JP2016145409A - タングステン膜の成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原料ガスとしてWCl6ガスを用いたALD法により、高い生産性で埋め込み性が良好なタングステン膜を成膜することができるタングステン膜の成膜方法を提供する。【解決手段】被処理基板が収容され、減圧雰囲気下に保持されたチャンバー内に、タングステン原料ガスとしての塩化タングステンガス、および塩化タングステンガスを還元する還元ガスを、チャンバー内のパージを挟んで交互に供給するALD法により被処理基板の表面にタングステン膜を成膜するにあたり、塩化タングステンガスを供給する際に、ALD反応が主体となる程度に還元ガスを添加する。【選択図】 図3

Description

本発明は、タングステン膜の成膜方法に関する。
LSIを製造する際には、MOSFETゲート電極、ソース・ドレインとのコンタクト、メモリーのワード線等にタングステンが広く用いられている。多層配線工程では、銅配線が主に用いられているが、銅は耐熱性に乏しく、また拡散しやすいため、耐熱性が要求される部分や銅の拡散による電気特性の劣化が懸念される部分等にタングステンが用いられる。
タングステンの成膜処理として、以前には物理的蒸着(PVD)法が用いられていたが、高い被覆率(ステップカバレッジ)が要求される部分では、PVD法により対応することが困難であるため、ステップカバレッジが良好な化学的蒸着(CVD)法で成膜することが行われている。
このようなCVD法によるタングステン膜(CVD−タングステン膜)の成膜方法としては、原料ガスとして例えば六フッ化タングステン(WF)および還元ガスであるHガスを用い、被処理基板である半導体ウエハ上でWF+3H→W+6HFの反応を生じさせる方法が一般的に用いられている(例えば、特許文献1,2)。
しかし、WFガスを用いてCVD−タングステン膜を成膜する場合には、半導体デバイスにおける、特にゲート電極やメモリーのワード線などで、WFに含まれるフッ素がゲート絶縁膜を還元し、電気特性を劣化させることが強く懸念されるようになってきた。
フッ素を含有しないCVD−W成膜の際の処理ガスとしては、六塩化タングステン(WCl)が知られている(例えば特許文献3、非特許文献1)。塩素もフッ素と同様に還元性を有するが、反応性はフッ素より弱く、電気特性に対する悪影響が少ないことが期待されている。
特開2003−193233号公報 特開2004−273764号公報 特開2006−28572号公報
J.A.M. Ammerlaan et al., "Chemical vapor deposition of tungstenby H2 reduction of WCl6", Applied Surface Science53(1991), pp.24-29
ところで、近時、半導体デバイスの微細化が益々進み、良好なステップカバレッジが得られると言われているCVDでさえも複雑形状パターンへの埋め込みが困難になりつつあり、さらなる高いステップカバレッジを得る観点から、原料ガスと還元ガスとをパージを挟んでシーケンシャルに供給する原子層堆積(ALD)法が注目されている。
しかしながら、原料ガスであるWClガスと、還元ガスであるHガスとを用い、ALD法によりタングステン膜を成膜する場合には、1サイクルあたりの堆積膜厚が薄い、つまり成膜速度が小さい。このため、生産性が低いという問題点がある。
したがって、本発明の課題は、原料ガスとしてWClガスを用いたALD法により、高い生産性で埋め込み性が良好なタングステン膜を成膜することができるタングステン膜の成膜方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、被処理基板が収容され、減圧雰囲気下に保持されたチャンバー内に、タングステン原料ガスとしての塩化タングステンガス、および塩化タングステンガスを還元する還元ガスを、前記チャンバー内のパージを挟んで交互に供給するALD法により被処理基板の表面にタングステン膜を成膜するタングステン膜の成膜方法であって、前記塩化タングステンガスを供給する際に、ALD反応が主体となる程度に前記還元ガスを添加することを特徴とするタングステン膜の成膜方法を提供する。
具体的な態様としては、前記チャンバー内に前記塩化タングステンガスを供給する第1工程と、前記チャンバー内をパージする第2工程と、前記チャンバー内に前記還元ガスを供給して塩化タングステンを還元する第3工程と、前記チャンバー内をパージする第4工程とによりタングステン単位膜を形成する操作を複数サイクル繰り返し、前記第1工程の際に、前記還元ガスを添加するものを挙げることができる。
このとき、前記第1工程の際に添加される還元ガスの流量は、100〜500sccmであることが好ましい。また、前記第1工程の際に添加される還元ガスの供給期間は、塩化タングステンガスの供給期間の一部であることが好ましい。
また、他の態様としては、前記チャンバー内に前記塩化タングステンガスを供給する第1工程と、前記チャンバー内をパージする第2工程と、前記チャンバー内に前記還元ガスを供給して塩化タングステンを還元する第3工程と、前記チャンバー内をパージする第4工程とによりタングステン単位膜を形成する操作を複数サイクル繰り返し、前記第1工程から前記第4工程にかけて連続的に前記還元ガスを添加するものを挙げることができる。
また、前記第1工程から前記第4工程の全ての期間で連続的に前記チャンバー内にパージガスを流して、塩化タングステンガスおよび還元ガスを前記チャンバーに供給する流れを形成し、前記第2工程および前記第4工程の際にパージガスの流量を増加させるようにしてもよい。この場合に、前記連続的なパージガスとは別個のガスラインから、前記第2工程および前記第4工程の際に追加のパージガスを供給することができる。
さらに、前記塩化タングステンガスを供給するガスラインと、前記第3工程の際に供給される還元ガスのガスラインに、それぞれバッファタンクを設け、バッファタンクを介して塩化タングステンガスおよび還元ガスを供給するようにしてもよい。
さらにまた、前記塩化タングステンガスを供給する際に添加される還元ガスと、塩化タングステンガスを還元するための還元ガスとを、別個のガスラインから前記チャンバー内に供給し、前記添加される還元ガスを供給する添加還元ガスラインを、前記還元するための還元ガスを供給するメイン還元ガスラインよりも、前記チャンバーに向かうガスの流れの上流側に設けることが好ましい。
成膜処理の際に、前記被処理基板の温度が300℃以上、前記チャンバー内の圧力が5Torr以上であることが好ましい。
また、前記塩化タングステンとしてはWClを好適に用いることができる。前記還元ガスとしては、Hガス、SiHガス、Bガス、NHガスの少なくとも1種を好適に用いることができる。
前記被処理基板は、前記タングステン膜の下地として、TiN膜、TiSiN膜、TiSi膜、Ti膜のいずれかを有するものであることが好ましい。
以上のような塩化タングステンガスを供給する際に上記した還元ガスを添加する成膜方法で成膜する還元ガス添加成膜期間と、前記塩化タングステンガスを供給する際に還元ガスを添加しないALD法により成膜する還元ガス非添加成膜期間とを有してもよい。
この場合に、被処理基板表面には下地膜が形成されており、最初に塩化タングステンガスの流量を少なくした初期タングステン膜の成膜を行い、その後塩化タングステンガスの流量を増加させて主タングステン膜の成膜を行う2ステップ成膜によりタングステン膜を成膜し、初期タングステン膜を成膜する際は、前記還元ガス非添加成膜期間であり、主タングステン膜を成膜する際は、前記還元ガス添加成膜期間であってもよい。また、前記還元ガス添加成膜期間と前記還元ガス非添加成膜期間とを繰り返してもよい。
また、本発明は、コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記タングステン膜の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
本発明によれば、塩化タングステンガス、および還元ガスを、パージを挟んで交互に供給するALD法により被処理基板の表面にタングステン膜を成膜するにあたり、塩化タングステンガスを供給する際に、ALD反応が主体となる程度に還元ガスを添加する。これにより、CVD反応を抑制しつつ塩化タングステンガスを活性化することができ、高ステップカバレッジを維持しつつ高成膜レートでタングステン膜を成膜することができる。このため、高い生産性で埋め込み性が良好なタングステン膜を得ることができる。
本発明に係るタングステン膜の成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す断面図である。 図1の成膜装置におけるWClガス供給源を示す図である。 第1の実施形態に係る成膜方法のガス供給シーケンスを示す図である。 第1の実施形態に係る成膜方法における、ステップS1のHガスの供給期間の例を示す図である。 添加Hガスを供給するシーケンスを一部の期間で適用した例を示す図である。 最初に添加Hガスを供給せずに、その後に添加Hガスを添加する例を2ステップ成膜に適用した場合を説明するための図。 第2の実施形態に係る成膜方法のガス供給シーケンスを示す図である。 実験例1における、添加Hガス流量と1サイクル数あたりの成膜レートとの関係、および添加Hガス流量とステップカバレッジとの関係を示す図である。 添加Hガスを用いない従来の手法でタングステン膜を成膜した場合と、実験例1において添加Hガスを500sccmとしてタングステン膜を成膜した場合における断面のSEM写真である。 実験例2における、添加Hガス流量と1サイクル数あたりの成膜レートとの関係、および添加Hガス流量とステップカバレッジとの関係を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
<成膜装置の例>
図1は本発明に係るタングステン膜の成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す断面図である。
図1に示すように、成膜装置100は、チャンバー1と、チャンバー1内で被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す。)Wを水平に支持するためのサセプタ2と、チャンバー1内に処理ガスをシャワー状に供給するためのシャワーヘッド3と、チャンバー1の内部を排気する排気部4と、シャワーヘッド3に処理ガスを供給する処理ガス供給機構5と、制御部6とを有している。
チャンバー1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。チャンバー1の側壁にはウエハWを搬入出するための搬入出口11が形成され、搬入出口11はゲートバルブ12で開閉可能となっている。チャンバー1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。また、排気ダクト13の外壁には排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面にはチャンバー1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。天壁14と排気ダクト13の間にはシールリング15で気密にシールされている。
サセプタ2は、ウエハWに対応した大きさの円板状をなし、支持部材23に支持されている。このサセプタ2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されており、内部にウエハWを加熱するためのヒーター21が埋め込まれている。ヒーター21はヒーター電源(図示せず)から給電されて発熱するようになっている。そして、サセプタ2の上面のウエハ載置面近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒーター21の出力を制御することにより、ウエハWを所定の温度に制御するようになっている。
サセプタ2には、ウエハ載置面の外周領域、およびサセプタ2の側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスからなるカバー部材22が設けられている。
サセプタ2を支持する支持部材23は、サセプタ2の底面中央からチャンバー1の底壁に形成された孔部を貫通してチャンバー1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されており、昇降機構24によりサセプタ2が支持部材23を介して、図1で示す処理位置と、その下方の一点鎖線で示すウエハの搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能となっている。また、支持部材23のチャンバー1の下方位置には、鍔部25が取り付けられており、チャンバー1の底面と鍔部25の間には、チャンバー1内の雰囲気を外気と区画し、サセプタ2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ26が設けられている。
チャンバー1の底面近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン27が設けられている。ウエハ支持ピン27は、チャンバー1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降可能になっており、搬送位置にあるサセプタ2に設けられた貫通孔2aに挿通されてサセプタ2の上面に対して突没可能となっている。このようにウエハ支持ピン27を昇降させることにより、ウエハ搬送機構(図示せず)とサセプタ2との間でウエハWの受け渡しが行われる。
シャワーヘッド3は、金属製であり、サセプタ2に対向するように設けられており、サセプタ2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、チャンバー1の天壁14に固定された本体部31と、本体部31の下に接続されたシャワープレート32とを有している。本体31とシャワープレート32との間にはガス拡散空間33が形成されており、このガス拡散空間33には、本体部31およびチャンバー1の天壁14の中央を貫通するように設けられたガス導入孔36が接続されている。シャワープレート32の周縁部には下方に突出する環状突起部34が形成され、シャワープレート32の環状突起部34の内側の平坦面にはガス吐出孔35が形成されている。
サセプタ2が処理位置に存在した状態では、シャワープレート32とサセプタ2との間に処理空間37が形成され、環状突起部34とサセプタ2のカバー部材22の上面が近接して環状隙間38が形成される。
排気部4は、排気ダクト13の排気口13bに接続された排気配管41と、排気配管41に接続された、真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構42とを備えている。処理に際しては、チャンバー1内のガスはスリット13aを介して排気ダクト13に至り、排気ダクト13から排気部4の排気機構42により排気配管41を通って排気される。
処理ガス供給機構5は、タングステン原料ガスである塩化タングステンとしてWClガスを供給するWClガス供給源51と、メインの還元ガスとしてのHガスを供給する第1Hガス供給源52と、添加還元ガスとしてのHガスを供給する第2Hガス供給源53と、パージガスであるNガスを供給する第1Nガス供給源54および第2Nガス供給源55とを有し、さらに、WClガス供給源51から延びるWClガス供給ライン61と、第1Hガス供給源52から延びる第1Hガス供給ライン62と、第2Hガス供給源53から延びる第2Hガス供給ライン63と、第1Nガス供給源54から延び、WClガス供給ライン61側にNガスを供給する第1Nガス供給ライン64と、第2Nガス供給源55から延び、第1Hガス供給ライン62側にNガスを供給する第2Nガス供給ライン65とを有している。
第1Nガス供給ライン64は、ALD法による成膜中に常時Nガスを供給する第1連続Nガス供給ライン66と、パージ工程のときのみNガスを供給する第1フラッシュパージライン67とに分岐している。また、第2Nガス供給ライン65は、ALD法による成膜中に常時Nガスを供給する第2連続Nガス供給ライン68と、パージ工程のときのみNガスを供給する第2フラッシュパージライン69とに分岐している。第1連続Nガス供給ライン66と、第1フラッシュパージライン67とは、第1接続ライン70に接続され、第1接続ライン70はWClガス供給ライン61に接続されている。また、第2Hガス供給ライン63と、第2連続Nガス供給ライン68と、第2フラッシュパージライン69とは、第2接続ライン71に接続され、第2接続ライン71は第1Hガス供給ライン62に接続されている。WClガス供給ライン61と第1Hガス供給ライン62とは、合流配管72に合流しており、合流配管72は、上述したガス導入孔36に接続されている。
WClガス供給ライン61、第1Hガス供給ライン62、第2Hガス供給ライン63、第1連続Nガス供給ライン66、第1フラッシュパージライン67、第2連続Nガス供給ライン68、および第2フラッシュパージライン69には、それぞれ、ALDの際にガスを切り替えるための開閉バルブ73,74,75,76,77,78,79が設けられている。また、第1Hガス供給ライン62、第2Hガス供給ライン63、第1連続Nガス供給ライン66、第1フラッシュパージライン67、第2連続Nガス供給ライン68、および第2フラッシュパージライン69の開閉バルブの上流側には、それぞれ、流量制御器としてのマスフローコントローラ82,83,84,85,86,87が設けられている。さらに、WClガス供給ライン61および第1Hガス供給ライン62には、短時間で必要なガス供給が可能なように、それぞれバッファタンク80,81が設けられている。
WClガス供給源51は、図2に示すように、WClを収容する成膜原料タンク91を有している。WClは常温では固体であり、成膜原料タンク91内には固体状のWClが収容されている。成膜原料タンク91の周囲にはヒーター91aが設けられており、タンク91内の成膜原料を適宜の温度に加熱して、WClを昇華させるようになっている。
成膜原料タンク91には、上方からキャリアガスであるNガスを供給するためのキャリアガス配管92が挿入されている。キャリアガス配管92にはキャリアNガス供給源93が接続されている。また、キャリアガス配管92には、流量制御器としてのマスフローコントローラ94およびその前後のバルブ95が介装されている。また、成膜原料タンク91内には上述したWClガス供給ライン61が上方から挿入されている。WClガス供給ライン61には成膜原料ガスであるWClガスの凝縮防止のためのヒーター(図示せず)が設けられている。そして、成膜原料タンク91内で昇華したWClガスがキャリアNガスにより搬送されて、WClガス供給ライン61に供給される。
キャリアガス配管92とWClガス供給ライン61との間は、バイパス配管98により接続されており、このバイパス配管98にはバルブ99が介装されている。キャリアガス配管92およびWClガス供給ライン61における配管98接続部分の下流側にはそれぞれバルブ96,97が介装されている。そして、バルブ96,97を閉じてバルブ99を開くことにより、キャリアNガス供給源93からのNガスを、キャリアガス配管92、バイパス配管98を経て、WClガス供給ライン61をパージすることが可能となっている。
制御部6は、各構成部、具体的にはバルブ、電源、ヒーター、ポンプ等を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラと、ユーザーインターフェースと、記憶部とを有している。プロセスコントローラには成膜装置100の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェースは、プロセスコントローラに接続されており、オペレータが成膜装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、成膜装置の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部もプロセスコントローラに接続されており、記憶部には、成膜装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部の中の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CDROM、DVD、半導体メモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。必要に応じて、ユーザーインターフェースからの指示等にて所定の処理レシピを記憶部から呼び出してプロセスコントローラに実行させることで、プロセスコントローラの制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
<成膜方法>
次に、以上のように構成された成膜装置100を用いて行われる成膜方法の実施形態について説明する。
本実施形態に係る成膜方法は、例えば、熱酸化膜の表面、またはトレンチやホール等の凹部を有する層間絶縁膜の表面にバリアメタル膜が下地膜として形成されたウエハに対してタングステン膜を成膜する場合に適用される。
[第1の実施形態に係る成膜方法]
最初に第1の実施形態に係る成膜方法について説明する。
まず、サセプタ2を搬送位置に下降させた状態でゲートバルブ12を開け、搬送装置(図示せず)によりウエハWを搬入出口11を介してチャンバー1内に搬入し、ヒーター21により所定温度に加熱されたサセプタ2上に載置し、サセプタ2を処理位置まで上昇させ、チャンバー1内を所定の真空度まで減圧した後、開閉バルブ76および開閉バルブ78を開け、開閉バルブ73,74,75,77,79を閉じて、第1Nガス供給源54および第2Nガス供給源55から、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を経てNガスをチャンバー1内に供給して圧力を上昇させ、サセプタ2上のウエハWの温度を安定させる。そして、チャンバー1内が所定圧力に到達した後、以下のようにしてシーケンシャルなガス供給によりタングステン膜の成膜を行う。ウエハWとしては、例えばトレンチやホール等の凹部を有する層間絶縁膜の表面に下地膜としてバリアメタル膜(例えばTiN膜、TiSiN膜、TiSi膜、Ti膜)が形成されたものを用いることができる。タングステン膜は、層間絶縁膜に対する密着力が悪く、かつインキュベーション時間も長くなるため、層間絶縁膜上に成膜することは困難であるが、TiN膜、TiSiN膜、TiSi膜、またはTi膜を下地膜として用いることにより、成膜が容易となる。ただし、下地膜はこれに限るものではない。
図3は、第1の実施形態に係る成膜方法のガス供給シーケンスを示す図である。
最初に、開閉バルブ76および開閉バルブ78を開けたまま、第1Nガス供給源54および第2Nガス供給源55から、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を経てNガスを供給し続け、さらに開閉バルブ73および開閉バルブ75を開くことにより、WClガス供給源51からWClガス供給ライン61を経てWClガスをチャンバー1内の処理空間37に供給するとともに、第2Hガス供給源53から延びる第2Hガス供給ライン63を経て添加還元ガスとしてのHガス(添加Hガス)をチャンバー1内に供給する(ステップS1)。このとき、WClガスは、バッファタンク80に一旦貯留された後にチャンバー1内に供給される。
このステップS1により、ウエハW表面にWClが吸着されるが、同時に添加されたHの存在により、WClが活性化される。
次いで、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を介してのNガスの供給を継続したまま、開閉バルブ73,75を閉じてWClガスおよびHガスを停止するとともに、開閉バルブ77,79を開けて、第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のWClガス等をパージする(ステップS2)。
次いで、開閉バルブ77,79を閉じて第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からのNガスを停止し、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を介してのNガスの供給を継続したまま、開閉バルブ74を開いて第1Hガス供給源52から第1Hガス供給ライン62を経てメインの還元ガスとしてのHガス(メインHガス)を処理空間37に供給する(ステップS3)。このとき、Hガスは、バッファタンク81に一旦貯留された後にチャンバー1内に供給される。
このステップS3により、ウエハW上に吸着したWClが還元される。このときのメインHガスの流量は、十分に還元反応が生じる量とされ、ステップS1の添加Hガスの流量よりも多い流量で供給される。
次いで、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を介してのNガスの供給を継続したまま、開閉バルブ74を閉じて第1Hガス供給ライン62からのHガスの供給を停止するとともに、開閉バルブ77,79を開けて、第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、ステップS2と同様、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のHガスをパージする(ステップS4)。
以上のステップS1〜S4を短時間で1サイクル行うことにより、薄いタングステン単位膜を形成し、これらのステップのサイクルを複数サイクル繰り返すことにより所望の膜厚のタングステン膜を成膜する。このときのタングステン膜の膜厚は、上記サイクルの繰り返し数により制御することができる。
従来のALD法では、ステップS1の際にWClガスのみを供給してウエハに吸着させるが、その場合は、WClガスが十分成膜に寄与せず、1サイクルあたりの堆積膜厚が薄くなり、成膜速度が小さくなってしまう。これに対し、本実施形態のように、ステップS1の際にWClガスと同時に還元ガスを供給することにより、供給されたWClガスが活性化され、その後のステップS3の際の成膜反応が生じやすくなり、高いステップカバレッジを維持しつつ、1サイクルあたりの堆積膜厚を厚くして成膜速度を大きくすることができる。
このとき、WClガスと同時に供給される添加Hガスの流量が多すぎると、ステップS1においてCVD反応が生じてステップカバレッジが低下するため、ステップS1に、ALD反応が主体となる程度に添加Hガスを供給する。すなわちWClガスを吸着する際に添加Hガスの流量をCVD反応が十分に抑制できる程度の流量に制限する必要がある。このときのHガス流量は100〜500sccm(mL/min)であることが好ましい。
ステップS1においてHガスの供給期間は、WClガス供給期間の全期間に亘っていてもよいが、CVD反応を抑制する観点からは、WClガス供給期間の一部であることが好ましい。具体的には、Hガスの供給期間は、全期間に対して1〜30%程度であることが好ましい。またHガスの供給時期は図4(a)に示すようにステップS1の初期であってもよいし、図4(b)に示すようにステップS1の後期であってもよい。もちろん、ステップS1の中間であってもよい。添加時期はデバイス構造に応じて適宜調節すればよいが、HはWClに比べて分子量が小さい軽いガスであるため、Hガスを初期に導入すると、WClガスよりも先に処理空間37に到達して添加効果を十分に発揮できない可能性がある。このため、後期に添加したほうが高い添加効果を期待することができる。
また、ステップS1〜S4の間、第1連続Nガス供給ライン66、第2連続Nガス供給ライン68からパージガスであるNガスをWClガス供給ライン61および第1Hガス供給ライン62に常時流しつつ、ステップS1およびステップS3においてWClガスとHガスとを間欠的に供給するので、処理空間37のガスの置換効率を良好にすることができる。さらに、ステップS2およびステップS4における処理空間37のパージの際に、第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からのNガスも付加するので、処理空間37におけるガスの置換効率を一層良好にすることができる。これにより、タングステン単位膜の膜厚制御性を良好にすることができる。また、ステップS1においては、WClガスとHガスが滞留するとこれらの間にCVD反応が生じやすくなるが、このようにパージ工程の際にガスの置換効率を高めることにより、CVD反応を極めて有効に抑制することができる。
また、このように、ステップS1〜S4の間、第1連続Nガス供給ライン66、第2連続Nガス供給ライン68からパージガスであるNガスの流れを形成して、WClガスとHガスとを間欠的に供給するが、ステップS3の際に、メインHガスを供給する第1Hガス供給ライン62よりも、ステップS1の際に添加Hガスを供給する第2Hガス供給ライン63のほうがガスの流れの上流側にHガスを供給することになるため、添加Hガスを均一に供給することができ、タングステン膜の面内膜厚分布を均一にすることができる。
すなわち、メインHガスの流量のほうが添加Hガスの流量よりも大きく、かつ各ステップの供給時間が極めて短いため、メインHガスを上流側にすると、添加Hガスの供給がメインHガスにより妨げられて添加Hガスが均一に供給し難くなる。
本実施形態においては、シーケンシャルなガス供給による成膜処理により、アスペクト比の大きな凹部内にほぼ100%の高いステップカバレッジを満たしつつ、高いスループットでタングステン膜を形成するため、ステップカバレッジを損なわない範囲で1サイクルあたりの堆積速度を極力大きくして1サイクルあたりの時間を短くすることが必要である。このため、本実施形態ではWClガス供給ライン61および第1Hガス供給ライン62に、それぞれバッファタンク80および81を設けた。これにより、短時間でWClガスおよびHガスを供給しやすくなり、1サイクルが短い場合でも、ステップS1およびS3において必要な量のWClガスおよびHガスを供給しやすくすることができる。
・成膜条件
タングステン原料としてWClを用いた場合には、WClガス自体がエッチング作用も有するため、温度および圧力の条件によっては、タングステン膜が成膜され難いことがある。したがって、温度・圧力条件が、そのようなエッチング反応が生じない条件であることが好ましい。温度が低い領域では成膜反応もエッチング反応も生じないため、成膜反応を生じさせるためには成膜反応が生じる程度の高温が好ましいが、成膜反応が生じる高温では、圧力が低いとエッチング反応が生じる傾向がある。したがって、高温・高圧条件が好ましい。
具体的には、下地膜の種類にもよるが、ウエハ温度(サセプタ表面温度):300℃以上、チャンバー内圧力:5Torr(667Pa)以上とすることが好ましい。十分な成膜量を得る観点からは、温度に上限は存在しないが、装置の制約や反応性の点から、事実上の上限は800℃程度である。より好ましくは300〜600℃である。また、圧力に関しても上記点からは上限は存在しないが、同様に装置の制約や反応性の点から、事実上の上限は100Torr(13333Pa)である。より好ましくは、10〜40Torr(1333〜5332Pa)である。なお、温度や圧力条件の好ましい範囲は実装置の構造や他の条件によって多少変動する。
他の条件の好ましい範囲は以下の通りである。
WClガス流量:3〜60sccm(mL/min)
(キャリアガス流量:100〜2000sccm(mL/min)
メインHガス流量:2000〜8000sccm(mL/min)
添加Hガス流量(既述):100〜500sccm(mL/min)
連続供給Nガス流量:100〜5000sccm(mL/min)
(第1および第2連続Nガス供給ライン66,68)
フラッシュパージNガス流量:500〜3000sccm(mL/min)
(第1および第2フラッシュパージライン67,69)
ステップS1の時間(1回あたり):0.01〜5sec
ステップS3の時間(1回あたり):0.1〜5sec
ステップS2、S4の時間(パージ)(1回あたり):0.1〜5sec
ステップS1の添加Hガス供給時間(1回あたり):0.01〜0.3sec
成膜原料タンクの加温温度:130〜170℃
なお、還元ガスとしては、Hガスに限らず、水素を含む還元性のガスであればよく、Hガスの他に、SiHガス、Bガス、NHガス等を用いることもできる。Hガス、SiHガス、Bガス、およびNHガスのうち2つ以上を供給できるようにしてもよい。また、これら以外の他の還元ガス、例えばPHガス、SiHClガスを用いてもよい。膜中の不純物をより低減して低抵抗値を得る観点からは、Hガスを用いることが好ましい。また、塩化タングステンとしてはWClを用いることもできる。WClを用いてもWClとほぼ同じ挙動を示す。さらに、パージガスおよびキャリアガスとしてNガスの代わりにArガス等の他の不活性ガスを用いることもできる。
また、成膜処理の全ての期間において、図3に示すWClガス供給時に添加Hガスを供給するシーケンスを適用してもよいが、適用されるデバイス構造によっては、必ずしも成膜処理の全ての期間で添加Hガスを供給するシーケンスを適用しなくてもよく、添加Hガスを供給するシーケンスを一部の期間で適用してもよい。例えば、図5(a)に示すように、最初に添加Hガスありのシーケンスを行い、その後にHガス添加なしのシーケンスを行っても、図5(b)に示すように、最初にHガス添加なしのシーケンスを行い、その後に添加Hガスありのシーケンスを行ってもよく、図5(c)に示すように、これらを繰り返してもよい。
例えば、図5(b)の例としては、図6(a)に示すように、下地膜(SiO膜またはSi基板)201の上にTiN膜等のバリア膜202を介して、最初にWClガスの供給量を少なくして初期タングステン膜203を成膜し、その後WClガスの供給量を増加させて主タングステン膜204を成膜する2ステップ成膜において、図6(b)に示すように、初期タングステン膜203を「添加Hガスなし」で成膜し、主タングステン膜204を「添加Hガスあり」で成膜する場合を挙げることができる。
すなわち、WClガスは下地のバリア膜を構成するTiN膜等をエッチングする作用を有するため、最初にWClガス供給量を少なくしてエッチングを抑制した初期タングステン膜203を成膜した後、WClガス供給量を増加させて主タングステン膜204を成膜するプロセスが必要となる。この場合、初期タングステン膜203は、WClガス供給量が少ないため、ステップカバレッジが比較的悪いプロセスになるが、この初期タングステン膜203の成膜を添加Hガスありで行うと表面でのWClガスの反応消費が促進され、よりステップカバレッジが悪化してしまう。このため、初期タングステン膜203の成膜は添加Hガスなしで行い、その後の主タングステン膜204の成膜では、WClガス供給量を増加させるため、添加Hガスありにして生産性を増加させるのである。
添加Hガスを用いるシーケンスにより、ステップカバレッジを高く維持しつつスループットを高めることができるものの、CVD反応が生じ、添加Hガスなしの場合に比較して若干ステップカバレッジが低下する可能性がある。このような場合には、スループットが要求される期間は添加Hガスありのシーケンスを行い、確実に高いステップカバレッジを得ることが要求される期間は添加Hガスなしのシーケンスを用いることが有効である。
[第2の実施形態に係る成膜方法]
次に第2の実施形態に係る成膜方法について説明する。
本実施形態では、第1の実施形態と同様、まず、サセプタ2を搬送位置に下降させた状態でゲートバルブ25を開け、搬送装置(図示せず)によりウエハWを搬入出口11を介してチャンバー1内に搬入し、ヒーター21により所定温度に加熱されたサセプタ2上に載置し、サセプタ2を処理位置まで上昇させ、チャンバー1内を所定の真空度まで減圧した後、開閉バルブ76および開閉バルブ78を開け、開閉バルブ73,74,75,77,79を閉じて、第1Nガス供給源54および第2Nガス供給源55から、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を経てNガスをチャンバー1内に供給して圧力を上昇させ、サセプタ2上のウエハWの温度を安定させる。そして、チャンバー1内が所定圧力に到達した後、以下のようにしてシーケンシャルなガス供給によりタングステン膜の成膜を行う。ウエハWとしては第1の実施形態と同様なものを用いることができる。
図7は、第2の実施形態に係る成膜方法のガス供給シーケンスを示す図である。
最初に、開閉バルブ76および開閉バルブ78を開けたまま、第1Nガス供給源54および第2Nガス供給源55から、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を経てNガスを供給し続け、さらに開閉バルブ73および開閉バルブ75を開くことにより、WClガス供給源51からWClガス供給ライン61を経てWClガスをチャンバー1内の処理空間37に供給するとともに、第2Hガス供給源53から延びる第2Hガス供給ライン63を経て添加還元ガスとしてのHガス(添加Hガス)をチャンバー1内に供給する(ステップS11)。このとき、WClガスは、バッファタンク80に一旦貯留された後にチャンバー1内に供給される。
このステップS11により、ウエハW表面にWClが吸着されるが、同時に添加されたHの存在により、WClが活性化される。
次いで、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を介してのNガスの供給、および第2Hガス供給ライン63を介しての添加Hガスの供給を継続したまま、開閉バルブ73を閉じてWClガスを停止するとともに、開閉バルブ77,79を開けて、第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のWClガス等をパージする(ステップS12)。
次いで、開閉バルブ77,79を閉じて第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からのNガスを停止し、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を介してのNガスの供給、および第2Hガス供給ライン63を介しての添加Hガスの供給を継続したまま、開閉バルブ74を開いて第1Hガス供給源52から第1Hガス供給ライン62を経てメインの還元ガスとしてのHガス(メインHガス)を処理空間37に供給する(ステップS13)。このとき、メインHガスは、バッファタンク81に一旦貯留された後にチャンバー1内に供給される。
このステップS13により、ウエハW上に吸着したWClが還元される。このときのメイン還元ガスとしてのHガスの流量は、十分に還元反応が生じる量とされ、添加Hガスの流量よりも多い流量で供給される。
次いで、第1連続Nガス供給ライン66および第2連続Nガス供給ライン68を介してのNガスの供給、および第2Hガス供給ライン63を介しての添加Hガスの供給を継続したまま、開閉バルブ74を閉じて第1Hガス供給ライン62からのHガスの供給を停止するとともに、開閉バルブ77,79を開けて、第1フラッシュパージライン67および第2フラッシュパージライン69からもNガス(フラッシュパージNガス)を供給し、ステップS12と同様、大流量のNガスにより、処理空間37の余剰のHガスをパージする(ステップS14)。
以上のステップS11〜S14を短時間で1サイクル行うことにより、薄いタングステン単位膜が形成され、これらのステップのサイクルを複数サイクル繰り返すことにより所望の膜厚のタングステン膜を成膜する。このときのタングステン膜の膜厚は、上記サイクルの繰り返し数により制御することができる。第2の実施形態では、成膜レートが第1の実施形態よりも多少劣るが、バルブの操作が少ないというメリットがある。
本実施形態においては、ステップS11〜S14の期間、常時添加Hガスを供給しているため、ステップS11においてWClガスを供給する際に、添加還元ガスである添加Hガスが供給されることとなり、WClガスが添加Hガスにより活性化され、その後のステップS13の際の成膜反応が生じやすくなり、第1の実施形態と同様、高いステップカバレッジを維持しつつ、1サイクルあたりの堆積膜厚を厚くして成膜速度を大きくすることができる。
本実施形態では、添加Hガスを常時供給しているので、CVD反応が生じやすくなることが懸念される。したがって、CVD反応を抑制する観点から、添加Hガスの流量を少なくすることが好ましく、具体的には、10〜500sccm(mL/min)であることが好ましい。
その他の成膜条件に関しては、第1の実施形態と同様である。また、第1の実施形態と同様、還元ガスとしては、Hガスに限らず、水素を含む還元性のガスであればよく、Hガスの他に、SiHガス、Bガス、NHガス等を用いることもできる。Hガス、SiHガス、Bガス、およびNHガスのうち2つ以上を供給できるようにしてもよい。また、これら以外の他の還元ガス、例えばPHガス、SiHClガスを用いてもよい。また、塩化タングステンとしてはWClを用いることもできる。さらに、パージガスおよびキャリアガスとしてNガスの代わりにArガス等の他の不活性ガスを用いることもできる。
また、本実施形態においても、成膜処理の全ての期間において添加Hガスを供給するシーケンスを適用することに限らず、適用されるデバイス構造によっては、一部の期間で添加Hガスを供給するシーケンスを適用してもよい。
<実験例>
次に、実験例について説明する。
(実験例1)
ここでは、トップの径が0.1μm、アスペクト比が80のホールが形成されたウエハに下地膜としてTiN膜を形成し、図1の成膜装置により第1の実施形態のシーケンスを用いてタングステン膜を成膜した。このときの条件は、ウエハ温度:550℃、チャンバー内圧力:30Torr(4000Pa)、成膜原料タンクの加温温度:170℃、キャリアNガス流量:800sccm(WClガス流量:20sccm)、連続Nガス流量:1200sccm、フラッシュNガス流量:1500sccm、メインHガス流量:5000sccm、添加Hガス流量:250、500、1000sccm、ステップS1の時間(1回あたり):0.3sec、ステップS2の時間(1回あたり):0.2sec、ステップS3の時間(1回あたり):0.3sec、ステップS4の時間(1回あたり):0.2sec、サイクル数:600回とした。また、添加Hガスは、ステップS1の初期に0.03secの期間供給した。
この際の添加Hガス流量と1サイクル数あたりの成膜レートとの関係、および添加Hガス流量とステップカバレッジ(ボトムの膜厚/トップの膜厚)との関係を図8に示す。この図に示すように、添加Hガス流量が250〜1000sccmにおいて、0.03nm/cycle以上の高い成膜レートが得られ、ステップカバレッジも高い値が得られた。特に、添加Hガス流量が500sccmのときに、成膜レートが0.05nm/cycleで、ステップカバレッジがほぼ100%となった。このように、第1の実施形態の成膜方法により高成膜レートと高ステップカバレッジを両立できることが確認された。このときの膜厚は、添加Hガス流量が250sccmのとき20.2nm、500sccmのとき27.6nm、1000sccmのとき38.5nmであった。また、抵抗値は、添加Hガス流量が250sccmのとき14.8Ω/□、500sccmのとき9.6Ω/□、1000sccmのとき5.9Ω/□となり、実用的な値となった。
これに対して、添加Hガスを用いずにALD法により成膜した。このときの条件は、ウエハ温度:550℃、チャンバー内圧力:30Torr(4000Pa)、成膜原料タンクの加温温度:170℃、キャリアNガス流量:800sccm(WClガス流量:20sccm)、連続Nガス流量:1200sccm、フラッシュNガス流量:1500sccm、メインHガス流量:5000sccm、ステップS1の時間(1回あたり):0.3sec、ステップS2の時間(1回あたり):0.2sec、ステップS3の時間(1回あたり):0.3sec、ステップS4の時間(1回あたり):0.2sec、サイクル数:1200回とした。その結果、ステップカバレッジはほぼ100%を達成できたが、成膜レートが0.133nm/cycleと低いものとなり、サイクル数が1200回で膜厚が16.0nmであった。
図9は、添加Hガスを用いない従来の手法でタングステン膜を成膜した場合と、添加Hガスを500sccmとしてタングステン膜を成膜した場合における断面の走査型顕微鏡(SEM)写真である。この写真から、WClガスと同時にHガスを供給することにより、従来と同等のステップカバレッジを維持しつつ、従来の半分のサイクル数でほぼ同等の厚さのタングステン膜が形成できることが確認された。
(実験例2)
実験例1と同様のトップの径が0.1μm、アスペクト比が80のホールが形成されたウエハに下地膜としてTiN膜を形成し、図1の成膜装置により第2の実施形態のシーケンスを用いてタングステン膜を成膜した。このときの条件は、ウエハ温度:550℃、チャンバー内圧力:30Torr(4000Pa)、成膜原料タンクの加温温度:170℃、キャリアNガス流量:800sccm(WClガス流量:20sccm)、連続Nガス流量:1200sccm、フラッシュNガス流量:1500sccm、メインHガス流量:5000sccm、添加Hガス流量(常時供給):100、300、500sccm、ステップS11の時間(1回あたり):0.3sec、ステップS12の時間(1回あたり):0.2sec、ステップS13の時間(1回あたり):0.3sec、ステップS14の時間(1回あたり):0.2sec、サイクル数:600回とした。
この際の添加Hガス流量と1サイクル数あたりの成膜レートとの関係、および添加Hガス流量とステップカバレッジ(ボトムの膜厚/トップの膜厚)との関係を図10に示す。この図に示すように、添加Hガス流量が100〜500sccmにおいて、ほぼ0.03nm/cycle以上の高い成膜レートが得られ、ステップカバレッジも高い値が得られた。特に、添加Hガス流量が100sccmのときに、成膜レートが0.04nm/cycleで、ステップカバレッジがほぼ100%となった。このように、第2の実施形態の成膜方法によっても高成膜レートと高ステップカバレッジを両立できることが確認された。このときの膜厚は、添加Hガス流量が100sccmのとき23.5nm、300sccmのとき17.0nm、500sccmのとき17.4nmであった。また、抵抗値は、添加Hガス流量が100sccmのとき14.3Ω/□、300sccmのとき19.2Ω/□、500sccmのとき18.5Ω/□となり、実用的な値となった。
(実験例3)
ここでは、TiN膜の上に、WClガス供給量の少ない初期タングステン膜をALD法により成膜してから、WClガス供給量を増加させて主タングステン膜をALD法により成膜する2ステップ成膜を行う際に、初期タングステン膜を「添加Hガスなし」の条件で成膜し、主タングステン膜を「添加Hガスあり」の条件で成膜した。この際の具体的な条件は、以下の通りである。
・初期タングステン膜成膜
ウエハ温度:500℃
チャンバー内圧力:45Torr(6000Pa)
キャリアNガス流量:300sccm(WClガス流量:6sccm)、
連続Nガス流量:4000sccm、
フラッシュNガス流量:0sccm、
メインHガス流量:5000sccm
添加Hガス流量:0sccm
・主タングステン膜成膜
ウエハ温度:500℃
チャンバー内圧力:30Torr(4000Pa)
キャリアNガス流量:600sccm(WClガス流量:20sccm)、
連続Nガス流量:1200sccm、
フラッシュNガス流量:1500sccm+1500sccm、
メインHガス流量:5000sccm
添加Hガス流量:200sccm
ALD条件は実験例1と同様にして、初期タングステン膜を100サイクルに固定し、主タングステン膜を400サイクル(サンプル1)、1200サイクル(サンプル2)、3300サイクル(サンプル3)と変化させて成膜を行った。
その結果、サンプル1では、センターおよびエッジのステップカバレッジがそれぞれ85%および100%、サンプル2ではセンターおよびエッジのステップカバレッジがそれぞれ100%および90%、サンプル3ではセンターおよびエッジのステップカバレッジがそれぞれ90%および100%となり、ステップカバレッジに問題はなかった。また、下地のTiN膜のエッチングによるステップカバレッジへの影響は見られなかった。
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハはシリコンであっても、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体でもよく、さらに、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
1;チャンバー
2;サセプタ
3;シャワーヘッド
4;排気部
5;ガス供給機構
6;制御部
51;WClガス供給源
52;第1Hガス供給源
53;第2Hガス供給源
54;第1Nガス供給源
55;第2Nガス供給源
61;WClガス供給ライン
62;第1Hガス供給ライン
63;第2Hガス供給ライン
66;第1連続Nガス供給ライン
67;第1フラッシュパージライン
68;第2連続Nガス供給ライン
69;第2フラッシュパージライン
73,74,75,76,77,78,79;開閉バルブ
100;成膜装置
W;半導体ウエハ

Claims (18)

  1. 被処理基板が収容され、減圧雰囲気下に保持されたチャンバー内に、タングステン原料ガスとしての塩化タングステンガス、および塩化タングステンガスを還元する還元ガスを、前記チャンバー内のパージを挟んで交互に供給するALD法により被処理基板の表面にタングステン膜を成膜するタングステン膜の成膜方法であって、
    前記塩化タングステンガスを供給する際に、ALD反応が主体となる程度に前記還元ガスを添加することを特徴とするタングステン膜の成膜方法。
  2. 前記チャンバー内に前記塩化タングステンガスを供給する第1工程と、
    前記チャンバー内をパージする第2工程と、
    前記チャンバー内に前記還元ガスを供給して塩化タングステンを還元する第3工程と、
    前記チャンバー内をパージする第4工程と
    によりタングステン単位膜を形成する操作を複数サイクル繰り返し、
    前記第1工程の際に、前記還元ガスを添加することを特徴とする請求項1に記載のタングステン膜の成膜方法。
  3. 前記第1工程の際に添加される還元ガスの流量は、100〜500sccmであることを特徴とする請求項2に記載のタングステン膜の成膜方法。
  4. 前記第1工程の際に添加される還元ガスの供給期間は、塩化タングステンガスの供給期間の一部であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタングステン膜の成膜方法。
  5. 前記チャンバー内に前記塩化タングステンガスを供給する第1工程と、
    前記チャンバー内をパージする第2工程と、
    前記チャンバー内に前記還元ガスを供給して塩化タングステンを還元する第3工程と、
    前記チャンバー内をパージする第4工程と
    によりタングステン単位膜を形成する操作を複数サイクル繰り返し、
    前記第1工程から前記第4工程にかけて連続的に前記還元ガスを添加することを特徴とする請求項1に記載のタングステン膜の成膜方法。
  6. 前記第1工程から前記第4工程にかけて連続的に添加される前記還元ガスの流量は、10〜500sccmであることを特徴とする請求項5に記載のタングステン膜の成膜方法。
  7. 前記第1工程から前記第4工程の全ての期間で連続的に前記チャンバー内にパージガスを流して、塩化タングステンガスおよび還元ガスを前記チャンバーに供給する流れを形成し、前記第2工程および前記第4工程の際にパージガスの流量を増加させることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  8. 前記連続的なパージガスとは別個のガスラインから、前記第2工程および前記第4工程の際に追加のパージガスを供給することを特徴とする請求項7に記載のタングステン膜の成膜方法。
  9. 前記塩化タングステンガスを供給するガスラインと、前記第3工程の際に供給される還元ガスのガスラインに、それぞれバッファタンクを設け、バッファタンクを介して塩化タングステンガスおよび還元ガスを供給することを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  10. 前記塩化タングステンガスを供給する際に添加される還元ガスと、塩化タングステンガスを還元するための還元ガスとを、別個のガスラインから前記チャンバー内に供給し、前記添加される還元ガスを供給する添加還元ガスラインを、前記還元するための還元ガスを供給するメイン還元ガスラインよりも、前記チャンバーに向かうガスの流れの上流側に設けることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  11. 成膜処理の際に、前記被処理基板の温度が300℃以上、前記チャンバー内の圧力が5Torr以上であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  12. 前記塩化タングステンはWClであることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  13. 前記還元ガスは、Hガス、SiHガス、Bガス、NHガスの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  14. 前記被処理基板は、前記タングステン膜の下地として、TiN膜、TiSiN膜、TiSi膜、Ti膜のいずれかを有することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のタングステン膜の成膜方法。
  15. 請求項1から請求項14のいずれかに記載された還元ガスを添加する成膜方法で成膜する還元ガス添加成膜期間と、前記塩化タングステンガスを供給する際に還元ガスを添加しないALD法により成膜する還元ガス非添加成膜期間とを有することを特徴とするタングステン膜の成膜方法。
  16. 被処理基板表面には下地膜が形成されており、最初に塩化タングステンガスの流量を少なくした初期タングステン膜の成膜を行い、その後塩化タングステンガスの流量を増加させて主タングステン膜の成膜を行う2ステップ成膜によりタングステン膜を成膜し、初期タングステン膜を成膜する際は、前記還元ガス非添加成膜期間であり、主タングステン膜を成膜する際は、前記還元ガス添加成膜期間であることを特徴とする請求項15に記載のタングステン膜の成膜方法。
  17. 前記還元ガス添加成膜期間と前記還元ガス非添加成膜期間とを繰り返すことを特徴とする請求項15に記載のタングステン膜の成膜方法。
  18. コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項17のいずれかのタングステン膜の成膜方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
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