JP2016143527A - 被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法 - Google Patents

被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境安定性の高さから水分、炭酸ガスを吸収することによる不純物の発生を抑えることができ、且つ密着性が高く容易にコーティング層が離脱することがなく且つ、リチウムイオン伝導性を有する優れた被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】リチウム−ニッケル複合酸化物粒子と、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物の混合物の全量に対して2.0質量%以上5.0質量%以下のリン酸化合物と、を水蒸気が500ppm以下、二酸化炭素が50ppm以下の雰囲気下で混合し、120℃以上300℃以下の温度で加熱し被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る被覆工程と、を含む非水電解液二次電池用正極活物質用のリチウム−ニッケル被覆複合酸化物粒子の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ニッケル含有量の高いリチウム−ニッケル複合酸化物粒子に関し、大気雰囲気下の安定性を向上させた取り扱いしやすい被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法に関するものである。
近年、携帯電話、ノートパソコン等の小型電子機器の急速な拡大とともに、充放電可能な電源として、リチウムイオン二次電池の需要が急激に伸びている。リチウムイオン二次電池の正極で充放電に寄与する正極活物質として、リチウム−コバルト酸化物(以下、コバルト系)が広く用いられている。しかしながら、電池設計の最適化によりコバルト系正極の容量は理論容量と同等程度まで改善され、さらなる高容量化は困難になりつつある。
そこで、従来のコバルト系よりも理論容量の高いリチウム−ニッケル酸化物を用いたリチウム−ニッケル複合酸化物粒子の開発が進められている。しかしながら、純粋なリチウム−ニッケル酸化物は、水や二酸化炭素等に対する反応性の高さから安全性、サイクル特性等に問題があり、実用電池として使用することは困難であった。そこで上記問題の改善策として、コバルト、マンガン、鉄等の遷移金属元素又はアルミニウムを添加したリチウム−ニッケル複合酸化物粒子が開発されている。
リチウム−ニッケル複合酸化物には、ニッケル、マンガン、コバルトがそれぞれ当モル量添加されてなるいわゆる三元系と呼ばれる遷移金属組成Ni0.33Co0.33Mn0.33で表される複合酸化物粒子(以下、三元系と明記することがある。)といわゆるニッケル系と呼ばれるニッケル含有量が0.75モルを超えるリチウム−ニッケル複合酸化物粒子(以下、ニッケル系と明記することがある。)がある。容量の観点からは三元系と比べ、ニッケル含有量の多いニッケル系に大きな優位性がある。
しかしながら、ニッケル系(NCA)は、水や二酸化炭素等に対する反応性の高さからコバルト系や三元系と比べ環境により敏感であり、空気中の水分や二酸化炭素(CO)をより吸収しやすい特徴がある。水分、二酸化炭素は、粒子表面にそれぞれ水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)といった不純物として堆積され、正極製造工程や電池性能に悪影響を与えることが報告されている。
ところで、正極の製造工程では、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子、導電助剤、バインダーと有機溶媒等を混合した正極合剤スラリーをアルミニウム等の集電体上に塗布・乾燥する工程を経る。一般的に水酸化リチウムは、正極合剤スラリー製造工程において、バインダーと反応してpH及びスラリー粘度を急激に上昇させる、またスラリーをゲル化させる原因となることがある。これらの現象は不良や欠陥、正極製造の歩留まりの低下を引き起こし、製品の品質に差を生じさせることがある。また、充放電時、これら不純物は電解液と反応しガスを発生させることがあり、電池の安定性に問題を生じさせかねない。
したがって、ニッケル系(NCA)をリチウム−ニッケル複合酸化物粒子として用いる場合、上述した水酸化リチウム(LiOH)等の不純物の発生を防ぐため、その正極製造工程を脱炭酸雰囲気下におけるドライ(低湿度)環境下で行う必要がある。そのため、ニッケル系(NCA)は理論容量が高くリチウムイオン二次電池の材料として有望であるにも関わらず、その製造環境を維持するために高額な設備導入コストが掛かるため、その普及の障壁となっているという問題がある。
このような問題を解決するために、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子表面上にコーティング剤を用いることにより被覆する方法が提案されている。このようなコーティング剤としては、無機系のコーティング剤と有機系のコーティング剤に大別され、無機系のコーティング剤としては酸化チタン、酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸コバルト、フッ化リチウム等の材料が、有機系のコーティング剤としてはヒュームドシリカ、カルボキシメチルセルロース、フッ素含有ポリマー等の材料が提案されている。
例えば、特許文献1では、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子表面にフッ化リチウム(LiF)又はフッ素含有ポリマー層を形成する方法、また、特許文献2では、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子にフッ素含有ポリマー層を形成し、さらに不純物を中和するためのルイス酸化合物を添加する方法が提案されている。いずれの処理もフッ素系材料を含有するコーティング層によりリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を疎水性に改質され、水分の吸着を抑制し、水酸化リチウム(LiOH)等の不純物の堆積を抑制することが可能となる。
しかしながら、コーティングに用いられるフッ素系材料を含有するコーティング層は、電気伝導性を有していない。そのため、不純物の堆積を抑制することができても、コーティング層そのものが絶縁体となってしまうことから、正極抵抗の増加し、電池特性の低下を引き起こす。そのため、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子そのものの品質が低下するという問題があった。
特許文献3では、リン酸化合物を被着させて加熱することで、電池内部におけるガス発生を抑制することのできる正極活物質の製造方法が提案されている。しかし、特許文献3では、電池内部におけるガス発生を課題としており、ゲル化については十分検討されているとはいえない。そのため、スラリーのゲル化の防止と正極活物質の電気特性維持とを両立し得る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を製造することができる最適条件について十分に検討されているとはいえない。
特開2013−179063号公報 特表2011−511402号公報 特開2010−55777号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、大気雰囲気下で取り扱うことができ、且つ電池特性に悪影響がないリチウムイオン伝導体の被膜を得ることのできる、被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法の提供を目的とする。
本発明は、上述した従来技術における問題点を解決するために、被覆工程を、より具体的には、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物の混合条件について鋭意研究を重ね検討をした結果、所定の水蒸気及び二酸化炭素濃度以下の酸素雰囲気下で混合を行うことで、大気中の水分や炭酸ガスにより生じる不純物の生成を抑制でき、不純物に起因するスラリーのゲル化を抑制することを見出した。そのため、材料取り扱い時、輸送時、保管時、電極作製及び電池製造時における大気雰囲気下での取り扱いを可能とする好適な被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を製造することのできる製造方法であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち第一の発明は、ニッケル塩と、コバルト塩と、添加金属塩と、を含む混合水溶液に、アルカリ溶液を含む水溶液を加えて、共沈物として複合水酸化物を製造する複合水酸化物製造工程と、前記複合水酸化物製造工程により製造された複合水酸化物粒子を加熱して熱処理粒子を得る熱処理工程と、前記熱処理粒子と、リチウム又は/及びリチウム化合物と、を混合し、焼成することでリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る焼成工程と、前記焼成工程によって得られたリチウム−ニッケル複合酸化物粒子と、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物の混合物の全量に対して2.0質量%以上5.0質量%以下のリン酸化合物と、を水蒸気が500ppm以下及び二酸化炭素が50ppm以下の酸素雰囲気下で混合し、120℃以上300℃以下の温度で加熱し被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る被覆工程と、を含む非水電解液二次電池用正極活物質用の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
本発明の第二は、前記被覆工程における被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の被覆膜が非晶質である第一の発明に記載の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
本発明の第三は、前記複合水酸化物製造工程における混合水溶液が、さらに錯化剤を含む混合水溶液である第一又は第二の発明に記載の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
前記リチウム−ニッケル複合酸化物粒子が下記一般式(1)で表される第一から第三のいずれかの発明に記載の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法である。
LiNi(1−y−z) ・・・(1)
(式中、xは0.90〜1.20、yは0.01〜0.20、zは0.01〜0.15、1−y−zは0.75を超える値であって、Mは、Co及びMnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を示し、NはAl、In、Mg、W、Mo及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を示す。)
本発明の製造方法により製造される被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子は、良好な電気伝導性及びリチウムイオン伝導性を有し、且つ水分、炭酸ガスの透過を抑制できる膜で被覆された優れた被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子である。
この被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子は、これまで炭酸ガス濃度、水分濃度が厳しく管理された正極製造設備に変わり、コバルト系、三元系で用いられてきた製造設備も流用でき、高容量リチウムイオン電池用複合酸化物正極活物質として提供できる。
実施例1に係る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の被覆状態を示したTEM写真である。 比較例2に係る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の被覆状態を示したTEM写真である。
以下に本発明の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とその製造方法について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の詳細な説明によって限定的に解釈されるものではない。本発明において、一次粒子が凝集した二次粒子をリチウム−ニッケル複合酸化物粒子と呼ぶ場合がある。
[リン酸とリチウムの化合物]
本実施形態の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とは、リン酸とリチウムの化合物の被覆膜によって被覆されたリチウム−ニッケル複合酸化物粒子である。リン酸とリチウムの化合物の被覆膜が被覆されることで、水分、炭酸ガスの透過を抑制することができる。そのため、大気中の水分や炭酸ガスにより生じる不純物の生成を抑制し、正極合剤スラリー製造工程におけるpH及びスラリー粘度の上昇を抑制することができる。
リン酸とリチウムの化合物とは、リン酸基(PO)とリチウム(Li)元素とを含む化合物をいう。リン酸とリチウムの化合物としては、リン酸基(PO)とリチウム(Li)元素とを含む化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、リン酸三リチウム(LiPO)、リン酸ニ水素リチウム(LiHPO)、リン酸水素二リチウム(LiHPO)等を挙げることができる。
また、被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子のリン酸とリチウムの化合物の被覆膜は非晶質であることが好ましい。被覆膜が非晶質であることで、リチウムイオンの移動を好ましいものとすることができる。そのため、被覆膜による放電容量等の電池特性の低下を防ぐことができる。
リン酸とリチウムの化合物の被覆膜の膜厚は、20nm以上90nm以下とするのが好ましい。膜厚が20nm未満であると、大気中の水分や炭酸ガスにより生じる不純物生成の抑制が困難となる傾向がある。膜厚が90nm超であると、電池正極活物質として放電容量の低下やクーロン効率が低下し、電池特性が低下する傾向がある。
また、リン酸とリチウムの化合物の被覆量は、被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子全量に対して2.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。リン酸とリチウムの化合物の被覆量をこのような範囲にすることで、大気中の水分や炭酸ガスにより生じる不純物生成の抑制を妨げることができるとともに、電池正極活物質として放電容量やクーロン効率が低下することがなくなるため、好ましい電池特性を維持することができる。
[リチウム−ニッケル複合酸化物粒子]
本発明に用いられるリチウム−ニッケル複合酸化物粒子は、球状粒子であり、その平均粒径は、5〜20μmであることが好ましい。このような範囲とすることで、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子として良好な電池性能を有するとともに、且つ良好な電池の繰り返し寿命(サイクル特性)の両立ができるため好ましい。
また、ニッケル系リチウム−ニッケル複合酸化物粒子は、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
LiNi(1−y−z)・・・(1)
(式中、xは0.90〜1.20、yは0.01〜0.20、zは0.01〜0.15、1−y−zは0.75を超える値であって、Mは、Co及びMnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を示し、NはAl、In、Mg、W、Mo及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を示す。)
なお、1−y−zの値(ニッケル含有量)は、容量の観点から、好ましくは0.80を超える値であり、さらに好ましくは0.90を超える値である。
コバルト系(LCO)、三元系(NCM)、ニッケル系(NCA)の電極エネルギー密度(Wh/L)は、それぞれ2160Wh/L(LiCoO2)、2018.6Wh/L(LiNi0.33Co0.33Mn0.33Co0.33O2)、2376Wh/L(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)となる。そのため、当該ニッケル系リチウム−ニッケル複合酸化物粒子をリチウムイオン電池の正極活物質として用いることで、高容量の電池を作製することができる。
[被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法]
被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を製造する製造方法について説明する。
(複合水酸化物粒子製造工程)
複合水酸化物粒子製造工程とは、硫酸ニッケル(II)等のニッケル塩と硫酸コバルト(II)等のコバルト塩と添加金属塩の混合水溶液に、アルカリ溶液を含む水溶液を加えて、共沈物として複合水酸化物粒子を得る工程である。添加金属塩に用いられる添加元素としてはAl、In、Mg、W、Mo及びSnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を用いることができる。また遷移金属に対するコバルトの濃度及び添加元素の濃度は結晶構造の安定化や安全性の観点から、コバルトの濃度が10原子%以上35原子%以下、添加元素の濃度が0原子%以上35原子%以下とすることが好ましい。
混合水溶液は、アルカリ溶液を含む水溶液を加えることで、アルカリ性になるようにする。混合水溶液のpH領域は、錯化剤を加えない場合には、pH=10〜11を選択し、且つ混合水溶液の温度を、60℃以上80℃以下の範囲とすることが好ましい。このような範囲とすることで、反応速度を適切な範囲にすることができる。また、Niの溶解度が好ましいものとなり、晶析による粒子の形成を防ぐことができる。pH11を超えた状態で晶析すると細かい粒子を形成し、濾過性も悪くなり、球状粒子が得られなくなる傾向がある。pH10未満にすると水酸化物の生成速度が著しく遅くなり、濾液中にNiが残留し、Niの沈殿量が目的組成からずれて目的の比率の混合水酸化物が得られなくなる傾向がある。また、混合水溶液の温度が60℃未満となると反応速度が十分でなくなる傾向がある。さらに、混合水溶液の温度が80℃を超えると、水の蒸発量が多くなるため、スラリー濃度が高くなり、Niの溶解度が低下する上、濾液中に硫酸ナトリウム等の結晶が発生し、不純物濃度が上昇する等正極材の充放電容量が低下しやすくなる傾向がある。
複合水酸化物作製工程における混合水溶液には、アルカリ溶液を含む水溶液を加えることの他、さらにアンモニア等の錯化剤を加えることが好ましい。アンモニア等の錯化剤を加えることで、Niの溶解度が上昇させることができる。錯化剤を用いた場合には、混合水溶液のpH領域はpH=10〜12.5を選択し、且つ混合水溶液の温度を40℃以上60℃以下の範囲とすることが好ましい。反応槽内において、反応水溶液中の錯化剤濃度は、好ましくは3g/L以上25g/L以下の範囲内で一定値に保持する。錯化剤濃度が3g/L未満であると、金属イオンの溶解度を一定に保持することができないため、形状及び粒径が整った板状の水酸化物一次粒子が形成されず、ゲル状の核が生成しやすいため粒度分布も広がりやすくなる傾向がある。一方、アンモニア濃度が25g/Lを超える濃度では、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎ、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、組成のずれ等が起きる傾向がある。また、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な水酸化物粒子が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度は、上限と下限の幅を5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。
(熱処理工程)
熱処理工程とは、複合水酸化物製造工程において製造された複合水酸化物粒子を加熱して熱処理し、熱処理粒子を得る工程である。熱処理工程により、複合水酸化物粒子に含有されている水分を除去することができる。この熱処理工程を行うことによって、粒子中に焼成工程まで残留している水分を減少させることができる。また、複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子に転換することができるので、製造される正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合がばらつくことを防ぐことができる。なお、正極活物質中の金属の原子数やリチウムの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしもすべての複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子に転換する必要はない。熱処理工程において、複合水酸化物粒子は残留水分が除去される温度まで加熱されればよく、その熱処理温度はとくに限定されないが、105℃以上800℃以下とすることが好ましい。複合水酸化物粒子を105℃以上に加熱すれば残留水分を除去することができる。なお、105℃未満では、残留水分を除去するために長時間を要する傾向にある。800℃を超えると、複合酸化物に転換された粒子が焼結して凝集する傾向にある。熱処理を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、簡易的に行える空気気流中において行うことが好ましい。
(焼成工程)
焼成工程とは、熱処理工程によって得られた熱処理粒子と、リチウム又は/及びリチウム化合物とを混合したリチウム混合物を焼成することでリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る工程である。熱処理粒子とは、熱処理工程において残留水分を除去された複合水酸化物粒子や、熱処理工程で酸化物に転換された複合酸化物粒子、又はそれらの混合粒子である。リチウム混合物は、リチウム混合物中のリチウム以外の金属の原子数(すなわち、ニッケル、コバルト及び添加金属の原子数の和(Me))と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.90〜1.20が好ましく、より好ましくは0.95〜1.10となるように、混合される。つまり、リチウム混合物におけるLi/Meが、本発明の正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。これは、焼成工程前後で、Li/Meは変化しないので、混合するLi/Meが正極活物質におけるLi/Meとなるからである。
リチウム化合物は特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、硝酸リチウム又は炭酸リチウム、もしくはその混合物は入手が容易であるという点で好ましい。とくに、取り扱いの容易さ、品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムを用いることがより好ましい。
なお、リチウム混合物は、焼成前に十分混合しておくことが好ましい。焼成前に混合を十分に行うことで、個々の粒子間でLi/Me(添加金属)のばらつきがなくなり、十分な電池特性を得ることができる。
焼成工程は、上記のリチウム混合物を焼成して、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る工程である。焼成工程においてリチウム混合物を焼成すると、熱処理粒子に、リチウムを含有する物質中のリチウムが拡散するので、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子が形成される。リチウム混合物の焼成は、700℃以上850℃以下で行い、とくに720℃以上820℃以下で行うことが好ましい。焼成温度が700℃未満であると、熱処理粒子中へのリチウムの拡散が十分に行われなくなり、余剰のリチウムや未反応の粒子が残り、結晶構造が十分整わなくなる傾向がある。また、焼成温度が850℃を超えると、熱処理粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じる傾向がある。すると、焼成後の粒子が粗大となってしまい粒子形態(後述する球状二次粒子の形態)を保持できなくなる可能性があり、正極活物質を形成したときに、比表面積が低下して正極の抵抗が上昇して電池容量が低下する傾向がある。また、焼成時間は、少なくとも3時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、6時間以上24時間以下である。
また、焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気下とすることが好ましく、とくに、酸素濃度が18容量%以上100容量%以下の雰囲気下とすることがより好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。これは、酸素濃度が18容量%未満であると、熱処理された粒子に含まれる複合水酸化物粒子を十分に酸化できず、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の結晶性が十分でない状態になる可能性があるからである。とくに電池特性を考慮すると、酸素気流中で行うことが好ましい。
[被覆工程]
被覆工程とは、焼成工程によって得られたリチウム−ニッケル複合酸化物粒子に水蒸気及び二酸化炭素が除かれた雰囲気下でリン酸化合物と混合して表面に反応させ、リン酸とリチウムの化合物の被覆膜を被覆する工程である。焼成工程において得た複合酸化物を水に分散させた場合高いアルカリ性を示す。これは粒子の外表面に存在するリチウムが溶出し、水酸化リチウムを生成するためである。この外表面のリチウムは極めて反応性に富んでいるため、雰囲気中の水蒸気や二酸化炭素と反応するほどである。この水蒸気や二酸化炭素は電池を組み立てたときに電池容器の変形等を引き起こす原因となり、焼成後の複合酸化物は水蒸気が500ppm以下及び二酸化炭素が50ppm以下の酸素雰囲気下で混合する。そのようにして焼成直後の酸化状態が保たれたままの複合酸化物とリン酸化合物とを接触させることによって粒子表面のリチウムとリン酸化合物が速やかに反応し、リン酸とリチウムの化合物が生成する。なお、酸素雰囲気下における酸素の濃度は18容量%以上100容量%以下であることが好ましい。
リン酸化合物とは、リン酸基を含む構造を有する化合物をいう。複合酸化物とリン酸化合物とを接触させることによって粒子表面のリチウムとリン酸化合物が速やかに反応し、リン酸とリチウムの化合物が生成する。リン酸化合物としては、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム、リン酸リチウム又はこれらの混合物を挙げることができる。
リン酸化合物は、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物の混合物の全量に対して2.0質量%以上5.0質量%以下混合する。2.0質量%未満であると、リン酸とリチウムの化合物の被覆量が十分ではないため、不純物に起因するスラリーのゲル化を抑制することが困難となる。5.0質量%超であるとリン酸とリチウムの化合物の被覆量が多すぎるため、正極活物質の電気特性に影響を与え電池の初期放電容量が低下する。
また、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物の混合物を120℃以上300℃以下の温度で加熱する。このような温度で加熱することで、リン酸化合物に付着、随伴する水分や二酸化炭素を除去することができる。そのため、不純物に起因するスラリーのゲル化を抑制することができる。ただし、400℃以上の高温にさらされた場合その高いエネルギーによって反応が促進されるが、冷却したときに結晶化しやすくなる。結晶化が進むとリチウムの移動性が失われ、電池性能が低下する。また、400℃以上の高温に晒された場合、形成された化合物が過剰な凝集を起こし被覆膜にムラができるため、被覆膜による粒子全体の被覆が不十分となり、露出した複合酸化物粒子表面によるゲル化の抑制が困難である。したがって、リン酸とリチウムの化合物を生成させる温度は120℃以上300℃以下とし、水蒸気が500ppm以下及び二酸化炭素が50ppm以下であって、酸素気流中の雰囲気下であることがもっとも好ましい。
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。但し、本発明は以下実施例によってのみ限定されるものではない。
(実施例1)
硫酸ニッケルと硫酸コバルトとアルミン酸ナトリウムとを水中に溶解し、さらに十分に撹拌させながら水酸化ナトリウム溶液を加えて、ニッケル(Ni)と、コバルト(Co)と、アルミニウム(Al)とのモル比がNi:Co:Al=81.5:15:3.5となるようにして共沈物として複合水酸化物粒子を得た。生成した共沈物をろ過、水洗し、乾燥させた後、大気中で700℃まで昇温して6時間保持した後、室温まで炉冷することで熱処理を行い、熱処理粒子を得た。
この熱処理粒子とリチウム又は/及びリチウム化合物として市販の水酸化リチウム一水和塩を、モル比がLi:(Ni+Co+Al)=103:100となるようにして十分混合して、酸素気流中で500℃まで昇温して500℃で3時間保持した後に、745℃まで昇温して12時間保持した後、室温まで炉内で冷却することで、遷移金属組成Li1.03Ni0.82Co0.15Al0.03で表されるリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得た。
このリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を外気に触れさせないように取り出し、水蒸気と二酸化炭素が除去された雰囲気下として酸素雰囲気下(酸素が99.9容量%、水蒸気が495ppm、二酸化炭素が30ppm)で粉砕した。そして、粉砕したリチウム−ニッケル複合酸化物粒子25gとリン酸二水素アンモニウム(NHPO)0.6gを十分混合した。この混合物を、酸素気流中、300℃で4時間保持して室温まで冷却した後、炉から取り出して実施例1の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得た。なお、EDX像により被覆膜について元素分析を行ったところ、リン元素が検出されたことからリン酸とリチウムの化合物が被覆されていることが推認される。
このリン酸とリチウムの化合物が被覆された被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を実施例1に係る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子として、以下に示した大気安定性試験、ゲル化試験、及び電池特性試験(充放電試験、クーロン効率)を行った。
(実施例2)
実施例1においてリン酸二水素アンモニウム(NHPO)の量を1.2gとした以外は実施例1と同じにして、実施例2の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得て、各種評価を行った。
(実施例3)
実施例1において複合酸化物とリン酸二水素アンモニウムとの混合物を加熱する温度を120℃としたほかはすべて実施例1と同じにして、実施例3とした。
(比較例1)
実施例1においてリン酸二水素アンモニウム(NHPO)を添加混合しないほかはすべて実施例1と同じにして、比較例1のリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得て、各種評価を行った。
(比較例2)
実施例1においてリン酸二水素アンモニウム(NHPO)の量を1.8gとした以外は実施例1と同じにして、比較例2とし、各種評価を行った。
(比較例3)
実施例1において複合酸化物を100g、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)の量を0.8gとしたほかはすべて実施例1と同じにして、比較例3とし、各種評価を行った。
(比較例4)
実施例1において複合酸化物とリン酸二水素アンモニウム(NHPO)との混合物を加熱する温度を700℃としたほかはすべて実施例1と同じにして、比較例4とし、各種評価を行った。
(比較例5)
実施例1において複合酸化物とリン酸二水素アンモニウムとの混合物を加熱する温度を120℃、雰囲気を大気中(酸素が20容量%、水蒸気が19000ppm、二酸化炭素が400ppm)としたほかはすべて実施例1と同じにして、比較例5とし、各種評価を行った。
(比較例6)
実施例1において雰囲気を大気(酸素が20容量%、水蒸気が19000ppm、二酸化炭素が400ppm)としたほかはすべて実施例1と同じにして、比較例6とし、各種評価を行った。
<ゲル化試験>
正極合剤スラリーの粘度の経時変化の測定を、以下の順序により正極合剤スラリーを作製し、粘度増加及びゲル化の観察を行った。
配合比として、実施例及び比較例に係るリチウム−ニッケル複合酸化物粒子:導電助剤:バインダー:N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のそれぞれの質量比が、45:2.5:2.5:50となるように秤量し、さらに1.5質量%の水を添加後、自転・公転ミキサーで撹拌して正極合剤スラリーを得た。得られたスラリーを25℃のインキュベーター内で保管し、経時変化をスパチュラでかき混ぜ粘度増加、ゲル化度合いを、実施例及び比較例についてそれぞれ確認し、完全にゲル化するまで保管を行った。ゲル化までの日数を表1に示す。
表1より、実施例1及び実施例2に係るスラリーが完全にゲル化するまでに3日を要したのに対し、比較例1、比較例3、比較例5及び比較例6に係るスラリーが完全にゲル化するまでには8時間(1日以内)を要した。このことから、実施例に係るスラリーは、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子表面にリン酸とリチウムの化合物が被覆されていることで、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)といった不純物の生成が抑えられ、これら不純物とバインダーと反応することによるスラリーのゲル化及びスラリー粘度の上昇させることを妨げることができることが確認された。一方、リン酸とリチウムの化合物を被覆していない比較例1や、被覆工程においてリン酸化合物であるリン酸二水素アンモニウム(NHPO)を混合物全量に対して2.0質量%未満しか混合していない比較例3や、被覆工程を300℃超の雰囲気下で行っている比較例4や、被覆工程においてリチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物であるリン酸二水素アンモニウム(NHPO)との混合を大気雰囲気化(酸素が20容量%、水蒸気が19000ppm、二酸化炭素が400ppm)で行っている比較例5は、ゲル化及びスラリー粘度の上昇が生じたことが確認された。これは、比較例1、3、4、5、6については、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)といった不純物が生成されたものと推定される。
<電池特性評価>
以下の手順にて、評価用非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製し、電池特性評価を行った。
[二次電池の製造]
被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の電池特性評価は、コイン型電池とラミネート型電池を作製し、コイン型電池で充放電容量測定及びクーロン効率の測定を行った。
(a)正極
得られた実施例及び比較例に係る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子に、導電助剤としてのアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とをこれらの材料の質量比が85:10:5となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に溶解させ、正極合剤スラリーを作製した。この正極合剤スラリーを、コンマコーターによりアルミ箔に塗布し、100℃で加熱し、乾燥させることにより正極を得た。得られた正極をロールプレス機に通して荷重を加え、正極密度を向上させた正極シートを作製した。この正極シートをコイン型電池評価用に直径がφ9mmとなるように打ち抜き、またラミネートセル型電池用に50mm×30mmとなるように切り出し、それぞれを評価用正極電極として用いた。
(b)負極
負極活物質としてグラファイトと、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これらの材料の質量比が92.5:7.5となるように混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液に溶解させて、負極合剤ペーストを得た。
この負極合剤スラリーを、正極と同様に、コンマコーターにより銅箔に塗布し、120℃で加熱し、乾燥させるとことにより負極を得た。得られた負極をロールプレス機に通して荷重を加え、電極密度を向上させた負極シートを作製した。得られた負極シートをコイン型電池用にφ14mmとなるように打ち抜き、またラミネートセル型電池用に54mm×34mmとなるように切り出し、それぞれを評価用負極として用いた。
(c)コイン電池及びラミネートセル型電池
作製した評価用電極を真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。そして、この正極を用いて2032型コイン電池とラミネートセル型電池を、露点が−80℃に管理されたアルゴン雰囲気のグローブボックス内で作製した。電解液には、1MのLiPFを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7(富山薬品工業株式会社製)、セパレーターとしてガラスセパレーターを用いてそれぞれの評価用電池を作製した。
<<充放電試験>>
作製したコイン型電池について、組立から24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、25℃の恒温槽内で、0.2Cレートの電流密度でカットオフ電圧4.3Vになるまで充電した。1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行い、初期放電容量(mAh/g)とクーロン効率を求めた。評価結果を表1に示す。
表1より実施例1に係るコイン型電池の初期放電容量は、197.1mAh/g、クーロン効率は92.7%、実施例2に係るコイン型電池の初期放電容量は、194.8mAh/g、クーロン効率は92.5%であり、良好な電池特定を維持できている。これに対し、リン酸化合物の量が5.0質量%超の比較例2に係るコイン型電池の初期放電容量は、185.6mAh/g、クーロン効率は91.6%となっており、実施例に比べ、初期放電容量等の低下が見られる。これは被覆量が多すぎたため、正極活物質の電気特性に影響を与えたものと考えられる。また、被覆工程における混合を大気雰囲気化(酸素が20容量%、水蒸気が19000ppm、二酸化炭素が400ppm)で行っている比較例5に係るコイン型電池のクーロン効率は91.8%、比較例6に係るコイン型電池のクーロン効率は91%となっており、実施例に比べ、クーロン効率の低下が見られる。これは、被覆工程における混合を水蒸気500ppm超や二酸化炭素50ppm超の大気雰囲気下(酸素が20容量%、水蒸気が19000ppm、二酸化炭素が400ppm)で行ったことから、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)といった不純物が発生し、電池の安定性に問題が生じたものと考えられる。
表1に実施例1〜3と比較例1〜3についてリン酸リチウム化合物のTEM観察から求めた粒子表面における厚さを示す。また、図1に、実施例1に係る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の被覆状態を示したTEM写真を示し、図2に、比較例2に係る被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の被覆状態を示したTEM写真を示す。図1より、実施例1では粒子外表面に粒子の材質とは異なるものが厚さ約40nmの被覆膜状になっていた。また、被覆膜は、EDX像からリンを含むものであることが確認された。図2より、比較例2では同様にリンを含むものが粒子外表面に約100nmの厚みで覆っている。また、XRD測定においていずれの試料もニッケル酸リチウムに帰属されるピーク以外のピークは見られず、生成した化合物が非晶質であることが確認された。
また、実施例及び比較例のリチウム−ニッケル複合酸化物粒子2.5gをイオン交換水50mlに分散させ、水素イオン濃度(pH)を測定した結果を合わせて表1に示す。比較例1はpH12を超える値を示し、粒子外表面にリチウム−ニッケル複合酸化物粒子に起因するリチウムが存在していることが示唆される。一般にリチウムとリン酸はリン酸三リチウムやリン酸一水素二リチウム等のリン酸リチウム化合物を形成するので、複合酸化物粒子表面においてこの反応が起こっていると考えられる。複合酸化物粒子表面のリチウムがリン酸と化合物を形成し安定化されることによって、水に分散させたときのpHの値が小さくなり、ゲル化の原因とされるpHの高さが下げられていることが分かる。

Claims (4)

  1. ニッケル塩と、コバルト塩と、添加金属塩と、を含む混合水溶液に、アルカリ溶液を含む水溶液を加えて、共沈物として複合水酸化物を製造する複合水酸化物製造工程と、
    前記複合水酸化物製造工程により製造された複合水酸化物粒子を加熱して熱処理粒子を得る熱処理工程と、
    前記熱処理粒子と、リチウム又は/及びリチウム化合物と、を混合し、焼成することでリチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る焼成工程と、
    前記焼成工程によって得られたリチウム−ニッケル複合酸化物粒子と、リチウム−ニッケル複合酸化物粒子とリン酸化合物の混合物の全量に対して2.0質量%以上5.0質量%以下のリン酸化合物と、を水蒸気が500ppm以下及び二酸化炭素が50ppm以下の酸素雰囲気下で混合し、120℃以上300℃以下の温度で加熱し被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子を得る被覆工程と、を含む非水電解液二次電池用正極活物質用の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記被覆工程における被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の被覆膜が非晶質である請求項1に記載の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
  3. 前記複合水酸化物製造工程における混合水溶液が、さらに錯化剤を含む混合水溶液である請求項1又は2に記載の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
  4. 前記リチウム−ニッケル複合酸化物粒子が下記一般式(1)で表される請求項1から3のいずれかに記載の被覆リチウム−ニッケル複合酸化物粒子の製造方法。
    LiNi(1−y−z) ・・・(1)
    (式中、xは0.90〜1.20、yは0.01〜0.20、zは0.01〜0.15、1−y−zは0.75を超える値であって、Mは、Co及びMnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を示し、NはAl、In、Mg、W、Mo及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種類の元素を示す。)

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