる塩基配列解析方法、たとえばジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)〕または3730xl型DNAアナライザー(アプライド・バイオシステムズ社製)等の塩基配列分析装置を用いることができる。
また、上記において決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することによっても目的とするDNAを調製することもできる。
上記のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質、オキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質、フェレドキシン蛋白質および/またはフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現する形質転換体は、下記の方法を用いて上記のDNAを宿主細胞中で発現させることによって得られる。
上記蛋白質をコードするDNAを用いる際には、必要に応じて、本発明の蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製することができる。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主の発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、該蛋白質の生産率を向上させることもできる。本発明のDNAを発現する形質転換体は、上記DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えDNAを作製し、該組換えDNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより取得することができる。
本発明の蛋白質を発現させる宿主としては、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。好ましくは、フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現しており、かつ2,3−ジヒドロキシナフタレンの代謝能を欠損または減弱している性質を有する微生物を用いることができる。より好ましくは、該性質を有するエシェリヒア属、ロドコッカス属、アシネトバクター属、ブラディリゾビウム属、コリネバクテリウム属、シュードモナス属、ロドシュードモナス属、シノリゾビウム属、ブレビバクテリウム属、ノボスフィンゴビウム属、ラルストニア属またはスフィンゴモナス属の細菌をあげることができる。さらに好ましくは、エシェリヒア・コリK12株をあげることができる。
このような宿主微生物に本発明のオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質とオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質を発現させることにより作製した本発明の微生物を用いることにより、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンを製造することができる。すなわち本発明の微生物を3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含有する培地中に加えて3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸と反応させることにより、2,3−ジヒドロキシナフタレンを得ることができる。
また、このような本発明の微生物を増殖させて、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を細胞内に取り込ませて2,3−ジヒドロキシナフタレンを製造する場合には、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の輸送(取り込み)能を有する微生物を用いることが好ましい。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、本発明のDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のDNAを含有してなる組換えDNAは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、本発明のDNA、転写終結配列、より構成された組換えDNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
本発明の蛋白質、または該蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質をコードするDNAを大腸菌などの微生物に導入し、発現するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有するプラスミド、たとえばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。より具体的には、ベクターとしては、たとえば、pUC19〔Gene, 33, 103 (1985)〕、pUC18、pBR322、pHelix1(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)、pKK233-2(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(+)(ストラタジーン社製)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)等を用いることができる。
プロモーターとしては、大腸菌等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。たとえば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター等の、T7プロモーターなどの大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、およびtacプロモーター、lacT7プロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等、およびシュードモナス・プチダのTOLプラスミドのXylS蛋白質により制御されるPmプロモーターを用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(たとえば5〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。本発明の組換えDNAにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
組換えDNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、たとえば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972) 〕、エレクトロポレーション法〔Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)〕、接合伝達法〔J. G. C. Ottow, Ann. Rev.Microbiol., Vol.29, p.80 (1975)〕、細胞融合法〔M.H. Gabor, J. Bacteriol., Vol.137, p.1346 (1979)〕等をあげることができる。
組換えDNA技術などを用いて、上記いずれか1つ以上の蛋白質の生産量を野生株と比較して増強した微生物を作製し、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産量を上げることもできる。具体的には、上記いずれかの蛋白質をコードする遺伝子を発現させるためのプロモーターとして天然のプロモーターよりも転写活性が強いプロモーターを用いる、あるいは該蛋白質をコードする遺伝子の転写を終結するためのターミネーターとして天然のターミネーターよりも転写終結活性が強いターミネーターを用いる、あるいは発現ベクターとして高コピー数ベクターを利用すること、相同組換えで染色体上に組み込むことなどがあげられる。
以上のようにして得られる本発明の2,3−ジヒドロキシナフタレン生産微生物を、好ましくは0.1 mM〜1 Mの3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含有する培地で培養し、培養物中に2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、2,3−ジヒドロキシナフタレンを製造することができる。本発明の微生物を培地に培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
本発明の微生物の培養は、炭素源、窒素源、無機塩、各種ビタミン等を含む通常の栄養培地で行うことができ、炭素源としては、たとえばブドウ糖、ショ糖、果糖等の糖類、エタノール、メタノール等のアルコール類、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸類、廃糖蜜等が用いられる。窒素源としては、たとえばアンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等がそれぞれ単独または混合して用いられる。また、無機塩としては、たとえばリン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。この他にペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンステイープリカー、カザミノ酸、ビオチン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することができる。2,3−ジヒドロキシナフタレンを生産するための原料としては、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を添加する。
培養は、通常、通気攪拌、振とう等の好気条件下で行う。培養温度は、本発明の微生物が生育し得る温度であれば特に制限はなく、また、培養途中のpHについても本発明の微生物が生育し得るpHであれば特に制限はない。培養中のpH調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。
本発明の2,3−ジヒドロキシナフタレン生産微生物を培養した後、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含む水性媒体中に、該微生物の培養物もしくは該培養物の処理物を加えることにより、該媒体中に2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成、蓄積させ、該媒体から2,3−ジヒドロキシナフタレンを採取することもできる。
該培養物の処理物として、本発明の微生物を担体に固定化したものを用いてもよい。その場合には、培養物から回収されたまま、あるいは適当な緩衝液、たとえば0.02〜0.2 M程
度のリン酸緩衝液(pH6〜10)等で洗浄された菌体を使用することができる。また、培養物から回収された菌体を、超音波、圧搾等の手段で破砕して得られる破砕物、該破砕物を水等で抽出して得られる本発明の蛋白質を含有する抽出物、該抽出物を更に硫安塩析、カラムクロマトグラフィー等の処理を行って得られる本発明の蛋白質の部分精製成分等を担体に固定化したものも、本発明の2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造に使用することができる。
これら菌体、菌体破砕物、抽出物または精製酵素の固定化は、それ自体既知の通常用いられている方法に従い、アクリルアミドモノマー、アルギン酸、またはカラギーナン等の適当な担体に菌体等を固定化させる方法により行うことができる。
反応に用いる水性媒体は、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含有する水溶液または適当な緩衝液、たとえば0.02〜0.2 M程度のリン酸緩衝液(pH6〜10)とすることができる。この水性媒体には、さらに菌体の細胞膜の物質透過性を高める必要のあるときには、トルエン、キシレン、非イオン性界面活性剤等を0.05〜2.0%(w/v)添加することもできる。
水性媒体中の反応原料となる3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の濃度は、0.1 mM〜1 M程度が適当である。上記の水性媒体における酵素反応温度およびpHは特に限定されないが、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃が適当であり、反応液中のpHは通常5〜10、好ましくは6〜9付近とすることができる。また、pHの調整は、酸またはアルカリを添加して行うことができる。発明で使用する酵素は、菌体抽出液をそのまま、またはそれから遠心分離、濾過等で集め、これを水または緩衝液に懸濁して得ることができる。このようにして得られた酵素を3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の存在下、反応させるが、反応液中の3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の濃度は酵素の活性を阻害しない範囲で可能な限り高くするのが有利である。反応は静置、攪拌、振盪のいずれの方法で行ってもよい。また、酵素を適当な支持体に固定化してカラムに充填し、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含む溶液を流す方法も利用できる。反応は、通常10〜60℃、好ましくは15〜50℃、pH5〜9、好ましくはpH6〜9で行う。
また、上記水性媒体に、反応時に抗酸化剤または還元剤を添加すると、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生成収率が一層向上する場合がある。抗酸化剤/還元剤としては、アスコルビン酸、イソアルコルビン酸、システイン、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリムなどのチオ硫酸塩が挙げられる。添加濃度は、抗酸化剤/還元剤の種類によって異なるが、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜5%(W/V)、好ましくは0.005〜1%である。
また、上記水性媒体に、反応時に酸化剤を添加すると、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生成収率が一層向上する場合がある。酸化剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の硝酸塩、塩化第二鉄等の金属塩、ハロゲン、ペルオクソ酸等が挙げられ、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、塩化第二鉄が挙げられる。添加濃度は、酸化剤の種類によって異なるが、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生成を阻害しない濃度で加えることが望ましく、通常0.001〜0.05%(W/V)、好ましくは0.005〜0.02%である。
培養終了後の培養液または反応液中からの2,3−ジヒドロキシナフタレンは、酢酸エチル等の有機溶剤によって抽出することにより単離・精製することができる。また、必要に応じて遠心分離等により該培養液から菌体等の不溶成分を除いた後、たとえば、活性炭を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、結晶化法、蒸留法、沈殿法等の方法を単独でまたは組み合わせることによって2,3−ジヒドロキシナフタレンを採取することができる。
以下に本発明の方法を実施例により具体的に述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1.外来のフェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現させていない大腸菌K−12株での2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産
(1)染色体DNAの単離・精製
独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンターが運営するJapan Collection of Microorganismsより、スフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株(菌株番号:JCM30198)を入手し、apan Collection of Microorganismsから提供された情報にしたがって培養した。続いて、培養した菌体からDNA精製キット(illustra bacteria genomicPrep Mini Spin Kit;GEヘルスケア社製)を用いて染色体DNAを単離・精製した。
(2)スフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株由来の芳香環水酸化酵素を発現する大腸菌株の構築
NCBIのGBデータベースよりスフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株由来のオキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするbphA2c遺伝子(配列番号3)とオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質をコードするbphA1c遺伝子(配列番号1)の塩基配列データをインターネット経由で取得し、bphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を含むDNAを増幅するためのプライマー(配列番号17と18)を設計した。各PCRプライマーの合成は株式会社ファスマックに外注した。PCRプライマーなどの合成DNAの調製は特記しない限り株式会社ファスマックに外注することにより行った。上記で得た染色体DNAを鋳型にし、配列番号17と18のDNAプライマーを用いて、PrimeStar DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いて添付の説明書に従ってbphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を含むDNAを増幅した。続いて、上記で得られたbphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を含むDNAを、大腸菌発現ベクターであるpUXPEaLT19(特開2014−50373を参照)のPacI部位とNotI部位の間に挿入することにより、bphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を発現するプラスミドpUXPEaLT_bphA21cを得た。上記で得たプラスミドpUXPEaLT_bphA21cを大腸菌JM109株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pUXPEaLT_bphA21c/JM109を構築した。
(3)大腸菌lacZ遺伝子を発現する大腸菌株の構築
3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の水酸化とは関係のない遺伝子である大腸菌MG1655株のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(以下、lacZ遺伝子と略記する)を対照実験に用いることにした。lacZ遺伝子の塩基配列としてはNCBIのGBデータベースからアクセッション番号 JF300162の塩基番号1〜3075の配列を得て、この配列をもとにlacZ遺伝子をクローニングするためにPCRプライマー(配列番号19と20)を設計し、合成した。国立遺伝学研究所・ナショナルバイオリソースプロジェクト大腸菌より入手した大腸菌MG1655株をLB液体培地〔10 g/l トリプトン(Difco社製)、5 g/l 乾燥酵母エキス(Difco社製)、10 g/l 塩化ナトリウム〕に接種し、37℃で一晩振とう培養を行った。集菌した菌体をもとに、illustra bacteria genomicPrep Mini Spin Kit(GE healthcare社製)を用いて大腸菌染色体DNAを調製した。
上記(1)で得た染色体DNAを鋳型とし、PrimeSTAR DNAポリメラーゼとPCRプライマー(配列番号19と20)を用いて添付の説明書に従ってlacZ遺伝子のDNAを増幅させた。このPCR増幅産物を精製し、制限酵素PacIと制限酵素NotIで消化した後、大腸菌発現ベクターpUXPEaLT19のPacI部位とNotI部位の間に挿入することにより、lacZ遺伝子を発現するプラスミドpUXPEaLT_lacZを得た。次に、プラスミドpUXPEaLT_lacZを大腸菌JM10
9株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pUXPEaLT_lacZ/JM109を構築した。
(4)上記大腸菌株を用いた2,3―ジヒドロキシナフタレンの生産
上記で構築したpUXPEaLT_bphA21c/JM109株およびpUXPEaLT_lacZ/JM109株をそれぞれ100 mg/Lのアンピシリンを含む0.5 mlのLB液体培地で一晩培養した後、培養液を100 mg/Lのアンピシリンを含むLB液体培地4 mlに1%接種し、32℃で培養を行った。対数増殖期にm−トルイル酸を終濃度1 mMになるよう添加した後、32℃で3時間培養を続けた。培養菌体を10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で2回洗浄した後、菌体を2%グルコースと1 mMの3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含む10mMリン酸カリウム緩衝液100μlに懸濁した。なお、菌体濃度は吸光度600nmで10.0となるように調整した。
この菌体懸濁液を30℃、1000 rpmの条件で18時間反応させた。反応液を遠心分離(室温、1分、15000×g)にかけた後、上清50μlを新しい1.5 mLチューブに移し、1N塩酸5μlと酢酸エチル250μlを加え、良く混和した。遠心分離後、上層液200μlをとり、新しい1.5 mLチューブに移した。この上層液を減圧乾燥器内に置くことにより得られた乾固物を2%アセトニトリルに溶解した。この溶解液中の有機化合物を、表1に示す高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分離条件でLC-TOF型質量分析計(Waters社、LCT Premier XE)を用いて分析した。標品の2,3−ジヒドロキシナフタレンと比較して、高速液体クロマトグラフィーの保持時間と質量分析計からの質量値を合わせて生産された2,3−ジヒドロキシナフタレンを同定した。
Figure 2016146779
その結果、表2に示すように、pUXPEaLT_bphA21c/JM109株において約8μMの2,3−ジヒドロキシナフタレンが検出された。一方、lacZ遺伝子を発現するpUXPEaLT_lacZ/JM109株では2,3−ジヒドロキシナフタレンは検出されなかった。したがって、外来のフェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現させていない大腸菌K12株にbphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を発現させることによって、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンが生産されることが明らかとなった。
Figure 2016146779
実施例2.オキシゲナーゼ大サブユニット蛋白質、オキシゲナーゼ小サブユニット蛋白質、フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現させた大腸菌における2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産
(1)スフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株由来の2,3−ジヒドロキシナフタレン生産に関わる3種類の蛋白質を発現する大腸菌株の構築
スフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株のフェレドキシン蛋白質をコードするbphA3遺伝子(GBアクセッション番号JPOU01000022.1の塩基番号151095〜151421)の塩基配列データ(配列番号9)をNCBIのGBデータベースよりインターネット経由で取得し、bphA3遺伝子を含むDNAを増幅するためのプライマー(配列番号21)を設計し、合成した。続いて、実施例1(1)で得た染色体DNAを鋳型にし、配列番号18と21のDNAプライマーを用いて、添付の説明書に従ってPrimeStar DNAポリメラーゼ(タカラバイオから購入)を用いて、bphA3遺伝子、bphA2c遺伝子およびbphA1c遺伝子を含むDNAを増幅させた。
上記で得られたbphA3遺伝子とbphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を含むDNAを大腸菌発現ベクターpUXPEaLT19のPacI部位とNotI部位の間に挿入することにより、bphA3遺伝子とbphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子を発現するプラスミドpUXPEaLT_bphA321cを得た。
上記で得たプラスミドpUXPEaLT_bphA321cを大腸菌JM109株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pUXPEaLT_bphA321c/JM109を構築した。
(2)スフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株由来の2,3−ジヒドロキシナフタレン生産に関わる4種類の蛋白質を発現する大腸菌株の構築
スフィンゴビウム・ヤノイクヤエB1株のフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードするbphA4遺伝子(JPOU01000022.1の塩基番号124178〜125404の相補鎖)の塩基配列データ(配列番号11)をNCBIのGBデータベースよりインターネット経由で取得し、bphA4遺伝子を含むDNAを増幅するためのプライマー(配列番号22と23)を設計し、合成した。続いて、実施例1(1)で得た染色体DNAを鋳型とし、配列番号22と23のDNAプライマーを用いて、添付の説明書に従ってPrimeStar DNAポリメラーゼを用いて増幅させた。Taq DNAポリメラーゼによって増幅DNA断片の3’末端にA残基を付加した後、該増幅DNA断片をゲル電気泳動法により精製し、pT7Blue-Tベクター(ノバジェン社製)に組み込むことによりプラスミドpT7_bphA4_B1を構築した。
プラスミドpT7_bphA4_B1から制限酵素SwaIと制限酵素NotIによりフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードするDNAを切り出し、該DNAを上記で得たプラスミドpUXPEaLT_bphA321cのPmeI部位とNotI部位の間に挿入することにより、bphA3遺伝子、bphA2c遺伝子、bphA1c遺伝子およびbphA4遺伝子を発現するプラスミドpUXPEaLT_bphA321c_A4を得た。続いて、プラスミドpUXPEaLT_bphA321c_A4を大腸菌JM109株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pUXPEaLT_bphA321c_A4/JM109を構築した。
(3)上記大腸菌株を用いた2,3―ジヒドロキシナフタレンの生産
上記で構築したpUXPEaLT_bphA321c/JM109株、pUXPEaLT_bphA321c_A4/JM109株およびpUXPEaLT_lacZ/JM109株について、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料とする2,3−ジヒドロナフタレンの生産性の評価を実施した。生産性評価は実施例1と同様に行った。
その結果、表3に示すように、pUXPEaLT_bphA321c/JM109株、pUXPEaLT_BphA321c_A4/JM109株ではそれぞれ290μMと830μMの2,3−ジヒドロナフタレンの生産が確認された。一方、lacZ遺伝子を発現するpUXPEaLT_lacZ/JM109株では2,3−ジヒドロナフタレンは検出されなかった。
Figure 2016146779
実施例3.ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス F199株の芳香環水酸化酵素を用いた2,3―ジヒドロキシナフタレンの生産
(1)ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス F199株の染色体DNAの単離・精製
ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス F199株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手した(ATCC 700278)。続いて、ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス F199株を培養して得た菌体から染色体DNAを単離・精製した。
(2)ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来の2,3−ジヒドロキシナフタレン生産に関わる3種類の蛋白質を発現する大腸菌株の構築
ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来のフェレドキシン蛋白質をコードするbphA3遺伝子(配列番号11)、オキシゲナーゼ・小サブユニット蛋白質をコードするbphA2c遺伝子(配列番号7)およびオキシゲナーゼ・大サブユニット蛋白質をコードするbphA1c遺伝子(配列番号3)を含むDNA領域(GBアクセッション番号CP000676.1の塩基番号33613〜35714)の塩基配列データをインターネット経由で取得し、bphA3遺伝子、bphA2c遺伝子およびbphA1c遺伝子を含むDNAを増幅するためのプライマー(配列番号24と25)を設計し、合成した。ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス
F199株由来のbphA3遺伝子、bphA2c遺伝子およびbphA1c遺伝子を含むDNAを、上記で得た染色体DNAを鋳型にし、配列番号24と25のプライマーを用いたPCR法により増幅させた。
このようにして得られたbphA3遺伝子、bphA2c遺伝子およびbphA1c遺伝子を含むDNAを、大腸菌発現ベクターpUXPEaLT19のPacI部位とNotI部位の間に挿入することにより、bphA3遺伝子、bphA2c遺伝子およびbphA1c遺伝子を発現するプラスミドpUXPEaLT_bphA321c_F199を得た。プラスミドpUXPEaLT_bphA321c_F199を大腸菌JM109株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pUXPEaLT_bphA321c_F199/JM109を構築した。
(3)ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランスF199株由来の2,3−ジヒドロキシナフタレン生産に関わる4種類の蛋白質を発現する大腸菌株の構築
NCBIのGBデータベースよりノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス F199株由来のフェレドキシン・レダクターゼ遺伝子であるbphA4遺伝子(GBアクセッション番号CP000676.1の塩基番号4755〜5981の相補鎖の塩基配列データ(配列番号15)をインターネット経由で取得し、bphA4を増幅するためのプライマー(配列番号26と27)を設計し、合成した。bphA4遺伝子を、実施例1(1)で得た染色体DNAを鋳型とし、配列番号26と27のプライマーを用いて、添付の説明書に従ってPrimeStar DNAポリメラーゼ(タカラバイオから購入)を用いて増幅させた。Taq DNAポリメラーゼによって増幅DNA断片の3’末端にA残基を付加した後、該増幅DNA断片をゲル電気泳動法により精製し、pT7Blue-Tベクター(ノバジェン社製)に組み込むことによりプラスミドpT7_bphA4_F199を構築した。
プラスミドpT7_bphA4_F199から制限酵素SwaIと制限酵素NotIによりレダクターぜ酵素蛋白質をコードするDNAを切り出し、上記で得たプラスミドpUXPEaLT_bphA321c_F199のPmeI部位とNotI部位の間に挿入することにより、bphA3遺伝子、bphA2c遺伝子、bphA1c遺伝子、bphA4遺伝子を発現するプラスミドpUXPEaLT_bphA321c_A4_F199を得た。
上記で得たプラスミドpUXPEaLT_bphA321c_A4_F199を大腸菌JM109株にカルシウムイオンを用いる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pUXPEaLT19_bphA321c_A4_F199/JM109を構築した。
(4)上記形質転換株を用いた2,3―ジヒドロキシナフタレンの生産
上記で構築したpUXPEaLT_BphA321c_F199/JM109株、pUXPEaLT_bphA321c_A4_F199/JM109株、pUXPEaLT_lacZ/JM109株およびpUXPEaLT_lacZ/JM109株について、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を原料とする2,3−ジヒドロナフタレンの生産性の評価を実施した。生産性評価は実施例1と同様に行った。
その結果、表4に示すように、pUXPEaLT_BphA321c_F199/JM109株とpUXPEaLT_BphA321c_A4_F199/JM109株ではそれぞれ190μMと310μMの2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産が確認された。一方、lacZ遺伝子を発現するpUXPEaLT_lacZ/JM109株では2,3−ジヒドロキシナフタレンは検出されなかった。したがって、ノボスフィンゴビウム・アロマティシボランス F199株のbphA2c遺伝子とbphA1c遺伝子の発現によって3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンが生産されることが明らかとなった。
Figure 2016146779
実施例4.オキシゲナーゼ大サブユニット蛋白質、オキシゲナーゼ小サブユニット蛋白質、フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現させたコリネバクテリウム属細菌における2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産
(1)コリネバクテリウム属細菌用発現ベクターpECsfの構築
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacteriumg/Lutamicum)ATCC13032株に外来遺伝子などをプラスミド状態で保持させるために用いる大腸菌−コリネバクテリウム用シャトル・ベクターとしてはコリネバクテリウム・グルタミカムATCC 13032株が保持するプラスミドpHM1519をもとに構築したpHCG100を用いた。プラスミドpHCG100の
構築方法およびコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株の情報は特開2014−188282に開示されている。
プラスミドpHCG100にPacIサイト、NotIサイト、転写終結配列およびSfiIサイトを付加するために配列番号28と29で表される2本の合成DNAを調製した。これら合成DNAとプラスミドpHCG100由来のBamHI-PvuIIのDNA断片(大きさ:約3.2 kb)およpびプラスミドpHCG100由来のClaIとBamHのDNA断片(大きさ:約1.7kb)を連結することにより、プラスミドpHCGPNを得た。
上記で得たプラスミドpHCGPNにSwaIサイト、転写終結配列、SbfIサイトを付加するために配列番号30と31で表される2本の合成DNAを合成した。これら合成DNAをプラスミドpHCGPNのBamHI部位とPacI部位の間に挿入することにより、プラスミドpECPNsfを得た。
続いて、プラスミドpECPNsfにXhoIサイト、転写終結サイト、SfiIサイトを付加するために配列番号32と33で表される2本の合成DNAを合成した。これら合成DNAをプラスミドpECPNsfのBamHI部位とSwaI部位の間に挿入することにより、コリネバクテリウム属細菌用発現ベクターpECsfを得た。
(2)gapプロモーターのクローニング
2,3−ジヒドロキシナフタレン生産に関わる4種類の蛋白質をコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株内で発現させるため、本菌株のgapプロモーターをクローニングすることにした。
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株のゲノム配列情報をNCBI・GBアクセッション番号NC_006958としてインターネット経由で取得した後、該菌株のgap遺伝子のプロモーター領域(以下、gapプロモーターと略す;塩基番号1685102〜1685581の480 bpの領域)の塩基配列(配列番号34)に基づいて、gapプロモーター領域を増幅するためにプライマー(配列番号35と36)を設計・合成した。配列番号35と36のDNAプライマーを用いて、上記で得た染色体DNAを鋳型にし、添付の説明書に従って増幅させた。このgapプロモーター領域のDNAを制限酵素SnaBIとPacIで消化した後に、プラスミドpECsfのSnaBI部位とPacI部位の間に挿入することにより、プラスミドpECsf_gapSを得た。
(3)2,3−ジヒドロキシナフタレン生産プラスミドの構築
実施例2(2)で得たプラスミドpUXPEaLT_bphA321c_A4から制限酵素PacIと制限酵素NotIにより切り出したbphA3遺伝子、bphA2c遺伝子、bphA1c遺伝子およびbphA4遺伝子をコードするDNAを、上記で得たプラスミドpECsfD_gapのPacI部位とNotI部位の間に挿入することにより、bphA3遺伝子、bphA2c遺伝子、bphA1c遺伝子およびbphA4遺伝子を発現するプラスミドpECsf_gapS_bphA321c_bphA4を得た。
上記で得たプラスミドpECsf_gapS_bphA321c_bphA4をコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株にエレクトロポレーションによる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pECsf_gapS_bphA321c_bphA4/ATCC 13032を構築した。
実施例1(3)で得たプラスミドpUXPEaLT_lacZから制限酵素PacIと制限酵素NotIにより切り出したlacZ遺伝子をコードするDNAを、上記で得たプラスミドpECsf_gapSのPacI部位とNotI I部位の間に挿入することにより、lacZ遺伝子を発現するプラスミドpECsf_gapS_lacZを得た。
上記で得たプラスミドpECsf_gapS_lacZをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株にエレクトロポレーションによる形質転換法を用いて導入することにより、形質転換株pECsf_gapS_lacZ/ATCC 13032を構築した。
(4)コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株内での2,3―ジヒドロキシナフタレンの生産
上記で構築したpECsf_gapS_bphA321c_bphA4/ATCC 13032株およびpECsf_gapS_lacZ/ATCC 13032株を50 mg/Lのカナマイシンを含むCGXII培地(硫酸アンモニウム 20 g/L、尿素 5 g/L、リン酸二水素カリウム 1 g/L、リン酸水素二カリウム 1 g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.25 g/L、塩化カルシウム 10 mg/L、硫酸第一鉄・7水和物 10 mg/L、硫酸マンガン・5水和物10 mg/L、硫酸亜鉛・7水和物1 mg/L、硫酸銅 0.2 mg/L、塩化ニッケル・6水和物 0.02 mg/L、ビオチン 0.2 mg/L、グルコース 20 g/L、プロトカテク酸 30 mg/L、pH7.0)0.5 mlで16時間培養した後、培養液を50 mg/Lのカナマイシンを含むCGXII培地4
mlに1%接種し、32℃で9時間培養を行った。実施例1(4)と同様の方法により、菌体濃度が吸光度600nmで20.0となるように菌体懸濁液を調製し、2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産量を測定した。
その結果、表5に示すように、pECsf_gapS_bphA321c_bphA4/ATCC 13032株では約145μMの2,3−ジヒドロキシナフタレンの生産が確認された。一方、lacZ遺伝子を発現するpECsf_gapS_lacZ/ATCC 13032株では2,3−ジヒドロキシナフタレンは検出されなかった。
Figure 2016146779

Claims (8)

  1. フェレドキシン蛋白質およびフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質を発現し、かつ2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱した性質を有する微生物であって、以下の(a)、(b)、(c)、(d)または(e)に示すDNA、ならびに以下の(f)、(g)、(h)、(i)または (j)に示すDNAを保有し、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンを生産する能力を有する微生物(a)配列番号2または4に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (b)配列番号2または4に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (c)配列番号2または4に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (d)配列番号1または3に示される塩基配列からなるDNA。
    (e)配列番号1または3に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (f)配列番号6または8に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (g)配列番号6または8に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (h)配列番号6または8に示されるアミノ酸配列と67%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (i)配列番号5または7に示される塩基配列からなるDNA。
    (j)配列番号5または7に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から2,3−ジヒドロキシナフタレンへの転換に関わる機能を有する蛋白質をコードするDNA。
  2. フェレドキシン蛋白質および/またはフェレドキシン・レダクターゼ蛋白質をコードする組換えDNAを導入することにより該蛋白質が発現するように改変された請求項1に記載の微生物。
  3. フェレドキシン蛋白質が以下の(k)、(l)、(m)、(n)または(o)に示すDNAがコードする蛋白質であることを特徴とする請求項2に記載の微生物。
    (k)配列番号10または12に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (l)配列番号10または12に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつ電子伝達機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (m)配列番号10または12に示されるアミノ酸配列と40%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつ電子伝達機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (n)配列番号9または11に示される塩基配列からなるDNA。
    (o)配列番号9または11に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ電子伝達機能を
    有する蛋白質をコードするDNA。
  4. フェレドキシン・レダクターゼ蛋白質が以下の(p)、(q)、(r)、(s)または(t)に示すDNAがコードする蛋白質であることを特徴とする請求項2に記載の微生物。(p)配列番号14または16に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするDNA。
    (q)配列番号14または16に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加された配列を含み、かつフェレドキシン蛋白質を還元する機能を有する蛋白質をコードするDNA。
    (r)配列番号14または16に示されるアミノ酸配列と33%以上の同一性を示すアミノ酸配列を含み、かつフェレドキシン還元活性を有する蛋白質をコードするDNA。
    (s)配列番号13または15に示される塩基配列からなるDNA。
    (t)配列番号13または15に示される塩基配列の全部もしくは一部の配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフェレドキシン蛋白質を還元する機能を有する蛋白質をコードするDNA。
  5. 本来的に2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する酵素蛋白質をコードするDNAを持たないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の微生物。
  6. 変異導入処理または組換えDNA技術を用いて、2,3−ジヒドロキシナフタレンを代謝する能力が欠損または減弱するように改変された請求項1から4のいずれか1項に記載の微生物。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の微生物を3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含有する培地中で3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸と反応させることにより、該培地中に2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成、蓄積させ、該培地から2,3−ジヒドロキシナフタレンを採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法。
  8. 請求項1から6のいずれか1項に記載の微生物の培養物または該培養物の処理物および3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を水性媒体中で混合させることにより、該媒体中に2,3−ジヒドロキシナフタレンを生成、蓄積させ、該媒体から2,3−ジヒドロキシナフタレンを採取することを特徴とする2,3−ジヒドロキシナフタレンの製造法。
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