JP2016142731A - 培養細胞を用いた標準試料及びその製造方法 - Google Patents

培養細胞を用いた標準試料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な、培養細胞を含んだ標準試料及びその製造方法を開発することを目的とする。【解決手段】本発明は、細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックからなり、その細胞ペレットは、培養細胞とアルギン酸のゲルとを含み、細胞ペレット中の水分が脱水されて除かれていることを特徴とする標準試料を提供する。【選択図】 図1

Description

本発明は、細胞内のタンパク質、核酸、多糖等の生体分子を検出する際に、あるいは、検査の対象となる細胞が、癌などの異常細胞であるか、それとも、正常細胞であるかといった細胞の判別をする際に、参照するための標準(コントロール)として用いる標準試料に関する。本発明の標準試料は、細胞ペレットを含む凍結ブロック又はその切片である。また、本発明は、当該標準試料の製造方法、当該標準試料を用いた検査方法、当該標準試料を含む検査キットを提供する。
癌の診断においては、患者の病変組織由来の細胞を観察して、癌細胞であるかどうかを判定し、癌細胞である場合にはその種類を判定すること(「細胞診断」)が極めて重要である。
細胞診断あたっては、細胞の形態を観察するだけでなく、細胞内の生体分子(タンパク質、DNA、RNA、多糖等)を検出することにより、より正確に判定を行うことができる。細胞内の生体分子を検出する手法としては、特定の生体分子に特異的な抗体を用いて染色(イメージング)をする、いわゆる免疫染色(免疫組織化学、Immunohistochemistry、IHC)や、核酸同士の相補的結合を利用して染色(イメージング)を行うin situ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization、ISH)が一般的な手法となっている。
例えば、ヒトのHER2遺伝子は、ヒト乳癌症例の15〜25%で遺伝子の増幅と、HER2タンパク質の過剰発現が認められる癌遺伝子であるが、HER2遺伝子増幅/HER2タンパク過剰発現のある乳癌患者は予後不良であり、ホルモン療法及びCMF療法に対する治療抵抗性を示すとの報告がある。また、HER2遺伝子増幅/タンパク過剰発現が確認された乳癌に対しては、ハーセプチチン(登録商標、一般名トラスツズマブ)の投与により、生存期間・生存率の有意な改善が認められている。
したがって、乳癌患者に対しては、免疫染色(免疫組織化学、IHC)やin situ ハイブリダイゼーション(ISH)により、HER2遺伝子/HER2タンパク質の検査を行うことが、予後の予測と治療方針の決定において重要となる。しかし、この判定は、病理医が染色強度などを見て主観的に診断しており、過去のHER2検査のうち20%程度が不正確なものであったとする見解もあり、その精度はまだ十分なものとはいえない。
細胞診断を誤れば、重大な疾患を見過ごすことにもつながり、また、誤った治療方針を選択することにもつながる。したがって、病理医の主観的な判断だけでなく、客観的な指標を用いることにより、判定制度を高めることが好ましい。免疫染色(免疫組織化学、IHC)やin situ ハイブリダイゼーション(ISH)による判定精度を高めるためには、標準試料を用いることが一つの効果的な方法である。標準試料とは、細胞診断にあたり検出対象とするタンパク質や核酸を所定の濃度で含む人工的な試料、あるいは細胞や生体組織等を観察可能な試料としたものである。標準試料に含まれるタンパク質や核酸等の濃度はあらかじめわかっているため、標準試料と診断対象となる細胞とを同一の処理により染色し、両者の染色の程度を比較することにより、診断対象となる細胞におけるタンパク質や核酸の発現の程度をより正確に把握することができる。また、検出対象となる生体分子を含む標準試料を陽性コントロールとして用いることにより、染色操作に誤りがあった場合には、本来染色されるはずの標準試料(陽性コントロール)が染色されないことによって、その操作の誤りに気付くことができる。逆に、検出対象となる生体分子を含まない標準試料を陰性コントロールとして用いることにより、染色操作に誤りがあった場合には、本来染色されないはずの標準試料(陰性コントロール)が染色されてしまうことにより、その操作の誤りに気付くことができる。このように、標準試料を用いることで、細胞診断をより正確に行うことができる。
標準試料として、人工的な試料を用いたものとしては、例えば、特開平2−32260(特許文献1)には、寒天溶液をゲル化したブロックにおいて複数のくぼみを設け、それぞれのくぼみの中に特定濃度の抗原溶液を吸着させたゲルペレットを設けたことを特徴とする標準試料が開示されている。また、WO00/62064(特許文献2)には、特定の濃度の抗原を複数スポットしたスプリット状の標準試料を、免疫染色反応を行うスライドガラス上に貼り付けて使用することが開示されている。
標準試料として、培養細胞を用いた標準試料を用いた場合には、タンパク質や核酸等の特定の分子の発現量について標準試料を参照して比較できるだけでなく、細胞の形態についても標準試料を参照として比較できるので有用である。
細胞そのものを用いた標準試料としては、WO91/05263(特許文献3)には、標準となる培養細胞をゼラチン・寒天などに包埋してスライスした標準試料が開示されている。
このように、培養細胞は生体組織とは異なり固形化されていないため、これを染色して観察するための試料とするためには、ゼラチンや寒天、アガロースなどで固形化する必要があった。しかし、ゼラチンや寒天、アガロースなどは水を多量に含むものであるため、凍結すると氷晶の形成により細胞が破壊されてしまい、染色性が低下しているものであった。
また、特表2005−509870(特許文献4)は、凍結ブロックにおいて複数のピンを用いて複数のウェルを形成し、そのウェル内に細胞の懸濁液を充填した試料が記載されている。また、この試料のウェルの一部には内部標準試料となる細胞懸濁液を充填してもよいことが記載されている。
しかし、この標準試料においても、細胞懸濁液に水分が多く含まれているため、氷晶の形成により細胞が破壊されてしまい、染色性が低下しているものであった。
標準試料は十分な安定性が必要であるところ、培養細胞を用いた標準試料は染色性が低下しており、また、長期保存が困難であるという問題があった。
特開平2−32260号公報 国際公開WO00/62064号パンフレット 国際公開WO91/05263号パンフレット 特表2005−509870号公報
従来の培養細胞を用いた標準試料は、染色性が低下しており、長期保存が困難であるという問題があった。
そこで、本発明は、上記従来の状況に鑑み、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な、培養細胞を含む標準試料及びその製造方法を開発することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、アルギン酸のゲルを用いて細胞ペレットを作製し、これを脱水して、凍結組織包埋剤に包埋して凍結したところ、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な標準試料を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、標準試料に関する第1の発明と、当該標準試料の製造方法に関する第2の発明と、当該標準試料を用いて細胞内生体分子の検出又は細胞の判定を行う検査方法に関する第3の発明と、当該標準試料を含む検査キットに関する第4の発明を提供する。
第1の発明は、細胞内生体分子の検出又は細胞の判定において参照とするための標準試料を提供する。
第1の発明の標準試料は、細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックからなり、その細胞ペレットは、アルギン酸のゲルとそのゲル中に分散された培養細胞を含み、細胞ペレット中の水分が脱水されて除かれていることを特徴とする標準試料である。
第1の発明の標準試料において、細胞ペレットに含まれる培養細胞を、癌細胞由来の株化細胞の培養細胞とした標準試料が好ましい。
また、癌細胞由来の株化細胞の培養細胞を用いた場合、特定の種類の癌細胞に由来する第1の株化細胞の培養細胞を含む第1の細胞ペレットと、その特定の種類の癌細胞とは異なる種類の癌細胞に由来する第2の株化細胞の培養細胞を含む第2の細胞ペレットとを有し、第2の株化細胞は、第1の株化細胞の腫瘍マーカーとなるタンパク質のうち少なくとも一つを発現していない株化細胞である標準試料とすることが好ましい。
第1の発明の標準試料においては、培養細胞として、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子を導入して形質転換された、非ヒト由来の培養細胞を用いることもできる。
また、上記標準試料においては、ホルムアルデヒドを含む溶液を用いて化学的に固定された培養細胞を用いた標準試料が好ましい。
さらに、上記標準試料を、薄く切断した切片とすることもできる。
次に、第2の発明は、培養細胞とアルギン酸の水溶性塩の溶液を混合するステップB)と、ステップB)により混合した溶液を遠心分離し、上清を取り除くことにより、沈殿を得るステップC)と、ステップC)により得られた沈殿に、2価のカチオンを含む溶液を滴下することにより、沈殿中のアルギン酸をゲル化させて細胞ペレットを作製するステップD)と、ステップD)により作製した細胞ペレットを脱水するステップE)と、ステップE)により脱水した細胞ペレットを、凍結ブロック作成容器内で凍結組織包埋剤に浸漬して、凍結ブロック作成容器ごと凍結させるステップF)とを有することを特徴とする、標準試料の製造方法を提供する。
第2の発明の製造方法では、ステップE)において、細胞ペレットを低級アルコールの溶液に浸漬して脱水を行う製造方法とすることが好ましい。
この場合において、低級アルコールの溶液としては、エタノールの溶液を用いることが好ましい。
また、これらの場合において、濃度の異なる複数の低級アルコールの溶液を用い、濃度の低い低級アルコールの溶液に細胞ペレットを浸漬して脱水を行った後に、濃度の高い低級アルコールの溶液に細胞ペレットを浸漬して脱水を行う製造方法とすることが好ましい。
また、ステップE)において低級アルコールの溶液を用いて脱水を行う場合、ステップF)において、細胞ペレットを容器内で凍結組織包埋剤に浸漬して、細胞ペレット中の低級アルコールを凍結組織包埋剤と置換した後に、細胞ペレットを容器内から取り出し、この細胞ペレットを凍結ブロック作成容器内で凍結組織包埋剤に浸漬し、凍結ブロック作成容器ごと凍結する製造方法とすることが好ましい。
上記製造方法では、アルギン酸の水溶性塩としてアルギン酸ナトリウムを用い、2価のカチオンを含む溶液として塩化カルシウムの溶液を用いる製造方法とすることが好ましい。
上記の製造方法においては、さらに、培養細胞を固定するステップA)を含む製造方法とすることが好ましい。
この場合においては、培養細胞を固定するために、ステップB)の前にステップA)を行い、そのステップA)は、ホルムアルデヒドを含む溶液中に培養細胞を浸漬することで、培養細胞のタンパク質を架橋して固定する製造方法とすることが好ましい。
第3の発明は、細胞内生体分子を検出し、又は細胞の判定をする検査方法を提供するものであり、第1の発明の標準試料と検査の対象となる被検細胞に対し、同一の染色処理を施す第1のステップと、染色処理を施した標準試料と被検細胞を比較する第2のステップとを含む検査方法を提供する。
最後に第4の発明の検査キットは、細胞内生体分子を検出し又は細胞の判定をするために用いる検査キットであって、第1の発明の標準試料と、その標準試料に含まれる培養細胞の発現する生体分子に特異的な抗体、又はその培養細胞が有する核酸分子にハイブリダイズする核酸を含む検査キットを提供する。
第1の発明の標準試料においては、ゲル化前はゼラチンやアガロース等よりも粘度が低いアルギン酸中に培養細胞を分散させて、これをゲル化することにより細胞ペレットとしているので、アルギン酸のゲル中に高い密度で均一に細胞が分散された細胞ペレットとなっている。この細胞ペレットは、アルギン酸のゲル中に高い密度で均一に細胞が分散されているため、細胞中のタンパク質等の抗原を大きく流出させることなく脱水することが可能であり、水分が十分に除かれた細胞ペレットとすることができる。そして、この水分が十分に除かれた細胞ペレットを凍結組織包埋剤で包埋して凍結ブロックとしているので、氷晶による細胞の破壊が少なくなっており、染色性の低下が少なく、凍結状態で長期保存が可能であるという効果を奏する。
第2の発明の標準試料の製造方法においては、ゼラチンやアガロース等よりも粘度が低いアルギン酸の溶液中に培養細胞を混合し、これを遠心分離して沈殿を得て、この沈殿に2価のカチオンを含む溶液を滴下してアルギン酸をゲル化することにより、細胞ペレットを作製しているので、アルギン酸のゲルの中に高い密度で均一に細胞が分散された細胞ペレットを得ることができる。そして、この細胞ペレットは、アルギン酸のゲル中に高い密度で均一に細胞が分散されているので、細胞中のタンパク質等の抗原を大きく流出させることなく脱水することが可能であり、水分が十分に除かれた細胞ペレットとすることができる。そして、この水分が十分に除かれた細胞ペレットを凍結包埋剤に浸漬して凍結することにより標準試料を製造しているので、氷晶による細胞の破壊を防ぐことができ、染色性の低下が少なく、凍結状態で長期保存が可能な標準試料を製造することができるという効果を奏する。
第3発明の検査方法は、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な第1発明の標準試料を用いているので、検査の精度を高めることができ、かつ、標準試料を新たに製造することなく凍結保存した標準試料をいつでも利用できるという効果を奏する。
第4発明の検査キットは、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な第1発明の標準試料を用いているので、検査の精度を高めることができ、かつ、キットの使用期限を長期間にすることができるという効果を奏する。
本発明の標準試料の一実施形態を示す模式図である。図1(A)は、細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックの模式図を示し、図1(B)は、細胞ペレットの模式図とその内部の状態の拡大図を示す。 本発明の標準試料を薄切りして作製した切片の一実施形態を示す模式図である。図2(A)は、凍結ブロックに刃を当てて薄切りする様子の模式図を示し、図2(B)は、薄切りされた切片の平面図を示す。 本発明の標準試料の製造方法の一実施形態を示す模式図である。 H358の培養細胞を含む本発明の標準試料に対して、抗Cytokeratin抗体を用いて免疫染色を行った結果を示す、図面に代わる写真である。 H358の培養細胞を含む本発明の標準試料に対して、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行った結果を示す、図面に代わる写真である。 H358の培養細胞を含む本発明の標準試料に対して、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行い、かつ核染色を行った結果を示す、図面に代わる写真である。 Daudiの培養細胞を含む本発明の標準試料に対して、抗CD20cy抗体を用いて免疫染色を行った結果を示す、図面に代わる写真である。 Daudiの培養細胞を含む本発明の標準試料に対して、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行った結果を示す、図面に代わる写真である。 Daudiの培養細胞を含む本発明の標準試料に対して、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行い、かつ核染色を行った結果を示す、図面に代わる写真である。
1.本発明の標準試料
本発明の標準試料は、細胞内生体分子の検出又は細胞の判定において参照するための標準として用いる標準試料であって、細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックからなり、その細胞ペレットは、アルギン酸のゲルとそのゲル中に分散された培養細胞を含み、細胞ペレット中の水分が脱水されて除かれていることを特徴とする標準試料である。
本発明の標準試料は、このように、細胞内生体分子の検出又は細胞の判定において参照するための標準(コントロール)として用いる試料であるが、本発明において「細胞内生体分子」とは、タンパク質、DNA、RNA、多糖、脂質等の細胞に存在する分子をいい、糖タンパク質のようにこれらの生体分子同士が結合したものも含む。
本発明の標準試料は、このような細胞内生体分子を、免疫染色やin situ ハイブリダイゼーション等の手法を用いて検出し、あるいは検査の対象とする細胞がどのような細胞であるかを判定するにあたり、含まれる生体分子や細胞の種類が既知のものとして参照するための標準(コントロール)として用いることができる。
本発明の標準試料は、細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックからなるものである。この細胞ペレットは、アルギン酸のゲルとそのゲル中に分散された培養細胞を含んでいる。すなわち、細胞ペレットは、個々の培養細胞が、アルギン酸のゲルを介して結合することにより、ペレット状(小さな塊)となったものである。本発明の標準試料では、この細胞ペレットが凍結組織包埋剤と混合されて凍結されることにより、凍結ブロックとなっている。
本発明において、「凍結組織包埋剤」とは、細胞を凍結するにあたり細胞を浸漬するための溶液であって、氷晶を発生させにくくする効果を持つ溶液をいう。凍結組織包埋剤としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボキシルメチルセルロース水溶液や、O.C.T.コンパウンド(サクラファインテックジャパン社製)を挙げることができる。
本発明において、「培養細胞」とは、生体外で増殖させた細胞のことをいう。「培養細胞」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、癌由来の株化細胞、自然形質転換による株化細胞、遺伝子導入による株化細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)等の不死化細胞を培養した培養細胞や、線維芽細胞、ヒト間葉系幹細胞等を生体組織から採取して培養した初代培養細胞や、細胞バンクなどで入手可能な有限寿命正常細胞を培養した培養細胞等を用いることができる。
「培養細胞」としては、ヒトの細胞由来のものに限定されず、非ヒトの動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等に由来するものを用いることもできる。
本発明において、「アルギン酸」とは、マンヌロン酸とグルクロン酸が重合した多糖類のポリマーをいう。このマンヌロン酸とグルクロン酸の2つのモノマーの重合の仕方は、多種多様である。アルギン酸は、海藻から抽出することにより製造することができるが、海藻の種類ごとに、多種多様な重合形態を持つアルギン酸が存在する。そして、「アルギン酸のゲル」とは、アルギン酸が、3次元網目構造となったものをいう。
本発明の標準試料において、「凍結ブロック」とは、凍結されて固形化されたものをいい、形状はどのようなものであってもよい。
本発明の標準試料は、細胞ペレット中の水分が脱水されて除かれていることを特徴としている。「細胞ペレット中の水分が脱水されて除かれている」とは、アルギン酸のゲル中に含まれる水分や、細胞中に含まれる水分が、単に除かれているか、又は水以外の化合物により置換されていることを意味する。
本発明の標準試料においては、細胞に含まれる水分の10〜99%が、単に除かれているか、又は水以外の化合物により置換されていることが好ましい。より好ましくは、細胞に含まれる水分の30〜95%が、除かれているか、又は水以外の化合物により置換されているのがよい。ここで水以外の化合物とは、好ましくは有機化合物である。
本発明の標準試料は、ゲル化前はゼラチンやアガロース等よりも粘度が低いアルギン酸中に培養細胞を分散させて、これをゲル化することにより細胞ペレットとしているので、アルギン酸のゲル中に高い密度で均一に細胞が分散された細胞ペレットとなっている。この細胞ペレットは、アルギン酸のゲル中に高い密度で均一に細胞が分散されているため、細胞中のタンパク質等の抗原を大きく流出させることなく脱水することが可能であり、水分が十分に除かれた細胞ペレットとすることができる。そして、この細胞ペレットを凍結組織包埋剤で包埋して凍結ブロックとしているので、氷晶による細胞の破壊が少なくなっており、染色性の低下が少なく、凍結状態で長期保存が可能であるという効果を奏する。
図1は、本発明の標準試料の一実施形態を示す模式図である。図1(A)は、細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックを示す模式図であり、図1(B)は、細胞ペレットを示す模式図とその内部の状態を示す拡大図である。
図1(A)に示すように、凍結ブロック(1)は、細胞ペレット(2,2´)が凍結組織包埋剤(3)に包埋された状態で凍結されたものである。凍結ブロック(1)は凍結ブロック作成容器内で細胞ペレット(2,2´)を凍結組織包埋剤に浸漬した状態で凍結して製造されているので、凍結ブロック(1)の形状は凍結ブロック作成容器の形状に対応したものとなっている。
図1(B)に示すように、細胞ペレット(2)の内部を拡大してみると、四角形の枠内の拡大図に示されるように、アルギン酸のゲル(4)の中に培養細胞(5)が高い密度で分散された状態で存在している。このアルギン酸のゲル(4)にある水分は、大部分が脱水されて、凍結組織包埋剤等で置換された状態となっている。
本発明の標準試料において、細胞ペレットに含ませる培養細胞としては、癌由来の株化細胞の培養細胞を用いることが好ましい。癌由来の培養細胞を用いることにより、本発明の標準試料を癌の細胞診断に用いることができるという効果を奏する。この癌の細胞診断では、まず、特定種類の癌細胞を用いた本発明の標準試料と、癌であることが疑われる患者の生体組織に対して、同一の染色処理を行う。この染色処理は、癌細胞に特異的に発現するタンパク質(腫瘍マーカー)に結合する抗体を用いた免疫染色とすることが好ましい。この免疫染色の結果、本発明の標準試料に含まれる癌細胞の染色の状態と、患者の生体組織に含まれる細胞の染色の状態が類似していれば、患者は特定の癌疾患であると診断することができる。例えば、ヒトの細気管支肺胞上皮癌の細胞株であるH358を含む標準試料を用い、患者の生体組織がこの標準試料と同じように染色された場合には、この患者は肺癌であると診断することができる。
ここで、癌由来の株化細胞としては、これらに限定されるわけではないが、肺癌由来の株化細胞としては、ヒト細気管支肺胞上皮癌の細胞株であるH358、ヒト肺胞基底上皮腺癌の細胞株であるA549、非小細胞肺癌の細胞株であるNSCLC、H460、H1299、PC14等を用いることができる。中皮腫由来の株化細胞としては、H26、H226、H2052等を用いることができる。乳癌由来の株化細胞としては、MCF−7、HCC−1395、SK−BR−3、T−47D、ZR−75−1等を用いることができる。バーキットリンパ腫由来の株化細胞としては、Daudi、Raji等を用いることができ、骨髄性白血病由来の株化細胞としては、HL−60、K562等を用いることができ、T細胞性白血病由来の株化細胞としては、Jurkat、MOLT−4等を用いることができる。子宮頚部癌由来の細胞としては、HeLa、SiHa等を用いることができ、胃癌由来の株化細胞としては、KATO−III、MKN1、MKN45等を用いることができる。大腸癌由来の株化細胞としては、Caco−2、HT−29、SW480、SW620等を用いることができ、膵臓癌由来の株化細胞としては、KLM−1、PANC−1、PK−59等を用いることができ、肝臓癌由来の株化細胞としては、HepG2、HuH−7、Hep3B等を用いることができる。
本発明の標準試料において、癌由来の株化細胞の培養細胞を用いて細胞ペレットを作製する場合には、さらに他の種類の癌由来の株化細胞の培養細胞を用いた細胞ペレットを併せて用いることが好ましい。
一種類の癌細胞のペレットを標準試料とし、その癌細胞に特異的な腫瘍マーカーに対する抗体を用いて、標準試料と患者の生体組織の免疫染色を行った場合、両者が染色されたときには、その患者は癌であると診断することができる。しかし、染色操作にミスがあり、どのような細胞でも染色されてしまうような免疫染色の操作であったときには、その患者が癌であると誤診されてしまうことになる。そこで、その癌細胞の細胞ペレット(第1の細胞ペレット)の他に、その腫瘍マーカーでは染色されない癌細胞を用いた第2の細胞ペレットを作製し、これも併せて標準試料に含ませることが好ましい。第2の細胞ペレットを用いれば、免疫染色の操作に誤りがあったときに、第2の細胞ペレットの細胞まで染色されてしまうので、免疫染色の操作の誤りに気が付くことができる。
このように第1の細胞ペレットと第2の細胞ペレットを用いた場合には、別の言い方をすれば、第1の細胞ペレットが陽性コントロールとなり、第2の細胞ペレットが陰性コントロールとなる。
第1の細胞ペレットと第2の細胞ペレットを用いる場合、図1(A)に示すように、1つの凍結ブロック中に、2種類の細胞ペレット(2,2´)を含ませた形態とすることができる。
以上のように本発明の標準試料においては、特定の種類の癌細胞に由来する第1の株化細胞の培養細胞を含む第1の細胞ペレットと、その特定の種類の癌細胞とは異なる種類の癌細胞に由来する第2の株化細胞の培養細胞を含む第2の細胞ペレットを凍結ブロックに含ませ、第2の株化細胞として、第1の株化細胞の腫瘍マーカーとなるタンパク質のうち少なくとも一つを発現していない株化細胞を用いることが好ましい。
このように第2の細胞ペレットを用いることにより、陽性コントロールと陰性コントロールの両方の機能を発揮する標準試料とすることができるという効果を奏する。
本発明の標準試料においては、ホルムアルデヒドを含む溶液を用いて培養細胞を化学的に固定することが好ましい。ホルムアルデヒドは、培養細胞の細胞内に浸潤し、ホルムアルデヒドのアルデヒド基が細胞中のタンパク質のアミノ基と結合して、タンパク質を架橋させることにより、自己分解などの培養細胞の死後変化を生じにくくさせることができるので、本発明の標準試料の保存性を高めることができるという効果を奏する。
本発明の標準試料では、培養細胞として、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子を導入して形質転換された、非ヒト由来の細胞の培養細胞を用いた標準試料とすることができる。
この標準試料は、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子を人為的に導入するので、任意のヒトのタンパク質のセットを発現させることができ、また、非ヒト由来の細胞の培養細胞を用いるので、遺伝子導入したタンパク質以外にはヒトのタンパク質を発現していない。したがって、この標準試料は、任意のヒトのタンパク質のセットの陽性コントロールとして用いることができるとともに、それ以外のヒトのタンパク質の陰性コントロールとして用いることができるという効果を奏する。
ここで、導入する遺伝子の宿主となる非ヒト由来の細胞としては、非ヒト動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母等を用いることができる。これらの中でも、動物細胞に近いものでありながら、ヒトのタンパク質と類似するタンパク質が少ない、昆虫細胞を用いることが好ましい。
動物細胞としては、例えば、これらに限定されるわけではないが、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞)や、サルの細胞であるCOS細胞等を用いることができる。昆虫細胞としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、鱗翅類ヤガ科昆虫の卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9又はSf−21)を用いることができる。
また、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子を導入する方法としては、宿主細胞に応じて適したものを用いることができる。例えば、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、抗生物質耐性機能を有する発現ベクターに目的のタンパク質をコードする遺伝子を導入し、これをリポフェクション法等でCHO細胞にトランスフェクションし、これを培養して抗生物質耐性のコロニーを選択することにより、遺伝子導入したCHO細胞を得ることができる。
本発明の標準試料は、凍結ブロックを薄く切断して切片とすることができる。この切片は、顕微鏡で観察可能なため、本発明の標準試料を免疫染色やin situ ハイブリダイゼーションに使用することができるという効果を奏する。切片を作製する方法は、これらに限定されるわけではないが、例えば、凍結ミクロトーム(クリオスタット)を用いて、凍結した状態の本発明の標準試料を薄切りすることにより切片を作製することができる。
図2は、本発明の標準試料を薄切りして作製した切片の一実施形態を示す模式図である。図2(A)は、凍結ブロックに刃を当てて薄切りする様子を示す模式図であり、図2(B)は、薄切りされた切片の平面図である。
図2(A)に示すように、細胞ペレット(2,2´)を含む凍結ブロック(1)にミクロトームの刃(6)を当て、点線で示す切断面に沿って凍結ブロック(1)を薄切りにし、切片を作製する。薄切りにされた切片は、図2(B)の平面図に示すように、細胞ペレット(2,2´)の切断面を含むものとなっている。
2.本発明の標準試料の製造方法
本発明の標準試料の製造方法は、以下のB)〜F)のステップを含むことを特徴とする製造方法である。
ステップB):培養細胞とアルギン酸の水溶性塩の溶液を混合するステップ、
ステップC):上記ステップB)により混合した溶液を遠心分離し、上清を取り除くことにより、沈殿を得るステップ、
ステップD):上記ステップC)により得られた沈殿に、2価のカチオンを含む液滴を滴下することにより、沈殿中のアルギン酸をゲル化させて細胞ペレットを作製するステップ、
ステップE):上記ステップD)により作製した細胞ペレットを、脱水するステップ、
ステップF):上記ステップE)により脱水した細胞ペレットを、凍結ブロック作成容器内で凍結組織包埋剤に浸漬して、凍結ブロック作成容器ごと凍結させるステップ。
本発明の標準試料の製造方法は、ゼラチンやアガロース等よりも粘度が低いアルギン酸の溶液中に培養細胞を懸濁し、これを遠心分離して沈殿を得て、この沈殿に2価のカチオンを含む溶液を滴下してアルギン酸をゲル化することにより、細胞ペレットを作製しているので、アルギン酸のゲルの中に高い密度で均一に細胞が分散された細胞ペレットを得ることができる。そして、この細胞ペレットは、アルギン酸のゲル中に高い密度で均一に細胞が分散されているので、細胞中のタンパク質等の抗原を大きく流出させることなく脱水することが可能であり、水分が十分に除かれた細胞ペレットとすることができる。そして、この水分が十分に除かれた細胞ペレットを凍結組織包埋剤に浸漬して凍結することにより標準試料を製造しているので、氷晶による細胞の破壊を防ぐことができ、染色性の低下が少なく、凍結状態で長期保存が可能な標準試料を製造することができるという効果を奏する。
図3は、本発明の標準試料の製造方法の一実施形態を示す模式図である。図3を使用して、本発明の製造方法の説明を行う。
本発明の標準試料の製造方法のステップB)は、培養細胞とアルギン酸の水溶性塩の溶液を混合するステップである。ここで、「アルギン酸の水溶性塩」としては、アルギン酸と1価の金属イオンとの塩を用いることができ、これらに限定されるわけではないが、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等を用いることができる。特に、アルギン酸ナトリウムは入手が容易であるので好ましい。これらのアルギン酸の水溶性塩を水等の溶媒に溶かすことにより、アルギン酸の水溶性塩の溶液を得ることができる。アルギン酸ナトリウムを用いる場合、その濃度は0.1〜10重量%とすることが好ましい。
ステップB)における「混合」は、これらに限定されるわけではないが、例えば、遠心管や遠心チューブ等の容器に培養細胞の溶液を加えて遠心分離し、上清を取り除いた後、アルギン酸の水溶性塩の溶液を注入し、撹拌することにより、培養細胞とアルギン酸の水溶性塩の溶液を混合することができる。撹拌は、ボルテックスミキサーを用いた激しい撹拌でもよいが、次のステップで培養細胞を十分に沈殿させるためには、マイクロピペットを用いて、培養細胞の沈殿が剥がれる程度の穏やかなピペッティングで撹拌を行うことが好ましい。
図3のステップB)(101)では、遠心チューブ(7)中で混合を行うことにより、アルギン酸の水溶性塩の溶液と培養細胞との混合溶液(8)とを図示している。
本発明の標準試料の製造方法のステップC)は、ステップB)により混合した溶液を遠心分離し、上清を取り除くことにより、沈殿を得るステップである。
「遠心分離」は、これらに限定されるわけではないが、例えば、遠心管や遠心チューブ等にステップB)により混合した溶液を注入し、遠心機により遠心して行うことができる。遠心分離の回転数は500〜5000rpmとすることが好ましく、アルギン酸の濃度が高いほど沈殿が生じにくくなるので、遠心分離の回転数を高くするのがよい。上清は、これらに限定されるわけではないが、例えば、デカンテーションにより取り除き、あるいは、マイクロピペットを用いて取り除くことができる。
図3のステップC)(102)では、アルギン酸の水溶性塩の溶液と培養細胞との混同溶液(8)が入った遠心チューブ(7)を遠心分離することにより、培養細胞の沈殿(2)が遠心チューブ(7)の底に付着し、上清を取り除くことにより、培養細胞の沈殿(2)を得ることを図示している。
本発明の標準試料の製造方法のステップD)は、ステップC)により得られた沈殿に、2価のカチオンを含む溶液を滴下することにより、沈殿中のアルギン酸をゲル化させて細胞ペレットを作製するステップである。ここで、「2価のカチオン」としては、2価のカルシウムイオンを用いることが好ましく、2価のカチオンを含む溶液として、塩化カルシウムの溶液を用いることが好ましい。
ステップC)により得られた沈殿では、培養細胞の細胞間にアルギン酸の溶液が浸潤したものとなっている。したがって、ここに2価のカチオンを含む溶液を滴下することにより、アルギン酸をゲル化させ、アルギン酸のゲル中に培養細胞が高密度で均一に分散した細胞ペレットを作製することができる。
図3のステップD)(103)では、遠心チューブ(7)の底に付着した沈殿(2)に、2価のカチオンを含む溶液(9)を滴下することにより、細胞ペレットを作製することを図示している。
本発明の標準試料の製造方法のステップE)は、ステップD)により作製した細胞ペレットを脱水するステップである。「脱水」は、細胞を破裂させることなく水分を取り除く方法であればどのようなものでもよい。「脱水」の方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、水と混和する溶媒に細胞ペレットを浸漬する方法や、浸透圧の高い水溶液に細胞ペレットを浸漬する方法を用いることができる。
生体組織の脱水には、スクロースの溶液を用いて脱水する方法がよく使用される。しかし、本発明の細胞ペレットをスクロースの溶液を用いて脱水したところ、抗原の流出や染色性の低下が若干見られた。一方、低級アルコールの溶液を用いて本発明の細胞ペレットの脱水を行った場合には、抗原の流出や染色性の低下がかなり少ないものであった。したがって、本発明の製造方法のステップE)においては、細胞ペレットを低級アルコールの溶液に浸漬して脱水することが好ましい。低級アルコールとしては、炭素数が1〜5のアルコールの溶液を用いるのが好ましく、より好ましくは、エタノールの溶液を用いることが好ましい。ここで低級アルコールの溶液とは、100%純粋な低級アルコールを用いてもよく、低級アルコールと水が混合した溶液を用いてもよい。
図3のステップE)(104)では、細胞ペレット(2)が入った遠心チューブ(7)に低級アルコールの溶液(10)を加えて、穏やかに振盪することにより、細胞ペレット(2)の脱水を行うことを図示している。
また、低級アルコールの溶液を用いて脱水を行う場合、より好ましくは、濃度の異なる複数の低級アルコールの溶液を用いて段階的に脱水を行うことが好ましい。すなわち、濃度の低い低級アルコールの溶液に細胞ペレットを浸漬して、細胞ペレット中の水分を低級アルコールと置換した後に、濃度の高い低級アルコールの溶液に細胞ペレットを浸漬して、細胞ペレット中の残った水分をさらに低級アルコールと置換することが好ましい。このように段階的に脱水を行うと、細胞の急激な形態変化を防ぎ、保存性を高めることができるという効果を奏する。
本発明の標準試料の製造方法のステップF)は、ステップE)により脱水した細胞ペレットを、凍結ブロック作成容器内で凍結組織包埋剤に浸漬して、凍結ブロック作成容器ごと凍結するステップである。
ここで、凍結ブロック作成容器としては、Miles社製のクリオモルド(登録商標)を用いることができ、また、アルミ箔を成形して凍結ブロック作成容器としてもよい。凍結するには、凍結ブロック作成容器ごと液体窒素に浸漬して急速に凍結するのが好ましいが、ドライアイス・アセトンに浸漬することもでき、ディープフリーザーに入れて凍結してもよい。
図3のステップF)(105)では、凍結ブロック作成容器(11)内で細胞ペレット(2,2´)を凍結組織包埋剤(3)に浸漬して、凍結ブロック作成容器(11)ごと凍結することにより、凍結ブロックを作製することを図示している。
ステップE)において低級アルコールを用いた脱水を行った場合には、ステップF)において、細胞ペレットを容器内で凍結組織包埋剤に浸漬して、細胞ペレット中の低級アルコールを凍結組織包埋剤と置換した後に、細胞ペレットを容器から取り出し、次に、細胞ペレットを凍結ブロック作成容器内で凍結組織包埋剤に浸漬し、凍結ブロック作成容器ごと凍結することが好ましい。
低級アルコールは融点が低いため、凍結ブロック中に低級アルコールが含まれると凍結せずに柔らかい凍結ブロックとなる。そのため、細胞ペレット中の低級アルコールを凍結組織包埋剤で十分に置換した後に凍結することにより、硬い凍結ブロックとなり、薄切りして切片を作製するのが容易になるという効果を奏する。
ここで、容器内で細胞ペレットを凍結組織包埋剤に浸漬した際には、容器を軽く撹拌し、また、容器中の凍結組織包埋剤を入れ替えることにより、効率よく低級アルコールを凍結組織包埋剤に置換することができる。
本発明の標準試料の製造方法においては、培養細胞を固定するステップA)をさらに含むことが好ましい。
ここで培養細胞の固定とは、自己分解などの培養細胞の死後変化を生じにくくさせることをいい、化学的固定や、物理的固定を行うことができる。化学的固定としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、四酸化オスミウムを含む溶液を用いて固定する方法を挙げることができる。また、物理的固定としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、煮沸やマイクロウェーブ照射によって熱凝固させる方法等が挙げられる。
これらの方法の中でも、ホルムアルデヒドを含む溶液中に培養細胞を浸漬することにより、培養細胞のタンパク質を架橋して固定する方法を用いることが好ましい。そして、このステップA)は、培養細胞の死後変化をできるだけ少なくする観点から、ステップB)の前に行うことが好ましい。
ホルムアルデヒドを含む溶液としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ホルマリン、PLP固定液、パラホルムアルデヒド固定液、ザンボニー固定液等を用いることができる。
3.本発明の検査方法
本発明の検査方法は、細胞内生体分子を検出し又は細胞の判定をする検査方法であって、本発明の標準試料と、検査の対象となる被検細胞に対し、同一の染色処理を施す第1のステップと、第1のステップにより染色処理を施した標準試料と被検細胞とを比較する第2のステップとを含むことを特徴とする。
ここで、「染色処理」とは、色素を付着させる狭義の意味の「染色」を意味するものではなく、細胞中の生体分子の存在、局在、分布又は濃度のイメージングを可能にすることをいう。例えば、これらに限定されるわけではないが、検出対象となる生体分子に特異的に、色素、蛍光色素、金コロイド粒子、蛍光タンパク質、放射性同位体、標識酵素等の標識を直接又は間接的に結合させることにより染色することができる。そして、これらの標識による発色、発光、放射線、あるいは、酵素反応により生成される色素による発色等により、生体分子をイメージング(可視化又は画像化)することができる。
特定の生体分子にこれらの標識を結合させる方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、検出対象となる生体分子に特異的に結合する抗体を用いる方法、標的となる核酸に相補的な配列を有する核酸をハイブリダイズさせる方法、特定の生体分子に親和性のある低分子化合物や毒素を用いる方法、糖鎖と結合する能力を有するタンパク質であるレクチンを用いる方法等がある。
生体分子としてタンパク質を染色する方法としては、タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫染色(免疫組織化学、Immunohistochemistry、IHC)がよく使用される。この免疫染色は、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等の酵素を標識として連結させた抗体を用いる酵素抗体法と、蛍光色素を標識として連結させた抗体を用いる蛍光抗体法とが2本の柱となる手法である。
この二つの手法のうち、酵素抗体法は、病理診断等で組織切片の生体分子を検出するのに適している一方、蛍光抗体法は、培養細胞の生体分子を検出するのに適している。
病理診断でのタンパク質検出に適した酵素抗体法について詳しく述べると、標識として用いられる酵素としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ペルオキシターゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ、Horseradish peroxidase: HRP)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase: AP)、グルコースオキシダーゼ(β-D galactosidase: GAL)等の酵素を用いることができる。
これらの酵素の基質としては、ペルオキシターゼに対しては、例えば、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)を用いて茶色に発色させたり、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)を用いて赤色に発色させることができる。
酵素抗体法には、大きく分けて直接法と間接法とがある。直接法は、抗体に直接酵素を連結し、抗原と反応させるものである。一方、間接法は、検出すべき抗原に対する抗体(一次抗体)には酵素標識せず、その抗体に対する抗体(二次抗体)に酵素標識して検出する方法である。間接法は、直接法に比べて反応回数が多いが、一次抗体を同種の動物で作製すれば、1種類の2次抗体であらゆる免疫染色をすることができ、また、感度の面でも優れている。したがって、酵素抗体法では、間接法が使用されることが多い。
免疫染色を行うにあたっては、特開2012−13598号公開公報に開示されている変動電界による非接触撹拌を用いた免疫染色法を用いることができる。この方法は、免疫染色によりタンパク質を検出する組織に、抗体を含む溶液を滴下し、変動電界によりこの液滴を撹拌し、抗原抗体反応を促進するものである。具体的には、組織を載置したスライドガラスの下部に電極を配し、その電極と対向する側にも液滴に接触しないように電極を配して、この2つの電極間に変動電界を発生させる。この変動電界は、矩形波と10〜300Hzの周波数信号とが重畳したものであり、この変動電界により液滴が撹拌され、抗原抗体反応が促進される。この変動電界を用いた迅速免疫染色法を用いれば、通常、70〜200分程度の時間を必要としていた免疫染色を、15〜30分程度で迅速に行うことができる。本発明の標準試料は、免疫染色における判定を容易にし、短い時間で正確な判定を行うことを可能とするため、この迅速免疫染色法と本発明の標準試料とを併せて用いることにより、迅速な病理診断が可能になる。例えば、手術中に患者から採取した組織を迅速に病理診断することにより手術の方針を決定する、術中迅速病理診断が可能になる。
生体分子として核酸を染色する方法としては、標的となる核酸に相補的な配列を有する核酸をハイブリダイズさせるインサイチュハイブリダイゼーション(in situ hybridization、ISH)を用いるのが一般的である。
ISHでは、検出対象となる核酸に相補的な配列を有する核酸を合成し、その相補的核酸を標識したプローブを作製する。そして、切片とした被検試料に、プローブを添加し、検出対象となる核酸とプローブとをハイブリダイゼーションさせる。ハイブリダイゼーション後、蛍光顕微鏡で観察すると、検出対象となる核酸を検出することができる。ISHを用いて、細胞のDNAを検出する方法では、細胞の染色体中の特定の遺伝子のコピー数を調べることができる。
インサイチュハイブリダイゼーションを行うにあたっては、特開2010−119388号公開公報に記載された、非接触撹拌を用いたハイブリダイゼーションを用いることができる。この方法は、方形波に0.1〜800Hzの周波数信号を重畳させた変動電界により、核酸とその相補的な核酸が混合した液滴を非接触に撹拌し、ハイブリダイゼーション反応を促進するものである。この場合も同様に、本発明の標準試料とこの非接触撹拌を用いたハイブリダイゼーションを併せて用いることにより、迅速な病理診断が可能となる。
生体分子として核酸を染色する他の方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、核酸に特異的な抗体を用いた染色がある。
生体分子として脂質を染色する方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、脂質に特異的な抗体を用いる方法や、フィリピン(Filipin)、ライセニン(Lysenin)等の脂質に結合する物質を用いる方法がある。
生体分子として多糖を染色する方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、多糖に特異的な抗体を用いる方法や、多糖に結合するアルシアンブルー(Alcian Blue)を用いた染色や、レクチンを用いる方法がある。
本発明の検査方法は、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な第1発明の標準試料を用いるので、検査の精度を高めることができ、かつ、標準試料を新たに製造することなく、冷凍保存した標準試料をいつでも利用できるという効果を奏する。
4.本発明の検査キット
本発明の検査キットは、細胞内生体分子を検出し又は細胞の判定をするために用いる検査キットであって、本発明の標準試料と、標準試料に含まれる培養細胞の発現する生体分子に特異的な抗体、又は培養細胞の有する核酸分子にハイブリダイズする核酸を含むことを特徴とする。
本発明の検査キットは、免疫染色やin situ ハイブリダイゼーション等に使用するものである。免疫染色に使用する検査キットとする場合には、さらに、酵素標識が結合した二次抗体の溶液や、発色基質の溶液をキットに含ませることができる。また、in situ ハイブリダイゼーションに用いる検査キットとする場合には、培養細胞の有する核酸にハイブリダイズする核酸に蛍光色素を標識させておくことが好ましい。
本発明の検査キットは、染色性の低下が少なく、長期保存が可能な第1発明の標準試料を用いているので、検査の精度を高めることができ、キットの使用期限を長期間にすることができるという効果を奏する。
(H358の細胞ペレットの作製)
2枚のDish(100mm Dish)を用いて、ヒト細気管支肺胞上皮癌の細胞株であるH358の細胞培養を行った。この細胞培養により、細胞ペレット7個分のH358の培養細胞を得た。この培養細胞を用いて以下の操作を行った。
(1) 培養液を吸引し、培養細胞を冷PBS 5mL×2で洗浄した。
(2) 15mL遠心管3本にPLP液を2mL加えておいた。そして、PLP液3.5mLをDishに加え、細胞をスクレープし、細胞層を軽くピペッティングして解した。細胞懸濁液を1mLずつ各遠心管に分注した。
(3) 4℃、45分固定を行った。
(4) 1200rpm、4℃、4分の条件で遠心管の遠心分離を行った。
(5) 上清を吸引し1%アルギン酸Na(Sodium alginate 以下1%SA)をペレットの約3〜5倍量加えペレットが遠心管の底から剥がれる程度に軽くピペッティングを行った。
(6) 1500rpm、室温、4分の条件で遠心管の遠心分離を行った。
(7) 上清を吸引し、10%CaCl2を適量(200μLピペットで3〜4滴)ペレットの真上から加え固化させて細胞ペレットを作製した。細胞ペレットが遠心管の底から自然に剥がれたら、セッシ等で静かに取り出し軽く水分を取った。
(H358の細胞ペレットの脱水)
(1) 15mL遠心管に70%エタノールを約10mL入れた。そこにH358の細胞ペレットを入れSHAKERで転倒混和しながら30分脱水を行った。SHAKERの庫内温度は約25度で、転倒速度10〜15回/分であった。
(2) 70%エタノールを捨て、80%エタノールを約10mL入れて、エタノールの濃度以外は(1)と同じ条件により脱水を行った。90%エタノール、100%エタノールを用いて、同様に脱水を行い、100%エタノールを用いた脱水は3回行った。
(OCTコンパウンドによる置換)
(1) OCTコンパウンド適量を容器に入れ、脱水したH358の細胞ペレットを、軽くアルコール分を切ってから入れた。5分程度、時折軽く撹拌しながら馴染ませた。
(2) 新たな容器にOCTコンパウンドを加え、そこに(2)から取り出し紙などの上で軽くOCTコンパウンドを切ったH358の細胞ペレットを入れ、エタノールと置換していった。時々軽く撹拌しながら15分×2回の置換を行った。
(凍結ブロックの作製)
OCTコンパウンドで十分に置換したH358の細胞ペレットをクリオモルド(登録商標)に入れ、OCTコンパウンドを加えて、−80℃で保存し、凍結ブロックを作製した。
(免疫染色)
作製した凍結ブロックを薄切りし、凍結切片を作製した。この凍結切片に対して、抗Cytokeratin抗体(Clone:AE1/AE3)、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行った。抗Cytokeratin抗体を用いて免疫染色を行った結果を図4に示す。また、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行った結果を図5に示す。Ki-67抗体を用いて免疫染色を行い、かつ、核染色を行った結果を図6に示す。凍結ブロック中のH358の培養細胞は、抗Cytokeratin抗体で染色され、また、抗Ki-67抗体でも核内が染色されていた。したがって、H358の培養細胞を含む本発明の標準試料は、抗Cytokeratin抗体を用いた免疫染色を行う際の陽性コントロールとして用いることができ、また、抗Ki-67抗体を用いた免疫染色を行う際の陽性コントロールとして用いることができることが確認された。
(Daudiの細胞ペレットの作製)
2枚のDish(100mm Dish)を用いて、バーキットリンパ腫由来の細胞株であるDaudiの細胞培養を行った。4日間の細胞培養により、細胞ペレット5個分のDaudiの培養細胞を得た。この培養細胞を用いて以下の操作を行った。
(1) 細胞を15mL遠心管に回収した。1200rpm、室温、4分の条件で遠心管の遠心分離を行った。
(2) 上清吸引後、冷PBS 10mLにて沈殿のリンスを行った。1200rpm、室温、4分の条件で遠心管の遠心分離を行った。
(3) 15mL遠心管2本にPLP液を2mL加えておいた。そして、遠心した遠心管から上清吸引をした後、PLP液2.5mLを加え細胞懸濁液を1mLずつ各遠心管に分注した。
(4) 4℃で15分間固定を行った。
(5) 1200rpm、4℃、4分の条件で遠心管の遠心分離を行った。
(6) 上清を吸引し1%アルギン酸Na(Sodium alginate 以下1%SA)をペレットの約3〜5倍量加えペレットが遠心管の底から剥がれる程度に軽くピペッティングを行った。
(7) 1500rpm、室温、4分の条件で遠心分離を行った。
(8) 上清を吸引し、10%CaCl2を適量(200μLピペットで3〜4滴)ペレットの真上から加えて固化させて細胞ペレットを作製した。コントロールが遠心管の底から自然に剥がれたら、セッシ等で静かに取り出し軽く水分を取った。
(Daudiの細胞ペレットの脱水)
(1) 15mL遠心管に70%エタノールを約10mL入れた。そこにDaudiの細胞ペレットを入れSHAKERで転倒混和しながら30分脱水を行った。SHAKERの庫内温度は約25度で、転倒速度10〜15回/分であった。
(2) 70%エタノールを捨て、80%エタノールを約10mL入れて、エタノールの濃度以外は(1)と同じ条件により脱水を行った。90%エタノール、100%エタノールを用いて、同様に脱水を行い、100%エタノールを用いた脱水は3回行った。
(OCTコンパウンドによる置換)
(1) OCTコンパウンド適量を容器に入れ、脱水したDaudiの細胞ペレットを、軽くアルコール分を切ってから入れた。5分程度、時折軽く撹拌しながら馴染ませた。
(2) 新たな容器にOCTコンパウンドを加え、そこに(2)から取り出し紙などの上で軽くOCTコンパウンドを切ったDaudiの細胞ペレットを入れ、エタノールと置換していった。時々軽く撹拌しながら15分×2回の置換を行った。
(凍結ブロックの作製)
OCTコンパウンドで十分に置換したDaudiの細胞ペレットをクリオモルド(登録商標)に入れ、OCTコンパウンドを加えて、−80℃で保存し、凍結ブロックを作製した。
(免疫染色)
作製した凍結ブロックを薄切りし、凍結切片を作製した。この凍結切片に対して、抗CD20cy抗体、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行った。抗CD20cy抗体を用いて免疫染色を行った結果を図7に示す。また、抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行った結果を図8に示す。抗Ki-67抗体を用いて免疫染色を行い、かつ、核染色を行った結果を図9に示す。凍結ブロック中のDaudiの培養細胞は、抗CD20cy抗体で染色され、また、抗Ki-67抗体でも核内が染色されていた。したがって、Daudiの培養細胞を含む本発明の標準試料は、抗CD20cy抗体を用いた免疫染色を行う際の陽性コントロールとして用いることができ、また、抗Ki-67抗体を用いた免疫染色を行う際の陽性コントロールとして用いることができることが確認された。
本発明の標準試料、標準試料の製造方法、検査方法及び検査キットは、臨床診断薬及び臨床検査キットの製造や臨床診断の受託サービスの分野において有用である。
1 ・・・ 凍結ブロック
2,2´ ・・ 細胞ペレット、沈殿
3 ・・・ 凍結組織包埋剤
4 ・・・ アルギン酸のゲル
5 ・・・ 培養細胞
6 ・・・ ミトロクロームの刃
7 ・・・ 遠心チューブ
8 ・・・ 混合溶液
9 ・・・ 2価のカチオンを含む溶液
10 ・・・ 低級アルコールの溶液
11 ・・・ 凍結ブロック作成容器

Claims (16)

  1. 細胞内生体分子の検出又は細胞の判定において参照するための標準として用いる標準試料であって、
    細胞ペレットと凍結組織包埋剤とを含む混合物が凍結された凍結ブロックからなり、
    前記細胞ペレットは、アルギン酸のゲルと前記ゲル中に分散された培養細胞を含み、前記細胞ペレット中の水分が脱水されて除かれていることを特徴とする標準試料。
  2. 前記培養細胞が癌細胞由来の株化細胞の培養細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の標準試料。
  3. 特定の種類の癌細胞に由来する第1の株化細胞の培養細胞を含む第1の細胞ペレットと、前記特定の種類の癌細胞とは異なる種類の癌細胞に由来する第2の株化細胞の培養細胞を含む第2の細胞ペレットとを有し、
    第2の株化細胞は、第1の株化細胞の腫瘍マーカーとなるタンパク質のうち少なくとも一つを発現していない株化細胞であることを特徴とする、請求項2に記載の標準試料。
  4. 前記培養細胞が、ヒトのタンパク質をコードする遺伝子を導入して形質転換された、非ヒト由来の細胞の培養細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の標準試料。
  5. 前記培養細胞が、ホルムアルデヒドを含む溶液を用いて化学的に固定された培養細胞であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の標準試料。
  6. 前記凍結ブロックを薄く切断した切片からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の標準試料。
  7. 細胞内生体分子の検出又は細胞の検査において参照するための標準として用いる標準試料の製造方法であって、以下のB)〜F)のステップを含むことを特徴とする標準試料の製造方法:
    B)培養細胞とアルギン酸の水溶性塩の溶液を混合するステップ、
    C)前記B)のステップにより混合した溶液を遠心分離し、上清を取り除くことにより、沈殿を得るステップ、
    D)前記C)のステップにより得られた前記沈殿に、2価のカチオンを含む溶液を滴下することにより、前記沈殿中のアルギン酸をゲル化させて細胞ペレットを作製するステップ、
    E)前記D)のステップにより作製した前記細胞ペレットを、脱水するステップ、
    F)前記E)のステップにより脱水した前記細胞ペレットを、凍結ブロック作成容器内で凍結組織包埋剤に浸漬して、凍結ブロック作成容器ごと凍結させるステップ。
  8. 前記E)のステップにおいて、前記細胞ペレットを低級アルコールの溶液に浸漬して脱水することを特徴とする、請求項7に記載の標準試料の製造方法。
  9. 前記低級アルコールの溶液がエタノールの溶液であることを特徴とする、請求項8に記載の標準試料の製造方法。
  10. 前記E)のステップにおいて、濃度の異なる複数の低級アルコールの溶液を用い、濃度の低い低級アルコールの溶液に前記細胞ペレットを浸漬して脱水を行った後に、濃度の高い低級アルコールの溶液に前記細胞ペレットを浸漬して脱水を行うことを特徴とする、請求項8又は9に記載の製造方法。
  11. 前記アルギン酸の水溶性塩がアルギン酸ナトリウムであり、前記2価のカチオンを含む溶液が塩化カルシウムの溶液であることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載の標準試料の製造方法。
  12. さらに、A)培養細胞を固定するステップを含むことを特徴とする、請求項7〜11のいずれかに記載の標準試料の製造方法。
  13. 前記A)のステップが、ホルムアルデヒドを含む溶液中に前記培養細胞を浸漬することにより、前記培養細胞のタンパク質を架橋して固定するステップであり、前記B)のステップの前に行われることを特徴とする、請求項12に記載の標準試料の製造方法。
  14. 前記F)のステップにおいて、前記細胞ペレットを容器内で凍結組織包埋剤中に浸漬して、前記細胞ペレット中の低級アルコールを前記凍結組織包埋剤と置換した後に、前記細胞ペレットを前記容器内から取り出し、前記細胞ペレットを前記凍結ブロック作成容器内で前記凍結組織包埋剤に浸漬し、前記凍結ブロック作成容器ごと凍結することを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の標準試料の製造方法。
  15. 細胞内生体分子を検出し又は細胞の判定をする検査方法であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の標準試料と、検査の対象となる被検細胞に対し、同一の染色処理を施す第1のステップと、
    前記第1のステップにより染色処理を施した前記標準試料と前記被検細胞を比較する第2のステップと、
    を含むことを特徴とする検査方法。
  16. 細胞内生体分子を検出し又は細胞の判定をするために用いる検査キットであって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の標準試料と、
    前記標準試料に含まれる前記培養細胞の発現する生体分子に特異的な抗体、又は前記培養細胞の有する核酸分子にハイブリダイズする核酸と
    を含むことを特徴とする検査キット。
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