第一の発明は、断熱壁と断熱扉によって区画され収納物を収納する収納室と、前記断熱壁の内部を構成するための内箱と、前期断熱壁の外郭を構成する外箱と、収納室を冷却するための冷却器と、前記断熱扉の外側に配置されたガラス材料からなる透明前板と前記透明前板よりも庫内側に設けられた光の拡散率を制御する調光部を具備するとともに、前記透明前板と前記調光部の間に、透明断熱部を配置したものである。
これにより、調光部の断熱性を確保し、結露が起こりにくくなることで高いデザイン性を維持できるとともに、調光部をより庫内側に配置することで、調光部に庫外からの光が入りにくくなり、庫外の光による反射を抑制できるので、庫外から可視化する際の視認性を向上させることができ、庫内の視認性と扉の意匠性を両立する冷蔵庫を実現できる。
第二の発明は、第一の発明において、前記透明前板の庫内側に加飾部を備え、前記加飾部は光の透過率を20%〜50%に構成するようにしたものである。
これにより、調光部が透明時に庫外から庫内の収納状態を違和感なく確認できるとともに、調光部が非透明時に調光部と調光部以外の境界の露出が低減し、扉のデザインに連続性が生まれるので、更に庫内の視認性と扉の意匠性が向上できる。
第三の発明は、第一および第二の発明において、前記透明断熱部は、真空断熱層を具備するものである。
これによって、透明断熱部の断熱性が高まり、庫内冷却運転時に結露が起こりにくくなるので、さらに庫内の視認性と扉の意匠性を更に向上させることができる。
第四の発明は、第一から第三の発明において、前記収納室は、前記収納室を区画する収納棚を有し、前記照明部の少なくとも一つは収納棚の先端よりも断熱扉側に配置したものである。
これによって、収納棚の収納状況に影響されることなく、収納室内全体に光が行き届きやすく、収納物配置による照度ばらつきを抑制できるので、調光部が透明時に高い視認性を保つことができる。
第五の発明は、第一から第四の発明において、前記収納室は、前記内箱または前記断熱扉に取り付けられ前記収納室を照射する照明部を具備するとともに、内箱の反射率を70%以上に構成したものである。
これによって、照明部から照射された光が庫内の壁面を介して反射を繰り返すことで、収納室内の照度を高めることができるので、冷蔵庫の周囲環境が明るい場合であっても、庫内の視認性を向上させることができる。
第六の発明は、第一から第五の発明において、前記収納室は、前記内箱に取り付けられ前記調光部に映像を表示する映像投影部を具備するとともに、前記映像投影部は収納棚の先端よりも断熱扉側に配置したものである。
これによって、収納物の影響を受けることなく、正確に映像を表示できるとともに、映像投影部の光源が使用者から見えにくくなるので、違和感なく映像を表示させることができ、更に意匠性が向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図、図2は同実施の形態における冷蔵庫の概略縦断面図、図3(a)、(b)、(c)はそれぞれ同実施の形態における冷蔵庫の断熱扉の概略縦断面図、図4(a)、(b)はそれぞれ同実施の形態における冷蔵庫の調光部の説明図、図5(a)、(b)、(c)はそれぞれ同実施の形態における冷蔵庫の冷蔵室の概略横断面図を示す。
図1と図2において、冷蔵庫本体1は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱2と、硬質樹脂製(例えばABS)の内箱3と、これら外箱2と内箱3との間に発泡充填した硬質発泡ウレタン等の断熱材4からなる。上記冷蔵庫本体1はその内部に複数の貯蔵庫を仕切形成してある。この貯蔵庫は、冷蔵庫本体1の上部から、冷蔵室5、冷蔵室5の下に位置する切替室6及び切替室6に並設した製氷室7、切替室6及び製氷室7の下部に位置する冷凍室8と、冷凍室8の下部に位置する野菜室9となっている。また、前記冷蔵室5の前面は、観音開き式の扉10により開閉自由に閉塞し、切替室6及び製氷室7と冷凍室8と野菜室9の前面部は引き出し式扉11,12,13,14(以下、引き出し式扉と称す)によって開閉自由に閉塞してある。
冷蔵庫本体1の背面には冷却室16があり、冷気を生成する冷却器17と、冷気を各室に供給する送風ファン18と、冷蔵室5への風量を調整するためのダンパ(風量調整手段)22が設けてある。また、上記冷蔵庫本体1の本体天面奥部にはコンプレッサ19が設けてあり、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ20と、キャピラリーチューブ21と、前記した冷却器17とを順次環状に接続してなる冷凍サイクルに冷媒を封入し、冷却運転を行うように構成してある。
また、上記扉10〜14のうち、扉10の庫内側に扉ポケット25を装備しており食品の収納が可能である。また、扉10の一方には光の拡散率を制御する調光部15が装備してあり、調光部15を透明または非透明に切り替えることにより、扉10を開けずに庫内を可視化することができる。
また、冷蔵室5は庫内を照射するための照明部23を装備しており、扉を開けた時や、調光部15を介して庫内を可視化するときに、庫内を照射するものである。
また、調光部15を有する扉10は、タッチセンサ部60を装備しており、主に調光部15の透明または非透明の切替の役割を担っている。タッチセンサ部60は、例えば、静電容量式のタッチスイッチなどがある。
なお、本実施の形態では調光部15の切替を行う手段として、タッチセンサ部60を例として記述するが、それに限らず、人感センサやジェスチャーセンサなど使用者の動きを検知するものであればよい。
図3(a)において、扉10は、断熱扉の外側に配置されたガラス材料からなる透明前板10bと、庫内側に位置する内フレーム10fと、透明前板10bと内フレーム10fの周囲を覆う縁枠10gを備えている。内フレーム10fは、例えば、ABS樹脂からなり、真空成型または射出成型により、成型されている。また、縁枠10gは、例えば、ABS樹脂や、アルミなどから成型されている。また、透明前板10bはその内面に接着剤を介して加飾部10cが貼り付けてある。また、断熱材10eは、透明前板10bと内フレーム10fと縁枠10gとの間の空間に充填発泡させた硬質の発泡ウレタンで、発泡によって内フレーム10f及び縁枠10gとともに透明前板10b内面の加飾部10cに接着し、当該加飾部10cを介して透明前板10bを接着保持している。
ここで、内フレーム10fの縁枠10gは透明前板10bの挿入部を有しておらず、透明前板10bはその外周部をそのまま露出させた構成としてある。更に、透明前板10bはその外周縁を縁枠10gの外周縁より若干内側に位置させた構成としてある。
また、扉10の中央部庫内側に調光部15を設けており、調光部15は透明前板15−1と、調光フィルム15−2によって構成している。調光フィルム15−2は、通常(電圧非印加)時は光の拡散率が高く、白く濁ったように見えるのに対し、特定の電圧を印加した時は、光の拡散率が低くなり、調光フィルム15−2の反対側が透けて見える性質を有している。調光部15の詳細構成については、図4を用いて後述する。
また、扉10は、透明前板10bと調光部15の間に透明断熱部10dを配置している。これによって、調光部15の断熱性を調光部の断熱性を確保し、結露が起こりにくくなることで高いデザイン性を維持できる。また、調光部15をより庫内側に配置することで、調光部に庫外からの光が入りにくくなり、庫外の光による反射を抑制できるので、庫外から可視化する際の視認性を向上させることができる。つまり、庫内の視認性と扉の意匠性を両立する冷蔵庫を実現できる。
なお、透明断熱部10dは空気層として空間を設ける手段の他に、真空断熱部10hを設けてもよい。真空断熱部10hを用いた構成については、図3(c)を用いて後述する。
また、加飾部10cは、加飾部10c−1と加飾部10c−2から構成している。加飾部10c−2は、断熱材10e前面の着色の役割を担っている。また、加飾部10c−1は、調光部15と調光部15以外の間の境界線の露出を抑制する役割を担っており、加飾部10c−1は光の透過率を20%〜50%に構成している。これにより、調光部15が透明時に庫外から庫内の収納状態を違和感なく確認できるとともに、調光部15が非透明時に調光部15と調光部15以外の境界の露出が低減し、扉のデザインに連続性が生まれるので、更に庫内の視認性と扉の意匠性が向上できる。なお、例えば、加飾部10c−1は黒のスモークシートなどが挙げられる。
特に、加飾部10c−2は、調光部15の非電圧印加時の状態と類似したデザインを用いれば、調光部15と調光部15の周囲とのデザイン連続性が保たれるため、調光部15の存在が認識されにくくなりデザイン性が向上する。
なお、加飾部10c−1は樹脂フィルムが望ましく、加飾部10c−2は樹脂フィルム
を用いる代わりに、シルク印刷等の塗料を用いて形成してもよい。
また、図3(b)において、透明前板10bは縁枠10gの挿入部10g−1によって固定されており、また、断熱材10eは、内フレーム10fと縁枠10gとの間の空間に配置されている。この形態では、透明前板10bは、断熱材10eの発泡ウレタンによる接着保持を必要とせず、縁枠10gの挿入部10g−1による機械式固定、または接着材を介して平面部10g−2による接着式固定によって保持されるため、断熱材10eは、発泡ウレタンに限らず、発泡スチレンなどの他の手段でもよい。また、平面部10g−2は、図3(a)における加飾部10c−2の役割を併せ持つ構成としてあるので、簡易に断熱扉を構成することができる。
また、図3(c)において、透明断熱部10dに、真空断熱部10hを設けた構成としてある。真空断熱部10hは、2枚の透明前板10h−1と固定部材10h−3の間に真空断熱層10h−2を装備している。透明前板10h−1はアクリルやガラスなど、固定部材10h−2はABS等の樹脂で構成されている。
これによって、透明断熱部10dでの庫内外温度差による空気の対流を抑制することで、さらに断熱性が高まり、庫内冷却運転時に結露が起こりにくくなるので、さらに視認性を向上させることができる。
また、真空断熱部10hは、調光部15と一体化し、真空断熱部10hの透明前板10h−1と調光部15の透明前板15−1で挟み込む構成にしてもよく、扉の組立て工数を削減することができる。
なお、真空断熱部10hの固定部材10h−3の周囲にウレタンフォーム等を取り付けてもよい。これによって、庫内の冷却による部品の熱収縮時に、固定部材10h−3と内フレーム10fの間の隙間から冷気が漏れるのを抑制でき、断熱性を保つことができる。
また、図4(a)、(b)において、調光部15は、透明前板15−1に調光フィルム15−2を取りつけることによって構成されており、図4(a)は透明前板15−1に一枚の調光フィルム15−2を貼り付けた構成、図4(b)は冷蔵庫の高さ方向に三分割して構成したものであり、細かく分割することで、使用者が庫内の見たい箇所だけを可視化することができる。分割方法は記載した構成に限定されるものではなく、例えば、庫内の収納棚のレイアウトに合わせて分割するのが良い。
また、調光フィルム15−2は接続部15−3を有し、ここから電源供給を行っている。なお、本実施の形態のような回転式扉では、図1に示す冷蔵室扉の右上にある扉給電部10aから扉に電源供給を行うため、接続部15−3は冷蔵室正面に対して、右側または上側に配置してある。これによって、接続部15−3までの配線を短くすることができるので、ノイズ等を低減できる。
また、接続部15−3は透明前板15−1から一部はみ出して構成されており、これによって接続部15−3を扉本体に固定しやすくなるので、扉組立て時に容易に接続できる構成としてある。また、扉給電部10aと調光フィルム15−2の接続部15−3をつなぐ配線は、図3に示す断熱材10e内に埋設されており、扉を冷蔵庫本体に組立て時に、扉給電部10aと調光フィルム15−2の接続部15−3のそれぞれと、コネクタで結線することで調光フィルム15−2への給電が可能な構成としてある。
これによって、配線を隠すように配置されるため、使用者の目につきにくくなりデザイン性に優れたものなるとともに、使用者が触れにくくなり、安全性にも優れる。また、接
続部15−3や配線を確実に固定することができるので、開閉動作が頻繁に行われるような扉10においても長期使用にも耐えうる構造となる。
本実施の形態では、一枚の透明前板15−1に調光フィルム15−2を貼り付けた構成としているが、これに限らず、二枚の透明前板15−1で挟み込む構成としてもよい。透明前板15−1はアクリルやガラスなどである。
また、図5(a)において、扉10−2に調光部15を装備しており、調光部15の背面に扉ポケット25を配置している。また、収納棚24は扉ポケット25の先端に沿って構成されており、調光部15が透明時には、収納棚24と扉ポケット25の両方を可視化することができる。また、照明部23は、内箱3の側面に装備しており、調光部15へ電圧を印加した際に、照明部23をONにするようにしてある。
また、照明部23の少なくとも一部は、収納棚24の先端よりも断熱扉側になるように配置してある。これによって、収納棚24の収納状況に影響されることなく、収納室内全体に光が行き届きやすく、収納物配置による照度ばらつきを抑制できるので、高い視認性を保つことができる。
また、内箱3は表面の光の反射率が70%以上になるように構成している。照明部23から照射された光が庫内の壁面を介して反射を繰り返すことで、収納室内の照度を高めることができるので、冷蔵庫の周囲環境が明るい場合であっても、庫内の視認性を向上させることができる。
また、図5(b)において、扉10−2の調光部15の背面に扉ポケット25を配置せず、収納棚24を断熱扉側へ延長する構成としてある。これによって、調光部15が透明時に扉ポケット25の収納状況に影響されることなく、庫内の視認性を向上させることができるとともに、収納棚24が大きくなり、収納棚24の収納量を増やすことができる。
また、図5(c)において、照明部23を断熱扉に配置し、収納棚24に対して正面から光を照射する構成としてある。これによって、収納棚24の収納状況に影響されることなく、庫内の照度を明るく保つので、庫内の視認性をさらに向上させることができる。
なお、調光部15の位置は本実施の形態のような冷蔵室5の扉10に限らず、引き出し式扉11から14のいずれかの扉に設けてもよい。
次に、これまでに述べてきたような冷蔵庫を用いた冷蔵庫システム全体について、図6、図7を用いて説明する。
図6は同実施の形態における冷蔵庫のシステム構成を示すブロック図である。
図6において、冷蔵庫51は、コントローラ(制御部)59、及び扉開閉検出部61、照明制御部69、調光制御部68、タッチセンサ部60、ファン駆動回路62、コンプレッサ駆動回路63、送風ファン18、及びコンプレッサ19を備え、例えば住居A内の商用電源等の交流電源から電力の供給を受ける。
コントローラ(制御部)59は、冷蔵庫の動作を制御する。また、このコントローラ59は、タッチセンサ部60からの信号に基づき、照明制御部69と調光制御部68を制御して、庫内を可視化する。
照明制御部69は、扉開閉検出部61またはタッチセンサ部60からの信号に基づきコ
ントローラ59によって点灯・消灯が制御され、主に扉10が開かれると点灯し、扉10が閉じられると消灯する。
調光制御部68は、主にタッチセンサ部60からの制御信号を受け、調光部15の透明又は非透明の切替を行う。
ファン駆動回路62は、コントローラ59からの制御信号を受け、送風ファン18の回転の駆動を制御する。
コンプレッサ駆動回路63は、コントローラ59からの制御信号を受け、コンプレッサ19の回転数等の駆動を制御する。
送風ファン18は、ファン駆動回路62の制御に従い動作して、冷気を循環させるための気流を発生する。
コンプレッサ19は、コンプレッサ駆動回路63の制御に従い、冷蔵庫51内を循環する冷媒(図示せず)を圧縮する。
図7は調光部15の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、タッチセンサ部60が入力を検知すると(ステップ1)、照明制御部69が点灯し(ステップ2)、続けて調光部15がON(ステップ3)となることで、扉10を開けずに庫内を可視化することができる。その後、扉10が開となった場合(ステップ4)には、調光部15をOFFにし(ステップ9)、扉10が閉となった時点で(ステップ10)、照明部23を消灯する(ステップ11)。また、ステップ4において扉10が閉状態であっても、所定時間(例えば、1分間)経過した場合(ステップ5)には、調光部15をOFFにし(ステップ7)、照明部23を消灯する(ステップ8)。また、ステップ5において、所定時間経過していない場合(ステップ5)であっても、タッチセンサ部60が入力を検知した場合には、調光部15をOFFにし(ステップ7)、照明部23を消灯する(ステップ8)。
以上のように、調光部15をONする時は予め照明部23を点灯することで、庫内を明るく照射し、庫内を可視化する際に調光部15での反射が小さくなるので、庫内の視認性を向上させることができる。
また、調光部15をOFFする時は、続けて照明部23を消灯することで、調光部15がOFF時に調光部15表面での反射が高まり、調光部15と調光部15以外の扉表面における反射率の差を小さくすることができるので、境界線の露出をさらに低減することができる。
以上の構成により、調光部の断熱性を確保し、結露が起こりにくくなることで高いデザイン性を維持できるとともに、調光部をより庫内側に配置することで、調光部に庫外からの光が入りにくくなり、庫外の光による反射を抑制できるので、庫外から可視化する際の視認性を向上させることができ、庫内の視認性と扉の意匠性を両立する冷蔵庫を実現できる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については省略し、異なる構成に絞って説明する。
図8と図9を用いて映像投影部26を有する冷蔵庫の構成例について説明する。
図8は映像投影部26を有する冷蔵庫の概略縦断面を示す図である。上記扉10〜14のうち、扉10は庫内側に扉ポケット25と、扉10の一方に調光部15が装備してある。
また、冷蔵室5は庫内を照射するための照明部23を装備しており、扉を開けた時や、調光部15を介して庫内を可視化するときに、庫内を照射するものである。
また、照明部23の少なくとも一部は、収納棚24の先端よりも断熱扉側になるように配置してある。これによって、収納棚24の収納状況に影響されることなく、収納室内全体に光が行き届きやすく、収納物配置による照度ばらつきを抑制できるので、高い視認性を保つことができる。
また、冷蔵室5は映像投影部26を具備しており、映像投影部26から調光部15へ映像を照射することで、投影した映像を使用者が庫外から確認することができる。
従来の冷蔵庫では扉10等に映像を表示する手段として、断熱扉にディスプレイを設けるものが一般的であるが、ディスプレイは発熱を伴うために、ディスプレイ本体の厚みに加えて、ディスプレイの裏面等に放熱スペースを配備するため、断熱性能を確保するためには、断熱材の厚みを大きくするなどの手段が必要となり、庫内の収納量が減少するという課題があった。
それに対し、本発明の実施の形態では、断熱扉には調光部15を設け、映像投影部26から調光部15に対して映像を照射することで、扉10のディスプレイ部に必要であった放熱スペースを削減でき、庫内収納量を十分に確保できるとともに、液晶表示に比べて大幅に発熱量を低減できるので、省エネ性が向上させることができる。
また、映像投影部26は収納棚24の先端よりも断熱扉側の内箱3に取り付け、配置してある。これによって、収納棚24の収納状況に影響されることなく、正確に映像を表示できるとともに、映像投影部26の光源が使用者から見えにくくなるので、違和感なく映像を表示させることができる。
また、映像を表示する調光部15は、断熱扉のより庫内側に配置している。これによって、映像投影部からの光の反射を抑制できるので、より意匠性を高めることができる。
また、映像投影部26から映像を照射する時は、映像を表示する箇所の調光部15をOFFにしておくのがよい。これによって、映像投影部26から照射される光が調光部15から透過しにくくなるので、映像をより鮮明に表示することが可能になり、デザイン性を向上させることができる。
なお、図4(b)に示すような複数枚の調光フィルム15−2で構成される調光部15の一部に映像表示を行ってもよい。これによって、部分的に映像を表示しながら、庫内を可視化することができ、利便性が向上する。
また、調光部15を有する扉10は、タッチセンサ部60と、人感センサ部71を装備しており、タッチセンサ部60は、主に調光部15の透明または非透明の切替、人感センサ部71は映像投影部26の表示または非表示の役割を担っている。
なお、本実施の形態では調光部15の切替を行う手段としてタッチセンサ部60を、映
像投影部26の切替を行う手段として人感センサ部71を、例として記述するが、それに限らず、本発明がこれによって限定されるものではない。
なお、映像投影部26は、最大輝度が25ルーメン以上、焦点距離が0.1m以上0.5m以下のものが望ましい。これにより、より鮮明な映像を調光部15に表示することが可能になるとともに、調光部15と映像投影部26の取付位置に合わせて、焦点距離を調整することができるので、扉組立て時の取付ばらつき等を低減することができる。
なお、使用者表示内容は日付や、時間、カレンダー、スケジュール、天気予報などであり、使用者が必要な情報を選択して、表示するのがよい。
また、映像投影部26は調光部15に対して、斜めの位置から映像を照射することにより、図9に示すように、映像投影部26から遠い位置に投影される映像は大きく、映像投影部26から近い位置に投影される映像は小さく表示される。そこで、予め表示する画像に台形補正を行うことで、映像の文字の大きさを統一し、違和感なく映像を表示することができる。
なお、本実施の形態では、冷蔵室5の天面に映像投影部26を配置しているが、それに限らず、側面などに配置してもよい。その場合、配置場所に合わせて投影した映像の台形補正を行うのがよい。例えば、映像投影部26を冷蔵室5の側面に配置する場合には、映像投影部から遠い位置に対して上下方向に台形補正を行うことで、違和感なく映像を表示することができる。
また、表示する映像の背景色は黒にするのが望ましい。これによって、映像を調光部15に表示する際に、映像表示箇所とその周囲との境界がなくなり、デザイン的に連続性が生まれるので、映像の文字が扉表面に浮き上がるように表示することができ、意匠性を向上させることができる。
次に、これまでに述べてきたような冷蔵庫を用いた冷蔵庫システム全体について図10から図13を用いて説明する。
図10は上記した冷蔵庫を用いた冷蔵庫システム50の全体構成を示す。図9に示すように、この冷蔵庫システム50は、携帯端末55aまたはサーバ装置57から、冷蔵庫へ映像データを転送するシステムである。
この冷蔵庫システム50は、冷蔵庫51と、携帯端末55aとを備え、さらに、無線アダプタ(通信装置)53、ゲートウェイ装置(中継装置)54、ルーター装置55、インターネット56、サーバ装置57を含む。
冷蔵庫51は、使用者の住居A内に配置され、例えば、住居A内のキッチンルームに配置される。
更に、別のタッチセンサ部60からの信号に基づき、携帯端末55aまたはサーバ装置57から無線アダプタ53を介して映像データを取得し、映像投影手段70によって調光部15へ映像表示を行う。
無線アダプタ(通信装置)53は、冷蔵庫51の後述する制御部に電気的に接続し、ゲートウェイ装置(中継装置)54を介してルーター装置55と通信するように構成される。無線アダプタ53は、ルーター装置55から送信される信号を受信し、受信した信号を冷蔵庫51の制御部に出力する。この信号に基づいて、冷蔵庫51は、対応する動作を実
行するように構成される。
無線アダプタ53は、携帯端末55aまたはサーバ装置で作られた映像データをルーター装置55からゲートウェイ装置(中継装置)54を介して受信するように構成される。なお、無線アダプタ53は、冷蔵庫51に一体に設けてもよいし、着脱可能に構成してもよい。
無線アダプタ53は、「接続」ボタン53aを備える。「接続」ボタン53aは、ゲートウェイ装置(中継装置)54と新規に接続するためのものである。「接続」ボタン53aが使用者によって操作されると、無線アダプタ53は、冷蔵庫51の記憶部から冷蔵庫51の識別情報(例えば製造番号や型番)を取得するように構成される。
サーバ装置57は、たとえば、冷蔵庫51の製造メーカにより用意される。サーバ装置57は、携帯端末55a、冷蔵庫51、無線アダプタ53に関し、アクセスや認証に必要な情報等を管理する。例えば、サーバ装置57は、通信要求信号に含まれる携帯端末55aの識別情報と、無線アダプタ53に対応付けされて記憶(登録)されている携帯端末55aの識別情報とが一致するか否かを認証(判別)する。そして、サーバ装置57は、これらが一致する場合には、アクセスする携帯端末55aを、正規の端末として認証し、住居A内の冷蔵庫51との通信を許可する。
また、サーバ装置57は、インターネット56を介して得られた生活情報を映像表示にまとめる機能を有しており、サーバ装置57で作られた映像データをルーター装置55、ゲートウェイ装置54、無線アダプタ53を介して、冷蔵庫51へ映像表示を行う。なお、生活情報とは、例えば、日付、時間、カレンダー、スケジュール、天気予報などであり、使用者の好みに合わせて、表示内容を変更することが可能である。
携帯端末55aは、既述した如く、例えば、スマートフォン、タブレットPC(パーソナルコンピュータ)などの汎用の携帯型の端末であって、インターネット56に接続する機能(手段)と、後述するゲートウェイ装置54と通信する機能(手段)とを備える。
携帯端末55a(例えばスマートフォン)は、電話回線網(例えば3G回線網)を介して、インターネット56に接続するように構成されている。それに加えてまたは代わりとして、例えば、携帯端末55aは、Wi−Fi通信機能によって公衆無線LANを介してインターネット56に接続するように構成されている。
インターネット56に接続することにより、例えば、携帯端末55aは、サーバ装置57または特定の冷蔵庫51へ作成した映像をダイレクトに送信することができるプログラムを、インターネット56を介して冷蔵庫51の製造メーカのホームページから取得することができる。この取得したプログラムを携帯端末55aにインストールし、インストールしたプログラムを起動させることにより、携帯端末55aは、サーバ装置57または特定の冷蔵庫51へのデータ送信が可能になる。
つまり、携帯端末55aは、使用者が自ら作成した映像データをサーバ装置57へ送信することで、表示内容をオリジナルのものにすることができるとともに、サーバ管理者が作成した映像表示の中から、必要な生活情報だけを選択して表示することも可能である。
また、携帯端末55aは、特定の冷蔵庫51へ作成した映像をダイレクトに送信することで、リアルタイムで冷蔵庫51へ映像表示してもよい。
携帯端末55aは、例えば、Wi−Fi通信、Bluetooth(登録商標)通信、
赤外線通信などのインターネット56を介さない汎用の通信によってルーター装置55と接続し、そのルーター装置55を介してゲートウェイ装置54に通信接続するように構成されている。そのためのデバイス(例えばWi−Fiアンテナ等)が携帯端末55aに組み込まれている。
ゲートウェイ装置(中継装置)54は、無線アダプタ53と携帯端末55aとの通信を中継する装置であって、例えば、無線アダプタ53と、特定小電力無線特別小型周波数帯(924.0〜928.0MHz)の信号を用いて通信するように構成される。ゲートウェイ装置54と無線アダプタ53間の通信の周波数帯は、遠距離まで届く低周波数帯が好ましく、ルーター装置55とともに冷蔵庫51が設置された使用者の住居A内に設置されている。
ゲートウェイ装置54はまた、携帯端末55aとルーター装置55を介して通信接続するように構成されている。すなわち、携帯端末55aとインターネット56を介さずにルーター装置55のみを介して通信(第1の通信)が実行できるように、ゲートウェイ装置54は構成されている。
ゲートウェイ装置54はさらに、ルーター装置55を介してインターネット56に接続可能に構成されている。これにより、ゲートウェイ装置54は、インターネット56およびルーター装置55を介して、携帯端末55aと通信(第2の通信)することができるとともにサーバ装置57にも通信することができる。
したがって、ゲートウェイ装置54は、携帯端末55aに対して、インターネット56を介さない通信(すなわちルーター装置55のみを介する第1の通信)と、インターネット56を介する通信(すなわちインターネット56およびルーター装置55を介する第2の通信)とが実行できるように構成されている。このように構成する理由については後述する。
すなわち、本発明における冷蔵庫システムを用いることによって、サーバ装置57または携帯端末55aで作成された映像データを冷蔵庫51へ表示することができる。
図11は同冷蔵庫のシステム構成を示すブロック図である。なお、実施の形態1と内容が重複する箇所については、説明を省略する。
図11に示すように、この冷蔵庫51は、コントローラ(制御部)59、及び扉開閉検出部61、照明制御部69、調光制御部68、映像投影制御部70、タッチセンサ部60、人感センサ部71、ファン駆動回路62、コンプレッサ駆動回路63、送風ファン18、及びコンプレッサ19を備え、例えば住居A内の商用電源等の交流電源64から電力の供給を受ける。
インターフェイス(I/F)58は、無線アダプタ53と冷蔵庫51のコントローラ59との間のデータ等のやり取りを行う。
映像投影制御部70は、主にタッチセンサ部60または人感センサ部71からの制御信号を受け、映像の表示又は非表示の切替を行う。
次に、図12を用い、同冷蔵庫のサーバ装置の構成例について説明する。ここでは、前記図10中のサーバ装置57の構成を一例に挙げる。
図12に示すように、このサーバ装置57は、サーバ用インターフェイス65、サーバ
制御部66、及びデータ記憶部67を備える。
サーバ用インターフェイス65は、サーバ制御部66の制御に従い、インターネット56を介した携帯端末55a及びルーター装置55とサーバ装置57との間のデータ等のやり取りを行う通信部である。
サーバ制御部66は、このサーバ装置57の全体の動作を制御する。サーバ制御部66は、日付や時間等の生活情報を選択し、映像データに変換処理を行い、データ記憶部67に記憶させる。変換処理された映像データは携帯端末55aや冷蔵庫51から送信要求があった場合、または一定時間(例えば、1時間)おきに、データ記憶部67に記憶されている最新データを冷蔵庫51へ送信する。
データ記憶部67は、冷蔵庫システムを実行するための管理プログラムやアプリケーションプログラム等の必要なデータを記憶している。更にデータ記憶部67は、サーバ制御部66の制御に従い、冷蔵庫51へ送信する映像の最新データを書き換え記憶する。データ記憶部67は、例えば、HDD(Hard・Disc・Drive)やSSD(Solid・State・Drive)等により構成される。
なお、サーバ装置57は単一の大型コンピュータで構成されるサーバ、或いは、多数のコンピュータ群で構成されるクラウド型サーバのいずれでも構築できるものである。
図13は映像投影部の動作を示すフローチャートである。
図13に示すように、まず使用者が冷蔵庫に近づき、人感センサ部71が入力を検知すると(ステップ21)、映像投影部26から映像が照射され、調光部15に映像が表示される(ステップ22)ことで、使用者が手間なく、表示内容を確認することができる。次に、タッチセンサ部60が入力を検知すると(ステップ23)、映像投影部26はOFFとなり、続けて照明制御部69が点灯し(ステップ2)、調光部15がON(ステップ3)となることで、扉10を開けずに庫内を可視化することができる。また、ステップ23において、タッチセンサ部60の入力がない場合であっても、所定時間(例えば、1分間)を経過した場合(ステップ25)には、映像投影部26はOFFとする(ステップ26)。
以上のように、照明部23と調光部15の少なくとも一部をOFFの状態で、映像投影部26をONとすることで、映像投影部26から照射される光が調光部15から透過しにくくなるので、映像をより鮮明に表示することが可能になり、高いデザイン性を提供できる。
また、映像投影部26のONOFFの切替に対して、使用者に手間を与えることなく、映像を表示できるので、非常に使い勝手のよいものとなる。
以上、具体的な構成を持って説明してきたように本発明の実施の形態における冷蔵庫及び冷蔵庫システムは種々の作用効果を果たすが、本発明の要旨となる調光部と照明部と映像投影部の設置構成によれば、使い勝手が良く、デザイン性に優れた、扉を開けずに庫内を可視化できる蔵庫及び冷蔵システムを提供することができる。